位置ベクトルと内分点

同義語:position vectors and division points

概要

位置ベクトルと内分点(position vectors and division points)とは、基準の点 $O$ を決めて点 $P$ を $\vec p=\overrightarrow{OP}$ で表し、点を計算で求める方法である。$\overrightarrow{AB}=\vec b-\vec a$ であり、線分 $AB$ を $m:n$ に内分する点は $\frac{n\vec a+m\vec b}{m+n}$、三角形の重心は $\frac{\vec a+\vec b+\vec c}{3}$ である。$A\ne B$ のとき、$P$ が直線 $AB$ 上にあることは $\vec p=s\vec a+t\vec b$($s+t=1$)と書けることと同値で、さらに $s,t\ge0$ なら線分上にある。係数の和が $1$ の式だけが基準の点によらず点を定める(アフィン結合)。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトル, 内分点・外分点の座標

高校での出発点:内分点を座標で求める

座標平面で、2 点 $A(x_1,y_1)$、$B(x_2,y_2)$ を結ぶ線分 $AB$ を $m:n$ に内分する点の座標は
$$ \left(\frac{nx_1+mx_2}{m+n},\ \frac{ny_1+my_2}{m+n}\right) $$
である(座標での証明は 内分点・外分点の座標 にある)。まず、この公式を使う計算を 2 つの例で見る。

中点と内分点を座標で求める

$A(1,4)$、$B(7,1)$ とする。

  1. 中点($1:1$ に内分する点)は $\left(\frac{1+7}2,\ \frac{4+1}2\right)=\left(4,\ \frac52\right)$ である。
  2. $2:1$ に内分する点は、$m=2$、$n=1$ として $\left(\frac{1\cdot1+2\cdot7}{3},\ \frac{1\cdot4+2\cdot1}{3}\right)=\left(\frac{15}3,\ \frac63\right)=(5,2)$ である。
    2 の点を $P$ とすると、$\overrightarrow{AP}=(4,-2)$、$\overrightarrow{PB}=(2,-1)$ で、$\overrightarrow{AP}=2\,\overrightarrow{PB}$ である。確かに $AP:PB=2:1$ になっている。
三角形の重心を座標で求める

$A(1,4)$、$B(7,1)$、$C(4,7)$ を頂点とする三角形の重心 $G$ は、3 つの頂点の座標の平均
$$ G\left(\frac{1+7+4}3,\ \frac{4+1+7}3\right)=G(4,4) $$
である。

座標の式は $x$ 座標と $y$ 座標で同じ形をしている。そこで、2 つの座標をまとめて 1 つのベクトルとして扱うと、式が短くなる。この記事では、点を原点からのベクトルで表す「位置ベクトル」を使って、次の問いに答える。

  1. 内分点・外分点・重心の公式は、ベクトルで書くとどうなるか。→ thm-pvd-division、cor-pvd-centroid
  2. 点 $P$ が直線 $AB$ の上にあることは、ベクトルでどう書けるか。→ thm-pvd-line
  3. 公式の係数の和がいつも $1$ になるのはなぜか。→ thm-pvd-origin
  4. 2 直線の交点を、ベクトルでどう求めるか。→ prop-pvd-decomp、ex-pvd-intersection
    高校の計算この記事での見方ボックス
    $\overrightarrow{AB}=\vec b-\vec a$「終点の位置ベクトル − 始点の位置ベクトル」lem-pvd-difference
    内分点 $\frac{n\vec a+m\vec b}{m+n}$係数の和が $1$ の式thm-pvd-division
    重心 $\frac{\vec a+\vec b+\vec c}3$3 本の中線を $2:1$ に分ける点cor-pvd-centroid
    $\vec p=s\vec a+t\vec b$、$s+t=1$直線 $AB$ 上にある条件thm-pvd-line
    係数の和が $1$原点の取り方によらないthm-pvd-origin
    係数比較で交点を求める平行でない 2 つのベクトルによる表し方はただ 1 通りprop-pvd-decomp
    係数の和が $1$ の 1 次結合アフィン結合(大学数学)rem-pvd-affine

位置ベクトル

点の位置ベクトル

平面(または空間)に 1 つの点 $O$ を決めておく。点 $P$ に対し、ベクトル $\vec p=\overrightarrow{OP}$ を、$O$ を基準とする点 $P$ の 位置ベクトル という。$O$ を基準の点(原点)という。
点を大文字、その位置ベクトルを同じ文字の小文字で $A(\vec a)$、$B(\vec b)$ のように書く。$O$ を座標の原点にとれば、点 $P(x,y)$ の位置ベクトルは成分がちょうど $P$ の座標に等しいベクトル $\vec p=(x,y)$ である。

基準の点 $O$ を決めると、点 $P$ と位置ベクトル $\vec p$ は 1 対 1 に対応する。$\vec p$ が決まれば、$O$ から $\vec p$ だけ進んだ点として $P$ がただ 1 つ決まるからである。

2 点を結ぶベクトル

$A(\vec a)$、$B(\vec b)$ に対し、$\overrightarrow{AB}=\vec b-\vec a$ である。

ベクトルの和で $O$ を経由する

方針:$A$ から $B$ へ行くのに、いったん $O$ を経由する。
段 1(和に分ける)。ベクトルの和の定義(始点と終点をつなぐ)により、$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{AO}+\overrightarrow{OB}$ である。
段 2(向きを変える)。$\overrightarrow{AO}$ は $\overrightarrow{OA}$ と大きさが同じで向きが逆なので、$\overrightarrow{AO}=-\overrightarrow{OA}=-\vec a$ である。また $\overrightarrow{OB}=\vec b$ である。
段 3(まとめる)。段 1 に代入して $\overrightarrow{AB}=-\vec a+\vec b=\vec b-\vec a$ である。$\square$

2 点を結ぶベクトルを求める
  1. $A(1,4)$、$B(7,1)$ で、原点 $O(0,0)$ を基準にすると $\vec a=(1,4)$、$\vec b=(7,1)$ なので、$\overrightarrow{AB}=\vec b-\vec a=(6,-3)$ である。
  2. 同じ 2 点で、基準の点を $O'(2,5)$ に替える。$O'$ を基準とする位置ベクトルは $\overrightarrow{O'A}=(1-2,\ 4-5)=(-1,-1)$、$\overrightarrow{O'B}=(7-2,\ 1-5)=(5,-4)$ である。差は $(5,-4)-(-1,-1)=(6,-3)$ で、1 と同じになる。位置ベクトルそのものは基準の点によって変わるが、その差 $\overrightarrow{AB}$ は変わらない。

内分点と外分点の公式

線分の内分と外分

$m$、$n$ を正の数とし、$A\ne B$ とする。

  1. 点 $P$ が線分 $AB$ 上にあって $AP:PB=m:n$ のとき、$P$ は線分 $AB$ を $m:n$ に 内分 するという。
  2. $m\ne n$ とする。点 $P$ が直線 $AB$ 上で線分 $AB$ の外にあって $AP:PB=m:n$ のとき、$P$ は線分 $AB$ を $m:n$ に 外分 するという。
    外分点 $P$ がどちら側にあるかは、比 $m:n$ で決まる。$P$ が $A$ の手前にあれば $PB=PA+AB>PA$ なので $m< n$ であり、$B$ の先にあれば $AP=AB+BP>BP$ なので $m>n$ である。$P$ はこの 2 つの場合のどちらかなので、$m>n$ なら $P$ は $B$ の先に、$m< n$ なら $P$ は $A$ の手前にある。
内分点と外分点の位置ベクトル

$A(\vec a)$、$B(\vec b)$、$A\ne B$ とし、$m$、$n$ を正の数とする。

  1. 線分 $AB$ を $m:n$ に内分する点の位置ベクトルは $\dfrac{n\vec a+m\vec b}{m+n}$ である。
  2. $m\ne n$ のとき、線分 $AB$ を $m:n$ に外分する点の位置ベクトルは $\dfrac{-n\vec a+m\vec b}{m-n}$ である。

これは、内分点・外分点の座標 で $x$ 座標と $y$ 座標ごとに示した公式を、2 つの成分をまとめて 1 つの式に書いたものである。ここでは成分を使わずに、ベクトルの図形的な意味から示す。

$A$ からどれだけ進むかを数える

方針:$P$ は直線 $AB$ 上にあるので、$\overrightarrow{AP}$ は $\overrightarrow{AB}$ の実数倍である。その倍率を比 $m:n$ から求め、lem-pvd-difference で位置ベクトルに直す。
段 1(内分の倍率)。内分点 $P$ は線分 $AB$ 上にあり、$AP:PB=m:n$ なので、$AP=\frac{m}{m+n}AB$ である。$\overrightarrow{AP}$ と $\overrightarrow{AB}$ は同じ向きなので、$\overrightarrow{AP}=\frac{m}{m+n}\overrightarrow{AB}$ である。
段 2(内分点の位置ベクトル)。$\vec p=\vec a+\overrightarrow{AP}$ と lem-pvd-difference により
$$ \vec p=\vec a+\frac{m}{m+n}(\vec b-\vec a)=\frac{(m+n)\vec a-m\vec a+m\vec b}{m+n}=\frac{n\vec a+m\vec b}{m+n} $$
である。
段 3(外分で $m>n$ の場合)。def-pvd-division の 2 の後で見たとおり、$m>n$ なら $P$ は $B$ の先にあるので、$AP=AB+BP$ である。$AP:PB=m:n$ から $BP=\frac nm AP$ なので、$AP-\frac nm AP=AB$、すなわち $AP=\frac{m}{m-n}AB$ である。$\overrightarrow{AP}$ は $\overrightarrow{AB}$ と同じ向きなので $\overrightarrow{AP}=\frac{m}{m-n}\overrightarrow{AB}$ である。
段 4(外分で $m< n$ の場合)。同じく def-pvd-division により、$m< n$ なら $P$ は $A$ の手前にあるので、$PB=PA+AB$ である。$PB=\frac nm AP$ なので $\frac nm AP-AP=AB$、すなわち $AP=\frac{m}{n-m}AB$ である。$\overrightarrow{AP}$ は $\overrightarrow{AB}$ と逆向きなので $\overrightarrow{AP}=-\frac{m}{n-m}\overrightarrow{AB}=\frac{m}{m-n}\overrightarrow{AB}$ である。段 3 と同じ式になった。
段 5(外分点の位置ベクトル)。段 3・段 4 のどちらでも $\overrightarrow{AP}=\frac{m}{m-n}\overrightarrow{AB}$ なので
$$ \vec p=\vec a+\frac{m}{m-n}(\vec b-\vec a)=\frac{(m-n)\vec a-m\vec a+m\vec b}{m-n}=\frac{-n\vec a+m\vec b}{m-n} $$
である。$\square$

外分の公式は、内分の公式の $n$ を $-n$ に置き換えたものである。

内分点と外分点を位置ベクトルで求める

$A(1,4)$、$B(7,1)$、原点 $O$ を基準にする(図1)。

  1. $2:1$ に内分する点 $P$:$\vec p=\frac{1\cdot(1,4)+2\cdot(7,1)}{3}=\frac{(15,6)}{3}=(5,2)$。ex-pvd-start-division の座標の計算と同じ答えである。
  2. $2:1$ に外分する点 $Q$:$\vec q=\frac{-1\cdot(1,4)+2\cdot(7,1)}{2-1}=(13,-2)$。$\overrightarrow{AQ}=(12,-6)$、$\overrightarrow{QB}=(-6,3)$ なので $AQ=6\sqrt5$、$QB=3\sqrt5$ で、$AQ:QB=2:1$ である。
  3. $1:2$ に外分する点 $R$:$\vec r=\frac{-2\cdot(1,4)+1\cdot(7,1)}{1-2}=\frac{(5,-7)}{-1}=(-5,7)$。$AR=|(-6,3)|=3\sqrt5$、$RB=|(12,-6)|=6\sqrt5$ で、$AR:RB=1:2$ である。$R$ は $A$ の手前にある。

線分 !FORMULA[195][1137023][0] を !FORMULA[196][34793599][0] に内分する点 !FORMULA[197][37112][0] と外分する点 !FORMULA[198][37143][0]。位置ベクトル !FORMULA[199][1837121656][0]、!FORMULA[200][1837121687][0] が !FORMULA[201][1837121191][0]、!FORMULA[202][1837121222][0] の係数つきの和で書けることを見る図。 線分 $AB$ を $2:1$ に内分する点 $P$ と外分する点 $Q$。位置ベクトル $\vec p$、$\vec q$ が $\vec a$、$\vec b$ の係数つきの和で書けることを見る図。
内分の公式を 2 回使うと、三角形の重心が求まる。三角形の頂点と、向かい合う辺の中点を結ぶ線分を 中線 という。

三角形の重心

三角形 $ABC$ の頂点を $A(\vec a)$、$B(\vec b)$、$C(\vec c)$ とする。3 本の中線は 1 点で交わり、その点 $G$ は各中線を頂点の側から $2:1$ に内分する。$G$ の位置ベクトルは
$$ \vec g=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}{3} $$
である。この点 $G$ を三角形 $ABC$ の 重心 という。

中線を 2:1 に分ける点を計算する

方針:内分点・外分点の座標 の重心の証明と同じ筋道(中線を $2:1$ に内分する点を計算し、3 本とも同じ点になることを見る)を、ベクトルで書く。
段 1($A$ からの中線)。辺 $BC$ の中点を $L$ とすると、thm-pvd-division の 1($m=n=1$)で $\vec l=\frac{\vec b+\vec c}2$ である。中線 $AL$ を $2:1$ に内分する点の位置ベクトルは、同じく thm-pvd-division の 1($m=2$、$n=1$)で
$$ \frac{1\cdot\vec a+2\,\vec l}{3}=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}{3} $$
である。
段 2(残りの 2 本とまとめ)。この式は $\vec a$、$\vec b$、$\vec c$ を入れかえても変わらないので、$B$ からの中線、$C$ からの中線を $2:1$ に内分する点も同じ式になる。位置ベクトルが同じ点は同じ点なので、3 本の中線はこの 1 点で交わる。$\square$

座標での証明では $x$ 座標と $y$ 座標で同じ計算を 2 回したが、ベクトルで書くと 1 回で済む。しかも成分を使っていないので、同じ証明が空間の三角形(成分が 3 つ)でもそのまま成り立つ。

重心を 2 通りで確かめる
  1. ex-pvd-start-centroid の $A(1,4)$、$B(7,1)$、$C(4,7)$ では、$\vec g=\frac{(1,4)+(7,1)+(4,7)}3=\frac{(12,12)}3=(4,4)$ である。
  2. 同じ三角形で、辺 $BC$ の中点は $L\left(\frac{11}2,\ 4\right)$ である。中線 $AL$ を $2:1$ に内分する点は $\frac{1\cdot(1,4)+2\cdot\left(\frac{11}2,4\right)}{3}=\frac{(12,12)}3=(4,4)$ で、1 と一致する。

三角形の重心の性質(中線の長さの比、面積を 3 等分することなど)は 三角形の重心(高校数学) で、3 本の線が 1 点で交わる条件の一般形は Cevaの定理(高校数学) で扱う。

主定理:直線上の点と係数の和

内分点の公式 $\frac{n\vec a+m\vec b}{m+n}=\frac{n}{m+n}\vec a+\frac{m}{m+n}\vec b$ では、$\vec a$ と $\vec b$ の係数の和が $\frac{n}{m+n}+\frac{m}{m+n}=1$ である。外分点の公式でも $\frac{-n}{m-n}+\frac{m}{m-n}=1$、重心でも $\frac13+\frac13+\frac13=1$ である。この「係数の和が $1$」が何を意味するかを、2 つの定理で見る。

直線上にある条件

$A(\vec a)$、$B(\vec b)$、$A\ne B$ とする。

  1. 点 $P(\vec p)$ が直線 $AB$ 上にあるための必要十分条件は、$s+t=1$ を満たす実数 $s$、$t$ で
    $$ \vec p=s\vec a+t\vec b $$
    と書けることである。このとき $s$、$t$ は $P$ によってただ 1 通りに決まる。
  2. 点 $P$ が線分 $AB$ 上にあるための必要十分条件は、1 の $s$、$t$ が $s\ge0$、$t\ge0$ を満たすことである。
$A$ から $AB$ の方向に進む

方針:「$P$ が直線 $AB$ 上にある」を「$\overrightarrow{AP}$ が $\overrightarrow{AB}$ の実数倍」と言い換え、lem-pvd-difference で位置ベクトルの式に直す。
段 1(言い換え)。$P$ が直線 $AB$ 上にあることは、$\overrightarrow{AP}=\vec 0$($P=A$)であるか、$\overrightarrow{AP}$ が $\overrightarrow{AB}$ と平行であることと同じである。どちらの場合も、ある実数 $t$ で $\overrightarrow{AP}=t\,\overrightarrow{AB}$ と書ける($P=A$ なら $t=0$)。逆に $\overrightarrow{AP}=t\,\overrightarrow{AB}$ なら、$P$ は $A$ から直線 $AB$ の方向に進んだ点なので、直線 $AB$ 上にある。
段 2(位置ベクトルに直す)。lem-pvd-difference により、$\overrightarrow{AP}=t\,\overrightarrow{AB}$ は $\vec p-\vec a=t(\vec b-\vec a)$、すなわち
$$ \vec p=(1-t)\vec a+t\vec b $$
と同じである。$s=1-t$ とおけば $\vec p=s\vec a+t\vec b$、$s+t=1$ である。逆に $s+t=1$ で $\vec p=s\vec a+t\vec b$ なら、$s=1-t$ を代入して $\vec p-\vec a=t(\vec b-\vec a)$ となり、段 1 により $P$ は直線 $AB$ 上にある。これで 1 の前半が示せた。
段 3(ただ 1 通り)。$\vec p=(1-t)\vec a+t\vec b=(1-t')\vec a+t'\vec b$ とすると、移項して $(t-t')(\vec b-\vec a)=\vec 0$ である。$A\ne B$ なので $\vec b-\vec a\ne\vec 0$ であり、$t-t'=0$ である。よって $t$ が、したがって $s=1-t$ もただ 1 通りに決まる。
段 4(線分)。$P$ が線分 $AB$ 上にあることは、$\overrightarrow{AP}=t\,\overrightarrow{AB}$ の $t$ が $0\le t\le1$ を満たすことと同じである($t=0$ で $A$、$t=1$ で $B$、その間で線分の途中の点)。$0\le t\le1$ は、$t\ge0$ かつ $s=1-t\ge0$ と同じである。これで 2 が示せた。$\square$

$\vec p=(1-t)\vec a+t\vec b$ で $0< t<1$ のとき、$P$ は線分 $AB$ を $t:(1-t)$ に内分する点である(thm-pvd-division の 1 で $m=t$、$n=1-t$ とおくと $m+n=1$ になる)。

直線 $AB$ 上の点を $t$ で動かす

$A(1,4)$、$B(7,1)$ とし、$\vec p=(1-t)\vec a+t\vec b$ とする。

  1. $t=\frac13$:$\vec p=\frac23(1,4)+\frac13(7,1)=(3,3)$。$s=\frac23\ge0$、$t\ge0$ なので線分 $AB$ 上の点で、$AB$ を $1:2$ に内分する。
  2. $t=\frac32$:$\vec p=-\frac12(1,4)+\frac32(7,1)=\left(10,-\frac12\right)$。$s=-\frac12<0$ なので、直線 $AB$ 上だが線分の外($B$ の先)にある。
  3. $t=-\frac12$:$\vec p=\frac32(1,4)-\frac12(7,1)=\left(-2,\frac{11}2\right)$。$t<0$ なので $A$ の手前にある。
  4. $t=2$:$\vec p=-(1,4)+2(7,1)=(13,-2)$。ex-pvd-division の外分点 $Q$ である。
直線 $AB$ 上にあるかどうかを判定する

同じ $A(1,4)$、$B(7,1)$ で、点 $R(4,3)$ が直線 $AB$ 上にあるかを調べる。$(4,3)=(1-t)(1,4)+t(7,1)=(1+6t,\ 4-3t)$ となる $t$ があるかを見る。$x$ 成分から $1+6t=4$、$t=\frac12$ である。このとき $y$ 成分は $4-\frac32=\frac52\ne3$ なので、両方を満たす $t$ はない。よって $R$ は直線 $AB$ 上にない。一方 $\left(4,\frac52\right)$ は $t=\frac12$ で直線上にあり、ex-pvd-start-division の中点である。

次の定理は、係数の和が $1$ の式が「原点の選び方によらない」ことを述べる。位置ベクトルは基準の点 $O$ を決めて初めて定まるので、$O$ を替えたときに同じ点を表すかどうかは、計算してみないと分からない。

係数の和が 1 なら原点によらない

点 $A_1,\dots,A_k$ と実数 $s_1,\dots,s_k$ をとる。基準の点 $O$ を 1 つ決め、
$$ \overrightarrow{OP}=s_1\overrightarrow{OA_1}+s_2\overrightarrow{OA_2}+\dots+s_k\overrightarrow{OA_k} $$
で点 $P$ を定める。この点 $P$ が基準の点 $O$ の選び方によらないための必要十分条件は、$s_1+s_2+\dots+s_k=1$ である。

基準の点を替えた差を計算する

方針:基準を $O$ から別の点 $O'$ に替えて同じ式で点 $P'$ を定め、$\overrightarrow{O'P'}$ と $\overrightarrow{O'P}$ の差を計算する。差が $\vec 0$ になるのがどんなときかを見る。
段 1($O'$ で定めた点)。$O'$ を基準にすると、同じ式で定まる点 $P'$ は $\overrightarrow{O'P'}=\sum_{i=1}^k s_i\overrightarrow{O'A_i}$ を満たす。ベクトルの和で $\overrightarrow{O'A_i}=\overrightarrow{O'O}+\overrightarrow{OA_i}$ なので
$$ \overrightarrow{O'P'}=\sum_{i=1}^k s_i\bigl(\overrightarrow{O'O}+\overrightarrow{OA_i}\bigr)=\Bigl(\sum_{i=1}^k s_i\Bigr)\overrightarrow{O'O}+\sum_{i=1}^k s_i\overrightarrow{OA_i} $$
である。最後の和は $P$ の定義により $\overrightarrow{OP}$ に等しい。
段 2($O$ で定めた点を $O'$ から見る)。一方 $\overrightarrow{O'P}=\overrightarrow{O'O}+\overrightarrow{OP}$ である。
段 3(差)。段 1 から段 2 を引くと、$\sigma=s_1+\dots+s_k$ とおいて
$$ \overrightarrow{O'P'}-\overrightarrow{O'P}=(\sigma-1)\,\overrightarrow{O'O} $$
である。$\overrightarrow{O'P'}-\overrightarrow{O'P}=\overrightarrow{PP'}$ なので、$P'=P$ となるのは右辺が $\vec 0$ のときに限る。
段 4(十分性)。$\sigma=1$ なら、どの $O'$ でも右辺は $\vec 0$ で、$P'=P$ である。
段 5(必要性)。$\sigma\ne1$ なら、$O'\ne O$ となる $O'$ をとると $\overrightarrow{O'O}\ne\vec 0$ なので、右辺は $\vec 0$ でなく、$P'\ne P$ である。つまり基準の点によって $P$ が変わる。$\square$

原点を替えて比べる

$A(2,0)$、$B(0,2)$ とし、2 つの基準の点 $O(0,0)$ と $O'(3,1)$ で比べる(図2)。$O'$ から見ると $\overrightarrow{O'A}=(-1,-1)$、$\overrightarrow{O'B}=(-3,1)$ である。

  1. 係数の和が $1$ の式 $\frac12\vec a+\frac12\vec b$:$O$ からは $\frac12(2,0)+\frac12(0,2)=(1,1)$ で、点 $M(1,1)$ を表す。$O'$ からは $\frac12(-1,-1)+\frac12(-3,1)=(-2,0)$ で、点 $O'+(-2,0)=(1,1)$ を表す。同じ点 $M$(線分 $AB$ の中点)である。
  2. 係数の和が $2$ の式 $\vec a+\vec b$:$O$ からは $(2,2)$ で、点 $R(2,2)$ を表す。$O'$ からは $(-1,-1)+(-3,1)=(-4,0)$ で、点 $(3,1)+(-4,0)=(-1,1)$ を表す。この点を $R'(-1,1)$ とすると、$R'$ は $R$ と別の点である。prf-pvd-origin の段 3 の式で確かめると、$\sigma-1=1$、$\overrightarrow{O'O}=(-3,-1)$ なので、$\overrightarrow{RR'}=(-3,-1)$ のはずであり、実際 $(-1,1)-(2,2)=(-3,-1)$ である。

基準の点を !FORMULA[446][37081][0] から !FORMULA[447][1149640][0] に替えたとき。係数の和が !FORMULA[448][36151][0] の式 !FORMULA[449][578782218][0] は同じ点 !FORMULA[450][37019][0] を表し、係数の和が !FORMULA[451][36182][0] の式 !FORMULA[452][1480618236][0] は、!FORMULA[453][37081][0] からは !FORMULA[454][37174][0]、!FORMULA[455][1149640][0] からは別の点 !FORMULA[456][1152523][0] を表すことを見る図。 基準の点を $O$ から $O'$ に替えたとき。係数の和が $1$ の式 $\frac12\vec a+\frac12\vec b$ は同じ点 $M$ を表し、係数の和が $2$ の式 $\vec a+\vec b$ は、$O$ からは $R$、$O'$ からは別の点 $R'$ を表すことを見る図。

位置ベクトルの式を点の式として読む

thm-pvd-origin により、係数の和が $1$ の式は基準の点をいちいち断らなくても意味をもつ。そこで、点と位置ベクトルを同じ文字で表して
$$ P=\frac{nA+mB}{m+n},\qquad G=\frac{A+B+C}{3} $$
のように「点の式」として書くことがある(Cevaの定理(高校数学) の後半はこの書き方を使う)。係数の和が $1$ でない式、たとえば $A+B$ は、点の式としては意味をもたない(ex-pvd-origin の 2)。

平面のベクトルの分解と係数比較

2 直線の交点を求めるには、同じ点を 2 通りに表して係数を比べる。その根拠になるのが次の命題である。

平面のベクトルの分解

平面上の $\vec 0$ でない 2 つのベクトル $\vec a$、$\vec b$ が平行でないとする。このとき、平面上のどのベクトル $\vec p$ も
$$ \vec p=s\vec a+t\vec b\qquad(s,\ t\ \text{は実数}) $$
の形に、ただ 1 通りに表せる。特に、$s\vec a+t\vec b=s'\vec a+t'\vec b$ ならば $s=s'$ かつ $t=t'$ である(係数比較)。

平行線を引いて分け、差をとって一意性を示す

方針:存在は、$\vec b$ に平行な直線を引いて $\vec p$ を 2 つの向きに分けて示す。一意性は、2 通りの表し方の差をとり、$\vec a$、$\vec b$ が平行でないことを使う。
段 1(点をとる)。点 $O$ をとり、$\vec a=\overrightarrow{OA}$、$\vec b=\overrightarrow{OB}$、$\vec p=\overrightarrow{OP}$ となる点 $A$、$B$、$P$ を定める。
段 2(存在)。$P$ を通り直線 $OB$ に平行な直線 $\ell$ を引く。直線 $OA$ と直線 $OB$ は平行でないので、$\ell$ と直線 $OA$ も平行でなく、ただ 1 点 $Q$ で交わる。$Q$ は直線 $OA$ 上にあるので、ある実数 $s$ で $\overrightarrow{OQ}=s\vec a$ と書ける。$\overrightarrow{QP}$ は $\vec 0$ であるか $\ell$ の向き、つまり $\vec b$ に平行なので、ある実数 $t$ で $\overrightarrow{QP}=t\vec b$ と書ける。よって $\vec p=\overrightarrow{OQ}+\overrightarrow{QP}=s\vec a+t\vec b$ である。
段 3(一意性)。$s\vec a+t\vec b=s'\vec a+t'\vec b$ とする。移項すると $(s-s')\vec a=(t'-t)\vec b$ である。もし $s\ne s'$ なら、両辺を $s-s'$ で割って $\vec a=\frac{t'-t}{s-s'}\vec b$ となる。$\vec a\ne\vec 0$ なので $\frac{t'-t}{s-s'}\ne0$ であり、$\vec a$ は $\vec b$ の $0$ でない実数倍、つまり $\vec b$ に平行である。これは仮定に反する。よって $s=s'$ である。すると $(t'-t)\vec b=\vec 0$ で、$\vec b\ne\vec 0$ なので $t=t'$ である。$\square$

成分でベクトルを分解する

$\vec a=(2,1)$、$\vec b=(1,3)$ とする。$2\cdot3-1\cdot1=5\ne0$ なので、この 2 つは平行でない(成分が比例しない)。

  1. $\vec p=(5,5)$ を $s\vec a+t\vec b=(2s+t,\ s+3t)$ と表す。連立方程式 $2s+t=5$、$s+3t=5$ を解くと、1 つ目の式の 3 倍から 2 つ目の式を引いて $5s=10$、$s=2$、$t=1$ である。確かに $2(2,1)+(1,3)=(5,5)$。
  2. $\vec p=(1,-3)$ では $2s+t=1$、$s+3t=-3$ から $5s=6$、$s=\frac65$、$t=1-\frac{12}5=-\frac75$ である。確かに $\frac65(2,1)-\frac75(1,3)=\left(\frac{12-7}5,\ \frac{6-21}5\right)=(1,-3)$。
2 直線の交点を係数比較で求める

三角形 $OAB$ で $\overrightarrow{OA}=\vec a$、$\overrightarrow{OB}=\vec b$ とする。辺 $OA$ を $2:1$ に内分する点を $P$、辺 $OB$ の中点を $Q$ とし、線分 $AQ$ と線分 $BP$ の交点を $X$ とする。$\overrightarrow{OX}$ を $\vec a$、$\vec b$ で表す(図3)。

  1. $\overrightarrow{OP}=\frac23\vec a$、$\overrightarrow{OQ}=\frac12\vec b$ である。
  2. $X$ は直線 $AQ$ 上にあるので、thm-pvd-line により実数 $u$ で $\overrightarrow{OX}=(1-u)\vec a+u\cdot\frac12\vec b=(1-u)\vec a+\frac u2\vec b$ と書ける。
  3. $X$ は直線 $BP$ 上にもあるので、実数 $v$ で $\overrightarrow{OX}=(1-v)\vec b+v\cdot\frac23\vec a=\frac{2v}3\vec a+(1-v)\vec b$ と書ける。
  4. $\vec a$、$\vec b$ は平行でない($O$、$A$、$B$ は三角形をつくる)ので、prop-pvd-decomp の係数比較により $1-u=\frac{2v}3$、$\frac u2=1-v$ である。2 つ目から $u=2-2v$、これを 1 つ目に入れて $-1+2v=\frac{2v}3$、$\frac{4v}3=1$、$v=\frac34$ である。すると $u=\frac12$ である。
  5. よって $\overrightarrow{OX}=\frac12\vec a+\frac14\vec b$ である。$u=\frac12$ から $AX:XQ=1:1$、$v=\frac34$ から $BX:XP=3:1$ も分かる。

三角形 !FORMULA[574][35664792][0] で、!FORMULA[575][1137488][0] と !FORMULA[576][1138418][0] の交点 !FORMULA[577][37360][0] を求める。!FORMULA[578][37360][0] を 2 本の直線のそれぞれで表し、係数を比べることを見る図。 三角形 $OAB$ で、$AQ$ と $BP$ の交点 $X$ を求める。$X$ を 2 本の直線のそれぞれで表し、係数を比べることを見る図。

平行四辺形の対角線は互いに他を 2 等分する

平行四辺形 $OACB$ で $\overrightarrow{OA}=\vec a$、$\overrightarrow{OB}=\vec b$ とすると、$\overrightarrow{AC}=\overrightarrow{OB}$ なので $\overrightarrow{OC}=\vec a+\vec b$ である。

  1. 対角線 $OC$ の中点の位置ベクトルは、thm-pvd-division の 1($m=n=1$)で $\frac{\vec 0+(\vec a+\vec b)}2=\frac{\vec a+\vec b}2$ である。
  2. 対角線 $AB$ の中点の位置ベクトルも $\frac{\vec a+\vec b}2$ である。
    位置ベクトルが同じなので、2 本の対角線の中点は同じ点である。つまり 2 本の対角線はその点で交わり、互いに他を 2 等分する。

例と反例

この記事の定理には、どれも仮定が付いている。仮定を 1 つ外すと何が崩れるかを、次の表にまとめる。

外した仮定崩れる主張ボックス
$\vec a$、$\vec b$ が平行でないただ 1 通りに表せる・係数比較(prop-pvd-decomp)ex-pvd-parallel
$A\ne B$$s$、$t$ がただ 1 通りに決まる(thm-pvd-line の 1)ex-pvd-same-point
係数の和が $1$原点の取り方によらない(thm-pvd-origin)ex-pvd-origin の 2
$s\ge0$、$t\ge0$線分 $AB$ 上にある(thm-pvd-line の 2)ex-pvd-line の 2・3
外分で $m\ne n$外分点がある(thm-pvd-division の 2)ex-pvd-equal-ratio
反例:平行な 2 つのベクトルでは係数比較できない

$\vec a=(1,2)$、$\vec b=(2,4)$ とする。どちらも $\vec 0$ でないが、$\vec b=2\vec a$ なので平行である。成分で見ると $1\cdot4-2\cdot2=0$ である。

  1. 表し方がただ 1 通りでない。$\vec p=(3,6)$ は
    $$ 3\vec a+0\,\vec b=(3,6),\qquad \vec a+\vec b=(1+2,\ 2+4)=(3,6),\qquad 0\,\vec a+\frac32\vec b=(3,6) $$
    のように何通りにも書ける。係数を比べて「$3=1$」とすることはできない。
  2. 表せないベクトルがある。$s\vec a+t\vec b=(s+2t)(1,2)$ はいつも $(1,2)$ の実数倍である。$(1,0)$ は $(1,2)$ の実数倍でない($y$ 成分を $0$ にするには倍率が $0$ でなければならず、そのとき $x$ 成分も $0$ になる)ので、$(1,0)=s\vec a+t\vec b$ となる $s$、$t$ はない。
    満たす性質:$\vec a\ne\vec 0$、$\vec b\ne\vec 0$。満たさない性質:平行でないこと。破る主張:prop-pvd-decomp の存在と一意性の両方。prf-pvd-decomp の段 2 では「$\ell$ と直線 $OA$ がただ 1 点で交わる」ことを、段 3 では「$\vec a$ が $\vec b$ の実数倍でない」ことを使っていた。$\vec a$、$\vec b$ が平行だとどちらも成り立たない。
反例:2 点が一致すると係数が決まらない

$A=B$ とし、その点の位置ベクトルを $\vec a=\vec b=(1,4)$ とする。$s+t=1$ なら
$$ s\vec a+t\vec b=(s+t)\vec a=\vec a $$
なので、$(s,t)=(1,0)$ でも $(0,1)$ でも $(3,-2)$ でも同じ点 $A$ を表す。thm-pvd-line の「$s$、$t$ はただ 1 通りに決まる」が崩れる。prf-pvd-line の段 3 では $\vec b-\vec a\ne\vec 0$ を使って $t-t'=0$ を導いていたが、$A=B$ では $\vec b-\vec a=\vec 0$ なので、この議論ができない。そもそも $A=B$ では「直線 $AB$」が 1 本に決まらない。

反例:比が 1:1 の外分点はない

$m=n$ のとき、thm-pvd-division の 2 の式 $\frac{-n\vec a+m\vec b}{m-n}$ は分母が $0$ で、意味をもたない。図形で見ても、$AP=PB$ となる点 $P$ は直線 $AB$ 上で線分の外にはない。$P$ が $B$ の先にあれば $AP=AB+BP>BP$ であり、$P$ が $A$ の手前にあれば $PB=PA+AB>PA$ だからである。
比を $1:1$ に近づけると、外分点は遠くへ離れていく。$A(1,4)$、$B(7,1)$ で計算すると次のとおりである。

  1. $2:1$ に外分:$\frac{-(1,4)+2(7,1)}{1}=(13,-2)$(ex-pvd-division の $Q$)。
  2. $3:2$ に外分:$\frac{-2(1,4)+3(7,1)}{1}=(19,-5)$。$A$ からの距離は $|(18,-9)|=9\sqrt5$、$B$ からの距離は $|(-12,6)|=6\sqrt5$ で、比は $3:2$ である。
  3. $11:10$ に外分:$\frac{-10(1,4)+11(7,1)}{1}=(67,-29)$。
    比が $1$ に近づくほど、点は直線 $AB$ に沿って $B$ の先の遠くへ行く。比がちょうど $1:1$ になると、行き先の点はない。

高校数学で解く・大学数学で見る:点のアフィン結合

ここまでは、基準の点 $O$ を 1 つ決めて、点を位置ベクトルで表して計算してきた。これが高校数学での解き方である。大学数学では、はじめから基準の点を決めずに「点」と「ベクトル」を別のものとして扱う。点と点の差はベクトルであり($\overrightarrow{AB}$)、点にベクトルを足すと点になる($A$ から $\overrightarrow{AB}$ だけ進むと $B$)。このように考えた点の集まりを アフィン空間 という。

高校数学で解く大学数学で見る
点の表し方基準の点 $O$ を決めて位置ベクトル $\vec p$基準の点を決めない
$\overrightarrow{AB}$$\vec b-\vec a$(lem-pvd-difference)点 $B$ と点 $A$ の差
内分点・重心位置ベクトルの公式(thm-pvd-division、cor-pvd-centroid)係数の和が $1$ の結合(def-pvd-affine)
係数の和が $1$計算で確かめる性質(thm-pvd-origin)点どうしの結合が意味をもつための条件
直線 $AB$$\vec p=s\vec a+t\vec b$、$s+t=1$(thm-pvd-line)2 点の結合の全体

thm-pvd-origin は、点どうしに係数を掛けて足す式のうち、基準の点によらずに点を 1 つ決めるのは係数の和が $1$ のものだけだ、と言っている。そこで、次のように定める。

点のアフィン結合

点 $A_1,\dots,A_k$ と、和が $1$ の実数 $s_1,\dots,s_k$($s_1+\dots+s_k=1$)をとる。基準の点 $O$ を 1 つ決めて
$$ \overrightarrow{OP}=s_1\overrightarrow{OA_1}+\dots+s_k\overrightarrow{OA_k} $$
で定まる点 $P$ は、thm-pvd-origin により $O$ の選び方によらない。この点 $P$ を、点 $A_1,\dots,A_k$ の係数 $s_1,\dots,s_k$ による アフィン結合 といい、
$$ P=s_1A_1+\dots+s_kA_k $$
と書く。この名前と定義は BV04 の §2.1.2(p. 21)にある。

アフィン結合で点を表す

$A(1,4)$、$B(7,1)$、$C(4,7)$ とする。

  1. 中点 $\frac12A+\frac12B$ と重心 $\frac13A+\frac13B+\frac13C$ は、係数の和がそれぞれ $1$ のアフィン結合である。重心は ex-pvd-centroid のとおり $(4,4)$ である。
  2. $2A-B$ は係数の和が $2+(-1)=1$ なので、点を表す。$O$ を原点とすると $2(1,4)-(7,1)=(-5,7)$ である。これは ex-pvd-division の 3 の点 $R$($AB$ を $1:2$ に外分する点)と同じである。実際、thm-pvd-division の 2 で $m=1$、$n=2$ とすると $\frac{-2\vec a+\vec b}{-1}=2\vec a-\vec b$ である。$A$ は $B$ と $R$ の中点になっている。
  3. $D=A-B+C$ は係数の和が $1-1+1=1$ なので、点を表す。$O$ を原点とすると $D=(1-7+4,\ 4-1+7)=(-2,10)$ である。$\overrightarrow{AB}=(6,-3)$、$\overrightarrow{DC}=(4-(-2),\ 7-10)=(6,-3)$ で、$\overrightarrow{AB}=\overrightarrow{DC}$ なので、$ABCD$ は平行四辺形である。

係数の和が $1$ でない結合は点を表さない(ex-pvd-origin の 2)。ただし、係数の和が $0$ の結合は、点ではなくベクトルを表す。

係数の和が 0 ならベクトルとして原点によらない

点 $A_1,\dots,A_k$ と実数 $s_1,\dots,s_k$ が $s_1+\dots+s_k=0$ を満たすとする。このとき、ベクトル $s_1\overrightarrow{OA_1}+\dots+s_k\overrightarrow{OA_k}$ は基準の点 $O$ の選び方によらない。

基準の点を替えて比べる

方針:prf-pvd-origin の段 1 と同じ計算をする。
段 1(書き直す)。別の基準の点 $O'$ をとる。$\overrightarrow{O'A_i}=\overrightarrow{O'O}+\overrightarrow{OA_i}$ なので
$$ \sum_{i=1}^k s_i\overrightarrow{O'A_i}=\Bigl(\sum_{i=1}^k s_i\Bigr)\overrightarrow{O'O}+\sum_{i=1}^k s_i\overrightarrow{OA_i} $$
である。
段 2(和が $0$ を使う)。仮定より $\sum s_i=0$ なので、右辺の第 1 項は $0\cdot\overrightarrow{O'O}=\vec 0$ である。よって $\sum s_i\overrightarrow{O'A_i}=\sum s_i\overrightarrow{OA_i}$ である。$\square$

係数の和が 0 の結合

$A(1,4)$、$B(7,1)$、$C(4,7)$ とし、基準の点を $O(0,0)$ と $O'(2,5)$ で比べる。

  1. $B-A$(係数 $-1$、$1$):ex-pvd-difference で見たとおり、どちらの基準でも $(6,-3)$ で、これは $\overrightarrow{AB}$ である。
  2. $A-2B+C$(係数 $1$、$-2$、$1$):$O$ からは $(1,4)-2(7,1)+(4,7)=(-9,9)$ である。$O'$ からは $\overrightarrow{O'A}=(-1,-1)$、$\overrightarrow{O'B}=(5,-4)$、$\overrightarrow{O'C}=(2,2)$ なので、$(-1,-1)-2(5,-4)+(2,2)=(-9,9)$ である。同じベクトルになる。このベクトルは $\overrightarrow{BA}+\overrightarrow{BC}$ に等しい。
三角形に対する座標:重心座標

$A$、$B$、$C$ が一直線上にないとき、$\overrightarrow{AB}$ と $\overrightarrow{AC}$ は平行でない。prop-pvd-decomp により、平面上のどの点 $P$ についても $\overrightarrow{AP}=\beta\,\overrightarrow{AB}+\gamma\,\overrightarrow{AC}$ となる実数 $\beta$、$\gamma$ がただ 1 通りに決まる。$\alpha=1-\beta-\gamma$ とおくと、これは $P=\alpha A+\beta B+\gamma C$($\alpha+\beta+\gamma=1$)というアフィン結合の形である。この $(\alpha,\beta,\gamma)$ を三角形 $ABC$ に関する $P$ の 重心座標 という。重心 $G$ の重心座標は $\left(\frac13,\frac13,\frac13\right)$ である。
ex-pvd-intersection の点 $X$ は $\overrightarrow{OX}=\frac12\vec a+\frac14\vec b$ だったので、三角形 $OAB$ に関する重心座標は $\left(\frac14,\frac12,\frac14\right)$、つまり $X=\frac14O+\frac12A+\frac14B$ である。重心座標が面積の比で表せることと、3 本の線が 1 点で交わる条件への応用は Cevaの定理(高校数学) で扱う。

アフィン結合で見ると何がよいか
  1. 公式の形の理由が分かる。内分点・外分点・重心の公式で係数の和がいつも $1$ になるのは、偶然ではない。基準の点によらない点を表す式は、係数の和が $1$ のものしかないからである(thm-pvd-origin)。ある点の位置ベクトルを他の点の位置ベクトルで表した式を、$O$ の位置を使わずに導いたなら(つまり $O$ がどこにあっても成り立つ式なら)、係数の和は $1$ になる。そうならなければ、計算を間違えている。特定の $O$ では、係数の和が $1$ でない式がたまたま成り立つことはある(たとえば $O$ を線分 $AB$ の中点にとると $\vec a+\vec b=\vec 0$)。ただし $O$ が図形の頂点のときは、$\overrightarrow{OO}=\vec 0$ の項が書かれていないので、残りの係数の和は $1$ にならなくてよい。たとえば ex-pvd-intersection の $\overrightarrow{OX}=\frac12\vec a+\frac14\vec b$ では係数の和が $\frac34$ だが、省かれた $O$ の係数 $\frac14$ を足すと $1$ になる(rem-pvd-barycentric)。
  2. 直線がアフィン結合の全体として書ける。thm-pvd-line は、直線 $AB$ が 2 点 $A$、$B$ のアフィン結合の全体であり、そのうち係数が $0$ 以上のものの全体が線分 $AB$ であることを述べている。大学の教科書でも、直線と線分をこの形で表すところから始める(BV04 の §2.1.1、p. 21)。同じように、同じ直線上にない 3 点のアフィン結合の全体は平面になる(rem-pvd-barycentric)。大学数学では、2 点を通る直線をいつも含む集合を アフィン集合 とよび、それは点を 1 つ決めてずらすと原点を通る直線や平面(ベクトル空間 の部分空間)になる(BV04 の §2.1.2、p. 21–22)。
  3. 図形の性質の分類になる。平行移動や、1 次変換と平行移動を組み合わせた アフィン変換 は、アフィン結合を保つ。そのため、内分の比・中点・重心・平行といった、アフィン結合で書ける性質は、アフィン変換で移しても変わらない。一方、長さや角はアフィン変換で変わることがあり、それらを扱うには内積(ベクトルの内積(高校数学))を使う。

さらに先へ

  • 空間では、一直線上にない 3 点 $A$、$B$、$C$ について、点 $P$ が平面 $ABC$ 上にある条件が $\vec p=s\vec a+t\vec b+u\vec c$、$s+t+u=1$ になる($A$、$B$、$C$ が一直線上にあると、この形で表せるのは直線上の点だけになる)。そのとき係数がただ 1 通りに決まるための条件が 1 次独立で、空間ベクトルと1次独立 で扱う。
  • アフィン結合の係数に「すべて $0$ 以上」を加えたものを凸結合という。2 点の凸結合の全体は線分、一直線上にない 3 点の凸結合の全体は三角形の周と内部になる(thm-pvd-line の 2 はその最初の場合)。これは 点の存在範囲と凸結合 で扱い、大学では 凸集合 につながる。
  • 3 本の線が 1 点で交わる条件(Cevaの定理(高校数学))と、3 点が一直線上にある条件(Menelausの定理(高校数学))は、どちらも重心座標で見通しよく書ける。

関連項目

参考文献

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