Chebotarevの密度定理

同義語:チェボタレフの密度定理Chebotarev密度定理Čebotarevの密度定理Dirichlet密度ディリクレ密度Chebotarev density theoremDirichlet density

概要

Chebotarevの密度定理(Chebotarev density theorem)とは、代数体の有限次 Galois 拡大 $L/K$ の Galois 群 $G$ の共役類 $C$ について、Frobenius 類が $C$ に等しい $K$ の素イデアルの集合の Dirichlet 密度が $\lvert C\rvert/\lvert G\rvert$ であるという定理である。密度は $\sum_{\mathfrak{p}\in M}N\mathfrak{p}^{-s}$ と $\log\frac1{s-1}$ の $s\to1+0$ での比の極限である。$C=\{1\}$ なら完全分解する素イデアルの密度が $1/[L:K]$ となり、$K=\mathbb{Q}$、$L=\mathbb{Q}(\zeta_m)$ の場合は Dirichlet の算術級数定理を含む。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Frobenius元, Dedekindゼータ関数, 分解群と惰性群, 大域類体論

代数体の Galois 拡大 $L/K$ で分岐しない素イデアル $\mathfrak{p}$ には、Galois 群 $G$ の共役類として Frobenius元 の類 $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}}$ が定まる。Chebotarevの密度定理(Chebotarev density theorem)は、$G$ の各共役類 $C$ について、$\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}}=C$ となる素イデアルが「割合 $\lvert C\rvert/\lvert G\rvert$ で」現れることを主張する。割合は Dirichlet 密度 で測る。$K=\mathbb{Q}$、$L=\mathbb{Q}(\zeta_m)$ の場合が Dirichlet の算術級数定理($a$ と $m$ が互いに素なら、$a\bmod m$ の素数の割合は $1/\varphi(m)$)であり、Chebotarev の定理はそれを非アーベル拡大にまで広げたものである。
この記事では、Dirichlet 密度を定義し、完全分解する素イデアルの密度が $1/[L:K]$ であることを Dedekindゼータ関数 の極だけから証明する。そのあと、アーベル拡大の場合を大域類体論の Artin 相互法則と $L$ 関数の性質に帰着させ、一般の場合を巡回部分群に移す議論で証明する。

定義

以下 $K$ を 代数体 とし、「素イデアル」は $\mathcal{O}_K$ の $0$ でない素イデアルを指す。素イデアル $\mathfrak{p}$ のノルムを $N\mathfrak{p}:=\lvert\mathcal{O}_K/\mathfrak{p}\rvert$ と書き、$s$ は実数とする。

Dirichlet密度

$K$ の素イデアルの集合 $M$ について、極限
$$ d(M)=d_K(M):=\lim_{s\to1+0}\frac{\sum_{\mathfrak{p}\in M}N\mathfrak{p}^{-s}}{\log\frac1{s-1}} $$
が存在するとき、$d(M)$ を $M$ の Dirichlet 密度(Dirichlet density)という。

lem-cheb-primes により、分母を「すべての素イデアルにわたる和 $\sum_{\mathfrak{p}}N\mathfrak{p}^{-s}$」に替えても極限は変わらない(NSW20 Definition (9.1.2), p. 524 はこの形で定義している)。和 $\sum_{\mathfrak{p}\in M}N\mathfrak{p}^{-s}$ は $s>1$ で収束する(Dedekindゼータ関数 の記事の定理「収束と Euler 積」)。
$L/K$ を有限次 Galois 拡大、$G:=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。$L$ で分岐しない $\mathfrak{p}$ について、その上の素イデアル $\mathfrak{P}$ の Frobenius 元 $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}}$ の全体は $G$ の 1 つの共役類 $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}}$ である(Frobenius元 の記事の命題「Frobenius元の基本性質」の 2)。$G$ の共役類 $C$ について
$$ P_{L/K}(C):=\{\mathfrak{p}\mid\mathfrak{p}\text{ は }L\text{ で分岐せず、}\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}}=C\} $$
とおく。$C=\{1\}$ のとき、これは $L$ で完全分解する素イデアルのうち分岐しないものの集合で、分岐するものは有限個なので(代数体における素イデアルの分解 の記事の系「分岐する素イデアルは有限個」)、以下では完全分解する素イデアル全体 $\operatorname{Spl}(L/K)$ と区別しない。

Chebotarevの密度定理

$L/K$ を代数体の有限次 Galois 拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$、$C$ を $G$ の共役類とする。このとき $P_{L/K}(C)$ は Dirichlet 密度をもち、
$$ d\bigl(P_{L/K}(C)\bigr)=\frac{\lvert C\rvert}{\lvert G\rvert} $$
である。とくに $P_{L/K}(C)$ は無限集合である。

定理の使いどころ

$C=\{1\}$ のときは、完全分解する素イデアルの密度が $1/[L:K]$ であることを述べている。$K=\mathbb Q$、$L=\mathbb Q(\zeta_m)$ のときは、$p\bmod m$ が与えられた単数類になる素数 $p$ の密度が $1/\varphi(m)$ であることになり、算術級数の素数定理(Dirichlet の定理の密度版)が得られる。

直感

$\mathfrak{p}$ の上の素イデアル $\mathfrak{P}$ ごとに Frobenius 元が 1 つずつ決まる。$L$ の素イデアル全体を見ると、「$\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}}=\sigma$」となる $\mathfrak{P}$ の割合は $G$ のどの元 $\sigma$ についても等しく $1/\lvert G\rvert$ であろう、というのが定理の内容である。$\mathfrak{p}$ ごとに数えると共役類 $C$ の元の個数だけ重みが付くので $\lvert C\rvert/\lvert G\rvert$ になる。
$\sigma=1$ の場合(完全分解)は、$\zeta_L$ と $\zeta_K$ の極の比較だけで分かる(prop-cheb-split)。$G$ がアーベル群なら、Artin 相互法則により Frobenius 元はイデアルの類で決まるので、素イデアルがイデアル類に均等に分布すること($L$ 関数の性質)に帰着する。一般の $\sigma$ では、$\sigma$ が生成する巡回部分群の固定体 $E$ に移ると $L/E$ はアーベル拡大になり、そこでの結果を $K$ に引き戻せばよい。

Dirichlet 密度の基本性質

素イデアルにわたる和

$s\to1+0$ で
$$ \sum_{\mathfrak{p}}N\mathfrak{p}^{-s}=\log\frac1{s-1}+O(1) $$
である。とくに $K$ の素イデアル全体の Dirichlet 密度は $1$ である。

ゼータ関数の対数をとる

$s>1$ で、Euler 積(Dedekindゼータ関数 の記事の定理「収束と Euler 積」)の対数をとると
$$ \log\zeta_K(s)=\sum_{\mathfrak{p}}\sum_{k\ge1}\frac1{k\,N\mathfrak{p}^{ks}}=\sum_{\mathfrak{p}}N\mathfrak{p}^{-s}+g(s) $$
である(実数の対数。各項が正なので和の順序は自由)。$d:=[K:\mathbb{Q}]$ とすると、素数 $p$ の上の素イデアルは高々 $d$ 個で $N\mathfrak{p}\ge p$ なので、$0\le g(s)\le\sum_{\mathfrak{p}}\sum_{k\ge2}N\mathfrak{p}^{-k}\le2d\sum_pp^{-2}$ は有界である。一方、同じ記事の定理「類数公式」により $\lim_{s\to1+0}(s-1)\zeta_K(s)=\kappa>0$ なので、$\log\zeta_K(s)=\log\frac1{s-1}+\log\bigl((s-1)\zeta_K(s)\bigr)=\log\frac1{s-1}+O(1)$ である。$\square$

$K$ の拡大体 $E$ の素イデアル $\mathfrak{q}$ について、$\mathfrak{p}:=\mathfrak{q}\cap\mathcal{O}_K$ 上の剰余次数を $f(\mathfrak{q}\mid\mathfrak{p})$ と書く。

Dirichlet密度の基本性質
  1. $M$ が有限集合なら $d(M)=0$ である。
  2. $M_1\subset M_2$ で両方が密度をもてば $d(M_1)\le d(M_2)$ である。$M_1,M_2$ が交わらず両方が密度をもてば $d(M_1\cup M_2)=d(M_1)+d(M_2)$ である。有限個の元を加えたり除いたりしても、密度の存在と値は変わらない。
  3. $E/K$ を有限次拡大とすると、$f(\mathfrak{q}\mid\mathfrak{p})\ge2$ となる $E$ の素イデアル $\mathfrak{q}$ の集合の $d_E$ は $0$ であり、$\sum_{\mathfrak{q}:\,f(\mathfrak{q}\mid\mathfrak{p})\ge2}N\mathfrak{q}^{-s}$ は $s>1$ で有界である。
有界な和は密度に効かない

1。有限集合の和は $s\to1+0$ で有界で、分母 $\log\frac1{s-1}\to\infty$ で割ると $0$ になる。
2。和の単調性と加法性から、極限をとって従う。有限個の変更は 1 による。
3。$f:=f(\mathfrak{q}\mid\mathfrak{p})\ge2$ なら $N\mathfrak{q}=N\mathfrak{p}^f\ge N\mathfrak{p}^2$ であり、各 $\mathfrak{p}$ の上の $E$ の素イデアルは高々 $[E:K]$ 個である(代数体における素イデアルの分解 の記事の定理「基本等式」)。よって和は $[E:K]\sum_{\mathfrak{p}}N\mathfrak{p}^{-2}\le[E:K]\,d\sum_pp^{-2}$ 以下で有界であり、1 と同じ理由で密度は $0$ である。$\square$

完全分解する素イデアル

完全分解する素イデアルの密度

$L/K$ を次数 $n$ の Galois 拡大とする。$s\to1+0$ で
$$ \sum_{\mathfrak{p}\in\operatorname{Spl}(L/K)}N\mathfrak{p}^{-s}=\frac1n\log\frac1{s-1}+O(1) $$
であり、$d(\operatorname{Spl}(L/K))=1/n$ である。

$\zeta_L$ の極を $K$ の素イデアルで数え直す

lem-cheb-primes を $L$ に使うと $\sum_{\mathfrak{P}}N\mathfrak{P}^{-s}=\log\frac1{s-1}+O(1)$ である(和は $L$ の素イデアル全体)。この和を 3 つに分ける。

  • 分岐する $\mathfrak{p}$ の上の $\mathfrak{P}$:有限個なので有界である。
  • $f(\mathfrak{P}\mid\mathfrak{p})\ge2$ の $\mathfrak{P}$:prop-cheb-basic の 3 により有界である。
  • 残りは、分岐せず $f(\mathfrak{P}\mid\mathfrak{p})=1$ の $\mathfrak{P}$ である。Galois 拡大では $\mathfrak{p}$ の上の素イデアルの $e,f$ はそろい、$efg=n$ なので(分解群と惰性群 の記事の系「Galois 拡大での $efg=n$」)、このとき $\mathfrak{p}$ の上に $n$ 個の素イデアルがあり、$\mathfrak{p}$ は完全分解する。逆に完全分解する $\mathfrak{p}$ の上の $n$ 個の $\mathfrak{P}$ はすべてこの種類で、$N\mathfrak{P}=N\mathfrak{p}$ である。
    よって $\log\frac1{s-1}+O(1)=n\sum_{\mathfrak{p}\in\operatorname{Spl}(L/K)}N\mathfrak{p}^{-s}+O(1)$ であり、$n$ で割ればよい。$\square$
完全分解する素イデアルによる Galois 拡大の決定

$L,M$ を $K$ の有限次 Galois 拡大(同じ代数閉包の中)とする。$\operatorname{Spl}(L/K)\smallsetminus\operatorname{Spl}(M/K)$ の Dirichlet 密度が $0$ ならば(とくに、有限個を除いて $\operatorname{Spl}(L/K)\subset\operatorname{Spl}(M/K)$ ならば)$M\subset L$ である。とくに $\operatorname{Spl}(L/K)$ と $\operatorname{Spl}(M/K)$ が有限個を除いて一致すれば $L=M$ である。

合成体の完全分解と比べる

合成体 $LM$ も $K$ の Galois 拡大である。$\mathfrak{p}$ が $LM$ で完全分解することは、$L$ と $M$ の両方で完全分解することと同値である(分岐しない $\mathfrak{p}$ について、$LM$ の素イデアル $\mathfrak{Q}$ の Frobenius 元が自明であることは、その $L$ と $M$ への制限が自明であることと同値で、制限は $\mathfrak{Q}\cap L$、$\mathfrak{Q}\cap M$ の Frobenius 元である。Frobenius元 の記事の定理「Frobenius元の中間体への移り方」と命題「Frobenius元の基本性質」の 3)。よって $\operatorname{Spl}(LM/K)=\operatorname{Spl}(L/K)\cap\operatorname{Spl}(M/K)$ は、仮定により $\operatorname{Spl}(L/K)$ から密度 $0$ の集合を除いたものである。prop-cheb-split と prop-cheb-basic の 2 から $\frac1{[LM:K]}=\frac1{[L:K]}$、すなわち $LM=L$ で、$M\subset L$ である。$\square$

主定理の証明

使う事実

法 $\mathfrak{m}$、$I_K^{\mathfrak{m}}$、$P_{K,\mathfrak{m}}$ は 大域類体論 の記事の節「Artin 相互法則」のとおりとする。

使う事実

次は、この記事では証明しない。
(B1) 射類群の有限性:$I_K^{\mathfrak{m}}/P_{K,\mathfrak{m}}$ は有限群である(類体論の第二不等式 の記事の注意「使う事実」の (A1))。
(B2) $L(1,\chi)\ne0$:$\chi$ を $I_K^{\mathfrak{m}}/P_{K,\mathfrak{m}}$ の自明でない指標とし、$L(s,\chi):=\sum_{\mathfrak{a}}\chi(\mathfrak{a})N\mathfrak{a}^{-s}$($\mathfrak{m}_0$ と素な整イデアルにわたる和、$s>1$)とする。$s\to1+0$ で $L(s,\chi)$ は $0$ でない有限の値 $L(1,\chi)$ に収束する(CF67 Chapter VIII(H. Heilbronn), Theorem 1, p. 210 と Theorem 2, p. 212。Neu99 Chapter VII, Lemma (13.3), p. 544)。有限の極限をもつことは 類体論の第二不等式 の記事の (A2) と同じである。
(B3) Artin 相互法則:$L/K$ が有限次アーベル拡大なら、$L/K$ で分岐する素イデアルすべてで $\mathfrak{m}_0$ が割り切れる法 $\mathfrak{m}$ があって、$\mathfrak{p}\nmid\mathfrak{m}_0$ に $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}}$ を対応させる準同型 $I_K^{\mathfrak{m}}\to G$ は全射で、その核は $P_{K,\mathfrak{m}}\,N_{L/K}(I_L^{\mathfrak{m}})$ を含み、同型 $I_K^{\mathfrak{m}}/P_{K,\mathfrak{m}}N_{L/K}(I_L^{\mathfrak{m}})\cong G$ を引き起こす(大域類体論 の記事の定理「Artin相互法則」とその所在)。

(B2) の証明は、CF67 Chapter VIII, Theorem 2 では Hadamard の不等式 $3+4\cos\omega+\cos2\omega\ge0$ と Landau の定理($L(s,\chi)$ の全平面への解析接続を使う)により、Neu99 Chapter VII, Lemma (13.3) では射類体の存在(大域類体論)と $\zeta$ 関数の $L$ 関数への分解により零点を排除するもので、類体論の第二不等式 の証明が使った解析的な入力より一段深い。

一般化された Dirichlet の密度定理

一般化された Dirichlet の密度定理

$\mathfrak{m}$ を $K$ の法、$H$ を $P_{K,\mathfrak{m}}\subset H\subset I_K^{\mathfrak{m}}$ となる部分群とし、$h:=(I_K^{\mathfrak{m}}:H)$ とする。このとき $I_K^{\mathfrak{m}}/H$ の各類 $\mathfrak{K}$ について、$\mathfrak{K}$ に属する素イデアルの集合は Dirichlet 密度 $1/h$ をもつ。

指標の直交関係で類を取り出す

(B1) により $h$ は有限である。$I_K^{\mathfrak{m}}/H$ の指標 $\chi$ について、類体論の第二不等式 の記事の補題「$L$ 関数の対数」の $\ell(s,\chi)$ と $g_\chi(s)$ を使う:$\ell(s,\chi)=\sum_{\mathfrak{p}\nmid\mathfrak{m}_0}\chi(\mathfrak{p})N\mathfrak{p}^{-s}+g_\chi(s)$、$\exp\ell(s,\chi)=L(s,\chi)$、$g_\chi$ は有界である(その補題の証明は、$H$ が $P_{K,\mathfrak{m}}$ を含む部分群であることしか使わない)。
$\chi\ne1$ なら $\ell(s,\chi)$ は $s\to1+0$ で有界。(B2) により $L(s,\chi)\to L(1,\chi)\ne0$ である。$L(1,\chi)$ を中心とし $0$ を含まない円板 $D$ と、$D$ 上の対数の分枝 $\operatorname{Log}_D$ をとる。$1< s<1+\delta$ で $L(s,\chi)\in D$ となる $\delta>0$ がある。そこで $\ell(s,\chi)-\operatorname{Log}_DL(s,\chi)$ は $2\pi i\mathbb{Z}$ に値をとる連続関数なので定数であり、$\operatorname{Log}_DL(s,\chi)$ は有界なので $\ell(s,\chi)$ も有界である。
$\chi=1$。$\ell(s,1)=\sum_{\mathfrak{p}\nmid\mathfrak{m}_0}N\mathfrak{p}^{-s}+O(1)=\log\frac1{s-1}+O(1)$ である(lem-cheb-primes と prop-cheb-basic の 1)。
直交関係。$\mathfrak{a}\in\mathfrak{K}$ を 1 つとる。$\mathfrak{p}\in I_K^{\mathfrak{m}}$ について $\sum_\chi\overline{\chi(\mathfrak{a})}\chi(\mathfrak{p})=\sum_\chi\chi(\mathfrak{p}\mathfrak{a}^{-1})$ は $\mathfrak{p}\in\mathfrak{K}$ なら $h$、そうでなければ $0$ である(類体論の第二不等式 の記事の節「$L$ 関数の対数」の直交関係)。よって
$$ h\sum_{\mathfrak{p}\in\mathfrak{K}}N\mathfrak{p}^{-s}=\sum_\chi\overline{\chi(\mathfrak{a})}\bigl(\ell(s,\chi)-g_\chi(s)\bigr)=\log\frac1{s-1}+O(1) $$
である。$h\log\frac1{s-1}$ で割って $s\to1+0$ とすればよい。$\square$

アーベル拡大の場合

アーベル拡大での Chebotarev の定理

$L/K$ を有限次アーベル拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。各 $\sigma\in G$ について、$d\bigl(P_{L/K}(\{\sigma\})\bigr)=1/\lvert G\rvert$ である。

Artin 写像で類に移す

(B3) の法 $\mathfrak{m}$ をとり、$H:=P_{K,\mathfrak{m}}N_{L/K}(I_L^{\mathfrak{m}})$、$\psi\colon I_K^{\mathfrak{m}}/H\cong G$ とする。$\mathfrak{p}\nmid\mathfrak{m}_0$ について $\psi(\mathfrak{p})=\operatorname{Frob}_{\mathfrak{p}}$ なので、$P_{L/K}(\{\sigma\})$ から有限個の $\mathfrak{p}\mid\mathfrak{m}_0$ を除いたものは、類 $\psi^{-1}(\sigma)$ に属する素イデアルの集合に等しい。thm-cheb-dirichlet によりその密度は $1/(I_K^{\mathfrak{m}}:H)=1/\lvert G\rvert$ で、prop-cheb-basic の 2 により有限個の変更は密度を変えない。$\square$

一般の場合

thm-cheb-main の証明。$\sigma\in C$ を 1 つとり、$f$ を $\sigma$ の位数、$E:=L^{\langle\sigma\rangle}$ とする。$L/E$ は Galois 群 $\langle\sigma\rangle$ の巡回拡大である。$Z(\sigma):=\{\tau\in G\mid\tau\sigma=\sigma\tau\}$ を中心化群とすると、$\lvert C\rvert=\lvert G\rvert/\lvert Z(\sigma)\rvert$ である。
段 1($E$ の側の集合)。$E$ の素イデアル $\mathfrak{q}$ で、$\mathfrak{p}:=\mathfrak{q}\cap\mathcal{O}_K$ が $L/K$ で分岐せず、$f(\mathfrak{q}\mid\mathfrak{p})=1$ で、$\operatorname{Frob}_{\mathfrak{q}}(L/E)=\sigma$ となるものの集合を $T$ とする。prop-cheb-abelian を $L/E$ に使うと $d_E(P_{L/E}(\{\sigma\}))=1/f$ である。$T$ はこの集合から、$L/K$ で分岐する素イデアルの上にあるもの(有限個)と $f(\mathfrak{q}\mid\mathfrak{p})\ge2$ のもの(prop-cheb-basic の 3 により密度 $0$)を除いたものなので、$d_E(T)=1/f$ である。
段 2($L$ の素イデアルとの対応)。$\mathfrak{p}\in P_{L/K}(C)$ とし、$\mathfrak{p}$ の上の $L$ の素イデアル $\mathfrak{P}$ で $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}}(L/K)=\sigma$ となるものの集合を $A_{\mathfrak{p}}$ とする。写像 $\mathfrak{P}\mapsto\mathfrak{P}\cap E$ は、$A_{\mathfrak{p}}$ から「$T$ の元で $\mathfrak{p}$ の上にあるもの」への全単射であり、この $\mathfrak{q}$ について $N\mathfrak{q}=N\mathfrak{p}$ である。

  • $\mathfrak{P}\in A_{\mathfrak{p}}$ なら、分解群 $D_{\mathfrak{P}}(L/K)=\langle\sigma\rangle=\operatorname{Gal}(L/E)$(Frobenius元 の記事の命題「Frobenius元の基本性質」の 1)なので、$L/E$ での分解群も $\langle\sigma\rangle$ で、$f(\mathfrak{P}\mid\mathfrak{q})=f=f(\mathfrak{P}\mid\mathfrak{p})$、よって $f(\mathfrak{q}\mid\mathfrak{p})=1$、$N\mathfrak{q}=N\mathfrak{p}$ である。$\sigma$ は剰余体に $x\mapsto x^{N\mathfrak{p}}=x^{N\mathfrak{q}}$ を引き起こすので $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}}(L/E)=\sigma$ であり、$\mathfrak{q}\in T$ である。
  • 逆に $\mathfrak{q}\in T$ が $\mathfrak{p}$ の上にあり $\mathfrak{P}\mid\mathfrak{q}$ なら、$\sigma=\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}}(L/E)$ は剰余体に $x\mapsto x^{N\mathfrak{q}}=x^{N\mathfrak{p}}$ を引き起こすので $\operatorname{Frob}_{\mathfrak{P}}(L/K)=\sigma$、$\mathfrak{P}\in A_{\mathfrak{p}}$ である。さらに $\mathfrak{q}$ の $L/E$ での分解群は $\langle\sigma\rangle=\operatorname{Gal}(L/E)$ 全体なので、$\mathfrak{q}$ の上の $L$ の素イデアルは $\mathfrak{P}$ だけである。よって写像は全射かつ単射である。

段 3($A_{\mathfrak{p}}$ の個数)。$\mathfrak{P}_0\in A_{\mathfrak{p}}$ を 1 つとる($\mathfrak{p}\in P_{L/K}(C)$ なので存在する)。$\mathfrak{p}$ の上の素イデアルは $\tau(\mathfrak{P}_0)$($\tau\in G$)の形で、$\operatorname{Frob}_{\tau(\mathfrak{P}_0)}=\tau\sigma\tau^{-1}$ なので、$\tau(\mathfrak{P}_0)\in A_{\mathfrak{p}}$ は $\tau\in Z(\sigma)$ と同値である。$\tau(\mathfrak{P}_0)=\tau'(\mathfrak{P}_0)$ は $\tau^{-1}\tau'\in D_{\mathfrak{P}_0}=\langle\sigma\rangle\subset Z(\sigma)$ と同値なので、$\lvert A_{\mathfrak{p}}\rvert=\lvert Z(\sigma)\rvert/f$ である。
段 4(密度の計算)。段 2・段 3 から、$T$ の元はちょうど $P_{L/K}(C)$ の元の上にあり、各 $\mathfrak{p}$ の上に $\lvert Z(\sigma)\rvert/f$ 個ずつ、ノルム $N\mathfrak{p}$ で並ぶ。よって
$$ \sum_{\mathfrak{q}\in T}N\mathfrak{q}^{-s}=\frac{\lvert Z(\sigma)\rvert}{f}\sum_{\mathfrak{p}\in P_{L/K}(C)}N\mathfrak{p}^{-s} $$
である。段 1 から左辺を $\log\frac1{s-1}$ で割ったものは $1/f$ に収束するので、$P_{L/K}(C)$ は密度をもち
$$ d\bigl(P_{L/K}(C)\bigr)=\frac{f}{\lvert Z(\sigma)\rvert}\cdot\frac1f=\frac1{\lvert Z(\sigma)\rvert}=\frac{\lvert C\rvert}{\lvert G\rvert} $$
である。密度が正なので $P_{L/K}(C)$ は無限集合である(prop-cheb-basic の 1)。$\square$
段 1 でアーベル拡大の場合を使うのは巡回拡大 $L/E$ だけである。基礎体を $K$ から $E$ に取り替えるので、$E$ についての Artin 相互法則と $L$ 関数の性質が必要になる。

例

円分体と算術級数中の素数

$K=\mathbb{Q}$、$L=\mathbb{Q}(\zeta_m)$ とすると、$p\nmid m$ の Frobenius 元は $\zeta_m\mapsto\zeta_m^p$ であり(円分体 の記事の命題「円分体のFrobenius元」)、同型 $G\cong(\mathbb{Z}/m\mathbb{Z})^\times$ で $p\bmod m$ に対応する(大域類体論 の記事の定理「円分体の Artin 相互法則」)。$G$ はアーベル群なので共役類は 1 元で、thm-cheb-main は
$$ d\bigl(\{p\text{ 素数}\mid p\equiv a\pmod m\}\bigr)=\frac1{\varphi(m)}\qquad(\gcd(a,m)=1) $$
を与える。これは Dirichlet の算術級数定理の密度の形である。この場合の Artin 相互法則は上の記事の中で証明されているので、必要な外部の入力は (B2) だけである。たとえば $m=8$ では、$10^6$ 未満の奇素数 $78497$ 個のうち $1,3,5,7\bmod8$ のものはそれぞれ $19552$、$19653$、$19623$、$19669$ 個で、どれも約 $1/4$ である。

$X^3-2$ の分解の型

$L$ を $X^3-2$ の $\mathbb{Q}$ 上の最小分解体とすると $G\cong S_3$ で、共役類は恒等置換(1 個)、互換(3 個)、3 次の巡回置換(2 個)である。$p\ne2,3$ は $L$ で分岐せず、$\mathbb{Z}[\sqrt[3]{2}]$ が $\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ の整数環であること(判別式(代数体) の記事の例「$\mathbb{Q}(\sqrt[3]{2})$ の整数環」)と Frobenius元 の記事の定理「分解の型と Frobenius 元の巡回型」により、$\operatorname{Frob}_p$ の巡回型は $X^3-2\bmod p$ の既約因子の次数の組に等しい。よって
$$ X^3-2\bmod p\text{ が}\begin{cases}3\text{ 個の根をもつ}&\text{密度 }1/6\\ \text{ちょうど 1 個の根をもつ}&\text{密度 }1/2\\ \text{根をもたない}&\text{密度 }1/3\end{cases} $$
である。数値でも、$5\le p<10^6$ の素数 $78496$ 個のうち、それぞれ $13032$ 個($0.166$)、$39265$ 個($0.500$)、$26199$ 個($0.334$)である。$p\equiv2\pmod3$ では $x\mapsto x^3$ が $\mathbb{F}_p^\times$ の全単射なので根はちょうど 1 個であり、互換の類の密度 $1/2$ のうちこれが全部を占める。

既約だがすべての素数で可約な多項式

$X^4+1$ は $\mathbb{Q}$ 上既約で、最小分解体は $\mathbb{Q}(\zeta_8)$、$G\cong(\mathbb{Z}/2)^2$ である。$G$ の単位元以外の元の位数は $2$ で、4 つの根に固定点なしで作用する。$\mathbb{Z}[\zeta_8]$ は $\mathbb{Q}(\zeta_8)$ の整数環なので(円分体 の記事の定理「円分体の整数環」)、Frobenius元 の記事の定理「分解の型と Frobenius 元の巡回型」により、奇素数 $p$ について $X^4+1\bmod p$ は、$p\equiv1\pmod8$(Frobenius 元が単位元、密度 $1/4$)なら 1 次式 4 個に、それ以外(密度 $3/4$)なら 2 次式 2 個に分解する。とくに $X^4+1$ は、どの奇素数を法としても既約でない。一般に、$\mathbb{Q}$ 上の $n$ 次既約多項式が $\bmod p$ で既約になる素数の密度は、Galois 群の中で $n$ 個の根を 1 つの巡回で置換する元の割合に等しい。Galois 群が $S_n$ なら $(n-1)!/n!=1/n$ である。

反例

外す条件反例成り立たなくなること
prop-cheb-split で $L/K$ が Galois$\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)/\mathbb{Q}$完全分解する素数の密度が $1/[L:K]$
cor-cheb-bauer で $L,M$ が Galois$\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ と $\mathbb{Q}(\omega\sqrt[3]2)$($\omega=e^{2\pi i/3}$)完全分解する素数の集合が体を決める
集合が無限なら密度が正$\mathbb{Q}(i)$ の、剰余次数 $2$ の素イデアル全体無限集合の密度は正
Galois 群が $n$ 個の根の巡回置換を含む$X^4+1$$\bmod p$ で既約になる素数が存在する
反例の確認

各行は、表の条件だけを外すと結論が破れることを示す。

各行の確認を開く

1 行目:$p\ne2,3$ が $\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ で完全分解することは、$X^3-2\bmod p$ が 3 個の根をもつことと同値で(ex-cheb-cubic と同じ定理)、ex-cheb-cubic によりその密度は $1/6\ne1/3$ である。

2 行目:Frobenius元 の記事の定理「分解の型と Frobenius 元の巡回型」により、分岐しない $p$ が $\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ で完全分解することも $\mathbb{Q}(\omega\sqrt[3]2)$ で完全分解することも、最小分解体 $L$ で完全分解すること(Frobenius 元が自明)と同値である(どちらの体も $L$ の中で、Galois 群の正規部分群を含まない位数 $2$ の部分群の固定体である)。よって 2 つの集合は有限個を除いて一致するが、$\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)\subset\mathbb{R}$、$\omega\sqrt[3]2\notin\mathbb{R}$ なので体は異なる。

3 行目:$p\equiv3\pmod4$ の素数は $\mathbb{Z}[i]$ で惰性し、剰余次数 $2$ の素イデアル $p\mathbb{Z}[i]$ を与える。これは無限個ある($4\cdot N!-1$ の素因数に $3\bmod4$ のものがある)が、prop-cheb-basic の 3($E=\mathbb{Q}(i)$、$K=\mathbb{Q}$)により密度は $0$ である。

4 行目:ex-cheb-x4plus1 である。$X^4+1$ は $\mathbb{Q}$ 上既約だが、Galois 群 $(\mathbb{Z}/2)^2$ は 4 個の根を 1 つの巡回で置換する元(位数 $4$ の元)を含まない。

補足

自然密度

$\lim_{x\to\infty}\#\{\mathfrak{p}\in M\mid N\mathfrak{p}\le x\}/\#\{\mathfrak{p}\mid N\mathfrak{p}\le x\}$ を $M$ の 自然密度 という。自然密度が存在すれば Dirichlet 密度も存在して一致するが、逆は一般には成り立たない(この記事では証明しない。Neu99 Chapter VII, §13, p. 543)。射類に属する素イデアルについて自然密度の形の結果(素イデアル定理の類ごとの版)を得るには、$L(s,\chi)$ が直線 $\operatorname{Re}s=1$ の上で $0$ にならないことが必要になり、この記事の議論より深い解析を使う(CF67 Chapter VIII, Theorem 3, p. 213、Theorem 4 とその前の説明, p. 214)。

応用の例

Chebotarev の密度定理は、「指定した Frobenius 類をもつ素イデアルが無限個ある」という存在定理として使われることが多い。たとえば円分体のイデアル類群の構造を調べる Kolyvagin の方法では、合成体の Galois 群の指定した元を Frobenius 類にもつ素イデアルを選ぶのにこの定理を使う(Lan90 Appendix by K. Rubin, §3, Theorem 3.1 とその証明, pp. 401–403。Chebotarev の定理を使うのは証明の Step IV, p. 403)。cor-cheb-bauer は、Galois 拡大が完全分解する素イデアルの集合で決まることを述べており、類体論ではアーベル拡大がノルム群で決まることの素イデアル版にあたる。

文献

Dirichlet 密度の定義と lem-cheb-primes は Neu99 Chapter VII, Definition (13.1), p. 542 と p. 543、thm-cheb-dirichlet は同 Theorem (13.2), p. 543 と Lemma (13.3), p. 544 にある。thm-cheb-main と、巡回部分群の固定体に移る証明は同 Theorem (13.4), pp. 545–546 にある。prop-cheb-split は同 Corollary (13.6), p. 547 と CF67 Chapter VIII, pp. 215–216 の議論に、cor-cheb-bauer は同 Proposition (13.9) と Corollary (13.10), p. 548 にあたる(Neukirch はどちらも主定理から導いている)。主定理の主張は CF67 Chapter VIII, §3, p. 227 と NSW20 Theorem (9.1.3), p. 524 にもある。

関連項目

参考文献

[1]
Jürgen Neukirch (translated by Norbert Schappacher), Algebraic Number Theory, Springer, Grundlehren der mathematischen Wissenschaften 322, 1999, Chapter VII, §13:Definition (13.1), p. 542、p. 543、Theorem (13.2), p. 543、Lemma (13.3), p. 544、Theorem (13.4), pp. 545–546、Corollary (13.6), p. 547、Proposition (13.9) と Corollary (13.10), p. 548
[2]
J. W. S. Cassels, A. Fröhlich (eds.), Algebraic Number Theory, Academic Press, 1967, Chapter VIII(H. Heilbronn, Zeta-Functions and L-Functions):Theorem 1, p. 210、Theorem 2, p. 212、Theorem 3, p. 213、Theorem 4, p. 214、pp. 215–216、§3, p. 227

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