順序体(ordered field)とは、体 $F$ とその上の全順序 $\le$ の組であって、$a\le b$ ならば $a+c\le b+c$、$0\le a$ かつ $0\le b$ ならば $0\le ab$ を満たすものである。有理数体と実数体が代表例で、順序体では $0$ でない元の平方は正、標数は $0$ であり、有理数体が順序を保って埋め込まれる。複素数体や正の標数の体には順序体の順序が入らず、体が順序付け可能であることは $-1$ が平方の和で書けないことと同値である(Artin–Schreier)。同じ体に複数の順序が入ることがあり、有理関数体 $\mathbb{R}(t)$ にはどの自然数よりも大きい元をもつ順序が入る。そのような元をもたない Archimedes 的な順序体は、実数体に順序を保ってただ 1 通りに埋め込め、実数体の部分体と同型になる。
前提知識: 体, 全順序, 有理数, 実数
順序体は、四則演算と大小関係が両立している体である。たとえば有理数では $\frac13<\frac12$ の両辺に $\frac16$ を足すと $\frac12<\frac23$ となり、大小は保たれる。正の数 $2$ を掛けても $\frac23<1$ と保たれるが、負の数 $-1$ を掛けると $-\frac13>-\frac12$ と向きが逆になる。このような計算規則が、足し算と「正の数どうしの積は正」という 2 つの条件だけから導けることを公理にしたものが順序体である。逆に複素数全体には、どのように大小を決めてもこの 2 条件を同時に満たすことはできない。もし $i>0$ でも $i<0$ でも、後で見るように $i^2=-1$ が $0$ 以上になってしまうからである。
体 $F$ と $F$ 上の全順序 $\le$ の組 $(F,\le)$ が 順序体(ordered field)であるとは、任意の $a,b,c\in F$ について次の 2 条件が成り立つことをいう。
この定義は 実数 の記事の定義「順序体」と同じである。同じ体に複数の順序が入ることがある(ex-ordered-field-sqrt-two)ので、順序体は体と順序の組として扱う。順序は正の元の集合で表すこともできる。
体 $F$ の部分集合 $P$ が次の 2 条件を満たすとき、$P$ を $F$ の 正錐(positive cone)という。
不等式 の記事の定義「実数の順序の公理」は、実数についてこの形で順序を定めている。次の prop-ordered-field-cone により、2 つの定め方は同じものを与える。
また、順序体 $(F,\le)$ が Archimedes 的(Archimedean)であるとは、任意の $x\in F$ に対し $x< n\cdot1$ となる自然数 $n$ が存在することをいう。ここで $n\cdot1$ は $1$ を $n$ 個足した元である(Archimedesの性質)。
順序体の 2 つの公理は、「大小は平行移動で変わらない」と「正の数どうしの積は正」という 2 つの規則である。不等式の計算で使う規則、たとえば「負の数を掛けると向きが変わる」「$x^2\ge0$」「正の数の逆数は正」は、すべてこの 2 つから導かれる。したがって、体の公理と順序体の 2 つの公理だけから導かれる不等式(上限や極限、平方根などの存在を使わないもの)は、どの順序体でもそのまま成り立つ。
一方、順序体であることだけでは、実数の「隙間のなさ」も「限りなく大きい元がないこと」も従わない。有理数体は隙間だらけの順序体であり、有理関数体には「どの自然数よりも大きい元」をもつ順序が入る。順序体の中で実数体を特徴づけるには上限性質(実数)が要り、どの自然数よりも大きい元をもたない順序体は、ちょうど実数体の部分体として実現できるもの(thm-ordered-field-embedding)である。
$K=\mathbb{Q}(\sqrt2)$ には、次の 2 つの異なる順序が入る。$\mathbb{Q}$ 上の体の自己同型 $\sigma(a+b\sqrt2)=a-b\sqrt2$ を用いて、$x\preceq y$ を $\sigma(x)\le\sigma(y)$(右辺は $\mathbb{R}$ の通常の順序)で定める。$\sigma$ は単射で和と積を保つので、$\preceq$ も全順序であり、2 つの公理を満たす。通常の順序では $\sqrt2>0$ だが、$\preceq$ では $\sigma(\sqrt2)=-\sqrt2<0$ なので $\sqrt2$ は負の元である。
$K$ の順序はこの 2 つだけである。実際、$K$ の任意の順序で $-2<\sqrt2<2$ である($\sqrt2\ge2$ なら公理 2 を $\sqrt2-2\ge0$ と $\sqrt2\ge0$ に使って $2=\sqrt2\cdot\sqrt2\ge2\sqrt2\ge4$ となり矛盾、$\sqrt2\le-2$ も同様)。$K$ の有理数どうしの大小は通常の大小である(prop-ordered-field-rationals)ので、$a,b\in\mathbb{Q}$ について $|a+b\sqrt2|\le|a|+2|b|$ である(順序体でも $\pm x\le|x|$ から $|x+y|\le|x|+|y|$ が従うので、$|a+b\sqrt2|\le|a|+|b\sqrt2|=|a|+|b||\sqrt2|\le|a|+2|b|$ となる)。この式から、この順序は Archimedes 的である。thm-ordered-field-embedding により順序を保つ単射な体の準同型 $\psi\colon K\to\mathbb{R}$ があり、$\psi(\sqrt2)^2=2$ から $\psi(\sqrt2)=\pm\sqrt2$、すなわち $\psi$ は包含写像か $\sigma$ である。$\psi$ は単射で順序を保ち、どちらの順序も全順序なので、$x\le y\iff\psi(x)\le\psi(y)$ となり、順序は上の 2 つのどちらかに一致する。
実数係数の有理関数体 $\mathbb{R}(t)$ において、$0$ でない $f$ を十分大きい実数 $x$ で評価した値 $f(x)$ の符号を考える。$f=p/q$($p,q\in\mathbb{R}[t]$、$p,q\ne0$)の $p,q$ は有限個の実数の零点しかもたないので、ある $x_0$ があって、$x>x_0$ では $f(x)$ が定義されて $0$ にならず、中間値の定理により符号が一定である。そこで
$$
P:=\{f\in\mathbb{R}(t)\mid f\ne0,\ \text{十分大きいすべての実数 }x\text{ について }f(x)>0\}
$$
とおく。今述べたことから、$0$ でない $f$ について $f\in P$ と $-f\in P$ のちょうど一方が成り立つ。$f,g\in P$ なら、十分大きい $x$ で $f(x)>0$、$g(x)>0$ なので $(f+g)(x)>0$、$(fg)(x)>0$ である。よって $P$ は正錐であり、prop-ordered-field-cone により $\mathbb{R}(t)$ は順序体になる。
この順序では、任意の自然数 $n$ について $t-n\in P$、すなわち $t>n\cdot1$ である。したがってこの順序体は Archimedes 的でない。$1/t$ は正の元だが、すべての正の実数 $r$ について $1/t< r$ となる「無限小」の元である。
$\mathbb{C}$ はどのような全順序によっても順序体にならない。順序体では $0$ でない元の平方は正であり(prop-ordered-field-basic の 1)、$1=1^2>0$ なので $-1<0$ である。ところが $\mathbb{C}$ では $-1=i^2$ は $0$ でない元の平方なので正でなければならず、矛盾する。
たとえば $\mathbb{C}=\mathbb{R}^2$ に辞書式順序(実部で比べ、等しければ虚部で比べる)を入れると、これは全順序で公理 1 を満たす。しかし $0< i$ かつ $0< i$ なのに $i\cdot i=-1<0$ であり、公理 2 を満たさない。破る含意は「足し算と両立する全順序は順序体の順序である」である。
標数 $p>0$ の体、たとえば有限体 $\mathbb{F}_p$ は順序付け可能でない。順序体では $1>0$ から $n\cdot1=1+\cdots+1>0$($n\ge1$)となる(prop-ordered-field-basic の 3)が、標数 $p$ では $p\cdot1=0$ だからである。公理 2 を除いても、標数 $p$ の体の上に公理 1 を満たす全順序は存在しない。公理 1 から $a< b$ なら $a+c< b+c$ である($a+c=b+c$ なら $a=b$)ので、$0<1$ なら $0<1<1+1<\cdots< p\cdot1=0$、$1<0$ なら $0>1>1+1>\cdots>p\cdot1=0$ となり、どちらの場合も $0<0$ という矛盾になるからである。
$F$ を体とする。
この対応により、不等式 の記事の命題「順序の基本性質」とその証明は、正錐の 2 条件と体の公理しか使っていないので、任意の順序体でそのまま成り立つ。すなわち、推移律、$a< b$ かつ $c< d$ なら $a+c< b+d$、$c>0$ なら $ac< bc$ と $c<0$ なら $ac>bc$($a< b$ のとき)、$a>0$ なら $1/a>0$、$0< a< b$ なら $1/b<1/a$ が成り立つ。以下ではこれらを自由に使う。順序体では $|a|$ を、$a\ge0$ のとき $a$、$a<0$ のとき $-a$ と定める。
$(F,\le)$ を順序体とする。
2 の逆、すなわち $-1$ が平方の和として書けない体には順序が入ることも成り立つ(thm-ordered-field-artin-schreier)。
$(F,\le)$ を順序体とする。整数 $m$ と正の整数 $n$ について $m/n\mapsto(m\cdot1)(n\cdot1)^{-1}$ で定まる写像 $\iota\colon\mathbb{Q}\to F$ は単射な体の準同型であり、$\mathbb{Q}$ の通常の順序について $q< q'\iff\iota(q)<\iota(q')$ を満たす。特に、$\mathbb{Q}$ を順序体にする順序は通常の順序ただ 1 つである。
prop-ordered-field-basic の 3 により $F$ の標数は $0$ なので、$\mathbb{Z}\to F$、$m\mapsto m\cdot1$ は単射な環準同型であり、$0$ でない整数の像は $F$ で可逆である。商体 の記事の命題「商体の普遍性」により、これは $\mathbb{Q}$ からの体の準同型 $\iota$ に一意に延び、$\iota(m/n)=(m\cdot1)(n\cdot1)^{-1}$ である。体の準同型なので単射である。
順序について、$q'-q=m/n$($n>0$)と書くと、$\iota(q')-\iota(q)=(m\cdot1)(n\cdot1)^{-1}$ である。$n\cdot1>0$ なのでその逆元も正であり、$\iota(q')-\iota(q)>0\iff m\cdot1>0$ である。prop-ordered-field-basic の 3 により $m>0$ なら $m\cdot1>0$、$m<0$ なら $m\cdot1=-((-m)\cdot1)<0$、$m=0$ なら $0$ なので、$m\cdot1>0\iff m>0\iff q< q'$ である。
最後の主張は $F=\mathbb{Q}$ に適用すればよい。$\iota$ は恒等写像なので、$\mathbb{Q}$ の任意の順序 $\le$ について $q< q'$(通常の順序)$\iff q< q'$($\le$ の意味で)となる。$\square$
以下、順序体 $F$ の中の $\iota(\mathbb{Q})$ を $\mathbb{Q}$ と同一視し、$F$ の有理数と呼ぶ。
順序体 $(F,\le)$ について、次の 3 条件は同値である。
1 ⇒ 2。$y-x>0$ なので、1 を $1/(y-x)$ に使って $n(y-x)>1$ となる $n\ge1$ をとる。1 を $nx$ と $-nx$ に使うと、$-K< nx< N$ となる整数 $N,K$ があるので、$S:=\{m\in\mathbb{Z}\mid m\le nx\}$ は $-K$ を含み $N$ で上に押さえられた整数の集合であり、最大元 $m$ をもつ。$m\le nx< m+1$ であり、$m+1\le nx+1< ny$ なので、$nx< m+1< ny$、すなわち $x<(m+1)/n< y$ である。
2 ⇒ 3。$0< q<\varepsilon$ となる有理数 $q=a/b$($a,b$ は正の整数)をとると、$1/b\le a/b<\varepsilon$ である。
3 ⇒ 1。$x\le0$ なら $n=1$ でよい。$x>0$ なら 3 を $\varepsilon=1/x$ に使い、$1/n<1/x$ から $x< n$ を得る(正の元の逆数をとると大小が逆になる)。$\square$
$\mathbb{Q}$ と $\mathbb{R}$ とその部分体は Archimedes 的であり、ex-ordered-field-rational-functions の $\mathbb{R}(t)$ は Archimedes 的でない。Archimedes 的な順序体は、実数体の部分体と本質的に同じものである。
$(F,\le)$ を Archimedes 的な順序体とする。このとき、体の準同型 $\varphi\colon F\to\mathbb{R}$ であって、$x< y\iff\varphi(x)<\varphi(y)$ を満たすものがただ 1 つ存在する。$\varphi$ は $x\in F$ を
$$
\varphi(x)=\sup\{q\in\mathbb{Q}\mid q< x\}
$$
($\sup$ は $\mathbb{R}$ での上限)に送る。したがって $F$ は、$\mathbb{R}$ の部分体 $\varphi(F)$ に $\mathbb{R}$ の順序を制限した順序体と同型である。
$x\in F$ について $L(x):=\{q\in\mathbb{Q}\mid q< x\}$ とおく。Archimedes 性により $-K< x< N$ となる整数 $K,N$ があるので、$L(x)$ は $-K$ を含み $N$ で上に押さえられる。よって $\varphi(x):=\sup L(x)\in\mathbb{R}$ が定まる。以下、prop-ordered-field-archimedean の 2($\mathbb{Q}$ の稠密性)を繰り返し使う。
(a) 有理数 $r$ について $L(r)=\{q\in\mathbb{Q}\mid q< r\}$(prop-ordered-field-rationals により $F$ の中の大小は通常の大小)なので $\varphi(r)=r$ である。
(b) $x< y$ なら、有理数 $q_1,q_2$ で $x< q_1< q_2< y$ となるものをとる。$L(x)$ の元はすべて $q_1$ より小さいので $\varphi(x)\le q_1$、$q_2\in L(y)$ なので $q_2\le\varphi(y)$ であり、$\varphi(x)<\varphi(y)$ である。$F$ の順序は全順序なので、逆に $\varphi(x)<\varphi(y)$ なら $x< y$ である。
(c) $\varphi(x+y)=\varphi(x)+\varphi(y)$ を示す。$q\in L(x)$、$q'\in L(y)$ なら $q+q'\in L(x+y)$ なので $q+q'\le\varphi(x+y)$ であり、$q,q'$ について上限をとって $\varphi(x)+\varphi(y)\le\varphi(x+y)$ となる。逆に $r\in L(x+y)$ とすると $r-y< x$ なので有理数 $q$ で $r-y< q< x$ となるものがあり、$r-q< y$ なので有理数 $q'$ で $r-q< q'< y$ となるものがある。$r< q+q'\le\varphi(x)+\varphi(y)$ なので、上限をとって $\varphi(x+y)\le\varphi(x)+\varphi(y)$ である。
(d) $x,y>0$ について $\varphi(xy)=\varphi(x)\varphi(y)$ を示す。$x>0$ なら $0< q< x$ となる有理数があるので、$\varphi(x)=\sup\{q\in\mathbb{Q}\mid0< q< x\}>0$ である。$0< q< x$、$0< q'< y$ となる有理数について $qq'< xy$ なので $qq'\le\varphi(xy)$ であり、まず $q$ について上限をとって $\varphi(x)q'\le\varphi(xy)$、次に $q'$ について上限をとって $\varphi(x)\varphi(y)\le\varphi(xy)$ となる。逆に $r\in\mathbb{Q}$、$r< xy$ について、$r\le0$ なら $\varphi(x)\varphi(y)>0$ より $r<\varphi(x)\varphi(y)$ は明らかなので、以下 $0< r< xy$ の場合を考える。このとき $r/y< x$ なので有理数 $q$ で $r/y< q< x$ となるもの($q>0$)があり、$r/q< y$ なので有理数 $q'$ で $r/q< q'< y$ となるもの($q'>0$)がある。$r< qq'\le\varphi(x)\varphi(y)$ なので、いずれの場合も $r<\varphi(x)\varphi(y)$ であり、$r$ について上限をとって $\varphi(xy)\le\varphi(x)\varphi(y)$ である。
(e) (a) と (c) から $\varphi(0)=0$、$\varphi(-x)=-\varphi(x)$ であり、(d) と符号の場合分けから任意の $x,y$ で $\varphi(xy)=\varphi(x)\varphi(y)$ である(どちらかが $0$ なら両辺 $0$、負の因子は $-1$ 倍して正にする)。$\varphi(1)=1$ なので $\varphi$ は体の準同型であり、(b) により大小を保つ。
一意性。$\psi\colon F\to\mathbb{R}$ も大小を保つ体の準同型とする。$\psi$ は有理数を動かさない(prop-ordered-field-rationals と同じ理由)。$\psi(x)>\varphi(x)$ なら、$\mathbb{R}$ で $\varphi(x)< s<\psi(x)$ となる有理数 $s$ がある。$s\notin L(x)$ で、$s=x$ なら $\psi(x)=s$ となり矛盾するので $x< s$ であり、$\psi(x)<\psi(s)=s$ となって矛盾する。$\psi(x)<\varphi(x)$ なら、$\psi(x)< s<\varphi(x)$ となる有理数 $s$ について、$s$ は $L(x)$ の上界でないので $s< q< x$ となる $q\in L(x)$ があり、$s=\psi(s)<\psi(x)$ となって矛盾する。よって $\psi=\varphi$ である。$\square$
実数体 $\mathbb{R}$ は、上限性質をもつ順序体として順序体の同型を除いて一意に定まる(実数 の記事の定義「実数体と実数」とその直後の段落)。上限性質をもつ順序体は Archimedes 的である(実数 の記事の定理「Archimedes性」の証明は上限性質だけを使う)ので、thm-ordered-field-embedding が適用でき、この場合の $\varphi$ は全射になる。実際、$r\in\mathbb{R}$ に対し $A:=\{q\in\mathbb{Q}\mid q< r\}$ は $F$ で上に有界なので $F$ での上限 $x$ をもつ。$q< r$ なら $q< q'< r$ となる有理数 $q'$ について $q< q'\le x$ なので $A\subset L(x)$($L(x)$ は prf-ordered-field-embedding の記号)であり、$q< x$ なら $q$ は $A$ の上界でないので $q< a$ となる $a\in A$ があって $q< r$ となるから $L(x)\subset A$ である。よって $\varphi(x)=\sup A=r$ である。逆に、Archimedes 的であっても上限性質をもつとは限らない($\mathbb{Q}$ では $\{q\mid q^2<2\}$ が上限をもたない)。
体 $F$ が順序付け可能であるための必要十分条件は、$-1$ が $F$ の元の平方の和として書けないことである。
必要性は prop-ordered-field-basic の 2 である。十分性は Artin と Schreier による。平方の和の全体を含み、和と積で閉じて $-1$ を含まない部分集合のうち極大なものを Zornの補題 でとると、それが正錐と $\{0\}$ の和になることを示す。証明は Lan02 Chapter XI §2、JacBA2 第 11 章に譲る。$-1$ が平方の和として書けない体を 実体(形式的実体)という(実閉体 の記事の定義「順序体と実体」)。この定理により、ex-ordered-field-complex と ex-ordered-field-finite の体が順序付け可能でないことは、$-1$ が平方(またはその和)であることだけから分かる。
順序付け可能な体の中で、真の代数拡大がもう順序付け可能でないものを 実閉体 という。実閉体では順序は「$0$ 以上 $\iff$ 平方」として体の構造から一意に決まり、ex-ordered-field-sqrt-two のように順序が複数あることは起こらない。任意の順序体 $(F,\le)$ は、その順序を延ばす実閉な代数拡大(実閉包)をもつ(実閉体 の記事の定理「実閉包の存在とArtin–Schreierの定理」)。
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