Jordan測度

同義語:ジョルダン測度Jordan measureJordan content

概要

Jordan測度(Jordan measure)とは、$\mathbb{R}^d$ の有界な集合を有限個の直方体の和で内側と外側から挟み、内側の体積の上限と外側の体積の下限が一致するときに、その値を集合の体積とする測り方である。有界な集合が Jordan 可測であることは、境界を体積の和がいくらでも小さい直方体の有限和で覆えること、特性関数が Riemann 積分可能であること、境界の Lebesgue 測度が $0$ であることのそれぞれと同値であり、このとき Jordan 測度は Lebesgue 測度に一致する。Jordan 可測な集合は有限個の和・共通部分・差について閉じ、Jordan 測度は有限加法的で、Riemann 積分可能な非負関数のグラフの下の部分の面積は定積分に等しい。一方、$[0,1]$ の有理数全体のように Jordan 可測でない可算集合もある。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Riemann積分, 境界, 閉包, 連結空間

平面の図形の面積や空間の立体の体積を、長方形や直方体の和で内側と外側から挟んで定める方法を Jordan 測度(Jordan measure)という。内側から近づけた値と外側から近づけた値が一致する図形を Jordan 可測といい、その共通の値を面積・体積とする。高校で「グラフの下の部分の面積は定積分で求まる」「図形を分けて面積を足してよい」と認めて使ってきた性質は、この定義から証明できる。
Jordan 可測かどうかは、図形の 境界 の大きさだけで決まる。境界を有限個の長方形の和で覆い、その面積の合計をいくらでも小さくできることが、Jordan 可測であるための必要十分条件である。また、図形の特性関数が Riemann 積分可能であることとも同値であり、面積はその積分に等しい。一方で、有理数の点の集合のように境界が大きい図形は Jordan 可測でなく、Jordan 可測な集合は可算個の和について閉じていない。この欠点を取り除くために作られたのが Lebesgue測度 である。
以下、$d\ge1$ を固定し、$\mathbb R^d$ の部分集合を考える。

定義

直方体と基本集合

$\mathbb R$ の有界な区間 $I$(両端 $a\le b$ を含むか含まないかは問わない。$a=b$ も許す)の 長さ を $\lvert I\rvert:=b-a$ とする。$d$ 個の区間の直積 $B=I_1\times\cdots\times I_d$ を 直方体(box)といい、その 体積 を $\lvert B\rvert:=\lvert I_1\rvert\cdots\lvert I_d\rvert$ とする。有限個の直方体の和集合を 基本集合(elementary set)という。

空集合も(長さ $0$ の開区間 $(a,a)$ の直積として)直方体に含める。直方体 $B$ の閉包 $\overline B$ と内部 $B^\circ$ も直方体で、$\lvert\overline B\rvert=\lvert B^\circ\rvert=\lvert B\rvert$ である。また、どの直方体 $B$ と $\eta>0$ についても、$\overline B$ を含む開いた直方体 $U$ で $\lvert U\rvert<\lvert B\rvert+\eta$ となるものがある(各辺を両側に少しずつ延ばせばよい)。

基本集合の測度
  1. 基本集合の和集合・共通部分・差集合と平行移動は、基本集合である。どの基本集合も、互いに交わらない有限個の直方体の和集合として書ける。
  2. 基本集合 $E$ を互いに交わらない直方体 $B_1,\dots,B_k$ の和に分けたとき、$m(E):=\lvert B_1\rvert+\cdots+\lvert B_k\rvert$ は分け方によらない。これを $E$ の 基本測度 という。
  3. 基本測度は、互いに交わらない基本集合について加法的であり、単調($E\subset F$ なら $m(E)\le m(F)$)で、劣加法的($m(E\cup F)\le m(E)+m(F)$)で、平行移動で変わらない。
座標の分点と格子点の個数

要点:有限個の直方体の端点を座標ごとに並べると、全体を互いに交わらない小さな直方体に切り分けられる。基本測度は、細かい格子の点の個数の極限として分け方によらずに表せる。

詳しい証明を開く

1:有限個の直方体 $B_1,\dots,B_k$ が与えられたとする。各座標 $j$ について、$B_i$ の第 $j$ 辺の端点をすべて小さい順に並べ、隣り合う 2 点の間の開区間と各端点 1 点ずつの区間を考える。これらは互いに交わらず、各 $B_i$ の第 $j$ 辺はそのいくつかの和である。座標ごとに 1 つずつ選んだ直積(小直方体)は互いに交わらず、各 $B_i$ はそのいくつかの和になる。したがって $B_i$ たちの和・共通部分・差は小直方体のいくつかの和であり、互いに交わらない直方体の和である。平行移動は直方体を同じ体積の直方体に移す。

2:$N$ を正の整数とし、$\Lambda_N:=\frac1N\mathbb Z^d$ とおく。端点 $a\le b$ の区間 $I$ について、$I\cap\frac1N\mathbb Z$ の点の個数は $N(b-a)-1$ 以上 $N(b-a)+1$ 以下なので、$\frac1N\#(I\cap\frac1N\mathbb Z)\to\lvert I\rvert$ である。座標ごとに掛けると、直方体 $B$ について $N^{-d}\#(B\cap\Lambda_N)\to\lvert B\rvert$ である。$E$ が互いに交わらない $B_1,\dots,B_k$ の和なら、$\#(E\cap\Lambda_N)=\sum_i\#(B_i\cap\Lambda_N)$ なので $$ \lvert B_1\rvert+\cdots+\lvert B_k\rvert=\lim_{N\to\infty}N^{-d}\#(E\cap\Lambda_N) $$ であり、右辺は分け方によらない。

3:2 の極限の式から、点の個数の性質 $\#((E\sqcup F)\cap\Lambda_N)=\#(E\cap\Lambda_N)+\#(F\cap\Lambda_N)$、$E\subset F$ なら $\#(E\cap\Lambda_N)\le\#(F\cap\Lambda_N)$、$\#((E\cup F)\cap\Lambda_N)\le\#(E\cap\Lambda_N)+\#(F\cap\Lambda_N)$ がそのまま基本測度に移る。平行移動の不変性は、互いに交わらない直方体への分け方を平行移動すればよい。$\square$

この補題と格子点による証明は Tao11 Lemma 1.1.2(pp. 6–7)による(1 の和・共通部分・差の部分は同書 Exercise 1.1.1)。基本集合 $E$ を互いに交わらない直方体 $B_i$ に分けたとき、$\bigcup_i\overline{B_i}$ は $E$ の閉包を含む基本集合で、劣加法性から $m(\bigcup_i\overline{B_i})\le\sum_i\lvert B_i\rvert=m(E)$ である。また内部 $B_i^\circ$ たちは互いに交わらないので $m(\bigcup_iB_i^\circ)=m(E)$ である。この 2 つを以下でくり返し使う。

Jordan測度

$E\subset\mathbb R^d$ を有界な集合とする。
$$ m_*(E):=\sup\{m(A)\mid A\subset E,\ A\text{ は基本集合}\},\qquad m^*(E):=\inf\{m(B)\mid E\subset B,\ B\text{ は基本集合}\} $$
をそれぞれ $E$ の Jordan 内測度、Jordan 外測度 という。$m_*(E)=m^*(E)$ のとき $E$ は Jordan 可測(Jordan measurable)であるといい、この値を $E$ の Jordan 測度 $m(E)$ という。$d=2$ のときは面積、$d=3$ のときは体積ともいう。有界でない集合は Jordan 可測とはいわない。

基本集合の単調性から $m_*(E)\le m^*(E)$ である。基本集合はそれ自身で内側と外側から挟めるので Jordan 可測で、Jordan 測度は基本測度に一致する。Jordan 外測度が $0$ の集合を Jordan 零集合、あるいは 体積 $0$ の集合 という。Jordan 零集合は Jordan 可測である。

三角形の面積

$T:=\{(x,y)\mid 0\le y\le x\le1\}$ とする。$[0,1]$ を $n$ 等分し、$k=1,\dots,n$ について幅 $\frac1n$ の長方形
$$ \Bigl[\tfrac{k-1}n,\tfrac kn\Bigr]\times\Bigl[0,\tfrac{k-1}n\Bigr]\subset T\subset\Bigl[\tfrac{k-1}n,\tfrac kn\Bigr]\times\Bigl[0,\tfrac kn\Bigr]\quad(\text{各列ごと}) $$
の和を $A_n$、$B_n$ とすると、$A_n\subset T\subset B_n$ である。長方形の内部は互いに交わらないので $m(A_n)\ge\sum_k\frac{k-1}{n^2}=\frac{n-1}{2n}$、劣加法性から $m(B_n)\le\sum_k\frac k{n^2}=\frac{n+1}{2n}$ である。よって $\frac{n-1}{2n}\le m_*(T)\le m^*(T)\le\frac{n+1}{2n}$ であり、$n\to\infty$ として $T$ は Jordan 可測で面積は $\frac12$ である。

主定理:境界による特徴づけ

閉じた直方体 $R=[a_1,b_1]\times\cdots\times[a_d,b_d]$(各 $j$ で $a_j< b_j$)の 分割 とは、各辺 $[a_j,b_j]$ の分割 $a_j=t_{j,0}< t_{j,1}<\cdots< t_{j,n_j}=b_j$ の組 $P$ のことである。各辺の小区間 $[t_{j,i-1},t_{j,i}]$ を 1 つずつ選んだ直積を $P$ の セル という。セルは閉じた直方体で、内部は互いに交わらず、体積の和は $\lvert R\rvert$ である(積を展開すればよい)。有界な関数 $f\colon R\to\mathbb R$ の下限和・上限和を $L(f,P):=\sum_Q(\inf_Qf)\lvert Q\rvert$、$U(f,P):=\sum_Q(\sup_Qf)\lvert Q\rvert$($Q$ はセル全体を動く)とする。$f$ が $R$ 上で Riemann 積分可能であることは、任意の $\varepsilon>0$ について $U(f,P)-L(f,P)<\varepsilon$ となる分割 $P$ があることと同値で、このとき積分 $\int_Rf$ はすべての分割 $P$ について $L(f,P)$ と $U(f,P)$ の間にある(Leb26 Proposition 10.1.6・Definition 10.1.7・Proposition 10.1.12、pp. 94–97。1 変数の場合は Riemann積分 の定理「可積分性の判定条件」)。集合 $E$ の 特性関数 $\chi_E$ を、$E$ の点で $1$、それ以外で $0$ をとる関数とする。

Jordan可測性の判定条件

$E\subset\mathbb R^d$ を有界な集合、$R$ を $E$ を含む閉じた直方体(各辺の長さは正)とする。次の 4 条件は同値である。

  1. $E$ は Jordan 可測である。
  2. 任意の $\varepsilon>0$ について、基本集合 $A\subset E\subset B$ で $m(B\setminus A)<\varepsilon$ となるものがある。
  3. 境界 $\partial E$ の Jordan 外測度は $0$ である。
  4. 特性関数 $\chi_E$ は $R$ 上で Riemann 積分可能である。
    このとき $m(E)=\displaystyle\int_R\chi_E$ である。
1・2・3・4 の順にたどって 1 へ戻る

1 ⇒ 2:$\varepsilon>0$ について、$m(A)>m(E)-\frac\varepsilon2$ となる基本集合 $A\subset E$ と、$m(B)< m(E)+\frac\varepsilon2$ となる基本集合 $B\supset E$ をとる。$A\subset B$ なので、加法性から $m(B\setminus A)=m(B)-m(A)<\varepsilon$ である。
2 ⇒ 3:$A$ と $B$ を、それぞれ互いに交わらない直方体 $A_i$、$B_j$ の和に分ける。$B':=\bigcup_j\overline{B_j}$、$A':=\bigcup_iA_i^\circ$ とおくと、$\overline E\subset\overline B\subset B'$、$E^\circ\supset A^\circ\supset A'$ なので、境界 $\partial E=\overline E\setminus E^\circ$ は基本集合 $C:=B'\setminus A'$ に含まれる。$C$ と $A'$ は互いに交わらず、和は $B'$ である($A'\subset A\subset B\subset B'$)。よって
$$ m(C)=m(B')-m(A')\le m(B)-m(A)=m(B\setminus A)<\varepsilon $$
であり、$m^*(\partial E)<\varepsilon$ である。$\varepsilon$ は任意なので $m^*(\partial E)=0$ である。
3 ⇒ 4:$\varepsilon>0$ をとる。$m(C)<\frac\varepsilon2$ となる基本集合 $C\supset\partial E$ を直方体 $D_1,\dots,D_k$ の和に分け、開いた直方体 $U_i\supset\overline{D_i}$ を $\sum_i\lvert U_i\rvert<\varepsilon$ となるようにとる。$R$ の分割 $P$ を、第 $j$ 辺の分点が $U_i$ たちの第 $j$ 辺の端点のうち $[a_j,b_j]$ に入るものをすべて含むようにとる。
(a) セル $Q$ が $U_i$ と交われば $Q\subset\overline{U_i}\cap R$ である。実際、第 $j$ 座標で $Q$ の辺を $[s,t]$(隣り合う分点)、$U_i$ の辺を $(u,v)$ とすると、$[s,t]$ と $(u,v)$ が交わるので $u< t$ である。$u>s$ なら $u\in(s,t)\subset[a_j,b_j]$ は分点なので、$s,t$ が隣り合うことに反する。よって $u\le s$ であり、同様に $t\le v$ である。$\overline{U_i}\cap R$ は端点が分点の閉じた直方体なのでいくつかのセルの和であり、$U_i$ と交わるセルの体積の和は $\lvert\overline{U_i}\cap R\rvert\le\lvert U_i\rvert$ 以下である。
(b) どの $U_i$ とも交わらないセル $Q$ は $\partial E$ と交わらない。$\mathbb R^d$ は開集合 $E^\circ$、$\partial E$、開集合 $\mathbb R^d\setminus\overline E$ の 3 つに分かれ、$Q$ は凸なので連結だから、$Q\subset E^\circ$ または $Q\cap\overline E=\emptyset$ である(連結空間)。
$\chi_E$ のセル $Q$ 上の下限は $Q\subset E$ のときに限り $1$、上限は $Q\cap E\ne\emptyset$ のときに限り $1$ なので、
$$ U(\chi_E,P)-L(\chi_E,P)=\sum\bigl\{\lvert Q\rvert\bigm|Q\cap E\ne\emptyset,\ Q\not\subset E\bigr\} $$
である。右辺のセルは (b) の場合に当たらないので、ある $U_i$ と交わる。(a) から右辺は $\sum_i\lvert U_i\rvert<\varepsilon$ 以下であり、$\chi_E$ は $R$ 上で積分可能である。
4 ⇒ 1 と値:$R$ の任意の分割 $P$ について、$A_P$ を $E$ に含まれるセルの和、$B_P$ を $E$ と交わるセルの和とする。$A_P\subset E\subset B_P$ である($E\subset R$ はセル全体の和に含まれる)。セルの内部は互いに交わらないので $m(A_P)\ge L(\chi_E,P)$、劣加法性から $m(B_P)\le U(\chi_E,P)$ である。よって、すべての分割 $P$ について
$$ L(\chi_E,P)\le m_*(E)\le m^*(E)\le U(\chi_E,P) $$
が成り立つ(以下この不等式を (★) と呼ぶ)。4 を仮定すると $U(\chi_E,P)-L(\chi_E,P)$ はいくらでも小さくできるので $m_*(E)=m^*(E)$ であり、$m(E)$ と $\int_R\chi_E$ はどの分割でも同じ区間 $[L(\chi_E,P),U(\chi_E,P)]$ に入るので一致する。$\square$

(★) から、閉じた直方体の分割のセルだけを使って内側と外側から挟む定義(体積と回転体 の定義「体積と面積」や Leb26 §10.5.1 の定義)は、この記事の定義と同じ集合を Jordan 可測とし、同じ値を与える。3 は Tao11 Exercise 1.1.18 (3)(p. 13)、4 との同値は Leb26 Proposition 10.5.1(p. 123)の「境界の測度が $0$」の形と合わせて読める(thm-jm-lebesgue)。

基本的な性質

和・共通部分・差と有限加法性

$E,F\subset\mathbb R^d$ を Jordan 可測な集合とする。

  1. $E\cup F$、$E\cap F$、$E\setminus F$ は Jordan 可測である。
  2. $E\cap F=\emptyset$ なら $m(E\cup F)=m(E)+m(F)$ である。
  3. $E\subset F$ なら $m(E)\le m(F)$ であり、$m(F\setminus E)=m(F)-m(E)$ である。
  4. $x\in\mathbb R^d$ について $E+x$ は Jordan 可測で、$m(E+x)=m(E)$ である。
境界で判定する

1:点 $p$ が $\partial E\cup\partial F$ に属さなければ、$p$ のある開球 $V$ の上で、$E$ は $V$ 全体を含むか $V$ と交わらず、$F$ も同様である。すると $E\cup F$、$E\cap F$、$E\setminus F$ のそれぞれも $V$ 全体を含むか $V$ と交わらないので、$p$ はそれらの境界の点でない。よって 3 つの集合の境界は $\partial E\cup\partial F$ に含まれる。Jordan 外測度は基本測度の劣加法性から劣加法的なので、$m^*(\partial E\cup\partial F)=0$ であり、thm-jm-criterion の 3 により 3 つとも Jordan 可測である。
2:$\varepsilon>0$ について、thm-jm-criterion の 2 のように $A\subset E\subset B$、$A'\subset F\subset B'$ をとる。$A$ と $A'$ は交わらないので、$A\cup A'\subset E\cup F\subset B\cup B'$ から
$$ m(A)+m(A')\le m(E\cup F)\le m(B)+m(B') $$
である。両端はそれぞれ $m(E)+m(F)$ と $2\varepsilon$ 未満しか違わない。
3:$F$ の内側の基本集合は $E$ の内側の基本集合を含むので $m(E)=m_*(E)\le m_*(F)=m(F)$ である。後半は 1 と 2 を $F=E\sqcup(F\setminus E)$ に使えばよい。4:基本集合の平行移動で挟めばよい。$\square$

この定理は Tao11 Exercise 1.1.6(p. 10)の主張である。Jordan 可測な集合の全体は、有限個の和・共通部分・差について閉じた集合の族で、Jordan 測度はその上で有限加法的である。高校で「図形を重なりのない部分に分けて面積を足す」としてきた計算はこの定理で正当化される。重なりが線分や曲線だけのときにも足してよいことは、次の定理で曲線の面積が $0$ であることから従う。

グラフの下の部分の面積

$f\colon[a,b]\to[0,\infty)$ を Riemann 積分可能な関数とする。

  1. $D_f:=\{(x,y)\in\mathbb R^2\mid a\le x\le b,\ 0\le y\le f(x)\}$ は Jordan 可測で、$m(D_f)=\displaystyle\int_a^bf(x)\,dx$ である。
  2. グラフ $G_f:=\{(x,f(x))\mid a\le x\le b\}$ は Jordan 零集合である。
下限和と上限和の長方形で挟む

$[a,b]$ の分割 $a=x_0<\cdots< x_n=b$ をとり、$m_k$、$M_k$ を $[x_{k-1},x_k]$ での $f$ の下限・上限とする。
$$ A:=\bigcup_{k=1}^n[x_{k-1},x_k]\times[0,m_k],\qquad B:=\bigcup_{k=1}^n[x_{k-1},x_k]\times[0,M_k] $$
とおくと $A\subset D_f\subset B$ である。長方形の内部は互いに交わらないので $m(A)\ge\sum_km_k(x_k-x_{k-1})=L(f,P)$、劣加法性から $m(B)\le U(f,P)$ である。よって $L(f,P)\le m_*(D_f)\le m^*(D_f)\le U(f,P)$ であり、$f$ が積分可能なので差はいくらでも小さくでき、1 を得る。2:$G_f\subset\bigcup_k[x_{k-1},x_k]\times[m_k,M_k]$ で、右辺の基本測度は $U(f,P)-L(f,P)$ 以下である。$\square$

2つのグラフの間の面積

$g,h\colon[a,b]\to\mathbb R$ を Riemann 積分可能で $g\le h$ を満たす関数とする。$\{(x,y)\mid a\le x\le b,\ g(x)\le y\le h(x)\}$ は Jordan 可測で、面積は $\displaystyle\int_a^b\bigl(h(x)-g(x)\bigr)\,dx$ である。

$g$ は有界なので、定数 $c$ を $g+c\ge0$ ととれる。図形を $(0,c)$ だけ平行移動したものは $D_{h+c}\setminus(D_{g+c}\setminus G_{g+c})$ であり、thm-jm-ring と thm-jm-graph から Jordan 可測で、面積は $\int(h+c)-\bigl(\int(g+c)-0\bigr)=\int(h-g)$ である。$\square$

定積分と面積 で 2 曲線の間の面積を $\int_a^b(\text{上}-\text{下})\,dx$ で求めたのは、この系の連続関数の場合である。Tao11 Exercise 1.1.7(p. 10)は、閉じた直方体上の連続関数について、グラフが Jordan 零集合であることと、グラフの下の部分が Jordan 可測であることを主張している。

Lebesgue測度との関係

$\lambda$ を $\mathbb R^d$ の Lebesgue測度、$\lambda^*$ をその外測度とする。直方体 $B$ について $\lambda(B)=\lvert B\rvert$ であり(Lebesgue測度 の注意「$\mathbb{R}^n$ の Lebesgue 測度の性質」)、互いに交わらない直方体への分解から、基本集合 $A$ について $\lambda(A)=m(A)$ である。

Lebesgue測度による判定

$E\subset\mathbb R^d$ を有界な集合とする。

  1. $E$ が Jordan 可測であることと、$\lambda(\partial E)=0$ であることは同値である。
  2. $E$ が Jordan 可測なら、$E$ は Lebesgue 可測で $\lambda(E)=m(E)$ である。
コンパクト性で有限個の被覆にする

1:$E$ が Jordan 可測なら、thm-jm-criterion の 3 により、任意の $\varepsilon>0$ について $\partial E$ を含む基本集合 $C$ で $m(C)<\varepsilon$ となるものがあり、$\lambda^*(\partial E)\le\lambda(C)=m(C)<\varepsilon$ である。逆に $\lambda(\partial E)=0$ とする。Lebesgue 外測度の定義から、$\varepsilon>0$ について、体積の和が $\varepsilon$ 未満の開いた直方体の列 $V_1,V_2,\dots$ で $\partial E$ を覆える。$\partial E$ は有界閉集合なのでコンパクトであり、有限個の $V_1,\dots,V_N$ で覆える。よって $m^*(\partial E)\le\sum_{i\le N}\lvert V_i\rvert<\varepsilon$ であり、thm-jm-criterion により $E$ は Jordan 可測である。
2:各 $n$ について $A_n\subset E\subset B_n$、$m(B_n\setminus A_n)<\frac1n$ となる基本集合をとる。$F:=\bigcup_nA_n$ は Borel 集合で $F\subset E$ であり、$E\setminus F\subset B_n\setminus A_n$ なので $\lambda^*(E\setminus F)<\frac1n$ がすべての $n$ で成り立つ。外測度 $0$ の集合は Lebesgue 可測なので、$E=F\cup(E\setminus F)$ は Lebesgue 可測である。$A_n\subset E\subset B_n$ から $m(A_n)\le\lambda(E)\le m(B_n)$ であり、$n\to\infty$ として $\lambda(E)=m(E)$ を得る。$\square$

1 は Leb26 Proposition 10.5.1(p. 123)の形であり、同書は特性関数 $\chi_E$ の不連続点の集合がちょうど $\partial E$ であることと、Riemann 積分可能性の Lebesgue の判定条件(同 Theorem 10.4.3)から証明している。2 の値の等式は、同 Proposition 10.5.3(p. 124)が Lebesgue 外測度との一致の形で示している。
Jordan 測度を Lebesgue 測度へ広げることで、可算個の和について閉じた族の上の可算加法的な測度が得られる。逆に、Jordan 外測度と Lebesgue 外測度の違いは、可算個の直方体で覆うことを許すかどうかだけである。Tao11 §1.2(p. 17 以降)はこの観点から Lebesgue 測度を導入している。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
境界の Jordan 外測度が $0$(thm-jm-criterion の 3)$\mathbb Q\cap[0,1]$$m_*=0<1=m^*$ で Jordan 可測でない
thm-jm-ring の和が有限個$\mathbb Q\cap[0,1]$ を 1 点ずつの可算個の和と見る1 点は Jordan 零集合だが、可算個の和は Jordan 可測でない
境界の Lebesgue 測度が $0$(thm-jm-lebesgue の 1)$(0,1)$ から太った Cantor 集合 $K$ を除いた開集合 $U$Lebesgue 可測な開集合なのに、$m_*(U)<1=m^*(U)$ で Jordan 可測でない
thm-jm-graph の $f$ の Riemann 積分可能性$[0,1]$ 上の有理数の特性関数 $f=\chi_{\mathbb Q}$$D_f$ は Jordan 可測でない
有界$\{(x,y)\mid x\ge1,\ 0\le y\le x^{-2}\}$広義積分は $1$ だが、定義により Jordan 可測でない
反例の確かめ

まず一般に、有界な集合 $E$ について $m^*(E)=m^*(\overline E)$ である。$E\subset B$(基本集合)なら、lem-jm-elementary の後の注意により $\overline E$ は $m(B)$ 以下の基本集合に含まれるからである。また、内部が空の集合の内側に入る直方体は退化していて(どれかの辺の長さが $0$)、$m_*=0$ である。

  • $E=\mathbb Q\cap[0,1]$:内部は空なので $m_*(E)=0$、閉包は $[0,1]$ なので $m^*(E)=1$ である。境界は $[0,1]$ 全体で、$\lambda(\partial E)=1$ であることも thm-jm-lebesgue と合う。一方 $E$ は可算集合なので $\lambda(E)=0$ であり、Lebesgue 可測である。
  • $U=(0,1)\setminus K$:$K$ は Cantor集合 の例「反例:測度が正の疎な閉集合」の、内部が空で Lebesgue 測度 $\frac12$ の閉集合である。$U$ は開集合で、$K$ が区間を含まないので $\overline U=[0,1]$ であり、$m^*(U)=1$ である。$U$ に含まれる基本集合 $A$ について $m(A)=\lambda(A)\le\lambda(U)=\frac12$ なので $m_*(U)\le\frac12$ である。$K$ 自身も、内部が空なので $m_*(K)=0$、$\lambda(K)=\frac12$ から $m^*(K)\ge\frac12$ で、Jordan 可測でないコンパクト集合である。
  • $f=\chi_{\mathbb Q}$:$D_f=([0,1]\times\{0\})\cup\bigl((\mathbb Q\cap[0,1])\times[0,1]\bigr)$ は内部が空で閉包が $[0,1]^2$ なので、$m_*(D_f)=0<1=m^*(D_f)$ である。
円板の面積

半径 $r$ の閉円板 $\{x^2+y^2\le r^2\}$ は、$[-r,r]$ 上の連続関数 $g(x)=-\sqrt{r^2-x^2}$ と $h(x)=\sqrt{r^2-x^2}$ のグラフの間の図形なので、cor-jm-between により Jordan 可測で、面積は $\int_{-r}^r2\sqrt{r^2-x^2}\,dx=\pi r^2$ である。開円板との差は 2 つのグラフの和で Jordan 零集合なので、開円板の面積も $\pi r^2$ である。

補足

線形写像と体積

線形写像 $L\colon\mathbb R^d\to\mathbb R^d$ と Jordan 可測な $E$ について、$L(E)$ は Jordan 可測で $m(L(E))=\lvert\det L\rvert\,m(E)$ である(この記事では証明しない。Tao11 Exercise 1.1.11、pp. 11–12)。Jordan 可測な集合の全体の上で非負・有限加法的・平行移動で不変であり、$[0,1)^d$ で $1$ をとる関数は、Jordan 測度だけである(この記事では証明しない。同 Exercise 1.1.15、p. 12)。

名前と定義の流儀

Jordan 測度は Jordan 容積・Jordan 内容(Jordan content)とも呼ばれる。Leb26 §10.5 は特性関数の Riemann 積分可能性(thm-jm-criterion の 4)を定義に採り、Tao11 §1.1.2 は基本集合で内外から挟む定義(def-jm-jordan)を採る。どちらも thm-jm-criterion により同じ概念である。Jordan 可測な集合の全体は可算個の和について閉じていないので、Jordan 測度は可算加法的な 測度 ではない。

関連項目

参考文献

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