無理関数のグラフ

同義語:無理関数無理方程式graphs of irrational functions

概要

無理関数のグラフ(graphs of irrational functions)とは、$y=\sqrt{ax+b}$ のように根号の中に変数を含む関数(無理関数)のグラフである。$a\ne0$ のとき、$y=\sqrt{ax+b}$ のグラフは放物線 $y^2=ax+b$ の $y\ge0$ の部分で、$y=\frac{x^2-b}{a}$($x\ge0$)の逆関数のグラフであり、$y=\sqrt{x}$ のグラフを平行移動・拡大($a<0$ なら $y$ 軸で折り返す)したものである。根号を含む方程式は $\sqrt{f(x)}=g(x)\iff f(x)=g(x)^2$ かつ $g(x)\ge0$ と同値変形でき、条件 $g(x)\ge0$ を落として 2 乗すると、もとの方程式を満たさない解が混じる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 逆関数と合成関数, 2次方程式の判別式の正体, グラフの平行移動と対称移動

高校での出発点:平方根のグラフと、2 乗して解く方程式

$y=\sqrt x$ のグラフは、$y=x^2$ のグラフとよく似た形をしている。まず値の表で比べる。

$y=\sqrt x$ と $y=x^2$ の値の表

$x=0,1,4,9$ での $\sqrt x$ と、$x=0,1,2,3$ での $x^2$ を並べる。

$x$$0$$1$$4$$9$
$\sqrt x$$0$$1$$2$$3$
$x$$0$$1$$2$$3$
:--:--::--::--::--:
$x^2$$0$$1$$4$$9$

上の表の 2 行を入れ替えると下の表になる。$y=\sqrt x$ のグラフの点 $(0,0)$、$(1,1)$、$(4,2)$、$(9,3)$ は、$y=x^2$ のグラフの点 $(0,0)$、$(1,1)$、$(2,4)$、$(3,9)$ の座標を入れ替えたものである。座標を入れ替えることは直線 $y=x$ に関する対称移動なので、$y=\sqrt x$ のグラフは $y=x^2$($x\ge0$)のグラフを直線 $y=x$ で折り返した形になる(図 1)。

y=√x のグラフ(太線)は、y=x²(x≧0)のグラフ(細線)を直線 y=x で折り返したものである y=√x のグラフ(太線)は、y=x²(x≧0)のグラフ(細線)を直線 y=x で折り返したものである

2 乗して解くと解が増える

方程式 $\sqrt{x+1}=x-1$ を、両辺を 2 乗して解いてみる。
$$ x+1=(x-1)^2=x^2-2x+1 $$
から $x^2-3x=0$、$x(x-3)=0$ で、$x=0$ または $x=3$ である。
もとの方程式に代入して確かめる。$x=3$ では左辺 $\sqrt4=2$、右辺 $3-1=2$ で成り立つ。$x=0$ では左辺 $\sqrt1=1$、右辺 $0-1=-1$ で成り立たない。2 乗した方程式の解のうち、$x=0$ はもとの方程式の解ではない。

2 つの例から、次の問いが出てくる。

  1. $y=\sqrt{ax+b}$ のグラフは、いつも $y=x^2$ の半分を折り返した形か。どう動かせば得られるか。→ thm-irr-graph
  2. 2 乗したときに増える解は、どうすれば最初から除けるか。→ thm-irr-equation、cor-irr-ineq
  3. 根号を含む方程式の解の個数を、グラフで調べられるか。→ ex-irr-count
    高校の計算この記事の言葉使う道具
    値の表の 2 行を入れ替える$\sqrt{ax+b}$ は 2 次関数の逆関数逆関数と合成関数
    $y=\sqrt x$ をずらす・伸ばす平行移動・拡大・対称移動グラフの平行移動と対称移動
    2 乗して解き、代入して確かめる同値変形 $f=g^2$ かつ $g\ge0$thm-irr-equation
    直線を動かして交点を数える$0$ 以上の解の個数2次方程式の判別式の正体

言葉の準備:平方根と無理関数

$c\ge0$ のとき、2 乗して $c$ になる $0$ 以上の数がただ 1 つあり、それを $\sqrt c$ と書く。つまり
$$ \sqrt c\ge0,\qquad\bigl(\sqrt c\bigr)^2=c\qquad(c\ge0) $$
である。$c<0$ では、2 乗して $c$ になる実数はないので、$\sqrt c$ は実数の範囲では定めない。

無理関数

根号の中に変数 $x$ を含む式で表される関数を 無理関数 という。たとえば $y=\sqrt{x+1}$、$y=2\sqrt{3-x}$、$y=\sqrt{x^2+1}$ は無理関数である。無理関数の定義域は、特に断らない限り、根号の中が $0$ 以上になる $x$ の全体とする。根号の中に未知数を含む方程式を 無理方程式、根号の中に未知数を含む不等式を 無理不等式 という。

無理関数の定義域
  1. $y=\sqrt{x+1}$ の定義域は $x+1\ge0$、つまり $x\ge-1$ である。
  2. $y=\sqrt{3-x}$ の定義域は $3-x\ge0$、つまり $x\le3$ である。
  3. $y=\sqrt{x^2+1}$ の定義域は実数全体である($x^2+1\ge1>0$)。

根号を外すときに何度も使う事実を補題にしておく。

$0$ 以上の 2 数の 2 乗

$A\ge0$、$B\ge0$ とする。
(1) $A=B$ と $A^2=B^2$ は同値である。
(2) $A>B$ と $A^2>B^2$ は同値である。
特に、すべての実数 $t$ について $\sqrt{t^2}=\lvert t\rvert$ である。

差を因数分解する

段 1((1))。$A=B$ なら $A^2=B^2$ である。逆に $A^2=B^2$ とすると、$A^2-B^2=(A-B)(A+B)=0$ である。$A+B=0$ なら、$A\ge0$、$B\ge0$ から $A=B=0$ である。$A+B\ne0$ なら $A-B=0$ である。どちらでも $A=B$ である。
段 2((2))。$A>B$ なら、$A-B>0$ で、$A+B\ge A>B\ge0$ なので $A+B>0$ である。よって $A^2-B^2=(A-B)(A+B)>0$ である。逆に $A^2>B^2$ とする。$A\le B$ だとすると、$A=B$ なら $A^2=B^2$、$A< B$ なら今示したことで $A^2< B^2$ となり、どちらも $A^2>B^2$ に反する。よって $A>B$ である。
段 3($\sqrt{t^2}=\lvert t\rvert$)。$A=\sqrt{t^2}$、$B=\lvert t\rvert$ とおくと、どちらも $0$ 以上で、$A^2=t^2$、$B^2=\lvert t\rvert^2=t^2$ である。(1) により $A=B$ である。$\square$

$\sqrt{t^2}$ は $t$ ではなく $\lvert t\rvert$ である。たとえば $\sqrt{(-3)^2}=\sqrt9=3=\lvert-3\rvert$ で、$-3$ ではない。

主定理 1:$y=\sqrt{ax+b}$ のグラフ

ex-irr-start-table で見た「$y=\sqrt x$ は $y=x^2$ の逆関数」を、根号の中が 1 次式の場合に広げる。

$y=\sqrt{ax+b}$ のグラフ

$a\ne0$、$b$ を実数とし、$f(x)=\sqrt{ax+b}$ の定義域を $D=\{x\mid ax+b\ge0\}$ とする($a>0$ なら $x\ge-\dfrac ba$、$a<0$ なら $x\le-\dfrac ba$)。
(1) $y=f(x)$ のグラフは、放物線 $y^2=ax+b$、つまり $x=\dfrac{y^2-b}a$ のうち $y\ge0$ の部分である。
(2) $q(x)=\dfrac{x^2-b}a$ を $x\ge0$ で考えると、$q$ は $x\ge0$ から $D$ への全単射で、$f$ はその逆関数である。$f$ は $a>0$ なら狭義単調増加、$a<0$ なら狭義単調減少で、$D$ で連続であり、値全体は $y\ge0$ である。
(3) $y=f(x)$ のグラフは、$y=\sqrt x$ のグラフを、$a<0$ のときは $y$ 軸に関して対称に移し、$y$ 軸方向に $\sqrt{\lvert a\rvert}$ 倍に拡大し、$x$ 軸方向に $-\dfrac ba$ だけ平行移動したものである。

平方根の定義と逆関数の規則を使う

方針:(1) は平方根の定義そのもの、(2) は 逆関数と合成関数 の補題「互いに戻し合う関数」と定理「連続関数の 1 対 1 と狭義単調」、(3) は式の変形である。
段 1((1))。点 $(x,y)$ が $y=f(x)$ のグラフの上にあることは、$ax+b\ge0$ かつ $y=\sqrt{ax+b}$ であることと同じである。平方根の定義から、これは「$y\ge0$ かつ $y^2=ax+b$」と同じである($y\ge0$ かつ $y^2=ax+b$ なら $ax+b=y^2\ge0$ も成り立つ)。$y^2=ax+b$ を $x$ について解くと $x=\dfrac{y^2-b}a$ で、これは横向きの放物線である。
段 2((2):互いに戻し合う)。$t\ge0$ なら $a\,q(t)+b=t^2\ge0$ なので $q(t)\in D$ で、$f\bigl(q(t)\bigr)=\sqrt{t^2}=\lvert t\rvert=t$ である(lem-irr-square)。$x\in D$ なら $f(x)\ge0$ で、$q\bigl(f(x)\bigr)=\dfrac{(ax+b)-b}a=x$ である。逆関数と合成関数 の補題「互いに戻し合う関数」により、$q$ は $x\ge0$ から $D$ への全単射で、$f=q^{-1}$ である。
段 3((2):単調と連続)。$0\le t_1< t_2$ なら $t_1^2< t_2^2$ なので、$q(t_1)-q(t_2)=\dfrac{t_1^2-t_2^2}a$ は $a>0$ なら負、$a<0$ なら正である。つまり $q$ は $a>0$ なら狭義単調増加、$a<0$ なら狭義単調減少である。$q$ は多項式なので区間 $x\ge0$ で連続である。逆関数と合成関数 の定理「連続関数の 1 対 1 と狭義単調」(2) により、逆関数 $f$ は $q$ と同じ向きに狭義単調で、$D$ で連続である。$f$ の値全体は $q$ の定義域 $x\ge0$ である。
段 4((3))。$a>0$ なら $ax+b=a\Bigl(x+\dfrac ba\Bigr)$ なので $f(x)=\sqrt a\sqrt{x+\dfrac ba}$ である。$a<0$ なら $ax+b=\lvert a\rvert\Bigl(-\Bigl(x+\dfrac ba\Bigr)\Bigr)$ なので $f(x)=\sqrt{\lvert a\rvert}\sqrt{-\Bigl(x+\dfrac ba\Bigr)}$ である。$y=\sqrt x$ から順に、$x$ を $-x$ に替える($y$ 軸に関する対称移動、$a<0$ のときだけ)、全体を $\sqrt{\lvert a\rvert}$ 倍する($y$ 軸方向の拡大)、$x$ を $x+\dfrac ba$ に替える($x$ 軸方向に $-\dfrac ba$ の平行移動)と、$f(x)$ の式になる(グラフの平行移動と対称移動)。$\square$

  1. により、$y=\sqrt{ax+b}$ のグラフと、$y=\dfrac{x^2-b}a$($x\ge0$)のグラフは直線 $y=x$ に関して対称である(指数関数・対数関数のグラフと逆関数 の定理「逆関数のグラフ」)。また、放物線 $y^2=ax+b$ の $y\le0$ の部分は $y=-\sqrt{ax+b}$ のグラフである。
いろいろな $\sqrt{ax+b}$
  1. $y=\sqrt{x+2}$。$a=1$、$b=2$ で、$y=\sqrt x$ を $x$ 軸方向に $-2$ 平行移動したものである。端の点は $(-2,0)$ で、$x=2$ で $y=2$ である。
  2. $y=\sqrt{2x+4}$。$2x+4=2(x+2)$ なので $y=\sqrt2\sqrt{x+2}$ で、(1) のグラフを $y$ 軸方向に $\sqrt2$ 倍したものである。$x=-2,0,6$ で $y=0,2,4$ である。放物線 $y^2=2x+4$、つまり $x=\dfrac{y^2}2-2$ の $y\ge0$ の部分でもある。$y=4$ を代入すると $x=8-2=6$ で、点 $(6,4)$ が合う。
  3. $y=\sqrt{3-x}$。$a=-1$、$b=3$ で、$3-x=-(x-3)$ なので、$y=\sqrt x$ を $y$ 軸で折り返した $y=\sqrt{-x}$ を、$x$ 軸方向に $3$ 平行移動したものである。定義域は $x\le3$ で、$x$ が大きくなると値は小さくなる(狭義単調減少)。$x=3,2,-1$ で $y=0,1,2$ である。
    1. の $f(x)=\sqrt{2x+4}$ は、$q(x)=\dfrac{x^2-4}2$($x\ge0$)の逆関数である。$q(4)=\dfrac{16-4}2=6$、$f(6)=\sqrt{16}=4$ ともどる。

y=√x を平行移動・拡大・対称移動した y=√(x+2)、y=√(2x+4)、y=√(3−x) のグラフ。端の点はそれぞれ (−2,0)、(−2,0)、(3,0) y=√x を平行移動・拡大・対称移動した y=√(x+2)、y=√(2x+4)、y=√(3−x) のグラフ。端の点はそれぞれ (−2,0)、(−2,0)、(3,0)

主定理 2:2 乗しても解が増えない条件

ex-irr-start-eq で $x=0$ が混じったのは、2 乗すると「$\sqrt{x+1}=x-1$」と「$-\sqrt{x+1}=x-1$」の区別が消えるからである。実際、$x=0$ では $-\sqrt1=-1=0-1$ で、後者が成り立っている。右辺が $0$ 以上という条件を付ければ、この区別を残せる。

無理方程式の同値変形

$f(x)$、$g(x)$ を $x$ の式とする。実数 $x$ について
$$ \sqrt{f(x)}=g(x)\iff f(x)=g(x)^2\ \text{かつ}\ g(x)\ge0 $$
が成り立つ。ここで左辺は「$f(x)\ge0$ で、$\sqrt{f(x)}$ が $g(x)$ に等しい」という意味である。

両辺が $0$ 以上のときだけ 2 乗は同値変形

段 1($\Rightarrow$)。$\sqrt{f(x)}=g(x)$ とする。平方根の定義から $\sqrt{f(x)}\ge0$ なので、$g(x)=\sqrt{f(x)}\ge0$ である。両辺を 2 乗すると $f(x)=\bigl(\sqrt{f(x)}\bigr)^2=g(x)^2$ である。
段 2($\Leftarrow$)。$f(x)=g(x)^2$ かつ $g(x)\ge0$ とする。$f(x)=g(x)^2\ge0$ なので $\sqrt{f(x)}$ が定まる。$A=\sqrt{f(x)}$、$B=g(x)$ とおくと、$A\ge0$、$B\ge0$ で、$A^2=f(x)=B^2$ である。lem-irr-square (1) により $A=B$、つまり $\sqrt{f(x)}=g(x)$ である。$\square$

条件「$g(x)\ge0$」を落とすと、段 2 で lem-irr-square が使えない。$A^2=B^2$ から言えるのは $A=\lvert B\rvert$ だけで、$B<0$ なら $A=-B$ となる。ex-irr-start-eq の $x=0$ がこの場合である。

同値変形で解く
  1. $\sqrt{x+1}=x-1$。thm-irr-equation により
    $$ \sqrt{x+1}=x-1\iff x+1=(x-1)^2\ \text{かつ}\ x-1\ge0\iff x(x-3)=0\ \text{かつ}\ x\ge1 $$
    で、$x=0$ は $x\ge1$ を満たさないので、解は $x=3$ だけである。代入して確かめる手間がいらない。
  2. $\sqrt{2x+3}=x$。$2x+3=x^2$ かつ $x\ge0$ で、$x^2-2x-3=(x+1)(x-3)=0$ から $x=-1$、$3$。$x\ge0$ を満たすのは $x=3$ で、$\sqrt9=3$ と合う。

放物線 y²=x+1 の上半分が y=√(x+1)、下半分(破線)が y=−√(x+1) である。直線 y=x−1 は上半分と (3,2) で、下半分と (0,−1) で交わる 放物線 y²=x+1 の上半分が y=√(x+1)、下半分(破線)が y=−√(x+1) である。直線 y=x−1 は上半分と (3,2) で、下半分と (0,−1) で交わる
図 3 は、2 乗した方程式 $x+1=(x-1)^2$ が、直線 $y=x-1$ と放物線 $y^2=x+1$ 全体の交点を求めていることを示している。thm-irr-graph (1) により、$y=\sqrt{x+1}$ はその上半分($y\ge0$)だけなので、下半分との交点 $(0,-1)$ は除かなければならない。条件 $g(x)\ge0$ は「交点が上半分にある」ことを表している。
不等式も同じように、両辺の符号で場合を分けて 2 乗する。

無理不等式の同値変形

$f(x)$、$g(x)$ を $x$ の式とする。実数 $x$ について、次が成り立つ。
(1) $\sqrt{f(x)}>g(x)\iff\bigl(f(x)\ge0\ \text{かつ}\ g(x)<0\bigr)$ または $\bigl(g(x)\ge0\ \text{かつ}\ f(x)>g(x)^2\bigr)$
(2) $\sqrt{f(x)}< g(x)\iff f(x)\ge0\ \text{かつ}\ g(x)>0\ \text{かつ}\ f(x)< g(x)^2$

$g(x)$ の符号で分ける

段 1((1)、$g(x)<0$ のとき)。$\sqrt{f(x)}$ が定まれば($f(x)\ge0$ なら)$\sqrt{f(x)}\ge0>g(x)$ で、不等式は成り立つ。$f(x)<0$ なら左辺が定まらないので成り立たない。よってこの場合、$\sqrt{f(x)}>g(x)$ は $f(x)\ge0$ と同値である。
段 2((1)、$g(x)\ge0$ のとき)。$\sqrt{f(x)}>g(x)$ なら、$f(x)\ge0$ で、$A=\sqrt{f(x)}$、$B=g(x)$ はどちらも $0$ 以上なので、lem-irr-square (2) により $f(x)=A^2>B^2=g(x)^2$ である。逆に $f(x)>g(x)^2$ なら $f(x)>0$ で $\sqrt{f(x)}$ が定まり、同じ補題で $\sqrt{f(x)}>g(x)$ である。段 1・段 2 を合わせると (1) になる。
段 3((2))。$\sqrt{f(x)}< g(x)$ なら、$f(x)\ge0$ で、$g(x)>\sqrt{f(x)}\ge0$ なので $g(x)>0$ である。$A=g(x)$、$B=\sqrt{f(x)}$ に lem-irr-square (2) を使うと $g(x)^2>f(x)$ である。逆に $f(x)\ge0$、$g(x)>0$、$f(x)< g(x)^2$ なら、同じ補題で $g(x)>\sqrt{f(x)}$ である。$\square$

無理不等式を解く
  1. $\sqrt{x+2}>x$。cor-irr-ineq (1) で $f(x)=x+2$、$g(x)=x$ とする。
  • $x<0$ の場合:$x+2\ge0$ かつ $x<0$、つまり $-2\le x<0$。
  • $x\ge0$ の場合:$x+2>x^2$、つまり $x^2-x-2=(x+1)(x-2)<0$ から $-1< x<2$ で、$x\ge0$ と合わせて $0\le x<2$。
    2 つを合わせて、解は $\boxed{-2\le x<2}$ である。グラフでは、$y=\sqrt{x+2}$ が直線 $y=x$ より上にある範囲である(図 4)。
  1. $\sqrt{x+1}< x-1$。cor-irr-ineq (2) により、$x+1\ge0$ かつ $x-1>0$ かつ $x+1<(x-1)^2$ である。3 つ目は $x^2-3x>0$、つまり $x<0$ または $x>3$ で、$x>1$ と合わせて解は $x>3$ である。ex-irr-equation (1) の解 $x=3$ を境に、右側で $\sqrt{x+1}$ が $x-1$ より小さくなる。

y=√(x+2) のグラフが直線 y=x より上にあるのは −2≦x<2 の範囲(色を付けた部分)で、2 つのグラフは (2,2) で交わる y=√(x+2) のグラフが直線 y=x より上にあるのは −2≦x<2 の範囲(色を付けた部分)で、2 つのグラフは (2,2) で交わる

解の個数をグラフと 2 次方程式で調べる

右辺に文字を含む無理方程式の解の個数は、グラフと直線の交点を数えると見通せる。根号の中身を新しい文字でおくと、2 次方程式の $0$ 以上の解の個数に直せる。

$\sqrt{x+1}=x+k$ の解の個数

実数 $k$ に対し、方程式 $\sqrt{x+1}=x+k$ の実数解の個数を調べる。
段 1(おきかえ)。$t=\sqrt{x+1}$ とおく。thm-irr-graph (2)($a=b=1$)により、$x\ge-1$ の $x$ と $t\ge0$ の $t$ は $x=t^2-1$ で 1 つずつ対応する。このとき $x+k=t^2-1+k$ なので、方程式は
$$ t=t^2-1+k,\qquad\text{つまり}\qquad t^2-t+(k-1)=0\quad(t\ge0) $$
になる。異なる $t$ には異なる $x$ が対応するので、もとの方程式の解の個数は、この 2 次方程式の $0$ 以上の解の個数に等しい。
段 2(判別式)。判別式は $1-4(k-1)=5-4k$ である(2次方程式の判別式の正体)。$k>\dfrac54$ なら実数解がなく、もとの方程式の解は $0$ 個である。$k=\dfrac54$ なら重解 $t=\dfrac12\ge0$ で、解は $x=\dfrac14-1=-\dfrac34$ の 1 個である。
段 3($k<\dfrac54$)。異なる 2 つの実数解をもち、解と係数の関係から和は $1$、積は $k-1$ である。

  • $1< k<\dfrac54$ なら積が正で、2 つの解は同符号、和が正なので 2 つとも正である。解は 2 個である。
  • $k=1$ なら $t^2-t=0$ で $t=0$、$1$ の 2 つとも $0$ 以上で、解は $x=-1$、$0$ の 2 個である。
  • $k<1$ なら積が負で、正の解と負の解が 1 つずつある。解は 1 個である。
    まとめると次のとおりである。
    $k$ の範囲直線 $y=x+k$ と曲線 $y=\sqrt{x+1}$解の個数
    $k<1$端の点 $(-1,0)$ より下を通り、1 回交わる$1$
    $k=1$端の点 $(-1,0)$ を通り、もう 1 点 $(0,1)$ でも交わる$2$
    $1< k<\dfrac54$2 回交わる$2$
    $k=\dfrac54$点 $\left(-\dfrac34,\dfrac12\right)$ で接する$1$
    $k>\dfrac54$交わらない$0$
    $k=0$ では $t^2-t-1=0$ の正の解 $t=\dfrac{1+\sqrt5}2$ から $x=t^2-1=\dfrac{1+\sqrt5}2$ の 1 個、$k=\dfrac65$ では $t^2-t+\dfrac15=0$ の解 $t=\dfrac{5\pm\sqrt5}{10}$ がどちらも正で 2 個である。

y=√(x+1) と傾き 1 の直線 y=x+k の族。k=1 の直線は端の点 (−1,0) を通り、k=5/4 の直線は (−3/4,1/2) で接する y=√(x+1) と傾き 1 の直線 y=x+k の族。k=1 の直線は端の点 (−1,0) を通り、k=5/4 の直線は (−3/4,1/2) で接する
図 5 で直線 $y=x+k$ を下から上へ動かすと、交点は 1 個、端の点を通る $k=1$ から 2 個、接する $k=\dfrac54$ で 1 個、それより上で $0$ 個と変わる。2 次方程式の解が「$0$ 以上の範囲にいくつあるか」は、解の配置 の考え方そのものである。おきかえ $t=\sqrt{x+1}$ で範囲の条件 $t\ge0$ が付くことは、指数方程式・対数方程式 で $t=2^x$ とおくと $t>0$ が付くのと同じ形である。

例と反例

thm-irr-equation と cor-irr-ineq の条件を落とすと、何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
右辺が $0$ 以上($g(x)\ge0$)$\sqrt{x+1}=x-1$ の $x=0$2 乗した方程式の解はもとの方程式の解
$t\ge0$$t=-3$$\sqrt{t^2}=t$
$g(x)<0$ の場合を別に考える$\sqrt{x+2}\ge x$ を $x+2\ge x^2$ だけで解く解がすべて得られる
根号の中が $0$ 以上$\sqrt x<2$ を $x<4$ だけで解く解がすべて定義域に入る
反例:2 乗して余分な解を残す

ex-irr-start-eq のとおり、$\sqrt{x+1}=x-1$ を 2 乗した $x+1=(x-1)^2$ の解 $x=0$、$3$ のうち、$x=0$ はもとの方程式を満たさない(左辺 $1$、右辺 $-1$)。$x=0$ で $g(x)=x-1=-1<0$ なので、thm-irr-equation の条件 $g(x)\ge0$ で除かれる。2 乗は「両辺が等しい」から「両辺の 2 乗が等しい」への変形で、逆向きは両辺が $0$ 以上のときにしか成り立たない。

反例:$\sqrt{t^2}=t$ と書く

$t=-3$ では $\sqrt{t^2}=\sqrt9=3$ で、$t=-3$ と等しくない。正しくは $\sqrt{t^2}=\lvert t\rvert$ である(lem-irr-square)。たとえば $\sqrt{x^2-2x+1}=\sqrt{(x-1)^2}=\lvert x-1\rvert$ で、これを $x-1$ とすると $x<1$ で誤りになる。$y=\sqrt{x^2-2x+1}$ のグラフは、直線 $y=x-1$ ではなく、頂点 $(1,0)$ の V 字形である(絶対値を含む関数のグラフ)。

反例:不等式を 2 乗だけで解く
  1. $\sqrt{x+2}\ge x$ を、両辺を 2 乗した $x+2\ge x^2$ だけで解くと、$(x+1)(x-2)\le0$ から $-1\le x\le2$ になる。正しい解は、ex-irr-ineq (1) と同じように $x<0$ の場合も考えて $-2\le x\le2$ である。たとえば $x=-\dfrac32$ では左辺 $\sqrt{\frac12}=0.707\ldots$、右辺 $-1.5$ で不等式は成り立つが、2 乗した $\frac12\ge\frac94$ は成り立たない。$g(x)=x<0$ の部分 $-2\le x<-1$ が落ちている。
  2. $\sqrt x<2$ を 2 乗した $x<4$ だけで解くと、$x=-1$ のように $\sqrt x$ が定まらない $x$ まで入る。cor-irr-ineq (2) のとおり $x\ge0$ も付けて、解は $0\le x<4$ である。

大学数学で見る:2 価の関係から枝を選ぶ

放物線 $y^2=ax+b$ は、1 つの $x$ に $y=\sqrt{ax+b}$ と $y=-\sqrt{ax+b}$ の 2 つの $y$ を対応させる。このように 1 つの $x$ に複数の $y$ が対応しうる関係を、大学の数学では 多価 の関係ということがある。その中から、値が $0$ 以上のものだけを選んで 1 つの関数にしたのが $\sqrt{ax+b}$ である。選んだそれぞれの関数を 枝(分枝)という。
2 乗して解くことは、枝の区別をいったん忘れて、放物線全体と直線の交点を求めることにあたる(図 3)。thm-irr-equation の条件 $g(x)\ge0$ は、求めた交点のうち「上の枝」$y\ge0$ にあるものを選び直す操作である。逆関数をもつように定義域を制限すること(逆関数と合成関数 の表の $x^2$ や $\sin x$)も、同じく 1 つの枝を選ぶことにあたる。

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  • $y=\sqrt x$ の導関数 $\dfrac1{2\sqrt x}$($x>0$)は、$y=x^2$ の逆関数の微分として求まる(逆関数の微分)。$x=0$ では $y=x^2$ の傾きが $0$ なので、$y=\sqrt x$ のグラフは $y$ 軸に接する向きに立ち上がる。
  • 根号の中が 2 次式の $y=\sqrt{1-x^2}$ は半円 $x^2+y^2=1$($y\ge0$)で、$y=\sqrt{x^2-1}$ は双曲線 $x^2-y^2=1$ の $y\ge0$ の部分である。thm-irr-graph (1) と同じく、2 乗した方程式の $y\ge0$ の部分として読める。
  • 分数関数 $y=\dfrac{ax+b}{cx+d}$ のグラフは グラフの概形と漸近線 で扱う。

関連項目

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