Gallai–Edmondsの分解定理(Gallai–Edmonds decomposition theorem)とは、有限グラフの頂点を、ある最大マッチングで飽和されない頂点の集合 $D$、$D$ に隣接するそれ以外の頂点の集合 $A$、残り $C$ に分けると、$D$ の各成分は因子臨界、$C$ は完全マッチングをもち、$A$ の空でないどの部分集合もそれより多くの $D$ の成分に隣接する、という定理である。どの最大マッチングも $D$ の各成分をほぼ完全に覆い、$C$ を完全に覆い、$A$ の頂点を $D$ の相異なる成分に組ませる。証明は、因子臨界性についての Gallai の補題と、$A$ の頂点を除いても分解が変わらないことによる。系として、Tutte–Berge の公式の最小値は $S=A$ でとられる。
前提知識: マッチング(グラフ理論), Tutteの定理, Hallの結婚定理
Gallai–Edmonds の分解定理(Gallai–Edmonds decomposition theorem)は、有限グラフのすべての最大マッチングに共通する構造を記述する定理である。頂点を、ある最大マッチングで飽和されない頂点の集合 $D(G)$、$D(G)$ に隣接するそれ以外の頂点の集合 $A(G)$、残りの $C(G)$ の 3 つに分けると、$D(G)$ の各成分は因子臨界(因子臨界グラフ)、$C(G)$ は完全マッチングをもち、$A(G)$ の空でないどの部分集合もそれより多くの $D(G)$ の成分に隣接する。どの最大マッチングも、$D(G)$ の各成分をほぼ完全に覆い、$C(G)$ を完全に覆い、$A(G)$ の頂点を $D(G)$ の相異なる成分に組ませる。Gallai(1964 年)と Edmonds(1965 年)による(Die25 第 2 章の注、p. 60)。
Tutteの定理 の記事の Tutte–Berge の公式は最大マッチングの大きさを最小値で与えるが、最小値を与える頂点の集合は一般に一つではない。分解定理は、その中から最大マッチングの全体だけで定まる集合 $A(G)$ を選び出し、最大マッチングがどう組まれるかまで述べる。この記事では、因子臨界性についての Gallai の補題と、$A(G)$ の頂点を取り除いても分解が変わらないという補題から分解定理を証明し、系として Tutte–Berge の公式を導く。
この記事のグラフは有限の単純無向グラフ $G=(V,E)$ とする。マッチング、飽和、最大マッチング、マッチング数 $\nu(G)$、完全マッチング、交互道、増加道の用語は マッチング(グラフ理論) に従う。頂点の集合 $X\subset V$ について、$G[X]$ は $X$ 上の 誘導部分グラフ、$G-X:=G[V\setminus X]$ であり、$G-v:=G-\{v\}$ と書く。ちょうど 1 頂点だけを飽和しないマッチングを ほぼ完全マッチング(near-perfect matching)という。
有限グラフ $G=(V,E)$ について、次のように定める。
$$
\begin{aligned}
D(G)&:=\{v\in V\mid v\text{ を飽和しない最大マッチングがある}\},\\
A(G)&:=\{v\in V\setminus D(G)\mid v\text{ は }D(G)\text{ のある頂点と隣接する}\},\\
C(G)&:=V\setminus\bigl(D(G)\cup A(G)\bigr).
\end{aligned}
$$
$V=D(G)\sqcup A(G)\sqcup C(G)$ を $G$ の Gallai–Edmonds の分解 という。$G[D(G)]$ の連結成分(グラフ)(以下、成分)の集合を $\mathcal{K}(G)$ と書く。
$D(G)$ の頂点を除いても最大マッチングは残るが、$D(G)$ の外の頂点はどの最大マッチングでも飽和される。$C(G)$ の頂点は $D(G)$ と隣接しないので、$D(G)$ と $C(G)$ を結ぶ辺はない。
頂点をもつグラフ $H$ が 因子臨界(factor-critical)であるとは、$H$ のどの頂点 $v$ についても $H-v$ が完全マッチングをもつことをいう。
1 頂点のグラフ $K_1$ は因子臨界である($K_1-v$ は頂点のないグラフで、空集合が完全マッチングである)。奇数長の閉路と、頂点数が奇数の完全グラフも因子臨界である。因子臨界グラフ $H$ の頂点数は奇数で、$H$ は連結である。実際、$H-v$ は完全マッチングをもつので $|V(H)|-1$ は偶数である。$H$ が 2 つ以上の成分をもつとすると、ある成分 $K$ の頂点 $v$ をとれば $H-v$ の完全マッチングは $K$ 以外の各成分を完全に覆うので、それらの成分の頂点数は偶数である。$K$ と別の成分 $K'$ の頂点 $v'$ をとれば同様に $K$ の頂点数も偶数になり、$|V(H)|$ が奇数であることに反する。
$G$ を有限グラフ、$v$ をその頂点とする。
2 つのマッチングを比べるときは、次の事実を繰り返し使う。マッチング(グラフ理論) の定理「Berge の定理」の証明の後半と同じ議論である。
$M,N$ をグラフ $G$ のマッチングとし、頂点集合 $V$、辺集合 $M\triangle N$(対称差)のグラフを $H$ とする。
要点:各頂点には $M$ の辺と $N$ の辺が高々 1 本ずつ接続する。
1. 頂点 $x$ に接続する $H$ の辺は、$M\setminus N$ と $N\setminus M$ から高々 1 本ずつなので、$H$ での次数は $2$ 以下で、次数 $2$ なら 2 本は $M$ と $N$ に 1 本ずつ属する。次数が $2$ 以下の有限グラフの成分は孤立点、道、閉路であり、辺は $M$ と $N$ に交互に属する。交互に並ぶ閉路の長さは偶数である。
2. $x$ の道の辺 $e\in N\setminus M$ のほかに $x$ に接続する $M$ の辺 $f$ があったとする。$f\in N$ なら $x$ に $N$ の相異なる 2 辺 $e,f$ が接続して矛盾し、$f\notin N$ なら $f\in M\triangle N$ で $x$ の $H$ での次数が $2$ になり、$x$ が端点であることに反する。
3. 頂点 $x$ が $P$ の上にあるとき、$x$ に接続する $M$ の辺と $N$ の辺はどちらも $P$ の辺である。実際、$x$ に接続する $M$ の辺 $f$ が $N$ にも属すると、$x$ に接続する $N$ の辺は $f$ だけなので $x$ は $H$ で孤立点になり、$P$ が孤立点でない限り矛盾する($P$ が孤立点なら主張は自明)。$f\notin N$ なら $f\in E(H)$ で $x$ を含む成分 $P$ の辺である。$N$ の辺についても同じである。よって $N_P=(M\setminus E(P))\cup(E(P)\cap N)$ は、$P$ の頂点には $N$ の辺(高々 1 本)だけを、$P$ の外の頂点には $M$ の辺だけを接続させ、マッチングである。大きさの式は $N_P$ の定義から従う。$\square$
頂点をもつ連結な有限グラフ $G$ で、すべての頂点がある最大マッチングで飽和されない($D(G)=V$)ならば、$G$ は因子臨界である。
lem-ge-basic の 2 とあわせると、連結グラフ $G$ が因子臨界であることと $D(G)=V$ であることは同値である。連結性は外せない(ex-ge-counter)。
どの最大マッチングも飽和しない頂点が高々 1 個であるとする。各頂点 $v$ について $v$ を飽和しない最大マッチング $M_v$ があり、$M_v$ が飽和しないのは $v$ だけなので、$M_v$ は $G-v$ の完全マッチングである。よって $G$ は因子臨界である。
そこで、飽和しない頂点を 2 個以上もつ最大マッチングがあると仮定して矛盾を導く。最大マッチング $M$ と、$M$ で飽和されない相異なる 2 頂点 $u,v$ の組のうち、$G$ での距離 $\operatorname{dist}(u,v)$ が最小のものを選ぶ($G$ は連結なので距離は有限)。$uv\in E$ なら $M\cup\{uv\}$ がより大きいマッチングになるので、$\operatorname{dist}(u,v)\ge2$ である。$u$ から $v$ への最短の道の 2 番目の頂点を $w$ とすると、$w\neq u,v$、$\operatorname{dist}(u,w)=1$、$\operatorname{dist}(w,v)=\operatorname{dist}(u,v)-1$ である。距離の最小性から $M$ は $w$ を飽和する(さもなければ組 $u,w$ のほうが近い)。
仮定 $D(G)=V$ により $w$ を飽和しない最大マッチングがある。そのうち $|M\cap N|$ が最大のものを $N$ とする。距離の最小性から、$N$ は $u$ と $v$ を飽和する(さもなければ組 $u,w$ か組 $w,v$ のほうが近い)。$H$ を $M\triangle N$ のグラフとする。
$u$ は $N$ で飽和され $M$ で飽和されないので、$u$ の $N$ の辺は $M$ に属さず、$u$ は $H$ で次数 $1$ である。よって $u$ は $H$ の道の成分 $P_u$ の端点で、$u$ での道の辺は $N$ に属する。$P_u$ のもう一方の端点を $x$ とする。$x$ での道の辺が $N$ に属するなら、lem-ge-symdiff の 2 により $x$ は $M$ で飽和されず、$P_u$ は $N$ の辺を $M$ の辺より 1 本多く含むので、lem-ge-symdiff の 3 のマッチング $M\triangle E(P_u)$ は $M$ より大きい。これは $M$ の最大性に反する。したがって $x$ での道の辺は $M$ に属し、$x$ は $N$ で飽和されず、$P_u$ の $M$ の辺と $N$ の辺の本数は等しく、$P_u$ の長さは $2$ 以上の偶数である。
$x\neq w$ と仮定する。$w$ は $M$ で飽和され $N$ で飽和されないので $H$ の道の成分の端点である。$w$ が $P_u$ の上にあれば $w$ は $P_u$ の端点 $u$ か $x$ になるが、どちらでもないので $w\notin P_u$ である。$N':=N\triangle E(P_u)$ は(lem-ge-symdiff の 3 を $M,N$ の役を入れ替えて使うと)$|N|$ と同じ大きさのマッチングで、$w$ を飽和せず、$|M\cap N'|=|M\cap N|+|E(P_u)\cap M|>|M\cap N|$ である。これは $N$ の選び方に反する。よって $x=w$ である。
同じ議論を $v$ に当てると、$v$ を端点とする $H$ の道の成分のもう一方の端点も $w$ である。$H$ の成分は頂点を共有しないので、この成分は $P_u$ であり、その端点は $\{u,w\}=\{v,w\}$ となって $u=v$ を得る。これは矛盾である。$\square$
$G$ を有限グラフとし、$a\in A(G)$ とする。このとき
$$
D(G-a)=D(G),\quad A(G-a)=A(G)\setminus\{a\},\quad C(G-a)=C(G),\quad \nu(G-a)=\nu(G)-1
$$
である。
$\nu:=\nu(G)$ とおく。$a\notin D(G)$ なので lem-ge-basic の 1 により $\nu(G-a)=\nu-1$ である。
$D(G)\subset D(G-a)$:$u\in D(G)$ とし、$u$ を飽和しない $G$ の最大マッチング $M$ をとる。$a\notin D(G)$ なので $M$ は $a$ を飽和する。$M$ から $a$ に接続する辺を除くと、$G-a-u$ の大きさ $\nu-1$ のマッチングになる。よって $\nu(G-a-u)\ge\nu-1=\nu(G-a)$ であり、lem-ge-basic の 1 により $u\in D(G-a)$ である。
$D(G-a)\subset D(G)$:$u\in D(G-a)$ とし、$u\notin D(G)$ と仮定して矛盾を導く。$a\in A(G)$ なので $a$ に隣接する $d\in D(G)$ があり、$d$ を飽和しない $G$ の最大マッチング $M$ をとる。$u\in D(G-a)$ なので、$u$ を飽和しない $G-a$ の最大マッチング $N$(大きさ $\nu-1$)がある。$M$ は $a$ と $u$ を飽和し($a,u\notin D(G)$)、$N$ はどちらも飽和しない。$H$ を $M\triangle N$ のグラフとすると、$u$ と $a$ はどちらも $H$ の道の成分の端点で、そこでの道の辺は $M$ に属する。$u$ を端点とする成分を $P_u$ とする。
残りの等式:$D(G-a)=D(G)$ と $a\notin D(G)$ から、$v\neq a$ について「$v\notin D(G-a)$ で $G-a$ において $D(G-a)$ の頂点と隣接する」ことは「$v\notin D(G)$ で $G$ において $D(G)$ の頂点と隣接する」ことと同じである。よって $A(G-a)=A(G)\setminus\{a\}$ であり、$C(G-a)=(V\setminus\{a\})\setminus(D(G)\cup A(G)\setminus\{a\})=C(G)$ である。$\square$
$A:=A(G)$ とおくと、$D(G-A)=D(G)$、$A(G-A)=\emptyset$、$C(G-A)=C(G)$、$\nu(G-A)=\nu(G)-|A|$ である。
$|A|$ についての帰納法による。$A=\emptyset$ なら明らかである。$a\in A$ をとると、lem-ge-stability により $G-a$ の分解は $D(G)$、$A\setminus\{a\}$、$C(G)$ で、$\nu(G-a)=\nu(G)-1$ である。$G-a$ に帰納法の仮定を当てると、$(G-a)-(A\setminus\{a\})=G-A$ について主張が成り立つ。$\square$
$G=(V,E)$ を有限グラフとし、$D:=D(G)$、$A:=A(G)$、$C:=C(G)$、$\mathcal{K}:=\mathcal{K}(G)$ とおく。
3 は、各成分を 1 点に縮め、$A$ の内部の辺と $C$ を除いた二部グラフで、$A$ の側が Hall の条件(Hallの結婚定理)を余裕 $1$ をもって満たすことを述べている。とくにこの二部グラフには $A$ を飽和するマッチングがあり、4 はどの最大マッチングもそのようなマッチングを含むことを述べている。
段 1($G-A$ の形):$D$ の頂点の隣接頂点は $D\cup A$ に属し、$C$ の頂点は $D$ と隣接しない。よって $G-A$ は $G[D]$ と $G[C]$ の交わりのない和で、その間に辺はない。とくに $\mathcal{K}$ の各成分は $G-A$ の成分であり、$G-A$ の最大マッチングは各成分の最大マッチングの和である。cor-ge-remove により $D(G-A)=D$、$C(G-A)=C$ である。
段 2(1 と 2):$K\in\mathcal{K}$、$v\in V(K)$ とする。$v\in D(G-A)$ なので $v$ を飽和しない $G-A$ の最大マッチングがあり、その $K$ への制限は $v$ を飽和しない $K$ の最大マッチングである。よって $D(K)=V(K)$ であり、$K$ は連結なので lem-ge-gallai により因子臨界である。次に $G[C]$ の最大マッチング $M_C$ がある頂点 $c\in C$ を飽和しないとすると、$M_C$ と各 $K\in\mathcal{K}$ の最大マッチングの和は $c$ を飽和しない $G-A$ の最大マッチングになり、$c\in D(G-A)=D$ となって矛盾する。よって $M_C$ は $G[C]$ の完全マッチングである。
段 3(5):段 2 から $\nu(K)=(|V(K)|-1)/2$ である。段 1 と cor-ge-remove により
$$
\nu(G)=\nu(G-A)+|A|=\sum_{K\in\mathcal{K}}\frac{|V(K)|-1}{2}+\frac{|C|}{2}+|A|=\frac{|D|-|\mathcal{K}|+|C|}{2}+|A|=\frac{|V|-|\mathcal{K}|+|A|}{2}
$$
である。
段 4(4):$M$ を最大マッチングとする。段 3 により、$M$ で飽和されない頂点はちょうど $|V|-2\nu(G)=|\mathcal{K}|-|A|$ 個である。$K\in\mathcal{K}$ の頂点数は奇数なので、$K$ の頂点のうち $K$ の内部の $M$ の辺で飽和されないものが少なくとも 1 つあり、それは $M$ で飽和されないか、$K$ の外の頂点と組む。$K$ の外の隣接頂点は $A$ に属する。$A$ の頂点と組む頂点をもつ成分の個数を $k$ とすると、$A$ の各頂点の相手は高々 1 つなので $k\le|A|$ であり、残りの $|\mathcal{K}|-k$ 個の成分はそれぞれ $M$ で飽和されない頂点を含む。よって
$$
|\mathcal{K}|-|A|\ \ge\ |\mathcal{K}|-k\ \ge\ |\mathcal{K}|-|A|
$$
であり、等号が成り立つ。$k=|A|$ から、$A$ のすべての頂点が $D$ の頂点と組み、その相手は相異なる成分にある。前の不等式の等号から、$A$ と組む頂点をもたない成分はそれぞれ $M$ で飽和されない頂点をちょうど 1 つ含み、それ以外に $M$ で飽和されない頂点はない。したがって各 $K$ で、$K$ の内部の辺で飽和されない頂点はちょうど 1 つで、$M\cap E(K)$ はほぼ完全マッチングである。$C$ の頂点はすべて飽和され、その相手は $A$($A$ の相手は $D$ にある)にも $D$($D$ と $C$ の間に辺はない)にもないので $C$ にある。よって $M\cap E(G[C])$ は完全マッチングである。
段 5(3):$X\subset A$ を空でないとし、$X$ の頂点と隣接する成分の集合を $\mathcal{K}_X$ とする。最大マッチングを 1 つとると、4 により $X$ の頂点は $\mathcal{K}_X$ の相異なる成分の頂点と組むので $|\mathcal{K}_X|\ge|X|$ である。$|\mathcal{K}_X|=|X|$ と仮定し、$K\in\mathcal{K}_X$ と $v\in V(K)$ をとる。$v\in D$ なので $v$ を飽和しない最大マッチング $M_v$ がある。4 により、$K$ の内部の辺で飽和されない $K$ の頂点は $v$ だけなので、$K$ には $A$ と組む頂点がない。すると $X$ の頂点は $\mathcal{K}_X\setminus\{K\}$ の相異なる成分の頂点と組むことになり、$|X|\le|X|-1$ となって矛盾する。$\square$
Edmonds は、花アルゴリズム(Edmondsの花アルゴリズム)を最大マッチングに当てて得られる交互森の外側の頂点と内側の頂点が、それぞれ $D(G)$ と $A(G)$ に一致することを示した(Edm65 §6.2、p. 464。この記事では、この形では証明しない)。
有限グラフ $G=(V,E)$ について
$$
\nu(G)=\min_{S\subset V}\frac{|V|+|S|-o(G-S)}{2}
$$
であり、右辺の最小値は $S=A(G)$ でとられる。ここで $o(G-S)$ は $G-S$ の成分のうち頂点数が奇数のものの個数である。
$\le$:$M$ をマッチング、$S\subset V$ とする。$G-S$ の頂点数が奇数の各成分は、その内部の $M$ の辺だけでは覆えないので、$M$ で飽和されない頂点か、$M$ で $S$ の頂点と組む頂点を含む。後者の成分は $|S|$ 個以下なので、$M$ で飽和されない頂点は $o(G-S)-|S|$ 個以上あり、$|V|-2|M|\ge o(G-S)-|S|$ である。
等号:$S=A:=A(G)$ とする。段 1 により $G-A$ の成分は、$\mathcal{K}$ の成分と $G[C]$ の成分である。前者は因子臨界なので頂点数が奇数である。$G[C]$ の完全マッチングは $G[C]$ の各成分の完全マッチングに分かれるので、後者の頂点数は偶数である。よって $o(G-A)=|\mathcal{K}|$ であり、thm-ge-main の 5 により $(|V|+|A|-o(G-A))/2=\nu(G)$ である。$\square$
$\nu(G)=|V|/2$ と、すべての $S$ で $o(G-S)\le|S|$ であることは、この公式により同値になる。したがって Tutteの定理 の主定理もこの記事の議論から従う。Tutteの定理 の記事は、逆に Tutte の定理から公式を導いている。
最小値をとる $S$ は一意とは限らない。道グラフ $P_4$(頂点 $1,2,3,4$)は完全マッチングをもち、$A(P_4)=\emptyset$ であるが、$S=\{2\}$ でも $P_4-2$ の成分は $\{1\}$ と $\{3,4\}$ で、$(4+1-1)/2=2=\nu(P_4)$ となる。分解定理の $A(G)$ は、最大マッチングの全体から定まるという意味で標準的な選び方である。
次の表は、小さいグラフの分解である。$G_1$ は、頂点 $a$ を葉 $x,y$ と頂点 $c_1$ に結び、さらに辺 $c_1c_2$ を加えた 5 頂点のグラフとする。
| グラフ | $D(G)$ | $A(G)$ | $C(G)$ | $\lvert\mathcal{K}\rvert$ | $\nu(G)$ |
|---|---|---|---|---|---|
| 閉路 $C_5$ | すべての頂点 | $\emptyset$ | $\emptyset$ | $1$ | $2$ |
| 道 $P_4$ | $\emptyset$ | $\emptyset$ | すべての頂点 | $0$ | $2$ |
| 星 $K_{1,3}$(中心 $z$) | 3 つの葉 | $\{z\}$ | $\emptyset$ | $3$ | $1$ |
| 道 $P_5$(頂点 $1,\dots,5$) | $\{1,3,5\}$ | $\{2,4\}$ | $\emptyset$ | $3$ | $2$ |
| $G_1$ | $\{x,y\}$ | $\{a\}$ | $\{c_1,c_2\}$ | $2$ | $2$ |
どの行でも $(|V|-|\mathcal{K}|+|A|)/2$ が $\nu(G)$ に等しい。
$C_5$ は因子臨界なので lem-ge-basic の 2 による。$P_4$ は完全マッチング $\{12,34\}$ をもつので、どの最大マッチングもすべての頂点を飽和する。$K_{1,3}$ の最大マッチングは 1 本の辺で、中心はつねに飽和され、各葉はほかの葉を使う辺で飽和されない。$P_5$ では $\{23,45\}$、$\{12,45\}$、$\{12,34\}$ がそれぞれ $1,3,5$ を飽和しない。$P_5-2$ と $P_5-4$ のマッチング数は $1$ なので、lem-ge-basic の 1 により $2,4\notin D$ である。$X=\{2\},\{4\},\{2,4\}$ の頂点と隣接する成分はそれぞれ 2、2、3 個で、thm-ge-main の 3 を満たす。$G_1$ では $\{ay,c_1c_2\}$ と $\{ax,c_1c_2\}$ が $x$ と $y$ を飽和しない最大マッチングである。$c_2$ の隣接頂点は $c_1$ だけなので、$c_1$ か $c_2$ を飽和しないマッチングは $c_1c_2$ を含まず、$a$ を端点にもたない辺は $c_1c_2$ だけだから大きさは $1$ である。$a$ を飽和しないマッチングも $c_1c_2$ だけで大きさ $1$ である。よって $D=\{x,y\}$、$A=\{a\}$($a$ は $x$ と隣接する)、$C=\{c_1,c_2\}$ である。$a$ と $c_1$ を結ぶ辺のように、$A$ と $C$ の間の辺はどの最大マッチングにも使われない(thm-ge-main の 4)。
次の表は、各行で仮定を 1 つだけ外したときに結論が成り立たなくなる例である。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| Gallai の補題の「連結」 | 2 つの三角形の交わりのない和 $2K_3$ | $D(G)=V$ から因子臨界であること |
| Gallai の補題の「$D(G)=V$」 | 道 $P_3$ | 連結グラフが因子臨界であること |
| thm-ge-main の 4 の「$M$ が最大」 | $P_4$ と極大マッチング $\{23\}$ | $M$ が $G[C]$ の完全マッチングを含むこと |
1 行目:$2K_3$ の最大マッチングは各三角形から 1 本ずつの 2 本で、どの頂点もそれを避ける選び方があるので $D=V$ であるが、頂点数 $6$ は偶数なので因子臨界でない。2 行目:$P_3$(頂点 $1,2,3$)は連結で、$1,3\in D$ であるが、$P_3-2$ は辺をもたないので $2\notin D$ であり、実際 $P_3-2$ に完全マッチングはない。3 行目:$P_4$ では $C=V$ であるが、$\{23\}$ は極大マッチング(マッチング(グラフ理論) の例「極大だが最大でないマッチング」)で、頂点 $1,4$ を飽和しない。
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