単項生成可換モノイド

同義語:monogenic commutative monoid単項生成モノイド

概要

単項生成可換モノイド(monogenic commutative monoid)とは、ただ1つの元の自然数倍ですべての元が得られる可換モノイドである。自然数の加法モノイドからの全射像として特徴づけられ、無限の場合は自然数モノイド、有限の場合は繰り返しが始まる指数と周期の組で分類される。自然数上の合同関係と分類定理を完全証明する。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 自然数, 可換モノイド, 可換モノイドの合同関係
単項生成可換モノイドは、ただ1つの元で生成される可換モノイドである。自然数の加法モノイド $\mathbb N$ からの全射像として特徴づけられ、有限の場合は「ある段階から一定の周期で繰り返す」という二つの整数によって完全に分類される。

自然数モノイドの普遍性

本記事では $\mathbb N=\{0,1,2,\ldots\}$ とし、加法を演算、$0$ を単位元とする可換モノイドとみなす。

一元上の自由可換モノイド

任意の可換モノイド $M$ と元 $x\in M$ に対し、$f_x(1)=x$ を満たす可換モノイド準同型
$$ f_x\colon\mathbb N\longrightarrow M $$
がただ1つ存在する。具体的には $f_x(n)=nx$ である。

$f_x(0)=0$$f_x(n)=nx$ と定めると、自然数倍の法則より
$$ f_x(m+n)=(m+n)x=mx+nx=f_x(m)+f_x(n) $$
だから準同型である。逆に $g\colon\mathbb N\to M$ が準同型で $g(1)=x$ を満たすなら、帰納法により
$$ g(n)=g(\underbrace{1+\cdots+1}_{n\text{ 個}})=nx $$
である。よって $g=f_x$ となる。$\blacksquare$

単項生成性

単項生成可換モノイド

可換モノイド $M$単項生成(monogenic)であるとは、ある $x\in M$ が存在して
$$ M=\{nx\mid n\in\mathbb N\} $$
となることをいう。この $x$$M$ の生成元という。

「単項生成」は生成元がただ1つであることを意味し、単元群によって生成されるという意味ではない。

自然数からの全射による特徴づけ

可換モノイド $M$ について、次は同値である。

  1. $M$ は単項生成である。
  2. 全射準同型 $\mathbb N\twoheadrightarrow M$ が存在する。

$M$$x$ で生成されるなら、前命題の $f_x(n)=nx$ は全射である。逆に $f\colon\mathbb N\twoheadrightarrow M$ があれば、任意の $y\in M$ はある $n\in\mathbb N$ によって $y=f(n)=nf(1)$ と表せる。したがって $M$$f(1)$ で生成される。$\blacksquare$

準同型 $f\colon\mathbb N\twoheadrightarrow M$ の核合同関係
$$ a\sim_f b\quad\Longleftrightarrow\quad f(a)=f(b) $$
を用いれば、第一同型定理により $M\cong\mathbb N/{\sim_f}$ である。したがって単項生成可換モノイドの分類は、$\mathbb N$ 上の合同関係の分類に帰着する。

自然数上の合同関係

指数・周期合同関係

$r\in\mathbb N$$d\ge1$ に対し、$\mathbb N$ 上の関係 $\sim_{r,d}$
$$ a\sim_{r,d}b \quad\Longleftrightarrow\quad a=b\ \text{または}\ \bigl(a,b\ge r\ \text{かつ}\ a\equiv b\pmod d\bigr) $$
で定める。商可換モノイドを
$$ C_{r,d}=\mathbb N/{\sim_{r,d}} $$
と書く。$r$ を指数、$d$ を周期という。

指数・周期関係は合同関係である

$\sim_{r,d}$$\mathbb N$ 上の可換モノイド合同関係である。

反射律と対称律は定義から明らかである。$a\sim_{r,d}b$ かつ $b\sim_{r,d}c$ とする。いずれかの等号を除けば $a,b,c\ge r$ かつ $a\equiv b\equiv c\pmod d$ なので $a\sim_{r,d}c$ であり、推移律が成り立つ。
さらに $a\sim_{r,d}b$$n\in\mathbb N$ に対し、$a=b$ なら $a+n=b+n$ である。それ以外なら $a,b\ge r$ かつ $d\mid(a-b)$ だから、$a+n,b+n\ge r$ かつ $d\mid((a+n)-(b+n))$ である。よって $a+n\sim_{r,d}b+n$ となり、加法と両立する。$\blacksquare$

$C_{r,d}$ の元は
$$ [0],[1],\ldots,[r+d-1] $$
で尽くされる。$r$ より前には繰り返しがなく、$r$ 以後は周期 $d$ で繰り返すため、$C_{r,d}$ の元の個数は $r+d$ である。

自然数上の合同関係の分類

$\mathbb N$ 上の合同関係 $R$ は、等号関係であるか、ただ1組の $r\in\mathbb N$$d\ge1$ によって $\sim_{r,d}$ と表される。

$R$ が等号関係でないとする。異なる二数を同一視する組のうち小さい方の最小値を $r$ とする。次に
$$ d=\min\{k\ge1\mid r\mathrel R r+k\} $$
と定める。この集合が空でないことは $r$ の定義から従う。
$r\mathrel R r+d$ と加法との両立性より、任意の $a\ge r$ について $a\mathrel R a+d$ である。したがって $a,b\ge r$ かつ $d\mid(b-a)$ なら $a\mathrel R b$ であり、$\sim_{r,d}\subseteq R$ を得る。
逆に $a\mathrel R b$ とし、$a< b$ とする。$r$ の最小性より $a\ge r$ である。$b-a=qd+s$$0\le s< d$ とEuclid除法する。上で示した周期性から $a\mathrel R a+qd$ であり、ゆえに
$$ a+qd\mathrel R b=a+qd+s $$
である。もし $s>0$ なら、十分大きな $k$ を選んで $r+kd\ge a+qd$ とし、この関係へ $r+kd-(a+qd)$ を加えると
$$ r+kd\mathrel R r+kd+s $$
を得る。一方、周期性より $r\mathrel R r+kd$ および $r+s\mathrel R r+s+kd$ であるから、推移律により $r\mathrel R r+s$ となる。これは $0< s< d$$d$ の最小性に反する。従って $s=0$ であり、$d\mid(b-a)$ である。よって $R\subseteq\sim_{r,d}$ となる。
最後に、$r$ は非自明な同値類に現れる最小の自然数、$d$$r$ と同値なより大きい自然数との差の最小値として $R$ から復元される。したがって $(r,d)$ は一意である。$\blacksquare$

分類定理

単項生成可換モノイドの分類

単項生成可換モノイド $M$ とその生成元 $x$ を取る。$x$ による表示について、次のいずれかただ一方が成り立つ。

  1. $\mathbb N$
  2. ただ1組の $r\in\mathbb N$$d\ge1$ に対する有限可換モノイド $C_{r,d}$

生成元 $x$ を選び、全射 $f_x\colon\mathbb N\twoheadrightarrow M$ を取る。核合同関係が等号なら $f_x$ は単射でもあるため $M\cong\mathbb N$ である。核合同関係が等号でなければ、前定理より一意な $(r,d)$ に対して $\ker f_x=\sim_{r,d}$ となる。第一同型定理から
$$ M\cong\mathbb N/{\sim_{r,d}}=C_{r,d} $$
を得る。$\blacksquare$

ここで $(r,d)$ の一意性は、選んだ生成元 $x$、すなわち全射 $f_x$ を固定した表示に関する主張である。

例と反例

吸収的な生成元

$C_{1,1}$$\{[0],[1]\}$ からなり、$[1]+[1]=[1]$ である。したがって $[1]$ は冪等元であり、正の自然数倍はすべて $[1]$ に一致する。

二元巡回群

$C_{0,2}$ では $[0]=[2]$ であり、元は $[0],[1]$ の二つである。$[1]+[1]=[0]$ なので、これは位数2の巡回群である。一般に $C_{0,d}$ は位数 $d$ の巡回群である。

有限だが群でない例

$C_{2,3}$ の元は $[0],[1],[2],[3],[4]$ である。$[2]=[5]=[8]=\cdots$ のように、指数2から周期3の繰り返しが始まる。$[1]$ は加法逆元をもたないので、これは群ではない。

二つ以上の生成元を本質的に必要とする可換モノイドは単項生成ではない。たとえば $\mathbb N^2$ は単項生成でない。1元 $(a,b)$ が生成する部分モノイドは $\{n(a,b)\mid n\in\mathbb N\}$ に限られ、$(1,0)$$(0,1)$ の両方を含められないからである。詳しい半群論的背景は Gri01 を参照されたい。

関連項目

参考文献

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