閉曲面の分類定理(classification of closed surfaces)とは、コンパクトで連結な境界のない 2 次元位相多様体(閉曲面)が、球面 $S^2$、$n$ 個のトーラスの連結和 $T_n$、$m$ 個の射影平面の連結和 $P_m$ のどれかちょうど 1 つと同相であるという定理である。閉曲面は三角形分割から多角形の辺を対にして貼った空間として表され、その記号列は切り貼りの操作で標準形に変形できる。結果は記号列の Euler 標数 $\chi=V-E+F$ と向きの型で決まり、向き付け可能なら $T_n$($\chi=2-2n$)、不可能なら $P_m$($\chi=2-m$)である。標準形どうしは基本群のアーベル化で区別される。
閉曲面の分類定理(classification of closed surfaces)は、コンパクトで連結な、境界のない 2 次元の位相多様体(閉曲面)が、球面 $S^2$、$n$ 個のトーラスの連結和 $T_n$($n\geq1$)、$m$ 個の射影平面の連結和 $P_m$($m\geq1$)のどれかちょうど 1 つと同相である、という定理である。閉曲面の位相的な形は、向き付け可能かどうかと Euler 標数の 2 つの情報だけで決まることになる。証明は 3 つの部分からなる。(1) 閉曲面は三角形分割でき、多角形の辺を対にして貼り合わせた空間として表せる。(2) 辺の貼り合わせ方を表す記号列(たとえばトーラスの $aba^{-1}b^{-1}$)を、空間を変えない「切り貼り」の操作で標準形に変形する。(3) 標準形の曲面どうしが同相でないことを、基本群のアーベル化(1 次ホモロジー群)で確かめる。この記事では (2) と、(1) のうち多角形の組から 1 つの多角形への帰着、(3) のアーベル化の計算を記事の中で行い、三角形分割の存在(Radó の定理)、三角形分割から辺が対になること、標準形の曲面の基本群の表示は所在を示して引用する。(2) の変形は、Euler 標数と「向きの型」から結果を予言できる具体的な手順になっている。
2 次元の位相多様体(Hausdorff で第 2 可算、各点が $\mathbb{R}^2$ と同相な開近傍をもつ空間。多様体の記事の定義「位相多様体」)で、コンパクトかつ連結なものを閉曲面(closed surface)という。
閉曲面の各点は $\mathbb{R}^2$ と同相な開近傍をもつので、閉円板のような「境界のある曲面」は閉曲面ではない。球面 $S^2$ やトーラス $S^1\times S^1$ は閉曲面である。
閉曲面を具体的に作るには、多角形の辺を対にして貼り合わせる。
平面の凸多角形 $P$ の頂点を反時計回りに $p_0,p_1,\dots,p_{n-1}$、$p_n=p_0$ とする($n\geq3$)。各辺 $p_{k-1}p_k$ にラベル $a_{i_k}$ と符号 $\varepsilon_k\in\{+1,-1\}$ を割り当て、記号列
$$
w=a_{i_1}^{\varepsilon_1}a_{i_2}^{\varepsilon_2}\cdots a_{i_n}^{\varepsilon_n}
$$
で表す。$\varepsilon_k=+1$ は辺に $p_{k-1}$ から $p_k$ への向きを、$\varepsilon_k=-1$ は逆の向きを与えることを意味する($+1$ の指数は省略して書く)。同じラベルをもつ 2 辺を、向きを合わせた 1 次写像で同一視して得られる商空間を $X_w$ と書き、$w$ による貼り合わせ空間という(商空間(位相))。いくつかの多角形 $P_1,\dots,P_r$ と記号列 $w_1,\dots,w_r$ の組についても同様に定める。各ラベルが記号列の組全体にちょうど 2 回現れるとき、この記号列(の組)を固有(proper)であるという。1 つの多角形の固有な記号列 $w$ は、各ラベルが指数 $+1$ と $-1$ で 1 回ずつ現れるときトーラス型、そうでないとき(同じ指数で 2 回現れるラベルがあるとき)射影型であるという。
記号列は、どの頂点から読み始めるか(巡回置換)、どのラベル名を使うか、裏返すか(逆順にして指数をすべて反転する)を変えても、同じ空間を表す。
次の空間を、記号列で定める。
$$
\begin{array}{ll}
S^2:\ aa^{-1}bb^{-1}, & P_1=P^2:\ abab,\\[2pt]
T_n:\ a_1b_1a_1^{-1}b_1^{-1}\,a_2b_2a_2^{-1}b_2^{-1}\cdots a_nb_na_n^{-1}b_n^{-1}\ (n\geq1), & P_m:\ a_1a_1\,a_2a_2\cdots a_ma_m\ (m\geq2).
\end{array}
$$
$aa^{-1}bb^{-1}$ の貼り合わせ空間は球面 $S^2$ と同相であり(Mun00 §74 の Example 2、p. 448)、$abab$ の貼り合わせ空間は、正方形の境界の点を中心について対称な点と同一視した空間なので、閉円板の境界の対蹠点を同一視した実射影平面 $P^2$ と同相である(射影平面の記事の命題「閉円板の境界の対蹠点を貼った空間」)。$T_1$ は正方形の向かい合う辺を貼ったトーラスである(商空間(位相)の記事の例「正方形の対辺を貼り合わせた空間」)。$T_n$ は $n$ 個のトーラスの、$P_m$ は $m$ 個の射影平面の連結和に同相である(Mun00 §74、pp. 451–453。この記事では証明しない)。$S^2$ と $T_n$ を表す記号列はトーラス型、$P_m$ を表す記号列は射影型である。
1 つの多角形の固有な記号列 $w$ について、$X_w$ は閉曲面である。
要点:$X_w$ は多角形の連続像なのでコンパクトかつ連結であり、Hausdorff である(Mun00 Theorem 74.1、p. 450)。局所的に $\mathbb{R}^2$ と同相であることは、辺の内点では 2 つの半円板が直径で貼り合わさり、頂点では頂点の類に属する角たちが扇形として環状に貼り合わさることからわかる。
$P$ を正 $n$ 角形にとり、辺の長さをすべて等しくしておくと、辺の同一視は等長写像である。$P$ の内部の点は $X_w$ でも $\mathbb{R}^2$ と同相な近傍をもつ。辺 $e$ の内点 $x$ は、同じラベルのもう 1 つの辺 $e'$($e'\neq e$)の点 $x'$ とだけ同一視される。$x$、$x'$ を中心とする小さな半円板($P$ の中の半径 $r$ の部分)は、直径の部分で等長に貼り合わされ、円板と同相な開近傍を作る。
頂点の類 $v$ を考える。$v$ に写る $P$ の角を $c_1,\dots,c_k$ とする。各角には 2 つの辺の端点が集まり、各辺の端点は、同じラベルのもう 1 つの辺の対応する端点とちょうど 1 つずつ同一視される。角を点、この同一視を線とするグラフは各点の次数が 2 なので円環の和であり、$v$ の類は 1 つの円環(連結成分)に対応する。番号を付け直して、$c_i$ と $c_{i+1}$($c_{k+1}=c_1$)が辺の端点で同一視されるとしてよい。辺の長さの半分より小さい $r$ をとり、角 $c_i$ を中心とする半径 $r$ の扇形($P$ との共通部分)を $S_i$ とすると、$S_i$ と $S_{i+1}$ は半径の部分で等長に貼り合わされ、$S_1,\dots,S_k$ が環状に貼り合わさった空間は、扇形を中心角の比で並べ直すことで円板と同相になる。$S_1\cup\cdots\cup S_k$ から $c_i$ と反対側の弧を除いた部分は、同一視で閉じた $P$ の開集合の和なので、$v$ の開近傍を与える。
こうして $X_w$ の各点は $\mathbb{R}^2$ と同相な開近傍をもつ。コンパクトなのでそのような近傍の有限個で覆え、各近傍は第 2 可算なので $X_w$ も第 2 可算である。$\square$
逆に、閉曲面はいつもこの形に表せる、というのが分類定理の前半の要点である。固有でない記号列(あるラベルが 3 回以上現れる)では、$X_w$ は曲面とは限らない(ex-cs-counterexamples)。
閉曲面は、$S^2$、$T_n$($n\geq1$)、$P_m$($m\geq1$)のどれか 1 つと同相である。これらの曲面は互いに同相でない。
証明は下の 4 段からなる。段 1 と段 2 の前半はこの記事では証明しない。
| 段 | 内容 | この記事での扱い |
|---|---|---|
| 1 | 閉曲面は三角形分割できる | 証明しない(Radóの定理の記事の定理「Radóの定理」) |
| 2 | 三角形分割された閉曲面は、三角形の辺を対にして貼り合わせた空間であり、1 つの多角形の固有な記号列の空間 $X_w$ に同相である | 前半(辺がちょうど 2 つの三角形に共有されることと、頂点の同一視が辺の貼り合わせから決まること)は証明しない(Mun00 Theorem 78.1、p. 472)。後半は prf-cs-main で証明する |
| 3 | 固有な記号列は、基本操作によって $S^2$、$P_1$、$P_m$、$T_n$ の記号列のどれかに変形できる | thm-cs-normal-form で証明する |
| 4 | $S^2$、$T_n$、$P_m$ は互いに同相でない | cor-cs-distinct で証明する(基本群の表示は引用) |
段 3 は、さらに thm-cs-recognition の形で、Euler 標数と記号列の型から結果の曲面を決める手順になる。
以下、$[y]$ は記号列の一部(空でもよい)を表し、$y^{-1}$ は $y$ を逆順にして指数をすべて反転したものとする。記号列の組に次の操作を施しても、固有な組は固有な組に移る。
記号列の組 $w_1,\dots,w_r$ に対する次の操作を基本操作という。$c$ は組のどこにも現れないラベルとする。
(i) 切る:$w_i=y_0y_1$($y_0$、$y_1$ の長さはともに $2$ 以上)を、2 つの記号列 $y_0c^{-1}$ と $cy_1$ に替える。
(ii) 貼る:2 つの記号列 $y_0c^{-1}$ と $cy_1$($c$ はほかに現れない)を、1 つの記号列 $y_0y_1$ に替える。
(iii) 付け替え:あるラベルをすべて新しいラベルに替える。また、あるラベルのすべての指数を反転する。
(iv) 巡回置換:$w_i=y_0y_1$ を $y_1y_0$ に替える。
(v) 裏返し:$w_i$ を $w_i^{-1}$ に替える。
(vi) 消去:$w_i=y_0aa^{-1}y_1$($a$ はほかに現れず、$y_0$、$y_1$ の長さはともに $2$ 以上)を $y_0y_1$ に替える。
基本操作とその逆の操作を有限回施して移り合う記号列の組を同値といい、$w\sim w'$ と書く。これは同値関係である。(i) と (ii) は互いに逆であり、(iii)(iv)(v) の逆は同じ種類の操作である。(vi) の逆(隣り合う $aa^{-1}$ を挿入する操作)は (i)〜(vi) の合成では得られない。(i)〜(vi) はどれも、辺の総数から多角形の数の 2 倍を引いた値を増やさないからである。
同値な記号列の組の貼り合わせ空間は同相である。
(iii)(iv)(v) は辺の同一視そのものを変えない((iv) は頂点の番号の付け直し、(v) は多角形を裏返すことにあたる)。
(i)(ii):凸多角形 $P$ を対角線 $p_0p_k$ で 2 つの凸多角形 $Q_1$、$Q_2$ に分ける。長さの条件は $Q_1$、$Q_2$ がどちらも 3 つ以上の頂点をもつことを保証する。$Q_1$ と $Q_2$ を離して置いた非交和から $P$ への自然な写像は、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全射なので商写像であり、$P$ は $Q_1\sqcup Q_2$ の 2 つの対角線の写しを貼り合わせた空間である。商写像の合成は商写像なので、$P$ の辺を $y_0y_1$ に従って貼った空間は、$Q_1\sqcup Q_2$ の辺を $y_0c^{-1}$、$cy_1$ に従って一度に貼った空間と同相である。多角形の位置や形を取り替えてよいことは、凸多角形の境界の間の同相写像で各辺の上で 1 次のものが、内部の 1 点からの放射状の延長で多角形全体の同相写像に延びることからわかる。(ii) は (i) の逆である。
(vi):$y_0aa^{-1}y_1$ を切って $y_0ab$ と $b^{-1}a^{-1}y_1$ にする($b$ は新しいラベル)。1 つ目の多角形の隣り合う 2 辺 $a$、$b$ がなす折れ線は、2 つ目の多角形の折れ線 $b^{-1}a^{-1}$ と、各辺の上で 1 次の写像で貼り合わされ、ほかの辺とは貼られない。そこで各多角形を、この折れ線を 1 本の辺 $c$ に(中間の頂点を辺の中点に)写す同相写像で取り替えると、貼り合わせは $c$ どうしの 1 次の同一視になり、記号列は $y_0c$ と $c^{-1}y_1$ になる。これを (ii) で貼れば $y_0y_1$ である。$\square$
この命題は Mun00 Theorem 76.1(pp. 459–460)と、それに続く基本操作の説明(pp. 460–461)による。
基本操作の組み合わせで、次の 3 つの変形が得られる。1 つ目は同じ指数で現れるラベルの対を前に集め、2 つ目は互いに交差する逆向きのラベルの 2 対を交換子 $aba^{-1}b^{-1}$ の形にまとめ、3 つ目は交換子の対を射影型の対に取り替える。
固有な記号列について
$$
[y_0]\,a\,[y_1]\,a\,[y_2]\ \sim\ aa\,[y_0y_1^{-1}y_2]
$$
である。
要点:場合に分け、それぞれ 1 回の「切る」と 1 回の「貼る」(と付け替え・巡回置換・裏返し)で変形する。
(a) $y_0$ が空の場合。$y_1$ が空なら示すことはない。$y_2$ が空で $y_1$ が空でないなら、$ay_1a$ を裏返して $a^{-1}y_1^{-1}a^{-1}$、$a$ の指数を反転して $ay_1^{-1}a$、巡回置換して $aay_1^{-1}$ である。$y_1$、$y_2$ がともに空でないなら$$ay_1ay_2\ \xrightarrow{\text{切る}}\ ay_1c^{-1},\ cay_2\ \xrightarrow{\text{裏返し・巡回置換}}\ cy_1^{-1}a^{-1},\ ay_2c\ \xrightarrow{\text{貼る}}\ cy_1^{-1}y_2c\ \xrightarrow{\text{付け替え・巡回置換}}\ aay_1^{-1}y_2$$である(切った 2 つの部分 $ay_1$、$ay_2$ の長さは 2 以上)。
(b) $y_0$ が空でない場合。$y_1$、$y_2$ がともに空なら巡回置換で $aay_0$ である。$y_2$ が空で $y_1$ が空でないなら$$y_0ay_1a\ \xrightarrow{\text{切る}}\ y_0ac^{-1},\ cy_1a\ \xrightarrow{\text{裏返し・巡回置換}}\ y_0^{-1}ca^{-1},\ acy_1\ \xrightarrow{\text{貼る}}\ y_0^{-1}ccy_1$$であり、これを巡回置換して $ccy_1y_0^{-1}$、裏返して $y_0y_1^{-1}c^{-1}c^{-1}$、付け替えと巡回置換で $aay_0y_1^{-1}$ を得る。$y_2$ が空でないなら$$y_0ay_1ay_2\ \xrightarrow{\text{切る}}\ y_0ay_1c^{-1},\ cay_2\ \xrightarrow{\text{裏返し・巡回置換}}\ y_0^{-1}cy_1^{-1}a^{-1},\ ay_2c\ \xrightarrow{\text{貼る}}\ y_0^{-1}cy_1^{-1}y_2c$$である。巡回置換すると $c\,[y_1^{-1}y_2]\,c\,[y_0^{-1}]$ で、括弧の中はどちらも空でないので、(a) により $cc\,y_2^{-1}y_1y_0^{-1}$ に同値である。これを裏返し、付け替えと巡回置換をすると $aay_0y_1^{-1}y_2$ になる。$\square$
固有な記号列について
$$
w_0\,[y_1]\,a\,[y_2]\,b\,[y_3]\,a^{-1}\,[y_4]\,b^{-1}\,[y_5]\ \sim\ w_0\,aba^{-1}b^{-1}\,[y_1y_4y_3y_2y_5]
$$
である。
要点:1 回ずつの「切る」と「貼る」からなる変形を 4 回行う。どの「切る」でも、切った 2 つの部分はそれぞれ $a^{\pm1}$、$b^{\pm1}$ のうち少なくとも 2 つの辺を含むので、長さの条件はいつもみたされる($w_0$ や $y_i$ が空でもよい)。
記号列を巡回的に読み、切る 2 つの部分を括弧で示す。
第 1:$[y_1ay_2by_3]\,[a^{-1}y_4b^{-1}y_5w_0]$ で切って $y_1ay_2by_3c^{-1}$ と $ca^{-1}y_4b^{-1}y_5w_0$ にし、$a$ で貼ると $y_2by_3c^{-1}y_1y_4b^{-1}y_5w_0c$ になる。巡回置換と付け替え($c\to a$)で $w_0\,a\,[y_2]\,b\,[y_3]\,a^{-1}\,[Y]\,b^{-1}\,[y_5]$($Y:=y_1y_4$)を得る。
第 2:$[y_2by_3a^{-1}]\,[Yb^{-1}y_5w_0a]$ で切って $y_2by_3a^{-1}c^{-1}$ と $cYb^{-1}y_5w_0a$ にし、$b$ で貼ると $y_3a^{-1}c^{-1}y_2y_5w_0acY$ になる。巡回置換と付け替え($c\to b$)で $w_0\,ab\,[X]\,a^{-1}b^{-1}\,[Z]$($X:=Yy_3$、$Z:=y_2y_5$)を得る。
第 3:$[ab]\,[Xa^{-1}b^{-1}Zw_0]$ で切って $abc^{-1}$ と $cXa^{-1}b^{-1}Zw_0$ にし、$a$ で貼ると $bc^{-1}b^{-1}Zw_0cX$ になる。巡回置換と付け替え($c\to a$)で $w_0\,a\,[X]\,ba^{-1}b^{-1}\,[Z]$ を得る。
第 4:$[Xba^{-1}]\,[b^{-1}Zw_0a]$ で切って $Xba^{-1}c^{-1}$ と $cb^{-1}Zw_0a$ にし、$b$ で貼ると $a^{-1}c^{-1}XZw_0ac$ になる。巡回置換と付け替え($c\to b$)で $w_0\,aba^{-1}b^{-1}\,[XZ]$ を得る。$XZ=y_1y_4y_3y_2y_5$ である。$\square$
固有な記号列について
$$
w_0\,cc\,aba^{-1}b^{-1}\,w_1\ \sim\ w_0\,aabbcc\,w_1
$$
である。
lem-cs-crosscap を「$[y_0]a[y_1]a[y_2]\sim aa[y_0y_1^{-1}y_2]$」の形で 3 回使う。$aba^{-1}b^{-1}=(ab)(ba)^{-1}$ に注意すると、巡回置換により
$$
w\sim cc\,[ab][ba]^{-1}[w_1w_0]\sim[ab]\,c\,[ba]\,c\,[w_1w_0]
$$
である(lem-cs-crosscap を右から左へ、$y_0=ab$、$y_1=ba$、$y_2=w_1w_0$ で使った)。これを $[a]\,b\,[c]\,b\,[acw_1w_0]$ と読んで lem-cs-crosscap を使うと $bb\,[ac^{-1}acw_1w_0]$、さらに $[bb]\,a\,[c^{-1}]\,a\,[cw_1w_0]$ と読んで使うと $aa\,[bbccw_1w_0]$ になる。巡回置換で $w_0aabbccw_1$ を得る。$\square$
これらを組み合わせて、次の標準形の定理を得る。これが記事の中心の定理である。
1 つの多角形の固有な記号列 $w$ は、次のどれか 1 つに同値である。
$$
\text{(1) }aa^{-1}bb^{-1},\qquad\text{(2) }abab,\qquad\text{(3) }a_1a_1a_2a_2\cdots a_ma_m\ (m\geq2),\qquad\text{(4) }a_1b_1a_1^{-1}b_1^{-1}\cdots a_nb_na_n^{-1}b_n^{-1}\ (n\geq1).
$$
さらに、$w$ がトーラス型なら (1) か (4) に、射影型なら (2) か (3) に同値である。
$w$ の長さ(辺の数)を $2\ell$ とする。固有なので長さは偶数で、多角形なので $2\ell\geq4$ である。3 つの道具を準備する。
道具 A(射影型の対を前へ).$w$ が射影型なら、同じ長さの $(a_1a_1)\cdots(a_ka_k)\,w'$($k\geq1$、$w'$ はトーラス型か空)に同値である。実際、同じ指数で 2 回現れるラベル $a$ について、巡回置換で $w=[y_0]a[y_1]a[y_2]$ と書けば lem-cs-crosscap により $w\sim aa\,w_1$ である。$w_1$ にまだ同じ指数の対 $b$ があれば、$aa\,w_1=[aaz_0]\,b\,[z_1]\,b\,[z_2]$ と書いて再び使い、$bb\,aa\,z_0z_1^{-1}z_2$ を得る。前に集めた対は $y_0$ の中にあって崩れない。これを繰り返せばよい。
道具 B(消去).長さが $6$ 以上で、隣り合う $xx^{-1}$(または $x^{-1}x$)を含むなら、巡回置換で $y_0xx^{-1}y_1$($y_0$、$y_1$ の長さは $2$ 以上)の形にでき、消去で長さが $2$ 短い記号列に同値になる。消えるのはトーラス型のラベルだけなので、型は変わらない。
道具 C(交換子のとり出し).$w=w_0w_1$ で、$w_1$ が空でないトーラス型の部分($w_1$ に現れるラベルは $w_0$ に現れない)で、$w_1$ の中で同じラベルの 2 つが隣り合わないとする。$w_1$ の中で、2 つの現れ方が最も近いラベル $a$ をとる(付け替えで $a$ が先、$a^{-1}$ が後としてよい)。2 つは隣り合わないので間にラベル $b$ がある(付け替えで $b$ の指数を $+1$ としてよい)。$b^{-1}$ は $a$ と $a^{-1}$ の間にはない(あれば $b$ の方が近い)。$b^{-1}$ が $a^{-1}$ の後にあれば $w_1=[y_1]a[y_2]b[y_3]a^{-1}[y_4]b^{-1}[y_5]$ であり、$a$ の前にあれば $b$ の指数を反転し、名前 $a$ と $b$ を入れ替えれば同じ形になる。lem-cs-handle により $w\sim w_0\,aba^{-1}b^{-1}\,w_2$($w_2$ はトーラス型か空)である。
トーラス型の場合.長さについての帰納法で示す。長さ $4$ のトーラス型の記号列は、巡回置換と付け替えにより $aa^{-1}bb^{-1}$($a$ の 2 つが隣り合う)か $aba^{-1}b^{-1}$(交差する)のどちらかであり、(1) か (4) である。長さが $6$ 以上のとき、$w\sim h\,w_1$($h$ は交換子 $aba^{-1}b^{-1}$ の形の部分の積、$w_1$ はトーラス型)の形を、$h$ が空、$w_1=w$ から始めて次のように変えていく。$w_1$ が空なら (4) である。$w_1$ が隣り合う $xx^{-1}$ を含むなら、道具 B で長さが短くなり、帰納法の仮定から (1) か (4) に同値である。そうでなければ道具 C で $h$ に交換子を 1 つ加えられ、$w_1$ は 4 だけ短くなる。この繰り返しは有限回で終わる。
射影型の場合.同じく長さについての帰納法で示す。道具 A で $w\sim(a_1a_1)\cdots(a_ka_k)w'$ とする。長さ $4$ なら、$w'$ が空のとき $aabb$ で (3) であり、$w'$ が $bb^{-1}$ のとき $aabb^{-1}=aa[y_1^{-1}y_2]$($y_1=b^{-1}$、$y_2=b^{-1}$)と読んで lem-cs-crosscap を逆に使うと $ab^{-1}ab^{-1}$、付け替えで $abab$ となり (2) である($w'=b^{-1}b$ でも同様)。長さが $6$ 以上のとき、$w'$ が空なら (3) である。$w'$ が隣り合う $xx^{-1}$ を含むなら、道具 B と帰納法の仮定による。そうでなければ道具 C で $w\sim(a_1a_1)\cdots(a_ka_k)\,aba^{-1}b^{-1}\,w_2$ となり、lem-cs-torus-projective を $c=a_k$ で使うと $(a_1a_1)\cdots(a_{k-1}a_{k-1})\,aabb\,a_ka_k\,w_2$、すなわち射影型の対が 2 つ増えてトーラス型の部分が 4 だけ短くなる。これを繰り返すと有限回で (3) に達する。$\square$
prop-cs-operations と合わせると、1 つの多角形の固有な記号列の空間 $X_w$ は、$S^2$、$P_1$、$P_m$($m\geq2$)、$T_n$($n\geq1$)のどれかと同相である。これは Mun00 Theorem 77.5(p. 469)の内容であり、上の 3 つの補題は同書 Lemma 77.1(p. 463)、Lemma 77.3(p. 465)、Lemma 77.4(p. 468)にあたる。
thm-cs-normal-form の変形を実際に行わなくても、結果の標準形は記号列から直接読みとれる。
多角形 $F$ 個の固有な記号列の組について、ラベルの数を $E$、多角形の頂点の同一視の類の数を $V$ とし、
$$
\chi:=V-E+F
$$
をこの組の Euler 標数という。頂点の類は、同じラベルの 2 辺の始点どうし・終点どうしを同一視して生成される同値関係の類である。
$X_w$ は $V$ 個の頂点、$E$ 本の辺、$F$ 枚の面からなる胞体分割をもつので、$\chi$ は Euler標数の記事の定義「胞体の個数による Euler 標数」の $X_w$ の Euler 標数にほかならない。
同値な固有な記号列の組の Euler 標数は等しい。
(iii)(iv)(v) は辺の同一視を変えないので $V,E,F$ は変わらない。
(i) 切る:$P$ を対角線 $p_0p_k$ で切ると、$p_0$、$p_k$ はそれぞれ 2 つの多角形の頂点として 2 つずつの写しになり、新しいラベル $c$ の同一視がちょうどその写しどうしを同一視する。ほかの頂点と同一視は元のままなので、頂点の類は元の類と一対一に対応し $V$ は変わらない。$E$ と $F$ は $1$ ずつ増えるので $\chi$ は変わらない。(ii) はその逆である。
(vi) 消去:$y_0aa^{-1}y_1$ で、$a$ の辺を $u\to v$、$a^{-1}$ の辺を $v\leftarrow x$(向きは $x$ から $v$)とする頂点 $u,v,x$ をとる。$a$ の同一視は $u$ と $x$、$v$ と $v$ を同一視する。$v$ はこの 2 辺の端点でしかないので、$\{v\}$ は 1 点だけの頂点の類であり、$u$ と $x$ は同じ類に属する。消去後の多角形では $v$ がなくなり、$u$ と $x$ は 1 つの頂点になる。ほかの同一視は変わらないので、$V$ はちょうど $1$ 減る。$E$ は $1$ 減り、$F$ は変わらないので、$\chi$ は変わらない。$\square$
$w$ を 1 つの多角形の固有な記号列とする。
標準形の Euler 標数を数える。$aa^{-1}bb^{-1}$ では、正方形の頂点 $p_0,p_1,p_2,p_3$ について $a$ の同一視が $p_0$ と $p_2$ を、$b$ の同一視が $p_2$ と $p_0$ を同一視し、$p_1$、$p_3$ はそれぞれ単独なので $V=3$、$\chi=3-2+1=2$ である。$abab$ では $\{p_0,p_2\}$、$\{p_1,p_3\}$ の 2 類で $\chi=2-2+1=1$ である。$a_1a_1\cdots a_ma_m$ と $T_n$ の記号列では、すべての頂点が 1 点に同一視されるので(隣り合う頂点が順に同一視されることを確かめればよい)、$\chi=1-m+1=2-m$、$\chi=1-2n+1=2-2n$ である。
thm-cs-normal-form により、トーラス型の $w$ は (1) か (4) に、射影型の $w$ は (2) か (3) に同値であり、prop-cs-euler-invariant により $\chi$ は変わらない。トーラス型の標準形の $\chi$ は $2,0,-2,\dots$ で互いに異なり、射影型の標準形の $\chi$ は $1,0,-1,\dots$ で互いに異なるので、型と $\chi$ から標準形が 1 つに決まる。prop-cs-operations により $X_w$ はその標準形の空間と同相である。$\square$
閉曲面については、記号列がトーラス型であることは曲面が向き付け可能であることにあたる。$T_n$ は向き付け可能で、$P_m$ は向き付け可能でない(連結和の記事の例「閉曲面」。$P_m$ は Möbius の帯を含む:射影平面の記事の命題「実射影平面は Möbius の帯を含む」)。thm-cs-recognition は、閉曲面の同相の類は、向き付け可能かどうかと Euler 標数で決まると言い換えられる。
次の表は、いくつかの記号列について $V$、$E$、$\chi$ と型を数え、thm-cs-recognition で曲面を決めたものである。
| 記号列 | $V$ | $E$ | $\chi$ | 型 | 曲面 |
|---|---|---|---|---|---|
| $aba^{-1}b$ | 1 | 2 | 0 | 射影型 | $P_2$(Klein の壺) |
| $aabcb^{-1}c^{-1}$ | 1 | 3 | $-1$ | 射影型 | $P_3$ |
| $abacb^{-1}c^{-1}$ | 1 | 3 | $-1$ | 射影型 | $P_3$ |
| $abca^{-1}cb$ | 2 | 3 | 0 | 射影型 | $P_2$ |
| $acadbcb^{-1}d$ | 1 | 4 | $-2$ | 射影型 | $P_4$ |
| $abcdad^{-1}cb^{-1}$ | 2 | 4 | $-1$ | 射影型 | $P_3$ |
| $abcdabdc$ | 2 | 4 | $-1$ | 射影型 | $P_3$ |
| $abcdabcd$ | 4 | 4 | 1 | 射影型 | $P_1=P^2$ |
| $abcda^{-1}b^{-1}c^{-1}d^{-1}$ | 1 | 4 | $-2$ | トーラス型 | $T_2$ |
| $abcda^{-1}c^{-1}b^{-1}d^{-1}$ | 3 | 4 | 0 | トーラス型 | $T_1$ |
たとえば $aba^{-1}b$ は、$b$ が同じ指数で 2 回現れるので射影型であり、$[a]\,b\,[a^{-1}]\,b\,[\ ]$ と読んで lem-cs-crosscap を使うと $bb\,aa$ に同値で、確かに $P_2$ である。この $aba^{-1}b$ の空間を Klein の壺という。$aabcb^{-1}c^{-1}$ は射影平面とトーラスの連結和を表し、lem-cs-torus-projective により $bbccaa$、すなわち $P_3$ に同値である。$abcdad^{-1}cb^{-1}$ のように、頂点がすべて 1 点に同一視されるとは限らないことに注意する。
同じ議論で、トーラスと射影平面が混ざった連結和もリストのどれかになる。
$n\geq1$ について、記号列 $a_1b_1a_1^{-1}b_1^{-1}\cdots a_nb_na_n^{-1}b_n^{-1}\,cc$ の空間($T_n$ と $P^2$ の連結和)は $P_{2n+1}$ と同相である。
巡回置換で $cc$ を先頭に移し、lem-cs-torus-projective を $cc$ とその直後の交換子に使うと、交換子が 1 つ減って射影型の対が 2 つ増え、射影型の対の並びの最後はまた $cc$ の形になる。これを $n$ 回繰り返すと、$2n+1$ 個の射影型の対だけが残り、付け替えで (3) の形になる。$\square$
標準形の曲面を区別するには、基本群のアーベル化(1 次ホモロジー群)を比べる。基本群の表示は次のとおりである。
基本群とそのアーベル化(アーベル化)は次のとおりである。
$$
\begin{array}{lll}
S^2: & \pi_1=1, & \pi_1^{\mathrm{ab}}=0,\\[2pt]
T_n: & \pi_1\cong\langle a_1,b_1,\dots,a_n,b_n\mid a_1b_1a_1^{-1}b_1^{-1}\cdots a_nb_na_n^{-1}b_n^{-1}\rangle, & \pi_1^{\mathrm{ab}}\cong\mathbb{Z}^{2n},\\[2pt]
P_m: & \pi_1\cong\langle a_1,\dots,a_m\mid a_1^2a_2^2\cdots a_m^2\rangle, & \pi_1^{\mathrm{ab}}\cong\mathbb{Z}^{m-1}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}.
\end{array}
$$
基本群の表示はこの記事では証明しない($S^2$ は 単連結空間の記事の命題「球面の単連結性」、$T_n$ と $P_m$($m\geq2$)は Mun00 Theorem 74.3(p. 452)・74.4(p. 453)、$P_1$ は 基本群の記事の例「実射影空間とレンズ空間」。$T_n$ は Van Kampenの定理の記事の例「トーラスと閉曲面」も参照)。アーベル化は以下で計算する。
アーベル化の記事の命題「表示からのアーベル化の計算」により、生成元の数を $r$ とすると、アーベル化は $\mathbb{Z}^r$ を関係子の各生成元の指数の和を並べたベクトルが生成する部分群 $L$ で割ったものである。$T_n$ の関係子では各生成元の指数の和が $0$ なので $L=0$、$\pi_1^{\mathrm{ab}}\cong\mathbb{Z}^{2n}$ である。$P_m$ の関係子のベクトルは $(2,2,\dots,2)$ なので、$\mathbb{Z}^m$ の基底を $e_1,\dots,e_{m-1},s$($s:=e_1+\cdots+e_m$)に取り替えると $L=2\mathbb{Z}s$ であり、$\pi_1^{\mathrm{ab}}\cong\mathbb{Z}^{m-1}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である($e_1,\dots,e_{m-1},s$ が基底であることは、$e_m=s-e_1-\cdots-e_{m-1}$ からわかる)。$\square$
$S^2$、$T_1,T_2,\dots$、$P_1,P_2,\dots$ のうち、異なる 2 つは同相でない。
同相な空間の基本群は同型であり(基本群の記事の命題「誘導準同型の関手性」)、同型な群のアーベル化は同型である。有限生成アーベル群 $A=\mathbb{Z}^r\oplus T$($T$ は有限群)について、位数が有限の元全体は $T$ であり、$A/T\cong\mathbb{Z}^r$ の $r$ は $\lvert(A/T)/2(A/T)\rvert=2^r$ で決まる。prop-cs-homology から、$S^2$ は $r=0$、$T=0$、$T_n$ は $r=2n$、$T=0$、$P_m$ は $r=m-1$、$T\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である。$S^2$ と $T_n$($n\geq1$)は $r$ で、$T_n$ どうしは $r=2n$ で、$P_m$ どうしは $r=m-1$ で区別され、$P_m$ は $T\neq0$ によって $S^2$、$T_n$ と区別される。$\square$
トーラス型の標準形どうし、射影型の標準形どうしは Euler 標数($2-2n$、$2-m$)でも区別できる。しかし $T_n$ と $P_{2n}$ は Euler 標数がともに $2-2n$ なので、向き付け可能性かアーベル化の捩れで区別する必要がある。
$X$ を閉曲面とする。
段 1.Radóの定理の記事の定理「Radóの定理」により、$X$ は三角形分割をもつ。
段 2.三角形分割された閉曲面では、各辺がちょうど 2 つの三角形に共有され、さらに頂点 $v$ を共有する 2 つの三角形は、$v$ を頂点とし隣どうしが辺を共有する三角形の列で結ばれる(頂点の同一視は辺の貼り合わせから決まる)ので、$X$ は互いに交わらない有限個の三角形の辺を対にして(各辺の上で 1 次の写像で)貼り合わせた空間と同相である(Mun00 Theorem 78.1、p. 472。この記事では証明しない)。つまり $X$ は三角形 $N$ 個の固有な記号列の組の貼り合わせ空間である。2 つの多角形に同じラベルが現れる限り、必要なら一方を裏返して「貼る」操作を行えば、多角形の数は 1 つずつ減る。どの 2 つの多角形にも共通のラベルがなくなったとき、多角形が 2 つ以上残っていれば、貼り合わせ空間は各多角形の像を開かつ閉な部分としてもち連結でない。$X$ は連結なので、最後には 1 つの多角形の固有な記号列 $w$ が残り、prop-cs-operations により $X\cong X_w$ である(Mun00 Theorem 78.2、p. 475)。
段 3.thm-cs-normal-form と prop-cs-operations により、$X_w$ は $S^2$、$P_1$、$P_m$($m\geq2$)、$T_n$($n\geq1$)のどれかと同相である。
段 4.これらが互いに同相でないことは cor-cs-distinct である。$\square$
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| コンパクト性 | $\mathbb{R}^2$ | リストのどれかと同相であること |
| 連結性 | $S^2\sqcup S^2$(2 つの球面の非交和) | リストのどれかと同相であること |
| 境界がないこと(各点が $\mathbb{R}^2$ と同相な開近傍をもつこと) | 閉円板 $D^2$ | リストのどれかと同相であること |
| 各ラベルがちょうど 2 回現れること(thm-cs-normal-form の仮定) | 三角形の記号列 $aaa$ | 貼り合わせ空間が曲面であること |
1 行目:$\mathbb{R}^2$ は連結な 2 次元の位相多様体である(満たす性質)がコンパクトでない(満たさない性質)。リストの曲面は多角形の連続像なのでコンパクトであり、$\mathbb{R}^2$ はどれとも同相でない。
2 行目:$S^2\sqcup S^2$ はコンパクトな 2 次元の位相多様体である(満たす性質)が連結でない(満たさない性質)。リストの曲面は連結なので、どれとも同相でない。
3 行目:$D^2$ はコンパクトで連結な Hausdorff 空間で、第 2 可算である(満たす性質)。$D^2$ はリストのどれとも同相でない。実際、$D^2$ は凸なので基本群が自明で、prop-cs-homology からリストの中の候補は $S^2$ だけである。同相写像 $h\colon D^2\to S^2$ があったとすると、$D^2\setminus\{0\}$ と $S^2\setminus\{h(0)\}$ が同相になる。$D^2\setminus\{0\}$ は円周 $\{\lvert u\rvert=1\}$ に変位レトラクトするので基本群は $\mathbb{Z}$ であり(基本群の記事の命題「ホモトピー不変性」と定理「円周の基本群」)、$S^2\setminus\{h(0)\}$ は立体射影で $\mathbb{R}^2$ と同相なので基本群は自明である。これは矛盾である。したがって分類定理により、$D^2$ は閉曲面でない、すなわち境界の点は $\mathbb{R}^2$ と同相な開近傍をもたない(満たさない性質)。
4 行目:三角形の 3 辺をすべて同じ向きの $a$ で貼ると、3 つの頂点は 1 点に同一視され、貼り合わせ空間 $X_{aaa}$ の基本群は $\langle a\mid a^3\rangle\cong\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ である(Mun00 Theorem 74.2、p. 451。この記事では証明しない)。$\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ は可換で、prop-cs-homology のどのアーベル化($0$、$\mathbb{Z}^{2n}$、$\mathbb{Z}^{m-1}\oplus\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$)とも同型でないので、$X_{aaa}$ はリストのどれとも同相でない。$X_{aaa}$ はコンパクトで連結なので、分類定理により閉曲面ではありえない。$a$ が 3 回現れて固有でない(満たさない性質)ことが、prop-cs-surface の結論を壊している。
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