有理特異点(rational singularity)とは、正規曲面 $X$ の点 $x$ で、解消 $f\colon Y\to X$ の高次順像 $R^1f_*\mathcal{O}_Y$ が $x$ で消えるものであり、この条件は解消の選び方によらない。Artin の判定法により、これは例外曲線の任意の有効な組み合わせ $Z$ について $H^1(\mathcal{O}_Z)=0$ となること、また算術種数が $p_a(Z)\le0$ となることと同値であり、このとき例外曲線はすべて射影直線になる。滑らかな $d$ 次平面曲線の上の錐の頂点では幾何種数が $\binom{d}{3}$ で、有理特異点になるのは $d\le2$ のときに限る。通常2重点を含む Du Val 特異点は有理特異点の代表例である。
正規な曲面の特異点を解消すると、特異点の上に曲線の集まり(例外曲線)が載る。有理特異点(rational singularity)とは、解消 $f\colon Y\to X$ の高次順像 $R^1f_*\mathcal{O}_Y$ がその点で消える特異点のことで、「解消しても構造層のコホモロジーが増えない」特異点である。2 次錐 $xy=z^2$ の頂点は有理特異点だが、3 次曲線の上の錐 $x^3+y^3+z^3=0$ の頂点は有理特異点でない。後者では例外曲線が楕円曲線になり、その $H^1$ が消えずに残るからである。
この記事では曲面の有理特異点を定義し、定義が解消の選び方によらないことを示したうえで、主定理として次の 2 つを証明する。
以下、$k$ を代数閉体(標数は任意)とし、正規曲面とは $k$ 上有限型で分離的な次元 $2$ の正規(正規環)な整スキームのこととする。正規曲面の特異点は孤立している(正規な局所環の余次元 $1$ の局所化は離散付値環なので、特異点の集合は余次元 $2$ の閉集合、すなわち有限個の閉点である)。
$X$ を正規曲面、$x\in X$ を閉点とする。$x$ の解消とは、固有で双有理な射 $f\colon Y\to X$ で、$Y$ が正則($k$ が代数閉なので $k$ 上滑らかと同じ)であり、$x$ のある開近傍 $U$ について $f^{-1}(U\setminus\{x\})\to U\setminus\{x\}$ が同型になるものをいう。解消は存在する(特異点解消の定理「正標数と混標数での状況」の 2。Stacks Theorem 14.5(Tag 0BGP))。
正規性と Zariski の主定理から $f_*\mathcal{O}_Y=\mathcal{O}_X$ であり(形式関数の定理の系「双有理な固有射に対する Zariski の主定理」)、ファイバーの次元が $1$ 以下なので $i\ge2$ では $R^if_*\mathcal{O}_Y=0$ である(同系「ファイバーの次元による高次順像の消滅」)。$R^1f_*\mathcal{O}_Y$ は連接層で(高次順像)、$f$ が同型な所では $0$ なので、$x$ の近くでは $x$ に台をもつ有限次元のベクトル空間である。
正規曲面 $X$ の閉点 $x$ が有理特異点(rational singularity)であるとは、$x$ のある解消 $f\colon Y\to X$ について
$$
(R^1f_*\mathcal{O}_Y)_x=0
$$
となることをいう。一般に $p_g(X,x):=\dim_k(R^1f_*\mathcal{O}_Y)_x$ を $x$ の幾何種数(geometric genus)という。
$x$ が正則点なら $f=\mathrm{id}$ が解消なので、正則点は有理特異点である。上の注意から、$x$ が有理特異点であることは $x$ の近くで $Rf_*\mathcal{O}_Y=\mathcal{O}_X$(導来圏で)となることと同じである。$X=\operatorname{Spec}A$ がアフィンで $x$ だけが $f$ の同型でない点なら、$p_g(X,x)=\dim_kH^1(Y,\mathcal{O}_Y)$ である(Har77 III, Proposition 8.5(p. 251)により $R^1f_*\mathcal{O}_Y$ は $H^1(Y,\mathcal{O}_Y)$ に対応する層で、台が $x$ だけだから)。
$Y$ を $k$ 上滑らかな曲面、$\sigma\colon Y'\to Y$ を閉点 $p$ でのブローアップとする。$\sigma_*\mathcal{O}_{Y'}=\mathcal{O}_Y$ かつ $R^1\sigma_*\mathcal{O}_{Y'}=0$ である。
要点:形式関数の定理で、$H^1$ を例外曲線 $E\cong\mathbb{P}^1$ の $n$ 重の厚み $nE$ の $H^1$ に帰着させる。
前半は Zariski の主定理による。例外曲線 $E=\sigma^{-1}(p)$ は $\mathbb{P}^1$ に同型で、$\mathfrak{m}_p\mathcal{O}_{Y'}=\mathcal{O}_{Y'}(-E)$ は可逆であり(ブローアップの命題「例外因子は有効Cartier因子」)、$\mathcal{O}_{Y'}(E)|_E\cong\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(-1)$ である(ブローアップの定理「滑らかな中心のブローアップ」)。よって $\sigma^{-1}(\operatorname{Spec}\mathcal{O}_{Y,p}/\mathfrak{m}_p^{n})$ は因子 $nE$ であり、完全列$$0\to\mathcal{O}_{Y'}(-(n-1)E)|_E\to\mathcal{O}_{nE}\to\mathcal{O}_{(n-1)E}\to0$$の左端は $\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1}(n-1)$ なので $H^1=0$ である。$n$ についての帰納法で $H^1(\mathcal{O}_{nE})=0$ となり、形式関数の定理(形式関数の定理の定理「形式関数の定理」の 3)により $(R^1\sigma_*\mathcal{O}_{Y'})_p$ の完備化は $\varprojlim_nH^1(\mathcal{O}_{nE})=0$ である。有限長の加群は完備化と一致するので $(R^1\sigma_*\mathcal{O}_{Y'})_p=0$ であり、$p$ の外では $\sigma$ は同型である。$\square$
$f_1\colon Y_1\to X$、$f_2\colon Y_2\to X$ を $x$ の 2 つの解消とすると、$(R^1f_{1*}\mathcal{O}_{Y_1})_x\cong(R^1f_{2*}\mathcal{O}_{Y_2})_x$ である。とくに有理特異点であるかどうかは解消の選び方によらない。
要点:2 つの解消は点のブローアップの列でつながり、点のブローアップは $R^1$ を変えない。
滑らかな曲面の固有双有理射 $h\colon Y\to Y''$ と閉点のブローアップ $\sigma\colon Y'\to Y$ について、Lerayスペクトル系列の低次の完全列$$0\to R^1h_*(\sigma_*\mathcal{O}_{Y'})\to R^1(h\circ\sigma)_*\mathcal{O}_{Y'}\to h_*R^1\sigma_*\mathcal{O}_{Y'}$$と lem-rs-blowup から $R^1(h\circ\sigma)_*\mathcal{O}_{Y'}\cong R^1h_*\mathcal{O}_Y$ である。点のブローアップを有限回合成しても同じである。
$X$ 上の双有理写像 $Y_1\dashrightarrow Y_2$ は、$Y_1$ の閉点のブローアップの列 $\sigma\colon Y_1'\to Y_1$ を施すと $X$ 上の射 $g\colon Y_1'\to Y_2$ になる(Stacks Lemma 4.3(Tag 0C5H))。$g$ は正則な曲面の間の固有双有理射なので、閉点のブローアップの有限回の合成である(Stacks Lemma 17.1(Tag 0C5R))。上の段落を $f_1\circ\sigma$ と $f_2\circ g$ に当てると $R^1f_{1*}\mathcal{O}_{Y_1}\cong R^1(f_1\circ\sigma)_*\mathcal{O}_{Y_1'}=R^1(f_2\circ g)_*\mathcal{O}_{Y_1'}\cong R^1f_{2*}\mathcal{O}_{Y_2}$ である。$\square$
Stacks Definition 8.3(Tag 0B4N)は、2 次元の正規局所環 $A$ について「$X$ が正規な固有双有理射 $X\to\operatorname{Spec}A$ のすべてで $H^1(X,\mathcal{O}_X)=0$」を有理特異点の定義にしている。解消をもつ場合、これは上の定義と一致する($X$ を解消で支配し、同 Lemma 8.1(Tag 0AXF)の完全列で $H^1(X,\mathcal{O}_X)$ を解消の $H^1$ に埋め込めばよい)。
この節では $X=\operatorname{Spec}A$ をアフィンな正規曲面、$x\in X$ を閉点、$f\colon Y\to X$ を $x$ の解消で $X\setminus\{x\}$ の上で同型なものとする。$E:=f^{-1}(x)$(被約な構造)の既約成分を $C_1,\dots,C_r$ とする。これらは $k$ 上固有な曲線である。$r_i\ge0$ が整数で全部は $0$ でないとき、$Z=\sum_ir_iC_i$ をサイクルと呼ぶ。$Y$ は正則なので $Z$ は有効 Cartier 因子で(局所環は一意分解整域)、$\mathcal{O}_Z:=\mathcal{O}_Y/\mathcal{O}_Y(-Z)$ は $k$ 上固有な 1 次元スキーム $Z$ の構造層である。$H^i(\mathcal{O}_Z)$ は有限次元で $i\ge2$ では $0$ なので、
$$
p_a(Z):=1-\chi(\mathcal{O}_Z)=1-h^0(\mathcal{O}_Z)+h^1(\mathcal{O}_Z)
$$
を $Z$ の算術種数という。
$C_i\cong\mathbb{P}^1$ のとき、$Y$ 上の因子 $D$ について $D\cdot C_i:=\deg\bigl(\mathcal{O}_Y(D)|_{C_i}\bigr)$、$K\cdot C_i:=\deg\bigl(\omega_Y|_{C_i}\bigr)$($\omega_Y=\Omega^2_{Y/k}$)とおき、サイクル $Z=\sum r_iC_i$ について $D\cdot Z:=\sum_ir_i\,D\cdot C_i$ とする。$i\neq j$ のとき、$C_j|_{C_i}$ は $\mathbb{P}^1$ 上の有効 Cartier 因子で、その次数は長さの和なので
$$
C_j\cdot C_i=\sum_{p\in C_i\cap C_j}\dim_k\mathcal{O}_{Y,p}/(g_i,g_j)=C_i\cdot C_j
$$
($g_i,g_j$ は局所方程式)であり、$Z\cdot Z'$ はサイクルについて対称な双線形形式である。これは 曲面の交点形式 の交点数を、例外曲線の近くだけで定めたものである。
$k$ 上固有な整な曲線 $C$ で $H^1(C,\mathcal{O}_C)=0$ なら、$C\cong\mathbb{P}^1$ である。
要点:正規化で $H^1$ も特異点の寄与も消えることを、Euler 標数で見る。
正規化 $\nu\colon\tilde C\to C$ は有限射で(正規化)、$0\to\mathcal{O}_C\to\nu_*\mathcal{O}_{\tilde C}\to\mathcal{Q}\to0$ の $\mathcal{Q}$ は有限個の点に台をもつ。$C$ は整で固有、$k$ は代数閉なので $H^0(\mathcal{O}_C)=k$、同様に $H^0(\mathcal{O}_{\tilde C})=k$ である。長完全列 $0\to k\to k\to H^0(\mathcal{Q})\to H^1(\mathcal{O}_C)=0$ から $H^0(\mathcal{Q})=0$、すなわち $\mathcal{Q}=0$ で $C=\tilde C$ は正規、したがって滑らかである。さらに $H^1(\mathcal{O}_{\tilde C})=H^1(\mathcal{O}_C)=0$ なので、$C$ は種数 $0$ の滑らかな射影曲線で $\mathbb{P}^1$ に同型である(曲面の交点形式の命題「算術種数と正規化の種数」の証明と同じ)。$\square$
$C\subset Y$ が $\mathbb{P}^1$ に同型な閉曲線なら $C\cdot C+K\cdot C=-2$ である。
要点:$\det$ をとると $\omega_C\cong(\omega_Y\otimes\mathcal{O}_Y(C))|_C$ となる。
$C$ と $Y$ は $k$ 上滑らかなので、余法完全列 $0\to\mathcal{O}_Y(-C)|_C\to\Omega_{Y/k}|_C\to\Omega_{C/k}\to0$ は完全である(Stacks Morphisms, Lemma 35.17(Tag 06AA)。Har77 II, Proposition 8.20(p. 182)も参照)。階数 $2$ の局所自由層の行列式をとると $\omega_Y|_C\cong\mathcal{O}_Y(-C)|_C\otimes\omega_C$ であり、次数をとると $K\cdot C=-C\cdot C+\deg\omega_{\mathbb{P}^1}=-C\cdot C-2$ である。$\square$
すべての $C_i$ が $\mathbb{P}^1$ に同型なら、任意のサイクル $Z$ について
$$
p_a(Z)=1+\tfrac12\bigl(Z\cdot Z+K\cdot Z\bigr)
$$
である。$Z=A+B$($A,B$ はサイクル)なら $p_a(A+B)=p_a(A)+p_a(B)+A\cdot B-1$ である。
要点:$Z'$ に成分 $C$ を 1 つ足すときの完全列で、両辺が同じだけ変わることを見る。
$Q(Z):=-\frac12(Z\cdot Z+K\cdot Z)$ とおき、$\chi(\mathcal{O}_Z)=Q(Z)$ を $\sum r_i$ についての帰納法で示す。$Z=C_i$ なら $\chi(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^1})=1$ で、lem-rs-adjunction から $Q(C_i)=1$ である。$Z=Z'+C$($C$ はある $C_i$)なら、完全列$$0\to\mathcal{O}_Y(-Z')|_C\to\mathcal{O}_{Z'+C}\to\mathcal{O}_{Z'}\to0$$(左端は $\mathcal{O}_Y(-Z')/\mathcal{O}_Y(-Z'-C)$)があり、左端は $\mathbb{P}^1$ 上の次数 $-Z'\cdot C$ の可逆層なので $\chi=1-Z'\cdot C$ である。一方、対称性から $Q(Z'+C)=Q(Z')-Z'\cdot C-\frac12(C\cdot C+K\cdot C)=Q(Z')-Z'\cdot C+1$ である。両辺の増え方が一致するので $\chi(\mathcal{O}_Z)=Q(Z)$ である。後半は前半の式を展開すればよい。$\square$
上の設定で、次は同値である。
1 と 2 をつなぐのは形式関数の定理で、$x$ の上の「無限小近傍」$Y_n:=f^{-1}(\operatorname{Spec}A/\mathfrak{m}_x^{n})$($\mathfrak{m}_x^{n}\mathcal{O}_Y$ で定まる閉部分スキーム)をサイクルと比べる。次の 2 点を使う。
(a) $H^1$ の全射性。$Y$ 上の連接層の全射 $\mathcal{F}\to\mathcal{G}$ の核 $\mathcal{K}$ が $E$ に台をもつなら $H^1(\mathcal{F})\to H^1(\mathcal{G})$ は全射である。$H^2(Y,\mathcal{K})=H^2(E,\mathcal{K}|_E)$(Har77 III, Lemma 2.10(p. 209))で、$E$ は次元 $1$ の Noether 空間だから Grothendieckの消滅定理 により $0$ になるからである。
(b) 厚みの比較。$\mathfrak{m}_x\mathcal{O}_Y$ の零点は集合として $E$ なので、根基は $E$ の被約なイデアル $\mathcal{O}_Y(-\sum_iC_i)$ であり、ある $N$ で $\mathcal{O}_Y(-N\sum C_i)\subset\mathfrak{m}_x\mathcal{O}_Y\subset\mathcal{O}_Y(-\sum C_i)$ となる。したがって、各 $Z$ に対し $n$ が大きければ全射 $\mathcal{O}_{Y_n}\to\mathcal{O}_Z$ があり、各 $n$ に対しサイクル $Z=nN\sum C_i$ について全射 $\mathcal{O}_Z\to\mathcal{O}_{Y_n}$ がある。
1 ⇒ 2。形式関数の定理(形式関数の定理の定理「形式関数の定理」の 3)により、$(R^1f_*\mathcal{O}_Y)_x$ の完備化は $\varprojlim_nH^1(\mathcal{O}_{Y_n})$ である。(a) により推移写像 $H^1(\mathcal{O}_{Y_{n+1}})\to H^1(\mathcal{O}_{Y_n})$ はすべて全射なので、各 $H^1(\mathcal{O}_{Y_n})$ の元は逆極限の元に持ち上がる。1 から逆極限は $0$ なので $H^1(\mathcal{O}_{Y_n})=0$ である。任意の $Z$ について (b) の全射 $\mathcal{O}_{Y_n}\to\mathcal{O}_Z$ と (a) から $H^1(\mathcal{O}_Z)=0$ である。
2 ⇒ 1。(b) の全射 $\mathcal{O}_Z\to\mathcal{O}_{Y_n}$ と (a) から $H^1(\mathcal{O}_{Y_n})=0$ がすべての $n$ で成り立ち、逆極限、したがって $(R^1f_*\mathcal{O}_Y)_x$ の完備化が $0$ になる。この加群は有限長なので完備化と一致し、$0$ である。
2 ⇒ 3。$Z$ は空でないので $k\subset H^0(\mathcal{O}_Z)$ であり、$p_a(Z)=1-h^0(\mathcal{O}_Z)\le0$ である。
3 ⇒ 2。まず $Z=C_i$ とすると、$C_i$ は整なので $h^0(\mathcal{O}_{C_i})=1$、$p_a(C_i)=h^1(\mathcal{O}_{C_i})\le0$ となり、$H^1(\mathcal{O}_{C_i})=0$ である。lem-rs-p1 により $C_i\cong\mathbb{P}^1$ であり、lem-rs-genus が使える。$H^1(\mathcal{O}_Z)=0$ を $\sum r_i$ についての帰納法で示す。$\sum r_i=1$ は今見た。$\sum r_i\ge2$ とする。$Z$ に含まれる成分 $C$ で、$Z_0:=Z-C$ が $Z_0\cdot C\le1$ をみたすものがあると仮定してよい。実際、そうでなければ $Z$ に含まれるすべての $C_i$ で $Z\cdot C_i-C_i\cdot C_i\ge2$ であり、lem-rs-adjunction の $K\cdot C_i=-2-C_i\cdot C_i$ と合わせて
$$
2p_a(Z)-2=Z\cdot Z+K\cdot Z=\sum_ir_i\bigl(Z\cdot C_i-C_i\cdot C_i-2\bigr)\ge0
$$
となり、$p_a(Z)\ge1$ が 3 に反する。この $C$ について完全列
$$
0\to\mathcal{O}_Y(-Z_0)|_C\to\mathcal{O}_Z\to\mathcal{O}_{Z_0}\to0
$$
をとると、左端は $\mathbb{P}^1$ 上の次数 $-Z_0\cdot C\ge-1$ の可逆層なので $H^1=0$ であり、帰納法の仮定から $H^1(\mathcal{O}_{Z_0})=0$ である。長完全列から $H^1(\mathcal{O}_Z)=0$ である。
最後の主張は 3 ⇒ 2 の最初の段落で示した。$\square$
2 は「例外集合のどんな厚みをとっても、その上の関数の $H^1$ が消える」ことを、3 はそれを算術種数という数だけで言い換えたものである。3 は交点数で計算できるので、交叉行列から有理性を判定できる。たとえば Du Val特異点 の記事では、自己交点数 $-2$ の $\mathbb{P}^1$ だけからなる例外集合について 3 を確かめる。この判定法は Artin による(BHPV04 第 III 章 Theorem (3.2)(p. 94)は複素曲面の場合を、Grauert の結果を使って述べ証明している)。
$d\ge1$ とし、$F\in k[x,y,z]$ を $d$ 次の斉次多項式で、射影平面曲線 $C=V_+(F)\subset\mathbb{P}^2$ が滑らかなものとする。$X=V(F)\subset\mathbb{A}^3$($C$ の上の錐)は正規曲面で、特異点は高々頂点 $0$ だけであり、
$$
p_g(X,0)=\binom{d}{3}=\frac{d(d-1)(d-2)}{6}
$$
である。とくに $0$ が有理特異点であることと $d\le2$ は同値である。
$d=1$ なら $X$ は平面で $0$ は正則点、$d=2$ なら $0$ は通常2重点(2 次錐)、$d=3$ なら $p_g=1$ である。
正規性。$v\neq0$ で $F(v)=0$ かつ $F$ の勾配が $v$ で消えれば、$[v]$ は $C$ の特異点になる(射影平面曲線の Jacobi 判定)。よって $X$ の特異点は $0$ だけである。$C$ は滑らかなので既約で(2 つの成分があれば交点が特異点になる)、$F$ は既約である。超曲面は Cohen–Macaulay で(Cohen–Macaulay環)、特異点の集合の余次元が $2$ なので、Serre の判定法(Mat86 Theorem 23.8)により $X$ は正規である。
解消。原点でのブローアップ $\operatorname{Bl}_0\mathbb{A}^3\subset\mathbb{A}^3\times\mathbb{P}^2$ の中で、$X$ の狭義変換は
$$
Y=\{(v,[w])\mid v\in k\,w,\ [w]\in C\}
$$
である。実際、図 $U_x$($y=xt_1$、$z=xt_2$)で $F(x,xt_1,xt_2)=x^dF(1,t_1,t_2)$ なので、狭義変換は $V(F(1,t))=(C\cap D_+(x))\times\mathbb{A}^1_x$ である。射影 $p\colon Y\to C$ により $Y$ は $C$ 上の直線束($\mathcal{O}_C(-1)$ の全空間)であり、滑らかである。$f\colon Y\to X$ は固有で、$0$ の外で同型だから解消である。$f^{-1}(0)$ は零切断 $\cong C$ である。
$H^1$ の計算。$C$ を $D_+(x),D_+(y),D_+(z)$ との共通部分 $V_x,V_y,V_z$ で覆い、$W_\bullet:=p^{-1}(V_\bullet)$ とおく。これらはアフィンで、$\mathcal{O}(W_x)=\mathcal{O}(V_x)[x]$ である。$g\in\mathcal{O}(V_x)$ と $m\ge0$ について $g\,x^m$ を $\mathcal{O}_C(m)$ の $V_x$ 上の切断とみる対応は、各共通部分でも同じ形で両立し、$Y$ の Čech 複体は $\mathcal{O}_C(m)$($m\ge0$)の Čech 複体の直和になる。Čech コホモロジーは分離的な Noether スキームのアフィン被覆でコホモロジーを計算するので(Har77 III, Theorem 4.5(p. 222))、
$$
H^1(Y,\mathcal{O}_Y)\cong\bigoplus_{m\ge0}H^1(C,\mathcal{O}_C(m))
$$
である。完全列 $0\to\mathcal{O}_{\mathbb{P}^2}(m-d)\xrightarrow{F}\mathcal{O}_{\mathbb{P}^2}(m)\to\mathcal{O}_C(m)\to0$ と、$m\ge0$ で $H^1(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^2}(m))=H^2(\mathcal{O}_{\mathbb{P}^2}(m))=0$ であること(Har77 III, Theorem 5.1(p. 225))から $H^1(C,\mathcal{O}_C(m))\cong H^2(\mathbb{P}^2,\mathcal{O}(m-d))$ であり、同定理の双対性によりその次元は $d-m-3$ 次の斉次多項式の空間の次元 $\binom{d-m-1}{2}$($m\le d-3$)、$m>d-3$ なら $0$ である。よって
$$
\dim_kH^1(Y,\mathcal{O}_Y)=\sum_{m=0}^{d-3}\binom{d-1-m}{2}=\sum_{j=2}^{d-1}\binom{j}{2}=\binom{d}{3}
$$
である。$X$ はアフィンで $f$ は $0$ の外で同型なので、これが $p_g(X,0)$ である。$\square$
$d=3$ では例外曲線 $C$ は楕円曲線で $H^1(\mathcal{O}_C)\neq0$ なので、thm-rs-artin の 2 がサイクル $Z=C$ で破れていることが直接見える。この特異点の局所Picard群は無限群になる(局所Picard群の例「反例:局所Picard群が有限とは限らない」)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $X$ が正規 | $X=\operatorname{Spec}k[u,v^2,v^3]$ と正規化 $\mathbb{A}^2\to X$ | $R^1f_*\mathcal{O}_Y=0$ なら $Rf_*\mathcal{O}_Y=\mathcal{O}_X$ |
| $Y$ が正則($f$ が解消) | $3$ 次錐 $V(x^3+y^3+z^3)$ と $f=\mathrm{id}$(標数 $\neq3$) | $R^1f_*\mathcal{O}_Y=0$ なら有理特異点 |
| $C$ が滑らか | 結節点をもつ 3 次曲線の錐 $V(y^2z-x^2(x+z))$ | $X$ は正規で特異点は頂点だけ |
1 行目:$X$ は直線 $\mathbb{A}^1$ と尖点 $y^2=x^3$ の積で、$u$ 軸に沿って正規でない。正規化 $f\colon\mathbb{A}^2\to X$ は有限射なので $R^1f_*\mathcal{O}=0$ だが、$f_*\mathcal{O}_{\mathbb{A}^2}=k[u,v]\neq k[u,v^2,v^3]$ である。正規性は定義の前提で、高次順像の消滅だけでは「解消しても関数が変わらない」ことは言えない。
2 行目:$X$ はアフィンなので $H^1(X,\mathcal{O}_X)=0$ だが、thm-rs-cone により $p_g(X,0)=1$ で、頂点は有理特異点でない。$Y$ が特異なままの射では有理性を判定できない。
3 行目:$v=(0,0,1)$ の上の直線 $\{(0,0,s)\}$ の各点で $F=y^2z-x^3-x^2z$ の勾配 $(-3x^2-2xz,\,2yz,\,y^2-x^2)$ は $0$ になるので、$X$ は 1 次元の特異点の集合をもち、余次元 $1$ で正則でないから正規でない(Mat86 Theorem 23.8)。
標数 $0$ の体上の正規多様体 $X$ については、解消 $f\colon Y\to X$ で、$i>0$ について $R^if_*\mathcal{O}_Y=0$ と $R^if_*\omega_Y=0$ が成り立ち、さらに $f_*\omega_Y\cong\omega_X$ となるもの(有理解消)が存在することを有理特異点の定義とし、1 つの解消が有理解消ならすべての解消が有理解消である(Kov18 Definition 9.1・9.3 と Remark 9.4。標数 $0$ では Hironaka の解消定理から従う。この記事では証明しない)。Kempf の判定法は、$X$ が有理特異点をもつことと、$X$ が Cohen–Macaulay で $f_*\omega_Y=\omega_X$ となることが同値であると述べる(Kov18 §1 が言明を引用している。この記事では証明しない)。正標数では解消の存在がわからないので、Kov18 は解消を使わない定義を与え、解消をもつ場合に通常の定義と一致することを示している。
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