Frobeniusの硬貨問題(Frobenius coin problem)とは、互いに素な正の整数 $a$、$b$ について、$0$ 以上の整数 $x$、$y$ を使って $ax+by$ と表せない $0$ 以上の整数を調べる問題である。どの整数 $n$ も $n=ax+by$($0\le x\le b-1$、$y$ は整数)とただ 1 通りに書け、表せるのは $y\ge0$ のときに限る。これから、表せない最大の整数は $ab-a-b$ で、それより大きい整数はすべて表せる。さらに $0\le n\le ab-a-b$ では「$n$ が表せる」と「$ab-a-b-n$ が表せない」が同値で、表せない $0$ 以上の整数はちょうど $\frac{(a-1)(b-1)}2$ 個ある。$a$、$b$ が互いに素でないと、表せない数は無限にある。
前提知識: 整数の割り算と互除法, 不定方程式の解法, 合同式の計算規則
3 円玉と 5 円玉だけがたくさんある国を考える。お釣りはもらえないとすると、ちょうど払える金額と、どうしても払えない金額がある。小さい金額から順に調べてみる。
3 円玉を $x$ 枚、5 円玉を $y$ 枚使うと、金額は $3x+5y$ 円である($x$、$y$ は $0$ 以上の整数)。$0$ 円から $15$ 円までを調べる。
(1) $5$ 円玉を使わない($y=0$)と、払えるのは $3$ の倍数 $0,3,6,9,12,15$ である。
(2) $5$ 円玉を 1 枚使う($y=1$)と、$5,8,11,14$ が払える。
(3) $5$ 円玉を 2 枚使う($y=2$)と、$10,13$ が払える。$5$ 円玉を 3 枚使う($y=3$)と $15$ で、これは (1) にも出ている。
(1)〜(3) に出てこない $1,2,4,7$ の 4 つが払えない金額である。$8,9,10$ が続けて払えるので、それぞれに 3 円玉を 1 枚ずつ足していけば $11,12,13$、さらに $14,15,16$、… と、$8$ 円以上はすべて払える。したがって、払えない金額の最大は $7$ 円で、払えない金額は全部で 4 つである。
0 から 15 までの数のうち、3x+5y の形で表せる数(青)と表せない数(赤)。弧は n と 7−n を結び、どの弧も青と赤を 1 つずつ結ぶ
4 円玉と 6 円玉では、金額 $4x+6y=2(2x+3y)$ はいつも偶数である。したがって $1,3,5,7,\ldots$ の奇数の金額は、いくら大きくても払えない。払えない金額には最大のものがない。
偶数の金額 $2m$ は、$2x+3y=m$ が $0$ 以上の整数解をもつときに払える。$m\ge2$ なら、$m$ が偶数のときは $(x,y)=\left(\dfrac m2,0\right)$、奇数のときは $(x,y)=\left(\dfrac{m-3}2,1\right)$ が解である。$m=1$ だけは $2x+3y=1$ の $0$ 以上の解がない。よって払えない偶数の金額は $2$ だけである。
ex-fcp-start2 のように、2 つの金額が $1$ より大きい公約数をもつと、その公約数の倍数でない金額はすべて払えない。そこでこの記事では、2 つの数が互いに素な場合を考える。答える問いは次の 3 つである。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 1 次不定方程式 $ax+by=n$ の整数解 | 標準形 $0\le x\le b-1$ | 剰余類の代表 |
| $0$ 以上の整数解があるか | 表せる数・表せない数 | 数の半群 |
| $ab-a-b$ | 表せない最大の数 | 半群の Frobenius 数 |
| $n$ と $ab-a-b-n$ | 表せる/表せないの対称性 | 対称な半群 |
以下、$a$、$b$ は正の整数とする。
整数 $n$ が、$0$ 以上の整数 $x$、$y$ を使って
$$
n=ax+by
$$
と書けるとき、$n$ は $a$ と $b$ で表せる という。そう書けないとき、$n$ は $a$ と $b$ で表せない という。
$0=a\cdot0+b\cdot0$ はいつも表せる。負の整数は、$ax+by\ge0$ なので表せない。この記事の関心は、$0$ 以上の整数のうちどれが表せないかである。
$a=3$、$b=5$ とする。
(1) $22=3\cdot4+5\cdot2$ なので、$22$ は表せる。$22=3x+5y$ となる $0$ 以上の組 $(x,y)$ をすべて探す。$5y\le22$ より $y=0,1,2,3,4$ で、$22-5y=22,17,12,7,2$ のうち $3$ で割り切れるのは $12$ だけなので、組は $(4,2)$ だけである。
(2) $30=3\cdot10=3\cdot5+5\cdot3=5\cdot6$ なので、$30$ の表し方は $(x,y)=(10,0),(5,3),(0,6)$ の 3 通りある。
(3) $7$ は表せない(ex-fcp-start)。しかし $y$ を負にしてよければ $7=3\cdot4+5\cdot(-1)$ と書ける。
ex-fcp-def の (3) のように、$x$、$y$ に負の整数を許すと、$\gcd(a,b)=1$ のときはすべての整数が $ax+by$ の形に書ける(整数の割り算と互除法 の定理「整数の Bézout の等式」を $n$ 倍すればよい)。その整数解のうち、$0$ 以上の組があるかどうかが問題である。そこで、整数解の中から 1 つを「標準形」として選ぶ。
$a$、$b$ を互いに素な正の整数とする。どの整数 $n$ も
$$
n=ax+by,\qquad 0\le x\le b-1,\quad y\text{ は整数}
$$
の形に、ただ 1 通りに書ける。この書き方を $n$ の 標準形 という。
方針:$x=0,1,\ldots,b-1$ に対する $ax$ を $b$ で割った余りが、すべて異なることを示す。すると余りは $0,1,\ldots,b-1$ のどれも 1 回ずつ現れるので、$n$ と同じ余りをもつ $ax$ がちょうど 1 つ選べる。
段 1(余りはすべて異なる)。$0\le x< x'\le b-1$ で、$ax$ と $ax'$ を $b$ で割った余りが等しいとする。すると $ax'-ax=a(x'-x)$ は $b$ の倍数である。$a$ と $b$ は互いに素なので、互いに素な数で割り切る性質(整数の割り算と互除法 の系「互いに素な数による割り算」)から、$b$ は $x'-x$ を割り切る。ところが $0< x'-x\le b-1$ なので、$x'-x$ は $b$ の倍数ではない。これは矛盾である。よって $b$ 個の数 $a\cdot0,a\cdot1,\ldots,a(b-1)$ を $b$ で割った余りはすべて異なる。
段 2(存在)。$b$ で割った余りは $0,1,\ldots,b-1$ の $b$ 種類しかなく、段 1 より $b$ 個の数 $ax$ の余りはすべて異なるので、どの余りもちょうど 1 回ずつ現れる。$n$ を $b$ で割った余りを $r$ とし、$ax$ を $b$ で割った余りが $r$ になる $x$($0\le x\le b-1$)をとる。$n-ax$ は余りが等しい 2 数の差なので $b$ の倍数で、$y=\dfrac{n-ax}b$ は整数である。このとき $n=ax+by$ となる。
段 3(一意性)。$n=ax+by=ax'+by'$($0\le x,x'\le b-1$)とすると、$ax\equiv n\equiv ax'\pmod b$ なので、$ax$ と $ax'$ を $b$ で割った余りは等しい。段 1 より $x=x'$ で、$by=by'$ から $y=y'$ である。
$x=0,1,2,3,4$ に対して $3x=0,3,6,9,12$ を $5$ で割った余りは $0,3,1,4,2$ で、すべて異なる。
(1) $n=8$:$8$ を $5$ で割った余りは $3$ で、余りが $3$ になるのは $x=1$($3x=3$)である。$y=\dfrac{8-3}5=1$ なので、標準形は $8=3\cdot1+5\cdot1$ である。
(2) $n=7$:$7$ を $5$ で割った余りは $2$ で、余りが $2$ になるのは $x=4$($3x=12$)である。$y=\dfrac{7-12}5=-1$ なので、標準形は $7=3\cdot4+5\cdot(-1)$ である。
(3) $n=-1$:$-1=5\cdot(-1)+4$ なので $5$ で割った余りは $4$ で、余りが $4$ になるのは $x=3$($3x=9$)である。$y=\dfrac{-1-9}5=-2$ なので、標準形は $-1=3\cdot3+5\cdot(-2)$ である。
標準形の $y$ の符号を見れば、表せるかどうかが分かる。
$a$、$b$ を互いに素な正の整数とし、整数 $n$ の標準形を $n=ax+by$($0\le x\le b-1$)とする。$n$ が $a$ と $b$ で表せるのは $y\ge0$ のときで、そのときに限る。
$y\ge0$ なら、標準形そのものが $0$ 以上の $x$、$y$ による表し方である。
逆に $n$ が表せるとし、$n=ax'+by'$($x'\ge0$、$y'\ge0$)とする。$x'$ を $b$ で割って $x'=bq+x''$($q\ge0$、$0\le x''\le b-1$)と書くと
$$
n=a(bq+x'')+by'=ax''+b(aq+y')
$$
である。$0\le x''\le b-1$ なので、これは $n$ の標準形であり、lem-fcp-standard の一意性から $x''=x$、$aq+y'=y$ である。$q\ge0$、$y'\ge0$ より $y=aq+y'\ge0$ となる。
硬貨で言えば、$a$ 円玉が $b$ 枚あれば $b$ 円玉 $a$ 枚と同じ金額なので、$a$ 円玉を $b-1$ 枚以下にまとめ直せる。まとめ直した後に $b$ 円玉の枚数が $0$ 以上なら払え、負なら払えない。
図 2 は $a=3$、$b=5$ で、整数を $x=0,1,2,3,4$ の 5 つの列に分けたものである。列 $x$ には標準形の $x$ が等しい数を並べ、下から $y=-2,-1,0,1,2,\ldots$ の順に置く。lem-fcp-criterion より、各列で表せる数は $y\ge0$ の段、つまり $3x$ から上である。
a=3, b=5 で整数を標準形の x ごとに 5 列に並べた表。各列は 3x から上(青)が表せる数で、その下の 0 以上の数(赤)が表せない数、灰色は負の数。赤の最大は列 x=4 の 7
図 2 では、各列の表せない数の最大は、その列の最初の表せる数 $3x$ から $5$ を引いた $3x-5$ である。これが最も大きくなるのは右端の列 $x=4$ で、$3\cdot4-5=7$ になる。一般の $a$、$b$ でも同じ考えで最大が求まる。
$a$、$b$ を互いに素な正の整数とし、$g=ab-a-b$ とおく。
(1) $g$ は $a$ と $b$ で表せない。
(2) $g$ より大きい整数は、すべて $a$ と $b$ で表せる。
とくに $a\ge2$、$b\ge2$ のとき $g=(a-1)(b-1)-1\ge0$ で、$g$ は $a$ と $b$ で表せない $0$ 以上の整数のうち最大のものである。
$a=1$ のときは $g=b-b-1=-1$ で、$0$ 以上の整数はすべて表せる($n=1\cdot n+b\cdot0$)。これも (1)・(2) と合っている。
数学的帰納法と整列性 の命題「3 と 5 で作れる数」は、$8$ 以上の整数がすべて $3a+5b$ の形に書けることを、$8,9,10$ から $3$ ずつ足していく強い帰納法で示している。ex-fcp-max の (2) の「$a$ 個続けて表せれば、それ以上はすべて表せる」も同じ考え方である。thm-fcp-max は、どこから先がすべて表せるかを、一般の $a$、$b$ について式で与える。
図 1 では、$0$ から $7$ までの数を $n$ と $7-n$ の組にすると、どの組も「一方が表せて、他方が表せない」になっていた。
$a$、$b$ を互いに素な正の整数とし、$g=ab-a-b$ とおく。
(1) $0\le n\le g$ を満たす整数 $n$ について、「$n$ が $a$ と $b$ で表せる」ことと「$g-n$ が $a$ と $b$ で表せない」ことは同値である。
(2) $a$ と $b$ で表せない $0$ 以上の整数は、ちょうど $\dfrac{(a-1)(b-1)}2$ 個ある。
証明の (2) から、$(a-1)(b-1)$ はいつも偶数であることも分かる(互いに素な $a$、$b$ の少なくとも一方は奇数で、奇数から $1$ を引くと偶数になることからも確かめられる)。
$g=27$ で、表せない数は $1,2,3,4,6,7,9,11,12,14,17,19,22,27$ の 14 個である。$\dfrac{4\cdot7}2=14$ と一致する。$27$ から引いた $26,25,24,23,21,20,18,16,15,13,10,8,5,0$ はどれも表せる($26=5\cdot2+8\cdot2$、$23=5\cdot3+8$、$21=5+8\cdot2$、$13=5+8$ など)。
いくつかの組 $(a,b)$ を表にすると、次のようになる。表せない数の最大と個数は、どちらも $(a-1)(b-1)$ で決まる。
| $(a,b)$ | $(a-1)(b-1)$ | 表せない最大の数 $ab-a-b$ | 表せない数の個数 | 表せない数 |
|---|---|---|---|---|
| $(2,3)$ | $2$ | $1$ | $1$ | $1$ |
| $(2,5)$ | $4$ | $3$ | $2$ | $1,3$ |
| $(3,4)$ | $6$ | $5$ | $3$ | $1,2,5$ |
| $(3,5)$ | $8$ | $7$ | $4$ | $1,2,4,7$ |
| $(4,5)$ | $12$ | $11$ | $6$ | $1,2,3,6,7,11$ |
| $(3,7)$ | $12$ | $11$ | $6$ | $1,2,4,5,8,11$ |
| $(4,7)$ | $18$ | $17$ | $9$ | $1,2,3,5,6,9,10,13,17$ |
| $(5,7)$ | $24$ | $23$ | $12$ | $1,2,3,4,6,8,9,11,13,16,18,23$ |
| $(5,8)$ | $28$ | $27$ | $14$ | (ex-fcp-count) |
$(4,5)$ と $(3,7)$ は最大も個数も同じだが、表せない数の並びは違う。
表せない数は、座標平面の格子点($x$ 座標も $y$ 座標も整数の点)と 1 対 1 に対応させることもできる。$x$ 座標と $y$ 座標に正の整数をとる点 $(X,Y)$ を考える。
$a$、$b$ を互いに素な $2$ 以上の整数とする。正の整数 $X$、$Y$ で $aX+bY< ab$ を満たす組 $(X,Y)$ に、整数
$$
n=ab-aX-bY
$$
を対応させると、これは「そのような組 $(X,Y)$ 全体」と「$a$ と $b$ で表せない $0$ 以上の整数全体」の 1 対 1 の対応になる。
段 1(組から表せない数へ)。正の整数 $X$、$Y$ が $aX+bY< ab$ を満たすとする。$n=ab-aX-bY>0$ である。$aX< ab$ より $X< b$、つまり $1\le X\le b-1$ なので、
$$
n=a(b-X)+b\cdot(-Y),\qquad 0\le b-X\le b-1
$$
は $n$ の標準形である(lem-fcp-standard)。$-Y\le-1<0$ なので、lem-fcp-criterion より $n$ は表せない。標準形はただ 1 通りなので、$n$ から $b-X$ と $-Y$、つまり $X$ と $Y$ が決まる。よって違う組からは違う $n$ ができる。
段 2(表せない数から組へ)。$n\ge0$ が表せないとし、標準形を $n=ax+by$($0\le x\le b-1$)とすると、lem-fcp-criterion より $y\le-1$ である。$X=b-x$、$Y=-y$ とおくと $Y\ge1$、$1\le X\le b$ で、$n=a(b-X)-bY=ab-aX-bY$ である。$X=b$ なら $x=0$ で $n=by<0$ となり $n\ge0$ に反するので、$X\le b-1$ である。$n=0$ は表せるので $n>0$ で、$aX+bY=ab-n< ab$ となる。段 1 の対応でこの $(X,Y)$ から作る数は $n$ そのものなので、段 1 の対応ですべての表せない数が現れる。
図 3 は $a=3$、$b=5$ の場合で、直線 $3X+5Y=15$ より下にある格子点($X\ge1$、$Y\ge1$)は $(1,1)$、$(2,1)$、$(3,1)$、$(1,2)$ の 4 個である。それぞれ $n=15-3X-5Y=7,4,1,2$ で、ex-fcp-start の表せない数 $1,2,4,7$ がちょうど 1 回ずつ現れる。
直線 3X+5Y=15 と、その下にある X≧1, Y≧1 の格子点 4 個(赤)。各点の横の数は 15−3X−5Y で、表せない数 7, 4, 1, 2 になる
prop-fcp-lattice を使うと、thm-fcp-count の (2) を、長方形の中の格子点を数えて示せる。
$1\le X\le b-1$、$1\le Y\le a-1$ の長方形の中の格子点は $(a-1)(b-1)$ 個ある。直線 $aX+bY=ab$ の上にはこのような格子点はない($aX=b(a-Y)$ から $b$ が $aX$ を割り切り、$a$ と $b$ は互いに素なので $b$ が $X$ を割り切るが、$1\le X\le b-1$ に反する)。点 $(X,Y)$ を点 $(b-X,a-Y)$ に移すと、長方形の格子点は長方形の格子点に移り、$a(b-X)+b(a-Y)=2ab-(aX+bY)$ なので、直線より下の点と上の点が入れかわる。また、$X\ge1$、$Y\ge1$ で直線より下にある格子点は、$aX< ab$、$bY< ab$ より $X\le b-1$、$Y\le a-1$ を満たすので、すべて長方形の中にある。したがって直線より下の格子点は、長方形の格子点のちょうど半分の $\dfrac{(a-1)(b-1)}2$ 個で、prop-fcp-lattice より表せない数も同じ個数である。
主定理の仮定を 1 つずつ外すと、結論がどう崩れるかを表にする。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $a$ と $b$ が互いに素 | $a=4$、$b=6$ | 表せない数に最大のものがある(ex-fcp-cx-gcd) |
| $x$、$y$ は $0$ 以上 | $3x+5y$ で負の $x$、$y$ も許す | 表せない整数がある(ex-fcp-cx-negative) |
| 標準形の $0\le x\le b-1$ | $8=3\cdot1+5\cdot1=3\cdot6+5\cdot(-2)$ | 表し方がただ 1 通り、$y$ の符号で判定できる(ex-fcp-cx-range) |
| 硬貨が 2 種類 | $5$、$7$、$9$ の 3 種類 | 表せない数が $n\leftrightarrow g-n$ で対になる(ex-fcp-cx-three) |
$a=4$、$b=6$ では、$4x+6y$ は偶数なので、奇数はどれも表せない(ex-fcp-start2)。表せない数は $1,2,3,5,7,9,11,\ldots$ と限りなく続き、最大のものはない。公式に入れた $ab-a-b=24-4-6=14$ は $14=4\cdot2+6\cdot1$ と表せるので、「表せない最大の数」ではない。
一般に $d=\gcd(a,b)>1$ なら、$ax+by$ は $d$ の倍数なので、$d$ の倍数でない数はすべて表せない。lem-fcp-standard の証明の段 1 で $a$ と $b$ が互いに素であることを使っていて、そこが崩れる。$a=4$、$b=6$ で $x=0,1,2,3,4,5$ の $4x$ を $6$ で割った余りは $0,4,2,0,4,2$ で、同じ余りがくり返し現れる。
$3x+5y$ で $x$、$y$ に負の整数も許すと、$3\cdot2+5\cdot(-1)=1$ なので、どの整数 $n$ も $n=3\cdot2n+5\cdot(-n)$ と書ける。たとえば $7=3\cdot14+5\cdot(-7)=3\cdot4+5\cdot(-1)$ である。表せない整数がなくなり、「表せない最大の数」という問いは意味をもたない。硬貨で言えば、お釣りをもらえるなら何円でも払える。この場合の整数解の全体は 不定方程式の解法 や 整数の割り算と互除法 の定理「1 次不定方程式」で求められる。
$a=3$、$b=5$ で、$8$ は $8=3\cdot1+5\cdot1$ とも $8=3\cdot6+5\cdot(-2)$ とも書ける。2 つ目の書き方では $y=-2<0$ だが、$8$ は表せる。$x$ の範囲を $0\le x\le b-1$ に決めないと、整数解は $x$ を $5$ 増やして $y$ を $3$ 減らすことで無数に作れ、1 つの書き方の $y$ の符号だけでは表せるかどうか決まらない。lem-fcp-criterion が $y$ の符号で判定できるのは、標準形がただ 1 つに決まるからである。
$5$、$7$、$9$ の 3 種類で $5x+7y+9z$($x,y,z\ge0$)と表せない $0$ 以上の整数は
$$
1,\ 2,\ 3,\ 4,\ 6,\ 8,\ 11,\ 13
$$
の 8 個で、最大は $13$ である。$0$ から $13$ までを $n$ と $13-n$ の組にすると、組 $(2,11)$ では $2$ も $11$ も表せない($11-5=6$、$11-7=4$、$11-9=2$ はどれも表せないので $11$ は表せない)。thm-fcp-count の (1) の対称性が成り立たない。個数も、$0$ から $13$ までの 14 個の半分の 7 個ではなく 8 個である。
3 種類の場合には、2 種類の $ab-a-b$ のような閉じた形の式がない(rem-fcp-three)。
$5$ 円玉と $7$ 円玉だけで払えない金額の最大と、払えない金額の個数を求めよ。また、払えない金額をすべて挙げよ。
$5$ と $7$ は互いに素なので、thm-fcp-max より最大は $35-5-7=23$ 円、thm-fcp-count より個数は $\dfrac{4\cdot6}2=12$ 個である。$0$ から $23$ までで $5x+7y$ と表せるのは、$y=0$ の $0,5,10,15,20$、$y=1$ の $7,12,17,22$、$y=2$ の $14,19$、$y=3$ の $21$ の 12 個である。残りの $1,2,3,4,6,8,9,11,13,16,18,23$ の 12 個が払えない金額で、個数も最大も公式と一致する。$23$ から引くと $22,21,20,19,17,15,14,12,10,7,5,0$ で、これは表せる 12 個とちょうど同じである(thm-fcp-count の (1))。
互いに素な正の整数 $a< b$ で、$a$ と $b$ で表せない最大の数が $11$ になるものをすべて求めよ。また、そのとき表せない数はいくつあるか。
thm-fcp-max より $ab-a-b=11$、つまり $(a-1)(b-1)=12$ である($a=1$ なら最大は $-1$ なので $a\ge2$)。$1\le a-1< b-1$ で積が $12$ になるのは $(a-1,b-1)=(1,12),(2,6),(3,4)$ で、$(a,b)=(2,13),(3,7),(4,5)$ となる。どれも互いに素である。表せない数の個数は、どれも thm-fcp-count より $\dfrac{12}2=6$ 個である(表の $(4,5)$、$(3,7)$ の行、$(2,13)$ では $1,3,5,7,9,11$)。
$a$ と $b$ で表せる数の全体 $S=\{ax+by\mid x,y\ge0\}$ は、$0$ を含み、2 つの元の和がまた $S$ に入る($(ax+by)+(ax'+by')=a(x+x')+b(y+y')$)。このように、足し算で閉じていて $0$ を含む $0$ 以上の整数の集合で、$0$ 以上の整数のうち $S$ に入らないものが有限個であるものを、大学数学では 数の半群 と呼ぶ。thm-fcp-max は「$a$、$b$ が互いに素なら、$S$ は数の半群になり、入らない最大の数は $ab-a-b$」と言い換えられる。thm-fcp-count の (1) の性質をもつ数の半群は 対称 であるといい、2 つの数から作った半群はいつも対称である。
硬貨の種類を増やし、$a_1,\ldots,a_m$(最大公約数が $1$)で表せない最大の数を求める問題は、Wei26 では coin problem(硬貨の問題)と呼ばれ、この最大の数は Frobenius number と呼ばれている。同じ頁は、2 種類の場合の $a_1a_2-a_1-a_2$ を「数学の言い伝え(folklore)」と述べ、表せない数の個数が $\dfrac12(a_1-1)(a_2-1)$ であることも挙げている。3 種類の場合については、閉じた形の解はないが、値を速く計算できる半ば明示的な解が知られていると述べている。
$4,6,9$ では表せない数は $1,2,3,5,7,11$ で最大は $11$、$5,7,9$ では ex-fcp-cx-three のとおり最大は $13$、$3,5,7$ では表せない数は $1,2,4$ で最大は $4$ である(どれも $0$ から順に、表せる数から $a_i$ を足して作れる数を印を付けていく計算で求めた)。$3$ と $5$ に $7$ を加えると、$3$ と $5$ だけでは表せなかった $7$ が表せるようになり、最大が $7$ から $4$ に下がる。$4,6,9$ の $4$ と $6$ のように、3 つのうち 2 つが互いに素でなくても、3 つ全体の最大公約数が $1$ なら表せない数は有限個である。
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