Dedekind整域

同義語:デデキント整域Dedekind環デデキント環Dedekind domain

概要

Dedekind整域(Dedekind domain)とは、$0$ でない任意のイデアルが有限個の素イデアルの積として順序を除き一意に書ける整域のことである。$0$ でない分数イデアルがすべて可逆であること、Noether 環かつ整閉整域かつ Krull 次元 $1$ 以下であること、Noether 環で $0$ でない素イデアルでの局所化がすべて離散付値環であることと同値である。整数の素因数分解の一意性を元からイデアルへ移したもので、単項イデアル整域、代数体の整数環、滑らかなアフィン曲線の座標環が例であり、$\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ では $(6)=P_2^2P_3P_3'$ が $6$ の 2 通りの分解を説明する。イデアル類群が単項イデアル整域からのずれを測り、これが自明なことと一意分解整域であることは同値である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 可換環, 整域, イデアル, 素イデアル, Noether環, 整閉整域

定義

本記事で環とは 単位元 をもつ可換環を指す。$A$ を整域、$K$ をその 商体 とする。イデアル $I,J$ の積 $IJ$$\{\sum_k x_ky_k\mid x_k\in I,\ y_k\in J\}$(有限和)で生成されるイデアルである。

Dedekind整域

整域 $A$Dedekind 整域(Dedekind domain)であるとは、$A$$0$ でない任意のイデアル $I$ が有限個の素イデアルの積
$$I=P_1P_2\cdots P_n\qquad(n\ge0)$$
として、因子の順序を除いて一意に書けることをいう。$n=0$ の積は $A$ 自身を表す。

一意性の条件は実は落とせる。すなわち $0$ でない任意のイデアルが素イデアルの積に書ける整域は Dedekind 整域である(dedekind-domain-thm-ideal-theoretic の条件 2)。歴史的には代数体の整数環における素イデアル分解の一意性が出発点なので、本記事はこの性質を定義に採る。Dedekind 整域には多くの同値な特徴づけがあり、どれを定義にしてもよい。代表的なものを挙げる。

分数イデアルと可逆イデアル

整域 $A$ の商体 $K$ の部分 $A$ 加群 $I$$A$分数イデアル(fractional ideal)であるとは、$0$ でない $a\in A$$aI\subset A$ を満たすものが存在することをいう。$A$ のイデアルは分数イデアルであり(整イデアルともいう)、$x\in K$ に対し $xA$ は分数イデアルである(単項分数イデアル)。分数イデアル $I,J$ の積 $IJ$ を、$xy$$x\in I$$y\in J$)の有限和全体と定めると、これは再び分数イデアルであり、この積により $A$$0$ でない分数イデアル全体は $A$ を単位元とする可換 モノイド をなす。$0$ でない分数イデアル $I$ に対し
$$I^{-1}:=\{x\in K\mid xI\subset A\}$$
とおく。$I^{-1}$ は分数イデアルであり、つねに $II^{-1}\subset A$ である。$II^{-1}=A$ が成り立つとき $I$可逆(invertible)という。可逆な $I$ の逆元は $I^{-1}$ に限る。実際 $IJ=A$ なら $J\subset I^{-1}$ であり、$I^{-1}=I^{-1}(IJ)=(I^{-1}I)J\subset J$ である。

$I^{-1}$ が分数イデアルであることは、$0$ でない $b\in I$ を取ると $bI^{-1}\subset A$ となることから分かる。

直感

整数環 $\mathbb{Z}$ では任意の整数が素数の積に一意に分解する。代数体の整数環、例えば $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ ではこの一意性が崩れ、$6=2\cdot3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$ という 2 通りの 既約元 分解がある。Dedekind の発見は、元ではなくイデアルを見れば一意性が回復するということであった。$(6)=P_2^2P_3P_3'$ と素イデアルの積に一意に分解し、$2\cdot3$$(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$ はこの 4 個の素イデアルを 2 個ずつ組み合わせる仕方の違いにすぎない(dedekind-domain-ex-number-ring)。Dedekind 整域とは、この「イデアルの一意分解」が成り立つ整域であり、$0$ でないイデアルが可逆であること、すなわち「イデアルで割り算ができる」ことと同じである。Noether 性・整閉性・次元 $1$ という 3 条件で特徴づけられるので、代数体の整数環や滑らかな代数曲線の座標環がすべてこの範囲に入る。元の一意分解が成り立つ Dedekind 整域は 単項イデアル整域 にほかならず、そこからのずれを測るのが イデアル類群 である。

単項イデアル整域と体

単項イデアル整域 $A$ は Dedekind 整域である。実際 $0$ でないイデアルは $(a)$ と書け、$a$ が単元なら $(a)=A$(空の積)、そうでなければ $a=p_1\cdots p_n$素元 の積に書けるので(単項イデアル整域 の記事の定理「単項イデアル整域は一意分解整域」と補題「既約元は素元」)$(a)=(p_1)\cdots(p_n)$ は素イデアルの積である。したがって dedekind-domain-thm-ideal-theoretic の条件 2 が成り立つ。特に $\mathbb{Z}$、体 $K$ 上の 多項式環 $K[X]$Gauss整数環 $\mathbb{Z}[i]$、離散付値環は Dedekind 整域である。体も Dedekind 整域である($0$ でないイデアルは $K$ だけで、空の積である)。

2次体の整数環

$A=\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ は Dedekind 整域である(dedekind-domain-thm-extension$A$$\mathbb{Q}(\sqrt{-5})$ における $\mathbb{Z}$ の整閉包、すなわち $\mathbb{Q}(\sqrt{-5})$整数環 である)が、単項イデアル整域でない(単項イデアル整域 の記事の反例)。$A$ における $6$ の分解を見る。
$$P_2:=(2,\,1+\sqrt{-5}),\qquad P_3:=(3,\,1+\sqrt{-5}),\qquad P_3':=(3,\,1-\sqrt{-5})$$
とおく。$A\cong\mathbb{Z}[X]/(X^2+5)$ なので $A/P_2\cong\mathbb{F}_2[X]/(X^2+5,\,X+1)=\mathbb{F}_2[X]/(X+1)\cong\mathbb{F}_2$$A/P_3\cong\mathbb{F}_3[X]/(X^2+5,\,X+1)\cong\mathbb{F}_3$$X=-1$ のとき $X^2+5=6=0$)、同様に $A/P_3'\cong\mathbb{F}_3$ であり、いずれも体なので $P_2,P_3,P_3'$ は極大イデアルである。次に
$$P_2^2=(4,\,2+2\sqrt{-5},\,-4+2\sqrt{-5})$$
であり、$(2+2\sqrt{-5})-(-4+2\sqrt{-5})=6$$4$ が属するので $2\in P_2^2$、また 3 つの生成元はすべて $2$ で割り切れるので $P_2^2=(2)$ である。同様に $P_3P_3'=(9,\,3(1-\sqrt{-5}),\,3(1+\sqrt{-5}),\,6)$$9-6=3$ を含み生成元はすべて $3$ の倍数なので $P_3P_3'=(3)$$P_2P_3=(6,\,2(1+\sqrt{-5}),\,3(1+\sqrt{-5}),\,(1+\sqrt{-5})^2)$$3(1+\sqrt{-5})-2(1+\sqrt{-5})=1+\sqrt{-5}$ を含み生成元はすべて $1+\sqrt{-5}$ の倍数($6=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$)なので $P_2P_3=(1+\sqrt{-5})$ である。$P_2P_3'=(1-\sqrt{-5})$ は、$1-\sqrt{-5}=2-(1+\sqrt{-5})$ により $P_2=(2,\,1+\sqrt{-5})=(2,\,1-\sqrt{-5})$ と書き換えてから同様に計算すれば得られる。よって
$$(6)=(2)(3)=P_2^2P_3P_3'=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$$
であり、元の 2 通りの分解 $6=2\cdot3=(1+\sqrt{-5})(1-\sqrt{-5})$ は、4 個の素イデアル $P_2,P_2,P_3,P_3'$$\{P_2,P_2\},\{P_3,P_3'\}$ と組むか $\{P_2,P_3\},\{P_2,P_3'\}$ と組むかの違いである。$P_2$ が単項でないことが、この環が単項イデアル整域でない理由である。
一般に、代数体 $K$$\mathbb{Q}$有限次拡大 である体)の整数環 $\mathcal{O}_K$$K$ における $\mathbb{Z}$ の整閉包)は Dedekind 整域である(dedekind-domain-thm-extension)。

曲線の座標環

$k$ を体とし、$A=k[X,Y]/(Y^2-X^3-X)$ とする($k$標数$2$ でないとする)。$A$ は Noether 整域で Krull 次元 $1$ であり、$Y^2=X^3+X$ が定める平面曲線が滑らか($\partial/\partial X$$\partial/\partial Y$ が同時に消える点をもたない)であることから整閉整域である。したがって $A$ は Dedekind 整域である(dedekind-domain-thm-noetherian)。一般に、体上の滑らかなアフィン代数曲線の座標環は Dedekind 整域であり、これは Dedekind 整域の幾何学的な典型例である。滑らかさと整閉性の関係は Har77 Chapter I, Theorem 5.1(滑らかな点の局所環は正則局所環)と Theorem 6.2A(離散付値環の特徴づけ)を合わせたもの、および AM69 Chapter 9 の演習に譲る。

反例:Dedekind整域でない整域
  1. $k$ 上の 2 変数多項式環 $k[X,Y]$ は Noether 環かつ整閉整域である(一意分解整域 は整閉整域である。満たす性質)が、素イデアルの鎖 $(0)\subsetneq(X)\subsetneq(X,Y)$ があるので Krull 次元が $2$ であり、Dedekind 整域でない(満たさない性質。dedekind-domain-prop-basic)。実際、$0$ でない素イデアル $(X)$ は極大でない。破れる条件は「Krull 次元 $1$ 以下」である。
  2. $A=\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]$ は Noether 環で Krull 次元 $1$ の整域である(満たす性質)が、整閉でないので Dedekind 整域でない(満たさない性質)。実際 $\omega=(-1+\sqrt{-3})/2$ は商体 $\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$ の元で $\omega^2+\omega+1=0$ を満たすので $A$ 上整であるが、$A$ の元ではない。破れる条件は「整閉」である。$\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$ の整数環は $\mathbb{Z}[\omega]$ であり、こちらは Dedekind 整域である。
  3. 複素数体の中で $\mathbb{Z}$ 上整な数(代数的整数)全体のなす環 $\overline{\mathbb{Z}}$ は整閉整域で Krull 次元 $1$ である(満たす性質)が、Noether 環でない($(2)\subsetneq(\sqrt2)\subsetneq(\sqrt[4]2)\subsetneq\cdots$ が止まらない)ので Dedekind 整域でない(満たさない性質)。破れる条件は「Noether」である。この環は有限生成イデアルがすべて単項な Bezout環 である(Bezout環 の記事の例)。

性質

可逆イデアル

可逆イデアルの基本性質

$A$ を整域、$I,J$$A$$0$ でない分数イデアルとする。

  1. $x\in K$$x\neq0$ について $xA$ は可逆であり、$(xA)^{-1}=x^{-1}A$ である。
  2. $IJ$ が可逆ならば $I$$J$ は可逆である。特に可逆な分数イデアルの因子は可逆である。
  3. $I$ が可逆ならば $I$有限生成加群 である。
  4. $I$ が可逆で $IJ=IJ'$ ならば $J=J'$ である(消去律)。

1。$xA\cdot x^{-1}A=A$ である。
2。$(IJ)L=A$ となる $L$ を取ると $I(JL)=A$ なので $I$ は可逆であり、$J$ も同様である。
3。$II^{-1}=A$ より $1=\sum_{k=1}^{n}x_ky_k$$x_k\in I$$y_k\in I^{-1}$)と書ける。任意の $x\in I$ について $x=\sum_kx_k(y_kx)$ であり、$y_kx\in I^{-1}I\subset A$ なので $x$$x_1,\dots,x_n$$A$ 係数の線形結合である。よって $I=(x_1,\dots,x_n)$ である。
4。両辺に $I^{-1}$ を掛けると $J=(I^{-1}I)J=I^{-1}(IJ)=I^{-1}(IJ')=J'$ である。$\square$

可逆素イデアルの積の一意性

$A$ を整域とし、$P_1,\dots,P_m$$Q_1,\dots,Q_n$ を可逆な素イデアルとする。$P_1\cdots P_m=Q_1\cdots Q_n$ ならば $m=n$ であり、番号を付け替えて $P_i=Q_i$$1\le i\le m$)とできる。

$m$ に関する帰納法で示す。$m=0$ なら左辺は $A$ であり、$n\ge1$ なら $A=Q_1\cdots Q_n\subset Q_1\neq A$ となって矛盾するので $n=0$ である。$m\ge1$ とする。$P_1,\dots,P_m$ のうち包含関係について極小なものを取り、番号を付け替えて $P_1$ とする。$Q_1\cdots Q_n\subset P_1$$P_1$ は素イデアルなので、ある $j$ について $Q_j\subset P_1$ である(どの $Q_j$$P_1$ に含まれなければ $q_j\in Q_j\setminus P_1$ が取れ、$q_1\cdots q_n\in Q_1\cdots Q_n\subset P_1$$P_1$ の素性に反する)。同様に $P_1\cdots P_m\subset Q_j$ からある $i$ について $P_i\subset Q_j\subset P_1$ であり、$P_1$ の極小性から $P_i=P_1$、よって $Q_j=P_1$ である。番号を付け替えて $Q_1=P_1$ とし、dedekind-domain-lem-invertible の消去律により両辺から $P_1$ を消すと $P_2\cdots P_m=Q_2\cdots Q_n$ となり、帰納法の仮定から主張が従う。$\square$

可逆な素イデアルは極大

整域 $A$$0$ でない任意のイデアルが有限個の素イデアルの積に書けるとする。このとき $A$ の可逆な素イデアル $P$ はすべて極大イデアルである。

$a\in A\setminus P$ を任意に取り、$P+(a)=A$ を示す。仮定により
$$P+(a)=P_1\cdots P_m,\qquad P+(a^2)=Q_1\cdots Q_n$$
と素イデアルの積に書ける。$P_i,Q_j$ はいずれも $P$ を含む。$\bar A:=A/P$ は整域であり、$A$ のイデアル $J\supset P$ に対しその像を $\bar J$ と書くと、像を取る操作は積と両立し、$P$ を含む素イデアルの像は $\bar A$ の素イデアルである(対応定理)。よって $\bar A$ において
$$(\bar a)=\bar P_1\cdots\bar P_m,\qquad(\bar a^2)=\bar Q_1\cdots\bar Q_n,\qquad(\bar a^2)=(\bar a)^2=\bar P_1^2\cdots\bar P_m^2$$
である。$\bar a\neq0$ なので $(\bar a)$$(\bar a^2)$ は整域 $\bar A$ の可逆イデアルであり(dedekind-domain-lem-invertible の 1)、その因子である $\bar P_i,\bar Q_j$ もすべて可逆である(同 2)。dedekind-domain-lem-unique-factorization$\bar A$ に適用すると $n=2m$ であり、$\bar Q_1,\dots,\bar Q_n$$\bar P_1,\dots,\bar P_m$ をそれぞれ 2 回ずつ並べたものである。$P$ を含むイデアルはその像から一意に定まるので、$Q_1,\dots,Q_n$$P_1,\dots,P_m$ を 2 回ずつ並べたものであり、
$$P+(a^2)=P_1^2\cdots P_m^2=(P+(a))^2\subset P^2+(a)$$
を得る。任意の $p\in P$ について $p\in P+(a^2)\subset P^2+(a)$ より $p=x+ra$$x\in P^2$$r\in A$)と書け、$ra=p-x\in P$ かつ $a\notin P$ なので $r\in P$ である。よって $P\subset P^2+Pa=P(P+(a))$ であり、$P$ は可逆なので両辺に $P^{-1}$ を掛けて $A\subset P+(a)$、すなわち $P+(a)=A$ である。$\square$

イデアル論的特徴づけ

Dedekind整域のイデアル論的特徴づけ

整域 $A$ について、次の 4 条件は同値である。

  1. $A$ は Dedekind 整域である。
  2. $A$$0$ でない任意のイデアルは有限個の素イデアルの積に書ける(一意性は要求しない)。
  3. $A$$0$ でない任意の分数イデアルは可逆である。
  4. $A$$0$ でないイデアル $I,J$ について、$I\subset J$ ならば $I=JL$ となるイデアル $L$ が存在する(「含むことは割ることである」)。

$1\Rightarrow2$ は明らかである。
$2\Rightarrow3$。まず $A$$0$ でない素イデアル $P$ が可逆であることを示す。$0$ でない $b\in P$ を取り、$(b)=P_1\cdots P_k$ と素イデアルの積に書く。$(b)$ は可逆なので各 $P_i$ は可逆であり(dedekind-domain-lem-invertible)、dedekind-domain-lem-invertible-prime-maximal により極大イデアルである。$P_1\cdots P_k\subset P$$P$ の素性からある $P_i\subset P$ であり、$P_i$ が極大なので $P=P_i$ は可逆である。したがって $0$ でない任意のイデアルは可逆な素イデアルの積であり、可逆である。$0$ でない分数イデアル $I$ については $aI\subset A$ となる $a\neq0$ を取ると $aI$ は可逆なイデアルであり、$I=a^{-1}A\cdot aI$ は可逆な分数イデアルの積なので可逆である。
$3\Rightarrow1$$A$$0$ でないイデアルはすべて可逆なので有限生成であり(dedekind-domain-lem-invertible)、$A$ は Noether 環である(Noether環 の記事の命題「Noether環の同値条件」)。次に $0$ でない素イデアルが極大であることを示す。$P\subset Q$$0$ でない素イデアルとし、$L:=Q^{-1}P$ とおく。$P\subset Q$ より $L\subset Q^{-1}Q=A$ なので $L$ はイデアルであり、$QL=P$ である。$P\neq Q$ と仮定すると、$QL\subset P$$Q\not\subset P$$P$ の素性から $L\subset P$ であり、$L\subset P=QL\subset L$ より $L=QL$ となる。$L$$0$ でない($P\neq0$)可逆イデアルなので消去律により $A=Q$ となり矛盾する。よって $P=Q$ である。
存在。$0$ でない真のイデアルのうち素イデアルの積に書けないものが存在すると仮定し、その全体を $\mathcal{S}$ とする。$A$ は Noether 環なので $\mathcal{S}$ は極大元 $I$ をもつ。$I$ は素イデアルでない(素イデアルなら 1 個の積である)。$I$ を含む極大イデアル $P$ を取ると $I\subsetneq P$ である。$J:=P^{-1}I$ とおくと $I\subset P$ より $J\subset A$ で、$PJ=I$ である。$J=I$ なら $PI=I$ で消去律により $P=A$ となって矛盾するので $I\subsetneq J$ である($I=PJ\subset J$)。$J=A$ なら $I=P$ となって矛盾する。よって $J$$I$ を真に含む $0$ でない真のイデアルであり、$I$ の極大性から $J$ は素イデアルの積 $J=P_2\cdots P_n$ に書け、$I=PP_2\cdots P_n$ も素イデアルの積になって矛盾する。よって $\mathcal{S}$ は空である。$A$ 自身は空の積である。
一意性は、$0$ でない素イデアルがすべて可逆であることから dedekind-domain-lem-unique-factorization による。
$3\Rightarrow4$$L:=J^{-1}I$ とおくと $I\subset J$ より $L\subset J^{-1}J=A$ で、$JL=I$ である。
$4\Rightarrow3$$I$$0$ でない分数イデアルとし、$aI\subset A$ となる $a\neq0$ を取って $L:=aI$ とおく。$0$ でない $b\in L$ を取ると $(b)\subset L$ なので、仮定により $(b)=LM$ となるイデアル $M$ が存在する。よって $L\cdot(b^{-1}M)=A$ であり $L$ は可逆である。$I=a^{-1}L$ も可逆である(dedekind-domain-lem-invertible の 1 と、可逆な分数イデアルの積が可逆であること)。$\square$

一意性の条件について

$2\Rightarrow1$ は「$0$ でないイデアルが素イデアルの積に書ける整域では分解が自動的に一意になる」ことを意味する。この事実は松下・Cohen らによる古典的な結果で、上の証明は Zar58 Chapter V, §6 の議論に従う。

Dedekind整域の基本性質

Dedekind 整域 $A$ について次が成り立つ。

  1. $A$ は Noether 環である。
  2. $A$$0$ でない素イデアルはすべて極大イデアルである。したがって $A$ が体でなければ Krull 次元は $1$ である。
  3. $A$ は整閉整域である。

1 と 2 は dedekind-domain-thm-ideal-theoretic$3\Rightarrow1$ の証明で示した。$A$ が体でなければ $0$ でない極大イデアル $P$ があり、$(0)\subsetneq P$ より長い素イデアルの鎖はないので Krull 次元は $1$ である。
3。$x\in K$$A$ 上整であるとし、$x^{n}+c_{n-1}x^{n-1}+\cdots+c_0=0$$c_i\in A$)とする。$J:=A[x]=A+Ax+\cdots+Ax^{n-1}$$x^{n}$ 以上の冪はこの関係式で低い冪に還元される)は $K$ の部分 $A$ 加群であり、$x=a/b$$a,b\in A$$b\neq0$)と書くと $b^{n-1}J\subset A$ なので分数イデアルである。$J$ は環なので $JJ=J$ である。$J\neq0$ は可逆なので消去律により $J=A$、よって $x\in J=A$ である。$\square$

Noether整域における特徴づけ

整域は極大イデアルでの局所化の共通部分

$A$ を整域、$K$ をその商体とする。$A$ の極大イデアル全体を $\mathfrak{m}$ が動くとき、$K$ の中で $A=\bigcap_{\mathfrak{m}}A_{\mathfrak{m}}$ である。また $A$ の任意の 積閉集合 $S$$0\notin S$)について、$A$ が整閉整域ならば $S^{-1}A$ も整閉整域である。

$x\in\bigcap_{\mathfrak{m}}A_{\mathfrak{m}}$ とし、$I:=\{a\in A\mid ax\in A\}$ とおく。$I$$A$ のイデアルである。$I\neq A$ と仮定すると $I\subset\mathfrak{m}$ となる極大イデアル $\mathfrak{m}$ があるが、$x\in A_{\mathfrak{m}}$ より $x=a/s$$a\in A$$s\notin\mathfrak{m}$)と書け、$sx=a\in A$ より $s\in I\subset\mathfrak{m}$ となって矛盾する。よって $1\in I$、すなわち $x\in A$ である。逆の包含は明らかである。
後半について、$x\in K$$S^{-1}A$ 上整であるとし、$x^{n}+(a_1/s_1)x^{n-1}+\cdots+(a_n/s_n)=0$$a_i\in A$$s_i\in S$)とする。$s:=s_1\cdots s_n$ を掛けて整理すると $(sx)^{n}+b_1(sx)^{n-1}+\cdots+b_n=0$$b_i\in A$)の形になるので $sx$$A$ 上整であり、$A$ が整閉なので $sx\in A$、よって $x\in S^{-1}A$ である。$\square$

Noether整域におけるDedekind整域の特徴づけ

$A$ を体でない Noether 整域とする。次の 3 条件は同値である。

  1. $A$ は Dedekind 整域である。
  2. $A$ は整閉整域であり、Krull 次元は $1$ である。
  3. $A$$0$ でない任意の素イデアル $P$ について、局所化 $A_P$ は離散付値環である。
    したがって、Dedekind 整域とは体または「Noether 環かつ整閉整域かつ Krull 次元 $1$」の整域のことである。

$1\Rightarrow2$dedekind-domain-prop-basic である。
$2\Rightarrow3$$A_P$ は Noether 局所整域であり(Noether環 の記事の命題「局所化への遺伝」)、dedekind-domain-lem-intersection により整閉である。$A_P$ の素イデアルは $P$ に含まれる $A$ の素イデアルと対応するので、Krull 次元 $1$ の仮定から $A_P$ の素イデアルは $0$$PA_P$ だけであり、$A_P$ は体でない Krull 次元 $1$ の Noether 局所整閉整域である。付値環 の記事の定理「離散付値環の整閉性による特徴づけ」(AM69 Proposition 9.2)により $A_P$ は離散付値環である。
$3\Rightarrow1$dedekind-domain-thm-ideal-theoretic の条件 3 を示す。$0$ でないイデアル $I$ が可逆であることを示せば十分である(分数イデアルについては dedekind-domain-thm-ideal-theoretic$2\Rightarrow3$ の証明の末尾の議論と同様に $aI$ に帰着する)。$J:=II^{-1}\subset A$ とおき、$J\neq A$ と仮定して $J$ を含む極大イデアル $\mathfrak{m}$ を取る。$\mathfrak{m}\neq0$ なので $A_{\mathfrak{m}}$ は離散付値環であり、その $0$ でないイデアル $IA_{\mathfrak{m}}$ は単項である(付値環 の記事の定理「離散付値環の特徴づけ」)。生成元は $I$ の元に取れる。実際 $IA_{\mathfrak{m}}=(y/s)A_{\mathfrak{m}}$$y\in I$$s\notin\mathfrak{m}$)なら $s/1$ が単元なので $IA_{\mathfrak{m}}=yA_{\mathfrak{m}}$ である。$A$ は Noether 環なので $I=(a_1,\dots,a_n)$ と書け、各 $a_i\in IA_{\mathfrak{m}}=yA_{\mathfrak{m}}$ より $a_i=y\,b_i/s_i$$b_i\in A$$s_i\notin\mathfrak{m}$)である。$s:=s_1\cdots s_n\notin\mathfrak{m}$ とおくと $sa_i\in yA$$1\le i\le n$)なので $sI\subset yA$、すなわち $(s/y)I\subset A$$s/y\in I^{-1}$ である。よって $s=(s/y)\cdot y\in I^{-1}I=J\subset\mathfrak{m}$ となり、$s\notin\mathfrak{m}$ に反する。ゆえに $J=A$ であり $I$ は可逆である。
$1\Rightarrow3$ を直接示すこともできる。$P$ は可逆なので $1=\sum_kp_kq_k$$p_k\in P$$q_k\in P^{-1}$)と書け、すべての $p_kq_k$$P$ に属することはない($1\notin P$)。$pq\notin P$$p\in P$$q\in P^{-1}$)を取ると $pq\in A\setminus P$$A_P$ の単元である。$x\in PA_P$ を任意に取ると $x=y/s$$y\in P$$s\notin P$)で、$xq=yq/s$$yq\in PP^{-1}=A$ なので $xq\in A_P$ であり、$x=p\cdot(xq)(pq)^{-1}\in pA_P$ である。よって $PA_P=pA_P$ は単項であり、$A_P$ は体でない Noether 局所整域で極大イデアルが $0$ でない単項イデアルなので、付値環 の記事の定理「離散付値環の特徴づけ」により離散付値環である。$\square$

Noether性の仮定について

条件 3 だけからは Noether 性は従わない。$0$ でない素イデアルでの局所化がすべて離散付値環であるが Noether でない整域が存在し、そのような整域を概 Dedekind 整域(almost Dedekind domain)という。有限生成イデアルがすべて可逆な整域を Prüfer整域 といい、Dedekind 整域は Noether 環である Prüfer 整域にほかならない。これらの例と性質は Bou06 Chapter VII, §2 の演習に譲る。

局所化と剰余環

$A$ を Dedekind 整域とする。

  1. $A$ の任意の積閉集合 $S$$0\notin S$)について $S^{-1}A$ は Dedekind 整域である。
  2. $A$$0$ でない任意のイデアル $I$ について、剰余環 $A/I$ のイデアルは有限個であり、すべて単項イデアルである。

1。$S^{-1}A$ は整域である。$J$$S^{-1}A$$0$ でないイデアルとし、$I:=J\cap A$ とおくと $I\neq0$$J=S^{-1}I$ である(Noether環 の記事の命題「局所化への遺伝」の証明中の等式)。$I$ は可逆なので $1=\sum_kx_ky_k$$x_k\in I$$y_k\in I^{-1}$)と書け、$y_kJ=y_kS^{-1}I\subset S^{-1}A$ なので $y_k$$J$ の逆分数イデアルに属し、$1\in JJ^{-1}$、すなわち $J$ は可逆である。よって $S^{-1}A$dedekind-domain-thm-ideal-theoretic の条件 3 を満たす。
2。$I=P_1^{e_1}\cdots P_r^{e_r}$$P_i$ は相異なる極大イデアル、$e_i\ge1$)と分解する。$I\subset J$ を満たすイデアル $J$$I=JL$ と書け(dedekind-domain-thm-ideal-theoretic の条件 4)、分解の一意性から $J=P_1^{f_1}\cdots P_r^{f_r}$$0\le f_i\le e_i$)である。よって $A/I$ のイデアルは有限個($\prod(e_i+1)$ 個以下)である。$J$ の像が単項であることを示す。各 $i$ について $x_i\in P_i^{f_i}\setminus P_i^{f_i+1}$ を取り($P_i^{f_i}\neq P_i^{f_i+1}$ は消去律による)、中国剰余定理 により $x\equiv x_i\pmod{P_i^{e_i+1}}$$1\le i\le r$)を満たす $x\in A$ を取る($P_i^{e_i+1}$ たちは互いに素である。実際 $P_i^{a}+P_j^{b}\neq A$ なら、これを含む極大イデアル $M$$P_i^{a}$$P_j^{b}$ を含むので素性から $P_i$$P_j$ を含み、極大性から $M=P_i=P_j$ となって $i\neq j$ に反する)。$x\in P_i^{f_i}$ かつ $x\notin P_i^{f_i+1}$ なので、$(x)$ の分解における $P_i$ の指数はちょうど $f_i$ である。よって $(x)+I$ の分解における $P_i$ の指数は $\min\{f_i,e_i\}=f_i$ であり($(x)+I$$(x)$$I$ をともに含む最小のイデアルで、含むことは割ることなので、これは $(x)$$I$ の最大公約イデアル $\prod P_i^{\min\{f_i,e_i\}}$ である)、$(x)+I=J$ である。すなわち $J$$A/I$ における像は $\bar x$ で生成される。$\square$

イデアル類群と単項イデアル整域

イデアル類群の定義

$A$ を Dedekind 整域とする。$0$ でない分数イデアル全体は積について群をなす(dedekind-domain-thm-ideal-theoretic)。これを $\mathcal{I}(A)$ と書く。$0$ でない単項分数イデアル $xA$$x\in K^{\times}$)全体は部分群 $\mathcal{P}(A)$ をなし、剰余群
$$\operatorname{Cl}(A):=\mathcal{I}(A)/\mathcal{P}(A)$$
$A$イデアル類群イデアル類群、ideal class group)という。$x\mapsto xA$ は群の 全射準同型 $K^{\times}\to\mathcal{P}(A)$ で、その核は $A^{\times}$ である。

イデアル類群が自明な条件

Dedekind 整域 $A$ について次の 3 条件は同値である。

  1. $A$ は単項イデアル整域である。
  2. $A$ は一意分解整域である。
  3. $\operatorname{Cl}(A)$ は自明な群である。

$1\Rightarrow2$単項イデアル整域 の記事の定理「単項イデアル整域は一意分解整域」である。
$2\Rightarrow1$$0$ でない素イデアル $P$ を取り、$0$ でない $b\in P$ を素元の積 $b=p_1\cdots p_k$ に分解する。$P$ は素イデアルなのである $p_i\in P$ であり、$(p_i)$$0$ でない素イデアルで $(p_i)\subset P$ である。$0$ でない素イデアルは極大なので(dedekind-domain-prop-basic$P=(p_i)$ は単項である。$0$ でない任意のイデアルは素イデアルの積なので単項であり、$A$ は単項イデアル整域である。
$1\Leftrightarrow3$$\operatorname{Cl}(A)$ が自明であることは、$0$ でない任意の分数イデアル $I$ が単項分数イデアル $xA$ であることと同値である。$A$ が単項イデアル整域なら、$aI\subset A$ となる $a\neq0$ を取って $aI=(b)$ と書けば $I=(b/a)A$ である。逆にすべての分数イデアルが単項なら、特にイデアルはすべて単項である。$\square$

イデアル類群の有限性

代数体 $K$ の整数環 $\mathcal{O}_K$ のイデアル類群 $\operatorname{Cl}(\mathcal{O}_K)$ は有限群である。その位数を $K$類数という。一方、任意のアーベル群 $G$ に対し、$\operatorname{Cl}(A)\cong G$ となる Dedekind 整域 $A$ が存在する。

有限性定理の出典

前半は Minkowskiの格子点定理 を用いる代数的整数論の基本定理であり、証明は Neu99 Chapter I, Theorem 6.3 に譲る。後半は Claborn の定理であり、Cla66 による。一般の Dedekind 整域のイデアル類群は有限とは限らない。

整閉包への遺伝

整閉包へのDedekind性の遺伝

$A$ を Dedekind 整域、$K$ をその商体、$L$$K$ の有限次拡大体、$B$$L$ における $A$整閉包 とする。このとき $B$ は Dedekind 整域であり、$L$$B$ の商体である。特に、代数体 $K$ の整数環 $\mathcal{O}_K$$K$ における $\mathbb{Z}$ の整閉包)は Dedekind 整域である。

遺伝定理の出典と証明の概略

$B$ が整閉整域であること(整閉包は整閉である)と、$B$ の Krull 次元が $1$ であること(整拡大上昇定理 と非比較定理により、$B$ の素イデアルの真の鎖を $A$ に制限すると真の鎖になる)は一般論から従う。難しいのは $B$ が Noether 環であることで、$L/K$分離拡大 のときは、トレース 形式 $\operatorname{Tr}_{L/K}$ の非退化性により $B$ が有限生成 $A$ 加群であることが示され(Ser79 Chapter I, §4, Proposition 8)、$B$ は Noether 環になる。$\mathbb{Q}$完全体 なので代数体の整数環はこの場合に含まれる。$L/K$ が分離的でない場合は $B$ は有限生成 $A$ 加群とは限らないが、それでも Noether 環である。これが Krull–秋月の定理であり、証明は Mat86 Theorem 11.7 に譲る。
Dedekind 整域が単項イデアル整域の有限次拡大における整閉包としてすべて得られるかという問い(Zariski–Samuel)には否定的な答えがあり、Cla66 が反例を構成した。有限次とは限らない代数拡大での整閉包は Dedekind 整域とは限らず(dedekind-domain-rem-counterexample$\overline{\mathbb{Z}}$)、一般には Prüfer 整域になる(Bou06 Chapter VII, §2)。

加群の構造

Dedekind整域上の加群

$A$ を Dedekind 整域、$M$$A$ 加群とする。

  1. $M$有限生成加群捩れ をもたないならば、$M$射影加群 であり、整数 $r\ge0$$0$ でないイデアル $I$ により $M\cong A^{r}\oplus I$ と書ける。$r+1$$M$ の階数($M\otimes_AK$$K$ 上の次元)であり、$I$ の類 $[I]\in\operatorname{Cl}(A)$$M$ から一意に定まる。
  2. $M$ が有限生成ならば、$M$ の捩れ部分 $T(M)$ は直和因子であり、$M\cong T(M)\oplus A^{r}\oplus I$ と書ける。$T(M)$$0$ でないイデアルの列 $I_1\subset I_2\subset\cdots\subset I_n$ により $T(M)\cong A/I_1\oplus\cdots\oplus A/I_n$ と書け、この列は $T(M)$ から一意に定まる。
  3. $M$入射加群 であることと、$M$可除加群 であることは同値である。
加群の定理の出典

1 と 2 は単項イデアル整域上の有限生成加群の構造定理(単項イデアル整域 の記事の定理「単項イデアル整域上の加群」)の一般化であり、証明は Bou06 Chapter VII, §4, no. 10 に譲る。証明の要点は、有限生成で捩れのない加群が射影的であること(局所的に自由であることを $A_{\mathfrak{m}}$ が離散付値環であることから導く)、階数 $1$ の射影加群が分数イデアルと同型であること、捩れ部分の消滅イデアルが素イデアルの積に分解することにある。3 は Rot09 の Dedekind 環の章(Dedekind 整域上の入射加群と可除加群)に譲る。可除加群が入射的になる整域は Dedekind 整域に限ることも知られている(同書)。

補足

Dedekind 整域は整域のクラスの階層の中で次の位置にある。
$$\text{単項イデアル整域}\ \subsetneq\ \text{Dedekind 整域}\ \subsetneq\ \text{Noether 整閉整域},\qquad\text{Dedekind 整域}\ \subsetneq\ \text{Prüfer 整域}.$$
包含が真であることは、それぞれ $\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$$k[X,Y]$$\overline{\mathbb{Z}}$ が示す。Dedekind 整域 $A$$0$ でない素イデアル全体が生成する 自由アーベル群$\operatorname{Div}(A)$ と書くと、dedekind-domain-thm-ideal-theoretic により $\operatorname{Div}(A)\to\mathcal{I}(A)$$\sum n_PP\mapsto\prod P^{n_P}$ は群の同型であり、イデアル類群は 因子類群 $\operatorname{Div}(A)/\{\operatorname{div}(x)\mid x\in K^{\times}\}$ と一致する。この見方は $\operatorname{Spec}A$$1$ 次元の 正則スキーム(滑らかな曲線)とみなす代数幾何学の見方に対応し、因子 の記事および Picard群 の記事で扱われる。$A$ が体でない Dedekind 整域のとき $\operatorname{Pic}(A)\cong\operatorname{Cl}(A)$ である(Picard群 の記事)。
Dedekind 整域の理論は、代数的整数論では素イデアルの分岐・分解の理論(Neu99 Chapter I)へ、代数幾何学では曲線上の因子と Riemann–Rochの定理 へ、可換環論では Krull整域(高次元化)と Prüfer 整域(非 Noether 化)へと発展する。また、ホモロジー代数の観点からは、Dedekind 整域は遺伝環(すべてのイデアルが射影加群である環)である整域にほかならず、入射加群と可除加群の一致(dedekind-domain-thm-modules の 3)もこの観点から示される。これらは Rot09 を参照。

関連項目

参考文献

[1]
M. F. Atiyah, I. G. Macdonald, Introduction to Commutative Algebra, Addison-Wesley, 1969, Chapter 9(Proposition 9.2 離散付値環、Theorem 9.3 Dedekind 整域の特徴づけ、Theorem 9.5 代数体の整数環)
[2]
Hideyuki Matsumura (translated by Miles Reid), Commutative Ring Theory, Cambridge Studies in Advanced Mathematics 8, Cambridge University Press, 1986, §11(Theorem 11.2 離散付値環、Theorem 11.6 Dedekind 整域、Theorem 11.7 Krull–秋月の定理)
[3]
Oscar Zariski, Pierre Samuel, Commutative Algebra, Volume I, Graduate Texts in Mathematics 28, Springer, 1975, Chapter V, §6–7(素イデアル分解をもつ整域、Dedekind 整域)
[4]
N. Bourbaki, Commutative Algebra, Chapters 1–7, Springer, 2006, Chapter VII, §2(Dedekind 整域、Prüfer 整域)、§4, no. 10(Dedekind 整域上の有限生成加群)
[5]
Jean-Pierre Serre, Local Fields, Graduate Texts in Mathematics 67, Springer, 1979, Chapter I, §4, Proposition 8(分離拡大における整閉包の有限生成性)
[6]
Jürgen Neukirch (translated by Norbert Schappacher), Algebraic Number Theory, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 322, Springer, 1999, Chapter I, §3(Dedekind 整域とイデアル論)、§6(Theorem 6.3 類数の有限性)
[7]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Graduate Texts in Mathematics 52, Springer, 1977, Chapter I, Theorem 5.1(滑らかな点の局所環は正則局所環)、Theorem 6.2A(離散付値環の特徴づけ)
[8]
Joseph J. Rotman, An Introduction to Homological Algebra, Universitext, Springer, 2009, Dedekind 環の章(遺伝環、Dedekind 整域上の入射加群と可除加群)
[9]
Luther Claborn, Every abelian group is a class group, Pacific Journal of Mathematics, 1966, 219–222

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