Archimedesの螺旋

同義語:アルキメデスの螺旋アルキメデス螺旋Archimedes' spiralArchimedean spiral

概要

Archimedesの螺旋(Archimedes' spiral)とは、極方程式 $r=a\theta$($a>0$、$\theta\ge0$)で表される曲線である。原点からの距離が始線からの回転角に比例するので、一定の間隔で巻く渦巻きになる。$0\le\theta\le2\pi$ の 1 周目と始線で囲まれた部分の面積は、半径 $2\pi a$ の円の面積の $\frac13$ で、扇形の面積の和で上下から挟み、$\sum k^2$ の公式とはさみうちで示せる。距離と角が比例することから、この螺旋を定規とコンパスとあわせて使えば、任意の角を任意の整数の比に分けられ(角の 3 等分を含む)、$\theta=2\pi$ の点での接線から、半径 $2\pi a$ の円の円周に等しい長さの線分が得られる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 極座標と極方程式, 極座標で表された図形の面積, 数列の和と差分

高校での出発点:回りながら一定の速さで離れていく点

原点 $O$ から出る半直線が、始線($x$ 軸の正の部分)から一定の速さで回る。その半直線の上を、点が原点から一定の速さで離れていく。点の描く曲線は、極方程式で $r=a\theta$ と書ける(極座標と極方程式)。まず $a=1$ で点を打ってみる。

$r=\theta$ の点を打つ

極座標 $(r,\theta)$ の点の直交座標は $(r\cos\theta,\ r\sin\theta)$ である。$r=\theta$ なので、点は $(\theta\cos\theta,\ \theta\sin\theta)$ になる。
(1) $\theta=\dfrac\pi2$:$r=\dfrac\pi2$、点 $\left(0,\dfrac\pi2\right)$。
(2) $\theta=\pi$:$r=\pi$、点 $(-\pi,0)$。
(3) $\theta=\dfrac{3\pi}2$:$r=\dfrac{3\pi}2$、点 $\left(0,-\dfrac{3\pi}2\right)$。
(4) $\theta=2\pi$:$r=2\pi$、点 $(2\pi,0)$。$\theta=4\pi$:点 $(4\pi,0)$。
同じ方向(たとえば始線の方向)にもどるたびに、原点からの距離は $2\pi$ ずつ増える。曲線は一定の間隔で巻く渦巻きになる(図 1)。

1 周目が囲む部分の面積を積分で求める

$r=\theta$ の $0\le\theta\le2\pi$ の部分と、始線の上の線分(原点から $(2\pi,0)$ まで)で囲まれた部分(図 1 の青い部分)の面積は、極座標で表された図形の面積 の公式 $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ で
$$ \frac12\int_0^{2\pi}\theta^2\,d\theta=\frac12\cdot\frac{(2\pi)^3}3=\frac{4\pi^3}3 $$
である(同記事の例「螺旋の 1 周目が掃く部分」と同じ計算)。1 周目の終わりの点 $(2\pi,0)$ までの距離 $2\pi$ を半径とする円の面積は $\pi(2\pi)^2=4\pi^3$ なので、面積の比は
$$ \frac{4\pi^3}3\mathbin{÷}4\pi^3=\frac13 $$
である。

螺旋 r=θ(0≦θ≦4π)。青い太線が 1 周目で、1 周目と始線で囲まれた部分を青く塗った。黒い点は例で計算した点 螺旋 r=θ(0≦θ≦4π)。青い太線が 1 周目で、1 周目と始線で囲まれた部分を青く塗った。黒い点は例で計算した点
面積の比がちょうど $\dfrac13$ という簡単な数になった。この記事では、この曲線(Archimedes の螺旋)について、次の 3 つの問いに答える。

  1. 積分を使わずに、扇形で上下から挟むだけで $\dfrac13$ を示せるか。→ thm-asp-area
  2. この螺旋を使うと、定規とコンパスではできない角の 3 等分ができるか。→ thm-asp-divide
  3. 円周の長さに等しい線分を作れるか。→ cor-asp-circumference
    高校の計算この記事の言葉大学の言葉
    $\dfrac12\displaystyle\int_0^{2\pi}\theta^2\,d\theta$扇形の和で上下から挟む定積分の定義(Riemann 和)
    $\sum k^2=\dfrac{n(n+1)(2n+1)}6$扇形の面積の和区分求積
    $r$ と $\theta$ が比例長さの分割を角の分割に移す作図に使える道具を増やす
    媒介変数表示の接線円周の長さの線分極座標の接線影

言葉の準備:螺旋と、1 周目が囲む部分

Archimedes の螺旋

$a>0$ とする。$\theta\ge0$ に対して極座標が $(a\theta,\theta)$ の点、すなわち直交座標で
$$ (a\theta\cos\theta,\ a\theta\sin\theta)\qquad(\theta\ge0) $$
の点全体を、Archimedes の螺旋 $r=a\theta$ という。この記事では $\theta<0$ の点は含めない(したがって $r\ge0$ である)。$0\le\theta\le2\pi$ の部分を 1 周目 と呼ぶ。
1 周目と、始線の上の線分(原点 $O$ から点 $(2\pi a,0)$ まで)で囲まれた部分
$$ D=\bigl\{(\rho\cos\varphi,\ \rho\sin\varphi)\bigm|0\le\varphi\le2\pi,\ 0\le\rho\le a\varphi\bigr\} $$
を、1 周目が囲む部分 と呼ぶ。$D$ は、原点から 1 周目の点までの線分が、$\varphi$ を $0$ から $2\pi$ まで動かすあいだに通る部分である。

1 周目の終わりの点を $P_{2\pi}(2\pi a,0)$ と書き、$O$ を中心として $P_{2\pi}$ を通る円(半径 $2\pi a$)を 基準の円 と呼ぶ。「1 周目」「1 周目が囲む部分」「基準の円」はこの記事の中での呼び名である。$\theta<0$ も許した場合については、反例の ex-asp-cx-negative で扱う。
この螺旋の性質は、次の補題にほとんど集まっている。

半径と角が 1 対 1 に対応する
  1. 1 周目の点は、原点からの距離 $\rho$($0\le\rho\le2\pi a$)を決めるとただ 1 つに決まり、その点の $\theta$ は $\dfrac\rho a$ である。つまり、$O$ を中心とする半径 $\rho$ の円($0<\rho\le2\pi a$)と 1 周目は、$\theta=\dfrac\rho a$ の点のただ 1 点で交わる。
  2. 始線から角 $\varphi$($0<\varphi\le2\pi$)の方向の半直線と 1 周目の交点は、原点 $O$ のほかには、原点から距離 $a\varphi$ の点ただ 1 つである。

要点:1 周目の $\theta$ の点の原点からの距離は $a\theta$ で、$0\le\theta\le2\pi$ で増加するので、距離を決めると $\theta$ がただ 1 つに決まる。向き $\varphi$ を決めたときも、1 周目でその向きの点は $\theta=\varphi$ の点だけである。

詳しい証明を開く

(1) 1 周目の $\theta$ の点は、原点からの距離が $a\theta$ である。$a>0$ なので $a\theta$ は $\theta$ について増加し、$0\le\theta\le2\pi$ で $0$ から $2\pi a$ までの値をちょうど 1 回ずつとる。よって距離 $\rho$ の点は $a\theta=\rho$、すなわち $\theta=\dfrac\rho a$ の点だけである。

(2) 1 周目の点で、始線からの向きが $\varphi$($0<\varphi\le2\pi$)になるのは $\theta=\varphi$ の点だけである($0\le\theta\le2\pi$ の範囲で、向きが $\varphi$ と $2\pi$ の整数倍違う $\theta$ は、$0<\varphi<2\pi$ なら $\varphi$ だけ、$\varphi=2\pi$ なら $0$ と $2\pi$ で、$\theta=0$ の点は原点で向きをもたない)。その距離は $a\varphi$ である。

補題を確かめる

$a=1$ とする。(1) 半径 $\pi$ の円と 1 周目の交点は $\theta=\pi$ の点 $(-\pi,0)$ だけである。(2) 始線から $\dfrac\pi2$ の方向($y$ 軸の正の部分)と 1 周目の原点以外の交点は、原点から距離 $\dfrac\pi2$ の点 $\left(0,\dfrac\pi2\right)$ である。

主定理 1:1 周目が囲む部分は基準の円の $\frac13$

積分を使わずに、扇形の面積の和で上下から挟む。面積については、極座標で表された図形の面積 と同じく次の 3 つを認める:半径 $\rho$、中心角 $h$ の扇形の面積は $\dfrac12\rho^2h$ であること、図形 $A$ が図形 $B$ に含まれるなら $A$ の面積は $B$ の面積以下であること、重なりが線分や曲線だけの図形に分けたとき全体の面積は各部分の和であること。和の計算には、数列の和と差分 の公式
$$ 1^2+2^2+\cdots+n^2=\frac{n(n+1)(2n+1)}6 $$
を使う。

1 周目が囲む部分の面積

def-asp の 1 周目が囲む部分 $D$ の面積は、基準の円の面積 $\pi(2\pi a)^2=4\pi^3a^2$ の $\dfrac13$、すなわち $\dfrac{4\pi^3a^2}3$ である。

方針:$0\le\varphi\le2\pi$ を $n$ 等分し、各部分で $D$ を内側の扇形と外側の扇形で挟む。扇形の面積の和は $\sum k^2$ の公式で計算でき、どちらも $n\to\infty$ で基準の円の $\dfrac13$ に近づく。基準の円の面積を $C=4\pi^3a^2$ と書く。
手順 1(扇形で挟む)。$h=\dfrac{2\pi}n$ とし、$k=1,2,\ldots,n$ について、$D$ のうち向きが $(k-1)h\le\varphi\le kh$ の部分を $D_k$ とする。$D_k$ の点 $(\rho\cos\varphi,\rho\sin\varphi)$ は $0\le\rho\le a\varphi$ を満たし、$a(k-1)h\le a\varphi\le akh$ である。

  • 半径 $a(k-1)h$、中心角 $h$(向き $(k-1)h$ から $kh$ まで)の扇形の点は、$\rho\le a(k-1)h\le a\varphi$ を満たすので $D_k$ に含まれる。
  • $D_k$ の点は $\rho\le a\varphi\le akh$ を満たすので、半径 $akh$、中心角 $h$ の扇形に含まれる。
    よって、$D_k$ の面積を $S_k$ とすると
    $$ \frac12\bigl(a(k-1)h\bigr)^2h\le S_k\le\frac12(akh)^2h $$
    である。
    手順 2(和をとる)。$D$ は $D_1,\ldots,D_n$ に、重なりが線分だけで分かれるので、$D$ の面積 $S$ は $S_1+\cdots+S_n$ である。手順 1 の不等式を $k=1$ から $n$ まで足すと、$L_n\le S\le U_n$ となる。ここで
    $$ L_n=\frac12a^2h^3\bigl(0^2+1^2+\cdots+(n-1)^2\bigr),\qquad U_n=\frac12a^2h^3\bigl(1^2+2^2+\cdots+n^2\bigr) $$
    である。$\dfrac12a^2h^3=\dfrac12a^2\cdot\dfrac{8\pi^3}{n^3}=\dfrac{4\pi^3a^2}{n^3}=\dfrac C{n^3}$ なので、$\sum k^2$ の公式($L_n$ では $n$ の代わりに $n-1$ を入れる)により
    $$ L_n=\frac C{n^3}\cdot\frac{(n-1)n(2n-1)}6=\frac C3\left(1-\frac1n\right)\left(1-\frac1{2n}\right), $$
    $$ U_n=\frac C{n^3}\cdot\frac{n(n+1)(2n+1)}6=\frac C3\left(1+\frac1n\right)\left(1+\frac1{2n}\right) $$
    である。
    手順 3(はさみうち)。$n\to\infty$ で $\dfrac1n\to0$ なので、$L_n$ と $U_n$ はどちらも $\dfrac C3$ に収束する。$S$ は $n$ によらない数で、すべての $n$ で $L_n\le S\le U_n$ だから、はさみうち(はさみうちと評価の技法)により $S=\dfrac C3=\dfrac{4\pi^3a^2}3$ である。
1 周目(青)を、6 個の内側の扇形(緑)と外側の扇形(橙の枠)で挟む 1 周目(青)を、6 個の内側の扇形(緑)と外側の扇形(橙の枠)で挟む
同じことを 12 個の扇形で行う。内側と外側の差が小さくなる 同じことを 12 個の扇形で行う。内側と外側の差が小さくなる

図 2 と図 3 は、手順 1 の内側の扇形(緑)と外側の扇形(橙の枠)を $n=6$ と $n=12$ で描いたものである。外側と内側の差は、$k$ 番目の部分で半径 $akh$ と $a(k-1)h$ の扇形の差で、合計すると
$$ U_n-L_n=\frac C{n^3}\Bigl\{\underbrace{(1^2-0^2)+(2^2-1^2)+\cdots+\bigl(n^2-(n-1)^2\bigr)}_{\text{途中が打ち消し合って }n^2}\Bigr\}=\frac Cn $$
になる。差はちょうど基準の円の $\dfrac1n$ で、$n$ を 2 倍にすると半分になる。

扇形の和の値

$\dfrac{L_n}C$ と $\dfrac{U_n}C$ を、$n=6$、$12$、$24$、$100$、$1000$ で計算する。

$n$$\dfrac{L_n}C=\dfrac{(n-1)(2n-1)}{6n^2}$$\dfrac{U_n}C=\dfrac{(n+1)(2n+1)}{6n^2}$差 $\dfrac1n$
$6$$\frac{55}{216}=0.2546\ldots$$\frac{91}{216}=0.4212\ldots$$0.1666\ldots$
$12$$\frac{253}{864}=0.2928\ldots$$\frac{325}{864}=0.3761\ldots$$0.0833\ldots$
$24$$\frac{1081}{3456}=0.3127\ldots$$\frac{1225}{3456}=0.3544\ldots$$0.0416\ldots$
$100$$0.32835$$0.33835$$0.01$
$1000$$0.3328335$$0.3338335$$0.001$

たとえば $n=6$ では $L_6=\dfrac C{216}(0^2+1^2+\cdots+5^2)=\dfrac{55}{216}C$、$U_6=\dfrac C{216}(1^2+\cdots+6^2)=\dfrac{91}{216}C$ である。どの $n$ でも $\dfrac13=0.3333\ldots$ は 2 つの値の間にある。

ex-asp-start2 の積分の計算は、この扇形の和の極限を、原始関数を使って一度に求めたものである。極座標で表された図形の面積 の公式の証明も、同じように細い部分を 2 つの扇形で挟んでいる。
2 周目、3 周目と巻いていくと、隣り合う周の間の部分の面積には簡単な規則がある。

周と周の間の部分

$a=1$ とする。$m$ 周目($2\pi(m-1)\le\theta\le2\pi m$)の点と原点を結ぶ線分が通る部分を $D^{(m)}$ とする。$D^{(1)}=D$ である。$D^{(m)}$ は、向き $\varphi=\theta-2\pi(m-1)$ の半直線の上で、原点から距離 $\theta$ までの線分を集めたものなので、極座標で表された図形の面積 の公式(1 周以内なので使える)により
$$ D^{(m)}\text{ の面積}=\frac12\int_{2\pi(m-1)}^{2\pi m}\theta^2\,d\theta=\frac{(2\pi)^3}6\bigl\{m^3-(m-1)^3\bigr\}=\frac{4\pi^3}3\bigl(3m^2-3m+1\bigr) $$
である。$m=1,2,3$ で $\dfrac{4\pi^3}3$、$\dfrac{28\pi^3}3$、$\dfrac{76\pi^3}3$。
各方向で $m$ 周目の線分は $m-1$ 周目の線分を含む(長さ $\varphi+2\pi(m-1)>\varphi+2\pi(m-2)$)ので、$D^{(m-1)}$ は $D^{(m)}$ に含まれる。$m-1$ 周目と $m$ 周目の間の部分は $D^{(m)}$ から $D^{(m-1)}$ を除いたもので、その面積は($m\ge2$)
$$ \frac{4\pi^3}3\Bigl\{\bigl(3m^2-3m+1\bigr)-\bigl(3(m-1)^2-3(m-1)+1\bigr)\Bigr\}=\frac{4\pi^3}3\cdot6(m-1)=8\pi^3(m-1) $$
である。1 周目と 2 周目の間は $8\pi^3$ で、1 周目が囲む部分 $\dfrac{4\pi^3}3$ の $6$ 倍、2 周目と 3 周目の間は $16\pi^3$ で 1 周目と 2 周目の間の $2$ 倍、3 周目と 4 周目の間は $24\pi^3$ で $3$ 倍になる(図 4)。
$D^{(1)}$ と $D^{(2)}$ を合わせた面積を $\dfrac12\displaystyle\int_0^{4\pi}\theta^2\,d\theta$ で求めると、重なっている $D^{(1)}$ を 2 回数えてしまう。これは 極座標で表された図形の面積 の反例「螺旋を 2 周させる」で扱われている。

1 周目が囲む部分(青)と、1 周目と 2 周目の間の部分(橙)。橙の面積は青の 6 倍である 1 周目が囲む部分(青)と、1 周目と 2 周目の間の部分(橙)。橙の面積は青の 6 倍である

主定理 2:角を任意の比に分ける

定規とコンパスだけでは、一般の角を 3 等分できない(3大作図問題の不可能性)。しかし、螺旋が 1 本描いてあれば、角の 3 等分どころか、任意の整数の比への分割ができる。
以下、定規とコンパスによる作図(定規とコンパスによる作図)に加えて、原点 $O$ と始線とともに 1 周目が描かれていて、それと円や直線の交点をとってよいとする。使う基本の作図は次の 2 つである。

  • 与えられた角を、頂点が $O$、一方の辺が始線になるように写す。
  • 線分 $OP$ と正の整数 $m$、$n$ に対し、$OQ':Q'P=m:n$ となる $OP$ 上の点 $Q'$ をとる(平行線と線分の比による。定規とコンパスによる作図 の定理「四則と平方根の作図」の積と商の作図と同じ方法)。
角の分割

始線から反時計回りに測った角が $\alpha$($0<\alpha\le2\pi$)の半直線を $\ell$ とし、$\ell$ と 1 周目の原点以外の交点を $P$ とする。正の整数 $m$、$n$ に対し、線分 $OP$ 上に $OQ':Q'P=m:n$ となる点 $Q'$ をとり、$O$ を中心とする半径 $OQ'$ の円と 1 周目の交点を $Q$ とする。このとき、半直線 $OQ$ は角 $\alpha$ を $m:n$ に分ける。すなわち、始線と $OQ$ のなす角は $\dfrac m{m+n}\alpha$、$OQ$ と $\ell$ のなす角は $\dfrac n{m+n}\alpha$ である。

lem-asp-mono の (2) により $OP=a\alpha$ である。$Q'$ の取り方から
$$ OQ'=\frac m{m+n}OP=\frac m{m+n}a\alpha $$
である。$0< OQ'<2\pi a$ なので、lem-asp-mono の (1) により、半径 $OQ'$ の円と 1 周目はただ 1 点 $Q$ で交わり、$Q$ の $\theta$ は
$$ \theta_Q=\frac{OQ'}a=\frac m{m+n}\alpha $$
である。$0<\theta_Q<\alpha\le2\pi$ なので、半直線 $OQ$ は始線から角 $\theta_Q$ の方向にあり、始線と $\ell$ の間にある。よって始線と $OQ$ のなす角は $\dfrac m{m+n}\alpha$、$OQ$ と $\ell$ のなす角は $\alpha-\dfrac m{m+n}\alpha=\dfrac n{m+n}\alpha$ である。

証明の要は、螺旋の上では「原点からの距離」と「始線からの角」が比例していることである。線分を $m:n$ に分けることは定規とコンパスでできるので、その分割が、螺旋を通して角の分割に移る。

$\frac\pi3$ を 3 等分する

$a=1$、$\alpha=\dfrac\pi3$($60^\circ$)とする(図 5)。
(1) 始線から $60^\circ$ の半直線と 1 周目の原点以外の交点は $P\left(\dfrac\pi3\cos\dfrac\pi3,\ \dfrac\pi3\sin\dfrac\pi3\right)=\left(\dfrac\pi6,\ \dfrac{\sqrt3\,\pi}6\right)\approx(0.5236,\ 0.9069)$ で、$OP=\dfrac\pi3$。
(2) $m=1$、$n=2$ として、$OQ':Q'P=1:2$ の点 $Q'$ をとる。$OQ'=\dfrac13\cdot\dfrac\pi3=\dfrac\pi9$。
(3) 半径 $\dfrac\pi9$ の円と 1 周目の交点は $\theta=\dfrac\pi9$($20^\circ$)の点 $Q\left(\dfrac\pi9\cos\dfrac\pi9,\ \dfrac\pi9\sin\dfrac\pi9\right)\approx(0.3280,\ 0.1194)$ である。半直線 $OQ$ は始線と $20^\circ$ をなす。
(4) もう 1 本は、$m=2$、$n=1$ として半径 $\dfrac{2\pi}9$ の円をとれば、$\theta=\dfrac{2\pi}9$($40^\circ$)の点が得られる。$0^\circ$、$20^\circ$、$40^\circ$、$60^\circ$ の 4 本の半直線で、角は 3 等分される。

60° の角の 3 等分。線分 OP を 1:2 に分ける点 Q' を通る円(緑の破線)が螺旋と交わる点 Q が 20° の方向にある。点線の円は 40° の方向の点を与える 60° の角の 3 等分。線分 OP を 1:2 に分ける点 Q' を通る円(緑の破線)が螺旋と交わる点 Q が 20° の方向にある。点線の円は 40° の方向の点を与える

$\frac{3\pi}2$ を $2:3$ に分ける

$270^\circ$ の角を $2:3$ に分けると、$108^\circ$ と $162^\circ$ になる。

計算を開く

$a=1$、$\alpha=\dfrac{3\pi}2$($270^\circ$)、$m=2$、$n=3$ とする。$P$ は $\theta=\dfrac{3\pi}2$ の点 $\left(0,-\dfrac{3\pi}2\right)$ で、$OP=\dfrac{3\pi}2$。$OQ'=\dfrac25\cdot\dfrac{3\pi}2=\dfrac{3\pi}5$ で、$Q$ は $\theta=\dfrac{3\pi}5$($108^\circ$)の点 $\approx(-0.5825,\ 1.7927)$ である。始線と $OQ$ のなす角 $108^\circ$ と、$OQ$ と $\ell$ のなす角 $270^\circ-108^\circ=162^\circ$ の比は $108:162=2:3$ である。

$n$ 等分も同じで、$OP$ を $n$ 等分する点を使えばよい。折り紙による作図 でも角の 3 等分ができるが、そこでは 3 次方程式を解く操作を使う。螺旋では、任意の整数の比に 1 回の操作で分けられる。

系:円周の長さに等しい線分

1 周目の終わりの点 $P_{2\pi}(2\pi a,0)$ で螺旋に接線を引くと、基準の円の円周の長さが線分として現れる。

円周の長さに等しい線分

点 $P_{2\pi}(2\pi a,0)$ での螺旋の接線が、$O$ を通り $OP_{2\pi}$ に垂直な直線($y$ 軸)と交わる点を $T$ とすると、
$$ OT=4\pi^2a=2\pi\cdot OP_{2\pi} $$
である。すなわち $OT$ は基準の円の円周の長さに等しい。

螺旋を $\theta$ を媒介変数として $x=a\theta\cos\theta$、$y=a\theta\sin\theta$ と表す。積の微分により
$$ \frac{dx}{d\theta}=a(\cos\theta-\theta\sin\theta),\qquad\frac{dy}{d\theta}=a(\sin\theta+\theta\cos\theta) $$
である。$\theta=2\pi$ では $\cos2\pi=1$、$\sin2\pi=0$ なので、$\dfrac{dx}{d\theta}=a$、$\dfrac{dy}{d\theta}=2\pi a$ となる。$\dfrac{dx}{d\theta}\ne0$ なので、接線の傾きは $\dfrac{dy/d\theta}{dx/d\theta}=2\pi$ である(媒介変数表示と曲線の長さ で扱う、媒介変数で表した曲線の接線の傾きの計算)。接線は点 $(2\pi a,0)$ を通るので
$$ y=2\pi(x-2\pi a) $$
である。$x=0$ を代入すると $y=-4\pi^2a$ なので、$T(0,-4\pi^2a)$、$OT=4\pi^2a$ である。基準の円の円周は $2\pi\cdot2\pi a=4\pi^2a$ で、等しい。

1 周目の終わりの点 P での接線(赤)が y 軸と交わる点を T とすると、OT(橙)は破線の円の円周の長さに等しい。直角三角形 OPT(薄い赤)の面積は円の面積に等しい 1 周目の終わりの点 P での接線(赤)が y 軸と交わる点を T とすると、OT(橙)は破線の円の円周の長さに等しい。直角三角形 OPT(薄い赤)の面積は円の面積に等しい

円と面積の等しい直角三角形

$a=1$ とする。$OP_{2\pi}=2\pi$、$OT=4\pi^2$ で、直角三角形 $OP_{2\pi}T$ の面積は
$$ \frac12\cdot2\pi\cdot4\pi^2=4\pi^3 $$
である。基準の円の面積 $\pi(2\pi)^2=4\pi^3$ に等しい(図 6)。一般に、半径 $\rho$ の円の面積 $\pi\rho^2$ は、直角をはさむ辺が $\rho$ と $2\pi\rho$(円周の長さ)の直角三角形の面積 $\dfrac12\rho\cdot2\pi\rho$ に等しい。thm-asp-area とあわせると、1 周目が囲む部分の面積 $\dfrac{4\pi^3}3$ は、この三角形の $\dfrac13$ である。

三角形と面積の等しい正方形は定規とコンパスで作図できる(辺の長さ $\sqrt{\dfrac12\times\text{底辺}\times\text{高さ}}$ の線分は、定規とコンパスによる作図 の定理「四則と平方根の作図」で作れる)。したがって、螺旋とその接線が引ければ、円と面積の等しい正方形が作図できる。定規とコンパスだけでは円と面積の等しい正方形は作図できない(3大作図問題の不可能性)ので、ここでも螺旋が道具を増やしている。ただし、螺旋の接線を定規とコンパスで引く方法はこの記事では扱わず、接線が引けることを前提にしている。
$\theta=2\pi$ 以外の点でも、同じように計算できる。

一般の点での長さ

螺旋の $\theta$($\theta>0$)の点 $P_\theta$ での接線が、$O$ を通り $OP_\theta$ に垂直な直線と交わる点を $T_\theta$ とすると、$OT_\theta=a\theta^2$ である。$\theta=2\pi$ で cor-asp-circumference の $4\pi^2a$ になる。$\theta=\dfrac\pi2$ では $OT=\dfrac{\pi^2a}4$ で、これは半径 $OP_{\pi/2}=\dfrac{\pi a}2$ の円の円周の $\dfrac14$、すなわち中心角 $\dfrac\pi2$ の弧の長さに等しい。一般に $a\theta^2=\theta\cdot a\theta$ は、半径 $OP_\theta=a\theta$、中心角 $\theta$ の弧の長さである。

一般の点での計算を開く

$P_\theta=(a\theta\cos\theta,\ a\theta\sin\theta)$ での接線の方向は $\vec v=a(\cos\theta-\theta\sin\theta,\ \sin\theta+\theta\cos\theta)$ である。$OP_\theta$ に垂直な直線は、$\vec e=(-\sin\theta,\cos\theta)$ を方向とし原点を通る。$P_\theta+s\vec v=u\vec e$ となる $s$、$u$ を求める。両辺と $(\cos\theta,\sin\theta)$ の内積をとると、左辺は $a\theta+sa$、右辺は $0$ なので $s=-\theta$ である。両辺と $\vec e$ の内積をとると、左辺は $0+s\cdot a\theta=-a\theta^2$、右辺は $u$ なので $u=-a\theta^2$ である。よって $OT_\theta=\lvert u\rvert=a\theta^2$ である。

例と反例

def-asp では $\theta\ge0$ に限り、$r$ を $\theta$ に比例させた。どちらかを外すと、角の分割や面積の比 $\dfrac13$ が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
$\theta\ge0$$r=\theta$ を $-2\pi\le\theta\le2\pi$ で考える円と曲線の交点がただ 1 つ(角の分割の手順)
$r$ が $\theta$ に比例$r=\theta^2$面積の比 $\frac13$、角の分割
θ≧0 の部分(青)と θ≦0 の部分(橙の破線)。半径 π/9 の円は 2 点で曲線と交わる θ≧0 の部分(青)と θ≦0 の部分(橙の破線)。半径 π/9 の円は 2 点で曲線と交わる
r=θ^2 の 1 周目が囲む部分(橙)と、半径 4π^2 の円(破線) r=θ^2 の 1 周目が囲む部分(橙)と、半径 4π^2 の円(破線)
反例:$\theta<0$ も含める

$r=\theta$ で $\theta$ を $-2\pi\le\theta\le2\pi$ まで動かす($r<0$ の点は、向き $\theta$ と反対の方向に距離 $\lvert\theta\rvert$ の点と約束する)。$\theta=-t$($t>0$)の点は
$$ (-t\cos(-t),\ -t\sin(-t))=(-t\cos t,\ t\sin t) $$
で、$\theta=t$ の点 $(t\cos t,\ t\sin t)$ を $y$ 軸で折り返した点である。曲線は $y$ 軸について対称な 2 本の枝からなる(図 7)。
ex-asp-trisect と同じく半径 $\dfrac\pi9$ の円をとると、曲線との交点は $\theta=\dfrac\pi9$ の点 $(0.3280,\ 0.1194)$ と、$\theta=-\dfrac\pi9$ の点 $(-0.3280,\ 0.1194)$ の 2 つになる。後者は始線から $160^\circ$ の方向にあり、これを選ぶと $60^\circ$ の角の 3 等分にならない。$\theta\ge0$ の約束が、lem-asp-mono の「ただ 1 点で交わる」を保証していた。
満たす性質:$r$ は $\theta$ に比例。満たさない性質:$\theta\ge0$。成り立たなくなること:lem-asp-mono の (1) と、それを使う thm-asp-divide の手順(交点が 1 つに決まらない)。

反例:$r=\theta^2$ に替える

$r=\theta^2$($0\le\theta\le2\pi$)でも、半径は $\theta$ について増加するので、1 周目が囲む部分が同じように定まる。
(1) 面積。極座標で表された図形の面積 の公式で、面積は $\dfrac12\displaystyle\int_0^{2\pi}\theta^4\,d\theta=\dfrac{(2\pi)^5}{10}=\dfrac{16\pi^5}5$。1 周目の終わりの点までの距離 $(2\pi)^2=4\pi^2$ を半径とする円の面積は $\pi(4\pi^2)^2=16\pi^5$ なので、比は $\dfrac15$ で、$\dfrac13$ にならない(図 8)。
(2) 角の分割。$60^\circ$ の方向の点は距離 $\left(\dfrac\pi3\right)^2$ にある。この距離を $\dfrac13$ にした半径 $\dfrac13\left(\dfrac\pi3\right)^2$ の円と曲線の交点は、$\theta^2=\dfrac13\left(\dfrac\pi3\right)^2$ より $\theta=\dfrac1{\sqrt3}\cdot\dfrac\pi3$、すなわち約 $34.64^\circ$ の方向で、$20^\circ$ にならない。距離が角の 2 乗に比例するので、距離の $\dfrac13$ は角の $\dfrac1{\sqrt3}$ に移る。
満たす性質:$\theta\ge0$、半径は $\theta$ について増加。満たさない性質:半径が $\theta$ に比例。成り立たなくなること:thm-asp-area の比 $\dfrac13$ と、thm-asp-divide の分割の比。

2 周以上にわたる部分の面積を $\dfrac12\displaystyle\int r^2\,d\theta$ で一度に計算すると重なりを数えすぎることは、ex-asp-rings の最後で述べた。

大学数学で見る:弧の長さとカム

MathWorld の頁「Archimedes' Spiral」によると、この螺旋は Conon が調べ、のちに Archimedes が『螺旋について』(On Spirals)で研究した。頁は、この螺旋が定規とコンパスとあわせて角の $n$ 等分(3 等分を含む)と円積に使えること、弧の長さの式、カムとしての使い方を挙げている Wei26。この記事の thm-asp-divide と cor-asp-circumference は、そのうち角の分割と円積の部分を証明したものである。

弧の長さ

原点から $\theta$ の点までの螺旋の長さは
$$ s(\theta)=\frac a2\Bigl(\theta\sqrt{1+\theta^2}+\log\bigl(\theta+\sqrt{1+\theta^2}\bigr)\Bigr) $$
である。$\log\bigl(\theta+\sqrt{1+\theta^2}\bigr)$ は双曲線正弦 $\sinh$ の逆関数の値である(双曲線関数(高校数学))。$a=1$ の 1 周目の長さは $s(2\pi)=21.256\ldots$ で、基準の円の円周 $4\pi^2=39.478\ldots$ より短い。

式の確かめ方を開く

媒介変数表示と曲線の長さ の公式により、長さは $\displaystyle\int_0^\theta\sqrt{\Bigl(\frac{dx}{dt}\Bigr)^2+\Bigl(\frac{dy}{dt}\Bigr)^2}\,dt$ である。cor-asp-circumference の証明の導関数から

$$\Bigl(\frac{dx}{dt}\Bigr)^2+\Bigl(\frac{dy}{dt}\Bigr)^2=a^2\bigl\{(\cos t-t\sin t)^2+(\sin t+t\cos t)^2\bigr\}=a^2(1+t^2)$$

なので、長さは $\displaystyle\int_0^\theta a\sqrt{1+t^2}\,dt$ である。一方、$s(\theta)$ を微分すると、$\bigl(\theta\sqrt{1+\theta^2}\bigr)'=\sqrt{1+\theta^2}+\dfrac{\theta^2}{\sqrt{1+\theta^2}}$、$\Bigl(\log\bigl(\theta+\sqrt{1+\theta^2}\bigr)\Bigr)'=\dfrac{1+\frac{\theta}{\sqrt{1+\theta^2}}}{\theta+\sqrt{1+\theta^2}}=\dfrac1{\sqrt{1+\theta^2}}$ なので

$$s'(\theta)=\frac a2\Bigl(\sqrt{1+\theta^2}+\frac{\theta^2+1}{\sqrt{1+\theta^2}}\Bigr)=a\sqrt{1+\theta^2}$$

である。$s(0)=0$ とあわせて、$s(\theta)=\displaystyle\int_0^\theta a\sqrt{1+t^2}\,dt$ が成り立つ。

カム

MathWorld の頁は、螺旋の $x$ 軸より上の 1 つの弧と、それを $x$ 軸で折り返したものを組み合わせた板を、中心のまわりに一定の角速度で回すと、板の縁が $y$ 軸と交わる点が一定の速さで動くと述べている Wei26。これは $r=a\theta$ から次のように分かる。板を角 $t$ だけ時計回りに回すと、決まった方向(向き $\varphi_0$)にくる縁の点は、回す前に向き $\varphi_0+t$ にあった点で、中心からの距離は $a(\varphi_0+t)$ である。これは $t$ の 1 次式なので、回した角に比例して距離が変わる。回転の一様な動きが、直線の上の一様な動きに変わる。

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関連項目

参考文献

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