Brooksの定理

同義語:Brooks' theoremブルックスの定理

概要

Brooksの定理(Brooks' theorem)とは、連結グラフ $G$ が完全グラフでも奇数の長さの閉路でもなければ、彩色数が最大次数以下、すなわち $\chi(G)\le\Delta(G)$ であるという定理である。どのグラフでも頂点を 1 つずつ塗れば $\Delta(G)+1$ 色で足りるので、この定理は、$\Delta(G)+1$ 色が本当に必要な連結グラフが完全グラフと奇数の長さの閉路に限られることを述べている。証明では、最後に塗る頂点の隣にある互いに隣り合わない 2 頂点に同じ色を塗り、残りの頂点を最後の頂点から遠い順に塗っていく。系として、最大次数 3 の単純グラフの辺は 4 色で塗り分けられる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 彩色数, 次数(グラフ), 連結グラフ, 連結度(グラフ)

Brooks の定理 は、グラフの頂点を塗り分けるのに必要な色の数が、最大次数を超えるのはどんなときかを完全に答える定理である。どの頂点も隣が $\Delta$ 個以下なら、頂点を 1 つずつ順に塗っていけば $\Delta+1$ 色で足りる。Brooks の定理によれば、連結なグラフでこの $\Delta+1$ 色が本当に必要になるのは、完全グラフと奇数の長さの閉路の 2 種類に限られ、それ以外はすべて $\Delta$ 色で塗れる。
証明の要は、塗る順番を工夫して、最後に塗る頂点の周りで色が 1 つ余るようにすることである。根に向かって遠い頂点から順に塗れば、根以外の頂点では色が足り、最後の根だけが問題になる(lem-brk-nonregular)。根の隣の 2 頂点に同じ色を塗っておけば、根でも色が余る(thm-brk-main の証明)。この記事では、その 2 頂点がつねに選べることを示して、定理を証明する。

定義と主張

この記事のグラフは有限の単純グラフで、頂点を 1 つ以上もつとする。$G=(V,E)$ の頂点 $v$ の次数を $\deg(v)$、最大次数 を $\Delta(G)$ と書く。$G$ の $k$-頂点彩色とは、写像 $c\colon V\to\{1,\dots,k\}$ で、隣り合う 2 頂点に異なる値を与えるものであり(彩色 の記事の定義「頂点彩色」)、それが存在する最小の $k$ が 彩色数 $\chi(G)$ である。$X\subset V$ について、$G-X$ は $V\setminus X$ が誘導する部分グラフを表し、$G-\{x\}$ を $G-x$ と書く。

切断点と 2-連結・3-連結

$G$ を連結グラフとする。

  1. 頂点 $x$ が $G$ の 切断点(cut vertex)であるとは、$G-x$ が連結でないことをいう。
  2. $k=2,3$ について、$G$ が $k$-連結 であるとは、$|V|>k$ であり、$k$ 個未満の頂点からなるどの $X\subset V$ についても $G-X$ が連結であることをいう(連結度(グラフ) の記事の定義「$k$-連結グラフ」)。

頂点が 3 個以上の連結グラフが 2-連結であることは、切断点をもたないことと同じである。

Brooks の定理

連結グラフ $G$ が完全グラフでも奇数の長さの閉路でもなければ、
$$\chi(G)\le\Delta(G)$$
である。

例外と出典

どのグラフでも $\chi(G)\le\Delta(G)+1$ である(彩色数 の記事の命題「彩色数の基本評価」)。完全グラフ $K_n$ では $\chi=n=\Delta+1$、奇数の長さの閉路 $C_{2m+1}$ では $\chi=3=\Delta+1$ なので、定理の 2 つの例外は除けない。この定理は Brooks(1941)による(BM76 §8.2、Theorem 8.4、p. 122)。

直感

$\Delta+1$ 色が必要になるのは、どの頂点も、塗る順番がいつ回ってきても隣にすでに $\Delta$ 色が使われてしまう状況である。完全グラフでは、どの頂点も他のすべての頂点と隣り合うので、色を節約する余地がない。奇数の長さの閉路では、2 色を交互に塗っていくと一周したところで食い違う。これ以外のグラフでは、どこかに「隣の 2 頂点が互いに隣り合わない」場所があり、その 2 頂点に同じ色を使えば、その間にある頂点で色が 1 つ浮く。証明は、この 1 色の余裕を、順番の工夫によって全体に行き渡らせる。

例

等号が成り立つグラフと成り立たないグラフ
  1. $K_5$ から 1 本の辺 $uv$ を除いたグラフ $K_5-uv$ では、$u,v$ 以外の 3 頂点の次数は $4$ なので $\Delta=4$ である。$u$ と残りの 3 頂点は $K_4$ をなすので $\chi\ge4$ であり、$u,v$ に同じ色を塗れば 4 色で足りる。$\chi=4=\Delta$ で、Brooks の定理の不等式は等号で成り立つ。
  2. 中心の頂点を長さ $5$ の閉路のすべての頂点と結んだ車輪 $W_5$ では、$\Delta=5$(中心の次数)である。閉路の部分に 3 色、中心に 4 色目を使えば塗れ、閉路が奇数の長さなので閉路だけで 3 色が要り、中心は閉路のすべての頂点と隣り合うので $\chi=4$ である。$\chi=4<5=\Delta$ である。
  3. Petersenグラフ は 3-正則で $\chi=3$ である(彩色数 の記事の例「Petersen グラフの彩色数」)。連結な 3-正則グラフでは Brooks の定理により $\chi\le3$ であり、$K_4$ だけが例外になる。
  4. 完全二部グラフ $K_{n,n}$($n\ge2$)は $\Delta=n$ だが $\chi=2$ である。Brooks の定理の上界は、実際の値から大きく離れることがある。
三角柱で証明をたどる

2 つの三角形 $a_1a_2a_3$、$b_1b_2b_3$ と辺 $a_ib_i$($i=1,2,3$)からなる三角柱は 3-正則で、三角形を含むので $\chi\ge3$ である。$x=a_1$ の隣の $u=a_2$ と $w=b_1$ は隣り合わず、$G-\{a_2,b_1\}$ は辺 $a_1a_3$、$a_3b_3$、$b_3b_2$ で連結である。$G-\{a_2,b_1\}$ の中で $a_1$ からの距離が遠い順に $b_2,b_3,a_3,a_1$ と並べ、その前に $a_2,b_1$ を置いた順
$$a_2,\ b_1,\ b_2,\ b_3,\ a_3,\ a_1$$
で、各頂点に「すでに塗った隣の頂点に使われていない最小の色」を塗る。$a_2,b_1$ は色 $1$、$b_2$ は隣の $a_2,b_1$ が色 $1$ なので色 $2$、$b_3$ は隣の $b_1,b_2$ が色 $1,2$ なので色 $3$、$a_3$ は隣の $a_2,b_3$ が色 $1,3$ なので色 $2$、最後の $a_1$ は隣の $a_2,a_3,b_1$ が色 $1,2,1$ なので色 $3$ になる。3 色で塗れ、$\chi=3=\Delta$ である。

証明のための補題

頂点を並べて、各頂点に「その頂点より前に並ぶ隣の頂点に使われていない最小の正の整数」を色として与える手順を 貪欲彩色 という。前に並ぶ隣の頂点が $d$ 個なら、与えられる色は $d+1$ 以下である(彩色数 の記事の補題「貪欲彩色」の 1)。

後ろに隣の頂点をもつ並べ方

$G$ を $n$ 頂点の連結グラフ、$z$ を頂点とする。頂点を $v_1,\dots,v_n=z$ と並べて、$i< n$ のとき $v_i$ が $v_j$($j>i$)のどれかと隣り合うようにできる。

頂点を $z$ からの距離 $d_G(v,z)$ の大きい順に並べ、距離が等しいものは任意の順に並べる。$z$ は距離 $0$ の唯一の頂点なので最後に来る。$v\ne z$ の距離を $m\ge1$ とし、$v$ から $z$ への最短の道で $v$ の次の頂点を $v'$ とすると、$v'$ は $v$ と隣り合い、距離は $m-1$ なので $v$ より後ろに並ぶ。$\square$

次数の小さい頂点をもつ連結グラフ

$k\ge1$ とし、$G$ を連結グラフで、すべての頂点の次数が $k$ 以下、ある頂点 $z$ の次数が $k-1$ 以下であるとする。このとき $G$ は $k$-頂点彩色をもつ。

lem-brk-order の並べ方 $v_1,\dots,v_n=z$ で貪欲彩色を行う。$i< n$ のとき、$v_i$ の隣の頂点のうち少なくとも 1 つは後ろにあるので、前にある隣の頂点は $\deg(v_i)-1\le k-1$ 個以下で、$v_i$ の色は $k$ 以下である。最後の $z$ の前にある隣の頂点は $\deg(z)\le k-1$ 個以下なので、$z$ の色も $k$ 以下である。$\square$

次の補題は、2-連結な正則グラフの中に、ex-brk-prism の $x,u,w$ のような 3 頂点があることを述べる。

隣り合わない 2 つの隣の頂点

$G$ を 2-連結なグラフで、すべての頂点の次数が $\Delta\ge3$ であり、完全グラフでないとする。このとき、頂点 $x,u,w$ であって、$u,w$ はどちらも $x$ と隣り合い、$u$ と $w$ は隣り合わず、$G-\{u,w\}$ が連結であるものが存在する。

完全グラフでない $\Delta$-正則グラフの頂点数は $\Delta+2\ge5$ 以上である(頂点数が $\Delta+1$ なら各頂点が他のすべてと隣り合い、完全グラフになる)。
$G$ が 3-連結のとき. $G$ は完全グラフでないので、隣り合わない 2 頂点 $a,b$ がある。$a$ から $b$ への最短の道 $a=q_0,q_1,\dots,q_m=b$ をとると $m\ge2$ で、$q_0$ と $q_2$ は隣り合わない(隣り合えばもっと短い道がある)。$x:=q_1$、$u:=q_0$、$w:=q_2$ とすればよい。$G-\{u,w\}$ は 3-連結性により連結である。
$G$ が 3-連結でないとき. 要点:$G$ から 1 頂点 $x$ を除いたグラフ $H$ に切断点があるようにとり、$H$ の「端」にあたる 2 つの部分 $D_1,D_2$ から $x$ の隣の頂点 $u,w$ を 1 つずつ選ぶ。

3-連結でない場合の詳しい証明を開く

頂点数は $3$ より大きいので、2 個以下の頂点を除いて非連結にでき、2-連結なので除く頂点はちょうど 2 個 $x,y$ である。$H:=G-x$ は連結で、$y$ は $H$ の切断点である。$H$ の切断点 $z$ と $H-z$ の連結成分 $D$ の組 $(z,D)$ を 端の組 と呼ぶ。

(a) 端の組 $(z,D)$ について、$D$ の頂点 $z'$ が $H$ の切断点なら、$H-z'$ の連結成分 $D'$ で $D'\subset D\setminus\{z'\}$ となるものがある。実際、$H$ は連結なので $H-z$ の各成分は $z$ の隣の頂点を含み、$H$ から $D$ を除いた部分($z$ と $D$ 以外の成分)は連結である。それは $z'$ を含まないので $H-z'$ の 1 つの成分に含まれ、$H-z'$ の他の成分 $D'$ は $D\setminus\{z'\}$ に含まれる。

(b) 頂点数 $|D_1|$ が最小の端の組 $(y_1,D_1)$ をとる。次に、$D\cap(D_1\cup\{y_1\})=\emptyset$ を満たす端の組 $(z,D)$ のうち $|D|$ が最小のもの $(y_2,D_2)$ をとる($H-y_1$ の $D_1$ 以外の成分 $E$ について $(y_1,E)$ がこの条件を満たすので、存在する)。(a) と最小性により、$D_1$ と $D_2$ はどちらも $H$ の切断点を含まない。2 つ目の選び方では、(a) の $D'$ も $D'\subset D$ なので条件を満たすことに注意する。

(c) $D_2$ は $y_1$ を含まない連結な集合なので $H-y_1$ のどれかの成分に含まれ、$D_1$ と交わらないので、$D_1$ 以外の成分に含まれる。よって $D_1$ と $D_2$ の間に辺はない。また $y_2$ は $D_2$ の頂点と隣り合うので $y_2\notin D_1$ である。

(d) $x$ は $D_1$ の頂点と隣り合う。そうでなければ、$D_1$ の頂点の $G$ での隣は $D_1\cup\{y_1\}$ に含まれ、$G-y_1$ の中で $D_1$ は $x$ と結ばれず、$G$ の 2-連結性に反する。同様に $x$ は $D_2$ の頂点と隣り合う。$u\in D_1$、$w\in D_2$ を $x$ の隣の頂点とすると、(c) により $u,w$ は隣り合わない。

(e) $H-\{u,w\}$ が連結であることを示す。$K$ をその連結成分とする。$u$ は $H$ の切断点でないので $H-u$ は連結であり、$K$ の頂点から $w$ への $H-u$ の中の道をたどると、$K$ を出るときに最初に入る頂点は $w$ である。よって $K$ は $w$ の隣の頂点を含み、同様に $u$ の隣の頂点を含む。$u$ の隣は $D_1\cup\{y_1\}$ に、$w$ の隣は $D_2\cup\{y_2\}$ に含まれる。$K$ が $y_1$ を含まないとすると、$K$ は $D_1$ の頂点と、(c) により $D_1\cup\{y_1\}$ の外の頂点を含み、$K$ の中でその 2 つを結ぶ道は $D_1$ から出るときに $y_1$ を通るので矛盾する。よってすべての成分が $y_1$ を含み、成分は 1 つである。

最後に、$x$ の次数は $\Delta\ge3$ なので、$x$ は $u,w$ 以外の頂点と隣り合う。したがって $G-\{u,w\}=(H-\{u,w\})$ に $x$ を加えたものは連結である。$\square$

Brooks の定理の証明

$\Delta:=\Delta(G)$ とおく。
段 1($\Delta\le1$ は起こらない). 頂点が 2 個以下の連結グラフは $K_1$ か $K_2$ で、完全グラフである。頂点が 3 個以上なら、頂点 $v$ をとり、$v$ から距離 $2$ の頂点があれば、そこへの最短の道の真ん中の頂点の次数は $2$ 以上であり、なければ他のすべての頂点が $v$ と隣り合うので $\deg(v)\ge2$ である。よって $\Delta\ge2$ である。
段 2(次数が $\Delta$ 未満の頂点があるとき). lem-brk-nonregular を $k=\Delta$ として使えば、$G$ は $\Delta$-頂点彩色をもつ。以下、すべての頂点の次数が $\Delta$ であるとする。
段 3($\Delta=2$ のとき). 連結で次数がすべて $2$ のグラフは閉路である(閉路 の記事の命題「連結で次数がすべて 2 のグラフ」)。奇数の長さの閉路ではないので偶数の長さの閉路であり、2 色を交互に塗れば $\chi(G)=2=\Delta$ である。以下 $\Delta\ge3$ とする。
段 4(切断点 $x$ があるとき). $G-x$ の連結成分を $C_1,\dots,C_m$($m\ge2$)とし、$G_i:=G-\bigl(V\setminus(C_i\cup\{x\})\bigr)$ を $C_i\cup\{x\}$ が誘導する部分グラフとする。$G$ は連結なので $x$ はどの $C_j$ の頂点とも隣り合い、$G_i$ は連結である。$G_i$ の頂点の次数は $\Delta$ 以下で、$x$ は $C_i$ 以外の成分にも隣の頂点をもつので $\deg_{G_i}(x)<\Delta$ である。lem-brk-nonregular により $G_i$ は $\Delta$-頂点彩色 $c_i$ をもつ。色の名前を入れ替えて(色の集合の全単射を合成しても彩色のままである。彩色 の記事の命題「色集合の単射による彩色の移送」)$c_i(x)=1$ としてよい。$v\in C_i$ に $c_i(v)$ を、$x$ に $1$ を与える写像を $c$ とする。$G$ の辺は、異なる成分 $C_i,C_j$ の頂点を結ぶことはないので、$x$ を端点にもつか、ある $C_i$ の中にあり、いずれもある $G_i$ の辺である。よって $c$ は $G$ の $\Delta$-頂点彩色である。
段 5(切断点がないとき). $G$ は頂点数 $\Delta+2\ge5$ 以上の 2-連結な $\Delta$-正則グラフで、完全グラフでない。lem-brk-triple により、$x$ の隣の頂点 $u,w$ で、互いに隣り合わず $G-\{u,w\}$ が連結なものがとれる。lem-brk-order を連結グラフ $G-\{u,w\}$ と頂点 $x$ に使って得た並べ方の前に $u,w$ を置き、
$$u,\ w,\ v_3,\ \dots,\ v_n=x$$
の順で貪欲彩色を行う。$u$ と $w$ は隣り合わないので、どちらも色 $1$ を受け取る。$3\le i< n$ のとき、$v_i$ は後ろに隣の頂点をもつので、前にある隣の頂点は $\Delta-1$ 個以下であり、色は $\Delta$ 以下である。最後の $x$ の隣の $\Delta$ 個の頂点はすべて前にあるが、そのうち $u,w$ は同じ色 $1$ なので、使われている色は $\Delta-1$ 種類以下であり、$\{1,\dots,\Delta\}$ の中に使われていない色が残る。よって $x$ の色も $\Delta$ 以下で、$G$ は $\Delta$-頂点彩色をもつ。$\square$

段 5 の並べ方と色の付け方は、BM76 Theorem 8.4 の証明(p. 122)の 3-連結の場合と同じである。同書は、真の部分グラフの彩色数がすべて元のグラフより小さいグラフ(臨界グラフ。BM76 §8.1、p. 117)に帰着させて 3-連結でない場合を処理しているが、この記事では lem-brk-triple によって臨界グラフを使わずに処理した。証明は、塗る順番を実際に作る手順になっているので、$\Delta$ 色での塗り方を求める計算の手順としてもそのまま使える。

帰結

連結でないグラフでは、各連結成分に Brooks の定理を使えばよい。

彩色数が最大次数より大きくなるグラフ

グラフ $G$ について $\Delta:=\Delta(G)$ とする。$\chi(G)=\Delta+1$ であることと、$G$ の連結成分のどれかが $K_{\Delta+1}$ であるか、$\Delta=2$ で連結成分のどれかが奇数の長さの閉路であることは同値である。それ以外の場合は $\chi(G)\le\Delta$ である。

$G$ の連結成分を $G_1,\dots,G_m$ とすると $\chi(G)=\max_i\chi(G_i)$ である(彩色数 の記事の命題「部分グラフと連結成分」の 2)。$\chi(G_i)\le\Delta(G_i)+1\le\Delta+1$ なので、$\chi(G)=\Delta+1$ となるのは、ある $G_i$ で $\Delta(G_i)=\Delta$ かつ $\chi(G_i)=\Delta(G_i)+1$ となるときに限る。thm-brk-main により、そのとき $G_i$ は完全グラフか奇数の長さの閉路である。最大次数が $\Delta$ の完全グラフは $K_{\Delta+1}$ であり、閉路の最大次数は $2$ である。逆に、$K_{\Delta+1}$ の彩色数は $\Delta+1$、奇数の長さの閉路の彩色数は $3$ なので、そのような成分があれば $\chi(G)\ge\Delta+1$ である。$\square$

たとえば最大次数が $3$ のグラフは、$K_4$ を連結成分に含まない限り 3 色で塗れる。Brooks の定理は辺の塗り分けにも使える。辺の 彩色 では、端点を共有する 2 辺に異なる色を塗る。

最大次数が 3 以下のグラフの辺の塗り分け

最大次数が $3$ 以下のグラフ $G$ の辺は、端点を共有する 2 辺が異なる色になるように 4 色で塗れる。

$G$ の辺を頂点とし、端点を共有する 2 辺を隣り合わせたグラフを線グラフ $L(G)$ とする。$G$ の辺の塗り分けは $L(G)$ の頂点彩色と同じものである(彩色 の記事の命題「辺彩色と線グラフの頂点彩色」)。辺がなければ示すことはないので、辺があるとする。
辺 $ab$ と端点を共有する他の辺は、$a$ を端点にもつ $\deg(a)-1$ 本と $b$ を端点にもつ $\deg(b)-1$ 本で、$G$ は単純グラフなので両方に属する辺はない。よって $\Delta(L(G))\le2+2=4$ である。
$L(G)$ は $K_5$ を部分グラフに含まない。実際、どの 2 本も端点を共有する $G$ の辺の集合 $F$ を考える。$F$ のすべての辺が共通の頂点 $a$ をもつなら、$|F|\le\deg(a)\le3$ である。そうでないとする。$ab\in F$ をとると、$F$ の他の辺は $a$ か $b$ を含む。共通の頂点がないので、$a$ を含まない辺 $bc\in F$($c\ne a$)と、$b$ を含まない辺 $ad\in F$($d\ne b$)がある。$bc$ と $ad$ は端点を共有するので $c=d$ である。$F$ のどの辺も $ab,bc,ca$ の 3 本と端点を共有する。$\{a,b,c\}$ の 1 点しか含まない辺は、その点を含まない 1 本と端点を共有しないので、$F$ の辺は $\{a,b,c\}$ の 2 点を結び、$ab,bc,ca$ のどれかである。よって $|F|\le3$ である。いずれの場合も $|F|\le3$ で、$L(G)$ に $K_5$ はない。
$L(G)$ の各連結成分 $L_i$ について $\chi(L_i)\le4$ を示せばよい(彩色数 の記事の命題「部分グラフと連結成分」の 2)。$L_i$ が完全グラフなら、$K_5$ を含まないので頂点は 4 個以下で、$\chi(L_i)\le4$ である。$L_i$ が奇数の長さの閉路なら $\chi(L_i)=3$ である。それ以外なら thm-brk-main により $\chi(L_i)\le\Delta(L_i)\le4$ である。$\square$

この系は BM76 Exercise 8.2.2(p. 123)の内容である。単純グラフについては、より一般に辺の塗り分けに必要な色の数は $\Delta$ か $\Delta+1$ である(Vizing の定理。BM76 Theorem 6.2、p. 93)。この記事では Vizing の定理は証明しない。最大次数 $3$ の場合の上の系は、その特別な場合を頂点彩色の側から導いたものである。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
連結$K_4$ と星 $K_{1,3}$ の非交和$\Delta=3$ だが $\chi=4$ で、$\chi\le\Delta$ が成り立たない
完全グラフでない$K_n$($n\ge2$)$\chi=n=\Delta+1$
奇数の長さの閉路でない$C_5$$\chi=3=\Delta+1$
上界を最大次数にする(最小次数 $\delta$ にする)$K_4$ の 1 頂点に新しい頂点を 1 本の辺でつないだグラフ連結で例外に当たらないが、$\delta=1$、$\chi=4$ で $\chi\le\delta$ も $\chi\le\delta+1$ も成り立たない
次数が $k-1$ 以下の頂点がある(lem-brk-nonregular)$K_4$ と $k=3$次数はすべて $3$ 以下だが、3-頂点彩色はない
完全グラフでない(lem-brk-triple)$K_4$どの頂点の隣の 2 頂点も隣り合い、$u,w$ がとれない

1 行目の非交和は連結でないので定理の仮定を満たさず、cor-brk-equality の「連結成分が $K_{\Delta+1}$」の場合にあたる。4 行目のグラフは $K_4$ を含むので $\chi\ge4$ であり、$K_4$ の 4 色に新しい頂点の色を 1 つ足さずに塗れるので $\chi=4$ である。最大次数は $4$ なので、Brooks の定理の $\chi\le\Delta$ はこのグラフでも成り立っている。

補足

  • 臨界グラフとの関係:BM76 Exercise 8.2.1(p. 122)は、Brooks の定理が「彩色数が $k\ge4$ の臨界グラフで完全グラフでないものは $2|E|\ge|V|(k-1)+1$ を満たす」という主張と同値であることを問うている。辺の本数による下界として見ることもできる。
  • 上界の粗さ:Brooks の定理は $\Delta+1$ を $\Delta$ に下げるだけで、ex-brk-examples の 4 のように実際の彩色数はずっと小さいこともある。三角形を含まなくても彩色数がいくらでも大きくなるグラフがあり(彩色数 の記事の注意「三角形を含まないグラフの彩色数」)、局所的な情報だけで彩色数を決めることはできない。
  • 辺彩色との比較:辺の塗り分けでは、$\Delta+1$ 色が必要な単純グラフは数多くある(辺彩色)。頂点彩色では $\Delta+1$ 色が必要な連結グラフは 2 種類しかない、という点が Brooks の定理の強さである(BM76 §8.2、p. 122 の冒頭の議論)。

関連項目

参考文献

[1]
J. A. Bondy, U. S. R. Murty, Graph Theory with Applications, Macmillan / American Elsevier, 1976, §8.1 p. 117(臨界グラフ)、§8.2 Theorem 8.4 p. 122(Brooks の定理)、Exercise 8.2.1 p. 122、Exercise 8.2.2 p. 123、Theorem 6.2 p. 93(Vizing の定理)

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