群の作用(group action)とは、群 $G$ と集合 $X$ に対する写像 $G\times X\to X$、$(g,x)\mapsto g\cdot x$ で、$e\cdot x=x$ と $(gh)\cdot x=g\cdot(h\cdot x)$ を満たすもののことである。これは $G$ から $X$ 上の対称群への準同型を与えることと同じであり、群の元を集合の置換として実現する。点 $x$ から群の元で到達できる点の全体を軌道、$x$ を動かさない元の全体を安定化群といい、軌道は $X$ を分割し、軌道と安定化群による剰余類の集合は一対一に対応する(軌道・安定化群定理)。対称群の文字への作用、群の自分自身への左移動や共役による作用、剰余類への作用、行列のベクトルへの作用が代表例であり、推移的・忠実・自由といった性質で区別される。
前提知識: 群, 写像, 全単射, 対称群, 群準同型, 部分群
群 $G$ の単位元を $e$ と書く。集合 $X$ から $X$ への全単射の全体は、写像の合成を積として群をなす。これを $X$ 上の対称群といい $S_X$ と書く($X=\{1,\dots,n\}$ のときは $S_n$)。
群 $G$ と集合 $X$ に対し、直積集合 $G\times X$ から $X$ への写像 $(g,x)\mapsto g\cdot x$ が次の 2 条件を満たすとき、この写像を $G$ の $X$ への 左作用、または単に 作用(group action)といい、$G$ は $X$ に(左から)作用する という。
作用の定義、軌道・安定化群とその基本性質は DF04 §1.7・§4.1、Lan02 Chapter I §5 にある。条件 2 の左辺の $gh$ は群 $G$ の積であり、右辺は「先に $h$ を、続いて $g$ を施す」ことを表す。群の積の順序と、施す順序が逆向きに対応している。これを入れ替えたものが右作用である。
写像 $X\times G\to X$、$(x,g)\mapsto x\cdot g$ が、すべての $x\in X$、$g,h\in G$ について $x\cdot e=x$ と $x\cdot(gh)=(x\cdot g)\cdot h$ を満たすとき、これを $G$ の $X$ への 右作用 という。
右作用では $gh$ が「先に $g$ を、続いて $h$ を施す」ことを表す。右作用 $x\cdot g$ が与えられたとき、$g\ast x:=x\cdot g^{-1}$ とおくと左作用が得られる。実際 $e\ast x=x\cdot e=x$ であり、逆元について $(gh)^{-1}=h^{-1}g^{-1}$ なので
$$
(gh)\ast x=x\cdot(h^{-1}g^{-1})=(x\cdot h^{-1})\cdot g^{-1}=g\ast(h\ast x)
$$
である。同じ式で左作用から右作用が得られ、2 つの操作は互いに逆である。したがって左作用と右作用は本質的に同じ情報であり、以下では左作用だけを扱う。$G$ がアーベル群なら、左作用 $g\cdot x$ は同じ式 $x\cdot g:=g\cdot x$ で右作用にもなる($x\cdot(gh)=(hg)\cdot x=(x\cdot g)\cdot h$)。
作用から、次の部分集合・部分群が定まる。
群 $G$ が集合 $X$ に作用しているとし、$x\in X$ とする。
群 $G$ が集合 $X$ に作用しているとする。
$X\neq\emptyset$ なら、自由な作用は忠実である。逆は成り立たない(ex-group-action-symmetric)。
群は対称性を抽象化した概念であり、作用はその対称性を具体的な対象の上で動かしたものである。正方形の対称性の群(二面体群)は正方形の頂点の集合に作用し、対称群 $S_n$ は $n$ 個の文字を並べ替え、可逆な行列の群はベクトルを動かす。抽象的な群を調べるときも、それを適当な集合に作用させると、元の個数の数え上げや部分群の構成が集合の言葉で行える。
$x$ の軌道は、群の元を施して $x$ から到達できる点の全体であり、安定化群は $x$ を動かさない対称性の全体である。$G$ が有限なら、軌道の大きさと安定化群の位数の積はつねに $|G|$ に等しい(thm-group-action-orbit-stabilizer)。$x$ を動かさない対称性が多い点ほど、その軌道は小さい。たとえば正方形の対称性の群(群の位数は $8$)では、頂点の安定化群はその頂点を通る対角線についての鏡映と恒等写像の 2 元からなり、頂点の軌道は 4 頂点全体である($8=4\cdot2$)。
置換の積 $\sigma\tau$ は「$\tau$ を先に、$\sigma$ を後に」施す合成とする。
$S_n$ は $\{1,\dots,n\}$ に $\sigma\cdot i:=\sigma(i)$ で作用する。条件 1 は $e$ が恒等写像であることから、条件 2 は積が写像の合成であること $(\sigma\tau)(i)=\sigma(\tau(i))$ から従う。$n\ge1$ ならこの作用は推移的である($i\neq j$ なら互換 $(i\,j)$ が $i$ を $j$ に送る)。$\sigma(i)=i$ がすべての $i$ で成り立つのは $\sigma=e$ のときだけなので、忠実でもある。文字 $n$ の安定化群は $n$ を動かさない置換の全体で、$S_{n-1}$ と同一視できる。$n\ge3$ ならこの作用は自由でない($(1\,2)$ は $3$ を動かさない)。したがって、忠実だが自由でない作用の例になる。
$n\ge2$ について、thm-group-action-orbit-stabilizer を $x=n$ に適用すると $|S_n|=|S_n\cdot n|\cdot|(S_n)_n|=n\cdot|S_{n-1}|$ となり、$|S_1|=1$ を起点とする帰納法で $|S_n|=n!$ が得られる。
部分群 $H\subset S_n$ も制限によって $\{1,\dots,n\}$ に作用する。たとえば $H=\langle(1\,2\,3)\rangle\subset S_4$ の作用の軌道は $\{1,2,3\}$ と $\{4\}$ であり、作用は推移的でなく、$4$ は固定点である。
群 $G$ は自分自身に左からの積 $g\cdot x:=gx$ で作用する。条件 1 は $ex=x$、条件 2 は結合法則 $(gh)x=g(hx)$ である。$x,y\in G$ に対し $g=yx^{-1}$ とおけば $gx=y$ なので作用は推移的であり、$gx=x$ なら右から $x^{-1}$ を掛けて $g=e$ となるので自由である。とくに忠実であり、prop-group-action-permutation の準同型 $G\to S_G$ は単射である。これがCayleyの定理(対称群 の記事の定理「Cayleyの定理」)の内容であり、すべての群は対称群の部分群と同型になる。
群 $G$ は自分自身に共役 $g\cdot x:=gxg^{-1}$ で作用する。条件 1 は $exe^{-1}=x$、条件 2 は $(gh)x(gh)^{-1}=g(hxh^{-1})g^{-1}$ である。この作用の軌道は $x$ の共役類 $\{gxg^{-1}\mid g\in G\}$ であり、安定化群は $x$ と可換な元の全体 $C_G(x):=\{g\in G\mid gx=xg\}$、すなわち $x$ の中心化群である。作用の核と固定点の全体は、ともに群の中心 $Z(G)$ に一致する(核については 群の中心 の記事の命題「共役作用の核としての中心」)。$|G|\ge2$ なら $\{e\}$ が 1 元だけの軌道なので、この作用は推移的でない。$G$ が可換ならすべての $g$ が恒等写像として作用し(核が $G$ 全体)、可換でなければ核 $Z(G)$ は $G$ より小さい。
$G$ は部分群全体の集合にも共役 $g\cdot H:=gHg^{-1}$ で作用する。部分群 $H$ の安定化群 $N_G(H):=\{g\in G\mid gHg^{-1}=H\}$ を $H$ の正規化群といい、固定点は正規部分群である。
$H$ を $G$ の部分群とし、$G/H$ を左剰余類 $aH$ の全体とする。$G$ は $G/H$ に $g\cdot aH:=gaH$ で作用する。$aH=a'H$ なら $a'=ah$($h\in H$)なので $ga'H=gahH=gaH$ であり、定義は代表元によらない。条件 1・2 は左移動の場合と同じく確かめられる。$a\cdot H=aH$ なので作用は推移的である。剰余類 $aH$ の安定化群は $\{g\in G\mid a^{-1}ga\in H\}=aHa^{-1}$ であり、とくに $H$ 自身(剰余類 $eH$)の安定化群は $H$ である。
作用の核はすべての安定化群の共通部分 $\bigcap_{a\in G}aHa^{-1}$ であり、これは $H$ の正規核である(部分群の正規核 の記事の定理「剰余類作用の核」)。たとえば $G=S_3$、$H=\langle(1\,2)\rangle$ なら、$H$ の 3 つの共役 $\langle(1\,2)\rangle,\langle(1\,3)\rangle,\langle(2\,3)\rangle$ の共通部分は $\{e\}$ であり、$S_3$ の 3 つの剰余類への作用は忠実である。
$k$ を体、$n\ge1$ とする。一般線形群 $\mathrm{GL}_n(k)$ は $k^n$ に行列の積 $A\cdot v:=Av$ で作用する(条件 1 は $Iv=v$、条件 2 は行列の積の結合法則)。この作用の軌道は $\{0\}$ と $k^n\setminus\{0\}$ の 2 つである。実際 $A0=0$ であり、$v\neq0$ なら $v$ を第 1 ベクトルとする $k^n$ の基底 $v,v_2,\dots,v_n$ がとれ、これらを列に並べた可逆行列 $A$ は標準基底の第 1 ベクトル $e_1$ を $v$ に送る。よって $0$ でないベクトルはすべて $e_1$ と同じ軌道にある。作用は推移的でないが、$Ae_i=e_i$($i=1,\dots,n$)なら $A=I$ なので忠実である。各行列が $k^n$ の線形写像として作用するこのような作用は、群の表現の基本的な例である。
整数の加法群 $\mathbb{Z}$ は実数全体 $\mathbb{R}$ に $n\cdot x:=x+n$ で作用する。加法群なので条件 1 は $x+0=x$、条件 2 は $x+(m+n)=(x+n)+m$ である。$x$ の軌道は $x+\mathbb{Z}$ であり、軌道の集合 $\mathbb{R}/\mathbb{Z}$ は区間 $[0,1)$ の点と一対一に対応する。$x+n=x$ なら $n=0$ なので作用は自由であり、軌道が 1 つではないので推移的でない。
群 $G$ 上で $g\cdot x:=xg$ と定めると、条件 1($xe=x$)は満たすが、条件 2 は一般に満たさない。$(gh)\cdot x=xgh$ であり、$g\cdot(h\cdot x)=(xh)g=xhg$ である。$x=e$ とすると、条件 2 が成り立つには $gh=hg$ が必要である。$G=S_3$、$g=(1\,2)$、$h=(1\,3)$ とすると $gh=(1\,3\,2)$、$hg=(1\,2\,3)$ で等しくないので、条件 2 が破れる。この例は条件 1 を満たすが条件 2 を満たさず、含意「条件 1 を満たす写像 $G\times X\to X$ は作用である」を破る。$x\cdot g:=xg$ は右作用であり、$g\cdot x:=xg^{-1}$ とすれば左作用になる(def-group-action-right の後の段落)。
$X$ を 2 元以上の集合、$x_0\in X$ とし、すべての $g\in G$、$x\in X$ について $g\cdot x:=x_0$ と定める。$(gh)\cdot x=x_0$、$g\cdot(h\cdot x)=g\cdot x_0=x_0$ なので条件 2 は満たされるが、$x\neq x_0$ について $e\cdot x=x_0\neq x$ であり、条件 1 は満たされない。この例は条件 2 を満たすが条件 1 を満たさず、含意「条件 2 を満たす写像は作用である」を破る。このとき各 $g$ が定める写像 $x\mapsto g\cdot x$ は全単射でない。条件 1 は、各元が全単射として作用すること(prop-group-action-permutation の 1)を保証する役割を担っている。
$G$ を群、$X$ を集合とする。
1・2:作用の条件 2 は、すべての $g,h$ について写像として $\rho(gh)=\rho(g)\circ\rho(h)$ であることを、条件 1 は $\rho(e)=\mathrm{id}_X$ であることを述べている。よって $\rho(g)\circ\rho(g^{-1})=\rho(e)=\mathrm{id}_X$、$\rho(g^{-1})\circ\rho(g)=\mathrm{id}_X$ であり、$\rho(g)$ は $\rho(g^{-1})$ を逆写像とする全単射、すなわち $S_X$ の元である。$\rho(gh)=\rho(g)\circ\rho(h)$ は $\rho$ が群準同型であることを意味する。$g\in\ker\rho$ は $\rho(g)=\mathrm{id}_X$、すなわちすべての $x$ で $g\cdot x=x$ となることと同値なので、$\ker\rho$ は作用の核である。
3:群準同型は単位元を単位元に送る(群準同型 の記事の命題「単位元と逆元の保存」)ので $e\cdot x=\rho(e)(x)=\mathrm{id}_X(x)=x$ であり、$(gh)\cdot x=\rho(gh)(x)=\rho(g)(\rho(h)(x))=g\cdot(h\cdot x)$ である。作用から $\rho$ を作り、その $\rho$ から作用を作ると $\rho(g)(x)=g\cdot x$ でもとの作用に戻り、準同型から始めても同様にもとの準同型に戻る。$\square$
$\rho$ を作用の置換表現という。作用が忠実であることは $\ker\rho=\{e\}$、すなわち $\rho$ が単射であること(群準同型 の記事の命題「単射性と核」)と同値である。同じ対応は 対称群 の記事の命題「群作用との対応」にもある。この対応により、「$G$ が $X$ に作用する」ことは「$G$ の各元が $X$ の置換として実現され、群の積が置換の合成に対応する」ことと言い換えられる。
群 $G$ が集合 $X$ に作用しているとする。
1:条件 1 により $e\in G_x$ である。$g,h\in G_x$ なら $(gh)\cdot x=g\cdot(h\cdot x)=g\cdot x=x$ であり、$h\in G_x$ なら $h^{-1}\cdot x=h^{-1}\cdot(h\cdot x)=(h^{-1}h)\cdot x=e\cdot x=x$ である。よって $G_x$ は積と逆元で閉じた、単位元を含む部分集合であり、部分群である。
2:$x=e\cdot x$ なので $x\sim x$ である。$y=g\cdot x$ なら、1 の計算と同じく $g^{-1}\cdot y=x$ なので $y\sim x$ である。$y=g\cdot x$、$z=h\cdot y$ なら $z=h\cdot(g\cdot x)=(hg)\cdot x$ なので $x\sim z$ である。$x$ と同値な元の全体は定義から $\{g\cdot x\mid g\in G\}=G\cdot x$ である。同値類は $X$ を互いに交わらない部分集合に分割する。
3:$h\in G_x$ なら $(ghg^{-1})\cdot(g\cdot x)=(ghg^{-1}g)\cdot x=g\cdot(h\cdot x)=g\cdot x$ なので、$gG_xg^{-1}\subset G_{g\cdot x}$ である。これを $g^{-1}$ と点 $g\cdot x$ に適用すると $g^{-1}G_{g\cdot x}g\subset G_{g^{-1}\cdot(g\cdot x)}=G_x$、すなわち $G_{g\cdot x}\subset gG_xg^{-1}$ である。
4:$K$ は prop-group-action-permutation の準同型 $\rho$ の核なので正規部分群である(群準同型 の記事の命題「核は正規部分群で像は部分群」)。$gK=g'K$ なら $g'=gk$($k\in K$)であり、$g'\cdot x=g\cdot(k\cdot x)=g\cdot x$ なので、定義は代表元によらない。作用の条件 1・2 は $G$ の作用の条件から直ちに従う。$gK$ がすべての $x$ を動かさなければ $g\in K$、すなわち $gK$ は $G/K$ の単位元なので、この作用は忠実である。$\square$
2 により、$X$ 上の作用を調べることは、各軌道の上の作用を調べることに帰着する。各軌道の上では $G$ は推移的に作用しているので、推移的な作用が基本の部品になる。その部品の形を決めるのが次の定理である。
群 $G$ が集合 $X$ に作用しているとし、$x\in X$ とする。写像
$$
\varphi\colon G/G_x\to G\cdot x,\qquad gG_x\mapsto g\cdot x
$$
は定義が代表元によらず、全単射であり、すべての $g'\in G$ について $\varphi(g'gG_x)=g'\cdot\varphi(gG_x)$ を満たす。とくに、軌道 $G\cdot x$ の元の個数(濃度)は安定化群の指数(部分群の指数)$[G:G_x]$ に等しい。$G$ が有限群なら
$$
|G|=|G\cdot x|\cdot|G_x|
$$
であり、軌道の元の個数は $|G|$ の約数である。
$g,h\in G$ について
$$
gG_x=hG_x\iff h^{-1}g\in G_x\iff(h^{-1}g)\cdot x=x\iff g\cdot x=h\cdot x
$$
である。最後の同値は、$(h^{-1}g)\cdot x=h^{-1}\cdot(g\cdot x)$ に注意して、両辺に $h$ を施すか $h^{-1}$ を施せばよい。左から右への向きは $\varphi$ の定義が代表元によらないことを、右から左への向きは $\varphi$ が単射であることを示す。軌道の定義から $\varphi$ は全射である。$\varphi(g'gG_x)=(g'g)\cdot x=g'\cdot(g\cdot x)=g'\cdot\varphi(gG_x)$ である。
$G$ が有限群なら、Lagrangeの定理により $|G|=[G:G_x]\cdot|G_x|$ であり、$[G:G_x]=|G\cdot x|$ を代入すれば等式を得る。$\square$
この定理は軌道・固定群定理とも呼ばれる。等式 $\varphi(g'gG_x)=g'\cdot\varphi(gG_x)$ は、$\varphi$ が ex-group-action-cosets の剰余類への作用と $G\cdot x$ 上の作用を対応させることを述べている。一般に、$G$ 集合 $X,Y$ の間の写像 $f\colon X\to Y$ がすべての $g,x$ で $f(g\cdot x)=g\cdot f(x)$ を満たすとき、$f$ を $G$ 写像(同変写像)といい、全単射な $G$ 写像を $G$ 集合の同型という。
群 $G$ が集合 $X$ に推移的に作用しているとし、$x\in X$ とする。このとき $gG_x\mapsto g\cdot x$ は、剰余類への作用をもつ $G$ 集合 $G/G_x$ から $X$ への $G$ 集合の同型である。したがって、推移的な $G$ 集合はすべて、ある部分群 $H$ についての $G/H$ と同型である。
推移性から $G\cdot x=X$ であり、thm-group-action-orbit-stabilizer の $\varphi$ は $G/G_x$ から $X$ への全単射な $G$ 写像である。$H=G_x$ とすればよい。$\square$
$H$ は $x$ の選び方によって、互いに共役な部分群の間で変わる(prop-group-action-orbits の 3)。ex-group-action-symmetric では $S_n$ の $\{1,\dots,n\}$ への作用が $S_n/S_{n-1}$ への作用と同型であり、ex-group-action-linear では $\mathrm{GL}_n(k)$ の $k^n\setminus\{0\}$ への作用が、$e_1$ を動かさない可逆行列の部分群による剰余類への作用と同型である。
$G$ と $X$ が有限で、相異なる軌道の代表元を $x_1,\dots,x_r$ とすると、prop-group-action-orbits の 2 と thm-group-action-orbit-stabilizer から
$$
|X|=\sum_{i=1}^{r}|G\cdot x_i|=\sum_{i=1}^{r}[G:G_{x_i}]
$$
である。1 元だけの軌道は固定点に当たるので、固定点をまとめると $|X|=|X^G|+\sum[G:G_{x_i}]$(和は 2 元以上の軌道の代表元にわたる)とも書ける。共役による作用(ex-group-action-conjugation)に適用したものが類等式であり(群の中心 の記事の補題「共役類と類等式」)、$G$ が素数 $p$ の冪の位数をもつ群なら、2 元以上の軌道の元の個数はすべて $p$ の倍数なので $|X|\equiv|X^G|\pmod p$ となる(Sylowの定理 の記事の補題「軌道の大きさと固定部分群」の後の段落)。
有限群 $G$ が有限集合 $X$ に作用しているとき、軌道の個数は
$$
|X/G|=\frac{1}{|G|}\sum_{g\in G}|X^g|
$$
に等しい。
集合 $\Omega:=\{(g,x)\in G\times X\mid g\cdot x=x\}$ の元の個数を 2 通りに数える。$g$ ごとに数えると $|\Omega|=\sum_{g\in G}|X^g|$ であり、$x$ ごとに数えると $|\Omega|=\sum_{x\in X}|G_x|$ である。thm-group-action-orbit-stabilizer により $|G_x|=|G|/|G\cdot x|$ なので、1 つの軌道 $O$ に属する $|O|$ 個の点からの寄与の和は $|O|\cdot|G|/|O|=|G|$ である。よって $\sum_{x\in X}|G_x|=|G|\cdot|X/G|$ であり、2 つの表示を比べて $|G|$ で割ればよい。$\square$
この公式はBurnsideの補題とも呼ばれる。たとえば正方形の 4 頂点を白と黒の 2 色で塗る $2^4=16$ 通りの塗り方の集合に、$90^\circ$ ずつの回転のなす位数 $4$ の群が作用するとき、固定される塗り方の個数は、恒等写像で $16$、$90^\circ$ と $270^\circ$ の回転で各 $2$(4 頂点が同色)、$180^\circ$ の回転で $4$(向かい合う頂点が同色)である。よって回転で移り合うものを同一視した塗り方は $(16+2+4+2)/4=6$ 通りである。
作用される集合 $X$ に構造があり、各 $g\in G$ がその構造を保つ写像として作用する場合が多い。位相空間に各元が同相写像として作用する場合、ベクトル空間に線形写像として作用する場合(群の表現)、別の群 $N$ に自己同型として作用する場合(準同型 $G\to\operatorname{Aut}(N)$ にあたり、半直積を構成する材料になる)などである。多項式の根の集合へのGalois群の作用も、Galois理論の出発点である。また、群 $G$ を対象が 1 つの圏とみなすと、$G$ の作用は、その圏から集合の圏への関手と同じものである(唯一の対象を $X$ に、射 $g$ を写像 $\rho(g)$ に送る)。
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