累乗の塔(power tower)とは、$a>0$ に対し $a_1=a$、$a_{n+1}=a^{a_n}$ で定める数列 $a,\ a^a,\ a^{a^a},\ldots$ のことで、累乗は上から計算する。$a>1$ のとき、収束するのは $a\le e^{1/e}$ のときに限り、極限は $a^x=x$ の最小の正の解($a=\sqrt2$ なら $2$)である。$0<a<1$ のとき、収束するのは $a\ge e^{-e}$ のときに限り、$a<e^{-e}$ では奇数番目と偶数番目が $a^p=q$、$a^q=p$ を満たす異なる値 $p<q$ に収束する。系として、$y=a^x$ と $y=\log_ax$ のグラフが直線 $y=x$ の外で交わるのは $0<a<e^{-e}$ のときに限る。
前提知識: 指数方程式・対数方程式, 指数関数・対数関数のグラフと逆関数, 関数の連続性と中間値の定理(高校数学), 縮小写像と漸化式
$\sqrt2$ を指数の上へ上へと重ねた数
$$
\sqrt2,\qquad\sqrt2^{\sqrt2},\qquad\sqrt2^{\sqrt2^{\sqrt2}},\qquad\ldots
$$
を考える。重ねた累乗は 上から 計算する約束である。たとえば $3^{3^3}$ は $3^{\left(3^3\right)}=3^{27}=7625597484987$ で、$\left(3^3\right)^3=3^9=19683$ とは違う。上から計算するので、1 段増やすことは「いまの数を指数にして $\sqrt2$ の累乗をとる」ことになる。
$a_1=\sqrt2$、$a_{n+1}=\sqrt2^{\,a_n}$ とおくと、$a_n$ は $\sqrt2$ を $n$ 段重ねた数である。電卓で計算すると(小数第 6 位を四捨五入)
| $n$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ | $6$ | $7$ | $8$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $a_n$ | $1.41421$ | $1.63253$ | $1.76084$ | $1.84091$ | $1.89271$ | $1.92700$ | $1.95003$ | $1.96566$ |
で、少しずつ増えて $2$ に近づいていくように見える。実際 $\sqrt2^{\,2}=2$ なので、$2$ は「$\sqrt2^{\,x}=x$」を満たす数である。
$a_1=1.5$、$a_{n+1}=1.5^{a_n}$ とおくと
$$
1.5,\quad1.837,\quad2.106,\quad2.349,\quad2.592,\quad2.860,\quad3.189,\quad\ldots
$$
となり、増え方が次第に速くなって、限りなく大きくなる(thm-ptw-large で示す)。底を $\sqrt2=1.414\ldots$ から $1.5$ に少し大きくしただけで、ふるまいが変わる。
$a_1=\dfrac1{16}$、$a_{n+1}=\left(\dfrac1{16}\right)^{a_n}$ とおくと
$$
0.0625,\quad0.8409,\quad0.0972,\quad0.7639,\quad0.1203,\quad0.7164,\quad0.1372,\quad0.6836,\quad\ldots
$$
となる。奇数番目は小さく、偶数番目は大きく、交互に行き来する。$200$ 番目まで計算すると、奇数番目は $0.2491\ldots$、偶数番目は $0.5012\ldots$ で、奇数番目は $\dfrac14$ に、偶数番目は $\dfrac12$ に近づいていく。$\left(\dfrac1{16}\right)^{\frac14}=\dfrac12$、$\left(\dfrac1{16}\right)^{\frac12}=\dfrac14$ なので、$\dfrac14$ と $\dfrac12$ は互いに移り合う 2 つの数である。
3 つの例から、次の問いが生まれる。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| $a,\ a^a,\ a^{a^a},\ldots$ | 累乗の塔 | 写像 $x\mapsto a^x$ の反復 |
| $a^x=x$ の解 | 極限の候補 | 不動点 |
| 奇数番目と偶数番目が別の値へ | 2 つの値を行き来する組 | 周期 $2$ の点 |
| $e^{-e}\le a\le e^{\frac1e}$ | 収束する範囲 | 不動点の傾き $\lvert\log t\rvert\le1$ |
以下、$\log$ は底 $e$ の自然対数を表す。$e^{\frac1e}=1.4446\ldots$、$e^{-e}=0.06598\ldots$ である。
$a>0$ とする。数列 $(a_n)$ を
$$
a_1=a,\qquad a_{n+1}=a^{a_n}\quad(n=1,2,3,\ldots)
$$
で定め、$a_n$ を $a$ の $n$ 段の累乗の塔 という。$a_n$ は $a$ を $n$ 個、上から順に累乗した数 $a^{a^{\cdot^{\cdot^{a}}}}$ である。$(a_n)$ が収束するとき、その極限を 無限に重ねた累乗(無限の累乗の塔)といい、$a^{a^{a^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}$ と書くことがある。
関数 $f(x)=a^x$ を使うと、漸化式は $a_{n+1}=f(a_n)$ で、$(a_n)$ は $f$ を繰り返し施した数列である。便利のため $a_0=1$ とおくと、$a_1=a^1=f(a_0)$ で、$n=0$ からも同じ漸化式が成り立つ。$a=1$ なら $a_n=1$ がずっと続く。以下では $a>1$ と $0< a<1$ を分けて調べる。
$(a_n)$ が実数 $L$ に収束するなら、$a^L=L$ である。
$a_n\to L$ なら、番号を 1 つずらした $a_{n+1}$ も $L$ に収束する。指数関数 $x\mapsto a^x$ は連続なので(関数の連続性と中間値の定理(高校数学))、$a_n\to L$ から $a^{a_n}\to a^L$ である。漸化式 $a_{n+1}=a^{a_n}$ の両辺の極限をとると $L=a^L$ である。$\square$
lem-ptw-limit は「収束するなら極限は $a^x=x$ の解」と言っているだけで、収束するかどうかも、解が 2 つ以上あるときにどれが極限かも教えない。ex-ptw-start-sqrt2 では解が $2$ と $4$ の 2 つある。
図 1 と図 2 は、数列の動きを $y=a^x$ のグラフと直線 $y=x$ の上で追ったもの(くもの巣図)である。点 $(a_n,a_n)$ から縦に進んで $y=a^x$ に当たると高さが $a_{n+1}$ になり、横に進んで直線 $y=x$ に当たると $(a_{n+1},a_{n+1})$ に着く。図 1($a=\sqrt2$)では階段を上って交点 $(2,2)$ に近づく。図 2($a=\frac1{16}$)では、交点 $(t,t)$($t=0.3642\ldots$)のまわりを回りながら、外側の四角形 $\left(\frac14,\frac12\right)$ の周に近づいていく。
y = √2 の x 乗と直線 y = x の上で、数列が階段を上って交点 (2, 2) に近づき、もう 1 つの交点 (4, 4) には近づかない
y = (1/16) の x 乗と直線 y = x の上で、数列が交点のまわりを回り、1/4 と 1/2 を行き来する四角形に近づく
$x>0$ について、$a^x=x$ の両辺の自然対数をとると $x\log a=\log x$、つまり
$$
\log a=\frac{\log x}x
$$
である($\log$ は狭義単調増加なので、指数方程式・対数方程式 の定理「指数・対数を外す規則」の (ii) によりこれは同値な変形である)。したがって、$a^x=x$ の正の解は、曲線 $y=\dfrac{\log x}x$ と直線 $y=\log a$ の交点の $x$ 座標である。
$h(x)=\dfrac{\log x}x$($x>0$)は、$0< x\le e$ で狭義単調増加、$x\ge e$ で狭義単調減少で、$x=e$ で最大値 $\dfrac1e$ をとる。また $h(1)=0$、$h\left(\dfrac1e\right)=-e$ であり、$0< x<1$ では $h(x)<0$、$x>1$ では $h(x)>0$ である。
商の微分により
$$
h'(x)=\frac{\dfrac1x\cdot x-\log x\cdot1}{x^2}=\frac{1-\log x}{x^2}
$$
である。$x^2>0$ なので、$h'(x)$ の符号は $1-\log x$ の符号と同じで、$0< x< e$ で正、$x>e$ で負である。よって $h$ は $0< x\le e$ で狭義単調増加、$x\ge e$ で狭義単調減少で、最大値は $h(e)=\dfrac{\log e}e=\dfrac1e$ である。$h(1)=\dfrac01=0$、$h\left(\dfrac1e\right)=\dfrac{-1}{1/e}=-e$ である。$h(x)$ の符号は $\log x$ の符号と同じで、$0< x<1$ で負、$x>1$ で正である。$\square$
曲線 y = log x / x は x = e で最大値 1/e をとり、x = 1/e で値 −e をとる。水平な直線 y = log a との交点が a の x 乗 = x の解になる
図 3 から、交点の個数が読める。$a>1$($\log a>0$)なら、$\log a<\dfrac1e$ のとき交点は $2$ つ($1< x< e$ と $x>e$ に 1 つずつ)、$\log a=\dfrac1e$ のとき $x=e$ の $1$ つ、$\log a>\dfrac1e$ のとき $0$ 個である。$0< a<1$($\log a<0$)なら、交点は $0< x<1$ にちょうど $1$ つである($x\to+0$ で $\log x\to-\infty$、$\dfrac1x\to+\infty$ なので $h(x)\to-\infty$ となり、$h$ は $0< x<1$ で増加して $h(1)=0$ に至る)。$\log a<\dfrac1e\iff a< e^{\frac1e}$ である。
$a>1$ とする。
(R1) $a\le e^{\frac1e}$ なら、$a^x=x$ は $1< x\le e$ の範囲にちょうど 1 つの解 $t$ をもち、$t$ は $a^x=x$ の最小の正の解である。$(a_n)$ は単調に増加して $t$ に収束する。
(R2) $a>e^{\frac1e}$ なら、$(a_n)$ は単調に増加して限りなく大きくなる(収束しない)。
とくに、$a>1$ のとき $(a_n)$ が収束するのは $a\le e^{\frac1e}$ のときで、そのときに限る。
方針:数列が増加することを示し、(i) では上から $t$ で押さえて「単調で有界な数列は収束する」を使い、(ii) では収束すると矛盾することを示す。
段 1(増加)。$a>1$ なので $f(x)=a^x$ は狭義単調増加である。$a_0=1< a=a_1$ である。$a_{n-1}< a_n$ なら、$f$ が増加なので $a_n=f(a_{n-1})< f(a_n)=a_{n+1}$ である。帰納法により、すべての $n\ge1$ で $a_n< a_{n+1}$ である。
段 2((i) の解 $t$)。$0<\log a\le\dfrac1e$ である。$h(1)=0<\log a$、$h(e)=\dfrac1e\ge\log a$ で、$h$ は連続なので、中間値の定理により $1< x\le e$ に $h(x)=\log a$ となる $x$ がある。lem-ptw-h により $h$ は $0< x\le e$ で狭義単調増加なので、$1< x\le e$ の中の解はただ 1 つである。これを $t$ とおく。$0< x\le1$ では $h(x)\le0<\log a$ なので解はない。よって $t$ は $a^x=x$ の最小の正の解である。
段 3((i) で $t$ を超えない)。$a_0=1< t$ である。$a_{n-1}< t$ なら、$f$ が増加なので $a_n=f(a_{n-1})< f(t)=a^t=t$ である。帰納法により、すべての $n$ で $a_n< t$ である。
段 4((i) の収束)。段 1・段 3 により $(a_n)$ は増加し、上から $t$ で押さえられるので、実数の性質「上に有界な単調増加数列は収束する」(単調収束定理)により、ある $L$ に収束する。$a_1\le a_n< t$ から $a\le L\le t$ で、lem-ptw-limit により $a^L=L$ である。$L\ge a>0$ は $a^x=x$ の正の解で、$t$ は最小の正の解なので $L\ge t$ である。よって $L=t$ である。
段 5((ii))。$a>e^{\frac1e}$ なら $\log a>\dfrac1e$ で、lem-ptw-h によりすべての $x>0$ で $h(x)\le\dfrac1e<\log a$、つまり $\log x< x\log a$、$x< a^x$ である。$x\le0$ でも $a^x>0\ge x$ である。したがって $a^x=x$ に実数解はない。もし $(a_n)$ がある $L$ に収束すれば、lem-ptw-limit により $a^L=L$ となって矛盾する。増加する数列が収束しないのは、上に有界でないときなので(有界なら段 4 と同じく収束する)、$(a_n)$ は限りなく大きくなる。$\square$
境目の $a=e^{\frac1e}$ では $t=e$ で、thm-ptw-large の (i) により $a_n\to e$ である。ただし近づき方はとても遅く、$20000$ 番目でも $a_{20000}=2.71801\ldots$ で、$e=2.71828\ldots$ との差は $0.0003$ ほど残っている。
$1< a< e^{\frac1e}$ なら、縮小写像と漸化式 の定理「縮小写像による収束」でも収束が分かり、縮小率は $k=\log t<1$ である($a=\sqrt2$ なら $k=\log2=0.693\ldots$)。境目 $a=e^{\frac1e}$ では縮小率が $1$ になって、この定理は使えない。
区間 $I=[a,t]$ の上で、$f(x)=a^x$ は増加で $f(a)=a^a>a$、$f(t)=t$ なので $f$ は $I$ を $I$ の中に移す。$f'(x)=a^x\log a$ も増加なので、$I$ の上で $$0< f'(x)\le f'(t)=a^t\log a=t\log a=\log t$$ である(最後は $a^t=t$ の両辺の対数 $t\log a=\log t$)。$a< e^{\frac1e}$ なので $h(t)=\log a<\dfrac1e=h(e)$ で、prf-ptw-large の段 2 の $t\le e$ と合わせて $t< e$、$\log t<1$ で、縮小率 $k=\log t$ の縮小写像になり、$a_1=a\in I$ から始めて $\lvert a_n-t\rvert\le(\log t)^{n-1}\lvert a-t\rvert$ である。境目 $a=e^{\frac1e}$ では $t=e$、$f'(t)=\log e=1$ になる。収束がとても遅いのはこのためである。一方、もう 1 つの解 $x=4$($a=\sqrt2$)では $f'(4)=4\log\sqrt2=\log4=1.386\ldots>1$ で、$4$ の近くの点は $4$ から離れていく(平均値の定理による差の評価)。
$0< a<1$ では $f(x)=a^x$ は減少関数なので、ex-ptw-start-sixteenth のように数列は大小を交互にくり返す。そこで奇数番目と偶数番目を別々に調べる。$f$ を 2 回続けて施す関数を $g(x)=f(f(x))=a^{a^x}$ とおくと、$a_{n+2}=g(a_n)$ である。減少関数を 2 回続けると増加関数になる($u< v\Rightarrow f(u)>f(v)\Rightarrow f(f(u))< f(f(v))$)ので、$g$ は増加関数である。
$0< a<1$ とする。$a^x=x$ の実数解はただ 1 つで、それを $t$ とおくと $a< t<1$ である。さらに次が成り立つ。
(R1) $a_1< a_3< a_5<\cdots< t<\cdots< a_6< a_4< a_2<1$
(R2) 奇数番目 $a_1,a_3,a_5,\ldots$ はある $p$ に、偶数番目 $a_2,a_4,a_6,\ldots$ はある $q$ に収束し、$a\le p\le t\le q<1$、$a^p=q$、$a^q=p$ である。
(R3) $(a_n)$ が収束するのは $p=q$ のときで、そのときに限る。そのとき $p=q=t$ で、極限は $t$ である。
要点:$f$ は減少なので項は $t$ の両側を交互に動き、増加関数 $g=f\circ f$ で送ると奇数番目は増加、偶数番目は減少する。どちらも $t$ で押さえられるので収束し、極限の組 $(p,q)$ は $f$ の連続性から $a^p=q$、$a^q=p$ を満たす。
段 1($t$)。$\varphi(x)=a^x-x$ は狭義単調減少で連続、$\varphi(0)=1>0$、$\varphi(1)=a-1<0$ なので、中間値の定理により $0< x<1$ にただ 1 つの解 $t$ があり、ほかに実数解はない(狭義単調だから)。$0< t<1$ で $f$ は減少なので、$t=a^t>a^1=a$ である。
段 2($t$ の両側)。$x>0$ なら $0< a^x< a^0=1$ なので、どの $a_n$ も $0$ と $1$ の間にある。$a_1=a< t$ である。$a_n< t$ なら $f$ が減少なので $a_{n+1}=f(a_n)>f(t)=t$、$a_n>t$ なら $a_{n+1}< t$ である。よって奇数番目は $t$ より小さく、偶数番目は $t$ より大きい。
段 3(単調性)。$a_2<1$ なので $a_3=f(a_2)>f(1)=a=a_1$ である。$g$ は増加なので、$a_{2k-1}< a_{2k+1}$ なら $a_{2k+1}=g(a_{2k-1})< g(a_{2k+1})=a_{2k+3}$ で、帰納法により奇数番目は増加する。また $a_4=f(a_3)< f(a_1)=a_2$ で、同じく $g$ で送って偶数番目は減少する。これで (i) が示された。
段 4(極限の組)。奇数番目は増加して $t$ で上から押さえられ、偶数番目は減少して $t$ で下から押さえられるので、どちらも収束する(単調収束定理)。極限を $p$、$q$ とすると $a_1\le p\le t\le q\le a_2<1$ である。$f$ は連続なので、$a_{2k}=f(a_{2k-1})$ の極限をとって $q=f(p)=a^p$、$a_{2k+1}=f(a_{2k})$ の極限をとって $p=f(q)=a^q$ である。
段 5(収束の条件)。$p=q$ なら、奇数番目も偶数番目も同じ値に近づくので、数列全体もその値に近づく。$p\ne q$ なら、数列は 2 つの異なる値の近くに交互に現れ続けるので、1 つの値には収束しない。$p=q$ のときは $p\le t\le q$ から $p=q=t$ である。$\square$
lem-ptw-oddeven により、問題は「$p=q$ になるのはいつか」に絞られる。その答えが次の定理である。
$0< a<1$ とし、$t$ を $a^x=x$ のただ 1 つの解とする。
(R1) $a\ge e^{-e}$ なら、$(a_n)$ は $t$ に収束する。
(R2) $a< e^{-e}$ なら、奇数番目は $t$ より小さい $p$ に、偶数番目は $t$ より大きい $q$ に収束し、$(a_n)$ は収束しない。$p,q$ は $a^p=q$、$a^q=p$ を満たす。
とくに、$0< a<1$ のとき $(a_n)$ が収束するのは $a\ge e^{-e}$ のときで、そのときに限る。
証明には、2 つの値を行き来する組についての次の補題を使う。証明は計算が長いので畳む。
$0< a<1$ とする。$0< p< q$ で $a^p=q$、$a^q=p$ を満たす $p,q$ があれば、$a< e^{-e}$ である。
要点:$p\log p=q\log q$ と $\log a=\dfrac{\log p}q$ から、$u=-\log p$、$v=-\log q$ について $u>1>v>0$ と $\log a=-ue^{v}$ が分かる。$ue^{v}>e$ を示せばよく、これは $0< s<1$ での不等式 $e^{s}<1-\log(1-s)$ に帰着する。
段 1($p,q$ の範囲と関係)。$p>0$ なので $q=a^p< a^0=1$ で、$0< p< q<1$ である。$a^p=q$、$a^q=p$ の両辺の対数をとると $p\log a=\log q$、$q\log a=\log p$ である。よって $\log a=\dfrac{\log q}p=\dfrac{\log p}q$ で、分母を払うと $q\log q=p\log p$ である。
段 2($u,v$ に直す)。$u=-\log p$、$v=-\log q$ とおくと、$0< p< q<1$ から $u>v>0$ である。$p=e^{-u}$、$q=e^{-v}$ で、段 1 の $q\log q=p\log p$ は $-ve^{-v}=-ue^{-u}$、つまり $w(u)=w(v)$ である。ここで $w(s)=se^{-s}$ とおいた。$w'(s)=(1-s)e^{-s}$ なので、$w$ は $0< s\le1$ で狭義単調増加、$s\ge1$ で狭義単調減少である。$u\ne v$ で $w(u)=w(v)$ なので、$u,v$ は $1$ の同じ側には来られず(同じ側なら狭義単調性から $u=v$)、$v<1< u$ である。また $\log a=\dfrac{\log p}q=\dfrac{-u}{e^{-v}}=-ue^{v}$ である。
段 3(目標の言い換え)。$a< e^{-e}$ は $\log a<-e$、つまり $ue^{v}>e$、つまり $u>e^{1-v}$ と同じである。$u>1$、$e^{1-v}>1$ で、$w$ は $s\ge1$ で狭義単調減少なので、$u>e^{1-v}$ は $w(u)< w\left(e^{1-v}\right)$ と同じである。$w(u)=w(v)=ve^{-v}$、$w\left(e^{1-v}\right)=e^{1-v}e^{-e^{1-v}}$ なので、両辺に $e^{v}$ を掛けて対数をとると、目標は $\log v<1-e^{1-v}$ になる。$s=1-v$($0< s<1$)とおくと、目標は $e^{s}<1-\log(1-s)$ である。
段 4(不等式の証明)。まず $x\ne0$ なら $e^x>1+x$ である。実際 $\psi(x)=e^x-1-x$ は $\psi'(x)=e^x-1$ が $x<0$ で負、$x>0$ で正なので、$x=0$ で最小値 $0$ をとり、$x\ne0$ では $\psi(x)>0$ である。$x=-s$($0< s<1$)とすると $e^{-s}>1-s>0$、つまり $e^{s}<\dfrac1{1-s}$ である。そこで $\Phi(s)=1-\log(1-s)-e^{s}$($0\le s<1$)とおくと、$\Phi'(s)=\dfrac1{1-s}-e^{s}>0$($0< s<1$)、$\Phi(0)=1-0-1=0$ なので、$0< s<1$ で $\Phi(s)>0$ である。これが目標の不等式で、$a< e^{-e}$ が示された。$\square$
段 1($t$ と $\dfrac1e$)。$a^t=t$ の両辺の対数をとると $\log a=h(t)$ である($h$ は lem-ptw-h の関数)。$0< t<1$ で、$h$ は $0< x<1$ で狭義単調増加、$h\left(\dfrac1e\right)=-e=\log e^{-e}$ なので、
$$
a\ge e^{-e}\iff\log a\ge-e\iff h(t)\ge h\left(\tfrac1e\right)\iff t\ge\tfrac1e
$$
である。同じく $a< e^{-e}\iff t<\dfrac1e$ である。
段 2((i))。$a\ge e^{-e}$ とし、lem-ptw-oddeven の $p,q$ が $p\ne q$ だったと仮定する。$p\le t\le q$ で、$p=t$ なら $q=a^p=a^t=t$、$q=t$ なら $p=a^q=a^t=t$ となってどちらも $p\ne q$ に反するので、$p< t< q$ である。lem-ptw-oddeven の (ii) により $p\ge a>0$ なので $0< p< q$ である。$a^p=q$、$a^q=p$ なので、lem-ptw-pair により $a< e^{-e}$ となり、仮定に反する。よって $p=q$ で、lem-ptw-oddeven の (iii) により $(a_n)$ は $t$ に収束する。
段 3((ii) の準備:$t$ での $g$ の傾き)。$(a^u)'=a^u\log a$ と合成関数の微分により
$$
g'(x)=\left(a^{a^x}\right)'=a^{a^x}\log a\cdot a^x\log a
$$
である。$x=t$ では $a^t=t$、$a^{a^t}=a^t=t$ なので、$g'(t)=t\log a\cdot t\log a=(t\log a)^2=(\log t)^2$ である($t\log a=\log t$ を使った)。$a< e^{-e}$ なら段 1 により $t<\dfrac1e$、$\log t<-1$ なので、$g'(t)=(\log t)^2>1$ である。
段 4((ii):$p< t$)。微分係数の定義により $\dfrac{g(x)-g(t)}{x-t}\to g'(t)>1$($x\to t$)なので、ある $\delta>0$ があって、$t-\delta< x< t$ なら $\dfrac{g(x)-t}{x-t}>1$ である($g(t)=t$)。$x-t<0$ なので、両辺に $x-t$ を掛けると不等号が逆になり $g(x)-t< x-t$、つまり $g(x)< x$ である。いま $p=t$ だったと仮定する。奇数番目は増加しながら $t$ に近づき、どれも $t$ より小さいので、ある番号 $k$ で $t-\delta< a_{2k-1}< t$ となる。すると $a_{2k+1}=g(a_{2k-1})< a_{2k-1}$ となり、奇数番目が増加することに反する。よって $p< t$ で、$q=a^p>a^t=t$ である。$p\ne q$ なので、lem-ptw-oddeven の (iii) により $(a_n)$ は収束しない。$\square$
境目の近くでは収束がとても遅い。$a=e^{-e}+10^{-6}$ は (i) の場合で $t$ に収束するが、$20000$ 番目まで計算しても、奇数番目と偶数番目はまだ $0.3617\ldots$ と $0.3741\ldots$ で、差が $0.01$ ほど残る。境目の $a=e^{-e}$ でも $t=\dfrac1e$ に収束するが、$g'(t)=1$ なので同じように遅い。数値の表で収束を判断するときは注意がいる。
指数関数・対数関数のグラフと逆関数 では、$y=a^x$ と $y=\log_ax$ のグラフの交点が直線 $y=x$ の外にもありうること($a=\frac1{16}$ の例)と、それが起こるのは $a< e^{-e}$ のときであることを、証明せずに述べた。主定理 2 とその補題から、この事実が示せる。
$a>0$、$a\ne1$ とする。$y=a^x$ と $y=\log_ax$ のグラフが直線 $y=x$ の外の点で交わるのは、$0< a< e^{-e}$ のときで、そのときに限る。
点 $(p,q)$ が 2 つのグラフの両方の上にあることは、$q=a^p$ かつ $q=\log_ap$、つまり $a^p=q$ かつ $a^q=p$ であることと同じである。直線 $y=x$ の外の点とは $p\ne q$ ということである。
$a>1$ のとき、$y=a^x$ は増加関数で $y=\log_ax$ はその逆関数なので、指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の命題「増加関数とその逆関数の交点」により、交点は直線 $y=x$ の上にしかない。
$0< a<1$ のとき、直線 $y=x$ の外の交点 $(p,q)$ があるとする。$(q,p)$ も交点なので、$p< q$ としてよい。$p=a^q>0$ なので $0< p< q$ で、lem-ptw-pair により $a< e^{-e}$ である。逆に $a< e^{-e}$ なら、thm-ptw-small の (ii) の $p< q$ が $a^p=q$、$a^q=p$ を満たすので、$(p,q)$ は直線 $y=x$ の外の交点である。$\square$
y = (1/16) の x 乗と y = log_(1/16) x のグラフは、直線 y = x の上の点のほかに、点 (1/4, 1/2) と (1/2, 1/4) でも交わる
図 4 は $a=\dfrac1{16}$ の場合で、直線 $y=x$ の上の交点 $(t,t)$ のほかに、行き来する組 $\left(\dfrac14,\dfrac12\right)$ と $\left(\dfrac12,\dfrac14\right)$ で交わっている。累乗の塔の奇数番目と偶数番目の極限は、この交点の座標である(ほかに行き来する組がないことは、ex-ptw-small の (3) のとおり数値計算で確かめた)。
2 つの主定理をまとめると次のようになる。
| $a$ の範囲 | 数列 $a,\ a^a,\ a^{a^a},\ldots$ のふるまい | 極限 |
|---|---|---|
| $a>e^{\frac1e}$ | 増加して限りなく大きくなる | なし |
| $1< a\le e^{\frac1e}$ | 増加して収束する | $a^x=x$ の最小の正の解($1< t\le e$) |
| $a=1$ | ずっと $1$ | $1$ |
| $e^{-e}\le a<1$ | $t$ の両側を行き来しながら収束する | $a^x=x$ のただ 1 つの解($\frac1e\le t<1$) |
| $0< a< e^{-e}$ | 奇数番目と偶数番目が別の値に収束する | なし(行き来する組 $p< q$) |
収束する範囲はちょうど $e^{-e}\le a\le e^{\frac1e}$ である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 「最小の」正の解 | $a=\sqrt2$、解 $x=4$ | 極限は $4$ ではなく $2$ |
| 初項を $a$ にとる | $x_1=5$、$x_{n+1}=\sqrt2^{\,x_n}$ | 解 $2$ で傾きが $1$ より小さくても発散する |
| $a\le e^{\frac1e}$ | $a=1.5$ | 収束しない |
| $a\ge e^{-e}$ | $a=\frac1{16}$ | 奇数番目と偶数番目が別の値に近づく |
2 つの主定理の境目は、1 つの式でまとめて見ることができる。
$f(x)=a^x$ の不動点 $t$($a^t=t$)での傾きは $f'(t)=a^t\log a=t\log a=\log t$ である。$a>1$ のとき、「$a^x=x$ に正の解があり、最小の正の解 $t$ が $\log t\le1$($t\le e$)を満たす」ことは、prf-ptw-large の段 2・段 5 により $a\le e^{\frac1e}$ と同値だった。$0< a<1$ のとき、$t\ge\dfrac1e\iff\log t\ge-1$ で、これは thm-ptw-small の条件 $a\ge e^{-e}$ と同値だった。どちらの場合も、収束する条件は
$$
\lvert f'(t)\rvert=\lvert\log t\rvert\le1,\qquad\text{つまり}\qquad\frac1e\le t\le e
$$
とまとめられる。不動点での傾きの絶対値が $1$ より小さい不動点は近くの点を引き寄せ、$1$ より大きい不動点は遠ざける(縮小写像と漸化式、平均値の定理による差の評価)。累乗の塔では、傾きがちょうど $1$ になる境目 $t=\dfrac1e$、$t=e$ でも収束することが、主定理で示された(とても遅い)。
逆に、$\dfrac1e\le t\le e$ の数 $t$ を先に与えると、$a=t^{\frac1t}$ とおけば $a^t=t$ で、$a$ の累乗の塔は $t$ に収束する($t>1$ なら $t\le e$ なので $t$ は最小の正の解である)。Wei26 は、無限の累乗の塔が $e^{-e}\le x\le e^{\frac1e}$ でちょうど収束することを述べている。この記事の 2 つの主定理は、その実数の場合の証明である。大学では、底を複素数に広げた累乗の塔や、極限を特別な関数で表す方法も調べられている(この記事では扱わない)。
(1) 極限 $L$ は $a^L=L$ を満たす(lem-ptw-limit)ので、$a^{\frac32}=\dfrac32$、$a=\left(\dfrac32\right)^{\frac23}=1.3103\ldots$ が候補である。$1< a$ で、$\dfrac32\le e$ なので、prf-ptw-large の段 2 により $\dfrac32$ は $a^x=x$ の最小の正の解であり、$a\le e^{\frac1e}$ も満たす($\log a=h\left(\frac32\right)\le\frac1e$)。よって極限は $\dfrac32$ で、$a=\left(\dfrac32\right)^{\frac23}$ である。
(2) ない。極限が $4$ なら $a^4=4$ から $a=4^{\frac14}=\sqrt2$ しかありえないが、$\sqrt2$ の累乗の塔の極限は $2$ である(ex-ptw-large)。一般に、極限は $\dfrac1e$ 以上 $e$ 以下の数しかとらない(rem-ptw-slope)。「$x^{x^{x^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}=4$ の両辺から $x^4=4$」と解くと $x=\sqrt2$ が出るが、これは (2) の答えではない。
$a=\dfrac14$ の累乗の塔は収束するか。収束するなら極限を求めよ。
$\dfrac14=0.25>e^{-e}=0.0659\ldots$ なので、thm-ptw-small の (i) により $\left(\dfrac14\right)^x=x$ のただ 1 つの解に収束する。$\left(\dfrac14\right)^{\frac12}=\dfrac12$ なので、解は $t=\dfrac12$ で、極限は $\dfrac12$ である(数値でも $0.25,\ 0.7071,\ 0.3752,\ 0.5944,\ 0.4387,\ldots$ と $\dfrac12$ の両側を行き来して近づく)。
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