連結準同型(connecting homomorphism)とは、複体の短完全列 $0\to A\to B\to C\to0$ に対し、$C$ のコサイクル $c$ を $B$ の元 $b$ に持ち上げ、その微分 $db$ を $A$ のコサイクル $a$ として読んで $\delta[c]=[a]$ と定める準同型 $\delta\colon H^n(C)\to H^{n+1}(A)$ のことで、接続準同型ともいい、これを入れるとコホモロジーは長完全列につながる。連結準同型は、微分が誘導する射に蛇の補題を適用して得る接続準同型に一致し、写像錐から $A[1]$ への射影で符号を除いて表され、各次数で分裂するときは切断のずれから作る複体の射 $C\to A[1]$ で誘導される。Bockstein 準同型、Kummer 理論、相対ホモロジーの境界写像、第1Chern類が例である。
複体の短完全列 $0\to A\to B\to C\to0$ があっても、同じ次数のコホモロジーを並べた列 $H^n(A)\to H^n(B)\to H^n(C)$ は右端で全射になるとは限らない。$C$ のコサイクルを $B$ に持ち上げても、持ち上げがコサイクルになるとは限らないからである。そのずれを一つ上の次数の $A$ のコホモロジー類として取り出す写像
$$
\delta^n\colon H^n(C)\longrightarrow H^{n+1}(A)
$$
が連結準同型(connecting homomorphism)であり、接続準同型ともいう。これを入れると、コホモロジーは長完全列につながる。ホモロジーの記法では次数を一つ下げる写像 $H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ になり、位相空間の対では「相対サイクルの境界をとる」写像として現れるので、境界準同型とよばれることもある。
連結準同型は、蛇の補題の接続準同型、写像錐、各次数の切断の三つの見方で記述できる。この記事では連結準同型を定義したあと、この三つの記述が同じ写像を与えることを証明し、Bockstein 準同型と Kummer 理論の計算例を扱う。長完全列が各位置で完全であることの直接の証明は 長完全列 にある。
以下、環 $R$ 上の加群のコチェイン複体を考え、複体 $X$ の微分を $d$(どの複体のものかは文脈で分かるときは添字を省く)、$n$ 次のコサイクル・コバウンダリ・コホモロジーを $Z^n(X)$、$B^n(X)$、$H^n(X)=Z^n(X)/B^n(X)$ と書く。複体の射 $i\colon A\to B$、$q\colon B\to C$ について、すべての次数で $0\to A^n\xrightarrow{i}B^n\xrightarrow{q}C^n\to0$ が完全であるとき、$0\to A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{q}C\to0$ を複体の短完全列という。
複体の短完全列 $0\to A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{q}C\to0$ と $c\in Z^n(C)$ について、
$$
q(b)=c,\qquad d b=i(a)
$$
を満たす $b\in B^n$ と $a\in A^{n+1}$ をとる。このとき $a\in Z^{n+1}(A)$ であり、
$$
\delta^n[c]:=[a]\in H^{n+1}(A)
$$
とおく。$\delta^n\colon H^n(C)\to H^{n+1}(A)$ をこの短完全列の連結準同型という。
$b$ は $q^n$ の全射性からとれ、$q(db)=d\,q(b)=dc=0$ なので $db\in\ker q^{n+1}=\operatorname{im}i^{n+1}$ となり、$a$ がただ一つ定まる。$i(da)=d\,i(a)=ddb=0$ と $i$ の単射性から $da=0$ である。$\delta^n$ が $b$ の選び方と $c$ の代表の選び方によらない準同型であることは 長完全列 の命題「接続準同型は選択によらない」で、
$$
\cdots\to H^n(A)\xrightarrow{H^n(i)}H^n(B)\xrightarrow{H^n(q)}H^n(C)\xrightarrow{\delta^n}H^{n+1}(A)\xrightarrow{H^{n+1}(i)}H^{n+1}(B)\to\cdots
$$
が完全であることは同じ記事の定理「複体の短完全列の長完全列」で示されている。短完全列の射と可換であること(自然性)は同じ記事の命題「接続準同型の自然性」にある。
定義は「$c$ を $q$ で逆にたどり、$d$ を施し、$i$ で逆にたどる」という手順なので、写像の合成の記号を借りて $\delta=i^{-1}\circ d\circ q^{-1}$ と覚えられる。$q^{-1}$ と $i^{-1}$ は写像ではなく対応だが、全体としては類の上の写像になる。
ホモロジーの記法(微分が次数を下げる鎖複体)では、同じ手順で $\partial_n\colon H_n(C)\to H_{n-1}(A)$ が定まる。
$\delta^n[c]=0$ となるのは、$c$ をコサイクルのまま $B$ に持ち上げられるとき、すなわち $[c]$ が $H^n(B)$ から来るときである。連結準同型は「コサイクルとして持ち上げることの障害」を $H^{n+1}(A)$ の元として測る。層の大域切断のように、局所的には持ち上げられるが大域的には持ち上げられない状況では、この障害が一つ上の次数のコホモロジー類として現れる。
蛇の補題 は、二つの行が完全な可換図式から、核と余核をつなぐ接続準同型を作る。複体の連結準同型は、この接続準同型の特別な場合である。
複体 $X$ について、$X^n/B^n(X)\to Z^{n+1}(X)$、$[x]\mapsto dx$ を $\bar d^n$ と書く。$\bar d^n$ は矛盾なく定まり、
$$
\ker\bar d^n=H^n(X),\qquad \operatorname{coker}\bar d^n=H^{n+1}(X)
$$
である。
$dd=0$ より $d$ は $B^n(X)$ を零に送り、値は $Z^{n+1}(X)$ に入るので、$\bar d^n$ は定まる。$[x]\in\ker\bar d^n$ は $dx=0$、すなわち $x\in Z^n(X)$ と同値なので、$\ker\bar d^n=Z^n(X)/B^n(X)=H^n(X)$ である。$\bar d^n$ の像は $d(X^n)=B^{n+1}(X)$ なので、$\operatorname{coker}\bar d^n=Z^{n+1}(X)/B^{n+1}(X)=H^{n+1}(X)$ である。$\blacksquare$
複体の短完全列 $0\to A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{q}C\to0$ について、次の図式は可換で、二つの行は完全である。
$$
\xymatrix{
& A^n/B^n(A) \ar[r]^{\bar i} \ar[d]_{\bar d} & B^n/B^n(B) \ar[r]^{\bar q} \ar[d]_{\bar d} & C^n/B^n(C) \ar[r] \ar[d]^{\bar d} & 0\\
0 \ar[r] & Z^{n+1}(A) \ar[r]_{i} & Z^{n+1}(B) \ar[r]_{q} & Z^{n+1}(C) &
}
$$
これに蛇の補題を適用して得られる完全列
$$
H^n(A)\to H^n(B)\to H^n(C)\xrightarrow{\ \partial\ }H^{n+1}(A)\to H^{n+1}(B)\to H^{n+1}(C)
$$
において、$H^n(A)\to H^n(B)$ などは $H^n(i)$、$H^n(q)$、$H^{n+1}(i)$、$H^{n+1}(q)$ に一致し、接続準同型 $\partial$ は連結準同型 $\delta^n$ に一致する。
可換性。 $\bar i$、$\bar q$ は $i,q$ が誘導する写像($i,q$ は複体の射なのでコバウンダリをコバウンダリに送る)であり、$i,q$ は微分と可換なので四角形は可換である。
上の行の完全性。 $q^n$ が全射なので $\bar q$ は全射である。$\bar q\bar i=0$ は $qi=0$ から従う。$[b]\in\ker\bar q$ とすると $q(b)=dc'$ となる $c'\in C^{n-1}$ があり、$c'=q(b')$ と持ち上げると $q(b-db')=0$ なので $b-db'=i(a)$ と書ける。よって $[b]=[i(a)]=\bar i[a]$ である。
下の行の完全性。 $i$ は単射である。$qi=0$ であり、$z\in Z^{n+1}(B)$ が $q(z)=0$ を満たせば $z=i(a)$ と書け、$i(da)=dz=0$ と $i$ の単射性から $a\in Z^{n+1}(A)$ である。
蛇の補題の適用。 上の行は左端の $0$ を欠き、下の行は右端の $0$ を欠くが、蛇の補題 の注意「行の仮定を弱めた形」により、縦の射の核と余核をつなぐ 6 項の列は完全である。lem-cnh-qz により、縦の射の核は $H^n(A),H^n(B),H^n(C)$、余核は $H^{n+1}(A),H^{n+1}(B),H^{n+1}(C)$ である。核の間の写像は $\bar i,\bar q$ の制限なので $H^n(i),H^n(q)$ であり、余核の間の写像は $i,q$ が誘導する $H^{n+1}(i),H^{n+1}(q)$ である。
接続準同型の計算。 蛇の補題 の定義「接続準同型」の手順をたどる。$[c]\in H^n(C)=\ker\bar d$($c\in Z^n(C)$)をとる。(1) 上の行で持ち上げる:$q(b)=c$ となる $b\in B^n$ をとれば $\bar q[b]=[c]$ である。(2) 縦に $\bar d$ を施すと $db\in Z^{n+1}(B)$ であり、$q(db)=dc=0$ なので、下の行で $db=i(a)$ となる $a\in Z^{n+1}(A)$ がただ一つある。(3) $\partial[c]$ は $a$ の $\operatorname{coker}\bar d^n=H^{n+1}(A)$ における類 $[a]$ である。これは def-cnh-connecting の $\delta^n[c]$ そのものである。$\blacksquare$
次数 $n$ の完全列と次数 $n+1$ の完全列は $H^{n+1}(A)\to H^{n+1}(B)\to H^{n+1}(C)$ の部分で重なるので、すべての $n$ についてつなぎ合わせると長完全列が得られる。これは 長完全列 の定理「複体の短完全列の長完全列」の、蛇の補題を経由する別証明になる。この構成は核と余核しか使わないので、一般のアーベル圏の複体でも同じ図式と蛇の補題(蛇の補題 の節「一般のアーベル圏での定義」)から連結準同型が定まる(Wei94 §1.3, pp. 13–14)。
複体 の定義「鎖写像の写像錐」と定義「複体のシフト」を、コチェイン記法($X^n=X_{-n}$)に読み替えて使う。複体の射 $i\colon A\to B$ の写像錐 $\operatorname{Cone}(i)$ とシフト $A[1]$ は
$$
\operatorname{Cone}(i)^n=B^n\oplus A^{n+1},\qquad d(b,a)=(db+i(a),\,-da),
$$
$$
A[1]^n=A^{n+1},\qquad d_{A[1]}=-d_A
$$
である。微分の符号を変えてもコサイクルとコバウンダリは変わらないので、$H^n(A[1])=H^{n+1}(A)$ である。
複体の短完全列 $0\to A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{q}C\to0$ について、
$$
\varphi\colon\operatorname{Cone}(i)\to C,\ \ \varphi(b,a)=q(b),\qquad \pi\colon\operatorname{Cone}(i)\to A[1],\ \ \pi(b,a)=a
$$
とおく。
単射性。 $(b,a)$ をコサイクルとし、$\varphi(b,a)=q(b)=dc'$($c'\in C^{n-1}$)とする。$c'=q(b')$ と持ち上げると $q(b-db')=0$ なので、$b-db'=i(a')$ となる $a'\in A^n$ がある。$(b,a)-d(b',0)=(b-db',a)=(i(a'),a)$ はコサイクルなので、第 1 成分から $d\,i(a')+i(a)=i(da'+a)=0$、すなわち $a=-da'$ である。すると
$$
d(0,a')=(i(a'),-da')=(i(a'),a)
$$
なので $(b,a)=d(b',0)+d(0,a')$ はコバウンダリである。よって $H^n(\varphi)$ は単射である。
3. $[c]\in H^n(C)$ について、2 の全射性の証明から $H^n(\varphi)^{-1}[c]=[(b,-a)]$ であり、$H^n(\pi)[(b,-a)]=[-a]=-\delta^n[c]$ である。$\blacksquare$
定理は、連結準同型が「$C$ を写像錐 $\operatorname{Cone}(i)$ に取り替えたあと、$A[1]$ への射影をとる」ことで得られる複体の射の言葉で書けることを示している。導来圏では擬同型 $\varphi$ が同型になるので、連結準同型は符号を除いて $C\to A[1]$ という一つの射から来る。この形が三角圏の完全三角形 $A\to B\to C\to A[1]$ の第三の射である。
符号 $-1$ は写像錐とシフトの符号の規約から来る。文献によって規約が異なり(たとえば Wei94 §1.5, pp. 18–19 は写像錐の微分の符号を別に定め、Lemma 1.5.3 と Exercise 1.5.6(p. 24)で同種の比較を扱う)、連結準同型そのものの符号を逆に定める文献もある。長完全列の完全性は符号によらないが、ほかの自然な写像との可換性を論じるときは規約をそろえる必要がある。
各次数で $q^n$ が切断をもつ(加群として分裂する)とき、連結準同型は複体の射で表せる。
複体の短完全列 $0\to A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{q}C\to0$ について、各 $n$ で加群の準同型 $s^n\colon C^n\to B^n$ が $q^ns^n=\operatorname{id}$ を満たすとする($s$ は複体の射でなくてよい)。
切断 $s$ が複体の射にとれるなら $t=0$ なので、連結準同型はすべて零である(長完全列 の命題「複体として分裂すると接続写像は零」と同じ結論)。$t$ は、切断が微分と可換でないずれを $A$ の言葉で書いたものである。さらに $b=i(a)+s(c)$ と分解して微分を計算すると $d(i(a)+s(c))=i(da+t(c))+s(dc)$ となるので、$B$ は $A\oplus C$ に微分 $(a,c)\mapsto(da+t(c),dc)$ を入れた複体と同型である。
長完全列 の節「整数を使った接続写像の計算」の例($B$ は $B^0=B^1=\mathbb{Z}$、$d_B^0$ は $2$ 倍、$A$ は $A^1=\mathbb{Z}$ だけ、$C$ は $C^0=\mathbb{Z}$ だけ)では、$s^0=\operatorname{id}\colon C^0\to B^0$ が切断である。$t^0=(i^1)^{-1}(d\,s^0-s^1d)=2$ なので、thm-cnh-twisting により $\delta^0$ は $2$ 倍写像であり、同記事の直接の計算と一致する。
各次数で分裂しない短完全列では、連結準同型が複体の射 $C\to A[1]$ から来るとは限らない。
$A$ を $A^0=A^1=\mathbb{Z}$、$d_A^0$ を $2$ 倍写像とする複体、$B$ を $B^0=B^1=\mathbb{Z}$、$d_B^0=\operatorname{id}$ とする複体、$C$ を $C^0=\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ だけの複体とする(ほかの項は $0$)。$i^0$ を $2$ 倍写像、$i^1=\operatorname{id}$、$q^0$ を射影とすると、$d_Bi^0=2=i^1d_A$ なので $i$ は複体の射で、各次数で短完全である。次数 $0$ の列 $0\to\mathbb{Z}\xrightarrow{2}\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to0$ は分裂しない。
$H^0(C)=\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$、$H^1(A)=\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$、$H^0(B)=H^1(B)=0$ である。$[1]\in H^0(C)$ を $b=1\in B^0$ に持ち上げると $db=1=i^1(1)$ なので $\delta^0[1]=[1]\neq0$ であり、$\delta^0$ は同型である。一方、複体の射 $t\colon C\to A[1]$ の次数 $0$ の成分は $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ の準同型なので $0$ であり、$H^0(t)=0$ である。よって $\delta^0$ はどの複体の射 $C\to A[1]$ からも誘導されない。
各項が自由加群の複体 $K$ に、アーベル群の短完全列 $0\to G\to H\to G'\to0$ を係数として $\operatorname{Hom}$ あるいはテンソル積で施すと、各次数で完全な列が得られ、その連結準同型を Bockstein 準同型という。特異コホモロジーでは、特異鎖複体の各項が自由なので $0\to C^n(X;G)\to C^n(X;H)\to C^n(X;G')\to0$ が完全になり、連結準同型 $H^n(X;G')\to H^{n+1}(X;G)$ が定まる(Hat02 §3.E, p. 303)。
$K$ を $K^0=K^1=\mathbb{Z}$、$d^0$ を $2$ 倍写像とする複体とする(実射影平面の胞体鎖複体 $\mathbb{Z}\xrightarrow{2}\mathbb{Z}\xrightarrow{0}\mathbb{Z}$(Hat02 Example 2.42, p. 144)の双対の、次数 $1,2$ の部分と同じ形である)。$0\to\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\xrightarrow{2}\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to0$ をテンソル積で施すと、$K$ の各項は $\mathbb{Z}$ なので各次数で完全な列
$$
0\to K\otimes\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to K\otimes\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\to K\otimes\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\to0
$$
を得る。$K\otimes\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ の微分は $2$ 倍すなわち零なので、$H^0=H^1=\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である。$K\otimes\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ の微分は $\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ 上の $2$ 倍である。
$[1]\in H^0(K\otimes\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})$ を $1\in\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ に持ち上げると、微分は $2\in\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ であり、これは $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\xrightarrow{2}\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ による $1$ の像である。よって Bockstein 準同型は $[1]\mapsto[1]$、すなわち同型 $H^0\to H^1$ である。係数 $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ だけを見ると微分は零で区別できない $2$ 倍写像の情報を、Bockstein 準同型が取り出している。
$G$ 加群の短完全列 $0\to A\xrightarrow{i}B\xrightarrow{j}C\to0$ から、コチェインの複体の短完全列を経て、群コホモロジーの連結準同型 $\delta^n\colon H^n(G,C)\to H^{n+1}(G,A)$ が得られる。$c\in C^G=H^0(G,C)$ については、$j(b)=c$ となる $b\in B$ をとると、$\delta^0(c)$ は交叉準同型 $\sigma\mapsto i^{-1}(\sigma b-b)$ の類である(群コホモロジー の定理「群コホモロジーの長完全列」)。
$H$ を $G$ の部分群とし、$\operatorname{res}\colon H^n(G,M)\to H^n(H,M)$ を、コチェイン $f\colon G^n\to M$ を $H^n$ に制限する写像が誘導する準同型とする。$G$ 加群の短完全列 $0\to A\to B\to C\to0$ について
$$
\operatorname{res}\circ\delta^n_G=\delta^n_H\circ\operatorname{res}\colon H^n(G,C)\to H^{n+1}(H,A)
$$
が成り立つ。
$L/K$ を有限次 Galois 拡大、$G$ をその Galois 群、$n\ge1$ を整数とし、$\mu_n(L)$ を $L$ の $1$ の $n$ 乗根の群とする。$n$ 乗写像により $G$ 加群の短完全列
$$
1\to\mu_n(L)\to L^{\times}\xrightarrow{\ y\mapsto y^n\ }(L^{\times})^n\to1
$$
を得る。$x\in K^{\times}$ が $L$ の中に $n$ 乗根 $y$ をもつとき、$x$ は右端の $G$ 不変元であり、上の公式(乗法的に書く)から
$$
\delta^0(x)=\bigl[\sigma\mapsto\sigma(y)/y\bigr]\in H^1(G,\mu_n(L))
$$
である。$K=\mathbb{Q}$、$L=\mathbb{Q}(\sqrt2)$、$n=2$、$x=2$、$y=\sqrt2$ とすると、$G=\{1,\sigma\}$ で $\sigma(\sqrt2)/\sqrt2=-1$ なので、$\delta^0(2)$ は $G$ から $\mu_2=\{\pm1\}$ への零でない準同型($G$ は $\mu_2$ に自明に作用するので $H^1(G,\mu_2)=\operatorname{Hom}(G,\mu_2)$)である。長完全列の完全性から、$\delta^0(2)\neq0$ は $2$ が $(L^{\times})^G=\mathbb{Q}^{\times}$ の元の平方でないことを表す。これが Kummer理論 の出発点であり、Kummer完全列 では同じ形の連結準同型が層のコホモロジーで現れる。
位相空間の対 $(X,Y)$ の特異鎖複体の短完全列 $0\to C_\bullet(Y)\to C_\bullet(X)\to C_\bullet(X,Y)\to0$ の連結準同型 $\partial\colon H_n(X,Y)\to H_{n-1}(Y)$ は、相対サイクルを $X$ の鎖とみてその境界をとる写像である(相対ホモロジーと長完全列)。層の短完全列からは、層コホモロジーの長完全列の連結準同型が得られる(層コホモロジー)。たとえば $0\to\mathbb{Z}\to\mathcal{O}_X\xrightarrow{\exp(2\pi i\,\cdot)}\mathcal{O}_X^{\times}\to0$ の連結準同型 $H^1(X,\mathcal{O}_X^{\times})\to H^2(X,\mathbb{Z})$ が、正則直線束に第1Chern類を対応させる(第1Chern類 の定義「指数完全列による定義」)。
各行は、この記事の定義・定理の仮定を一つだけ外したときの反例である。複体は書いた項以外を $0$ とする。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 各次数で $q$ が全射(def-cnh-connecting) | $A=B=0$、$C^0=\mathbb{Z}$ | $c$ の持ち上げと $\delta$ の定義、$H^0(C)$ での完全性 |
| $q$ が微分と可換(def-cnh-connecting) | $A=0$、$B$:$\mathbb{Z}\xrightarrow{\operatorname{id}}\mathbb{Z}$、$C$:$\mathbb{Z}\xrightarrow{0}\mathbb{Z}$、$q=\operatorname{id}$ | $db$ が $A$ から来ること |
| 各次数で $i$ が単射(thm-cnh-cone) | $A^0=\mathbb{Z}$、$B=C=0$ | $\varphi$ が擬同型であること |
| 各次数で分裂すること(thm-cnh-twisting) | ex-cnh-not-from-map | $\delta$ が複体の射 $C\to A[1]$ から誘導されること |
1 行目:$q\colon0\to C^0=\mathbb{Z}$ は全射でなく、$c=1$ を $B^0=0$ へ持ち上げられない。列 $H^0(B)=0\to H^0(C)=\mathbb{Z}\to H^1(A)=0$ は $H^0(C)$ で完全でない。
2 行目:$B^0=B^1=\mathbb{Z}$、$d_B^0=\operatorname{id}$、$C^0=C^1=\mathbb{Z}$、$d_C^0=0$、各次数で $q=\operatorname{id}$ とすると、各次数で $0\to0\to B^n\to C^n\to0$ は完全だが $q^1d_B^0=\operatorname{id}\neq0=d_C^0q^0$ である。$c=1\in Z^0(C)$ を $b=1$ に持ち上げると $db=1\neq0$ だが、$A^1=0$ なので $db=i(a)$ となる $a$ がない。
3 行目:$i\colon A\to0$ は単射でない。$\operatorname{Cone}(i)^{-1}=B^{-1}\oplus A^0=\mathbb{Z}$ で、この次数の微分は $0$ なので $H^{-1}(\operatorname{Cone}(i))=\mathbb{Z}$ だが、$H^{-1}(C)=0$ である。$q$ は全射で $qi=0$ も成り立つ。
連結準同型の構成と自然性は Wei94 Theorem 1.3.1(pp. 10–11)、§1.3 の蛇の補題による構成と Addendum 1.3.3・Proposition 1.3.4(pp. 13–14)に、写像錐の長完全列との比較は同書 §1.5(pp. 18–19、p. 24)にある。この記事の三つの定理の証明は、ここで直接示した。
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