順序数空間(ordinal space)とは、順序数 $\alpha$ より小さい順序数の全体 $[0,\alpha)$ に順序位相を入れた位相空間である。区間 $(\beta,\gamma]$ が開かつ閉な集合として基本近傍をなし、$0$ と後続順序数は孤立点、極限順序数 $\lambda$ は集積点で、$\lambda$ が可算な基本近傍系をもつことは $\operatorname{cf}(\lambda)=\omega$ と同値である。$[0,\alpha)$ がコンパクトであることは $\alpha$ が $0$ か後続順序数であることと同値で、どの順序数空間も遺伝的に正規であり、距離化できるのは $\alpha$ が可算のときに限る。$[0,\omega_1)$ と $[0,\omega_1]$ は一般位相の代表的な反例である。
順序数 $\alpha$ はそれより小さい順序数の全体であり、整列した全順序集合である。これに順序位相を入れた位相空間を順序数空間という。$[0,\omega]$ は収束する点列とその極限の形をしており、$[0,\omega_1)$ と $[0,\omega_1]$ は「可算コンパクトだがコンパクトでない」「コンパクトだが第 1 可算でない」などの代表的な反例を与える。順序数空間の性質は、順序数の後続・極限の区別と共終数によって読み取れる。
この記事では、順序数空間の近傍の形を調べ、孤立点・コンパクト性・可算コンパクト性・第 1 可算性を順序数の言葉で特徴づけ、どの順序数空間も遺伝的に正規であることと、距離化できるのは可算な順序数に限ることを証明する。$[0,\omega_1)$ と $[0,\omega_1]$ に特有の性質は最後にまとめる。全体を通して ZFC を仮定する。
順序数 $\alpha$ に対し、$\alpha$ より小さい順序数の全体 $[0,\alpha):=\{\xi\mid\xi<\alpha\}$(集合としては $\alpha$ そのもの)に、大小関係から定まる順序位相を入れた位相空間を順序数空間(ordinal space)という。$[0,\alpha]:=[0,\alpha+1)$ とも書く。
順序位相の開基は、$\xi<\eta$ に対する開区間 $(\xi,\eta)$、始めの区間 $[0,\eta)$、終わりの区間 $(\xi,\alpha)$ からなる(順序位相 の定義)。以下、$\beta<\gamma<\alpha$ について半開区間 $(\beta,\gamma]:=\{\xi\mid\beta<\xi\le\gamma\}$、閉区間 $[0,\gamma]$ を使う。順序数 $\xi$ は、$\xi=0$、直前の元をもつ後続順序数 $\xi=\eta+1$、$0$ でも後続でもない極限順序数のいずれかである(順序数 の定義「後続順序数・極限順序数・有限順序数」)。
$\alpha$ を順序数とし、$[0,\alpha)$ で考える。
1:$\gamma+1<\alpha$ なら $(\beta,\gamma]=(\beta,\gamma+1)$、$[0,\gamma]=[0,\gamma+1)$ であり、$\gamma+1=\alpha$ なら $(\beta,\gamma]=(\beta,\alpha)$、$[0,\gamma]=[0,\alpha)$ である。どれも開基の元である。補集合 $[0,\beta]\cup(\gamma,\alpha)=[0,\beta+1)\cup(\gamma,\alpha)$ と $(\gamma,\alpha)$ も開集合なので、両者は閉でもある。
2:1 により挙げた集合は $\xi$ を含む開集合である。逆に $\xi$ を含む開基の元は、$\xi$ より小さい $\beta$ によって $(\beta,\eta)$ か $(\beta,\alpha)$ の形か、$[0,\eta)$ の形である。前者は $(\beta,\xi]$ を含み、後者は $\xi>0$ なら $(0,\xi]$ を、$\xi=0$ なら $\{0\}$ を含む。
3:前半は 2 による。極限順序数 $\lambda$ と $\beta<\lambda$ について $\beta+1<\lambda$ なので、$(\beta,\lambda]$ は $\lambda$ 以外の点 $\beta+1$ を含む。$\square$
1 により、順序数空間は開かつ閉な集合からなる開基をもつ(零次元空間)。順序位相 の命題「順序位相は Hausdorff」と合わせると、順序数空間は Tychonoff 空間である。実際、点 $x$ とそれを含まない閉集合 $F$ に対し、$x$ を含み $F$ と交わらない開かつ閉集合 $B$ をとれば、その特性関数が $x$ と $F$ を分ける連続関数になる。
順序数空間 $[0,\alpha)$ の空でない部分集合 $A$ は、部分空間として孤立点をもつ。とくに $A$ の最小元はその孤立点である。また $[0,\alpha)$ の導集合(集積点の全体)は、$\alpha$ より小さい極限順序数の全体である。
$m$ を $A$ の最小元とする。$[0,m]$ は lem-os-base の 1 により開集合で、$[0,m]\cap A=\{m\}$ である。後半は lem-os-base の 3 による。$\square$
$X=[0,\omega^2]$ の導集合 $X'$ は極限順序数の全体 $\{\omega\cdot k\mid 1\le k<\omega\}\cup\{\omega^2\}$ である。$\omega\cdot k$($k\ge1$ は有限)は近傍 $(\omega\cdot(k-1),\omega\cdot k]$ の中にほかの極限順序数を含まないので $X'$ の孤立点であり、$\omega^2$ はどの近傍 $(\beta,\omega^2]$ にも $\omega\cdot k$ を含むので $X'$ の集積点である。よって $X''=\{\omega^2\}$、$X'''=\emptyset$ であり、導集合 の Cantor–Bendixson 階数の言葉では $X$ の階数は $3$ である。
$[0,\alpha)$ がコンパクトであることと、$\alpha$ が $0$ または後続順序数であることは同値である。とくに $[0,\alpha]$ はつねにコンパクトである。
$\alpha=0$ なら空集合でコンパクトである。$\alpha=\beta+1$ なら $[0,\alpha)=[0,\beta]$ はコンパクトである(順序位相 の命題「閉順序数区間のコンパクト性」)。$\alpha$ が極限順序数なら、$\{[0,\beta)\mid\beta<\alpha\}$ は開被覆である($\xi<\alpha$ なら $\xi+1<\alpha$ で $\xi\in[0,\xi+1)$)。その有限個の和は、そのうち最大の $[0,\beta)$ に等しく、点 $\beta$ を含まないので、有限部分被覆はない。$\square$
コンパクト性より弱い可算コンパクト性(可算な開被覆が有限部分被覆をもつこと。可算コンパクト空間)は、共終数 $\operatorname{cf}(\alpha)$($\alpha$ の共終な部分集合の順序型の最小値)で決まる。極限順序数の共終数は $\omega$ 以上の正則基数である(共終数 の定理「共終数は正則基数である」)。
$\alpha$ を極限順序数とする。$[0,\alpha)$ が可算コンパクトであることと、$\operatorname{cf}(\alpha)>\omega$ であることは同値である。
$\operatorname{cf}(\alpha)=\omega$ なら、狭義単調増加で $\alpha$ に共終な列 $\beta_0<\beta_1<\cdots$ がある。可算な開被覆 $\{[0,\beta_n)\}_n$ の有限個の和は最大の $[0,\beta_n)$ に等しく、点 $\beta_n$ を含まないので、可算コンパクトでない。
$\operatorname{cf}(\alpha)>\omega$ とし、点列 $(x_n)$ をとる。$\{x_n\}$ は可算なので順序型は可算な順序数であり、共終数 $\operatorname{cf}(\alpha)\ge\omega_1$ より小さいので、$\{x_n\}$ は $\alpha$ に共終でない。よってある $\beta<\alpha$ について $\{x_n\}\subset[0,\beta]$ である。$[0,\beta]$ はコンパクト(prop-os-compact)なので、点列 $(x_n)$ は $[0,\beta]$ に集積点をもち、それは $[0,\alpha)$ での集積点でもある。可算コンパクト空間 の定理「閉集合と点列による特徴づけ」により $[0,\alpha)$ は可算コンパクトである。$\square$
とくに $[0,\omega_1)$ は可算コンパクトだがコンパクトでない。点の近くの形も、その点の共終数で決まる。
$\lambda<\alpha$ を極限順序数とする。$[0,\alpha)$ において次は同値である。
3 ⇒ 1:$\operatorname{cf}(\lambda)=\omega$ なので、順序型 $\omega$ の共終な部分集合、すなわち狭義単調増加で $\lambda$ に共終な列 $\beta_0<\beta_1<\cdots<\lambda$ がある。$\beta<\lambda$ なら $\beta\le\beta_n$ となる $n$ があり $(\beta_n,\lambda]\subset(\beta,\lambda]$ なので、lem-os-base の 2 により $\{(\beta_n,\lambda]\}_n$ は基本近傍系である。
1 ⇒ 2:可算な基本近傍系 $\{U_n\}$ をとり、lem-os-base の 2 により $(\beta_n,\lambda]\subset U_n$ となる $\beta_n<\lambda$ を選ぶ。$x_n:=\max\{\beta_0,\dots,\beta_n\}+1$ とおくと、$\lambda$ が極限順序数なので $x_n<\lambda$ である。$\lambda$ の近傍 $U$ はある $U_k$ を含み、$n\ge k$ なら $\beta_k< x_n<\lambda$ から $x_n\in(\beta_k,\lambda]\subset U$ である。よって $x_n\to\lambda$ である。
2 ⇒ 3:$x_n\to\lambda$、$x_n<\lambda$ とし、$A:=\{x_n\mid n\in\mathbb N\}$ とおく。$\beta<\lambda$ なら近傍 $(\beta,\lambda]$ はある $x_n$ を含むので、$A$ は $\lambda$ に共終である。$A$ は可算なので順序型は可算な順序数であり、$\operatorname{cf}(\lambda)$ はそれ以下の基数、すなわち $\omega$ 以下である。$\lambda$ は極限順序数なので $\operatorname{cf}(\lambda)\ge\omega$ であり、$\operatorname{cf}(\lambda)=\omega$ となる。
最後の主張:孤立点は可算な基本近傍系をもつ。$\alpha\le\omega_1$ なら、$\alpha$ より小さい極限順序数 $\lambda$ は可算で、$\lambda$ 自身が $\lambda$ の可算な共終部分集合なので、上と同じく $\operatorname{cf}(\lambda)=\omega$ である。$\alpha>\omega_1$ なら点 $\omega_1$ が $[0,\alpha)$ に属し、$\omega_1$ の可算部分集合は上に有界なので(非可算順序数 の定理「可算部分集合の有界性」)$\operatorname{cf}(\omega_1)=\omega_1$ であり、$\omega_1$ は可算な基本近傍系をもたない。$\square$
$\alpha>\omega_1$ のとき点 $\omega_1$ で第 1 可算性が破れることは、順序位相 の命題「非可算終点と点列」の $[0,\omega_1]$ の場合と同じ現象である。
$A,B$ を順序数空間 $X=[0,\alpha)$ の部分集合で $\overline A\cap B=A\cap\overline B=\emptyset$ を満たすものとする。このとき、交わらない開集合 $U\supset A$、$V\supset B$ がある。とくに順序数空間のすべての部分空間は正規空間である。
$a\in A$ は $\overline B$ に属さないので、$a$ の近傍で $B$ と交わらないものがある。lem-os-base の 2 により、それに含まれる $I_a$ を、$a=0$ なら $\{0\}$、$a>0$ なら $(\beta_a,a]$($\beta_a< a$)の形でとれる。同様に $b\in B$ に対し、$A$ と交わらない $I_b$($\{0\}$ か $(\beta_b,b]$)をとる。$U:=\bigcup_{a\in A}I_a$、$V:=\bigcup_{b\in B}I_b$ は開集合で $A\subset U$、$B\subset V$ である。
$I_a\cap I_b=\emptyset$ を示す。$A\cap B=\emptyset$ なので $a\neq b$ であり、$a< b$ の場合を考える($b< a$ も同じ)。$x\in I_a\cap I_b$ とすると $x\le a< b$ なので $I_b\neq\{b\}$、すなわち $I_b=(\beta_b,b]$ で $\beta_b< x\le a< b$ となる。すると $a\in I_b$ であり、$I_b$ が $A$ と交わらないことに反する。よって $U\cap V=\emptyset$ である。
部分空間 $Y\subset X$ と、$Y$ の交わらない閉集合 $A,B$ について、$\overline A\cap B=\overline A\cap Y\cap B=\operatorname{cl}_Y(A)\cap B=A\cap B=\emptyset$ であり、同様に $A\cap\overline B=\emptyset$ である。前半の $U,V$ を $Y$ に制限すれば、$Y$ の中で $A,B$ を分ける。$\square$
閉集合どうしの場合は Munkres00 Theorem 32.4(pp. 202–203)にある。正規性は積では保たれない:$[0,\omega_1)\times[0,\omega_1]$ は 2 つの順序数空間の積だが正規でない(Munkres00 §32 Example 2、pp. 203–204。この記事では証明しない)。関連する例が Tychonoffの板 $[0,\omega_1]\times[0,\omega]$ で、そこから隅の 1 点を除いた空間は正規でない。
順序数空間 $[0,\alpha)$ が距離化可能空間であることと、$\alpha$ が可算であること($\alpha<\omega_1$)は同値である。
$\alpha$ が可算なら、区間 $(\beta,\gamma]$($\beta<\gamma<\alpha$)と $[0,\gamma]$($\gamma<\alpha$)の全体は可算で、lem-os-base の 2 により開基をなす。順序数空間は Hausdorff で、開かつ閉な集合の開基をもつので正則である。よって Urysohnの距離化定理 により距離化可能である。
$\alpha>\omega_1$ なら thm-os-first-countable により第 1 可算でなく、距離化可能でない。$\alpha=\omega_1$ とし、$[0,\omega_1)$ に距離 $d$ があると仮定する。$[0,\omega_1)$ は可算コンパクトである(可算コンパクト空間 の命題「$\omega_1$ は可算コンパクトだがコンパクトでない」)。各 $n\ge1$ について、どの 2 点の距離も $1/n$ 以上の部分集合で包含について極大なもの $D_n$ を Zorn の補題でとる。$D_n$ の相異なる点からなる点列は集積点をもたない(半径 $1/(2n)$ の球は $D_n$ の点を高々 1 つしか含まない)ので、可算コンパクト性(可算コンパクト空間 の定理「閉集合と点列による特徴づけ」)により $D_n$ は有限である。極大性から各点は $D_n$ のある点から距離 $1/n$ 未満にあるので、可算集合 $D:=\bigcup_nD_n$ は稠密である。ところが $D$ は上に有界で(非可算順序数 の定理「可算部分集合の有界性」)、ある $\beta<\omega_1$ について空でない開集合 $(\beta,\omega_1)$ は $D$ と交わらない。これは矛盾である。$\square$
$[0,\omega_1)$ の各点 $\xi$ は開かつ閉な近傍 $[0,\xi]=[0,\xi+1)$ をもち、$\xi+1$ は可算なので、この近傍は距離化可能である。つまり $[0,\omega_1)$ は局所的には距離化可能だが、全体としては距離化できない。
$\omega_1$ を最小の非可算順序数とする。この 2 つの空間は一般位相の反例として繰り返し現れる。主な性質を、証明のある場所とともにまとめる。可算部分集合が上に有界であること(非可算順序数 の定理「可算部分集合の有界性」)を使うものは、可算選択公理に依存する。
| 性質 | $[0,\omega_1)$ | $[0,\omega_1]$ | 根拠 |
|---|---|---|---|
| コンパクト | でない | である | prop-os-compact |
| 可算コンパクト | である | である | prop-os-countably-compact、prop-os-compact |
| 第 1 可算 | である | でない(点 $\omega_1$) | thm-os-first-countable |
| 距離化可能 | でない | でない | thm-os-metrizable |
| 遺伝的に正規 | である | である | thm-os-normal |
| 実数値連続関数 | ある点から先で一定 | — | Tychonoffの板 の補題「連続関数は最後に一定」 |
| 実コンパクト | でない | である | 実コンパクト空間 の例「反例:非可算最小順序数までの半開区間」と命題「コンパクトHausdorff空間」 |
$[0,\omega_1]$ はコンパクト Hausdorff 空間で、$[0,\omega_1]\setminus\{\omega_1\}=[0,\omega_1)$ はコンパクトでない。よって $[0,\omega_1]$ は $[0,\omega_1)$ の一点コンパクト化と同相である(一点コンパクト化 の定理「一点コンパクト化の特徴づけ」)。$[0,\omega_1)$ 上の連続関数がある点から先で一定であることから、制限による環同型 $C([0,\omega_1])\cong C([0,\omega_1))$ が得られる(連続関数環 の例「反例:$[0,\omega_1)$ と $[0,\omega_1]$」)。
$[0,\omega_1]$ の閉集合 $\{\omega_1\}$ は、可算個の開集合の共通部分として書けない。したがって $[0,\omega_1]$ は遺伝的に正規だが、閉集合がすべて $G_\delta$ である空間(完全正規空間)ではない。
$\{\omega_1\}=\bigcap_nU_n$($U_n$ は開集合)と仮定する。lem-os-base の 2 により $(\beta_n,\omega_1]\subset U_n$ となる $\beta_n<\omega_1$ がとれる。$\beta:=\sup_n\beta_n$ は可算部分集合の上限なので $\beta<\omega_1$ であり、$\beta+1<\omega_1$ はすべての $(\beta_n,\omega_1]$ に属する。よって $\beta+1\in\bigcap_nU_n$ となり矛盾する。$\square$
$[0,\omega_1]$ の点 $\omega_1$ 以外を孤立点にした位相(G_δ-modification の例「$[0,\omega_1]$:離散にならない例」)も、この空間の性質を調べる例として使われる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $\alpha$ が $0$ または後続順序数(prop-os-compact) | $[0,\omega)$ | コンパクト性 |
| $\operatorname{cf}(\lambda)=\omega$(thm-os-first-countable) | $[0,\omega_1]$ の点 $\omega_1$ | 可算な基本近傍系をもつこと |
| $\alpha$ が可算(thm-os-metrizable) | $[0,\omega_1)$ | 距離化可能性(第 1 可算で局所的に距離化可能でも) |
| 空間が順序数空間であること(thm-os-normal) | 積 $[0,\omega_1)\times[0,\omega_1]$ | 正規性 |
3 行目の $[0,\omega_1)$ は第 1 可算なので、第 1 可算性だけでは距離化可能性に足りないことも分かる。4 行目は、2 つの順序数空間の積が順序数空間とは限らず、正規性が積で保たれないことを示す。
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