基底と次元

同義語:basis and dimension基底

概要

基底と次元(basis and dimension)とは、ベクトル空間の元をただ一通りの有限線形結合で表す線形独立な生成系と、その元の個数による空間の大きさである。基底を選ぶと各ベクトルの係数が座標を与え、有限生成空間では Steinitz の交換補題から基底の個数が取り方によらない。これを $\dim V$ と書き、$\dim K^n=n$、$\dim K[x]_{\le n}=n+1$、$\dim_{\mathbb{R}}\mathbb{C}=2$ である。$n$ 次元空間では $n$ 個の独立系も生成系も基底であり、$\dim(W_1+W_2)=\dim W_1+\dim W_2-\dim(W_1\cap W_2)$ が成り立つ。一般の基底の存在は Zorn の補題による。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ベクトル空間, 線形独立, 線形包

定義

ベクトル空間の基底

$K$ を体、$V$ を $K$ 上のベクトル空間とする。$V$ のベクトルの族 $(v_i)_{i\in I}$(または部分集合 $B\subset V$)が次の 2 条件を満たすとき、これを $V$ の基底(basis)という。

  1. (生成)$\operatorname{span}\{v_i\mid i\in I\}=V$。すなわち $V$ の任意の元が $v_i$ たちの有限個の線形結合として書ける(生成系(ベクトル空間)である)。
  2. (独立)$(v_i)_{i\in I}$ は線形独立である。すなわち有限個の $v_i$ の線形結合が $0$ になるのは係数がすべて $0$ のときに限る。
    基底の元の個数が有限で順序が固定されているとき $v_1,\ldots,v_n$ と書き、順序付き基底ということがある。基底 $v_1,\ldots,v_n$ に関して、各 $x\in V$ はただ一通りに
    $$ x=a_1v_1+\cdots+a_nv_n\qquad(a_1,\ldots,a_n\in K) $$
    と書ける(thm-basis-and-dimension-characterization)。この $(a_1,\ldots,a_n)\in K^n$ を、この基底に関する $x$ の座標(ベクトル空間)という。Axl15
有限次元と次元

ベクトル空間 $V$ が有限個のベクトルで生成されるとき、$V$ を有限次元(finite-dimensional)といい、そうでないとき無限次元という。有限次元のベクトル空間は有限個の元からなる基底をもち(thm-basis-and-dimension-existence-finite)、その元の個数は基底の取り方によらない(thm-basis-and-dimension-uniqueness)。この個数を $V$ の次元(dimension)といい $\dim V$(係数体を明示するときは $\dim_KV$)と書く。零空間 $\{0\}$ は空集合を基底にもち、$\dim\{0\}=0$ である。無限次元のベクトル空間についても基底は存在し(thm-basis-and-dimension-existence-general)、その濃度を次元とよぶ。Axl15

直感

生成系は「そのベクトルたちの線形結合で空間全体を作れる」という充足性を、線形独立は「どのベクトルも余分でない」という非冗長性を表す。基底はこの両方を満たす族であり、「過不足のない座標軸の組」にあたる。基底を 1 つ選ぶことは、抽象的なベクトル空間の各元に $K^n$ の数の組(座標)を対応させることであり、この対応は線形同型 $K^n\cong V$ を与える(線形写像の記事の命題「座標写像による同型」)。
次元は「独立な方向がいくつあるか」を数える量である。基底は無数にあるが、その元の個数がつねに一致することは自明ではなく、Steinitzの交換補題(「$n$ 個のベクトルで生成される空間には $n+1$ 個の線形独立なベクトルはない」)を要する。これが定まるおかげで、有限次元のベクトル空間は次元という 1 つの数で同型を除いて分類される。

例

数ベクトル空間の標準基底

$K^n$ において、第 $i$ 成分だけが $1$ で他の成分が $0$ のベクトル $e_1,\ldots,e_n$ を標準基底という。実際、任意の $(x_1,\ldots,x_n)$ は $x_1e_1+\cdots+x_ne_n$ と書けるので生成し、線形独立性は 線形独立 の記事の例「標準基底の線形独立性」による。したがって $\dim K^n=n$ である。$K^n$ の基底は標準基底に限らない。たとえば $K^2$ では $(1,1),(1,-1)$ も基底である($K$ の標数が $2$ でないとき。標数 $2$ では $(1,1)=(1,-1)$ となり基底でない)。

多項式の空間の基底

次数 $n$ 以下の多項式全体 $K[x]_{\le n}$ は $1,x,\ldots,x^n$ を基底にもつ。生成することは定義から明らかで、線形独立性は 線形独立 の記事の例「多項式の単項式」による。よって $\dim K[x]_{\le n}=n+1$ である。多項式全体 $K[x]$ は $1,x,x^2,\ldots$ を基底にもつが、これは無限個の元からなる。$K[x]$ が有限次元でないことは次のように分かる。有限個の多項式で生成されるなら、それらの次数の最大値を $d$ として、生成される部分空間は $K[x]_{\le d}$ に含まれ $x^{d+1}$ を含まない。

行列の空間の基底

$m\times n$ 型の行列全体 $M_{m,n}(K)$ において、$(i,j)$ 成分だけが $1$ で他が $0$ の行列 $E_{ij}$($1\le i\le m$、$1\le j\le n$)は基底をなす。任意の $A=(a_{ij})$ は $A=\sum_{i,j}a_{ij}E_{ij}$ と書け、$\sum a_{ij}E_{ij}=O$ なら各成分を比べて $a_{ij}=0$ である。よって $\dim M_{m,n}(K)=mn$ である。$n$ 次対称行列全体は $E_{ii}$($n$ 個)と $E_{ij}+E_{ji}$($i< j$、$n(n-1)/2$ 個)を基底にもつので、次元は $n(n+1)/2$ である。

連立1次方程式の解空間

$K^3$ の部分空間 $W:=\{(x,y,z)\mid x+y+z=0\}$ を考える。$W$ の元は $z=-x-y$ により $(x,y,-x-y)=x(1,0,-1)+y(0,1,-1)$ と書けるので、$(1,0,-1),(0,1,-1)$ は $W$ を生成する。$a(1,0,-1)+b(0,1,-1)=(a,b,-a-b)=0$ なら $a=b=0$ なので線形独立でもあり、$W$ の基底である。よって $\dim W=2$ である。一般に斉次連立1次方程式の解空間の次元は「未知数の個数 $-$ 係数行列の階数」に等しく、これは次元定理(線形代数学 の記事の定理「次元定理」)の内容である。

係数体による次元の違い

複素数全体 $\mathbb{C}$ は、$\mathbb{C}$ 上のベクトル空間としては $1$ を基底にもち $\dim_{\mathbb{C}}\mathbb{C}=1$ であるが、$\mathbb{R}$ 上のベクトル空間としては $1,i$ を基底にもち $\dim_{\mathbb{R}}\mathbb{C}=2$ である($1,i$ の $\mathbb{R}$ 上の線形独立性は 線形独立 の記事の例「係数体への依存」)。さらに $\mathbb{R}$ を有理数体 $\mathbb{Q}$ 上のベクトル空間とみると無限次元である(同記事の例「無限次元の例」)。一般に体の拡大 $L/K$ について $\dim_KL$ を拡大次数といい $[L:K]$ と書く。

反例
  • $K^2$ のベクトル $(1,0),(0,1),(1,1)$ は $K^2$ を生成するが、$(1,0)+(0,1)-(1,1)=0$ により線形独立でないので基底でない。生成系から余分なベクトル $(1,1)$ を除けば基底になる(thm-basis-and-dimension-existence-finite)。破れるのは独立性である。
  • $K^2$ のベクトル $(1,0)$ だけからなる族は線形独立だが、$(0,1)$ を線形結合で作れないので生成せず、基底でない。破れるのは生成性である。
  • $\mathbb{R}$ を $\mathbb{Q}$ 上のベクトル空間とみたとき、選択公理(Zornの補題)を仮定すれば thm-basis-and-dimension-existence-general により基底(Hamel 基底)が存在する。この証明は具体的な元の列挙を与えない。したがって、ここでの「基底が存在する」と「基底を明示的に構成する」は別の主張である。選択公理を弱めた集合論での基底定理の強さは、本記事では主張しない。
  • 基底の元の個数の一致は有限個の線形結合だけを考えることに依存する。無限和を許す枠組み(Hilbert空間の正規直交系など)では「基底」の意味が変わり、たとえば $\ell^2$ の正規直交基底は線形代数の意味の基底ではない(有限個の線形結合で $\ell^2$ の全元を作れない)。

性質

基底の同値条件

$V$ をベクトル空間、$B\subset V$ を部分集合とする。次は同値である。

  1. $B$ は $V$ の基底である。
  2. $V$ の各元は $B$ の有限個の元の線形結合としてただ一通りに表される(係数 $0$ の項の有無を除く)。
  3. $B$ は $V$ の極小な生成系である。すなわち $B$ は $V$ を生成し、$B$ の任意の真部分集合は $V$ を生成しない。
  4. $B$ は $V$ の極大な線形独立集合である。すなわち $B$ は線形独立で、$B$ を真に含む $V$ の部分集合は線形独立でない。
    Axl15
基底の同値条件の証明

1 と 2 の同値。$B$ が生成することは「各元が線形結合で表される」ことであり、その表し方が一意であることと $B$ が線形独立であることの同値は 線形独立 の記事の定理「線形独立性の同値条件」の 1 と 3 の同値である(有限部分集合ごとに適用すればよい)。
1 と 4 の同値は 線形独立 の記事の命題「極大線形独立集合と基底」である。
1 ならば 3。$B$ が基底で、$B'\subsetneq B$ が $V$ を生成したとする。$b\in B\setminus B'$ をとると、$b\in V=\operatorname{span}(B')$ であるから $b$ は $B'$ の有限個の元の線形結合 $b=\sum_ia_ib_i$($b_i\in B'$、$b_i\ne b$)で書ける。すると $1\cdot b-\sum_ia_ib_i=0$ は $B$ の元の非自明な線形関係であり、$B$ の線形独立性に反する。
3 ならば 1。$B$ が極小な生成系で線形独立でないとする。$B$ の相異なる元 $b_1,\ldots,b_n$ と、すべては $0$ でない係数 $a_1,\ldots,a_n$ で $\sum_ia_ib_i=0$ となるものがある。$a_j\ne0$ とすると、体の非零元は可逆であるから $b_j=-a_j^{-1}\sum_{i\ne j}a_ib_i\in\operatorname{span}(B\setminus\{b_j\})$ である。すると $B\subset\operatorname{span}(B\setminus\{b_j\})$ であり、ベクトル空間の記事の命題「線形包は最小の部分空間」により $V=\operatorname{span}(B)\subset\operatorname{span}(B\setminus\{b_j\})$ となる。よって真部分集合 $B\setminus\{b_j\}$ が $V$ を生成し、極小性に反する。$\square$

有限生成ベクトル空間の基底の存在

$V$ を有限次元のベクトル空間とし、有限集合 $S\subset V$ が $V$ を生成するとする。このとき $S$ の部分集合で $V$ の基底になるものが存在する。とくに $V$ は有限個の元からなる基底をもつ。Axl15

有限生成の場合の基底の存在の証明

$V$ を生成する $S$ の部分集合全体の集まりを $\mathcal{G}$ とおく。$S\in\mathcal{G}$ であるから $\mathcal{G}$ は空でなく、各元は有限集合である。したがって元の個数が最小の $B\in\mathcal{G}$ が存在する(自然数の部分集合が最小元をもつことによる)。$B$ は $V$ を生成し、$B$ の真部分集合 $B'$ は元の個数が $B$ より少ないので $\mathcal{G}$ に属さない、すなわち $V$ を生成しない。よって $B$ は極小な生成系であり、thm-basis-and-dimension-characterizationの 3 により基底である。$V=\{0\}$ のときは $B=\emptyset$ がとれる。$\square$

次元の一意性

$V$ を有限次元のベクトル空間とする。

  1. $V$ の線形独立な部分集合はすべて有限集合であり、その元の個数は $V$ の任意の有限な生成系の元の個数を超えない。
  2. $V$ の任意の 2 つの基底は有限集合であり、元の個数が等しい。したがって $\dim V$ は基底の取り方によらず定まる。
    Axl15
次元の一意性の証明

1 を示す。$S=\{u_1,\ldots,u_n\}$ を $V$ の有限な生成系、$L$ を線形独立な部分集合とする。$L$ の任意の有限部分集合 $\{w_1,\ldots,w_m\}$ は線形独立であるから、Steinitzの交換補題(線形独立 の記事の定理「Steinitzの交換補題の言明」)により $m\le n$ である。$L$ が $n+1$ 個以上の元をもてば、そのうち $n+1$ 個をとって矛盾するから、$L$ は高々 $n$ 個の元からなる有限集合である。
2 を示す。thm-basis-and-dimension-existence-finiteにより有限な基底 $B$ が存在する。$B'$ を任意の基底とする。$B'$ は線形独立で $B$ は有限な生成系であるから、1 により $B'$ は有限で $|B'|\le|B|$ である。すると $B'$ も有限な生成系であり、$B$ は線形独立であるから、再び 1 により $|B|\le|B'|$ である。よって $|B|=|B'|$ である。$\square$

Steinitzの交換補題の所在

上の証明で使った「$n$ 個のベクトルで生成される空間の線形独立な族は高々 $n$ 個の元しかもたない」という事実の証明は Steinitzの交換補題 の記事に譲る(出典 Axl15 Chapter 2、Lan02 Chapter III §5)。この補題を経由せずに、斉次連立1次方程式「未知数が方程式より多ければ非自明な解をもつ」から直接示す道筋もある。

有限次元空間における独立系と生成系

$V$ を $n$ 次元のベクトル空間とする。

  1. $V$ の線形独立なベクトルの族は高々 $n$ 個の元からなり、$n$ 個の線形独立なベクトルは $V$ の基底である。
  2. $V$ の生成系は少なくとも $n$ 個の元をもち、$n$ 個のベクトルからなる生成系は $V$ の基底である。
  3. $V$ の部分空間 $W$ は有限次元で $\dim W\le n$ であり、$\dim W=n$ となるのは $W=V$ のときに限る。
    Axl15
独立系と生成系の証明

1 を示す。前半はthm-basis-and-dimension-uniquenessの 1 である($V$ は $n$ 個の元からなる基底を生成系としてもつ)。$v_1,\ldots,v_n$ を線形独立とし、基底でないと仮定すると生成しないので、$v\in V\setminus\operatorname{span}\{v_1,\ldots,v_n\}$ がとれる。線形独立 の記事の命題「一ベクトルの追加」により $v_1,\ldots,v_n,v$ は $n+1$ 個の線形独立なベクトルとなり、前半に反する。
2 を示す。$S$ を生成系とする。$S$ が有限ならthm-basis-and-dimension-existence-finiteにより $S$ は基底 $B$ を含み、thm-basis-and-dimension-uniquenessの 2 により $|B|=n$ であるから $|S|\ge n$ である。$S$ が無限なら主張は明らかである。$S$ がちょうど $n$ 個の元からなるとき、$B\subset S$ かつ $|B|=n=|S|$ であるから $S=B$ は基底である。
3 を示す。$W$ が有限次元で $\dim W\le n$ であることは 線形代数学 の記事の補題「部分空間の基底と基底の延長」の 1 による。$\dim W=n$ とし、$W$ の基底 $w_1,\ldots,w_n$ をとると、これらは $V$ の $n$ 個の線形独立なベクトルであるから 1 により $V$ の基底であり、$W=\operatorname{span}\{w_1,\ldots,w_n\}=V$ である。逆に $W=V$ なら $\dim W=n$ である。$\square$

部分空間の和と共通部分の次元

$V$ を有限次元のベクトル空間、$W_1,W_2$ をその部分空間とする。このとき
$$ \dim(W_1+W_2)=\dim W_1+\dim W_2-\dim(W_1\cap W_2) $$
が成り立つ。とくに $W_1\cap W_2=\{0\}$(和が直和 $W_1\oplus W_2$ である)とき $\dim(W_1\oplus W_2)=\dim W_1+\dim W_2$ である。Axl15

和と共通部分の次元の証明

$W_1\cap W_2$ は部分空間である(ベクトル空間の記事の命題「部分空間の共通部分と和」)から有限次元であり、その基底 $u_1,\ldots,u_k$ をとる。これは $W_1$ の線形独立な族であるから、線形代数学 の記事の補題「部分空間の基底と基底の延長」の 2 により $v_1,\ldots,v_p$ を付け加えて $W_1$ の基底にできる。同様に $w_1,\ldots,w_q$ を付け加えて $W_2$ の基底にできる。$\dim W_1=k+p$、$\dim W_2=k+q$、$\dim(W_1\cap W_2)=k$ であるから、
$$ u_1,\ldots,u_k,\ v_1,\ldots,v_p,\ w_1,\ldots,w_q $$
が $W_1+W_2$ の基底であることを示せば、$\dim(W_1+W_2)=k+p+q$ となり主張が従う。
生成すること。$W_1+W_2$ の元 $x_1+x_2$($x_i\in W_i$)について、$x_1$ は $u,v$ たちの、$x_2$ は $u,w$ たちの線形結合であるから、和は上の族の線形結合である。
線形独立であること。$\sum_ia_iu_i+\sum_jb_jv_j+\sum_lc_lw_l=0$ とする。$y:=\sum_lc_lw_l$ とおくと $y\in W_2$ であり、また $y=-\sum_ia_iu_i-\sum_jb_jv_j\in W_1$ である。よって $y\in W_1\cap W_2$ であり、$y=\sum_id_iu_i$ と書ける。すると $\sum_lc_lw_l-\sum_id_iu_i=0$ であり、$u_1,\ldots,u_k,w_1,\ldots,w_q$ は $W_2$ の基底で線形独立であるから、すべての $c_l$(と $d_i$)は $0$ である。したがって $y=0$ で、$\sum_ia_iu_i+\sum_jb_jv_j=0$ となり、$u_1,\ldots,u_k,v_1,\ldots,v_p$ の線形独立性からすべての $a_i,b_j$ は $0$ である。$\square$

一般のベクトル空間の基底の存在

$V$ を任意のベクトル空間、$L\subset S\subset V$ とし、$L$ は線形独立、$S$ は $V$ を生成するとする。このとき $L\subset B\subset S$ を満たす $V$ の基底 $B$ が存在する。とくに、任意のベクトル空間は基底をもち($L=\emptyset$、$S=V$)、任意の線形独立な部分集合は基底に延長でき($S=V$)、任意の生成系は基底を含む($L=\emptyset$)。さらに、$V$ の任意の 2 つの基底は等しい濃度をもつ。

一般の場合の証明の所在

証明は Zornの補題 による。$L$ を含み $S$ に含まれる線形独立な部分集合全体を包含関係で順序付けると、鎖の合併は再び線形独立(線形関係は有限個の元しか含まないため)であるから上界をもち、Zorn の補題により極大元 $B$ が存在する。$B$ の極大性と 線形独立 の記事の命題「一ベクトルの追加」により $S\subset\operatorname{span}(B)$、したがって $\operatorname{span}(B)=V$ となる。無限基底の濃度の一意性は Lan02 Chapter III §5 のベクトル空間の節に譲る。本定理は Zornの補題 を仮定した上での主張であり、より弱い集合論での強さは本記事の範囲外とする。有限次元の場合にはthm-basis-and-dimension-existence-finiteと 線形代数学 の記事の補題「部分空間の基底と基底の延長」により選択公理は不要である。

補足

基底と次元の概念は係数を環に広げた加群でも定義できるが、基底をもつ加群(自由加群)は特別であり、また基底をもっても元の個数が一定でない環(IBN 性をもたない環)が存在する。体上ではこれらの病理が起こらないことが、線形代数を「次元」だけで分類できる理由である。基底の選び方は線形写像の表現行列の形を決め、良い基底を選ぶことが対角化や Jordan標準形 の主題である。内積空間では正規直交基底という特別な基底が中心的な役割を果たす。本記事の内容は Axl15 Chapter 2 および Lan02 Chapter III §5 による。

関連項目

参考文献

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