反射的Banach空間

同義語:反射的バナッハ空間反射的空間回帰的Banach空間回帰的空間reflexive Banach spacereflexive space

概要

反射的Banach空間(reflexive Banach space)とは、ノルム空間 $X$ から二重双対 $X^{**}$ への評価写像 $J_X$ が全射になる空間のことで、反射的な空間は自動的に完備である。角谷の定理により、Banach 空間が反射的であることは閉単位球が弱位相でコンパクトであることと同値であり、反射的な空間では有界列が弱収束部分列をもち、閉凸集合への最近点が存在する。反射性は閉部分空間と双対空間に受け継がれ、Hilbert 空間や $1<p<\infty$ の $L^p$ 空間は反射的、$c_0$・$\ell^1$・$L^1[0,1]$ はノルムを達成しない汎関数をもつので反射的でなく、$c_0$ を閉部分空間にもつ $\ell^\infty$ も反射的でない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Banach空間, 連続双対空間, 弱スター位相, Hahn–Banachの定理

何を捉える概念か

ノルム空間 $X$ の各点 $x$ は、汎関数 $f$ を $f(x)$ へ写す評価として、二重双対 $X^{**}$ の元になる。この評価写像はいつも等長な埋め込みだが、$X^{**}$ 全体を覆うとは限らない。覆うとき、つまり「双対の双対で $X$ に戻る」とき、$X$ を反射的という。
反射性が重要なのは、それが閉単位球の弱位相でのコンパクト性と同値だからである(角谷の定理)。無限次元では閉単位球はノルム位相でコンパクトでないが、反射的な空間では弱位相に移れば有界列から収束部分列を取り出せる。変分問題で最小値の存在を示す「直接法」は、この性質に支えられている。Hilbert 空間や $1< p<\infty$ の $L^p$ 空間は反射的で、$c_0$・$\ell^1$・$\ell^\infty$・$L^1[0,1]$ は反射的でない。
以下、$\mathbb K=\mathbb R$ または $\mathbb C$ とする。

定義

$X$ を $\mathbb K$ 上のノルム空間、$X^*$ をその連続双対空間、$X^{**}=(X^*)^*$ を二重双対とする。評価写像 $J_X\colon X\to X^{**}$ を $J_X(x)(f)=f(x)$ で定めると、$J_X$ は線形で、$\|J_X(x)\|=\|x\|$ を満たす(連続双対空間 の記事の定義「自然な評価写像と反射性」と定理「評価写像は等長埋め込み」。等長性は Hahn–Banach の定理による)。

反射的Banach空間

ノルム空間 $X$ は、評価写像 $J_X\colon X\to X^{**}$ が全射であるとき反射的であるという。

反射的なら $J_X$ は全射な線形等長写像であり、$X^{**}$ は双対空間として完備だから(連続双対空間 の記事の定理「連続双対の完備性」)、$X$ も完備である。したがって反射的なノルム空間は Banach 空間であり、反射的 Banach 空間と呼ばれる。
定義で「$X$ と $X^{**}$ が等長同型」ではなく「$J_X$ が全射」と述べることは本質的である。$J_X$ 以外の全射な線形等長写像 $X\to X^{**}$ をもつのに反射的でない Banach 空間が R. C. James によって構成されている(Bre11 Remark 14、p. 67)。一方、反射性は等長同型で移る。

等長同型による不変性

$T\colon X\to Y$ がノルム空間の間の全射な線形等長写像で、$X$ が反射的なら、$Y$ も反射的である。

$T^*\colon Y^*\to X^*$ を $T^*g=g\circ T$、$T^{**}\colon X^{**}\to Y^{**}$ を $T^{**}\xi=\xi\circ T^*$ で定める。$T$ が全単射なので $T^*$ は全単射で(逆は $(T^{-1})^*$)、同様に $T^{**}$ も全単射である。$x\in X$、$g\in Y^*$ について
$$ J_Y(Tx)(g)=g(Tx)=(T^*g)(x)=J_X(x)(T^*g)=\bigl(T^{**}J_Xx\bigr)(g) $$
なので $J_Y\circ T=T^{**}\circ J_X$ である。右辺は全射の合成なので全射であり、$J_Y$ は全射である。

反射的な空間の例

有限次元のノルム空間

$\dim X=d<\infty$ なら $\dim X^*=d$(連続双対空間 の記事の命題「有限次元では代数的双対と一致する」)、同じく $\dim X^{**}=d$ である。$J_X$ は単射な線形写像なので、次元の比較から全射である。

Hilbert 空間は反射的

Hilbert 空間 $H$ は反射的である。

内積は第 1 変数について線形、第 2 変数について共役線形とする。$y\in H$ に対し $R(y)=\langle\cdot,y\rangle\in H^*$ とおくと、Rieszの表現定理 の記事の系「Hilbert 空間とその双対空間」により、$R\colon H\to H^*$ は共役線形な全単射である。$\xi\in H^{**}$ をとり、$\psi(y)=\overline{\xi(R(y))}$ と定める。$R(ay)=\bar aR(y)$ なので $\psi(ay)=\overline{\bar a\,\xi(R(y))}=a\psi(y)$ であり、$\psi$ は線形で、$|\psi(y)|\le\|\xi\|\,\|y\|$ から連続である。よって Rieszの表現定理 によりある $x\in H$ で $\psi(y)=\langle y,x\rangle$ となる。すると
$$ \xi(R(y))=\overline{\langle y,x\rangle}=\langle x,y\rangle=R(y)(x)=J_H(x)(R(y)) $$
であり、$R$ は全射なので $\xi=J_H(x)$ である。

$1< p<\infty$ の $L^p$ 空間

測度空間上の $L^p$($1< p<\infty$、$1/p+1/p'=1$)を考える。$h\in L^{p'}$ に $T_p(h)(f)=\int fh$ を対応させる写像 $T_p\colon L^{p'}\to(L^p)^*$ は全射な線形等長写像である(Lebesgue空間 の記事の注意「双対空間」、σ-有限な測度空間では Bre11 Theorem 4.11、p. 97。σ-有限性は同書第 4 章の前提、p. 89)。$p$ と $p'$ を入れ替えた $T_{p'}$ も同様である。
$\xi\in(L^p)^{**}$ をとると、$\xi\circ T_p$ は $L^{p'}$ 上の連続線形汎関数なので、ある $u\in L^p$ で $\xi(T_ph)=\int hu$($h\in L^{p'}$)と書ける。右辺は $T_p(h)(u)=J(u)(T_ph)$ であり、$T_p$ は全射なので $\xi=J(u)$ となる。よって $L^p$ は反射的である(Bre11 Theorem 4.10、p. 95 は一様凸性を経由する別の証明を与える)。計数測度をとれば $\ell^p$($1< p<\infty$)も反射的である。

反射的でない空間

反射的でないことは、ノルムを達成しない汎関数で判定できることが多い。

反射的なら汎関数はノルムを達成する

$X$ が反射的なら、任意の $f\in X^*$ について $\|x\|\le1$ かつ $|f(x)|=\|f\|$ となる $x\in X$ が存在する。

$f=0$ なら $x=0$ でよい。$f\ne0$ なら、Hahn–Banachの定理 の記事の系「ノルムを保つ延長」を $X^*$ の 1 次元部分空間 $\mathbb Kf$ に用いて(連続双対空間 の記事の定理「点でノルムを実現する汎関数」の形)、$\|\xi\|=1$、$\xi(f)=\|f\|$ となる $\xi\in X^{**}$ をとる。反射性から $\xi=J_X(x)$ となる $x$ があり、$\|x\|=\|\xi\|=1$、$f(x)=\xi(f)=\|f\|$ である。

逆に、すべての $f\in X^*$ がノルムを達成する Banach 空間は反射的である(R. C. James の定理。Bre11 Remark 3、p. 4。この記事では証明しない)。

$c_0$・$\ell^1$・$L^1[0,1]$ は反射的でない

$c_0$:$f(x)=\sum_n2^{-n}x_n$ とおく。$|f(x)|\le\sum_n2^{-n}\|x\|_\infty=\|x\|_\infty$ であり、$x=(1,\ldots,1,0,\ldots)$($1$ が $N$ 個)で $f(x)=1-2^{-N}$ なので $\|f\|=1$。$\|x\|_\infty\le1$ かつ $|f(x)|=1$ なら $\sum_n2^{-n}|x_n|\ge1$ と $|x_n|\le1$ からすべての $|x_n|=1$ となり、$x\notin c_0$。よって $f$ はノルムを達成せず、$c_0$ は反射的でない。
$\ell^1$:$f(x)=\sum_n(1-1/n)x_n$ とおくと $\|f\|=\sup_n(1-1/n)=1$($e_n$ で評価)。$x\ne0$ なら $|f(x)|\le\sum_n(1-1/n)|x_n|<\|x\|_1$ なので、$\|x\|_1\le1$ で $|f(x)|=1$ となる $x$ はない。
$L^1[0,1]$:$f(u)=\int_0^1tu(t)\,dt$ とおくと $|f(u)|\le\|u\|_1$、$u=n1_{[1-1/n,1]}$ で $f(u)=1-\frac1{2n}$ なので $\|f\|=1$。$|f(u)|=\|u\|_1$ なら $\int_0^1(1-t)|u(t)|\,dt=0$ から $u=0$(ほとんど至る所)となり、ノルム $1$ の点では達成されない。

完備でないノルム空間、たとえば有限個の座標だけが $0$ でない数列の空間 $c_{00}$ に $\ell^p$ ノルムを入れたものは、定義の直後に述べた理由で反射的でない(連続双対空間 の記事の節「二重双対への自然な評価写像」)。

閉部分空間と双対空間

閉部分空間の反射性

反射的な Banach 空間 $X$ の閉線形部分空間 $M$ は反射的である。

$\varphi\in M^{**}$ をとる。$\psi(f)=\varphi(f|_M)$($f\in X^*$)とおくと $\psi\in X^{**}$ であり、反射性から $\psi=J_X(x)$ となる $x\in X$ がある。
$x\in M$ を示す。$x\notin M$ なら、Hahn–Banachの定理 の記事の系「閉部分空間の外の点を検出する汎関数」により、$f|_M=0$ かつ $f(x)\ne0$ となる $f\in X^*$ がある。すると $f(x)=\psi(f)=\varphi(0)=0$ となり矛盾する。
次に $g\in M^*$ を任意にとり、系「ノルムを保つ延長」で $g$ を $f\in X^*$ に延長する。$f|_M=g$ だから $\varphi(g)=\psi(f)=f(x)=g(x)=J_M(x)(g)$ である。よって $\varphi=J_M(x)$ であり、$J_M$ は全射である。

双対空間の反射性

Banach 空間 $X$ が反射的であることと、$X^*$ が反射的であることは同値である。

($\Rightarrow$)$\Phi\in X^{***}$ をとり、$f(x)=\Phi(J_Xx)$ で $f\in X^*$ を定める。任意の $\xi\in X^{**}$ は $\xi=J_Xx$ と書けるから、$\Phi(\xi)=f(x)=\xi(f)=J_{X^*}(f)(\xi)$ である。よって $\Phi=J_{X^*}(f)$ であり、$J_{X^*}$ は全射である。
($\Leftarrow$)$J_X(X)$ は Banach 空間 $X$ の等長像なので完備で、$X^{**}$ の閉部分空間である。$J_X(X)\ne X^{**}$ と仮定すると、Hahn–Banachの定理 の記事の系「閉部分空間の外の点を検出する汎関数」により、$J_X(X)$ 上で $0$ になる $0$ でない $\Phi\in X^{***}$ がある。$X^*$ は反射的なので $\Phi=J_{X^*}(f)$ となる $f\in X^*$ がある。すると任意の $x$ で $0=\Phi(J_Xx)=J_Xx(f)=f(x)$ となり $f=0$、したがって $\Phi=0$ となって矛盾する。

$c_0$ は $\ell^\infty$ の閉部分空間である($0$ に収束する数列の一様極限は $0$ に収束する)。$c_0$ は反射的でないから、thm-reflexive-subspace の対偶により $\ell^\infty$ も反射的でない。また $\ell^1$ は $c_0$ の双対と等長同型なので(弱スター位相 の記事の節「列で見える差:$c_0$ と $\ell^1$」)、thm-reflexive-dual と prop-reflexive-iso からも $\ell^1$ が反射的でないことが分かる。

弱コンパクト性:角谷の定理

$X$ 上の弱位相 $\sigma(X,X^*)$ は、すべての $f\in X^*$ を連続にする最も粗い位相である。二重双対 $X^{**}=(X^*)^*$ には、$X^*$ の各元での評価による弱スター位相 $\sigma(X^{**},X^*)$ が入る(弱スター位相)。各 $f\in X^*$ について、$X^{**}$ 上の評価 $e_f(\xi)=\xi(f)$ と $J_X$ の合成は $e_f\circ J_X=f$ である。弱位相は $f$ たちで、弱スター位相は $e_f$ たちで定まる最も粗い位相なので、$J_X$ は $(X,\sigma(X,X^*))$ から像 $J_X(X)$($\sigma(X^{**},X^*)$ の相対位相)への同相写像である。
角谷の定理の証明では、閉単位球の像 $J_X(B_X)$ が $B_{X^{**}}$ の中で弱スター位相 $\sigma(X^{**},X^*)$ について稠密であることを使う。これは Goldstineの定理 の記事の定理「Goldstineの定理」の 1($J(B_X)$ の弱スター閉包は $B_{X^{**}}$ に等しい)である。同記事は実ノルム空間で証明し、複素ノルム空間の場合を節「複素ノルム空間の場合」で $f\mapsto\operatorname{Re}f$ により導いているので、$\mathbb K=\mathbb R,\mathbb C$ のどちらでも、$X$ の完備性なしに使える。

角谷の定理

Banach 空間 $X$ が反射的であるための必要十分条件は、閉単位球 $B_X$ が弱位相 $\sigma(X,X^*)$ でコンパクトであることである。

($\Rightarrow$)$J_X$ は全射な等長写像なので $J_X(B_X)=B_{X^{**}}$ である。$B_{X^{**}}$ はノルム空間 $X^*$ の双対の閉単位球なので、Banach–Alaogluの定理 により $\sigma(X^{**},X^*)$ でコンパクトである。$J_X$ は弱位相と弱スター位相の間の同相写像だから、$B_X$ は弱コンパクトである。
($\Leftarrow$)$B_X$ が弱コンパクトなら、連続写像 $J_X$ による像 $J_X(B_X)$ は $\sigma(X^{**},X^*)$ でコンパクトであり、この位相は Hausdorff なので閉じている(弱スター位相)。Goldstine の定理により $J_X(B_X)$ は $B_{X^{**}}$ で弱スター稠密だから $J_X(B_X)=B_{X^{**}}$ である。$X^{**}$ の任意の元はノルムで割れば $B_{X^{**}}$ に入るので、$J_X$ は全射である。

この定理は「ノルム位相ではコンパクトでない球も、弱位相ではコンパクト」という性質が反射性と同じものであることを述べる。Bre11 Theorem 3.17(pp. 67–69)では Helly の補題(Lemma 3.3)と Goldstine の補題(Lemma 3.4)を経由して証明される。

角谷の定理の帰結

有界閉凸集合の弱コンパクト性

反射的な Banach 空間 $X$ の有界な閉凸集合 $C$ は、弱位相でコンパクトである。

ノルム閉な凸集合は弱閉である(Hahn–Banachの定理 の記事の系「閉凸集合と外の点の分離」の後の段落。複素数の場合は実部をとる)。$C\subset mB_X$ となる $m$ をとると、$mB_X$ は thm-reflexive-kakutani により弱コンパクトで、$C$ はその弱閉部分集合だから弱コンパクトである。

最近点の存在

反射的な Banach 空間 $X$ の空でない閉凸集合 $C$ と $x_0\in X$ に対し、$\|x_0-c_0\|=\inf_{c\in C}\|x_0-c\|$ となる $c_0\in C$ が存在する。

$d=\inf_C\|x_0-c\|$ とし、$R>d$ をとる。$C_R=C\cap\{x:\|x-x_0\|\le R\}$ は空でない有界閉凸集合なので、cor-reflexive-closed-convex により弱コンパクトである。各 $s\ge0$ について $\{c\in C_R:\|x_0-c\|\le s\}$ は閉凸集合なので弱閉である。$s_k\downarrow d$($s_k>d$)に対するこれらの集合は空でない弱閉集合の減少列で、弱コンパクトな $C_R$ の中にあるから共通部分は空でない。その元 $c_0$ は $\|x_0-c_0\|\le d$ を満たす。

同じ論法で、反射的な空間の閉凸集合上では、下半連続な凸関数で $\|x\|\to\infty$ のとき $+\infty$ に発散するものは最小値をとる(Bre11 Corollary 3.23、p. 71)。変分法の直接法の抽象的な形である。
列について述べるには、弱位相が一般には距離化できないことに注意が要る。それでも反射的な空間では有界列から弱収束部分列が取れる。

有界列の弱収束部分列

反射的な Banach 空間 $X$ の有界列 $(x_n)$ は、弱位相で収束する部分列をもつ。

$M$ を $\{x_n\}$ の張る部分空間の閉包とする。有理数(複素数なら実部・虚部が有理数)係数の有限一次結合は可算個で $M$ で稠密なので、$M$ は可分である。thm-reflexive-subspace により $M$ は反射的なので、$J_M(M)=M^{**}$ は可分であり、下の補題により $M^*$ は可分である。
$(J_Mx_n)$ は $M^{**}=(M^*)^*$ の有界列で、$M^*$ は可分だから、Banach–Alaogluの定理 の記事の命題「可分な場合の部分列」により、$\sigma(M^{**},M^*)$ で収束する部分列 $J_Mx_{n_k}\to\xi$ がある。$\xi=J_Mx$($x\in M$)と書くと、すべての $g\in M^*$ で $g(x_{n_k})\to g(x)$ である。$f\in X^*$ なら $f|_M\in M^*$ なので $f(x_{n_k})\to f(x)$、すなわち $x_{n_k}$ は $X$ で $x$ に弱収束する。
補題:ノルム空間 $Y$ の双対 $Y^*$ が可分なら $Y$ も可分である。

補題の証明を開く

$Y^*$ の稠密列 $(g_n)$ をとり、$\|y_n\|\le1$ かつ $|g_n(y_n)|\ge\|g_n\|/2$ となる $y_n$ を選ぶ。$L$ を $\{y_n\}$ の張る部分空間とする。$L$ が稠密でなければ、閉包 $\overline L$ は $Y$ と異なる閉部分空間なので、$y_0\notin\overline L$ に Hahn–Banachの定理 の記事の系「閉部分空間の外の点を検出する汎関数」を用いて、$\overline L$ 上で $0$ で $\|g\|=1$ の $g$ がとれる。$\|g-g_n\|< 1/4$ となる $n$ をとると $\|g_n\|>3/4$ だが、$\|g_n\|/2\le|g_n(y_n)|=|(g_n-g)(y_n)|< 1/4$ となり矛盾する。よって $L$ は稠密で、その有理係数の一次結合の全体が $Y$ の可算稠密集合になる。$\square$

逆に、有界列がすべて弱収束部分列をもつ Banach 空間は反射的である(Eberlein–Šmulian の定理。Bre11 Theorem 3.19、p. 70。この記事では証明しない)。また一様凸な Banach 空間は反射的である(Milman–Pettis の定理。Bre11 Theorem 3.31、p. 77)。

反例の表

外す条件反例成り立たなくなること
反射性(最近点)$c_0$ と超平面 $C=\{x:\sum_n2^{-n}x_n=1\}$、$x_0=0$最近点の存在(cor-reflexive-nearest)
反射性(有界列)$\ell^1$ の標準基底 $(e_n)$弱収束部分列の存在(thm-reflexive-sequence)
有界性$\ell^2$ の直線 $\mathbb Re_1$弱コンパクト性(cor-reflexive-closed-convex)
部分空間が閉$\ell^2$ の部分空間 $c_{00}$部分空間の反射性(thm-reflexive-subspace)
$X$ の完備性$\ell^2$ ノルムの $c_{00}$$X^*$ の反射性から $X$ の反射性(thm-reflexive-dual)

1 行目:$f(x)=\sum_n2^{-n}x_n$ は ex-reflexive-non のとおり $\|f\|=1$ でノルムを達成しない。$x\in C$ なら $1=|f(x)|\le\|x\|$、$x=(1,\ldots,1,0,\ldots)/(1-2^{-N})\in C$ のノルムは $1$ に近づくので $\inf_C\|x\|=1$ だが、$\|x\|=1$ の $x\in C$ があれば $f$ はノルムを達成してしまう。
2 行目:$e_{n_k}$ が $x$ に弱収束すれば、座標汎関数から $x=0$ である。ところが $\ell^1$ 上の汎関数 $g(x)=\sum_nx_n$ について $g(e_{n_k})=1$ は $g(0)=0$ に収束しない。
3 行目:連続な $f(x)=x_1$ は直線 $\mathbb Re_1$ 上で有界でないので、この閉凸集合は弱コンパクトでない(弱コンパクト集合上の弱連続関数は有界)。
4・5 行目:$c_{00}$ は完備でないので反射的でない。一方 $c_{00}$ は $\ell^2$ で稠密なので、$c_{00}$ 上の連続線形汎関数は一様連続性により $\ell^2$ へ同じノルムで一意に延長され、$c_{00}^*$ は $\ell^2$ の双対と等長同型、したがって Hilbert 空間と等長同型で反射的である(prop-reflexive-hilbert、prop-reflexive-iso)。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Universitext, Springer, 2011, Remark 3(p. 4、James の定理)、§3.5(pp. 67–72:定義、Remarks 13–14、Theorem 3.17 と Lemmas 3.3–3.4、Theorems 3.18–3.19、Proposition 3.20、Corollaries 3.21–3.23)、Theorem 3.26(p. 73)、Theorem 3.31(p. 77、Milman–Pettis)、Theorems 4.10–4.11(pp. 95–97、$L^p$ の反射性と双対)

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