基本群

同義語:fundamental group

概要

基本群(fundamental group)とは、位相空間 $X$ の基点 $x_0$ を始点かつ終点とするループの、端点を固定したホモトピー類全体に、道の連結 $[\gamma][\delta]=[\gamma\cdot\delta]$ で群構造を入れたもの $\pi_1(X,x_0)$ である。空間の中の輪が一点へ縮められるかどうかを代数的に測る最も基本的な位相不変量であり、連続写像 $f$ は群準同型 $f_*$ を誘導し、ホモトピー同値な空間の基本群は同型になる。弧状連結空間では基点の取り方によらず同型であるが、その同型は道の取り方に依存する。$\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$(回転数)が基本例であり、被覆空間・Van Kampen の定理・群の表示を通じて計算され、Brouwer の不動点定理や被覆空間の分類に応用される。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 位相空間, 連続写像, ホモトピー, 道, 群

定義

以下 $X$ を位相空間、$I:=[0,1]$ を閉区間とする。本記事の記述はおおむね Hat02 §1.1 と Mun00 §51–§54 に従う。

道の積と逆の道

連続写像 $\gamma\colon I\to X$ を $X$ の道(path)といい、$\gamma(0)$ を始点、$\gamma(1)$ を終点という。始点と終点が同じ点 $x_0$ である道を $x_0$ を基点とするループ(loop)という。点 $x\in X$ に対し、値 $x$ の定値写像 $c_x\colon I\to X$ を定値道という。
二つの道 $\gamma,\delta$ が $\gamma(1)=\delta(0)$ を満たすとき、道の積(連結)$\gamma\cdot\delta$ を
$$ (\gamma\cdot\delta)(s):=\begin{cases}\gamma(2s)&(0\le s\le1/2)\\ \delta(2s-1)&(1/2\le s\le1)\end{cases} $$
で定める。二つの式は $s=1/2$ で共通の値 $\gamma(1)=\delta(0)$ をとるので、貼り合わせの補題により $\gamma\cdot\delta$ は連続、すなわち $\gamma(0)$ から $\delta(1)$ への道である。道 $\gamma$ に対し $\bar\gamma(s):=\gamma(1-s)$ で定まる道を $\gamma$ の逆の道という。$\bar\gamma$ は $\gamma(1)$ から $\gamma(0)$ への道である。

道のホモトピー

始点と終点を共有する二つの道 $\gamma_0,\gamma_1\colon I\to X$($\gamma_0(0)=\gamma_1(0)=x$、$\gamma_0(1)=\gamma_1(1)=y$)に対し、連続写像 $H\colon I\times I\to X$ で
$$ H(s,0)=\gamma_0(s),\qquad H(s,1)=\gamma_1(s),\qquad H(0,t)=x,\qquad H(1,t)=y\qquad(s,t\in I) $$
を満たすものを $\gamma_0$ から $\gamma_1$ への道のホモトピー(端点を固定したホモトピー)という。道のホモトピーが存在するとき $\gamma_0$ と $\gamma_1$ は道としてホモトピックであるといい、$\gamma_0\simeq\gamma_1$ と書く。これはホモトピーの記事の意味での、部分集合 $\{0,1\}\subset I$ を固定したホモトピーにほかならず、同記事の命題「ホモトピー関係は同値関係」により同値関係である。道 $\gamma$ の同値類を $[\gamma]$ と書く。

基本群

位相空間 $X$ と点 $x_0\in X$(基点、base point)に対し、$x_0$ を基点とするループの道としてのホモトピー類全体の集合を $\pi_1(X,x_0)$ と書く。二つの類の積を
$$ [\gamma]\,[\delta]:=[\gamma\cdot\delta] $$
で定める。この積は代表元の取り方によらず定まり(fundamental-group-prop-welldefined)、$\pi_1(X,x_0)$ はこの積について群をなす(fundamental-group-thm-group)。単位元は定値ループの類 $[c_{x_0}]$、$[\gamma]$ の逆元は $[\bar\gamma]$ である。この群を $x_0$ を基点とする $X$ の基本群(fundamental group)という。基本群が自明群である弧状連結空間(弧状連結空間)が単連結空間である。

誘導準同型

連続写像 $f\colon X\to Y$ が $f(x_0)=y_0$ を満たすとき、$f_*\colon\pi_1(X,x_0)\to\pi_1(Y,y_0)$ を
$$ f_*[\gamma]:=[f\circ\gamma] $$
で定める。$f_*$ は矛盾なく定義された群準同型であり(fundamental-group-prop-functorial)、$f$ が誘導する準同型という。

道の圏としての基本亜群

基点を固定せず、$X$ のすべての道のホモトピー類を考えると、$[\gamma][\delta]:=[\gamma\cdot\delta]$($\gamma(1)=\delta(0)$ のときだけ定義される)は結合的で、各点の定値道の類が単位元の役割を果たし、$[\bar\gamma]$ が $[\gamma]$ の逆元になる(fundamental-group-thm-group)。すなわち、$X$ の点を対象、$x$ から $y$ への道のホモトピー類を $x$ から $y$ への射とする圏が得られ、その射はすべて同型射である。この圏を $X$ の基本亜群(fundamental groupoid)といい $\Pi_1(X)$ と書く。基本群 $\pi_1(X,x_0)$ は対象 $x_0$ の自己同型群 $\Pi_1(X)(x_0,x_0)$ である。

直感

基本群は「基点を出て基点に戻る輪ゴムを空間に投げ込み、輪ゴムのまま連続変形して重なるものを同一視する」ことで得られる代数的な対象である。空間に穴や障害物があると、その周りに引っかかった輪ゴムは定値ループまで縮められず、基本群の非自明な元として現れる。穴のない空間、たとえば凸集合や可縮空間では、どの輪ゴムも一点へ縮み、基本群は自明になる。ホモトピー群 $\pi_n$ は輪ゴムの代わりに $n$ 次元球面を投げ込む一般化であり、$n=1$ の場合が基本群と一致する(ホモトピー群の記事の命題「$\pi_1$は基本群と一致する」)。
基本群の最も本質的な使い道は「群準同型の不在から写像の不在を導く」ことにある。連続写像 $f\colon X\to Y$ は必ず群準同型 $f_*\colon\pi_1(X,x_0)\to\pi_1(Y,f(x_0))$ を誘導し、合成は合成に写る(fundamental-group-prop-functorial)。したがって、たとえば $\pi_1(X)\cong\mathbb{Z}$ から $\pi_1(Y)=0$ への準同型は自明なものしかない、という群論の事実から、「$X$ を $Y$ の中へ写してから戻す合成が恒等写像になるような写像は存在しない」という位相的な結論が得られる。レトラクトの記事の命題「球面は円板のレトラクトでない」とBrouwerの不動点定理はこの型の議論の典型である。

例

可縮空間と星状集合

$X$ が可縮(可縮空間)ならば、任意の基点 $x_0$ について $\pi_1(X,x_0)$ は自明群である。この主張は単連結空間の記事の命題「可縮ならば単連結」が証明付きで与える(同記事は弧状連結性も同時に示す)。とくに $\mathbb{R}^n$、その空でない凸集合、閉円板 $D^n$、一点空間の基本群は自明である。より一般に $\mathbb{R}^n$ の空でない星状集合(ある点 $c$ とすべての点を結ぶ線分を含む集合)の基本群は自明であり、直線ホモトピー $H(s,t)=(1-t)\gamma(s)+tc$ による証明は半局所単連結空間の記事の命題「空でない星状集合は単連結」にある。

円周

単位円周 $S^1=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x^2+y^2=1\}$ の基本群は $\pi_1(S^1,(1,0))\cong\mathbb{Z}$ であり、同型はループが原点のまわりを回る回数(回転数)で与えられる(fundamental-group-thm-circle)。生成元は一周するループ $\omega(s)=(\cos2\pi s,\sin2\pi s)$ の類である。これは基本群が自明でない最も基本的な例であり、$\pi_1(S^1)\ne0$ からBrouwerの不動点定理の $2$ 次元の場合や代数学の基本定理が導かれる(Hat02 §1.1 Theorem 1.9、Theorem 1.8)。

トーラスの基本群

トーラス $T^2=S^1\times S^1$ の基本群は、fundamental-group-prop-product と fundamental-group-thm-circle により
$$ \pi_1(T^2,(x_0,x_0))\cong\pi_1(S^1,x_0)\times\pi_1(S^1,x_0)\cong\mathbb{Z}\times\mathbb{Z} $$
である。二つの生成元は、浮き輪の穴を貫く方向に一周するループと、浮き輪の周に沿って一周するループの類である。同様に $n$ 次元トーラス $(S^1)^n$ の基本群は $\mathbb{Z}^n$ である。

実射影空間とレンズ空間

$n\ge2$ のとき実射影空間 $\mathbb{RP}^n$ の基本群は $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ である。$\mathbb{RP}^n$ は $S^n$ の対蹠点を同一視した商空間であり、商写像 $S^n\to\mathbb{RP}^n$ は $2$ 重被覆(被覆空間)で、$n\ge2$ なら $S^n$ は単連結(単連結空間の記事の命題「球面の単連結性」)なので、被覆変換群 $\{\pm1\}$ が基本群と同型になる(被覆空間の記事の注意「分類定理の証明について」、ホモトピー群の記事の例「実射影空間での基本群の計算」)。$n=1$ では $\mathbb{RP}^1\cong S^1$ なので基本群は $\mathbb{Z}$ である。同じ仕組みで、$S^{2n-1}\subset\mathbb{C}^n$ への位数 $p$ の巡回群の自由な作用による商であるレンズ空間 $L$ の基本群は $\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$ である(Hat02 §1.3 Example 1.43)。

円周のウェッジ和

8 の字 $S^1\vee S^1$(二つの円周を一点で貼り合わせたウェッジ和)の基本群は、二つの円周を一周するループ $a,b$ を生成元とする自由群 $F_2=\langle a,b\rangle$ であり、可換でない。より一般に $n$ 個の円周のウェッジ和の基本群は階数 $n$ の自由群である。この計算はVan Kampenの定理の記事の例「円周のウェッジ和」が所有し、自由積の記事が自由積の一般論を所有する。

反例:円周は単連結でない

$S^1$ は弧状連結であるが、$\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}\ne0$ なので単連結でない。満たす性質は「弧状連結であること」、満たさない性質は「基本群が自明であること」であり、破れる含意は「弧状連結 $\Rightarrow$ 単連結」である。一方 $\mathbb{R}^2\setminus\{0\}$ や円環 $\{1\le\|x\|\le2\}$ は $S^1$ を変位レトラクトとしてもち、ホモトピー不変性(fundamental-group-prop-homotopy-invariance)から基本群は $\mathbb{Z}$ である。「穴が開いている」という直感がそのまま基本群の非自明性に翻訳されるのはこのような 2 次元的な穴の場合であり、$\mathbb{R}^3\setminus\{0\}$ のように点を除いた 3 次元以上の空間の基本群は自明である(単連結空間の記事の例「原点を除いた空間」)。

反例:弧状連結でない空間では基点に依存する

$X:=S^1\sqcup\{p\}$(円周と一点の直和)とする。$p$ を基点とするループは $I$ の連結性(連結空間)から定値ループしかないので $\pi_1(X,p)=0$ であるが、$x_0\in S^1$ については $\pi_1(X,x_0)=\pi_1(S^1,x_0)\cong\mathbb{Z}$ である(ループの像は連結なので $S^1$ に含まれる)。満たす性質は「各基点で基本群が定義されること」、満たさない性質は「基本群の同型類が基点によらないこと」であり、破れる含意は「基点によらない基本群の同型(fundamental-group-prop-basepoint-change)が弧状連結性なしでも成り立つ」である。基本群は基点を含む弧状連結成分しか見ない。

反例:基点の取り替えによる同型は道の取り方に依存する

$X$ が弧状連結なら $\pi_1(X,x)\cong\pi_1(X,y)$ であるが(fundamental-group-prop-basepoint-change)、同型は $x$ から $y$ への道 $C$ の類ごとに定まり、$C$ の取り方によって異なりうる。$X=S^1\vee S^1$、$x=y$ を貼り合わせ点とし、$C=a$(一方の円周を一周するループ)をとると、同型 $\Phi_a\colon[\gamma]\mapsto[\bar a\cdot\gamma\cdot a]$ は $\pi_1(X,x)=F_2$ の内部自己同型 $g\mapsto a^{-1}ga$ であり、$a^{-1}ba\ne b$ なので恒等写像 $\Phi_{c_x}$ と異なる。満たす性質は「基本群が基点の取り方によらず同型であること」、満たさない性質は「同型が道の取り方によらず定まること」であり、破れる含意は「弧状連結 $\Rightarrow$ 基点の取り替えの同型は標準的」である。基本群がアーベル群のときに限り、$\Phi_C$ は $C$ によらない(fundamental-group-prop-basepoint-change (3))。逆に $\pi_1(X,x)$ がアーベル群でなければ、中心に入らない類 $[L]$($L$ は $x$ のループ)をとると $\Phi_L$ は恒等写像でない内部自己同型なので、$\Phi_{L\cdot C}=\Phi_C\circ\Phi_L\ne\Phi_C$ である。

性質

径数の取り替え

$\gamma\colon I\to X$ を道、$\varphi\colon I\to I$ を $\varphi(0)=0$、$\varphi(1)=1$ を満たす連続写像とする。このとき $\gamma\circ\varphi\simeq\gamma$(道のホモトピー)である。

$H(s,t):=\gamma\bigl((1-t)\varphi(s)+ts\bigr)$ とおく。$(1-t)\varphi(s)+ts$ は $\varphi(s)$ と $s$ を結ぶ線分上の点なので $I$ に属し、$H$ は連続写像の合成として連続である。$H(s,0)=\gamma(\varphi(s))$、$H(s,1)=\gamma(s)$、$H(0,t)=\gamma(0)$、$H(1,t)=\gamma(1)$ である。$\square$

道の積はホモトピー類の上で矛盾なく定まる
  1. $\gamma_0\simeq\gamma_1$、$\delta_0\simeq\delta_1$ で $\gamma_0(1)=\delta_0(0)$ ならば、$\gamma_0\cdot\delta_0\simeq\gamma_1\cdot\delta_1$ である。
  2. $\gamma_0\simeq\gamma_1$ ならば $\bar\gamma_0\simeq\bar\gamma_1$ である。
  3. $f\colon X\to Y$ が連続で $\gamma_0\simeq\gamma_1$ ならば $f\circ\gamma_0\simeq f\circ\gamma_1$ である。また $f\circ(\gamma\cdot\delta)=(f\circ\gamma)\cdot(f\circ\delta)$、$f\circ\bar\gamma=\overline{f\circ\gamma}$ が等号で成り立つ。
  1. $H\colon\gamma_0\simeq\gamma_1$、$G\colon\delta_0\simeq\delta_1$ を道のホモトピーとし、
    $$ K(s,t):=\begin{cases}H(2s,t)&(0\le s\le1/2)\\ G(2s-1,t)&(1/2\le s\le1)\end{cases} $$
    とおく。$s=1/2$ では $H(1,t)=\gamma_0(1)=\delta_0(0)=G(0,t)$ で両式が一致するので、貼り合わせの補題により $K$ は $I\times I$ 上で連続である。$K(s,0)=(\gamma_0\cdot\delta_0)(s)$、$K(s,1)=(\gamma_1\cdot\delta_1)(s)$、$K(0,t)=H(0,t)=\gamma_0(0)$、$K(1,t)=G(1,t)=\delta_0(1)$ である。
  2. $H\colon\gamma_0\simeq\gamma_1$ に対し $(s,t)\mapsto H(1-s,t)$ が $\bar\gamma_0$ から $\bar\gamma_1$ への道のホモトピーである。
  3. $f\circ H$ が $f\circ\gamma_0$ から $f\circ\gamma_1$ への道のホモトピーである。後半の二つの等式は、道の積と逆の道の定義式に $f$ を合成すれば直ちに分かる。$\square$
基本亜群の公理と基本群の群構造

$X$ の道 $\gamma,\delta,\varepsilon$ について、積が定義される範囲で次が成り立つ($\simeq$ は道のホモトピー)。

  1. 結合律:$(\gamma\cdot\delta)\cdot\varepsilon\simeq\gamma\cdot(\delta\cdot\varepsilon)$。
  2. 単位元:$c_{\gamma(0)}\cdot\gamma\simeq\gamma\simeq\gamma\cdot c_{\gamma(1)}$。
  3. 逆元:$\gamma\cdot\bar\gamma\simeq c_{\gamma(0)}$、$\bar\gamma\cdot\gamma\simeq c_{\gamma(1)}$。
    したがって $\pi_1(X,x_0)$ は $[\gamma][\delta]=[\gamma\cdot\delta]$ を積として群をなし、単位元は $[c_{x_0}]$、$[\gamma]$ の逆元は $[\bar\gamma]$ である。
  1. 定義式を書き下すと
    $$ ((\gamma\cdot\delta)\cdot\varepsilon)(s)=\begin{cases}\gamma(4s)&(0\le s\le1/4)\\ \delta(4s-1)&(1/4\le s\le1/2)\\ \varepsilon(2s-1)&(1/2\le s\le1)\end{cases},\qquad (\gamma\cdot(\delta\cdot\varepsilon))(u)=\begin{cases}\gamma(2u)&(0\le u\le1/2)\\ \delta(4u-2)&(1/2\le u\le3/4)\\ \varepsilon(4u-3)&(3/4\le u\le1)\end{cases} $$
    である。$\varphi\colon I\to I$ を $\varphi(s)=2s$($0\le s\le1/4$)、$s+1/4$($1/4\le s\le1/2$)、$(s+1)/2$($1/2\le s\le1$)で定めると、分点 $s=1/4,1/2$ で値が $1/2,3/4$ に一致するので $\varphi$ は連続であり、$\varphi(0)=0$、$\varphi(1)=1$ である。各区間で代入すると $(\gamma\cdot(\delta\cdot\varepsilon))\circ\varphi=(\gamma\cdot\delta)\cdot\varepsilon$ が確かめられる(たとえば $1/4\le s\le1/2$ では $\varphi(s)=s+1/4\in[1/2,3/4]$ で $\delta(4(s+1/4)-2)=\delta(4s-1)$)。よって fundamental-group-lem-reparam により $(\gamma\cdot\delta)\cdot\varepsilon\simeq\gamma\cdot(\delta\cdot\varepsilon)$ である。
  2. $x:=\gamma(0)$ とすると $c_x\cdot\gamma=\gamma\circ\varphi$、$\varphi(s):=\max\{0,2s-1\}$ であり、$\varphi$ は連続で $\varphi(0)=0$、$\varphi(1)=1$ なので fundamental-group-lem-reparam により $c_x\cdot\gamma\simeq\gamma$ である。同様に $\gamma\cdot c_{\gamma(1)}=\gamma\circ\psi$、$\psi(s):=\min\{2s,1\}$ から $\gamma\cdot c_{\gamma(1)}\simeq\gamma$ を得る。
  3. $\lambda(s):=\min\{2s,2-2s\}$ とおくと $\gamma\cdot\bar\gamma=\gamma\circ\lambda$ である($s\ge1/2$ では $\bar\gamma(2s-1)=\gamma(2-2s)$)。$H(s,t):=\gamma\bigl((1-t)\lambda(s)\bigr)$ は連続で、$H(s,0)=(\gamma\cdot\bar\gamma)(s)$、$H(s,1)=\gamma(0)$、$H(0,t)=H(1,t)=\gamma(0)$ である($\lambda(0)=\lambda(1)=0$)。よって $\gamma\cdot\bar\gamma\simeq c_{\gamma(0)}$ である。これを $\bar\gamma$ に適用し $\bar{\bar\gamma}=\gamma$ に注意すれば $\bar\gamma\cdot\gamma\simeq c_{\gamma(1)}$ を得る。
    最後の主張:積が類の上で定まることは fundamental-group-prop-welldefined (1) による。(1)〜(3) をループに適用すれば群の公理そのものである。$\square$
誘導準同型の関手性

$f\colon(X,x_0)\to(Y,y_0)$、$g\colon(Y,y_0)\to(Z,z_0)$ を基点を保つ連続写像とする。

  1. $f_*\colon\pi_1(X,x_0)\to\pi_1(Y,y_0)$ は矛盾なく定義された群準同型である。
  2. $(g\circ f)_*=g_*\circ f_*$ であり、$(\operatorname{id}_X)_*=\operatorname{id}_{\pi_1(X,x_0)}$ である。
    すなわち $\pi_1$ は基点付き空間と基点を保つ連続写像の圏から群の圏への関手である。
  1. $f\circ\gamma$ が $y_0$ を基点とするループであることと、$f_*$ が代表元によらないことは fundamental-group-prop-welldefined (3) による。同じ (3) の等式 $f\circ(\gamma\cdot\delta)=(f\circ\gamma)\cdot(f\circ\delta)$ から $f_*([\gamma][\delta])=f_*[\gamma]\,f_*[\delta]$ である。
  2. $(g\circ f)_*[\gamma]=[g\circ f\circ\gamma]=g_*[f\circ\gamma]=g_*(f_*[\gamma])$、$(\operatorname{id}_X)_*[\gamma]=[\gamma]$ である。$\square$
基点の取り替え

$C$ を $x$ から $y$ への道とし、$\Phi_C\colon\pi_1(X,x)\to\pi_1(X,y)$ を $\Phi_C[\gamma]:=[\bar C\cdot\gamma\cdot C]$ で定める(括弧の付け方は fundamental-group-thm-group (1) により類の上では問題にならない)。

  1. $\Phi_C$ は矛盾なく定義された群の同型であり、逆写像は $\Phi_{\bar C}$ である。とくに $X$ が弧状連結ならば、基本群の同型類は基点の取り方によらない。
  2. $\Phi_C$ は $C$ の道のホモトピー類 $[C]$ だけで決まり、$D$ が $y$ から $z$ への道ならば $\Phi_{C\cdot D}=\Phi_D\circ\Phi_C$ である。
  3. $C$ が $x$ を基点とするループならば $\Phi_C$ は内部自己同型 $[\gamma]\mapsto[C]^{-1}[\gamma][C]$ である。したがって $\pi_1(X,x)$ がアーベル群ならば、$x$ から $y$ への任意の二つの道 $C,C'$ について $\Phi_C=\Phi_{C'}$ である。

以下、道の積の等式・ホモトピーはすべて fundamental-group-thm-group と fundamental-group-prop-welldefined による。
(1) $\gamma\simeq\gamma'$ なら $\bar C\cdot\gamma\cdot C\simeq\bar C\cdot\gamma'\cdot C$ なので $\Phi_C$ は矛盾なく定まる。準同型性は
$$ \Phi_C[\gamma]\,\Phi_C[\delta]=[\bar C\cdot\gamma\cdot C\cdot\bar C\cdot\delta\cdot C]=[\bar C\cdot\gamma\cdot c_x\cdot\delta\cdot C]=[\bar C\cdot(\gamma\cdot\delta)\cdot C]=\Phi_C[\gamma\cdot\delta] $$
による。$\Phi_{\bar C}\colon\pi_1(X,y)\to\pi_1(X,x)$ を同様に定めると($\bar{\bar C}=C$)、$\Phi_{\bar C}\Phi_C[\gamma]=[C\cdot\bar C\cdot\gamma\cdot C\cdot\bar C]=[c_x\cdot\gamma\cdot c_x]=[\gamma]$ であり、同様に $\Phi_C\Phi_{\bar C}=\operatorname{id}$ である。$X$ が弧状連結なら任意の二点は道で結べるので、後半が従う。
(2) $C\simeq C'$ なら $\bar C\simeq\bar C'$ でもあり、$\bar C\cdot\gamma\cdot C\simeq\bar C'\cdot\gamma\cdot C'$ である。$\overline{C\cdot D}=\bar D\cdot\bar C$ が等号で成り立つ(定義式を代入すればよい)ので、$\Phi_{C\cdot D}[\gamma]=[\bar D\cdot\bar C\cdot\gamma\cdot C\cdot D]=\Phi_D(\Phi_C[\gamma])$ である。
(3) $C$ がループなら $[\bar C]=[C]^{-1}$ なので前半は定義そのものである。$C,C'$ を $x$ から $y$ への道とすると、$C'\simeq(C'\cdot\bar C)\cdot C$ であり $C'\cdot\bar C$ は $x$ のループなので、(2) により $\Phi_{C'}=\Phi_C\circ\Phi_{C'\cdot\bar C}$ である。$\pi_1(X,x)$ がアーベル群なら内部自己同型 $\Phi_{C'\cdot\bar C}$ は恒等写像であり、$\Phi_{C'}=\Phi_C$ を得る。$\square$

ホモトピー不変性
  1. $f,g\colon X\to Y$ を連続写像、$F\colon X\times I\to Y$ を $f$ から $g$ へのホモトピー、$x_0\in X$ とし、基点の軌跡 $C(t):=F(x_0,t)$($f(x_0)$ から $g(x_0)$ への道)をとる。このとき $g_*=\Phi_C\circ f_*\colon\pi_1(X,x_0)\to\pi_1(Y,g(x_0))$ である。
  2. とくに、基点を固定してホモトピックな写像は同じ準同型を誘導する。また $f\colon X\to Y$ がホモトピー同値写像(ホモトピー同値)ならば、任意の $x_0$ について $f_*\colon\pi_1(X,x_0)\to\pi_1(Y,f(x_0))$ は同型である。
  3. $\gamma$ と $C$ を $x_0$ のループとすると、$\gamma$ と $\bar C\cdot\gamma\cdot C$ はループとして、端点を止めずにホモトピックである。すなわち連続写像 $K\colon I\times I\to X$ で $K(s,0)=\gamma(s)$、$K(s,1)=(\bar C\cdot\gamma\cdot C)(s)$、$K(0,t)=K(1,t)$($t\in I$)を満たすものが存在する。
    (1)(2) の $n$ 次版はホモトピー群の記事の命題「関手性とホモトピー不変性」にある。
  1. $\gamma$ を $x_0$ のループとする。$u\in I$ に対し $C_u(t):=C(ut)$($f(x_0)$ から $C(u)$ への道)、$F_u:=F(\cdot,u)$ とおくと、$F_u\circ\gamma$ は $F(x_0,u)=C(u)$ のループであり、
    $$ L_u:=C_u\cdot\bigl((F_u\circ\gamma)\cdot\overline{C_u}\bigr) $$
    は $f(x_0)$ のループである。$K(s,u):=L_u(s)$ とおくと、$K$ は $s\le1/2$ で $C(2us)$、$1/2\le s\le3/4$ で $F(\gamma(4s-2),u)$、$s\ge3/4$ で $C(u(4-4s))$ という三つの連続な式の貼り合わせであり、境目 $s=1/2$、$s=3/4$ で値はいずれも $C(u)$ に一致するので、貼り合わせの補題により $I\times I$ 上で連続である。さらに $K(0,u)=K(1,u)=C(0)=f(x_0)$ なので、$K$ は $L_0$ から $L_1$ への道のホモトピーである。$L_0=c\cdot((f\circ\gamma)\cdot c)\simeq f\circ\gamma$($c$ は定値道、fundamental-group-thm-group (2))であり、$L_1=C\cdot((g\circ\gamma)\cdot\bar C)$ である。よって $[f\circ\gamma]=[C][g\circ\gamma][C]^{-1}$、すなわち $g_*[\gamma]=[\bar C\cdot(f\circ\gamma)\cdot C]=\Phi_C(f_*[\gamma])$ である。
  2. 基点を固定したホモトピーでは $C$ は定値道であり、$\Phi_C=\operatorname{id}$ である。$g\colon Y\to X$ を $f$ のホモトピー逆写像とし、$F\colon\operatorname{id}_X\simeq g\circ f$、$G\colon\operatorname{id}_Y\simeq f\circ g$ をとる。(1) を $F$ と $x_0$ に適用すると $(g\circ f)_*=\Phi_C\circ(\operatorname{id}_X)_*=\Phi_C$($C$ は $x_0$ から $gf(x_0)$ への軌跡)が同型なので、fundamental-group-prop-functorial により $g_*\circ f_*$ は同型であり、$f_*\colon\pi_1(X,x_0)\to\pi_1(Y,f(x_0))$ は単射、$g_*\colon\pi_1(Y,f(x_0))\to\pi_1(X,gf(x_0))$ は全射である。同様に (1) を $G$ と基点 $f(x_0)$ に適用すると $f_*\circ g_*\colon\pi_1(Y,f(x_0))\to\pi_1(Y,fgf(x_0))$ が同型なので、この $g_*$ は単射でもある。よって $g_*$ は同型であり、$f_*=(g_*)^{-1}\circ(g_*\circ f_*)$ も同型である。
  3. $u\in I$ に対し $D_u(t):=C(ut)$($x_0$ から $C(u)$ への道)とおき、$C(u)$ のループ $N_u:=\overline{D_u}\cdot(\gamma\cdot D_u)$ を考える。$K(s,u):=N_u(s)$ は (1) と同様に三つの連続な式の貼り合わせで連続であり、$K(0,u)=K(1,u)=C(u)$ である。$N_0=c_{x_0}\cdot(\gamma\cdot c_{x_0})$ は $\gamma$ と道としてホモトピックであり、$N_1=\bar C\cdot(\gamma\cdot C)$ は $\bar C\cdot\gamma\cdot C$ と道としてホモトピックである(fundamental-group-thm-group (1)(2))。道のホモトピーは端点を止めるホモトピーであるから、この二つの道のホモトピーと上の $K$ を $t$ 方向に(ホモトピーの記事の命題「ホモトピー関係は同値関係」の推移律の証明と)同じ貼り合わせによりつなげば、各時刻で $K(0,t)=K(1,t)$ が保たれ、求める $K$ が得られる。$\square$
直積の基本群

$X,Y$ を位相空間、$x_0\in X$、$y_0\in Y$ とし、$X\times Y$ に直積位相を入れ、射影を $p\colon X\times Y\to X$、$q\colon X\times Y\to Y$ とする。このとき
$$ (p_*,q_*)\colon\pi_1(X\times Y,(x_0,y_0))\to\pi_1(X,x_0)\times\pi_1(Y,y_0),\qquad[\gamma]\mapsto([p\circ\gamma],[q\circ\gamma]) $$
は群の同型である(右辺は直積群)。

$p_*,q_*$ は準同型なので $(p_*,q_*)$ は直積群への準同型である。全射性:$\alpha$ を $x_0$ のループ、$\beta$ を $y_0$ のループとすると、直積位相の普遍性により $\gamma:=(\alpha,\beta)\colon I\to X\times Y$ は連続で、$(x_0,y_0)$ のループであり、$p\circ\gamma=\alpha$、$q\circ\gamma=\beta$ である。単射性:$[p\circ\gamma]=[c_{x_0}]$、$[q\circ\gamma]=[c_{y_0}]$ とし、道のホモトピー $H_1\colon p\circ\gamma\simeq c_{x_0}$、$H_2\colon q\circ\gamma\simeq c_{y_0}$ をとる。$H(s,t):=(H_1(s,t),H_2(s,t))$ は連続で、$H(s,0)=\gamma(s)$、$H(s,1)=(x_0,y_0)$、$H(0,t)=H(1,t)=(x_0,y_0)$ を満たすので $[\gamma]=[c_{(x_0,y_0)}]$ である。$\square$

円周の基本群

$S^1=\{(x,y)\in\mathbb{R}^2\mid x^2+y^2=1\}$、$b_0:=(1,0)$ とし、$p\colon\mathbb{R}\to S^1$ を $p(t):=(\cos2\pi t,\sin2\pi t)$ で定める。$b_0$ のループ $\gamma$ に対し、$\tilde\gamma(0)=0$ を満たす $\gamma$ の持ち上げ($p\circ\tilde\gamma=\gamma$ なる道 $\tilde\gamma\colon I\to\mathbb{R}$)をとり、$\deg\gamma:=\tilde\gamma(1)\in\mathbb{Z}$ とおく(回転数)。このとき
$$ \deg\colon\pi_1(S^1,b_0)\to\mathbb{Z},\qquad[\gamma]\mapsto\deg\gamma $$
は矛盾なく定義された群の同型である。生成元は一周するループ $\omega(s):=(\cos2\pi s,\sin2\pi s)$ の類であり、$\deg\omega=1$ である。

$p$ が被覆写像であることは被覆空間の記事の例「円周を実数直線で覆う」による。以下、同記事の定理「道の持ち上げ」(始点を指定した持ち上げの存在と一意性)と系「道のホモトピー類と持ち上げの終点」(道としてホモトピックな二つの道の、同じ始点からの持ち上げは同じ終点をもつ)を用いる。$\deg$ が矛盾なく定まること(well-defined 性)はこの系に依り、同系はホモトピーの持ち上げ(同記事が Hat02 Proposition 1.30 を引用する)に依る。
矛盾なく定まること:持ち上げ $\tilde\gamma$ は一意に存在し、$p(\tilde\gamma(1))=\gamma(1)=b_0$ から $\tilde\gamma(1)\in p^{-1}(b_0)=\mathbb{Z}$ である。$\gamma\simeq\gamma'$ なら上の系により $\tilde\gamma(1)=\tilde\gamma'(1)$ である。
準同型性:$\gamma,\delta$ を $b_0$ のループ、$m:=\deg\gamma$、$n:=\deg\delta$ とする。$\tau(s):=\tilde\gamma(2s)$($s\le1/2$)、$\tilde\delta(2s-1)+m$($s\ge1/2$)とおくと、$s=1/2$ で $\tilde\gamma(1)=m=\tilde\delta(0)+m$ と一致するので $\tau$ は $0$ を始点とする $\mathbb{R}$ の道であり、$p(t+m)=p(t)$ から $p\circ\tau=\gamma\cdot\delta$ である。一意性により $\tau$ が $\gamma\cdot\delta$ の持ち上げなので、$\deg(\gamma\cdot\delta)=\tau(1)=n+m$ である。
全射性:$n\in\mathbb{Z}$ に対し $\omega_n(s):=(\cos2\pi ns,\sin2\pi ns)$ は $s\mapsto ns$ を持ち上げにもつので $\deg\omega_n=n$ である。とくに $\deg\omega=1$ であり、$[\omega]$ が生成元である。
単射性:$\deg\gamma=0$ とすると $\tilde\gamma$ は $0$ を基点とする $\mathbb{R}$ のループである。$H(s,t):=(1-t)\tilde\gamma(s)$ は連続で、$H(s,0)=\tilde\gamma(s)$、$H(s,1)=0$、$H(0,t)=H(1,t)=0$ を満たすので、$p\circ H$ は $\gamma=p\circ\tilde\gamma$ から定値ループ $c_{b_0}$ への道のホモトピーである。よって $[\gamma]$ は単位元である。$\square$

他の記事が所有する性質

次の性質は本記事では証明せず、それぞれの記事に譲る。

  • 被覆写像 $p\colon(E,e_0)\to(B,b_0)$ が誘導する $p_*\colon\pi_1(E,e_0)\to\pi_1(B,b_0)$ は単射であり、$B$ が弧状連結・局所弧状連結・半局所単連結ならば、弧状連結な被覆空間は $\pi_1(B,b_0)$ の部分群と一対一に対応し、普遍被覆(普遍被覆空間)の被覆変換群は $\pi_1(B,b_0)$ と同型である(被覆空間の記事の定理「基本群との関係」「普遍被覆の存在と被覆空間の分類」)。
  • 基本群のアーベル化は 1 次のホモロジー群と同型である:$X$ が弧状連結なら Hurewicz 準同型が同型 $\pi_1(X,x_0)^{\mathrm{ab}}\cong H_1(X;\mathbb{Z})$ を誘導する(ホモトピー群の記事の命題「Hurewicz準同型」)。
  • 弧状連結な基点付き空間のウェッジ和の基本群は基本群の自由積である:適当な条件のもとで $\pi_1(X\vee Y)\cong\pi_1(X)\ast\pi_1(Y)$(Van Kampenの定理の記事の系「ウェッジ和の基本群」)。
  • $n\ge2$ のとき $S^n$ は単連結である(単連結空間の記事の命題「球面の単連結性」。Van Kampenの定理の記事にも別証がある)。

補足

基本群の計算の道具

基本群を具体的に計算するときは、次の道具がよく使われる。

  • 被覆空間:fundamental-group-thm-circle の証明のように、単連結な被覆空間(普遍被覆)が分かれば、被覆変換群として基本群が読み取れる。$\mathbb{RP}^n$・レンズ空間・トーラスはこの型である。
  • Van Kampen の定理:空間を弧状連結な共通部分をもつ二つの開集合で覆い、各片の基本群の融合積として全体の基本群を求める。群の表示(生成元と関係式)が与えられていれば、表示の形で答えが書ける。CW複体の 2 骨格までの情報で基本群が決まるのもこの定理の帰結である。
  • Wirtinger 表示:結び目の図式から補空間 $\mathbb{R}^3\setminus K$ の基本群の表示を直接読み取る手続きで、Van Kampen の定理の応用である(Wirtinger表示)。
  • ホモトピー完全系列:ファイバー束や Serreファイブレーションがあれば、ファイバー・全空間・底空間のホモトピー群を結ぶ完全系列の末尾に基本群が現れ、これで計算できることがある(ホモトピー群、Hat02 §4.2)。
分野ごとの使われ方
  • 位相幾何学では、空間を区別する最も基本的な不変量であり、単連結性の判定、被覆空間の分類、Brouwerの不動点定理や代数学の基本定理の証明に使われる。3 次元閉多様体が単連結なら $S^3$ に同相であるというポアンカレ予想は、基本群一つで多様体が決まる場合の代表例である。
  • 代数的位相幾何学では、基本群はしばしば非可換であり(結び目補空間、閉曲面)、群の表示を通じて組合せ群論の対象として扱われる。高次のホモトピー群はアーベル群になるので、非可換性は基本群に固有の現象である。
  • 幾何学的群論では、任意の群 $G$ に対し $\pi_1(X)\cong G$ で高次ホモトピー群が消える空間 $X=K(G,1)$(Eilenberg–MacLane空間)を構成できることを用い、群を空間の幾何(作用・双曲性)で調べる(Hat02 §1.B)。

関連項目

参考文献

[1]
Allen Hatcher, Algebraic Topology, Cambridge University Press, 2002, §1.1(基本群の定義、Theorem 1.7 $\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$、Theorem 1.8 代数学の基本定理、Theorem 1.9 Brouwer の不動点定理、Proposition 1.18 ホモトピー不変性、Proposition 1.30 ホモトピーの持ち上げ)、§1.3 Example 1.43(レンズ空間)、§1.B($K(G,1)$ 空間)、§4.2(ホモトピー完全系列)
[2]
James R. Munkres, Topology, Prentice Hall, 2000, §51(道のホモトピーと道の積)、§52(基本群)、§54(円周の基本群)

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