友愛数(amicable numbers)とは、相異なる正の整数 $m,n$ で、$m$ の真の約数(自分自身を除く正の約数)の和が $n$、$n$ の真の約数の和が $m$ になるものの組、またはその組に属する数のことであり、最小の組は $220$ と $284$ である。条件は $\sigma(m)=\sigma(n)=m+n$ と同値で、組の小さい方は過剰数、大きい方は不足数であり、小さい方は素数冪でない。Thābit ibn Qurra の規則とそれを一般化した Euler の規則は、$2$ の冪と素数で書けるある 3 つの数がすべて素数のときに組を与える。組が無限にあるかは分かっていないが、友愛数の集合の密度は $0$ である。
$220$ の自分自身を除く約数を足すと $1+2+4+5+10+11+20+22+44+55+110=284$ になり、$284$ の自分自身を除く約数を足すと $1+2+4+71+142=220$ に戻る。このように、互いに相手の「真の約数の和」になっている 2 つの数を 友愛数(amicable numbers)という。友愛数の研究は Pythagoras 学派にさかのぼり(Pol09 p. 252、Dic19 p. 38)、9 世紀には Thābit ibn Qurra が友愛数を作る規則を与えた(Dic19 p. 39)。
完全数 は真の約数の和が自分自身に戻る数であり、友愛数はそれが 2 段で戻る数である。完全数と同じく、友愛数の組が無限にあるかどうかは分かっていない。この記事では、定義と基本的な性質(組の小さい方は過剰数で素数冪でない)を述べ、Euler の規則と、その特別な場合である Thābit ibn Qurra の規則を証明する。あわせて、真の約数の和の反復(アリコット数列)と社交数、知られている結果を紹介する。
正の整数 $n$ について、$n$ の正の約数の和を $\sigma(n)$ と書く(約数関数)。$n$ 自身を除いた正の約数を $n$ の 真の約数 といい、その和を
$$
s(n):=\sigma(n)-n
$$
と書く。$s(1)=0$ であり、素数 $p$ では $s(p)=1$ である。
相異なる正の整数 $m,n$ が 友愛数の組(amicable pair)であるとは、
$$
s(m)=n\quad\text{かつ}\quad s(n)=m
$$
が成り立つことをいう。友愛数の組に属する数を 友愛数(amicable number)という。
$s(m)=n$ は $\sigma(m)=m+n$ と同じであり、$s(n)=m$ は $\sigma(n)=m+n$ と同じである。したがって、相異なる $m,n$ が友愛数の組であることは
$$
\sigma(m)=\sigma(n)=m+n
$$
と同値である。この形で $m=n$ を許すと条件は $\sigma(n)=2n$ となり、完全数 の定義になる。$m=n$ も友愛数に含める流儀もある(Cri24 Definition 19.4.11、p. 336)が、この記事では $m\ne n$ とする(Pol09 p. 252 と同じ)。
$220=2^2\cdot5\cdot11$、$284=2^2\cdot71$ である。約数関数 の命題「約数関数の基本性質」($\sigma$ の乗法性と $\sigma(p^a)=1+p+\dots+p^a$)により
$$
\sigma(220)=7\cdot6\cdot12=504,\qquad \sigma(284)=7\cdot72=504
$$
で、$220+284=504$ なので友愛数の組である。$220$ より小さい組はない($n\le220$ について $s(s(n))$ を計算すれば確かめられる。Python による計算)。
完全数 の記事の注意「過剰数・不足数との比較」にならい、$\sigma(n)>2n$(すなわち $s(n)>n$)となる $n$ を 過剰数、$\sigma(n)<2n$ となる $n$ を 不足数 とよぶ。
写像 $s$ を正の整数の上の「力学系」とみると、完全数は $s$ の不動点、友愛数の組は周期 $2$ の軌道である。$s(n)$ は $n$ の素因数分解に敏感で、隣り合う数でも値が大きく揺れる($s(220)=284$ だが $s(221)=31$)ので、2 段で正確に元へ戻る数は稀である。組を見つけるには、$\sigma$ が乗法的であることを使って $m$ と $n$ の形を決め、条件を素数についての方程式に直すのが古典的な方法で、節「Euler の規則」はその代表である。
$m< n$ を友愛数の組とする。
1:$s(m)=n>m$ なので $m$ は過剰数であり、$s(n)=m< n$ なので $n$ は不足数である。
2:素数 $p$ と $a\ge1$ について
$$
\sigma(p^a)=\frac{p^{a+1}-1}{p-1}<\frac{p^{a+1}}{p-1}=\frac{p}{p-1}\,p^a\le2p^a
$$
である($p\ge2$ なので $\frac p{p-1}\le2$)。よって素数冪は不足数であり、1 により $m$ は素数冪でない。
3:$s(1)=0$ なので $1$ は組に入らない($s(1)$ は相手の正の整数に等しくなりえない)。$p$ が素数で組の一方なら、相手は $s(p)=1$ だが、$1$ は組に入らないので矛盾する。$\square$
1 は、比 $h(n):=\sigma(n)/n$($n$ の約数の逆数の和に等しい)を使っても見通せる。
$m,n$ が友愛数の組なら
$$
\frac{1}{h(m)}+\frac{1}{h(n)}=1,\qquad h(m)\ne2,\quad h(n)\ne2
$$
であり、$h(m)$ と $h(n)$ の一方は $2$ より大きく、他方は $2$ より小さい。
$\sigma(m)=\sigma(n)=m+n$ なので $\frac1{h(m)}+\frac1{h(n)}=\frac{m}{m+n}+\frac{n}{m+n}=1$ である。$h(m)=2$ なら $\sigma(m)=2m=m+n$ から $m=n$ となり、組が相異なることに反する。$h(n)$ も同じである。$\frac1{h(m)}$ と $\frac1{h(n)}$ は和が $1$ で、どちらも $\frac12$ でないので、一方は $\frac12$ より大きく他方は $\frac12$ より小さい。$\square$
たとえば $h(220)=\frac{504}{220}=\frac{126}{55}$、$h(284)=\frac{504}{284}=\frac{126}{71}$ で、$\frac{55}{126}+\frac{71}{126}=1$ である。
2 は組の小さい方についての主張である。大きい方を含め、友愛数が素数冪でありうるかどうかは分かっていない(Pol09 演習 20、p. 271)。3 により、素数(指数 $1$ の素数冪)は大きい方にもならない。
友愛数を作る古典的な方法は、形を決めて $\sigma$ の乗法性で条件を書き下すことである。Euler は、共通の因子 $a$ をもつ $apq$ と $ar$ の形の組を調べた(Dic19 p. 42)。
$a$ を正の整数、$p,q,r$ を $a$ を割らない相異なる素数とする。$apq$ と $ar$ が友愛数の組であることは、次の 2 つが成り立つことと同値である。
$$
(p+1)(q+1)=r+1,\qquad \sigma(a)\,(r+1)=a\,(pq+r).
$$
$p,q,r$ は $a$ を割らない相異なる素数なので、$a,p,q$ は互いに素で、$a$ と $r$ も互いに素である。$\sigma$ の乗法性(約数関数 の命題「約数関数の基本性質」)から
$$
\sigma(apq)=\sigma(a)(p+1)(q+1),\qquad \sigma(ar)=\sigma(a)(r+1)
$$
である。友愛数の組であることは $\sigma(apq)=\sigma(ar)=apq+ar$ と同値である($apq\ne ar$ は、素因数分解の一意性から $pq\ne r$ による)。$\sigma(a)\ge1$ なので、1 つ目の等式 $\sigma(apq)=\sigma(ar)$ は $(p+1)(q+1)=r+1$ と同値である。このもとで 2 つ目の等式 $\sigma(ar)=a(pq+r)$ は $\sigma(a)(r+1)=a(pq+r)$ そのものである。$\square$
$a=2^l$ とおき、素数 $p,q,r$ を $2$ の冪で表すと、次の規則が得られる。
$1\le k< l$ を整数とし、$g:=2^{l-k}+1$ とおく。
$$
p:=2^kg-1,\qquad q:=2^lg-1,\qquad r:=2^{l+k}g^2-1
$$
がどれも素数ならば、$2^lpq$ と $2^lr$ は友愛数の組である。
$l-k\ge1$ より $g\ge3$ なので $2^kg\ge2\cdot3$ で、$p,q,r$ は奇数の素数であり、$p< q< r$ なので相異なり、$a:=2^l$ を割らない。prop-amicable-apq-ar の 2 つの条件を確かめる。
1 つ目の条件.$(p+1)(q+1)=2^kg\cdot2^lg=2^{l+k}g^2=r+1$ である。
2 つ目の条件.$\sigma(2^l)=2^{l+1}-1$ である。右辺の $pq+r$ を計算すると
$$
pq+r=(2^kg-1)(2^lg-1)+2^{l+k}g^2-1=2^{l+k+1}g^2-(2^k+2^l)g
$$
である。したがって示すべき等式 $(2^{l+1}-1)2^{l+k}g^2=2^l\bigl(2^{l+k+1}g^2-(2^k+2^l)g\bigr)$ は、両辺を $2^lg$ で割って
$$
(2^{l+1}-1)2^kg=2^{l+k+1}g-(2^k+2^l),\qquad\text{すなわち}\qquad 2^kg=2^k+2^l
$$
と同値である。これは $g=1+2^{l-k}$ にほかならない。$\square$
Dic19 p. 42 は、この規則を Euler が $apq$ と $ar$ の形の組を探した問題の解の一つとして述べている。$k=l-1$ とおくと $g=3$ となり、次の古い規則が出る。
$l\ge2$ について
$$
p:=3\cdot2^{l-1}-1,\qquad q:=3\cdot2^l-1,\qquad r:=9\cdot2^{2l-1}-1
$$
がどれも素数ならば、$2^lpq$ と $2^lr$ は友愛数の組である。
thm-amicable-euler-rule で $k=l-1$ とおくと、$g=2+1=3$ で、$2^kg-1=3\cdot2^{l-1}-1$、$2^lg-1=3\cdot2^l-1$、$2^{l+k}g^2-1=9\cdot2^{2l-1}-1$ となる。$\square$
この規則は 9 世紀の Thābit ibn Qurra による(Dic19 p. 39、Cri24 Algorithm 19.4.14、p. 337)。$l=2,4,7$ で $3$ つの数がすべて素数になり、次の組が得られる。
| $l$ | $(p,q,r)$ | 友愛数の組 |
|---|---|---|
| $2$ | $(5,11,71)$ | $(220,\ 284)$ |
| $4$ | $(23,47,1151)$ | $(17296,\ 18416)$ |
| $7$ | $(191,383,73727)$ | $(9363584,\ 9437056)$ |
$l\le200$ で $3$ つがすべて素数になるのはこの $3$ つの $l$ だけである(Python による計算)。小さい $l$ で規則が働かない理由を見ると、$l=3$ では $r=287=7\cdot41$、$l=5$ では $q=95=5\cdot19$、$l=6$ では $p=95$、$l=8$ では $q=767=13\cdot59$ が素数でない。Cri24 pp. 337–338 によれば、$l=4$ の組はのちに al-Fārisī と ibn al-Bannā がそれぞれ、$l=7$ の組は 17 世紀初めに Muhammad Bāqir Yazdī がこの規則で求め、どちらも Fermat と Descartes がのちに独立に見つけた。Euler の規則では、$k=l-1$ 以外にも $(k,l)=(1,8)$ で $g=129$、$(p,q,r)=(257,\ 33023,\ 8520191)$ がすべて素数となり、組 $(2172649216,\ 2181168896)$ が得られる($l< 40$ で規則が働く $(k,l)$ は $(1,2),(3,4),(6,7),(1,8)$ だけである。Python による計算)。
$10^5$ 未満の友愛数の組は次の $13$ 組である(Python による計算)。
| 小さい方 | 素因数分解 | 大きい方 | 素因数分解 |
|---|---|---|---|
| $220$ | $2^2\cdot5\cdot11$ | $284$ | $2^2\cdot71$ |
| $1184$ | $2^5\cdot37$ | $1210$ | $2\cdot5\cdot11^2$ |
| $2620$ | $2^2\cdot5\cdot131$ | $2924$ | $2^2\cdot17\cdot43$ |
| $5020$ | $2^2\cdot5\cdot251$ | $5564$ | $2^2\cdot13\cdot107$ |
| $6232$ | $2^3\cdot19\cdot41$ | $6368$ | $2^5\cdot199$ |
| $10744$ | $2^3\cdot17\cdot79$ | $10856$ | $2^3\cdot23\cdot59$ |
| $12285$ | $3^3\cdot5\cdot7\cdot13$ | $14595$ | $3\cdot5\cdot7\cdot139$ |
| $17296$ | $2^4\cdot23\cdot47$ | $18416$ | $2^4\cdot1151$ |
| $63020$ | $2^2\cdot5\cdot23\cdot137$ | $76084$ | $2^2\cdot23\cdot827$ |
| $66928$ | $2^4\cdot47\cdot89$ | $66992$ | $2^4\cdot53\cdot79$ |
| $67095$ | $3^3\cdot5\cdot7\cdot71$ | $71145$ | $3^3\cdot5\cdot17\cdot31$ |
| $69615$ | $3^2\cdot5\cdot7\cdot13\cdot17$ | $87633$ | $3^2\cdot7\cdot13\cdot107$ |
| $79750$ | $2\cdot5^3\cdot11\cdot29$ | $88730$ | $2\cdot5\cdot19\cdot467$ |
prop-amicable-abundant と thm-amicable-euler-rule の仮定を 1 つ外すと、結論は成り立たなくなる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 組である($s(n)=m$ も成り立つ) | $m=24$、$n=s(24)=36$ | $n$ は不足数($\sigma(36)=91>72$) |
| Euler の規則:$p,q,r$ が素数 | $(k,l)=(2,3)$、$r=287=7\cdot41$ | $2^lpq=2024$ と $2^lr=2296$ は友愛数の組 |
| Euler の規則:$g=2^{l-k}+1$ | $(k,l)=(1,2)$、$g=21$ | $2^lpq=13612$ と $2^lr=14108$ は友愛数の組 |
各行の確かめを述べる。
1 行目:$\sigma(24)=60$ なので $s(24)=36$ で、$24$ は過剰数である。$\sigma(36)=\sigma(4)\sigma(9)=7\cdot13=91>72$ なので $36$ も過剰数であり、$s(36)=55\ne24$ である。$s(n)=m$ を外すと、大きい方が不足数であるとは限らない。
2 行目:$(k,l)=(2,3)$ では $g=3$ で、$p=11$、$q=23$ は素数だが $r=9\cdot2^5-1=287=7\cdot41$ は素数でない。$s(2024)=\sigma(8)\sigma(11)\sigma(23)-2024=15\cdot12\cdot24-2024=2296$ だが、$\sigma(2296)=\sigma(8)\sigma(7)\sigma(41)=15\cdot8\cdot42=5040$ なので $s(2296)=2744\ne2024$ である。
3 行目:$g=21$ では $p=2\cdot21-1=41$、$q=4\cdot21-1=83$、$r=8\cdot441-1=3527$ がどれも素数で、$(p+1)(q+1)=42\cdot84=3528=r+1$ だから prop-amicable-apq-ar の 1 つ目の条件は成り立ち、$\sigma(13612)=\sigma(14108)=7\cdot3528=24696$ である。しかし $13612+14108=27720\ne24696$ で、2 つ目の条件 $\sigma(a)(r+1)=a(pq+r)$ が $7\cdot3528=24696\ne4\cdot6930=27720$ として破れている。$g=2^{l-k}+1=3$ でないことだけが仮定に反する。
$n$ から始めて $s$ を繰り返し当てた列 $n,\ s(n),\ s(s(n)),\dots$(途中で $0$ になったら止める)を、$n$ の アリコット数列(aliquot sequence)という(Pol09 p. 252)。たとえば
$$
12\mapsto16\mapsto15\mapsto9\mapsto4\mapsto3\mapsto1\mapsto0,\qquad 95\mapsto25\mapsto6\mapsto6\mapsto\cdots,\qquad 220\mapsto284\mapsto220\mapsto\cdots
$$
である。完全数は周期 $1$ の点、友愛数は周期 $2$ の点にあたる。一般に、アリコット数列が最初から周期的になる $n$ を 社交数(sociable number)といい、周期の長さをその位数という(Pol09 p. 253)。
$12496=2^4\cdot11\cdot71$ から始めると
$$
12496\mapsto14288\mapsto15472\mapsto14536\mapsto14264\mapsto12496
$$
となり、$12496$ は位数 $5$ の社交数である(Python による計算)。Pol09 p. 253 は位数 $4$ の例 $7169104\mapsto7538660\mapsto8292568\mapsto7520432\mapsto7169104$ を挙げている。
E. Catalan の予想を L. E. Dickson が修正した Catalan–Dickson 予想 は、どのアリコット数列も $0$ で止まるか、いずれ周期的になると主張する。$n< 276$ では確かめられているが、$n=276$ の列は 1000 項をはるかに超えて計算されても繰り返しが現れていない。R. K. Guy と J. L. Selfridge は、逆に無限に大きくなる列が無限にあると考えた(Pol09 pp. 252–253)。
次のことが知られている。どれもこの記事では証明しない。
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