スキームの射影極限

同義語:スキームの極限limit of schemes

概要

スキームの射影極限(limit of schemes)とは、有向集合で添字づけたスキームの射影系の、スキームの圏における極限のことである。推移射がアフィン射なら、極限は底の上の準連接代数の帰納極限の相対Spec として存在し、とくに $\varprojlim\operatorname{Spec}A_\lambda=\operatorname{Spec}(\varinjlim A_\lambda)$ で、局所環のスペクトルは主開近傍の極限である。ある段が準コンパクトかつ準分離的なら、極限から局所有限表示のスキームへの射は十分先の段からの射から来て、その表し方も十分先の段で一意になる。準コンパクトな段と有限表示の仮定のもとで同型・閉埋め込み・有限射であることも有限の段に降り、局所環で作った対象を近傍に広げる議論や Noether 環への帰着に使われる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: スキーム, アフィン射, 相対Spec, 帰納極限, 有限型射

何を捉える概念か

局所環 $\mathcal{O}_{X,x}$ や関数体、無限個の変数の多項式環は、「有限的な」環の帰納極限として書ける。たとえば $X=\operatorname{Spec}R$、$x$ が素イデアル $\mathfrak{p}$ に対応する点なら $\mathcal{O}_{X,x}=R_{\mathfrak p}=\varinjlim_{r\notin\mathfrak p}R_r$ である。環の帰納系 $(A_\lambda)$ の極限のスペクトル $\operatorname{Spec}(\varinjlim A_\lambda)$ は、アフィンスキームの射影系 $(\operatorname{Spec}A_\lambda)$ の射影極限になる。とくに $\operatorname{Spec}\mathcal{O}_{X,x}$ は $x$ の主開近傍 $\operatorname{Spec}R_r$ の射影極限である。
この記事の主題は、推移射がアフィン射であるスキームの射影系について、次の 2 点を述べることである。

  • 射影極限がスキームの圏に存在し、相対Spec で具体的に書ける(thm-limsch-existence)。
  • 有限表示の対象と射は、極限から有限の段に降りる。すなわち、ある段 $S_{\lambda_0}$ が準コンパクトかつ準分離的なら、極限 $S=\varprojlim S_\lambda$ から $S_{\lambda_0}$ 上局所有限表示のスキーム $Y$ への射は、十分先の段 $S_\lambda$ からの射から来て、その表し方も十分先の段で一意になる(thm-limsch-main)。有限表示などの仮定のもとで、射が同型・閉埋め込み・有限射であることも有限の段で成り立つ(prop-limsch-properties)。
    これは Grothendieck が EGA4 §8 で整備した方法で、局所環の上で示した性質を近傍に広げるとき、一般の環の上の問題を Noether 環の上の問題に帰着させるとき(cor-limsch-noether)に使う。
    以下、環は単位元をもつ可換環とし、$\Lambda$ は有向集合とする。

定義と存在

スキームの射影系と射影極限

$\Lambda$ を有向集合とする。スキームの射影系とは、スキームの族 $(S_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ と、$\mu\ge\lambda$ ごとの射 $f_{\mu\lambda}\colon S_\mu\to S_\lambda$(推移射)の組で、$f_{\lambda\lambda}=\operatorname{id}$ かつ $\nu\ge\mu\ge\lambda$ について $f_{\mu\lambda}\circ f_{\nu\mu}=f_{\nu\lambda}$ をみたすものをいう。推移射がすべてアフィン射のとき、アフィンな射影系という。
射影系の射影極限とは、スキーム $S$ と射 $p_\lambda\colon S\to S_\lambda$ の族で、$\mu\ge\lambda$ について $f_{\mu\lambda}\circ p_\mu=p_\lambda$ をみたし、次の普遍性をもつものをいう:任意のスキーム $T$ と、$f_{\mu\lambda}\circ g_\mu=g_\lambda$ をみたす射の族 $g_\lambda\colon T\to S_\lambda$ に対し、$p_\lambda\circ g=g_\lambda$(すべての $\lambda$)をみたす射 $g\colon T\to S$ がただ 1 つ存在する。$S=\varprojlim_\lambda S_\lambda$ と書く。

射影極限は存在すれば同型を除いて一意である(射影極限 の注意「一意性と極限との関係」と同じ議論)。添字を一般の余フィルター圏にしても、有向集合の場合に帰着できる(pro-対象 の注意「記法と添字圏についての注意」)。

アフィンな推移射をもつ射影系の極限

$(S_\lambda,f_{\mu\lambda})$ をアフィンな射影系とし、$\lambda_0\in\Lambda$ を固定する。$\lambda\ge\lambda_0$ について $\mathcal{A}_\lambda:=(f_{\lambda\lambda_0})_*\mathcal{O}_{S_\lambda}$ とおくと、$(\mathcal{A}_\lambda)_{\lambda\ge\lambda_0}$ は準連接 $\mathcal{O}_{S_{\lambda_0}}$ 代数の帰納系であり、次が成り立つ。

  1. $\mathcal{A}:=\varinjlim_\lambda\mathcal{A}_\lambda$ は準連接 $\mathcal{O}_{S_{\lambda_0}}$ 代数であり、$S_{\lambda_0}$ の任意のアフィン開集合 $V$ について $\mathcal{A}(V)=\varinjlim_\lambda\mathcal{A}_\lambda(V)$ である。
  2. $S:=\mathbf{Spec}_{S_{\lambda_0}}\mathcal{A}$ は、$\mathcal{A}_\lambda\to\mathcal{A}$ に対応する射 $p_\lambda\colon S\to S_\lambda$($\lambda\ge\lambda_0$。一般の $\lambda$ については $\mu\ge\lambda,\lambda_0$ をとって $p_\lambda:=f_{\mu\lambda}\circ p_\mu$ とおく。これは $\mu$ によらない)とあわせて、$(S_\lambda)$ のスキームの圏における射影極限である。各 $p_\lambda$ はアフィン射である。
  3. $V\subset S_{\lambda_0}$ をアフィン開集合とし、$V_\lambda:=f_{\lambda\lambda_0}^{-1}(V)$、$V_S:=p_{\lambda_0}^{-1}(V)$ とおく。$V_\lambda$ と $V_S$ はアフィンスキームで、$V_S\cong\operatorname{Spec}\bigl(\varinjlim_\lambda\mathcal{O}(V_\lambda)\bigr)$ であり、$V_S$ は射影系 $(V_\lambda)_{\lambda\ge\lambda_0}$ の射影極限である。とくに、すべての $S_\lambda=\operatorname{Spec}A_\lambda$ がアフィンなら $\varprojlim_\lambda\operatorname{Spec}A_\lambda=\operatorname{Spec}\bigl(\varinjlim_\lambda A_\lambda\bigr)$ である。

要点:推移射がアフィンなので各 $S_\lambda$ は $S_{\lambda_0}$ 上の準連接代数の相対Spec であり、相対Spec からの射は代数の射と一対一に対応する。したがって極限の普遍性は、代数の帰納極限の普遍性に言い換えられる。

詳しい証明を開く

$S_0:=S_{\lambda_0}$ と書く。$f_{\lambda\lambda_0}$ はアフィン射なので、$\mathcal{A}_\lambda$ は準連接 $\mathcal{O}_{S_0}$ 代数で、$S_\lambda\cong\mathbf{Spec}_{S_0}\mathcal{A}_\lambda$ である(アフィン射 の命題「準連接代数の相対スペクトルとの対応」)。$\mu\ge\lambda\ge\lambda_0$ のとき $f_{\lambda\lambda_0}\circ f_{\mu\lambda}=f_{\mu\lambda_0}$ なので $f_{\mu\lambda}$ は $S_0$ 上の射であり、相対Spec の命題「代数の射との対応」により代数の射 $\mathcal{A}_\lambda\to\mathcal{A}_\mu$ に対応する。射の合成が代数の射の合成に対応するので、これらは帰納系をなす。

1:$V=\operatorname{Spec}R$ を $S_0$ のアフィン開集合とする。$R$ 加群 $M$ に準連接層 $\widetilde{M}$ を対応させる関手は、$\operatorname{Hom}_{\mathcal{O}_V}(\widetilde{M},\mathcal{F})\cong\operatorname{Hom}_R(M,\mathcal{F}(V))$ により大域切断の関手の左随伴であり(Har77 II Ex. 5.3)、したがって帰納極限と交換する。$\mathcal{A}_\lambda|_V\cong\widetilde{\mathcal{A}_\lambda(V)}$ だから $\mathcal{A}|_V\cong(\varinjlim_\lambda\mathcal{A}_\lambda(V))^{\sim}$ であり、$\mathcal{A}$ は準連接で $\mathcal{A}(V)=\varinjlim_\lambda\mathcal{A}_\lambda(V)$ である。積は各段の積の帰納極限として定まり、$\mathcal{A}$ は $\mathcal{O}_{S_0}$ 代数の圏でも $(\mathcal{A}_\lambda)$ の帰納極限である(EGA4 8.2.1)。

2:$T$ をスキーム、$(g_\lambda\colon T\to S_\lambda)_\lambda$ を両立する族とし、$g:=g_{\lambda_0}$ で $T$ を $S_0$ 上のスキームとみる。$\lambda\ge\lambda_0$ について $f_{\lambda\lambda_0}\circ g_\lambda=g$ なので $g_\lambda$ は $S_0$ 上の射であり、相対Spec の普遍性(相対Spec の定義「相対Spec」)により代数の射 $\theta_\lambda\colon\mathcal{A}_\lambda\to g_*\mathcal{O}_T$ に対応する。対応の自然性から $(\theta_\lambda)$ は推移射と両立し、帰納極限の普遍性によりただ 1 つの $\theta\colon\mathcal{A}\to g_*\mathcal{O}_T$ を与え、$\theta$ は $p_\lambda\circ h=g_\lambda$($\lambda\ge\lambda_0$)をみたすただ 1 つの $S_0$ 上の射 $h\colon T\to S$ に対応する。一般の $\lambda$ については $\mu\ge\lambda,\lambda_0$ をとれば $p_\lambda\circ h=f_{\mu\lambda}\circ p_\mu\circ h=f_{\mu\lambda}\circ g_\mu=g_\lambda$ である。$p_\lambda\circ h'=g_\lambda$ をみたす射 $h'$ は $p_{\lambda_0}\circ h'=g$ により $S_0$ 上の射で、同じ $\theta$ に対応するから $h'=h$ である。$p_\lambda$ がアフィン射であることは、$\lambda_0$ を $\lambda$ に取り替えて同じ構成をすれば、極限の一意性により $S\cong\mathbf{Spec}_{S_\lambda}(\varinjlim_{\mu\ge\lambda}(f_{\mu\lambda})_*\mathcal{O}_{S_\mu})$ となることからわかる。

3:相対Spec の定理「相対Spec の存在」の 1 により $V_\lambda\cong\operatorname{Spec}\mathcal{A}_\lambda(V)$、$V_S\cong\operatorname{Spec}\mathcal{A}(V)$ であり、1 から $\mathcal{A}(V)=\varinjlim\mathcal{O}(V_\lambda)$ である。$(V_\lambda)$ に 2 を当てると(底を $V$ とする)、その極限は $\mathbf{Spec}_V(\mathcal{A}|_V)=V_S$ である(相対Spec の補題「開集合への制限」)。$\square$

例:無限個の変数の多項式環

$k$ を体とし、$\mathbb{A}^n_k=\operatorname{Spec}k[x_1,\dots,x_n]$ と、最後の座標を忘れる射影 $\mathbb{A}^{n+1}_k\to\mathbb{A}^n_k$ からなる射影系を考える。推移射はアフィンスキームの間の射なのでアフィン射であり、thm-limsch-existence の 3 により
$$ \varprojlim_n\mathbb{A}^n_k=\operatorname{Spec}k[x_1,x_2,\dots] $$
である。右辺は $k$ 上有限型でない(有限型射 の例「反例:無限変数の多項式環」)。有限型でないスキームも、有限型のスキームの極限として扱える。

例:局所環のスペクトルと関数体

$X$ をスキーム、$x\in X$ とし、$U=\operatorname{Spec}R$ を $x$ のアフィン開近傍、$\mathfrak{p}\subset R$ を $x$ に対応する素イデアルとする。$r\in R\setminus\mathfrak{p}$ による主開集合 $D(r)=\operatorname{Spec}R_r$ を、$D(r)\supset D(r')$ のとき $D(r)\le D(r')$ と並べると有向集合になる($D(r)\cap D(r')=D(rr')$)。推移射はアフィンスキームの間の開埋め込みなのでアフィン射であり、$\varinjlim_{r\notin\mathfrak p}R_r=R_{\mathfrak p}=\mathcal{O}_{X,x}$(帰納極限 の例「有理数と局所化」)だから
$$ \operatorname{Spec}\mathcal{O}_{X,x}=\varprojlim_{r\notin\mathfrak p}D(r) $$
である。$X$ が整スキームで $x$ が生成点のときは $\mathfrak{p}=0$ で、$\operatorname{Spec}K(X)$($K(X)$ は関数体)は空でない主開集合 $D(r)$ 全体の射影極限である。

環の場合:有限表示と帰納極限

アフィンスキームの射影極限は環の帰納極限なので、主定理の核は環についての次の補題である。$E$ を環とし、$E$ 代数の有向集合上の帰納系 $(F_\lambda)$ とその帰納極限 $F=\varinjlim F_\lambda$ を考える。$E$ 代数 $B$ について、$u\colon B\to F_\lambda$ に $F_\lambda\to F$ との合成を対応させる写像
$$ \Phi_B\colon\varinjlim_\lambda\operatorname{Hom}_{E}(B,F_\lambda)\longrightarrow\operatorname{Hom}_{E}(B,F) $$
を考える($\operatorname{Hom}_E$ は $E$ 代数の準同型の集合)。$B$ が $E$ 上有限表示であるとは、有限個の多項式 $g_1,\dots,g_m$ により $B\cong E[x_1,\dots,x_n]/(g_1,\dots,g_m)$ と書けることをいう(有限型射 の定義「環の準同型の有限型と有限表示」)。

有限表示の代数と帰納極限
  1. $B$ が $E$ 上有限型なら、$\Phi_B$ は単射である。
  2. $B$ が $E$ 上有限表示なら、$\Phi_B$ は全単射である。
  3. 逆に、有向集合上の任意の帰納系 $(F_\lambda)$ について $\Phi_B$ が全単射なら、$B$ は $E$ 上有限表示である。

要点:有限個の生成元の行き先と、有限個の関係式が成り立つことは、どれも有限の段で決まる。逆向きは恒等写像 $\operatorname{id}_B$ を有限的な段に持ち上げて示す。

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帰納極限の元はある $F_\lambda$ の元の像であり、$F_\lambda$ の元が $F$ で $0$ になるのは、ある $\mu\ge\lambda$ で $F_\mu$ の中で $0$ になるときである(帰納極限 の補題「帰納極限の元の表示」)。有限個の元については共通の $\mu$ がとれる。

1:$b_1,\dots,b_n$ を $B$ の生成元とし、$u,u'\colon B\to F_\lambda$(共通の段に移しておく)の $F$ への合成が等しいとする。各 $i$ について $u(b_i)-u'(b_i)$ は $F$ で $0$ なので、共通の $\mu\ge\lambda$ で $F_\mu$ の中で $0$ になる。$u,u'$ を $F_\mu$ へ送ったものは生成元の上で一致するので等しく、$\Phi_B$ の定義域で同じ元を表す。

2:$B=E[x_1,\dots,x_n]/(g_1,\dots,g_m)$ とし、$v\colon B\to F$ を与える。$v(x_i)$ を代表する $y_i\in F_\lambda$ を共通の $\lambda$ でとる。$g_j(y_1,\dots,y_n)\in F_\lambda$ の $F$ での像は $g_j(v(x_1),\dots,v(x_n))=0$ なので、共通の $\mu\ge\lambda$ で $F_\mu$ の中の $g_j(y)$ の像は $0$ になる。よって $x_i\mapsto(y_i\text{ の }F_\mu\text{ での像})$ は $E$ 代数の準同型 $u\colon B\to F_\mu$ を定め、$\Phi_B([u])=v$ である。単射性は 1 による。

3:(a) $B$ は有限生成な部分 $E$ 代数 $B_i$ の有向な和集合であり、$B=\varinjlim B_i$ である。$\Phi_B$ の全射性を $\operatorname{id}_B$ に当てると、ある $i$ と $s\colon B\to B_i$ で、包含 $\iota\colon B_i\to B$ について $\iota\circ s=\operatorname{id}_B$ となるものがある。よって $B=\iota(B_i)$ は有限生成である。

(b) $C:=E[x_1,\dots,x_n]$ から $B$ への全射 $q$ をとり、$I:=\ker q$ とおく。$I$ は有限生成イデアル $I_j\subset I$ の有向な和集合で、$C_j:=C/I_j$ は標準全射で帰納系をなし、その帰納極限は $C/I=B$ である(帰納極限 の定理「帰納極限の完全性」)。$q_j\colon C_j\to B$ を標準写像とする。$\Phi_B$ の全射性から、ある $j$ と $s\colon B\to C_j$ で $q_j\circ s=\operatorname{id}_B$ となるものがある。$\bar{x}_i\in C_j$ を $x_i$ の像とすると、$t_i:=\bar{x}_i-s(q_j(\bar{x}_i))$ は $q_j(t_i)=0$ をみたすので、$I$ の元 $\tilde{t}_i$ の像である。$I_{j'}:=I_j+(\tilde{t}_1,\dots,\tilde{t}_n)$ は有限生成で $I$ に含まれる。$\pi\colon C_j\to C_{j'}$ を標準全射、$s':=\pi\circ s$ とすると、$s'\circ q_{j'}$ は $C_{j'}$ の $E$ 代数の自己準同型で、生成元 $\pi(\bar{x}_i)$ を $\pi(s(q_j(\bar{x}_i)))=\pi(\bar{x}_i)-\pi(t_i)=\pi(\bar{x}_i)$ に送るので恒等写像である。よって $q_{j'}$ は単射、$I=I_{j'}$ は有限生成であり、$B$ は有限表示である。$\square$

有限表示の代数の降下

$(A_\lambda)$ を環の有向集合上の帰納系、$A:=\varinjlim A_\lambda$ とする。

  1. 有限表示の $A$ 代数 $B$ に対し、ある $\lambda$ と有限表示の $A_\lambda$ 代数 $B_\lambda$ があって $B\cong B_\lambda\otimes_{A_\lambda}A$ となる。
  2. $\lambda$ を固定し、$B_\lambda,C_\lambda$ を $A_\lambda$ 代数とし、$\mu\ge\lambda$ について $B_\mu:=B_\lambda\otimes_{A_\lambda}A_\mu$、$C_\mu:=C_\lambda\otimes_{A_\lambda}A_\mu$、$B:=B_\lambda\otimes_{A_\lambda}A$、$C:=C_\lambda\otimes_{A_\lambda}A$ とおく。$B_\lambda$ が有限型なら、底変換が定める写像
    $$ \varinjlim_{\mu\ge\lambda}\operatorname{Hom}_{A_\mu}(B_\mu,C_\mu)\longrightarrow\operatorname{Hom}_A(B,C) $$
    は単射であり、$B_\lambda$ が有限表示なら全単射である。

要点:有限個の関係式の係数をある段に持ち上げる。射の降下は lem-limsch-ring に帰着する。

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1:$B\cong A[x_1,\dots,x_n]/(g_1,\dots,g_m)$ と書く。$g_j$ の有限個の係数は共通のある $A_\lambda$ の元の像なので、$g_j$ の像が $g_j$ になる $g_{j,\lambda}\in A_\lambda[x_1,\dots,x_n]$ がある。$B_\lambda:=A_\lambda[x_1,\dots,x_n]/(g_{1,\lambda},\dots,g_{m,\lambda})$ とおけば、テンソル積の右完全性により $B_\lambda\otimes_{A_\lambda}A\cong A[x_1,\dots,x_n]/(g_1,\dots,g_m)\cong B$ である。

2:テンソル積の普遍性により $\operatorname{Hom}_{A_\mu}(B_\mu,C_\mu)\cong\operatorname{Hom}_{A_\lambda}(B_\lambda,C_\mu)$、$\operatorname{Hom}_A(B,C)\cong\operatorname{Hom}_{A_\lambda}(B_\lambda,C)$ であり、これらの同一視は $\mu$ を動かす写像と両立する。$C=\varinjlim_{\mu}C_\mu$(帰納極限 の命題「テンソル積との交換」)だから、主張は $E=A_\lambda$、$F_\mu=C_\mu$ とした lem-limsch-ring の 1・2 である。$\square$

Noether 環への帰着

任意の環 $A$ と有限表示の $A$ 代数 $B$ に対し、$A$ の有限生成な部分環 $A_0$($\mathbb{Z}$ 上有限生成なので Noether環)と有限型の $A_0$ 代数 $B_0$ があって、$B\cong B_0\otimes_{A_0}A$ となる。

要点:$A$ を有限生成な部分環の帰納極限とみて、prop-limsch-alg-descent の 1 を当てる。

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$A$ は $\mathbb{Z}$ 上有限生成な部分環 $A_\lambda$ の有向な和集合であり、$A=\varinjlim A_\lambda$ である。各 $A_\lambda$ は Hilbertの基底定理 により Noether 環である。prop-limsch-alg-descent の 1 により、ある $\lambda$ と有限表示の $A_\lambda$ 代数 $B_\lambda$ で $B\cong B_\lambda\otimes_{A_\lambda}A$ となるものがある。$A_0:=A_\lambda$、$B_0:=B_\lambda$ とおけばよい。$\square$

この系により、有限表示の代数についての主張の多くは、Noether 環上の有限型の代数の場合に帰着できる。そのためには、示したい性質が prop-limsch-properties のように極限から有限の段へ降りることを確かめればよい。

主定理:局所有限表示のスキームへの射

被覆と空集合の降下

$(S_\lambda)$ をアフィンな射影系、$S=\varprojlim S_\lambda$ とする。

  1. すべての $S_\lambda$ がアフィンであるとする。開集合 $W\subset S_\lambda$ が $p_\lambda^{-1}(W)=S$ をみたせば、ある $\mu\ge\lambda$ で $f_{\mu\lambda}^{-1}(W)=S_\mu$ となる。
  2. ある $S_{\lambda_0}$ が準コンパクトで $S=\emptyset$ なら、ある $\lambda$ で $S_\lambda=\emptyset$ となる。

要点:アフィンな場合、閉集合が空になることは「$1$ がイデアルに入る」という有限個の元の等式で書け、それは有限の段で成り立つ。

詳しい証明を開く

1:$S_\mu=\operatorname{Spec}A_\mu$、$S=\operatorname{Spec}A$ とし、$S_\lambda\setminus W=V(J)$($J\subset A_\lambda$ はイデアル)と書く。環準同型 $A_\lambda\to B$ の定める射による $V(J)$ の逆像は $V(JB)$ である(素イデアル $\mathfrak{q}\subset B$ が $JB$ を含むことと、その引き戻しが $J$ を含むことは同値)。仮定から $V(JA)=\emptyset$、すなわち $JA=A$ なので、$1=\sum_kc_kx_k$($x_k\in J$、$c_k\in A$)と書ける。$c_k$ はある $A_\mu$ の元の像で、この等式はさらに先の段 $A_{\mu'}$ で成り立つ(lem-limsch-ring の証明の冒頭)。よって $JA_{\mu'}=A_{\mu'}$、$f_{\mu'\lambda}^{-1}(V(J))=V(JA_{\mu'})=\emptyset$ である。

2:$S_{\lambda_0}$ を有限個のアフィン開集合 $V^{(1)},\dots,V^{(n)}$ で覆う。thm-limsch-existence の 3 により、各 $V^{(i)}$ の逆像は射影系 $(f_{\lambda\lambda_0}^{-1}(V^{(i)}))_{\lambda\ge\lambda_0}$ をなすアフィンスキームで、その極限 $p_{\lambda_0}^{-1}(V^{(i)})$ は空である。1 を $W=\emptyset$ として当てると、ある $\mu_i$ で $f_{\mu_i\lambda_0}^{-1}(V^{(i)})=\emptyset$ となる。$\lambda\ge\mu_1,\dots,\mu_n$ をとれば $S_\lambda=\emptyset$ である。$\square$

2 は EGA4 8.3.6 にある。
射影系 $(S_\lambda)$ と $\lambda_0$ を固定し、$S_{\lambda_0}$ 上のスキーム $Y$ を考える。$\lambda\ge\lambda_0$ の $S_\lambda$ を $f_{\lambda\lambda_0}$ で、$S$ を $p_{\lambda_0}$ で $S_{\lambda_0}$ 上のスキームとみる。$S_{\lambda_0}$ 上の射 $g\colon S_\lambda\to Y$ に $g\circ p_\lambda$ を対応させると、$\mu\ge\lambda$ について $(g\circ f_{\mu\lambda})\circ p_\mu=g\circ p_\lambda$ だから、写像
$$ \Theta_Y\colon\varinjlim_{\lambda\ge\lambda_0}\operatorname{Hom}_{S_{\lambda_0}}(S_\lambda,Y)\longrightarrow\operatorname{Hom}_{S_{\lambda_0}}(S,Y) $$
が定まる。局所有限型・局所有限表示の射の定義は 有限型射 の定義「局所有限型・有限型・有限表示の射」に従う。

局所有限表示のスキームへの射の降下

$(S_\lambda,f_{\mu\lambda})$ をアフィンな射影系、$S=\varprojlim S_\lambda$、$\lambda_0\in\Lambda$ とし、$Y$ を $S_{\lambda_0}$ 上のスキームとする。

  1. $S_{\lambda_0}$ が準コンパクトで、$Y\to S_{\lambda_0}$ が局所有限型なら、$\Theta_Y$ は単射である。
  2. $S_{\lambda_0}$ が準コンパクトかつ準分離的(分離射)で、$Y\to S_{\lambda_0}$ が局所有限表示なら、$\Theta_Y$ は全単射である。

段階 0(アフィンな底での $Y$ の被覆)。 $S_{\lambda_0}=\operatorname{Spec}R$ がアフィンなら、$Y$ は、$\mathcal{O}(U)$ が $R$ 上有限型(2 の仮定のもとでは有限表示)であるアフィン開集合 $U$ で覆われる。

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定義により、$S_{\lambda_0}$ のアフィン開被覆 $V_j=\operatorname{Spec}B_j$ と、$V_j$ の逆像を覆うアフィン開集合 $\operatorname{Spec}A_{ij}$ で $A_{ij}$ が $B_j$ 上有限型(有限表示)のものがある。$y\in\operatorname{Spec}A_{ij}$ の像を含む主開集合 $D(r)\subset V_j$($r\in R$)をとる。$D(r)$ は $V_j$ の主開集合 $D(r|_{V_j})$ でもあるので $R_r\cong(B_j)_r$ であり、$D(r)$ の $\operatorname{Spec}A_{ij}$ への逆像は $\operatorname{Spec}(A_{ij})_r$ である。$(A_{ij})_r=A_{ij}\otimes_{B_j}(B_j)_r$ は $R_r$ 上有限型(有限表示)であり、$R_r\cong R[t]/(rt-1)$ は $R$ 上有限表示なので、$(A_{ij})_r$ は $R$ 上有限型(有限表示)である(生成元と関係式を合わせればよい)。この $U=\operatorname{Spec}(A_{ij})_r$ が $y$ を含む。


段階 1(すべての $S_\lambda$ がアフィンなときの単射性)。 $S_\lambda=\operatorname{Spec}A_\lambda$、$S=\operatorname{Spec}A$、$R=A_{\lambda_0}$ とする(この段階の議論は、$R$ を任意の環、$(A_\lambda)$ を $R$ 代数の帰納系、$Y$ を $\operatorname{Spec}R$ 上の局所有限型のスキームとしてもそのまま成り立つ。段階 2 ではこの形で使う)。$g,g'\colon S_\lambda\to Y$ が $g\circ p_\lambda=g'\circ p_\lambda$ をみたすとする。段階 0 の $U$ による $Y$ の被覆 $\{U_j\}$ をとり、$W:=\bigcup_j\bigl(g^{-1}(U_j)\cap g'^{-1}(U_j)\bigr)$ とおくと、$g\circ p_\lambda=g'\circ p_\lambda$ より $p_\lambda^{-1}(W)=S$ である。lem-limsch-cover の 1 により、$\lambda$ を大きくして($g,g'$ を $g\circ f_{\mu\lambda},g'\circ f_{\mu\lambda}$ に替えて)$W=S_\lambda$ としてよい。$S_\lambda$ は準コンパクトなので、有限個の $a_1,\dots,a_n\in A_\lambda$ で $S_\lambda=\bigcup_kD(a_k)$、$D(a_k)\subset g^{-1}(U_{j_k})\cap g'^{-1}(U_{j_k})$ となるものがある。$U_{j_k}=\operatorname{Spec}C_k$ とすると、$g,g'$ の $D(a_k)$ への制限は $R$ 代数の準同型 $C_k\to(A_\lambda)_{a_k}$ に対応し、$p_\lambda^{-1}(D(a_k))=\operatorname{Spec}A_{a_k}$ への制限が等しいので、$A_{a_k}$ への合成は等しい。$A_{a_k}=\varinjlim_{\mu}(A_\mu)_{a_k}$(帰納極限 の命題「テンソル積との交換」)だから、lem-limsch-ring の 1 により、共通の $\mu$ で $g\circ f_{\mu\lambda}$ と $g'\circ f_{\mu\lambda}$ は各 $f_{\mu\lambda}^{-1}(D(a_k))$ の上で、したがって $S_\mu$ の上で一致する。
段階 2(すべての $S_\lambda$ がアフィンなときの全射性)。 $h\colon S\to Y$ を $R$ 上の射とする。$S$ は準コンパクトなので、有限個の $a_k\in A$ で $S=\bigcup_kD(a_k)$、$h(D(a_k))\subset U_{j_k}$ となるものがあり、$\sum_kb_ka_k=1$($b_k\in A$)と書ける。$a_k,b_k$ を共通の段 $A_\lambda$ の元 $a'_k,b'_k$ に持ち上げ、さらに $\lambda$ を大きくして $\sum_kb'_ka'_k=1$ が $A_\lambda$ で成り立つようにする。すると $D(a'_k)$ は $S_\lambda$ を覆い、$p_\lambda^{-1}(D(a'_k))=D(a_k)$ である。$h|_{D(a_k)}$ は $R$ 代数の準同型 $C_k\to A_{a_k}=\varinjlim_\mu(A_\mu)_{a'_k}$ に対応し、$C_k$ は有限表示なので、lem-limsch-ring の 2 により共通の $\mu$ で射 $g_k\colon f_{\mu\lambda}^{-1}(D(a'_k))\to U_{j_k}$ に持ち上がる。$g_k$ と $g_l$ は、アフィンスキームの射影系 $\bigl(f_{\nu\lambda}^{-1}(D(a'_ka'_l))\bigr)_{\nu\ge\mu}$ の極限 $D(a_ka_l)$ の上ではどちらも $h$ に等しい。段階 1 をこの射影系に当てると、共通の $\nu$ で $g_k\circ f_{\nu\mu}$ と $g_l\circ f_{\nu\mu}$ は $f_{\nu\lambda}^{-1}(D(a'_ka'_l))$ の上で一致する。よってこれらは貼り合って $g\colon S_\nu\to Y$ を与え、$g\circ p_\nu$ と $h$ は各 $D(a_k)$ の上で一致するので等しい。
段階 3(一般の場合)。 $S_{\lambda_0}$ を有限個のアフィン開集合で覆い、各片に段階 1・2 を当てる。準分離性により 2 つの片の共通部分も有限個のアフィン開集合で覆えるので、段階 1 で貼り合わせの条件を有限の段で確かめられる。
詳しい証明を開く

$S_{\lambda_0}$ を有限個のアフィン開集合 $V^{(1)},\dots,V^{(n)}$ で覆う。開集合 $V\subset S_{\lambda_0}$ について $V_\lambda:=f_{\lambda\lambda_0}^{-1}(V)$、$V_S:=p_{\lambda_0}^{-1}(V)$ と書く。$V$ がアフィンなら、thm-limsch-existence の 3 により $(V_\lambda)$ はアフィンスキームのアフィンな射影系で極限は $V_S$ であり、$V$ の $Y$ への逆像 $Y_V$ は $V$ 上局所有限型(局所有限表示)である。

1:$g,g'\colon S_\lambda\to Y$ が $g\circ p_\lambda=g'\circ p_\lambda$ をみたすとする。各 $i$ について、$V^{(i)}_\lambda$ への制限に段階 1 を当てると、ある $\mu_i$ で $g\circ f_{\mu_i\lambda}=g'\circ f_{\mu_i\lambda}$ が $V^{(i)}_{\mu_i}$ の上で成り立つ。$\mu\ge\mu_1,\dots,\mu_n$ をとれば $S_\mu$ の上で一致する。

2:$h\colon S\to Y$ を与える。段階 2 により、共通の $\lambda$ で射 $g_i\colon V^{(i)}_\lambda\to Y$ で $g_i\circ p_\lambda=h|_{V^{(i)}_S}$ となるものがある。$S_{\lambda_0}$ は準分離的なので、$V^{(i)}\cap V^{(j)}$ は有限個のアフィン開集合 $W^{(ijk)}$ で覆われる。$g_i$ と $g_j$ は各 $W^{(ijk)}_S$ の上でどちらも $h$ に等しいので、段階 1 により共通の $\mu$ で $W^{(ijk)}_\mu$ の上で一致する。$V^{(i)}_\mu\cap V^{(j)}_\mu=\bigcup_kW^{(ijk)}_\mu$ だから、$g_i\circ f_{\mu\lambda}$ は貼り合って $g\colon S_\mu\to Y$ を与え、$g\circ p_\mu=h$ である。単射性は 1 による。$\square$

主定理の出典と逆

thm-limsch-main は EGA4 8.8.2 (i) の特別な場合である(そこでは $S_{\lambda_0}$ 上のスキーム $X_{\lambda_0}$ の底変換 $X_\lambda$ からの射を扱い、$X_{\lambda_0}=S_{\lambda_0}$ とすると上の形になる)。逆に、スキーム $T$ 上のスキーム $Y$ について、各 $Z_\lambda$ がアフィンスキームであるような $T$ 上のスキームの任意の射影系 $(Z_\lambda)$ で $\varinjlim_\lambda\operatorname{Hom}_T(Z_\lambda,Y)\to\operatorname{Hom}_T(\varprojlim_\lambda Z_\lambda,Y)$ が全単射なら、$Y\to T$ は局所有限表示である(EGA4 8.14.2。一般の場合はこの記事では証明しない)。アフィンな $Y$ についてのこの逆は lem-limsch-ring の 3 である。pro-対象 の命題「標準埋め込みは充満忠実である」により、$S_{\lambda_0}$ 上のスキームの圏の pro-対象 $(S_\lambda)_{\lambda\ge\lambda_0}$ を考えると $\Theta_Y$ の左辺は $\operatorname{Hom}_{\operatorname{Pro}}\bigl((S_\lambda)_\lambda,c(Y)\bigr)$ であり、主定理は、行き先が局所有限表示なら pro-対象からの射と極限からの射が一致することを述べている。

例:局所環からの射を近傍へ広げる

ex-limsch-local-ring の状況で、$Y\to U$ を局所有限表示の射とする。$U$ とその主開集合はアフィンなので準コンパクトかつ準分離的であり、thm-limsch-main により次が成り立つ。

  • $U$ 上の射 $\operatorname{Spec}\mathcal{O}_{X,x}\to Y$ は、$x$ のある主開近傍 $D(r)$ からの $U$ 上の射に延びる。
  • $D(r)$ からの 2 つの $U$ 上の射 $D(r)\to Y$ が $\operatorname{Spec}\mathcal{O}_{X,x}$ の上で一致すれば、より小さい主開近傍 $D(r')\ni x$ の上で一致する。
    たとえば局所環の上の切断($U$ 上の射 $\operatorname{Spec}\mathcal{O}_{X,x}\to Y$)は、$x$ のある主開近傍 $D(r)$ の上の切断($U$ 上の射 $D(r)\to Y$)に延びる。Greenberg近似定理 の記事で Artin の近似定理の仮定に現れる「局所有限表示の関手」(帰納極限と交換する関手)は、rem-limsch-main-source の特徴づけを関手に広げたものである。

性質の降下

アフィンな場合を環の言葉で述べる。$(A_\lambda)$ を環の帰納系、$A=\varinjlim A_\lambda$、$\alpha\in\Lambda$ とし、$A_\alpha$ 代数の準同型 $\varphi_\alpha\colon C_\alpha\to B_\alpha$ を与える。$\lambda\ge\alpha$ について $B_\lambda:=B_\alpha\otimes_{A_\alpha}A_\lambda$、$C_\lambda:=C_\alpha\otimes_{A_\alpha}A_\lambda$、$\varphi_\lambda:=\varphi_\alpha\otimes A_\lambda$ とおき、$B,C,\varphi$ を $A$ との底変換とする。幾何的には、$S_\lambda=\operatorname{Spec}A_\lambda$ 上の射 $X_\lambda=\operatorname{Spec}B_\lambda\to Y_\lambda=\operatorname{Spec}C_\lambda$ の族と、その極限 $X\to Y$ を考えている。$B=\varinjlim B_\lambda$、$C=\varinjlim C_\lambda$ である(帰納極限 の命題「テンソル積との交換」)。

性質の降下(アフィンな場合)

$B_\alpha$ は $A_\alpha$ 上有限型とする。

  1. $X=\emptyset$($B=0$)なら、ある $\lambda$ で $X_\lambda=\emptyset$ である。
  2. $\varphi$ が全射($X\to Y$ が閉埋め込み)なら、ある $\lambda$ で $\varphi_\lambda$ は全射である。
  3. $B$ が $\varphi$ により有限 $C$ 加群($X\to Y$ が有限射)なら、ある $\lambda$ で $B_\lambda$ は有限 $C_\lambda$ 加群である。
  4. $B_\alpha$ と $C_\alpha$ が $A_\alpha$ 上有限表示で、$\varphi$ が同型なら、ある $\lambda$ で $\varphi_\lambda$ は同型である。
    どの場合も、性質がある $\lambda$ で成り立てば、底変換によりすべての $\mu\ge\lambda$ と極限で成り立つ。

要点:全射性・整従属性・逆写像の存在を、有限個の生成元と関係式の言葉で書き、その係数を有限の段に持ち上げる。

詳しい証明を開く

1:$B$ で $1=0$ なので、ある $B_\lambda$ で $1=0$ である(lem-limsch-ring の証明の冒頭)。この部分は $B_\alpha$ の有限型を使わない。

2:$b_1,\dots,b_n$ を $B_\alpha$ の $A_\alpha$ 上の生成元とし、$b_i$ の $B_\lambda$、$B$ での像も同じ文字で書く。仮定から $b_i=\varphi(c_i)$($c_i\in C$)であり、$c_i$ はある $C_\lambda$ の元 $c_{i,\lambda}$ の像である。$\varphi_\lambda(c_{i,\lambda})-b_i\in B_\lambda$ は $B$ で $0$ なので、共通の $\mu\ge\lambda$ で $B_\mu$ の中で $0$ になる。すると $b_i\in\varphi_\mu(C_\mu)$ であり、$\varphi_\mu(C_\mu)$ は $A_\mu$ の像を含む部分環なので、$A_\mu$ 上の生成元 $b_i$ を含む $B_\mu$ 全体に等しい。

3:有限加群の各元は整なので(整拡大 の系「有限生成と有限性」の 2。部分環 $\varphi(C)$ 上で考える)、各 $b_i$ は $B$ の中でモニックな関係式 $b_i^{d}+\varphi(c_{i1})b_i^{d-1}+\cdots+\varphi(c_{id})=0$($c_{ij}\in C$)をみたす。2 と同じく係数を $C_\lambda$ に持ち上げ、関係式が成り立つ段 $B_\mu$ まで進めると、$b_i$ は $\varphi_\mu(C_\mu)$ 上整である。$B_\mu$ は $\varphi_\mu(C_\mu)$ 上 $b_1,\dots,b_n$ で生成されるので、整拡大 の系「有限生成と有限性」の 1 により有限 $C_\mu$ 加群である。

4:逆写像 $\psi\colon B\to C$ は $A$ 代数の準同型である。$B_\alpha$ は有限表示なので、prop-limsch-alg-descent の 2 により、ある $\lambda$ と $A_\lambda$ 代数の準同型 $\psi_\lambda\colon B_\lambda\to C_\lambda$ で底変換が $\psi$ になるものがある。$\psi_\lambda\circ\varphi_\lambda$ と $\operatorname{id}_{C_\lambda}$ は底変換すると等しいので、$C_\alpha$ が有限型であることと同じ命題の単射性から、ある $\mu$ で $\psi_\mu\circ\varphi_\mu=\operatorname{id}$ となる。同様に $\varphi_{\mu'}\circ\psi_{\mu'}=\operatorname{id}$ となる $\mu'$ があり、共通の段で $\varphi$ は同型である。$\square$

一般の場合と出典

EGA4 8.10.5 は、$S_{\lambda_0}$ が準コンパクトで、$X_\alpha$、$Y_\alpha$ が $S_\alpha$ 上有限表示のとき、射 $X\to Y$ が同型・単射(monomorphism)・はめ込み(immersion)・開埋め込み・閉埋め込み・分離的・全射・根基的(radiciel)・アフィン・準アフィン・有限・準有限・固有であることと、ある $\lambda$ で $X_\lambda\to Y_\lambda$ がそうであることが同値であることを示している($S_{\lambda_0}$ がさらに準分離的なら射影的・準射影的も加わる。準有限の場合の証明は EGA4 9.3.3–9.3.4 にある)。また、$S_{\lambda_0}$ が準コンパクトかつ準分離的なら、$S$ 上有限表示のスキームはある $S_\lambda$ 上有限表示のスキームの底変換であり(EGA4 8.8.2 (ii))、有限表示の準連接加群層もある段から来る(EGA4 8.5.2 (ii))。これらの一般の場合はこの記事では証明しない。

反例

各行は定理の仮定を 1 つだけ外す。

外す条件反例成り立たなくなること
thm-limsch-main の $Y$ の局所有限表示(有限型は保つ)$R=k[y_1,y_2,\dots]$、$A_n=R/(y_1,\dots,y_n)$、$A=\varinjlim A_n=k$、$Y=\operatorname{Spec}k$($R$ 上の閉部分スキーム $V(y_1,y_2,\dots)$)。極限からの $R$ 上の射 $\operatorname{Spec}k\to Y$(恒等射)全射性。$A_n\to k$ を経由する $R$ 代数の準同型 $k\to A_n$ があれば $A_n$ で $y_{n+1}=0$ となるが、そうではない
thm-limsch-main の $S_{\lambda_0}$ の準コンパクト性$C_{n,i}=k[\varepsilon]/(\varepsilon^2)$($i>n$)、$C_{n,i}=k$($i\le n$)とし、$S_n=\coprod_{i\ge1}\operatorname{Spec}C_{n,i}$(推移射は成分ごとの閉埋め込み)、$Y=\mathbb{A}^1_{S_0}$単射性。$\operatorname{Hom}_{S_0}(S_n,Y)=\prod_iC_{n,i}$ の元 $(\varepsilon,\varepsilon,\dots)$ と $0$ は極限 $S=\coprod_i\operatorname{Spec}k$ では等しいが、どの段でも $(0,\dots,0,\varepsilon,\varepsilon,\dots)\ne0$
lem-limsch-cover の 2 の準コンパクト性$S_n=\coprod_{i\ge n}\operatorname{Spec}k$(推移射は成分の包含)$S=\emptyset$ だが、どの $S_n$ も空でない
prop-limsch-properties の 4 の $B_\alpha$ の有限表示(有限型は保つ)1 行目の $A_n$ で、$C_0=R$、$B_0=k=R/(y_1,y_2,\dots)$、$\varphi_0$ は標準全射同型の降下。$\varphi_n\colon A_n\to k$ はどの $n$ でも同型でないが、極限では $k\to k$ は同型

2 行目で $Y\to S_0$ は有限表示、$S_n$ は準分離的で、外れているのは準コンパクト性だけである。3 行目の極限が空なのは、$S_0$ の第 $i$ 成分の上で $\mathcal{A}_n$ が $n>i$ のとき $0$ だからである。

関連項目

参考文献

[1]
Alexander Grothendieck, Jean Dieudonné, Éléments de géométrie algébrique IV : Étude locale des schémas et des morphismes de schémas (Troisième partie), Publications Mathématiques de l'IHÉS, 1966, 8.2.1–8.2.3(pp. 7–8、準連接代数の帰納極限と射影極限の存在)、8.3.6(p. 14、空集合の降下)、8.5.2(p. 20、有限表示の準連接加群層の降下)、8.8.2 と補題 8.8.2.3(pp. 28–29、有限表示のスキームへの射と有限表示のスキームの降下)、8.10.5(pp. 37–38、射の性質の降下。準有限の場合は 9.3.3–9.3.4、p. 60)、8.14.2 と 8.14.2.2(pp. 52–53、局所有限表示の関手による特徴づけ)
[2]
Robin Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer, 1977, II Ex. 5.3(p. 124、加群から準連接層を作る関手と大域切断の関手の随伴)

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