Bianchi分類

概要

Bianchi分類(Bianchi classification)とは、3次元実Lie環を同型を除いて分類した結果である。構造定数 $C^i_{jk}$ は実対称行列 $N$ とベクトル $a$ により $C^i_{jk}=\sum_l N^{il}\epsilon_{ljk}+a_j\delta^i_k-a_k\delta^i_j$ と一意に表され、Jacobi恒等式は $Na=0$ と同値である。同型類は $a=0$ か否か、$N$ の階数と半定値性、$a\neq0$ かつ $N$ の階数が2のときの径数 $\beta>0$ で決まり、I, II, III, IV, V, VI$_0$, VI$_\beta$, VII$_0$, VII$_\beta$, VIII, IX の11種類に分かれる。VI$_\beta$, VII$_\beta$ は非可算個の同型類からなる族である。

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前提知識: Lie環

Lie環と構造定数

本記事では、実数体 $\mathbb{R}$ 上の 3 次元Lie環を同型を除いて分類する。
型の名称と番号は Bianchi Bia98 の分類に、対称行列 $N$ とベクトル $a$ による定式化は Ellis–MacCallum EM69 にちなむ。
以下では、本記事で用いる範囲でLie環の定義を想起する。

本記事で用いるLie環の定義の想起

実ベクトル空間 $\mathfrak{g}$ と双線形写像 $[\cdot,\cdot]\colon\mathfrak{g}\times\mathfrak{g}\to\mathfrak{g}$ の組であって、すべての $X,Y,Z\in\mathfrak{g}$ に対して交代性 $[X,X]=0$ と Jacobi 恒等式
$$[X,[Y,Z]\!]+[Y,[Z,X]\!]+[Z,[X,Y]\!]=0$$
を満たすものを実Lie環という。
交代性と双線形性から、すべての $X,Y$ に対して $[X,Y]=-[Y,X]$ が従う。
$\mathfrak{g}$ がベクトル空間として 3 次元であるとき、$\mathfrak{g}$ を 3 次元実Lie環という。
実Lie環 $\mathfrak{g}$, $\mathfrak{g}'$ の間の線形同型 $\varphi\colon\mathfrak{g}\to\mathfrak{g}'$ で、すべての $X,Y\in\mathfrak{g}$ に対して $\varphi([X,Y])=[\varphi(X),\varphi(Y)]$ を満たすものをLie環の同型といい、同型が存在するとき $\mathfrak{g}$ と $\mathfrak{g}'$ は同型であるという。
本記事の分類はLie環の同型に関するものであり、Lie群の同型に関するものではない。

構造定数と基底の取り換え

$\mathfrak{g}$ を 3 次元実Lie環とし、$X_1,X_2,X_3$ をその基底とする。
基底 $\{X_i\}$ に関する $\mathfrak{g}$ の構造定数 (structure constants) とは、
$$[X_j,X_k]=\sum_{i=1}^{3}C^i_{jk}X_i\quad(j,k=1,2,3)$$
により定まる実数の組 $C^i_{jk}$($i,j,k=1,2,3$)のことである。
上付きの添字 $i$ は $X_i$ の係数であることを表し、下付きの添字 $j,k$ は括弧に入れた基底ベクトルの番号を表す。
$[X_j,X_k]=-[X_k,X_j]$ より、構造定数は下付き添字について反対称、すなわち $C^i_{jk}=-C^i_{kj}$ である。
正則な実 3 次行列 $T=(T^b_j)$ に対し、
$$X'_j=\sum_{b=1}^{3}X_bT^b_j\quad(j=1,2,3)$$
で定まる $X'_1,X'_2,X'_3$ は再び $\mathfrak{g}$ の基底である。
これを $T$ による基底の取り換えといい、$T$ の第 $j$ 列は新しい基底ベクトル $X'_j$ の旧基底に関する座標である。

基底の取り換えによる構造定数の変換

基底 $\{X_i\}$ に関する構造定数を $C^i_{jk}$、正則行列 $T$ による取り換え後の基底 $\{X'_i\}$ に関する構造定数を $C'^i_{jk}$ とすると、
$$C'^i_{jk}=\sum_{a,b,c=1}^{3}(T^{-1})^i_a\,T^b_j\,T^c_k\,C^a_{bc}$$
が成り立つ。
また、$T$ による取り換えのあとに正則行列 $S$ による取り換えを続けて行って得られる基底は、行列 $TS$ による一度の取り換えで得られる基底と一致する。

双線形性より $[X'_j,X'_k]=\sum_{b,c}T^b_jT^c_k[X_b,X_c]=\sum_{a,b,c}T^b_jT^c_kC^a_{bc}X_a$ である。
$X'_j=\sum_bX_bT^b_j$ を $X_a=\sum_iX'_i(T^{-1})^i_a$ と解いて代入すると、
$$[X'_j,X'_k]=\sum_{i}\Bigl(\sum_{a,b,c}(T^{-1})^i_aT^b_jT^c_kC^a_{bc}\Bigr)X'_i$$
となる。
$\{X'_i\}$ は基底なので、この係数が $C'^i_{jk}$ である。
後半は、$X''_j=\sum_bX'_bS^b_j=\sum_{b,c}X_cT^c_bS^b_j=\sum_cX_c(TS)^c_j$ による。

同型と構造定数

$\mathfrak{g}$, $\mathfrak{g}'$ を 3 次元実Lie環、$\{X_i\}$, $\{X'_i\}$ をそれぞれの基底、$C^i_{jk}$, $C'^i_{jk}$ をそれぞれの基底に関する構造定数とする。
$\mathfrak{g}$ と $\mathfrak{g}'$ が同型であることと、正則な実 3 次行列 $T$ で
$$C'^i_{jk}=\sum_{a,b,c}(T^{-1})^i_aT^b_jT^c_kC^a_{bc}\quad(\text{すべての }i,j,k)$$
を満たすものが存在することとは同値である。

同型 $\varphi\colon\mathfrak{g}\to\mathfrak{g}'$ があるとする。
$Y_j:=\varphi(X_j)$ とおくと $\{Y_i\}$ は $\mathfrak{g}'$ の基底であり、$[Y_j,Y_k]=\varphi([X_j,X_k])=\sum_iC^i_{jk}Y_i$ なので、基底 $\{Y_i\}$ に関する $\mathfrak{g}'$ の構造定数は $C^i_{jk}$ である。
$\{X'_i\}$ も $\mathfrak{g}'$ の基底なので、正則行列 $T$ で $X'_j=\sum_bY_bT^b_j$ となるものがあり、基底の取り換えの命題より $C'$ は $C$ を $T$ で変換したものである。
逆に、主張の式を満たす $T$ があるとする。
$Y_j:=\sum_bX'_b(T^{-1})^b_j$ とおくと $\{Y_i\}$ は $\mathfrak{g}'$ の基底であり、$X'_j=\sum_bY_bT^b_j$ である。
$\{Y_i\}$ に関する $\mathfrak{g}'$ の構造定数を $D^i_{jk}$ とすると、基底の取り換えの命題を $\mathfrak{g}'$ の基底 $\{X'_i\}$ から $\{Y_i\}$ への $T^{-1}$ による取り換えに当てて、$D$ は $C'$ を $T^{-1}$ で変換したものである。
一方、$\mathfrak{g}$ において基底 $\{X_i\}$ を $T$ で取り換えて $C'$ に等しい構造定数を得たのち、さらに $T^{-1}$ で取り換えると、基底の取り換えの命題の後半により基底は $\{X_i\}$ 自身に戻るので、$C'$ を $T^{-1}$ で変換したものは $C$ である。
したがって $D=C$ である。
線形写像 $\varphi\colon\mathfrak{g}\to\mathfrak{g}'$ を $\varphi(X_j)=Y_j$ で定めると、$\varphi$ は基底を基底に移すので線形同型であり、$\varphi([X_j,X_k])=\sum_iC^i_{jk}Y_i=[Y_j,Y_k]=[\varphi(X_j),\varphi(X_k)]$ が基底の対について成り立つので、双線形性により任意の元の対についても成り立つ。

したがって、3 次元実Lie環の同型類を決めることは、上の変換で移り合う構造定数の類を決めることに帰着される。

構造定数の $N$ と $a$ による表示

以下、$\epsilon_{ijk}$ は Levi-Civita 記号、すなわち $\epsilon_{123}=1$ で、どの二つの添字の入れ換えについても符号を変え、添字が重複すれば $0$ となる記号である。
上付きで書いた $\epsilon^{ijk}$ は $\epsilon_{ijk}$ と同じ値を表す。
$\delta^i_j$ は Kronecker のデルタである。
和の範囲は断らない限り $1,2,3$ にわたる。

Levi-Civita 記号の恒等式
  1. すべての $a,b,j,k$ に対して $\sum_l\epsilon^{lab}\epsilon_{ljk}=\delta^a_j\delta^b_k-\delta^a_k\delta^b_j$ である。
  2. すべての $l,j$ に対して $\sum_{a,b}\epsilon_{lab}\epsilon_{jab}=2\delta_{lj}$ である。
  3. 実 3 次行列 $T$ に対し、すべての $i,j,k$ で $\sum_{l,b,c}\epsilon_{lbc}T^l_iT^b_jT^c_k=(\det T)\,\epsilon_{ijk}$ である。
  4. $T$ が正則ならば、すべての $l,j,k$ で $\sum_{b,c}\epsilon_{lbc}T^b_jT^c_k=(\det T)\sum_m(T^{-1})^m_l\,\epsilon_{mjk}$ である。
  1. $\epsilon^{lab}\epsilon_{ljk}\neq0$ となるのは $\{l,a,b\}=\{l,j,k\}=\{1,2,3\}$ のときに限る。
    このとき $\{a,b\}=\{j,k\}$ であり、$l$ は $\{1,2,3\}\setminus\{a,b\}$ のただ一つの元なので、和はこの一つの $l$ の項だけからなり、$(a,b)=(j,k)$ なら値は $\epsilon_{lab}^2=1$、$(a,b)=(k,j)$ なら値は $-1$ である。
    $a=b$ または $\{a,b\}\neq\{j,k\}$ のときは左辺は $0$ で、右辺も $0$ である。
    以上を合わせると右辺の式になる。
  2. $\epsilon_{lab}\epsilon_{jab}\neq0$ となるのは $\{l,a,b\}=\{j,a,b\}=\{1,2,3\}$ のとき、すなわち $l=j$ かつ $(a,b)$ が $\{1,2,3\}\setminus\{l\}$ の二つの元の並べ方($2$ 通り)のときであり、各項の値は $1$ である。
    よって和は $l=j$ のとき $2$、$l\neq j$ のとき $0$ である。
  3. 左辺は、$T$ の第 $i$ 列、第 $j$ 列、第 $k$ 列をこの順に並べた行列の行列式を Leibniz の公式で書いたものである。
    $i,j,k$ に重複があればその行列は同じ列を二つ含むので行列式は $0$ であり、$\epsilon_{ijk}=0$ と一致する。
    $i,j,k$ が相異なれば、その行列は $T$ の列を置換したものなので、行列式は置換の符号 $\epsilon_{ijk}$ を $\det T$ に掛けたものである。
  4. 左辺を $L_{ljk}$、右辺を $R_{ljk}$ とおく。
    $\sum_lT^l_iL_{ljk}$ は (3) により $(\det T)\epsilon_{ijk}$ であり、$\sum_lT^l_iR_{ljk}=(\det T)\sum_m\bigl(\sum_lT^l_i(T^{-1})^m_l\bigr)\epsilon_{mjk}=(\det T)\sum_m\delta^m_i\epsilon_{mjk}=(\det T)\epsilon_{ijk}$ である。
    よってすべての $i$ で $\sum_lT^l_i(L_{ljk}-R_{ljk})=0$ であり、$T$ が正則なのでベクトル $(L_{ljk}-R_{ljk})_l$ は $0$ である。
構造定数の $N$ と $a$ による表示
  1. 下付き添字について反対称な実数の組 $C=(C^i_{jk})$ 全体と、実対称 3 次行列 $N=(N^{ij})$ と実ベクトル $a=(a_1,a_2,a_3)$ の組 $(N,a)$ 全体との間には、
    $$C^i_{jk}=\sum_lN^{il}\epsilon_{ljk}+a_j\delta^i_k-a_k\delta^i_j$$
    による一対一の対応がある。
    この対応で $C$ に対応する $N$, $a$ は
    $$N^{ij}=\frac{1}{4}\sum_{a,b}\bigl(C^i_{ab}\epsilon^{jab}+C^j_{ab}\epsilon^{iab}\bigr),\qquad a_i=\frac{1}{2}\sum_bC^b_{ib}$$
    で与えられる。
  2. $C$ を構造定数とする括弧、すなわち $\mathbb{R}^3$ の標準基底 $X_1,X_2,X_3$ に対して $[X_j,X_k]=\sum_iC^i_{jk}X_i$ で定めて双線形に拡張した括弧が Jacobi 恒等式を満たすことと、$Na=0$、すなわち $\sum_jN^{ij}a_j=0$($i=1,2,3$)とは同値である。
  1. 反対称な $C$ に対し、3 次行列 $\tilde{C}$ を $\tilde{C}^{ij}=\frac{1}{2}\sum_{a,b}C^i_{ab}\epsilon^{jab}$ で定める。
    反対称性から $\tilde{C}^{i1}=C^i_{23}$, $\tilde{C}^{i2}=C^i_{31}$, $\tilde{C}^{i3}=C^i_{12}$ である。
    補題 (1) と反対称性により
    $$\sum_l\tilde{C}^{il}\epsilon_{ljk}=\frac{1}{2}\sum_{a,b}C^i_{ab}\sum_l\epsilon^{lab}\epsilon_{ljk}=\frac{1}{2}\bigl(C^i_{jk}-C^i_{kj}\bigr)=C^i_{jk}$$
    であり、逆に任意の 3 次行列 $M$ から $C^i_{jk}:=\sum_lM^{il}\epsilon_{ljk}$ で反対称な $C$ を定めると、補題 (2) により $\frac{1}{2}\sum_{a,b}C^i_{ab}\epsilon^{jab}=\frac{1}{2}\sum_lM^{il}\sum_{a,b}\epsilon_{lab}\epsilon^{jab}=M^{ij}$ となる。
    よって $C\mapsto\tilde{C}$ は反対称な $C$ 全体と 3 次行列全体との一対一対応である。
    次に $\tilde{C}$ を対称部分 $N:=\frac{1}{2}(\tilde{C}+{}^t\tilde{C})$ と反対称部分 $A:=\frac{1}{2}(\tilde{C}-{}^t\tilde{C})$ に分ける。
    3 次行列を対称行列と反対称行列の和に書く仕方はこれに限るので、$\tilde{C}\mapsto(N,A)$ は 3 次行列全体と(対称行列、反対称行列)の組全体との一対一対応である。
    反対称行列 $A$ は $a_1:=A^{23}$, $a_2:=A^{31}$, $a_3:=A^{12}$ により $A^{ij}=\sum_k\epsilon^{ijk}a_k$ と書け、$A\mapsto a$ は反対称行列全体と $\mathbb{R}^3$ との一対一対応である。
    これらを合わせると $C\mapsto(N,a)$ は一対一対応であり、
    $$C^i_{jk}=\sum_l\tilde{C}^{il}\epsilon_{ljk}=\sum_lN^{il}\epsilon_{ljk}+\sum_{l,m}\epsilon^{ilm}a_m\epsilon_{ljk}=\sum_lN^{il}\epsilon_{ljk}+\sum_m\bigl(\delta^m_j\delta^i_k-\delta^m_k\delta^i_j\bigr)a_m$$
    となる。
    ここで $\epsilon^{ilm}=\epsilon^{lmi}$ と補題 (1) を用いた。
    最後の和は $a_j\delta^i_k-a_k\delta^i_j$ であり、主張の式を得る。
    $N^{ij}=\frac{1}{2}(\tilde{C}^{ij}+\tilde{C}^{ji})$ から $N$ の式が従う。
    $a_1=A^{23}=\frac{1}{2}(\tilde{C}^{23}-\tilde{C}^{32})=\frac{1}{2}(C^2_{12}-C^3_{31})=\frac{1}{2}(C^1_{11}+C^2_{12}+C^3_{13})=\frac{1}{2}\sum_bC^b_{1b}$ であり、$a_2=\frac{1}{2}(C^3_{23}-C^1_{12})=\frac{1}{2}\sum_bC^b_{2b}$, $a_3=\frac{1}{2}(C^1_{31}-C^2_{23})=\frac{1}{2}\sum_bC^b_{3b}$ も同様である。
    ここで $C^i_{ii}=0$ を用いた。
  2. 括弧に対して $J(X,Y,Z):=[X,[Y,Z]\!]+[Y,[Z,X]\!]+[Z,[X,Y]\!]$ とおくと、$J$ は各変数について線形である。
    $J(X,X,Z)=[X,[X,Z]\!]+[X,[Z,X]\!]+[Z,[X,X]\!]=0$ と $J(X,Y,Y)=[X,[Y,Y]\!]+[Y,[Y,X]\!]+[Y,[X,Y]\!]=0$ から、$J$ は隣り合う二つの変数の入れ換えで符号を変え、したがって $J(X,Y,X)=-J(Y,X,X)=0$ でもある。
    ゆえに $J(X_i,X_j,X_k)$ は $i,j,k$ に重複があれば $0$、相異なれば $\pm J(X_1,X_2,X_3)$ であり、三重線形性により、Jacobi 恒等式がすべての $X,Y,Z$ で成り立つことと $J(X_1,X_2,X_3)=0$ とは同値である。
    $[X_2,X_3]=\sum_i\tilde{C}^{i1}X_i$, $[X_3,X_1]=\sum_i\tilde{C}^{i2}X_i$, $[X_1,X_2]=\sum_i\tilde{C}^{i3}X_i$ と $[X_p,X_i]=\sum_mC^m_{pi}X_m$ から、$J(X_1,X_2,X_3)$ の $X_m$ 成分は
    $$J(X_1,X_2,X_3)^m=\sum_{i,p}\tilde{C}^{ip}C^m_{pi}=\sum_{i,p,l}\tilde{C}^{ip}\tilde{C}^{ml}\epsilon_{lpi}=\sum_l\tilde{C}^{ml}\sum_{i,p}\epsilon_{lpi}\tilde{C}^{ip}$$
    である。
    $N$ は対称、$\epsilon_{lpi}$ は $p,i$ について反対称なので $\sum_{i,p}\epsilon_{lpi}N^{ip}=0$ であり、$\sum_{i,p}\epsilon_{lpi}A^{ip}=\sum_ka_k\sum_{i,p}\epsilon_{lpi}\epsilon^{ipk}=-\sum_ka_k\sum_{i,p}\epsilon_{lip}\epsilon_{kip}=-2a_l$ である(補題 (2))。
    よって $J(X_1,X_2,X_3)^m=-2\sum_l\tilde{C}^{ml}a_l=-2\sum_lN^{ml}a_l-2\sum_{l,k}\epsilon^{mlk}a_ka_l=-2(Na)^m$ となる。
    ここで $\sum_{l,k}\epsilon^{mlk}a_ka_l$ は反対称な $\epsilon^{mlk}$ と対称な $a_ka_l$ の縮約なので $0$ である。
    したがって Jacobi 恒等式は $Na=0$ と同値である。
$N$ と $a$ の変換則

正則行列 $T$ による基底の取り換え $X'_j=\sum_bX_bT^b_j$ に対し、新しい構造定数 $C'$ に対応する $N'$, $a'$ は
$$N'=(\det T)\,T^{-1}N\,{}^t(T^{-1}),\qquad a'={}^tT\,a$$
で与えられる。
ここで $a$, $a'$ は成分 $a_i$, $a'_i$ を縦に並べた列ベクトルであり、${}^tT$ は $T$ の転置である。
特に、$a=0$ と $a'=0$ とは同値であり、$N'a'=(\det T)\,T^{-1}Na$ である。

基底の取り換えの命題により $C'^i_{jk}=\sum_{a,b,c}(T^{-1})^i_aT^b_jT^c_kC^a_{bc}$ である。
$C^a_{bc}=\sum_lN^{al}\epsilon_{lbc}+a_b\delta^a_c-a_c\delta^a_b$ を代入し、二つの部分に分けて計算する。
$N$ の部分は、補題 (4) により
$$\sum_{a,b,c,l}(T^{-1})^i_aT^b_jT^c_kN^{al}\epsilon_{lbc}=\sum_{a,l}(T^{-1})^i_aN^{al}(\det T)\sum_m(T^{-1})^m_l\epsilon_{mjk}=\sum_m\bigl((\det T)\,T^{-1}N\,{}^t(T^{-1})\bigr)^{im}\epsilon_{mjk}$$
である。
$a$ の部分は
$$\sum_{a,b,c}(T^{-1})^i_aT^b_jT^c_k(a_b\delta^a_c-a_c\delta^a_b)=\Bigl(\sum_bT^b_ja_b\Bigr)\sum_c(T^{-1})^i_cT^c_k-\Bigl(\sum_cT^c_ka_c\Bigr)\sum_b(T^{-1})^i_bT^b_j=({}^tTa)_j\delta^i_k-({}^tTa)_k\delta^i_j$$
である。
$(\det T)\,T^{-1}N\,{}^t(T^{-1})$ は対称行列なので、$C'$ は主張の $N'$, $a'$ から表示の式で得られる形をしており、表示の一意性(定理 (1))により $C'$ に対応する組は $(N',a')$ である。
${}^tT$ は正則なので $a=0$ と $a'=0$ は同値であり、$N'a'=(\det T)T^{-1}N\,{}^t(T^{-1})\,{}^tT\,a=(\det T)T^{-1}Na$ である。

$a$ の変換には ${}^tT$ が、$N$ の変換には $T^{-1}$ と ${}^t(T^{-1})$ が現れ、さらに $N$ には $\det T$ が掛かる。
とくに $T=-I$ は $\det T=-1$ であり、$N'=-N$, $a'=-a$ を与えるので、$(N,a)$ と $(-N,-a)$ は同じLie環を表す。
$a=0$ のときこれは $N$ と $-N$ が同じLie環を表すことを意味するが、$a\neq0$ のときに $N$ の符号だけを反転させるには、$a$ の符号を戻す別の取り換えを重ねる必要がある。

$a$ とトレースの関係

$\mathfrak{g}$ の元 $X=\sum_ix^iX_i$ に対し、線形写像 $\operatorname{ad}X\colon\mathfrak{g}\to\mathfrak{g}$, $Y\mapsto[X,Y]$ のトレースは
$$\operatorname{tr}(\operatorname{ad}X)=2\sum_ia_ix^i$$
である。
とくに、$a=0$ であることと、すべての $X\in\mathfrak{g}$ で $\operatorname{tr}(\operatorname{ad}X)=0$ であることとは同値である。

$(\operatorname{ad}X_i)(X_j)=[X_i,X_j]=\sum_mC^m_{ij}X_m$ なので、基底 $\{X_i\}$ に関する $\operatorname{ad}X_i$ の行列の $(m,j)$ 成分は $C^m_{ij}$ であり、そのトレースは $\sum_jC^j_{ij}=2a_i$ である(定理 (1) の $a_i$ の式)。
$X\mapsto\operatorname{ad}X$ は線形なので $\operatorname{tr}(\operatorname{ad}X)=\sum_ix^i\operatorname{tr}(\operatorname{ad}X_i)=2\sum_ia_ix^i$ である。
後半は、$a=0$ ならこの式は $0$ であり、逆にすべての $X$ で $0$ なら $X=X_i$ として $a_i=0$ を得ることによる。

すべての $X$ で $\operatorname{tr}(\operatorname{ad}X)=0$ となるLie環は単模(unimodular)と呼ばれる。
同型 $\varphi$ は $\operatorname{ad}(\varphi(X))=\varphi\circ\operatorname{ad}X\circ\varphi^{-1}$ を満たすので、単模であるかどうかは同型で保たれる。
下の分類でクラス A($a=0$)は単模な 3 次元実Lie環、クラス B($a\neq0$)は単模でないものからなる。

分類

対称行列の合同による対角化

$n\geq1$ とし、$M$ を実対称 $n$ 次行列とする。
正則な実 $n$ 次行列 $S$ で $SM\,{}^tS$ が対角行列となるものが存在する。

$B(x,y):={}^tx\,M\,y$($x,y\in\mathbb{R}^n$)とおくと $B$ は対称双線形形式であり、行ベクトル $v_1,\ldots,v_n$ を並べた行列 $S$ に対して $(SM\,{}^tS)_{ij}=B({}^tv_i,{}^tv_j)$ である。
したがって、$\mathbb{R}^n$ の基底 $w_1,\ldots,w_n$ で $i\neq j$ のとき $B(w_i,w_j)=0$ となるものをとり、$S$ の第 $i$ 行を ${}^tw_i$ とすればよい。
このような基底の存在を $n$ についての帰納法で示す。
$B=0$ なら任意の基底でよい。
$B\neq0$ なら $B(v,v)\neq0$ となる $v$ がある。
実際、すべての $v$ で $B(v,v)=0$ なら $B(x,y)=\frac{1}{2}\bigl(B(x+y,x+y)-B(x,x)-B(y,y)\bigr)=0$ となる。
$W:=\{w\in\mathbb{R}^n\mid B(v,w)=0\}$ は線形写像 $w\mapsto B(v,w)$ の核であり、この写像は $B(v,v)\neq0$ により零でないので $W$ は $n-1$ 次元で、$v\notin W$ である。
よって $\mathbb{R}^n=\mathbb{R}v\oplus W$ である。
$n=1$ なら $w_1=v$ でよい。
$n\geq2$ なら、$B$ の $W$ への制限は $n-1$ 次元空間上の対称双線形形式なので、帰納法の仮定により $W$ の基底 $w_2,\ldots,w_n$ で互いに $B$ 直交するものがあり、$w_1:=v$ と合わせれば求める基底である。

取り換えで保たれる量

実対称 3 次行列 $N$ と、正則行列 $T$ による取り換え後の $N'=(\det T)\,T^{-1}N\,{}^t(T^{-1})$ について次が成り立つ。
(1) $\operatorname{rank}N'=\operatorname{rank}N$ である。
(2) $N$ が半定値であることと $N'$ が半定値であることとは同値である。
ここで実対称行列 $N$ が半定値であるとは、すべての $x\in\mathbb{R}^3$ で ${}^tx\,N\,x\geq0$ であるか、またはすべての $x$ で ${}^tx\,N\,x\leq0$ であることをいう。

  1. $T^{-1}$ と ${}^t(T^{-1})$ は正則で $\det T\neq0$ なので、$N'$ の階数は $N$ の階数に等しい。
  2. $c:=\det T$, $S:=T^{-1}$ とおくと ${}^tx\,N'\,x=c\,{}^t({}^tSx)\,N\,({}^tSx)$ であり、$x$ が $\mathbb{R}^3$ 全体を動くとき ${}^tSx$ も $\mathbb{R}^3$ 全体を動く。
    よって $\{{}^txN'x\mid x\in\mathbb{R}^3\}=c\cdot\{{}^txNx\mid x\in\mathbb{R}^3\}$ であり、値の集合が正の値と負の値の両方を含むかどうかは $c\neq0$ を掛けても変わらない。
3次元実Lie環の分類(Bianchi, Ellis–MacCallum)

任意の 3 次元実Lie環は、次の表のいずれかの行に書かれた交換関係をもつ基底 $X_1,X_2,X_3$ をもつ。
表の各行において、$N=\mathrm{diag}(N_1,N_2,N_3)$, $a=(a_1,0,0)$ であり、$a_1\geq0$ なので $\|a\|=a_1$ である。
逆に、表の各行の交換関係は 3 次元実Lie環を定め、相異なる行($\mathrm{VI}_\beta$, $\mathrm{VII}_\beta$ については $\beta$ の値が異なれば相異なる行とみなす)が定めるLie環は互いに同型でない。

クラス型$a_1$$N_1$$N_2$$N_3$交換関係
A$\mathrm{I}$$0$$0$$0$$0$$[X_1,X_2]=0,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=0$
A$\mathrm{II}$$0$$1$$0$$0$$[X_1,X_2]=0,\ [X_2,X_3]=X_1,\ [X_3,X_1]=0$
A$\mathrm{VI}_0$$0$$0$$-1$$1$$[X_1,X_2]=X_3,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=-X_2$
A$\mathrm{VII}_0$$0$$0$$1$$1$$[X_1,X_2]=X_3,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=X_2$
A$\mathrm{VIII}$$0$$-1$$1$$1$$[X_1,X_2]=X_3,\ [X_2,X_3]=-X_1,\ [X_3,X_1]=X_2$
A$\mathrm{IX}$$0$$1$$1$$1$$[X_1,X_2]=X_3,\ [X_2,X_3]=X_1,\ [X_3,X_1]=X_2$
B$\mathrm{V}$$1$$0$$0$$0$$[X_1,X_2]=X_2,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=-X_3$
B$\mathrm{IV}$$1$$0$$0$$1$$[X_1,X_2]=X_2+X_3,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=-X_3$
B$\mathrm{III}$$1$$0$$-1$$1$$[X_1,X_2]=X_2+X_3,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=-X_2-X_3$
B$\mathrm{VI}_\beta$($\beta>0$, $\beta\neq1$)$\beta$$0$$-1$$1$$[X_1,X_2]=\beta X_2+X_3,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=-X_2-\beta X_3$
B$\mathrm{VII}_\beta$($\beta>0$)$\beta$$0$$1$$1$$[X_1,X_2]=\beta X_2+X_3,\ [X_2,X_3]=0,\ [X_3,X_1]=X_2-\beta X_3$

準備。
3 次元実Lie環 $\mathfrak{g}$ とその基底をとり、構造定数に対応する $(N,a)$ を表示の定理 (1) でとると、定理 (2) により $Na=0$ である。
基底を $T$ で取り換えると $(N,a)$ は変換則の命題のとおりに移り、同型の判定の命題と表示の一意性により、二つの 3 次元実Lie環が同型であることは、それぞれの $(N,a)$ がある $T$ による変換で移り合うことと同値である。
また、$Na=0$ を満たす任意の $(N,a)$ に対し、表示の式で定めた $C$ を構造定数とする $\mathbb{R}^3$ 上の括弧は、反対称かつ Jacobi 恒等式を満たすので 3 次元実Lie環を定める。
表の各行の交換関係は、その行の $N$, $a$ から表示の式で計算したものである。
$a=(a_1,0,0)$ と $N=\mathrm{diag}(N_1,N_2,N_3)$ に対し $Na=(a_1N_1,0,0)$ なので、クラス A の 6 行は $a_1=0$ により、クラス B の 5 行は $N_1=0$ により $Na=0$ を満たす。
したがって各行は 3 次元実Lie環を定める。
以下、$(N,a)$ を変換で表のいずれかの行の形に移せることと、相異なる行が変換で移り合わないことを示す。
変換の合成は基底の取り換えの命題の後半により一つの変換なので、変換を順に施してよい。
対角行列 $T$ による変換。
$T=\mathrm{diag}(t_1,t_2,t_3)$($t_i\neq0$)に対し、$N$ が対角行列 $\mathrm{diag}(\mu_1,\mu_2,\mu_3)$ なら
$$N'=\mathrm{diag}\Bigl(\frac{t_2t_3}{t_1}\mu_1,\ \frac{t_1t_3}{t_2}\mu_2,\ \frac{t_1t_2}{t_3}\mu_3\Bigr),\qquad a'=(t_1a_1,t_2a_2,t_3a_3)$$
である。
任意の正の数 $c_1,c_2,c_3$ に対し $t_1=\sqrt{c_2c_3}$, $t_2=\sqrt{c_1c_3}$, $t_3=\sqrt{c_1c_2}$ とおけば $N'=\mathrm{diag}(c_1\mu_1,c_2\mu_2,c_3\mu_3)$ となる。
また $T=\mathrm{diag}(-1,1,1)$ は $N'=-N$, $a'=(-a_1,a_2,a_3)$ を与え、$T=\mathrm{diag}(-1,-1,1)$ は $N'=N$, $a'=(-a_1,-a_2,a_3)$ を与える。
第 2 成分と第 3 成分を入れ換える置換行列 $P$ と $D=\mathrm{diag}(1,-1,1)$ の積 $T=PD$ は $\det T=1$ で、$N=\mathrm{diag}(\mu_1,\mu_2,\mu_3)$ を $\mathrm{diag}(\mu_1,\mu_3,\mu_2)$ に移し、$a=(a_1,0,0)$ を変えない。
同様に、他の置換行列に $\pm1$ を成分にもつ対角行列を掛けて $\det T=1$ とすれば、対角行列 $N$ の対角成分を任意に並べ換える変換が得られる。
クラス A($a=0$)の標準形。
$a=0$ は変換で保たれる。
対角化の補題を $n=3$ で $N$ に当てて $S$ をとり、$T:=S^{-1}$ とすると $N'=(\det T)\,SN\,{}^tS$ は対角行列である。
対角 $T$ による変換で、$0$ でない対角成分をそれぞれ $\pm1$ にできる($c_i=1/|\mu_i|$)。
対角成分の並べ換えと $T=\mathrm{diag}(-1,1,1)$ による符号の反転を使うと、対角成分の組は、成分 $-1$ の個数が成分 $1$ の個数以下であるように選び直せ、表のクラス A の 6 行 $(0,0,0)$, $(1,0,0)$, $(0,-1,1)$, $(0,1,1)$, $(-1,1,1)$, $(1,1,1)$ のいずれかに移せる。
クラス B($a\neq0$)の標準形。
$a\neq0$ も変換で保たれる。
$a$ を成分にもつ線形形式 $x\mapsto\sum_ia_ix^i$ は零でないので、$\sum_ia_iu^i=1$ となる $u\in\mathbb{R}^3$ と、その核の基底 $u_2,u_3$ をとり、$u,u_2,u_3$ を列とする行列を $T$ とすると $T$ は正則で ${}^tTa=(1,0,0)$ である。
この取り換えの後の $(N,a)$ は $a=(1,0,0)$ を満たし、$Na=0$ から $N$ の第 1 列は $0$、対称性から第 1 行も $0$ なので、$N=\begin{pmatrix}0&0\\0&m\end{pmatrix}$($m$ は実対称 2 次行列)である。
対角化の補題($2$ 次の場合)を $m$ に当てて、正則な 2 次行列 $u$ で $um\,{}^tu$ が対角行列となるものをとり、$T:=\begin{pmatrix}1&0\\0&u^{-1}\end{pmatrix}$ で取り換えると、${}^tTa=a$ のままで $N'=(\det u)^{-1}\begin{pmatrix}0&0\\0&um\,{}^tu\end{pmatrix}$ は対角行列である。
こうして $N=\mathrm{diag}(0,\mu_2,\mu_3)$, $a=(1,0,0)$ に移せた。
さらに対角 $T=\mathrm{diag}(t_1,t_2,t_3)$ による変換で $N'=\mathrm{diag}(0,\frac{t_1t_3}{t_2}\mu_2,\frac{t_1t_2}{t_3}\mu_3)$, $a'=(t_1,0,0)$ である。
(i) $\mu_2=\mu_3=0$ のとき、$N=0$, $a=(1,0,0)$ であり、$\mathrm{V}$ 型の行である。
(ii) $\mu_2,\mu_3$ のちょうど一方が $0$ のとき、第 2 成分と第 3 成分の並べ換えで $\mu_2=0$, $\mu_3\neq0$ としてよく、$t_1=1$, $t_2=1/\mu_3$, $t_3=1$ とすれば $N'=\mathrm{diag}(0,0,1)$, $a'=(1,0,0)$ であり、$\mathrm{IV}$ 型の行である。
(iii) $\mu_2\mu_3\neq0$ のとき、$t_1=1/\sqrt{|\mu_2\mu_3|}$, $t_2=\mathrm{sgn}(\mu_3)/(t_1\mu_3)$, $t_3=1$ とすれば、$\frac{t_1t_2}{t_3}\mu_3=\mathrm{sgn}(\mu_3)$, $\frac{t_1t_3}{t_2}\mu_2=t_1^2\mu_2\mu_3/\mathrm{sgn}(\mu_3)=\mathrm{sgn}(\mu_2)$ であり、$a'=(t_1,0,0)$ で $t_1>0$ である。
必要なら $T=\mathrm{diag}(-1,1,1)$ で $N$ の符号を反転し、続けて $T=\mathrm{diag}(-1,-1,1)$ で $a_1$ の符号を戻し、さらに第 2 成分と第 3 成分を並べ換えて、$N=\mathrm{diag}(0,\pm1,1)$, $a=(\beta,0,0)$, $\beta>0$ に移せる。
$N=\mathrm{diag}(0,1,1)$ なら $\mathrm{VII}_\beta$ 型の行であり、$N=\mathrm{diag}(0,-1,1)$ なら $\beta=1$ のとき $\mathrm{III}$ 型、$\beta\neq1$ のとき $\mathrm{VI}_\beta$ 型の行である。
相異なる行が移り合わないこと。
$a=0$ かどうか、$N$ の階数、$N$ が半定値かどうかは変換で保たれる(変換則の命題、不変量の補題)。
クラス A の 6 行はこの三つの量が $(\text{階数},\text{半定値})=(0,\text{半定値})$, $(1,\text{半定値})$, $(2,\text{半定値でない})$, $(2,\text{半定値})$, $(3,\text{半定値でない})$, $(3,\text{半定値})$ と相異なるので互いに移り合わず、クラス B の行とも移り合わない。
クラス B では階数が $0$($\mathrm{V}$)、$1$($\mathrm{IV}$)、$2$(残り)で分かれ、階数 $2$ の行は半定値($\mathrm{VII}_\beta$)か否か($\mathrm{III}$, $\mathrm{VI}_\beta$)で分かれる。
残るのは、同じ $N=\mathrm{diag}(0,n_2,n_3)$($n_2n_3\neq0$)をもつ $a=(\beta,0,0)$ と $a=(\beta',0,0)$($\beta,\beta'>0$)が変換 $T$ で移り合うなら $\beta=\beta'$ であることである。
$a'={}^tTa$ の第 $j$ 成分は $T^1_j\beta$ なので、$a'=(\beta',0,0)$ となるためには $T$ の第 1 行は $(s,0,0)$ の形で、$s\beta=\beta'$ でなければならない。
このとき $T=\begin{pmatrix}s&0\\v&t\end{pmatrix}$($v\in\mathbb{R}^2$ は列ベクトル、$t$ は正則な 2 次行列)であり、$T^{-1}=\begin{pmatrix}1/s&0\\-t^{-1}v/s&t^{-1}\end{pmatrix}$ を用いた直接の計算で
$$(\det T)\,T^{-1}N\,{}^t(T^{-1})=s(\det t)\begin{pmatrix}0&0\\0&t^{-1}n\,{}^t(t^{-1})\end{pmatrix},\qquad n=\mathrm{diag}(n_2,n_3)$$
となる。
これが $N$ に等しいためには $s(\det t)\,t^{-1}n\,{}^t(t^{-1})=n$ が必要であり、両辺の行列式をとると $s^2(\det t)^2(\det t)^{-2}\det n=\det n$、すなわち $\det n\neq0$ により $s^2=1$ である。
よって $\beta'=s\beta=\pm\beta$ であり、$\beta,\beta'>0$ から $\beta'=\beta$ である。

表の読み方

型の番号 $\mathrm{I}$〜$\mathrm{IX}$ は Bianchi による番号付けであり、クラス A・B は Ellis–MacCallum による $a=0$ か $a\neq0$ かの区分である。
番号とクラスは別の分け方であり、例えば $\mathrm{VI}_0$ はクラス A、$\mathrm{VI}_\beta$($\beta>0$)はクラス B である。
型は $\mathrm{I}$, $\mathrm{II}$, $\mathrm{III}$, $\mathrm{IV}$, $\mathrm{V}$, $\mathrm{VI}_0$, $\mathrm{VI}_\beta$, $\mathrm{VII}_0$, $\mathrm{VII}_\beta$, $\mathrm{VIII}$, $\mathrm{IX}$ の 11 種類であり、そのうち $\mathrm{VI}_\beta$($\beta>0$, $\beta\neq1$)と $\mathrm{VII}_\beta$($\beta>0$)は $\beta$ を径数とする非可算個の同型類からなる族である。
$\mathrm{III}$ 型は $\mathrm{VI}_\beta$ の $\beta=1$ の場合そのものであり、慣例に従って別の名で表に載せている。
$\mathrm{VI}_\beta$ の行で $\beta\neq1$ と限定しているのはこのためである。
$\mathrm{VI}_\beta$ と $\mathrm{VII}_\beta$ の違いは $N_2$ の符号($-1$ か $1$)、すなわち $N$ が半定値でないか半定値かの違いである。
$\mathrm{VI}_0$, $\mathrm{VII}_0$ と $\mathrm{VI}_\beta$, $\mathrm{VII}_\beta$($\beta>0$)の違いは $a=0$ か $a\neq0$ かの違いである。
$\beta$ は $\|a\|$ を $N$ の標準形の下で測った量であり、定理の証明が示すとおり同型で保たれる。
表の交換関係は表示の定理の式から計算したものであり、例えば $\mathrm{VII}_\beta$ 型では $[X_3,X_1]=\sum_iN^{i2}X_i+a_3X_1-a_1X_3=X_2-\beta X_3$ である。

実Lie環の同型と、複素化・Lie群との区別

実 3 次交代行列全体 $\mathfrak{so}(3)$ に交換子 $[A,B]=AB-BA$ を入れたものは実Lie環であり、$(L_i)_{jk}=-\epsilon_{ijk}$ で定まる基底 $L_1,L_2,L_3$ は $[L_1,L_2]=L_3$, $[L_2,L_3]=L_1$, $[L_3,L_1]=L_2$ を満たすので、$\mathfrak{so}(3)$ は $\mathrm{IX}$ 型である。
トレース $0$ の実 2 次行列全体 $\mathfrak{sl}(2,\mathbb{R})$ に交換子を入れたものも実Lie環であり、$H=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}$, $E=\begin{pmatrix}0&1\\0&0\end{pmatrix}$, $F=\begin{pmatrix}0&0\\1&0\end{pmatrix}$ に対して $X_1=\frac{1}{2}(E-F)$, $X_2=\frac{1}{2}(E+F)$, $X_3=\frac{1}{2}H$ は $[X_1,X_2]=X_3$, $[X_2,X_3]=-X_1$, $[X_3,X_1]=X_2$ を満たすので、$\mathfrak{sl}(2,\mathbb{R})$ は $\mathrm{VIII}$ 型である。
したがって $\mathfrak{so}(3)$ と $\mathfrak{sl}(2,\mathbb{R})$ は実Lie環として同型でない。
一方、実Lie環 $\mathfrak{g}$ の複素化、すなわち $\mathfrak{g}$ の基底を複素数係数で一次結合した複素ベクトル空間に同じ構造定数で括弧を入れた複素Lie環を考えると、$\mathrm{VIII}$ 型の基底 $X_1,X_2,X_3$ に対して $Y_1=X_1$, $Y_2=iX_2$, $Y_3=iX_3$ は $[Y_1,Y_2]=Y_3$, $[Y_2,Y_3]=Y_1$, $[Y_3,Y_1]=Y_2$ を満たす。
よって $\mathfrak{sl}(2,\mathbb{R})$ の複素化と $\mathfrak{so}(3)$ の複素化はどちらも $\mathrm{IX}$ 型の交換関係をもつ基底をもち、複素Lie環として互いに同型である。
すなわち、複素化が同型であっても実Lie環が同型とは限らず、Bianchi分類は実数体上の分類である。
また、Lie環の同型とLie群の同型も別である。
トレース $0$ の 2 次歪 Hermite 行列全体 $\mathfrak{su}(2)$ は、Pauli 行列 $\sigma_1=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix}$, $\sigma_2=\begin{pmatrix}0&-i\\i&0\end{pmatrix}$, $\sigma_3=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}$ を用いた基底 $e_k=-\frac{i}{2}\sigma_k$ が $[e_1,e_2]=e_3$, $[e_2,e_3]=e_1$, $[e_3,e_1]=e_2$ を満たすので $\mathrm{IX}$ 型であり、$\mathfrak{so}(3)$ と同型である。
しかし群 $SU(2)$ と $SO(3)$ は同型でない。
実際、$SU(2)$ の元は $\begin{pmatrix}\alpha&-\bar{\beta}\\\beta&\bar{\alpha}\end{pmatrix}$($|\alpha|^2+|\beta|^2=1$)の形であり、その 2 乗が単位行列になるのは $\beta(\alpha+\bar{\alpha})=0$ かつ $\alpha^2-|\beta|^2=1$ のときで、$\beta\neq0$ なら $\alpha$ は純虚数となって $\alpha^2-|\beta|^2\leq0$ となり矛盾するので $\beta=0$, $\alpha=\pm1$ であり、$SU(2)$ の位数 $2$ の元は $-I$ だけである。
一方 $SO(3)$ は $\mathrm{diag}(1,-1,-1)$ と $\mathrm{diag}(-1,1,-1)$ という相異なる位数 $2$ の元をもち、群の同型は位数 $2$ の元の個数を保つ。
$SU(2)$ と $SO(3)$ の関係は SO(3)とSU(2) を参照。

関連項目

参考文献

[1]
Luigi Bianchi, Sugli spazi a tre dimensioni che ammettono un gruppo continuo di movimenti, Memorie di Matematica e di Fisica della Società Italiana delle Scienze, Serie Terza, 1898
[2]
G. F. R. Ellis and M. A. H. MacCallum, A class of homogeneous cosmological models, Communications in Mathematical Physics, 1969

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