二項間漸化式は、$a_{n+1}=pa_n+q$($p,q$ は定数)のように、1 つ前の項から次の項を決める漸化式である。$p\ne1$ のとき、不動点 $\alpha=\frac{q}{1-p}$ を引くと $a_n-\alpha$ は公比 $p$ の等比数列になり、$a_n=\alpha+p^{n-1}(a_1-\alpha)$ である。$|p|<1$ なら初項によらず $a_n\to\alpha$、$|p|>1$ かつ $a_1\ne\alpha$ なら発散し、$p=1$ なら等差数列になる。$a_{n+1}=pa_n+f(n)$ の解全体は「1 つの特殊解+$Cp^{n-1}$」で、$f(n)=r^n$、$r=p$ のときは特殊解に $n$ が掛かる(共鳴)。三項間漸化式(特性方程式の解 $1$ と $p$)や微分方程式 $y'=ay+b$ と対応する。
前提知識: 数列, 等差数列, 等比数列, 数学的帰納法, 数列の極限
数学 B では、$a_{n+1}=2a_n+1$ のように、前の項から次の項を決める式(漸化式)で数列を定める。初項を決めれば、あとの項は次々に計算できる。まず 2 つの例で項を並べ、一般項を探す。
$a_1=1$、$a_{n+1}=2a_n+1$ とする。順に計算すると
$$
a_1=1,\quad a_2=2\cdot1+1=3,\quad a_3=2\cdot3+1=7,\quad a_4=15,\quad a_5=31,\quad a_6=63
$$
である。各項に $1$ を足すと $2,4,8,16,32,64$ となり、公比 $2$ の等比数列が現れる。そこで $a_n+1=2^n$、すなわち $a_n=2^n-1$ と予想できる。
予想が正しいことは、次のように確かめられる。漸化式の両辺に $1$ を足すと
$$
a_{n+1}+1=2a_n+2=2(a_n+1)
$$
なので、$b_n:=a_n+1$ は $b_{n+1}=2b_n$ を満たし、$b_1=2$ である。$b_n$ は初項 $2$、公比 $2$ の等比数列なので $b_n=2\cdot2^{n-1}=2^n$ である。
$a_1=0$、$a_{n+1}=\frac12a_n+3$ とする。順に計算すると
$$
a_1=0,\quad a_2=3,\quad a_3=\frac92=4.5,\quad a_4=\frac{21}4=5.25,\quad a_5=\frac{45}8=5.625,\quad a_6=\frac{93}{16}=5.8125
$$
である。値は $6$ に近づいていくように見える。各項から $6$ を引くと
$$
-6,\quad -3,\quad -1.5,\quad -0.75,\quad -0.375,\quad -0.1875
$$
となり、公比 $\frac12$ の等比数列である。よって $a_n-6=-6\cdot\bigl(\frac12\bigr)^{n-1}$、すなわち $a_n=6-6\bigl(\frac12\bigr)^{n-1}$ と予想できる。
例 1 では各項に $1$ を足した。これは $a_n+1=a_n-(-1)$ なので、$-1$ を引いたことと同じである。例 2 では各項から $6$ を引いた。この $-1$ と $6$ は、どこから来たのか。$x=2x+1$ を解くと $x=-1$、$x=\frac12x+3$ を解くと $x=6$ である。漸化式の $a_{n+1}$ と $a_n$ を同じ文字 $x$ に置き換えた方程式の解になっている。
この例から、次の問いが出てくる。
| 高校の計算 | この記事での見方 | ボックス |
|---|---|---|
| 特性方程式 $\alpha=p\alpha+q$ の解を引く | 1 次関数 $x\mapsto px+q$ の不動点を原点に移す | def-flr-fixed-point、thm-flr-main |
| $\lvert p\rvert<1$ なら $\alpha$ に収束 | 傾き $p$ の 1 次関数の縮小 | thm-flr-limit |
| 特殊解+$Cp^{n-1}$ | 解全体は「1 つの解+同次方程式の解」 | thm-flr-structure |
| $a_{n+1}=2a_n+2^n$ で $n2^{n-1}$ が出る | 共鳴(非同次項の公比と $p$ の一致) | prop-flr-exp-particular |
| $a_{n+1}=pa_n+q$ | 特性方程式の解が $1$ と $p$ の三項間漸化式 | prop-flr-three-term |
$p,q$ を定数とする。数列 $\{a_n\}$ がすべての $n\ge1$ について
$$
a_{n+1}=pa_n+q
$$
を満たすとき、この式を(定数係数の 1 次の)二項間漸化式という(「2 項間漸化式」とも書く)。より一般に、$n$ の式 $f(n)$ を使った $a_{n+1}=pa_n+f(n)$ も扱う。$f(n)$ がすべて $0$ のもの($a_{n+1}=pa_n$)を同次の漸化式という。
$a_{n+1}=pa_n+f(n)$ を満たす 2 つの数列 $\{a_n\}$、$\{c_n\}$ があり、$a_1=c_1$ ならば、すべての $n\ge1$ で $a_n=c_n$ である。
方針:$n$ についての数学的帰納法で示す。
段 1($n=1$)。仮定から $a_1=c_1$ である。
段 2($n=k$ から $n=k+1$)。$a_k=c_k$ と仮定する。2 つの数列はどちらも漸化式を満たすので
$$
a_{k+1}=pa_k+f(k)=pc_k+f(k)=c_{k+1}
$$
である。真ん中の等号で仮定 $a_k=c_k$ を使った。
段 1・段 2 から、すべての $n\ge1$ で $a_n=c_n$ である。$\square$
この命題により、予想した一般項が「初項が一致し、漸化式を満たす」ことを確かめれば、それが本当の一般項だと分かる。ex-flr-first の後半はこの形の確かめ方である。
$T(x)=px+q$ とおく。$T(\alpha)=\alpha$、すなわち
$$
\alpha=p\alpha+q
$$
を満たす数 $\alpha$ を、$T$ の不動点という。高校では、この方程式を二項間漸化式の「特性方程式」と呼ぶことが多い。$a_n=\alpha$(すべての $n$)という定数の数列は、漸化式 $a_{n+1}=pa_n+q$ を満たす。
$p\ne1$ のとき、$\alpha=p\alpha+q$ を移項すると $(1-p)\alpha=q$ なので、不動点はただ 1 つで
$$
\alpha=\frac q{1-p}
$$
である。$p=1$ のときは、方程式は $\alpha=\alpha+q$、すなわち $q=0$ となり、$q\ne0$ なら不動点はなく、$q=0$ ならすべての数が不動点である。
漸化式 $a_{n+1}=T(a_n)$ は、グラフで見ると分かりやすい。点 $a_n$ から縦に進んで直線 $y=px+q$ に当たった高さが $a_{n+1}$ であり、そこから横に進んで直線 $y=x$ に当たると、横軸の位置が $a_{n+1}$ になる。これをくり返した折れ線を蜘蛛の巣図という。2 本の直線の交点が不動点 $(\alpha,\alpha)$ である(図1)。
図1:3 つの漸化式の蜘蛛の巣図。左は $a_{n+1}=\frac12a_n+3$($a_1=0$)で、折れ線が階段状に不動点 $6$ へ近づく。中央は $a_{n+1}=-\frac12a_n+3$($a_1=0$)で、不動点 $2$ の左右に振れながら近づく。右は $a_{n+1}=2a_n+1$($a_1=0$)で、不動点 $-1$ から離れていく。直線 $y=px+q$ の傾き $p$ で近づき方が決まることを見る図。
$p\ne1$ とし、$\alpha=\dfrac q{1-p}$ とする。$a_{n+1}=pa_n+q$ を満たす数列の一般項は
$$
a_n=\alpha+p^{n-1}(a_1-\alpha)\qquad(n\ge1)
$$
である。
方針:漸化式 $a_{n+1}=pa_n+q$ から、不動点の式 $\alpha=p\alpha+q$ を辺ごとに引く。定数 $q$ が消えて、$a_n-\alpha$ が等比数列になる。
段 1(引き算)。すべての $n\ge1$ で
$$
a_{n+1}-\alpha=(pa_n+q)-(p\alpha+q)=p(a_n-\alpha)
$$
である。1 つ目の等号では、$a_{n+1}=pa_n+q$ と $\alpha=p\alpha+q$(def-flr-fixed-point、$\alpha=\frac q{1-p}$ はこれを満たす)を使った。
段 2(等比数列)。$b_n:=a_n-\alpha$ とおくと、段 1 は $b_{n+1}=pb_n$ である。よって $\{b_n\}$ は初項 $b_1=a_1-\alpha$、公比 $p$ の等比数列で、$b_n=p^{n-1}b_1$ である($p=0$ のときも、$n\ge2$ で $b_n=0$、$n=1$ で $b_1$ となり、$p^0=1$ と約束すれば同じ式である)。
段 3(戻す)。$a_n=\alpha+b_n=\alpha+p^{n-1}(a_1-\alpha)$ である。$\square$
$a_n=\alpha+p^{n-1}(a_1-\alpha)$ は、「不動点 $\alpha$」と「不動点からのずれ $a_1-\alpha$ が毎回 $p$ 倍される」の 2 つの部分からできている。同じ形は、確率 $P_n$ についての漸化式 $P_{n+1}=sP_n+t$ にも現れ、そこでは不動点が「定常分布」、$s$ が近づく速さを表す(確率漸化式と定常分布)。
一般項が分かると、$n$ を大きくしたときの様子が決まる。$p^{n-1}$ の振る舞いだけを調べればよい。
$p\ne1$、$\alpha=\dfrac q{1-p}$ とし、$a_{n+1}=pa_n+q$ とする。
方針:thm-flr-main により $a_n-\alpha=p^{n-1}(a_1-\alpha)$ である。右辺の $|p|^{n-1}$ の振る舞いを、$h>0$ に対する不等式 $(1+h)^m\ge1+mh$ から調べる。
段 0(不等式 $(1+h)^m\ge1+mh$)。$h>0$ とし、$m\ge0$ を整数とする。$m=0$ なら両辺とも $1$ で、等号が成り立つ。$m\ge1$ なら、二項定理(二項定理と組合せの恒等式)で $(1+h)^m$ を展開すると、すべての項が $0$ 以上で、最初の 2 項が $1+mh$ なので、$(1+h)^m\ge1+mh$ である。段 2・段 3 では $m=n-1$($n\ge1$)として使う。
段 1(1)。$a_1-\alpha=0$ なら、右辺は $0$ で、$a_n=\alpha$ である。
段 2(3)。$|p|>1$ とし、$h:=|p|-1>0$ とおく。段 0 から $|p|^{n-1}=(1+h)^{n-1}\ge1+(n-1)h$ であり、右辺は $n$ とともにいくらでも大きくなる。$a_1\ne\alpha$ なので $|a_n-\alpha|=|p|^{n-1}|a_1-\alpha|\to\infty$ である。$|a_n|\ge|a_n-\alpha|-|\alpha|$ なので $|a_n|\to\infty$ であり、収束しない。
段 3(2)。$p=0$ なら $n\ge2$ で $a_n=\alpha$ なので収束する。$0<|p|<1$ とする。$\frac1{|p|}>1$ なので $h:=\frac1{|p|}-1>0$ とおくと、段 0 から
$$
0<|p|^{n-1}=\frac1{(1+h)^{n-1}}\le\frac1{1+(n-1)h}
$$
であり、右辺は $n\to\infty$ で $0$ に近づく。はさみうちにより $|p|^{n-1}\to0$、よって $|a_n-\alpha|=|p|^{n-1}|a_1-\alpha|\to0$、すなわち $a_n\to\alpha$ である。
段 4(4)。$p=-1$ なら $a_n-\alpha=(-1)^{n-1}(a_1-\alpha)$ で、$n$ が奇数なら $a_n=a_1$、偶数なら $a_n=2\alpha-a_1$ である。$a_1\ne\alpha$ なら $a_1\ne2\alpha-a_1$ なので、2 つの異なる値を交互にとり、収束しない。$\square$
図2:$a_{n+1}=\frac12a_n+3$ で初項を $0,3,6,10$ と変えた数列。どれも不動点 $6$ に近づき、$a_1=6$ なら動かない。破線は、後で扱う微分方程式 $y'=6-y$ の解 $y=6-6e^{-x}$ の $x=\frac{n-1}2$ での値 $6-6e^{-(n-1)/2}$ を、横軸の $n$ の位置に描いたもの。
$|p|<1$ のとき、1 次関数 $T(x)=px+q$ は $|T(x)-T(y)|=|p|\,|x-y|$ を満たし、2 点の距離を $|p|$ 倍に縮める。このような関数を縮小写像という。$T$ が 1 次関数でない場合(たとえば $a_{n+1}=\cos a_n$)でも、傾きの絶対値が $1$ より小さい範囲にとどまれば同じように不動点に近づく。それを平均値の定理で示すのが 縮小写像と漸化式 である。
$a_{n+1}=pa_n+f(n)$ で $f(n)$ が定数でないときは、不動点がない。しかし thm-flr-main の証明の考え方「2 つの解の差は同次の漸化式を満たす」はそのまま使える。
数列 $\{c_n\}$ が $c_{n+1}=pc_n+f(n)$($n\ge1$)を満たすとする。このとき、$a_{n+1}=pa_n+f(n)$ を満たす数列は、ちょうど
$$
a_n=c_n+Cp^{n-1}\qquad(C\text{ は定数})
$$
の形の数列である。初項が $a_1$ のものは $C=a_1-c_1$ のときである。
方針:2 つの解の差 $d_n:=a_n-c_n$ が $d_{n+1}=pd_n$ を満たすことを示す。逆に、$c_n$ に同次の解を足したものが解であることも確かめる。
段 1(解は必ずこの形)。$\{a_n\}$ が $a_{n+1}=pa_n+f(n)$ を満たすとする。$d_n:=a_n-c_n$ とおくと
$$
d_{n+1}=a_{n+1}-c_{n+1}=\bigl(pa_n+f(n)\bigr)-\bigl(pc_n+f(n)\bigr)=p(a_n-c_n)=pd_n
$$
である。$f(n)$ が打ち消し合った。よって $\{d_n\}$ は公比 $p$ の等比数列で、$d_n=p^{n-1}d_1$ である。$C:=d_1=a_1-c_1$ とおくと $a_n=c_n+Cp^{n-1}$ である。
段 2(この形はすべて解)。$C$ を定数とし、$a_n:=c_n+Cp^{n-1}$ とおくと
$$
pa_n+f(n)=\bigl(pc_n+f(n)\bigr)+Cp^n=c_{n+1}+Cp^{n}=a_{n+1}
$$
である。よって $\{a_n\}$ は漸化式を満たす。$\square$
漸化式を満たす数列を 1 つ見つけたとき、それを特殊解という(上の定理の $\{c_n\}$)。thm-flr-main は、特殊解として定数の数列 $c_n=\alpha$ をとった場合である。特殊解は、$f(n)$ と同じ形の式を置いて係数を決めると見つかることが多い(恒等式と未定係数法)。
$a_1=1$、$a_{n+1}=2a_n+n$ とする。項は $1,3,8,19,42,\dots$ である。
段 1(特殊解)。$f(n)=n$ が 1 次式なので、$c_n=An+B$ と置いてみる。$c_{n+1}=2c_n+n$ に代入すると
$$
A(n+1)+B=2(An+B)+n,\qquad\text{すなわち}\qquad An+(A+B)=(2A+1)n+2B
$$
である。これがすべての $n$ で成り立つように、$n$ の係数と定数項を比べると $A=2A+1$、$A+B=2B$ で、$A=-1$、$B=-1$ となる。$c_n=-n-1$ である($c_1=-2$)。
段 2(初項に合わせる)。thm-flr-structure により $a_n=-n-1+C\cdot2^{n-1}$、$C=a_1-c_1=1-(-2)=3$ なので
$$
a_n=3\cdot2^{n-1}-n-1
$$
である。$n=1,2,3,4,5$ で $1,3,8,19,42$ となり、計算した値と一致する。
$a_1=1$、$a_{n+1}=2a_n+3^n$ とする。項は $1,5,19,65,211,\dots$ である。$c_n=A\cdot3^n$ と置くと、$A\cdot3^{n+1}=2A\cdot3^n+3^n$ の両辺を $3^n$ で割って $3A=2A+1$、$A=1$ となる。特殊解 $c_n=3^n$($c_1=3$)から、$C=1-3=-2$、
$$
a_n=3^n-2\cdot2^{n-1}=3^n-2^n
$$
である。$n=1,2,3,4$ で $1,5,19,65$ となり一致する。
$a_1=1$、$a_{n+1}=2a_n+2^n$ とする。項は $1,4,12,32,80,\dots$ である。
段 1(同じ置き方は失敗する)。$c_n=A\cdot2^n$ と置くと、$A\cdot2^{n+1}=2A\cdot2^n+2^n$ となる。左辺と右辺の第 1 項は同じ $A\cdot2^{n+1}$ なので打ち消し合い、$0=2^n$ という成り立たない式が残る。どんな $A$ を選んでも特殊解にならない。$A\cdot2^n$ は同次の漸化式 $b_{n+1}=2b_n$ の解なので、代入すると $f(n)$ の部分を作れないのである。
段 2($2^{n+1}$ で割る)。漸化式の両辺を $2^{n+1}$ で割ると
$$
\frac{a_{n+1}}{2^{n+1}}=\frac{a_n}{2^n}+\frac12
$$
となる。$b_n:=\dfrac{a_n}{2^n}$ は公差 $\frac12$ の等差数列で、$b_1=\frac12$ なので $b_n=\frac12+\frac{n-1}2=\frac n2$ である。よって
$$
a_n=2^n\cdot\frac n2=n\cdot2^{n-1}
$$
である。$n=1,2,3,4,5$ で $1,4,12,32,80$ となり一致する。$n$ が掛かった形が現れた。
2 つの例の違いを一般の形で述べる。
$c,r$ を $0$ でない定数とし、$f(n)=c\,r^n$ とする。
方針:それぞれ右辺に代入して、左辺 $c_{n+1}$ と等しくなることを確かめる。
段 1(1)。$pc_n+c\,r^n=\dfrac{pc}{r-p}r^n+c\,r^n=\dfrac{pc+c(r-p)}{r-p}r^n=\dfrac{cr}{r-p}r^n=\dfrac c{r-p}r^{n+1}=c_{n+1}$ である。
段 2(2)。$pc_n+c\,p^n=p\cdot c\,n\,p^{n-1}+c\,p^n=c\,n\,p^n+c\,p^n=c\,(n+1)\,p^n=c_{n+1}$ である。$\square$
$r=p$ のときに $n$ が掛かる現象を共鳴という。共鳴がなぜ起こるかは、次の公式を見ると分かる。
$a_{n+1}=pa_n+f(n)$ を満たす数列は、$n\ge2$ で
$$
a_n=p^{n-1}a_1+\sum_{k=1}^{n-1}p^{\,n-1-k}f(k)
$$
を満たす。$n=1$ でも、項のない和を $0$ と約束すれば $a_1=a_1$ となって成り立つ。
方針:$n=2$ で確かめ、$n$ で成り立てば $n+1$ でも成り立つことを、漸化式に代入して示す。
段 1($n=2$)。右辺は $pa_1+p^0f(1)=pa_1+f(1)$ で、漸化式から $a_2$ に等しい。
段 2($n$ から $n+1$)。$n$ で成り立つとする。漸化式に代入すると
$$
a_{n+1}=pa_n+f(n)=p^na_1+\sum_{k=1}^{n-1}p^{\,n-k}f(k)+f(n)=p^na_1+\sum_{k=1}^{n}p^{\,n-k}f(k)
$$
である。最後の等号では、$f(n)=p^{\,n-n}f(n)$ を和の $k=n$ の項としてまとめた。これは $n+1$ のときの式である。$\square$
二項間漸化式 $a_{n+1}=pa_n+q$ の定数 $q$ は、1 つ先の式と引き算すると消える。
$a_{n+1}=pa_n+q$ を満たす数列は、三項間漸化式
$$
a_{n+2}=(p+1)a_{n+1}-pa_n
$$
を満たす。この三項間漸化式の特性方程式 $t^2=(p+1)t-p$ は $(t-1)(t-p)=0$ と因数分解でき、解は $t=1$ と $t=p$ である。
方針:$n$ の式と $n+1$ の式を引き算する。
段 1。$a_{n+2}=pa_{n+1}+q$ と $a_{n+1}=pa_n+q$ を辺ごとに引くと $a_{n+2}-a_{n+1}=p(a_{n+1}-a_n)$ となる。移項して $a_{n+2}=(p+1)a_{n+1}-pa_n$ である。
段 2。$t^2-(p+1)t+p$ を展開の逆で確かめると $(t-1)(t-p)=t^2-pt-t+p=t^2-(p+1)t+p$ である。$\square$
三項間漸化式の特性方程式が異なる 2 解 $1$、$p$ をもつとき、一般項は $A\cdot1^n+B\cdot p^n$ の形になる(三項間漸化式の特性方程式)。$A\cdot1^n=A$ が不動点 $\alpha$ の部分、$Bp^n$ が等比数列の部分で、thm-flr-main と同じ形である。$p=1$ のときは特性方程式が重解 $1$ をもち、一般項は $A+Bn$ の形になる。これは等差数列(ex-flr-special の 1)であり、三項間漸化式の「重解では $n$ が掛かる」ことの最も簡単な例である。
ex-flr-first の $a_{n+1}=2a_n+1$ から、$a_{n+2}=3a_{n+1}-2a_n$ が得られる。$a_1=1$、$a_2=3$ から $a_3=3\cdot3-2\cdot1=7$、$a_4=3\cdot7-2\cdot3=15$ で、ex-flr-first と一致する。特性方程式 $t^2=3t-2$ の解は $1$ と $2$ で、一般項 $a_n=2^n-1=(-1)\cdot1^n+1\cdot2^n$ は確かに $A\cdot1^n+B\cdot2^n$ の形である。
高校で $\alpha=p\alpha+q$ を「特性方程式」と呼ぶのは、三項間漸化式の特性方程式とは役割が違うことに注意する。三項間漸化式の特性方程式の解は公比であるのに対し、$\alpha=p\alpha+q$ の解は不動点(公比 $1$ の成分の値)である。二項間漸化式の公比は $p$ そのもので、方程式を解かなくても見えている。
この記事の定理の仮定を外すと、結論が崩れる。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| $p\ne1$(thm-flr-main) | 不動点が 1 つ決まり、$\alpha+p^{n-1}(a_1-\alpha)$ と書ける | ex-flr-p-one |
| $\lvert p\rvert<1$(thm-flr-limit の 2) | 不動点に収束する | ex-flr-limit の 2・3 |
| $r\ne p$(prop-flr-exp-particular の 1) | $A r^n$ の形の特殊解がある | ex-flr-resonance |
| 漸化式が 1 次(thm-flr-structure) | 2 つの解の差が等比数列 | ex-flr-nonlinear |
$a_1=2$、$a_{n+1}=a_n+3$ とする。不動点の方程式 $\alpha=\alpha+3$ は $0=3$ となり、解がない。一般項は $a_n=2+3(n-1)=3n-1$ で、$n$ の 1 次式である。$\alpha+p^{n-1}(a_1-\alpha)$ に $p=1$ を入れると $\alpha+(a_1-\alpha)=a_1$ で定数になってしまい、どの $\alpha$ を選んでも $3n-1$ を表せない。
満たす性質:定数係数の二項間漸化式。満たさない性質:$p\ne1$。破る主張:thm-flr-main の一般項の形。prop-flr-three-term の見方では、特性方程式の 2 解 $1$、$p$ が重なって重解になった場合である。
$a_{n+1}=a_n^2$ を考える。$c_n=1$(すべての $n$)はこの漸化式を満たす。$a_1=2$ から始めると $a_n=2,4,16,256,65536,\dots$ である。差 $a_n-c_n$ は $1,3,15,255,\dots$ で、隣どうしの比は $3,5,17$ と変わり、等比数列でない。
満たす性質:漸化式が $a_{n+1}=g(a_n)$ の形。満たさない性質:$g$ が 1 次式であること。破る主張:thm-flr-structure の段 1 の「差が $d_{n+1}=pd_n$ を満たす」。証明で $f(n)$ が打ち消し合ったのは、$pa_n-pc_n=p(a_n-c_n)$ と因数分解できたからで、$a_n^2-c_n^2=(a_n+c_n)(a_n-c_n)$ では掛ける数 $a_n+c_n$ が $n$ ごとに変わる。1 次でない漸化式の極限は、不動点の近くでの傾きで調べる(縮小写像と漸化式)。
1 次関数 $T(x)=px+q$ は、大学ではアフィン写像(1 次式で表される写像)と呼ばれる。$a_n=T^{\,n-1}(a_1)$($T$ を $n-1$ 回くり返す)である。座標を $y=x-\alpha$ とずらすと、$T$ は $y\mapsto py$ という比例の写像になる。thm-flr-main の「不動点を引く」は、この座標の取り替えである。
同次の漸化式 $b_{n+1}=pb_n$ の解全体 $\{Cp^{n-1}\}$ は、足し算と定数倍で閉じていて、1 つの数列 $p^{n-1}$ の定数倍で尽くされる。大学の言葉では、解全体は 1 次元のベクトル空間である。thm-flr-structure は、非同次の漸化式の解全体が「1 つの特殊解+このベクトル空間」という形($f(n)\ne0$ となる $n$ が 1 つでもあれば、平面の中で原点を通らない直線のような形)になることを述べている。$k$ 項前まで使う同次の線形漸化式 $a_{n+k}=d_1a_{n+k-1}+\cdots+d_ka_n$($d_1,\dots,d_k$ は定数で、$k$ 項前の項の係数 $d_k$ は $0$ でない)でも、解全体は $k$ 次元のベクトル空間になり、これに $n$ の式を足した非同次の漸化式の解は特殊解だけずれたものになる(KT17 Theorem 9.18、Lemma 9.19、Lemma 9.20。Theorem 9.18 は $d_k\ne0$ にあたる仮定を置いている)。共鳴で $n$ が掛かることも同書の Example 9.15 にある。
漸化式の「次の項は今の項の $p$ 倍+$q$」は、微分方程式の「変化の速さは今の値の $a$ 倍+$b$」とよく似ている。
$a\ne0$、$b$ を定数とする。すべての実数 $x$ で
$$
y'=ay+b
$$
を満たす微分可能な関数 $y(x)$ をすべて求める。
方針:漸化式で不動点を引いたのと同じく、$y$ が変化しない値($ay+b=0$ の解 $-\frac ba$)を引く。残りは $z'=az$ となり、$ze^{-ax}$ の導関数が $0$ になる。
段 1(平衡点を引く)。$z:=y+\frac ba$ とおく。$z'=y'=ay+b=a\bigl(y+\frac ba\bigr)=az$ である。
段 2($ze^{-ax}$ は定数)。積の微分から
$$
\bigl(ze^{-ax}\bigr)'=z'e^{-ax}-aze^{-ax}=aze^{-ax}-aze^{-ax}=0
$$
である。導関数がすべての点で $0$ の関数は定数である(平均値の定理による。平均値の定理による差の評価)。よって定数 $C$ があって $ze^{-ax}=C$、すなわち $z=Ce^{ax}$ である。
段 3(まとめ)。$y=-\dfrac ba+Ce^{ax}$ である。逆に、この形の関数は $y'=aCe^{ax}=a\bigl(y+\frac ba\bigr)=ay+b$ を満たす。$\square$
2 つの問題は次のように対応する。
| 二項間漸化式 $a_{n+1}=pa_n+q$ | 微分方程式 $y'=ay+b$ |
|---|---|
| 不動点 $\alpha=\frac q{1-p}$ | 平衡点 $-\frac ba$ |
| 同次の解 $Cp^{n-1}$ | 同次の解 $Ce^{ax}$ |
| $\lvert p\rvert<1$ なら $\alpha$ に収束 | $a<0$ なら $x\to\infty$ で $-\frac ba$ に収束 |
| 共鳴:$a_{n+1}=2a_n+2^n$ の解 $n2^{n-1}$ | 共鳴:$y'=y+e^x$ の解 $xe^x$ |
最後の行は、$y=xe^x$ なら $y'=e^x+xe^x=y+e^x$ となることで確かめられる。
対応は偶然ではない。微分方程式を刻み幅 $h$ で近似する Euler 法 $y_{k+1}=y_k+h(ay_k+b)$ は、$y_{k+1}=(1+ha)y_k+hb$ という二項間漸化式で、不動点は $\frac{hb}{1-(1+ha)}=-\frac ba$ と平衡点に一致する。たとえば $y'=6-y$($a=-1$、$b=6$)を $h=\frac12$ で近似すると $y_{k+1}=\frac12y_k+3$ となり、ex-flr-half の漸化式そのものである。$y(0)=0$ の解は $y=6-6e^{-x}$ である。$n$ 番目の項は $x=\frac{n-1}2$ にあたるので、図2 の破線は、横軸の $n$ の位置に $6-6e^{-(n-1)/2}$ を描いたものである。数列も関数も $6$ に近づく。指数関数と微分方程式のつながりは 微分方程式としての指数関数・三角関数 で扱う。
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