Pascalの定理(Pascal's theorem)とは、円に内接する六角形 $ABCDEF$(頂点の順は任意で、辺が交差してもよい)の 3 組の対辺の直線の交点 $AB\cap DE$、$BC\cap EF$、$CD\cap FA$ が、どれも存在すれば一直線上にあるという定理である。この直線を Pascal の直線という。高校数学では、直線 $AB$、$CD$、$EF$ が作る三角形に Menelaus の定理を 3 回使い、方べきの定理で比をまとめて示せる。楕円・放物線・双曲線に内接する六角形でも成り立つ。大学数学では、3 辺ずつの直線の積 $L_1$、$L_2$ を組み合わせた 3 次式 $L_1+\lambda L_2$ が円の式と 1 次式の積になることとして理解され、Cayley–Bacharach の定理や楕円曲線の群法則につながる。
前提知識: Menelausの定理(高校数学), 方べきの定理(高校数学), 円の方程式, 剰余の定理と因数定理
円周上に 6 つの点 $A,B,C,D,E,F$ をとり、この順に結んで六角形 $ABCDEF$ を作る。六角形の辺のうち、向かい合う 2 辺(対辺)は $AB$ と $DE$、$BC$ と $EF$、$CD$ と $FA$ の 3 組である。対辺を延ばして交点をとると、交点があるとき、3 つの交点は一直線上に並ぶ。これが Pascalの定理 で、その直線を Pascal の直線 という。Blaise Pascal は 16 歳のとき(1639 年)にこの定理を含む紙を Mersenne の会合に示し、翌 1640 年に『円錐曲線試論』として出版した(OR96)。
まず座標で確かめる。円 $x^2+y^2=25$ の上には、$(5,0)$、$(4,3)$、$(3,4)$、$(0,5)$ のように座標が整数の点が 12 個ある($3^2+4^2=5^2$。ピタゴラス数と円の有理点)。
円 $x^2+y^2=25$ の上の $A=(5,0)$、$B=(4,3)$、$C=(3,4)$、$D=(-5,0)$、$E=(3,-4)$、$F=(4,-3)$ をとる。
(1) 直線 $AB$ は傾き $\dfrac{3-0}{4-5}=-3$ で $y=-3x+15$、直線 $DE$ は傾き $\dfrac{-4-0}{3+5}=-\dfrac12$ で $y=-\dfrac12(x+5)$ である。$-3x+15=-\dfrac12x-\dfrac52$ より $\dfrac52x=\dfrac{35}2$、$x=7$、$y=-6$ で、$P=(7,-6)$ である。
(2) 直線 $BC$ は $x+y=7$、直線 $EF$ は $(3,-4)$ と $(4,-3)$ を通るので $y=x-7$ である。連立すると $x=7$、$y=0$ で、$Q=(7,0)$ である。
(3) 直線 $CD$ は傾き $\dfrac{4-0}{3+5}=\dfrac12$ で $y=\dfrac12(x+5)$、直線 $FA$ は傾き $\dfrac{-3-0}{4-5}=3$ で $y=3x-15$ である。$\dfrac12x+\dfrac52=3x-15$ より $x=7$、$y=6$ で、$R=(7,6)$ である。
3 つの交点はどれも直線 $x=7$ の上にある。この六角形は $x$ 軸について対称なので、$P$ と $R$ が対称な位置に来るのは自然だが、$Q$ まで同じ直線に乗るのは偶然ではない。
円 $x^2+y^2=25$ の上の $A=(5,0)$、$B=(4,3)$、$C=(3,4)$、$D=(0,5)$、$E=(-3,4)$、$F=(-3,-4)$ をとる。
(1) 直線 $AB$ は $y=-3x+15$、直線 $DE$ は傾き $\dfrac{4-5}{-3-0}=\dfrac13$ で $y=\dfrac13x+5$ である。$-3x+15=\dfrac13x+5$ より $\dfrac{10}3x=10$、$x=3$、$y=6$ で、$P=(3,6)$ である。
(2) 直線 $BC$ は $x+y=7$、直線 $EF$ は $x=-3$ なので、$Q=(-3,10)$ である。
(3) 直線 $CD$ は傾き $\dfrac{5-4}{0-3}=-\dfrac13$ で $y=-\dfrac13x+5$、直線 $FA$ は傾き $\dfrac{0+4}{5+3}=\dfrac12$ で $y=\dfrac12x-\dfrac52$ である。$-\dfrac13x+5=\dfrac12x-\dfrac52$ より $\dfrac56x=\dfrac{15}2$、$x=9$、$y=2$ で、$R=(9,2)$ である。
(4) 直線 $PQ$ の傾きは $\dfrac{10-6}{-3-3}=-\dfrac23$ で、方程式は $2x+3y=24$ である。$R$ で $2\cdot9+3\cdot2=24$ となり、$R$ もこの直線の上にある。
円 x² + y² = 25 に内接する六角形 ABCDEF。対辺 AB と DE(青の点線)、BC と EF(赤)、CD と FA(紫)を延ばした交点 P(3, 6)、Q(−3, 10)、R(9, 2) が直線 2x + 3y = 24(緑)の上に並ぶ
この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 高校の計算・定理 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 2 直線の交点を連立方程式で求める | 対辺の交点 $P,Q,R$ | 射影平面の交点 |
| 方べきの定理 $PA\cdot PB=PC\cdot PD$ | 比の積を方べきの比で書く | 円に付随する 2 次式の値 |
| Menelaus の定理 | 3 回使って掛ける | — |
| 楕円は円を 1 方向に縮めた図形 | 楕円でも成り立つ | 2 次曲線はどれも射影変換で円に移る |
| 3 本の直線の方程式の積 | $L_1+\lambda L_2=(\text{円})\times(\text{直線})$ | 3 次曲線、Cayley–Bacharach の定理 |
円周上の相異なる 6 点 $A,B,C,D,E,F$ を、この順に線分で結んだ図形を、円に内接する六角形 $ABCDEF$ という。頂点は円周上をどの順に並んでいてもよい(辺が交差してもよい)。辺 $AB$ と $DE$、$BC$ と $EF$、$CD$ と $FA$ を 対辺 という。
円に内接する六角形 $ABCDEF$ で、3 組の対辺の直線がそれぞれ交わるとし、交点を
$$
P=AB\cap DE,\qquad Q=BC\cap EF,\qquad R=CD\cap FA
$$
とする。このとき $P,Q,R$ は一直線上にある。
定義では、辺が交差する六角形も許した。そのような六角形でも定理は成り立つ。
ex-pas-second と同じ 6 点を、$A=(5,0)$、$B=(4,3)$、$C=(-3,-4)$、$D=(0,5)$、$E=(-3,4)$、$F=(3,4)$ の順に結ぶ(辺が交差する六角形になる)。
(1) 直線 $AB$ は $y=-3x+15$、直線 $DE$ は $y=\dfrac13x+5$ で、ex-pas-second と同じく $P=(3,6)$ である。
(2) 直線 $BC$ は傾き $\dfrac{-4-3}{-3-4}=1$ で $y=x-1$、直線 $EF$ は $y=4$ なので、$Q=(5,4)$ である。
(3) 直線 $CD$ は傾き $\dfrac{5+4}{0+3}=3$ で $y=3x+5$、直線 $FA$ は傾き $\dfrac{0-4}{5-3}=-2$ で $y=-2x+10$ である。$3x+5=-2x+10$ より $x=1$、$y=8$ で、$R=(1,8)$ である。
$3+6=9$、$5+4=9$、$1+8=9$ なので、3 点は直線 $x+y=9$ の上にある。
左は図 1 と同じ 6 点を別の順に結んだ(辺が交差する)六角形で、交点 P, Q, R は直線 x + y = 9 の上に並ぶ。右は図 1 の六角形を縦に 3/5 倍した、楕円 x²/25 + y²/9 = 1 に内接する六角形で、やはり交点は一直線上に並ぶ
異なる 2 点 $X,Y$ と直線 $XY$ の上の点 $Z\ne Y$ について、$\overrightarrow{XZ}=t\,\overrightarrow{ZY}$ となる実数 $t$ を $\dfrac{XZ}{ZY}$ と書き、符号つきの比 という。$Z$ が線分 $XY$ の内部にあれば正、外部にあれば負である。
三角形 $XYZ$ について、点 $K,L,M$ がそれぞれ直線 $XY$、$YZ$、$ZX$ の上にあり、どれも三角形の頂点ではないとする。$K,L,M$ が一直線上にあることと
$$
\frac{XK}{KY}\cdot\frac{YL}{LZ}\cdot\frac{ZM}{MX}=-1
$$
は同値である。
Menelaus の定理は、長さの比の形も、符号つきの形とその逆も、Menelausの定理(高校数学) で証明している(定理「符号つきの比による Menelaus の定理」と「符号つきの比による Menelaus の定理の逆」)。あちらでは上線を付けて $\dfrac{\overline{XZ}}{\overline{ZY}}$ と書くが、この記事では上線を省く。この記事ではその結果を使う。あちらの定理は「横断線」(どの頂点も通らず、どの辺にも平行でない直線)について述べているが、thm-pas-menelaus の仮定のもとで $K,L,M$ を通る直線は自動的に横断線である。実際、この直線が頂点 $X$ を通れば、$X$ と $K$ を通るので直線 $XY$ に一致し、$L$ が直線 $XY$ と $YZ$ の共有点 $Y$ になって仮定に反する($Y$、$Z$ でも同じ)。また、この直線は直線 $XY$ と $K$ で交わり、$XY$ そのものではないので $XY$ に平行でない($YZ$、$ZX$ でも同じ)。
点 $X$ の、中心 $O$、半径 $r$ の円 $\Gamma$ に関する 方べき を $\operatorname{pow}(X)=OX^2-r^2$ と書く。$X$ を通る直線が $\Gamma$ と $A,B$ で交わるとき、内積について $\overrightarrow{XA}\cdot\overrightarrow{XB}=\operatorname{pow}(X)$ が成り立つ(方べきの定理(高校数学))。この形から、次の補題が出る。
円 $\Gamma$ と直線 $\ell$ が 2 点 $A,B$ で交わるとする。$\ell$ の上の異なる 2 点 $X,Y$ がどちらも $\Gamma$ の上にないとき
$$
\frac{XA}{AY}\cdot\frac{XB}{BY}=\frac{\operatorname{pow}(X)}{\operatorname{pow}(Y)}
$$
である。
方針:$\ell$ の上に座標を入れて、比と内積を座標の差で表す。
段 1(座標)。$\ell$ の向きの長さ $1$ のベクトルを $\boldsymbol u$ とし、$\ell$ の上の点を $M+s\boldsymbol u$($M$ は $\ell$ の上の 1 点)と書く。$A,B,X,Y$ の座標 $s$ をそれぞれ $a,b,x,y$ とする。$X,Y$ は $\Gamma$ の上にないので、$x,y$ は $a,b$ と異なる。
段 2(比)。$\overrightarrow{XA}=(a-x)\boldsymbol u$、$\overrightarrow{AY}=(y-a)\boldsymbol u$ なので $\dfrac{XA}{AY}=\dfrac{a-x}{y-a}$、同じく $\dfrac{XB}{BY}=\dfrac{b-x}{y-b}$ である。よって
$$
\frac{XA}{AY}\cdot\frac{XB}{BY}=\frac{(a-x)(b-x)}{(y-a)(y-b)}=\frac{(a-x)(b-x)}{(a-y)(b-y)}
$$
である(分母の 2 つの因数の符号を両方変えたので、値は同じ)。
段 3(方べき)。$\overrightarrow{XA}\cdot\overrightarrow{XB}=(a-x)(b-x)|\boldsymbol u|^2=(a-x)(b-x)$ で、これは方べきの定理により $\operatorname{pow}(X)$ である。同じく $(a-y)(b-y)=\overrightarrow{YA}\cdot\overrightarrow{YB}=\operatorname{pow}(Y)$ である。$Y$ は $\Gamma$ の上にないので $\operatorname{pow}(Y)\ne0$ であり、段 2 と合わせて主張を得る。$\square$
3 本の直線 $AB$、$CD$、$EF$ で三角形を作り、その三角形に Menelaus の定理を 3 回使う。
方針:直線 $AB$、$CD$、$EF$ が作る三角形 $XYZ$ に、3 本の直線 $DE$、$BC$、$FA$ をそれぞれ横切る直線として Menelaus の定理を使う。掛け合わせると、6 つの頂点についての比が lem-pas-power により打ち消し合い、$P,Q,R$ についての比だけが残る。ここでは、3 本の直線 $AB$、$CD$、$EF$ がどの 2 本も交わって三角形 $XYZ$ を作り、$P,Q,R$ がその頂点と一致しない場合(一般の場合)を示す。残りの場合も含む証明は prf-pas-cubic で与える。
段 1(三角形 $XYZ$)。$X=EF\cap AB$、$Y=AB\cap CD$、$Z=CD\cap EF$ とする。直線 $XY$ は $AB$、直線 $YZ$ は $CD$、直線 $ZX$ は $EF$ である。$X$ が円の上にあるとすると、直線 $AB$ と円の共有点は $A,B$ だけなので $X$ は $A$ か $B$、同じく $X$ は $E$ か $F$ となるが、6 頂点は相異なるので矛盾する。よって $X,Y,Z$ は円の上になく、方べきはどれも $0$ でない。
段 2(Menelaus の定理を 3 回)。直線 $DE$ は、$XY$ の上の点 $P$、$YZ$ の上の点 $D$、$ZX$ の上の点 $E$ を通る。$D,E$ は円の上にあるので三角形の頂点ではない。直線 $BC$ は $XY$ 上の $B$、$YZ$ 上の $C$、$ZX$ 上の $Q$ を、直線 $FA$ は $XY$ 上の $A$、$YZ$ 上の $R$、$ZX$ 上の $F$ を通る。thm-pas-menelaus により
$$
\frac{XP}{PY}\cdot\frac{YD}{DZ}\cdot\frac{ZE}{EX}=-1,\qquad
\frac{XB}{BY}\cdot\frac{YC}{CZ}\cdot\frac{ZQ}{QX}=-1,\qquad
\frac{XA}{AY}\cdot\frac{YR}{RZ}\cdot\frac{ZF}{FX}=-1
$$
である。
段 3(頂点の比をまとめる)。lem-pas-power を直線 $AB$(点 $X,Y$)、直線 $CD$(点 $Y,Z$)、直線 $EF$(点 $Z,X$)に使うと
$$
\frac{XA}{AY}\cdot\frac{XB}{BY}=\frac{\operatorname{pow}(X)}{\operatorname{pow}(Y)},\qquad
\frac{YC}{CZ}\cdot\frac{YD}{DZ}=\frac{\operatorname{pow}(Y)}{\operatorname{pow}(Z)},\qquad
\frac{ZE}{EX}\cdot\frac{ZF}{FX}=\frac{\operatorname{pow}(Z)}{\operatorname{pow}(X)}
$$
である。3 つを掛けると $1$ になる。
段 4(掛け合わせる)。段 2 の 3 つの式を掛けると、左辺には段 3 の 6 つの比がすべて現れ、それらの積は $1$ である。残るのは
$$
\frac{XP}{PY}\cdot\frac{YR}{RZ}\cdot\frac{ZQ}{QX}=(-1)^3=-1
$$
である。$P$ は直線 $XY$、$R$ は直線 $YZ$、$Q$ は直線 $ZX$ の上にあり、どれも頂点ではないので、thm-pas-menelaus の逆により $P,R,Q$ は一直線上にある。$\square$
ex-pas-second の六角形で、直線 $AB$:$3x+y=15$、$CD$:$x+3y=15$、$EF$:$x=-3$ から、$X=(-3,24)$、$Y=\left(\dfrac{15}4,\dfrac{15}4\right)$、$Z=(-3,6)$ である。円 $x^2+y^2=25$ に関する方べきは $\operatorname{pow}(X)=9+576-25=560$、$\operatorname{pow}(Y)=\dfrac{450}{16}-25=\dfrac{25}8$、$\operatorname{pow}(Z)=9+36-25=20$ である。
段 2 の比は、直線 $DE$ で $8$、$\dfrac54$、$-\dfrac1{10}$(積 $-1$)、直線 $BC$ で $-28$、$\dfrac18$、$\dfrac27$(積 $-1$)、直線 $FA$ で $-\dfrac{32}5$、$-\dfrac7{16}$、$-\dfrac5{14}$(積 $-1$)である。段 3 は $\left(-\dfrac{32}5\right)(-28)=\dfrac{896}5=\dfrac{560}{25/8}$、$\dfrac18\cdot\dfrac54=\dfrac5{32}=\dfrac{25/8}{20}$、$\left(-\dfrac1{10}\right)\left(-\dfrac5{14}\right)=\dfrac1{28}=\dfrac{20}{560}$ で確かめられる。残る積は $8\cdot\left(-\dfrac7{16}\right)\cdot\dfrac27=-1$ である。
楕円は円を 1 つの方向に縮めた図形なので、定理はそのまま楕円に移る。
楕円 $\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$($a,b>0$)に内接する六角形 $ABCDEF$ でも、3 組の対辺の直線の交点 $P,Q,R$ があれば、それらは一直線上にある。
方針:楕円を円に移す写像が、直線を直線に、交点を交点に移すことを使う。
段 1(写像)。$\varphi(x,y)=\left(x,\dfrac ab y\right)$ とおく。$(x,y)$ が楕円の上にあれば、$\varphi(x,y)=(X,Y)$ は $\dfrac{X^2}{a^2}+\dfrac{Y^2}{a^2}=\dfrac{x^2}{a^2}+\dfrac{y^2}{b^2}=1$ を満たすので、円 $X^2+Y^2=a^2$ の上にある。$\varphi$ は逆の写像 $(X,Y)\mapsto\left(X,\dfrac baY\right)$ をもつ 1 対 1 の対応である。
段 2(直線は直線に移る)。直線 $ux+vy+w=0$ の上の点 $(x,y)$ の像 $(X,Y)=\left(x,\dfrac ab y\right)$ は $uX+\dfrac ba vY+w=0$ を満たす。逆向きも同じなので、$\varphi$ は直線を直線に 1 対 1 に移し、2 直線の交点を像の 2 直線の交点に移す。
段 3(結論)。$\varphi$ で六角形を円に内接する六角形に移すと、対辺の直線の交点は $\varphi(P),\varphi(Q),\varphi(R)$ になる。thm-pas-main によりこれらは一直線上にあり、逆の写像で戻すと $P,Q,R$ も一直線上にある。$\square$
ex-pas-second の 6 点の $y$ 座標を $\dfrac35$ 倍すると、楕円 $\dfrac{x^2}{25}+\dfrac{y^2}9=1$ の上の $A=(5,0)$、$B=\left(4,\dfrac95\right)$、$C=\left(3,\dfrac{12}5\right)$、$D=(0,3)$、$E=\left(-3,\dfrac{12}5\right)$、$F=\left(-3,-\dfrac{12}5\right)$ になる(たとえば $B$ で $\dfrac{16}{25}+\dfrac{81}{25\cdot9}=\dfrac{16}{25}+\dfrac9{25}=1$)。交点は $P=\left(3,\dfrac{18}5\right)$、$Q=(-3,6)$、$R=\left(9,\dfrac65\right)$ で、どれも直線 $2x+5y=24$ の上にある($6+18=24$、$-6+30=24$、$18+6=24$)。これは円の場合の直線 $2x+3y=24$ の $y$ を $\dfrac53y$ に置き換えたものである。
放物線や双曲線は、円を 1 方向に縮めるだけでは得られない。それでも Pascal の定理は成り立つ。次の節の証明は、細部を変えれば放物線・双曲線にも使える(rem-pas-conics)。
直線 $AB$ を表す 1 次式を $\ell_{AB}(x,y)$($\ell_{AB}=0$ が直線 $AB$)のように書き、2 つの 3 次式
$$
L_1:=\ell_{AB}\,\ell_{CD}\,\ell_{EF},\qquad L_2:=\ell_{BC}\,\ell_{DE}\,\ell_{FA}
$$
を考える。$L_1=0$ は「1 つおきの 3 辺」の直線、$L_2=0$ は「残りの 3 辺」の直線を合わせた図形である。どちらも 6 つの頂点で $0$ になる(たとえば $A$ は $AB$ と $FA$ の上にある)。さらに $P=AB\cap DE$ では $\ell_{AB}(P)=0$、$\ell_{DE}(P)=0$ なので $L_1(P)=L_2(P)=0$ であり、$Q,R$ でも同じである。つまり 2 つの図形 $L_1=0$ と $L_2=0$ は、9 つの点 $A,B,C,D,E,F,P,Q,R$ で交わる。
ex-pas-second の六角形では
$$
L_1=(3x+y-15)(x+3y-15)(x+3),\qquad L_2=(x+y-7)(x-3y+15)(x-2y-5)
$$
である。展開すると
$$
L_1=3x^3+10x^2y+3xy^2-51x^2-30xy+9y^2+45x-180y+675,
$$
$$
L_2=x^3-4x^2y+xy^2+6y^3+3x^2+30xy-57y^2-145x+30y+525
$$
で、足すと
$$
L_1+L_2=4x^3+6x^2y+4xy^2+6y^3-48x^2-48y^2-100x-150y+1200=2(2x+3y-24)(x^2+y^2-25)
$$
となる(右辺を展開すると左辺に一致する)。$L_1+L_2=0$ は、円 $x^2+y^2=25$ と Pascal の直線 $2x+3y=24$ を合わせた図形である。9 つの点は $L_1$ と $L_2$ の両方で $0$ になるので $L_1+L_2$ でも $0$ になり、6 つの頂点は円の上に、残りの $P,Q,R$ は直線の上にある。
図 1 の六角形で、青は L₁ = 0(直線 AB, CD, EF)、赤の破線は L₂ = 0(直線 BC, DE, FA)、緑は L₁ + L₂ = 0(円と Pascal の直線 2x + 3y = 24)。9 つの点 A, …, F, P, Q, R は 3 つの図形すべての上にある
この恒等式がいつも作れることを示すと、Pascal の定理の 2 つ目の証明になる。
方針:$L_1+\lambda L_2$ が円の上で恒等的に $0$ になるように $\lambda$ を選び、円の式 $x^2+y^2-r^2$ で割り切れることを示す。商は 1 次式で、$P,Q,R$ はその 1 次式が表す直線の上にある。この証明では、prf-pas-menelaus で仮定した「一般の場合」を仮定しない。
段 1(円を 1 つの文字で表す)。円の中心を原点、半径を $r$ とし、必要なら原点のまわりに回転して、どの頂点も点 $(-r,0)$ でないようにする。円の上の $(-r,0)$ 以外の点は
$$
x=\frac{r(1-t^2)}{1+t^2},\qquad y=\frac{2rt}{1+t^2}\qquad(t\text{ は実数})
$$
と表せる。逆に $t=\dfrac{y}{x+r}$ で $t$ に戻せるので、表し方はただ 1 通りである(ピタゴラス数と円の有理点 では $t$ が有理数の場合、つまり有理点を扱っている。$t$ が実数でも同じ計算である)。6 つの頂点に対応する $t$ の値を $t_1,\dots,t_6$ とすると、これらは相異なる。
段 2(3 次式を $t$ の多項式にする)。$x,y$ の 3 次以下の多項式 $G(x,y)$ に対し、$g(t):=(1+t^2)^3G(x,y)$ は $t$ の 6 次以下の多項式である。実際、単項式 $x^iy^j$($i+j\le3$)は $(1+t^2)^3x^iy^j=r^{i+j}(1-t^2)^i(2t)^j(1+t^2)^{3-i-j}$ となり、その次数は $2i+j+2(3-i-j)=6-j\le6$ である。
段 3($\lambda$ を選ぶ)。$L_1$、$L_2$ から段 2 で作った多項式を $g_1,g_2$ とする。どちらも $t_1,\dots,t_6$ で $0$ になり、次数は 6 以下なので、因数定理により $g_k(t)=c_k(t-t_1)\cdots(t-t_6)$($c_k$ は定数)と書ける(剰余の定理と因数定理)。$c_2=0$ とすると $g_2$ は恒等的に $0$ で、$L_2$ は円の上の $(-r,0)$ 以外のすべての点で $0$ になる。しかし $L_2=0$ は 3 本の直線で、各直線と円の共有点は 2 個以下なので、$L_2$ が $0$ になる円の点は 6 個以下である。よって $c_2\ne0$ であり、$\lambda:=-\dfrac{c_1}{c_2}$、$G:=L_1+\lambda L_2$ とおくと、$G$ から作った多項式は $g_1+\lambda g_2=0$ となる。つまり $G$ は、円の上の $(-r,0)$ 以外のすべての点で $0$ になる。
段 4(円の式で割り切れる)。$G$ の中の $y^2$ を $(x^2+y^2-r^2)-x^2+r^2$ で置き換えることを繰り返すと
$$
G(x,y)=(x^2+y^2-r^2)H(x,y)+a(x)+y\,b(x)
$$
($H$ は 1 次以下の多項式、$a,b$ は $x$ だけの多項式)と書ける。$-r< x< r$ を満たす $x$ をとると、2 点 $\left(x,\pm\sqrt{r^2-x^2}\right)$ は円の上にあって $(-r,0)$ でないので、段 3 により $a(x)+\sqrt{r^2-x^2}\,b(x)=0$ と $a(x)-\sqrt{r^2-x^2}\,b(x)=0$ が成り立つ。足して引くと $a(x)=0$、$b(x)=0$ である($\sqrt{r^2-x^2}>0$)。多項式 $a,b$ は無限に多くの $x$ で $0$ になるので、どちらも $0$ である。よって $G=(x^2+y^2-r^2)H$ である。
段 5($H$ は $0$ でない)。$G$ が $0$ だとすると $L_1=-\lambda L_2$ で、$L_1=0$ と $L_2=0$ は同じ図形になる。すると直線 $AB$ は 3 本の直線 $BC$、$DE$、$FA$ の和に含まれる。直線 $AB$ がこの 3 本のどれとも異なれば、それぞれと 1 点以下でしか交わらないので、直線 $AB$ の点のうち 3 個以下しか含まれず、矛盾する。よって直線 $AB$ は $BC$、$DE$、$FA$ のどれかに一致するが、そうなると円の上の 3 点以上($A,B,C$ など)が 1 本の直線の上にあることになり、直線と円の共有点が 2 個以下であることに反する。したがって $G\ne0$、つまり $H\ne0$ である。
段 6($P,Q,R$ は直線 $H=0$ の上)。$L_1(P)=L_2(P)=0$ なので $G(P)=0$ である。$P$ は円の上にない(円の上にあれば、直線 $AB$ の上なので $A$ か $B$、直線 $DE$ の上なので $D$ か $E$ となり、頂点が相異なることに反する)。よって $x^2+y^2-r^2$ は $P$ で $0$ でなく、$H(P)=0$ である。同じく $H(Q)=H(R)=0$ である。$H$ が $0$ でない定数なら $H(P)=0$ にならないので、$H$ はちょうど 1 次の式であり、$H=0$ は直線である。$P,Q,R$ はこの直線の上にある。$\square$
ex-pas-identity では $\lambda=1$、$H=2(2x+3y-24)$ である($\ell$ の符号と定数倍の選び方で $\lambda$ の値は変わる)。
prf-pas-cubic で円について使ったのは、「円の点を 1 つの文字 $t$ で表すと、3 次式が $t$ の 6 次以下の多項式になる」ことと、「円の上で $0$ になる式は円の式で割り切れる」ことだけである。放物線 $y=x^2$ なら点 $(t,t^2)$ で、$G(t,t^2)$ は $t$ の 6 次以下の多項式になり、$G$ の $y$ を $(y-x^2)+x^2$ で置き換えれば $G=(y-x^2)H+a(x)$ の形になる。双曲線 $xy=1$ なら点 $\left(t,\dfrac1t\right)$($t\ne0$)で、$t^3G\left(t,\dfrac1t\right)$ が 6 次以下の多項式になり、$G$ の $xy$ を $(xy-1)+1$ で置き換えれば $G=(xy-1)H+a(x)+b(y)$ の形になる($a,b$ は 1 文字だけの多項式)。どちらも prf-pas-cubic と同じ筋道で Pascal の定理が示せるが、割り算の形が変わるので段 4 などの細部は変わる。ここでは細部は省く。一般の放物線・双曲線は、平行移動・回転・座標軸の方向の拡大(縮小)を組み合わせて $y=x^2$、$xy=1$ に移せる。これらの写像は直線を直線に、交点を交点に移すので、prop-pas-ellipse と同じ論法で、一般の放物線・双曲線でも定理が成り立つ(移し方の細部も省く)。たとえば放物線 $y=x^2$ の上の $A=(-3,9)$、$B=(-2,4)$、$C=(-1,1)$、$D=(0,0)$、$E=(1,1)$、$F=(3,9)$ では、$P=AB\cap DE=(-1,-1)$、$Q=BC\cap EF=\left(\dfrac17,-\dfrac{17}7\right)$、$R=CD\cap FA=(-9,9)$ で、3 点は直線 $5x+4y+9=0$ の上にある($-5-4+9=0$、$\dfrac57-\dfrac{68}7+\dfrac{63}7=0$、$-45+36+9=0$)。
ここから先は大学で学ぶ内容の紹介である。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 6 点が同じ円(2 次曲線)の上にある | $P,Q,R$ が一直線上にある | ex-pas-off |
| 交点をとる組が対辺である | 3 つの交点が一直線上にある | ex-pas-pairing |
| 対辺が平行でない | 交点 $P,Q,R$ がある | ex-pas-regular |
ex-pas-second の $F=(-3,-4)$ を、円の外の $F'=(-3,-5)$ に替える($9+25=34\ne25$)。$P=AB\cap DE=(3,6)$ は変わらず、直線 $EF'$ も $x=-3$ のままなので $Q=(-3,10)$ も変わらない。直線 $CD$:$y=-\dfrac13x+5$ と直線 $F'A$:$y=\dfrac58(x-5)$ の交点は、$-\dfrac13x+5=\dfrac58x-\dfrac{25}8$ より $\dfrac{23}{24}x=\dfrac{65}8$、$x=\dfrac{195}{23}$、$y=\dfrac{50}{23}$ で、$R'=\left(\dfrac{195}{23},\dfrac{50}{23}\right)$ である。直線 $PQ$ の傾きは $-\dfrac23$、直線 $PR'$ の傾きは $\dfrac{50/23-6}{195/23-3}=\dfrac{-88}{126}=-\dfrac{44}{63}$ で異なるので、$P,Q,R'$ は一直線上にない。
ex-pas-second で、対辺ではなく「1 つおきの辺」どうし、$AB$ と $CD$、$CD$ と $EF$、$EF$ と $AB$ の交点をとると、ex-pas-menelaus の $Y=\left(\dfrac{15}4,\dfrac{15}4\right)$、$Z=(-3,6)$、$X=(-3,24)$ である。$X$ と $Z$ は直線 $x=-3$ の上にあるが、$Y$ はその上にないので、3 点は一直線上にない。これらは三角形 $XYZ$ の頂点であり、定理が主張するのは対辺の組についてだけである。
円 $x^2+y^2=1$ に内接する正六角形 $A=(1,0)$、$B=\left(\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$、$C=\left(-\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$、$D=(-1,0)$、$E=\left(-\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)$、$F=\left(\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)$ では、$\overrightarrow{AB}=\left(-\dfrac12,\dfrac{\sqrt3}2\right)$、$\overrightarrow{DE}=\left(\dfrac12,-\dfrac{\sqrt3}2\right)=-\overrightarrow{AB}$ なので $AB\parallel DE$ である。同じく $BC\parallel EF$(どちらも $x$ 軸に平行)、$CD\parallel FA$ である。交点 $P,Q,R$ はどれも存在せず、定理の仮定を満たさない。平行線は無限遠点で交わると考える射影平面では、3 つの交点はすべて「無限遠直線」の上にあり、この場合も定理は成り立つと読める(Desarguesの定理 の記事の射影平面の説明を参照)。
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