導関数の中間値の性質

同義語:Darbouxの定理(高校数学)intermediate value property of derivatives

概要

導関数の中間値の性質(intermediate value property of derivatives)とは、閉区間 $[a,b]$ で微分可能(端では片側の微分係数)な関数 $f$ について、$f'(a)$ と $f'(b)$ の間の任意の数 $y$ に対し $f'(c)=y$ となる $c$($a<c<b$)が存在するという定理(Darboux の定理)である。$f'$ の連続性は仮定しない。$f(x)-yx$ が内部で最小値をとり、そこで微分係数が $0$ になることから示される。$x^2\sin\frac{1}{x}$ のように導関数が連続でない例でも成り立つ。系として、区間で微分可能な関数の導関数の片側極限は、存在すればその点の微分係数に等しく、符号関数のような跳びをもつ関数は導関数にならない。また、区間で導関数が $0$ にならなければ関数は増加か減少である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 最大値・最小値の定理(高校数学), 関数の増減と極値, 関数の連続性と中間値の定理(高校数学)

高校での出発点:導関数のグラフは跳ぶか

高校で扱う関数の導関数は、たいてい連続である。連続な関数は、中間値の定理により途中の値をすべてとる(関数の連続性と中間値の定理(高校数学))。では、導関数が連続でないとき、導関数のグラフは値を飛び越えられるだろうか。

導関数の値の動き方
  1. $f(x)=x^3-3x$ の導関数 $f'(x)=3x^2-3$ は連続で、$f'(0)=-3$、$f'(2)=9$ である。$-3$ と $9$ の間の値、たとえば $0$ は $x=1$ で、$2$ は $x=\sqrt{\dfrac53}\approx1.291$ でとる。
  2. $f(x)=\lvert x\rvert$ は、$x<0$ で $f'(x)=-1$、$x>0$ で $f'(x)=1$ で、$-1$ と $1$ の間の値(たとえば $0$)をどこでもとらない。ただし $f$ は $x=0$ で微分できないので、区間 $[-1,1]$ 全体で微分可能な関数の例にはなっていない。
  3. $f(x)=x^2\sin\dfrac1x$($x\ne0$)、$f(0)=0$ は、すべての点で微分可能だが、導関数 $f'$ は $x=0$ で連続でない(ex-dpd-x2sin)。
  1. の $\lvert x\rvert$ の「導関数」は、$0$ で値が $-1$ から $1$ へ跳ぶ。区間全体で微分可能な関数の導関数も、このように跳べるだろうか。この記事の答えは「跳べない」である。
  1. 区間で微分可能な関数の導関数は、連続でなくても途中の値をすべてとる。→ thm-dpd-darboux
  2. 導関数は、左右の極限が存在して値と違うような「跳び」をもたない。→ cor-dpd-no-jump
  3. 導関数が $0$ にならなければ、関数は増加か減少のどちらかである。→ cor-dpd-monotone
    性質連続関数区間で微分可能な関数の導関数
    途中の値をすべてとるとる(中間値の定理)とる(thm-dpd-darboux)
    連続連続連続とは限らない(ex-dpd-x2sin)
    跳びないない(cor-dpd-no-jump)

言葉の準備

中間値の性質

区間 $I$ で定義された関数 $h$ が 中間値の性質 をもつとは、$I$ の 2 点 $a< b$ と、$h(a)$ と $h(b)$ の間の数 $y$($h(a)< y< h(b)$ または $h(a)>y>h(b)$)に対して、必ず $h(c)=y$ となる $c$($a< c< b$)があることをいう。

中間値の性質をもつ関数・もたない関数
  1. 区間で連続な関数は、中間値の定理(関数の連続性と中間値の定理(高校数学) の定理「中間値の定理」)により中間値の性質をもつ。
  2. 符号関数 $\operatorname{sgn}x$($x>0$ で $1$、$x=0$ で $0$、$x<0$ で $-1$)は、区間 $[-1,1]$ で中間値の性質をもたない。$\operatorname{sgn}(-1)=-1$ と $\operatorname{sgn}1=1$ の間の $\dfrac12$ を、どの点でもとらない。

区間 $[a,b]$ の端では、片側からしか近づけないので、微分係数は片側で考える。

閉区間で微分可能

$f$ が閉区間 $[a,b]$ で 微分可能 であるとは、$a< x< b$ の各点で微分可能で、左端 $a$ では右側の微分係数 $f'(a)=\displaystyle\lim_{h\to+0}\frac{f(a+h)-f(a)}h$、右端 $b$ では左側の微分係数 $f'(b)=\displaystyle\lim_{h\to-0}\frac{f(b+h)-f(b)}h$ が存在することをいう。

$f$ が $\mathbb{R}$ 全体で微分可能なら、$[a,b]$ に制限しても微分可能で、端の片側の微分係数はふつうの微分係数に等しい。$[a,b]$ で微分可能な関数は $[a,b]$ で連続である(各点で、平均変化率に $h$ を掛けたものが $0$ に近づくから。微分係数と導関数の定義(高校数学))。

主定理:導関数は途中の値をすべてとる

導関数の中間値の性質(Darboux の定理)

$f$ が閉区間 $[a,b]$ で微分可能で、$y$ が $f'(a)$ と $f'(b)$ の間の数($f'(a)< y< f'(b)$ または $f'(a)>y>f'(b)$)なら、$f'(c)=y$ となる $c$($a< c< b$)がある。

導関数 $f'$ が連続であることは仮定していない。証明の考え方を、簡単な関数で見ておく。

傾き $1$ の点を最小値で見つける

$f(x)=x^2$、$[a,b]=[0,1]$ とすると、$f'(0)=0$、$f'(1)=2$ である。間の値 $y=1$ をとる点を探す。
$g(x)=f(x)-yx=x^2-x$ とおく。$g'(x)=2x-1$ で、$g'(0)=-1<0$、$g'(1)=1>0$ である。左端では $g$ は減りながら始まり、右端では増えながら終わるので、$g$ の最小値は端ではなく内部でとる。実際 $g(x)=\left(x-\dfrac12\right)^2-\dfrac14$ は $x=\dfrac12$ で最小値 $-\dfrac14$ をとり、そこで $g'\left(\dfrac12\right)=0$、すなわち $f'\left(\dfrac12\right)=y=1$ である。

y = x² − x のグラフ。左端 x=0 では傾き −1 で下がり、右端 x=1 では傾き 1 で上がるので、最小値は内部の x=1/2 でとり、そこでの傾きは 0 y = x² − x のグラフ。左端 x=0 では傾き −1 で下がり、右端 x=1 では傾き 1 で上がるので、最小値は内部の x=1/2 でとり、そこでの傾きは 0
図 1 のように、左端で下がり右端で上がる関数は、内部で最小になり、そこで傾きが $0$ になる。この 2 つを一般に示すのが、次の補題と Fermat の定理である。

端での微分係数の符号

$g$ が $[a,b]$ で微分可能とする。
(1) $g'(a)<0$ なら、$g(x)< g(a)$ となる $x$($a< x< b$)がある。
(2) $g'(b)>0$ なら、$g(x)< g(b)$ となる $x$($a< x< b$)がある。

  1. $g'(a)=\displaystyle\lim_{h\to+0}\frac{g(a+h)-g(a)}h<0$ なので、極限の定義で誤差を $\lvert g'(a)\rvert$ にとると、ある $\delta>0$ があって、$0< h<\delta$ のすべての $h$ で
    $$ \frac{g(a+h)-g(a)}h< g'(a)+\lvert g'(a)\rvert=0 $$
    となる。$0< h<\min(\delta,b-a)$ となる $h$ を 1 つとり、$x=a+h$ とすると、$h>0$ なので $g(x)-g(a)<0$ である。
  2. 同じく、ある $\delta>0$ があって、$-\delta< h<0$ で $\dfrac{g(b+h)-g(b)}h>g'(b)-\lvert g'(b)\rvert=0$ となる。$-\min(\delta,b-a)< h<0$ となる $h$ をとり、$x=b+h$ とすると、$h<0$ なので分子は負で、$g(x)-g(b)<0$ である。$\square$

thm-dpd-darboux を示す。
段 1($f'(a)< y< f'(b)$ の場合に帰着する).$f'(a)>y>f'(b)$ のときは、$-f$ を考えると $(-f)'(a)=-f'(a)<-y<-f'(b)=(-f)'(b)$ となる。$-f$ に対して $(-f)'(c)=-y$ となる $c$ が見つかれば $f'(c)=y$ である。よって $f'(a)< y< f'(b)$ の場合を示せばよい。
段 2(補助の関数).$g(x)=f(x)-yx$ とおく。$g$ は $[a,b]$ で微分可能で(微分可能な関数と 1 次式の差)、$g'(x)=f'(x)-y$ である。仮定から
$$ g'(a)=f'(a)-y<0,\qquad g'(b)=f'(b)-y>0 $$
である。
段 3(最小値をとる点がある).$g$ は $[a,b]$ で微分可能なので連続であり、最大値・最小値の定理(最大値・最小値の定理(高校数学) の定理「最大値・最小値の定理」)により、$[a,b]$ のある点 $c$ で最小値をとる。
段 4($c$ は端でない).$g'(a)<0$ なので、lem-dpd-endpoint (1) により $g(x)< g(a)$ となる $x$ があり、$g(a)$ は最小値でない。よって $c\ne a$ である。同じく $g'(b)>0$ と lem-dpd-endpoint (2) により $c\ne b$ である。したがって $a< c< b$ である。
段 5(最小の点で微分係数は $0$).$c$ は開区間 $(a,b)$ の点で、$g$ はそこで最小値、特に広い意味の極小をとり、$c$ で微分可能である。Fermat の定理(関数の増減と極値 の定理「極値の点での微分係数(Fermat の定理)」)により $g'(c)=0$、すなわち $f'(c)=y$ である。$\square$

証明で使ったのは、最大値・最小値の定理と Fermat の定理だけで、$f'$ の連続性はどこにも使っていない。$f'$ が連続なら、$f'$ に中間値の定理を使うだけで同じ結論が出るが、この定理は $f'$ が連続でなくても成り立つ。

定理を使って点の存在を示す

$f(x)=x^3-3x$、$[a,b]=[0,2]$ では、$f'(0)=-3<0<9=f'(2)$ なので、thm-dpd-darboux により $f'(c)=0$ となる $c$($0< c<2$)がある。実際 $f'(x)=3(x-1)(x+1)$ なので $c=1$ である。証明の $g$ は $g(x)=f(x)-0\cdot x=f(x)$ で、$f$ は $[0,2]$ で $x=1$ のとき最小値 $-2$ をとる。

導関数が連続でない例

主定理が本当に「連続でない導関数」に意味をもつことを、具体例で確かめる。

導関数が $0$ で連続でない関数

$f(x)=x^2\sin\dfrac1x$($x\ne0$)、$f(0)=0$ とする。
段 1($x\ne0$ での導関数).積の微分と合成関数の微分により、$f'(x)=2x\sin\dfrac1x+x^2\cos\dfrac1x\cdot\left(-\dfrac1{x^2}\right)=2x\sin\dfrac1x-\cos\dfrac1x$ である。
段 2($x=0$ での微分係数).$\dfrac{f(h)-f(0)}h=h\sin\dfrac1h$ で、$\left\lvert h\sin\dfrac1h\right\rvert\le\lvert h\rvert$ なので、はさみうちにより $h\to0$ で $0$ に近づく。よって $f'(0)=0$ で、$f$ はすべての点で微分可能である。
段 3($f'$ は $0$ で連続でない).自然数 $k$ について、$x=\dfrac1{2k\pi}$ では $\sin\dfrac1x=0$、$\cos\dfrac1x=1$ なので $f'(x)=-1$、$x=\dfrac1{(2k+1)\pi}$ では $\sin\dfrac1x=0$、$\cos\dfrac1x=-1$ なので $f'(x)=1$ である。$k$ を大きくするとどちらの $x$ も $0$ に近づくので、$f'(x)$ は $x\to0$ で極限をもたず(関数の極限の計算)、$f'$ は $0$ で連続でない。

y = x² sin(1/x) のグラフ。y = x² と y = −x² にはさまれて原点で x 軸に接する y = x² sin(1/x) のグラフ。y = x² と y = −x² にはさまれて原点で x 軸に接する
導関数 2x sin(1/x) − cos(1/x) のグラフ。原点に近づくと −1 と 1 の間を激しく振動し、原点での値は 0 導関数 2x sin(1/x) − cos(1/x) のグラフ。原点に近づくと −1 と 1 の間を激しく振動し、原点での値は 0

図 2 の $f$ は原点で滑らかに $x$ 軸に接するが、図 3 の $f'$ は原点の近くで $-1$ と $1$ の間を振動し続け、$x=0$ での値は $0$ である。同じ関数は l'Hôpitalの定理(高校数学) の図にも出てくる。

連続でない導関数も途中の値をとる

ex-dpd-x2sin の $f$ を $[a,b]=\left[0,\dfrac1\pi\right]$ で考える。$f'(0)=0$、$f'\left(\dfrac1\pi\right)=\dfrac2\pi\sin\pi-\cos\pi=1$ である。thm-dpd-darboux により、間の値 $y=\dfrac12$ について $f'(c)=\dfrac12$ となる $c$($0< c<\dfrac1\pi$)がある。数値計算では、そのような $c$ のうち最も大きいものは $c\approx0.26547$ で($\dfrac1\pi\approx0.31831$)、$0$ に近いところにも無数にある($f'$ が $0$ の近くで $-1$ と $1$ の間を振動するため)。

$f'$ は $0$ で連続でないが、thm-dpd-darboux の結論は崩れない。導関数が連続でなくなるのは、この例のような「激しい振動」であって、次の節で示すように「跳び」ではありえない。

系:跳びのない導関数と単調性

導関数は跳ばない

$f$ が区間 $I$ で微分可能で、$c$ は $I$ の点とする。$c$ より右に $I$ の点があり、右側極限 $\displaystyle\lim_{x\to c+0}f'(x)=L$ が存在するなら、$L=f'(c)$ である。左側極限についても同じである。

$L\ne f'(c)$ と仮定して矛盾を導く。$d=\lvert L-f'(c)\rvert>0$ とし、$y=\dfrac{L+f'(c)}2$($L$ と $f'(c)$ のちょうど中間)とおく。$y$ から $L$ までの距離も、$y$ から $f'(c)$ までの距離も $\dfrac d2$ である。
右側極限の定義で誤差を $\dfrac d2$ にとると、ある $\delta>0$ があって、$c< x< c+\delta$ の $I$ の点 $x$ ではすべて $\lvert f'(x)-L\rvert<\dfrac d2$ となる。この範囲の $I$ の点 $b$ を 1 つとる。$\lvert f'(b)-L\rvert<\dfrac d2=\lvert y-L\rvert$ なので、$f'(b)$ は $y$ から見て $L$ と同じ側にあり、$f'(c)$ は反対側にある。すなわち $y$ は $f'(c)$ と $f'(b)$ の間の数である。
thm-dpd-darboux を $[c,b]$ で使うと、$f'(x_0)=y$ となる $x_0$($c< x_0< b$)がある。ところが $c< x_0< b< c+\delta$ なので $\lvert f'(x_0)-L\rvert<\dfrac d2$ のはずで、$\lvert y-L\rvert=\dfrac d2$ と矛盾する。よって $L=f'(c)$ である。左側極限も同じである。$\square$

導関数になれない関数
  1. 符号関数 $\operatorname{sgn}x$ は、区間 $[-1,1]$ で微分可能などの関数の導関数にもならない。もし $f'=\operatorname{sgn}$ なら、$\displaystyle\lim_{x\to+0}f'(x)=1$ なので cor-dpd-no-jump により $f'(0)=1$ となるが、$\operatorname{sgn}0=0$ と矛盾する。thm-dpd-darboux を直接使っても、$f'(-1)=-1$、$f'(1)=1$ の間の $\dfrac12$ をとらないことと矛盾する。
  2. ガウス記号 $[x]$ は、$1$ を内部に含む区間(たとえば $[0,2]$)で微分可能などの関数の導関数にもならない。$\displaystyle\lim_{x\to1-0}[x]=0$ だが $[1]=1$ だからである(cor-dpd-no-jump の左側極限の場合)。
  3. $0$ の右側で導関数に極限があるなら、その値は $f'(0)$ に等しい。たとえば $x\ne0$ で $f'(x)=2x$ となる、$\mathbb R$ で微分可能な $f$ では、cor-dpd-no-jump により $f'(0)=\displaystyle\lim_{x\to+0}2x=0$ でなければならない。
導関数が $0$ にならない関数は単調

$f$ が区間 $I$ で微分可能で、$I$ のすべての点で $f'(x)\ne0$ なら、$I$ 全体で $f'(x)>0$ か、$I$ 全体で $f'(x)<0$ である。したがって $f$ は $I$ で増加するか減少する。

$f'(p)<0< f'(q)$ となる $I$ の 2 点 $p$、$q$ があったとする。$p< q$ なら $[p,q]$ で、$q< p$ なら $[q,p]$ で thm-dpd-darboux を使うと、$0$ は両端の導関数の値の間の数なので、$f'(c)=0$ となる点 $c$ が $I$ にあり、仮定に反する。よって $f'$ の符号は $I$ 全体で同じである。$f'>0$ なら $f$ は $I$ で増加し、$f'<0$ なら減少する(関数の増減と極値 の定理「導関数の符号と増減」)。$\square$

cor-dpd-monotone は、逆関数の微分 で逆関数を考えるときに使える。区間で微分可能で導関数が $0$ にならない関数は、増加か減少のどちらかなので 1 対 1 で、逆関数をもつ。

3 つの性質の関係と反例

区間 $I$ で定義された関数 $h$ について、次の 3 つの性質を比べる。

  • 連続:$I$ のすべての点で連続。
  • 中間値の性質:def-dpd-ivp。
  • 導関数である:$I$ で微分可能なある関数 $F$ があって、$F'=h$。
    仮定結論成り立つか理由・反例
    連続中間値の性質成り立つ中間値の定理
    連続導関数である成り立つ$F(x)=\displaystyle\int_a^xh(t)\,dt$(定積分で表された関数)
    導関数である中間値の性質成り立つthm-dpd-darboux
    導関数である連続成り立たないex-dpd-x2sin
    中間値の性質連続成り立たないex-dpd-cx-sin
    中間値の性質導関数である成り立たないex-dpd-cx-sin の (2)
    2 行目は、連続な関数 $h$ に対して積分で定めた $F$ が $F'=h$ を満たすこと(定積分で表された関数 の定理「積分の上端についての微分」)による。導関数であることは、連続であることより弱く、中間値の性質をもつことより強い。
    次に、thm-dpd-darboux の仮定を外したときに崩れることを並べる。
    外す条件反例成り立たなくなること
    区間のすべての点で微分可能$\lvert x\rvert$($[-1,1]$、$0$ で微分できない)途中の値 $0$ をとる → ex-dpd-start (2)
    定義域が区間$(0,1)\cup(2,3)$ で $0$ と $x$ をつないだ関数途中の値をとる → ex-dpd-cx-domain
    (結論の強め)導関数は連続$x^2\sin\dfrac1x$導関数の連続性 → ex-dpd-x2sin
反例:定義域が区間でない

定義域 $D=\{x\mid 0< x<1\text{ または }2< x<3\}$ の上で、$f(x)=0$($0< x<1$)、$f(x)=x$($2< x<3$)とする。$f$ は $D$ のすべての点で微分可能で、$f'(x)=0$($0< x<1$)、$f'(x)=1$($2< x<3$)である。$f'$ は $0$ と $1$ しかとらず、間の $\dfrac12$ をとらない。thm-dpd-darboux の証明では、最大値・最小値の定理を区間 $[a,b]$ で使ったので、定義域が区間であることが欠かせない。

反例:中間値の性質をもつが連続でない・導関数でない

$k$ を $-1\le k\le1$ の定数とし、$h_k(x)=\sin\dfrac1x$($x\ne0$)、$h_k(0)=k$ とする。$h_k$ はどの $k$ でも中間値の性質をもつ(下の「詳細」)。
(1) $h_k$ は $0$ で連続でない。$x\to0$ で $\sin\dfrac1x$ は極限をもたない(関数の極限の計算 の例「反例:和の規則の逆」の確認と同じ)からである。
(2) $k\ne0$ なら、$h_k$ は $0$ を含む区間で微分可能などの関数の導関数にもならない。一方 $h_0$ は導関数である。

詳細(中間値の性質と (2) の証明)

中間値の性質:$a< b$ とし、$y$ を $h_k(a)$ と $h_k(b)$ の間の数とする。$0$ が $[a,b]$ に入らなければ、$h_k$ は $[a,b]$ で連続なので中間値の定理による。$0$ が $[a,b]$ に入るとき、$y$ は $-1$ 以上 $1$ 以下の 2 つの値の間なので $-1< y<1$ である。$0< b$ なら、$\dfrac1x$ は $0< x< b$ で $\dfrac1b$ より大きいすべての値をとるので、$\sin\dfrac1x$ は区間 $(0,b)$ で $-1$ から $1$ までのすべての値をとり、$y$ もとる。$b=0$ なら同じ理由で区間 $(a,0)$ で $y$ をとる。どちらも $a< c< b$ の範囲の点である。

$h_0$ が導関数であること:$G(x)=x^2\cos\dfrac1x$($x\ne0$)、$G(0)=0$ とすると、ex-dpd-x2sin と同じ計算で $G'(x)=2x\cos\dfrac1x+\sin\dfrac1x$($x\ne0$)、$G'(0)=0$ である。$c(x)=2x\cos\dfrac1x$($x\ne0$)、$c(0)=0$ は連続($\lvert c(x)\rvert\le2\lvert x\rvert$)なので、$H(x)=\displaystyle\int_0^xc(t)\,dt$ は $H'=c$ を満たす(定積分で表された関数)。$(G-H)'(x)=\sin\dfrac1x$($x\ne0$)、$(G-H)'(0)=0$ なので、$(G-H)'=h_0$ である。

$k\ne0$ の $h_k$ が導関数でないこと:$F'=h_k$ となる $F$ があるとすると、$E=F-(G-H)$ は微分可能で、$E'(x)=h_k(x)-h_0(x)$ は $x\ne0$ で $0$、$x=0$ で $k$ である。$\displaystyle\lim_{x\to+0}E'(x)=0$ なので、cor-dpd-no-jump により $E'(0)=0$ となり、$k\ne0$ に反する。

符号関数と sin(1/x) のグラフ。符号関数は 0 で −1 から 1 へ跳んで途中の値をとらない。sin(1/x) は 0 の近くで −1 と 1 の間を振動し、どの小さな区間でも途中の値をすべてとる 符号関数と sin(1/x) のグラフ。符号関数は 0 で −1 から 1 へ跳んで途中の値をとらない。sin(1/x) は 0 の近くで −1 と 1 の間を振動し、どの小さな区間でも途中の値をすべてとる
図 4 の左の符号関数は「跳び」があり、中間値の性質も導関数であることも成り立たない。右の $\sin\dfrac1x$ は $0$ で連続でないが、「跳び」ではなく「振動」なので中間値の性質をもつ。$0$ での値を $0$ にしたものは導関数だが、$0$ 以外にしたものは導関数ではない。$0$ での値ひとつで導関数かどうかが変わる。

大学数学で見る

thm-dpd-darboux は Darboux の定理とよばれる(Leb26a Theorem 4.2.11)。そこでの証明も、$y$ を傾きとする 1 次式との差をとり、端で最大値をとれないことを示して内部の点で微分係数 $0$ を得る、というこの記事と同じ筋である(Leb26a Figure 4.6 が図 1 と同じ考えを描いている)。Leb26a Example 4.2.12 では、この記事の ex-dpd-x2sin とは別の関数 $\left(x\sin\dfrac1x\right)^2$($x\ne0$)、$0$($x=0$)を使って、すべての点で微分可能で導関数が連続でない例を示している。

導関数の極限についての関連する命題を開く

cor-dpd-no-jump では $f$ が $c$ で微分可能であることを仮定した。Leb26a Proposition 4.2.10 は、$f$ が $[a,b)$ で連続、$(a,b)$ で微分可能で、$\displaystyle\lim_{x\to a}f'(x)=L$ なら、$f$ は $a$ で微分可能で $f'(a)=L$ である、と述べている。こちらは $a$ での微分可能性を仮定せずに結論として得る。どちらも「導関数の片側極限は、存在すればその点の微分係数に等しい」という同じ現象を表している。

中間値の性質をもつ関数は Darboux 関数ともよばれる。ex-dpd-cx-sin のとおり、Darboux 関数は導関数より広い。

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関連項目

参考文献

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