有理関数

同義語:rational function

概要

有理関数(rational function)とは、体係数の多項式の商で表される分数体の元である。分数表示の等号と約分、点での値を持つ条件、零点と極、無限遠での振る舞いを説明し、多変数有理関数と代数多様体の関数体へのつながりを示す。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 体, 多項式, 分数体

多項式の商としての有理関数

有理関数(rational function)は、二つの多項式の商として表される対象である。たとえば $1/(x^2+1)$ や $(x^2-1)/(x-1)$ がこれに当たる。「有理」という語は係数が有理数であることを意味しない。実数、複素数、有限体など、係数を取る体を指定して初めてどの有理関数を考えるかが決まる。
有理関数には二つの見方がある。一つは $K[x]$ の分数体 $K(x)$ の元という代数的な見方で、等しいかどうかは多項式の等式で判定する。もう一つは、分母が零にならない点で値を取る関数という見方である。特に分母を約分したとき、式としての同一性と、最初に指定した定義域との違いに注意が要る。本記事は一変数を中心に、この二つの見方、極と零点、多変数への拡張をつなぐ。

定義と等号

$K$ を体とし、$K[x]$ を $K$ 係数の一変数多項式環とする。$K[x]$ は整域なので、その分数体が作れる。

有理関数体

$f,g\in K[x]$、$g\ne0$ に対して形式的な分数 $f/g$ を考える。二つの分数 $f/g$ と $h/k$ は $fk=hg$ のとき同じと定める。この同値類の全体を $K$ 上の有理関数体 $K(x)$ といい、その元を 有理関数という。

分母が零多項式でないことと、ある点で分母の値が零にならないことは別の条件である。後者を満たさない点があっても、$f/g$ は $K(x)$ の元として存在する。加法と乗法は分数と同じ規則で定まり、例えば
$$ \frac fg+\frac hk=\frac{fk+hg}{gk},\qquad \frac fg\cdot\frac hk=\frac{fh}{gk} $$
である。零でない $f/g$、すなわち $f\ne0$ のとき、逆元は $g/f$ である。このため $K(x)$ は体になる。多項式 $f$ を $f/1$ に送ることで $K[x]$ を $K(x)$ の部分環とみなす。Stacks の Example 9.3.5(Tag 09FK)は、この分数体として $K(x)$ を導入している。

分数表示の等号

$f,g,h,k\in K[x]$、$gk\ne0$ とする。$f/g=h/k$ が $K(x)$ で成り立つことと、$fk=hg$ が $K[x]$ で成り立つことは同値である。とくに $q\ne0$ なら $fq/gq=f/g$ である。

最初の主張は分数体の等号の定義である。後半について $(fq)g=f(gq)$ が成り立ち、$gq\ne0$ なので前半を適用できる。$\square$

例えば $(x^2-1)/(x-1)=x+1$ は $K(x)$ の等式である。ただし $x-1$ が零多項式でない任意の体で考える。右辺はすべての点で評価できるが、左辺の元の表示は $x=1$ に直接代入できない。この違いを次に整理する。
分数をすべて多項式に直せるわけではない。$1/x$ が多項式 $h$ に等しいと仮定すると、$1=xh$ となる。しかし右辺は $x$ で割り切れ、左辺は割り切れない。したがって $K[x]$ は $K(x)$ の真部分環である。また $K(x)$ の元が多項式に等しいかどうかは、互いに素な表示の分母が零でない定数かどうかで判定できる。

多項式になる条件

互いに素な $p,q\in K[x]$、$q\ne0$ に対し、$p/q$ が $K[x]$ の元に等しいことと、$q$ が零でない定数であることは同値である。

$q$ が定数なら $p/q$ は多項式である。逆に $p/q=h\in K[x]$ なら $p=qh$ なので、$q$ は $p$ を割る。$p$ と $q$ が互いに素だから、$q$ は単元、すなわち零でない定数である。$\square$

値を取る点と約分

$a\in K$ で $g(a)\ne0$ なら、表示 $f/g$ の値を $f(a)/g(a)$ と定められる。ある一つの表示の定義域は $\{a\in K:g(a)\ne0\}$ である。しかし同じ有理関数には異なる表示があるので、「表示の定義域」と「有理関数がその点で値を持つか」は分けて考える。
一変数では、分子と分母の最大公約式を消して、互いに素な表示 $p/q$ を取れる。$p$ と $q$ は零でない定数倍を除き一意である。$a\in K$ において $q(a)\ne0$ なら、$p(a)/q(a)$ をその点での有理関数の値とする。互いに素な表示では $q(a)=0$ の点はさらに約分して取り除くことができない。

一変数で値を持つ条件

$R=p/q\in K(x)$ を互いに素な表示とし、$a\in K$ とする。$R$ を分母が $a$ で零にならない分数で表せることと、$q(a)\ne0$ は同値である。

$q(a)\ne0$ なら $p/q$ 自身が所望の表示である。逆に $R=h/k$、$k(a)\ne0$ とする。分数の等号から $pk=qh$。もし $q(a)=0$ なら $p(a)k(a)=0$ なので $p(a)=0$ となる。従って $x-a$ が $p$ と $q$ の両方を割り、互いに素であることに反する。$\square$

約分できる点とできない点

$K=\mathbb R$ とし、$R=(x^2-1)/(x-1)$ と $S=(x+1)/(x-1)$ を比べる。$R=x+1$ は有理関数として $x=1$ で値 $2$ を持つ。最初の表示から作った関数を定義域 $\mathbb R\setminus\{1\}$ のまま扱うなら、その関数には点 $1$ の値はない。一方、$S$ は分子が $x=1$ で $2$、分母が $0$ であり、約分してもその点に値を与えられない。

実係数の有理関数をグラフで見ると、前者は「穴」を埋められる可除特異点、後者は垂直漸近線 $x=1$ を持つ点として現れる。これはOpenStax『Precalculus 2e』§3.7 でも区別される。複素数上では後者を極と呼び、零点と極の次数で局所的な振る舞いを測る。
この説明で「分子と分母がともに零になる」というだけで穴と決めてはいけない。たとえば $(x-1)/(x-1)^2$ はその形だが、約分後は $1/(x-1)$ なので $x=1$ で値を持たない。約分後にも分母に $x-1$ が残るかどうかが決め手である。逆に $(x-1)^2/(x-1)=x-1$ なら値 $0$ を与えられる。分子・分母の次数の差として特異性を記録すると、この二つの違いを一つの計算で扱える。
有限体では式と値の関係がさらに離れる。$K=\mathbb F_q$ とすると、零でない多項式 $x^q-x$ は $K$ のどの元でも値が $0$ になる。従って $1/(x^q-x)$ は $K(x)$ では非零の元だが、$K$ の点ではどこにも値を取らない。点上の値だけを見て有理関数体の元を同定することはできない。多項式と多項式関数を区別するのと同じ理由である。

零点、極、無限遠での振る舞い

以下では $K=\mathbb C$ とする。零でない $R=p/q$ を互いに素な表示とし、$a\in\mathbb C$ を固定する。$p$ に $x-a$ が何回掛かっているかを $\operatorname{ord}_a(p)$ と書き、$q$ についても同様に定める。

有理関数の零点と極

$\operatorname{ord}_a(R)=\operatorname{ord}_a(p)-\operatorname{ord}_a(q)$ と定める。この数が正なら $a$ は $R$ の零点、負なら極であり、その絶対値をそれぞれの位数という。零有理関数については別に扱う。

互いに素な表示では、同じ点で分子と分母がともに零になることはない。したがって零点と極は重ならない。例えば
$$ R(x)=\frac{(x-2)^2}{(x+1)^3} $$
は $2$ に位数 $2$ の零点を持ち、$-1$ に位数 $3$ の極を持つ。表示を別の分数に変えても、共通因子は分子と分母の位数の差で打ち消し合うため $\operatorname{ord}_a(R)$ は変わらない。
位数は近くの値の大きさも表す。$\operatorname{ord}_a(R)=m>0$ なら、$R(x)=(x-a)^m u(x)$ と書けて $u(a)\ne0$ である。従って $a$ の近くで $R$ は $(x-a)^m$ と同じ次数で零に近づく。$\operatorname{ord}_a(R)=-m<0$ なら $R(x)=u(x)/(x-a)^m$ と書けるので極になる。この $u$ は $a$ の近くで分母が零にならない有理関数であり、$u(a)\ne0$ である。単に「分母が零」と言うよりも、位数は何次の零点・極かまで保存する。

積に対する位数

零でない $R,S\in\mathbb C(x)$ と $a\in\mathbb C$ に対し、$\operatorname{ord}_a(RS)=\operatorname{ord}_a(R)+\operatorname{ord}_a(S)$ である。

$R=p/q$、$S=h/k$ と表すと $RS=ph/qk$ である。多項式の積に含まれる $x-a$ の個数は各因子の個数の和なので、分子の個数から分母の個数を引けば式を得る。積の表示に共通因子があっても、その寄与は差で相殺する。$\square$

無限遠の様子は分子と分母の次数から読める。$p,q\ne0$ のとき、$\deg p<\deg q$ なら $R(x)\to0$、次数が等しければ最高次係数の比へ収束する($x$ を実数として $x\to\pm\infty$ とする場合も同様)。$\deg p>\deg q$ なら $|R(x)|$ は無限遠で大きくなる。分子を分母で割って $R=A+B/q$、$\deg B<\deg q$ と書けば、多項式 $A$ が無限遠での主な振る舞いを表す。複素射影直線上では無限遠点も一つの点と見て、$\operatorname{ord}_{\infty}(R)=\deg q-\deg p$ と定める。このとき $R$ が定数でなければ、有限の零点の位数の和と有限の極の位数の和に無限遠の寄与を加えた合計は $0$ になる。

射影直線上の零点と極の釣り合い

零でない $R\in\mathbb C(x)$ に対し、有限の各点と無限遠点の位数を足すと
$$ \sum_{a\in\mathbb C}\operatorname{ord}_a(R)+\operatorname{ord}_{\infty}(R)=0 $$
である。有限の点で零でない位数を持つのは有限個だけなので、左辺は有限和として意味を持つ。

$R=p/q$ を互いに素な表示とし、$p,q\ne0$ とする。複素数上では代数学の基本定理により、$p$ は次数 $\deg p$ 個、$q$ は次数 $\deg q$ 個の根を重複度込みで持つ。したがって有限の点での位数の総和は $\deg p-\deg q$ である。一方、無限遠点の位数は定義により $\deg q-\deg p$ であり、足すと $0$ になる。$p$、$q$ の定数倍や共通因子を別の表示に掛けても、根の位数の差は変わらない。$\square$

この定理は「有限の零点の数と有限の極の数が必ず等しい」とは言っていない。多項式 $x^3$ は有限の零点 $0$ を位数 $3$ で持つが、有限の極はない。無限遠に位数 $3$ の極を加えて初めて釣り合う。逆に $1/x^2$ は有限の極 $0$ を位数 $2$ で持ち、無限遠に位数 $2$ の零点を持つ。無限遠点を含む複素射影直線で考えると、分子と分母の次数の違いも同じ零点・極の言葉に収まる。

無限遠の零点と極

$R(x)=(x^2+1)/(x-2)$ では $\deg p-\deg q=1$ だから、無限遠点は位数 $1$ の極である。多項式の除法から $R(x)=x+2+5/(x-2)$ と分かり、実軸上のグラフは無限遠で直線 $y=x+2$ に近づく。有限の極 $x=2$ と無限遠の極をそれぞれ一つずつ数え、有限の零点 $i,-i$ を一つずつ数えると、零点の位数の和と極の位数の和がともに $2$ になる。

有理関数の形式微分も再び有理関数である。$p/q$ なら商の微分公式により $R'=(p'q-pq')/q^2$ となる。これは分数表示を変えても同じ元を与える。たとえば $R=1/x$ なら $R'=-1/x^2$ である。一方、積分は必ずしも有理関数に戻らない。実数上の $1/x$ の原始関数には $\log|x|$ が現れる。微分と積分に対する閉じ方の違いは、有理関数を使う計算で重要である。

有理式を分けて計算する

分母が因数分解できるとき、複雑な有理関数を単純な分数の和に分ける方法を部分分数分解という。実際、$x\ne\pm1$ では
$$ \frac{1}{x^2-1}=\frac{1}{2(x-1)}-\frac{1}{2(x+1)} $$
である。右辺を通分すると分子は $((x+1)-(x-1))/2=1$ となるので、これは $\mathbb R(x)$ の等式である。左辺は $1$ と $-1$ に単純な極を持ち、右辺は二つの極への寄与を個別に示している。積分でも、この表示から $\tfrac12\log|x-1|-\tfrac12\log|x+1|$ が原始関数の一つだと分かる。ただし極をまたぐ区間を一つの定義域として積分することはできない。
多項式の除法も同じ方向に役立つ。分子の次数が分母以上なら、まず多項式部分と真分数部分に分ける。例えば $x^2/(x-1)=x+1+1/(x-1)$ である。左辺の無限遠での増え方、$x=1$ にある極、微分や積分の計算が、右辺では別々に見える。なお、有理関数体での等号は値を取るすべての点で成り立つが、もとの表示を持つ関数の定義域を自動的に拡張するものではない。

極が見えない場合

実数のグラフだけを見ると「極がない有理関数は多項式」と思いがちだが、これは正しくない。$1/(x^2+1)$ は実軸上のすべての点で値を持ち、垂直漸近線もない。それでも分母 $x^2+1$ は定数でないから $\mathbb R(x)$ の元として多項式ではない。複素数まで広げれば $i$ と $-i$ に極があり、見えなかった分母の根が現れる。

複素数上で有限の極がない条件

$R\in\mathbb C(x)$ が有限の点に極を一つも持たないことと、$R$ が多項式に等しいことは同値である。

$R=0$ なら自明である。$R\ne0$ とし、互いに素な表示 $R=p/q$ を取る。$R$ に有限の極がなければ $q$ は複素数の根を持たない。複素数上の定数でない多項式には必ず根があるので $q$ は零でない定数であり、$R$ は多項式となる。逆に多項式は分母 $1$ で表せるから有限の極を持たない。$\square$

この命題は係数体によって結論が変わる例でもある。$\mathbb R$ 上では実数点の値をすべて調べても、複素数にある分母の根を検出できない。有限体ではさらに、$K$ の全点に値を持つかどうかは分母の多項式としての性質を十分には決めない。代数的な等号、体の拡大、点ごとの評価を切り分けておくと、関数体に移ったときにも同じ落とし穴を避けられる。

分数一次式と複素射影直線

有理関数の中でも、分子と分母がともに一次以下の
$$ R(x)=\frac{ax+b}{cx+d},\qquad ad-bc\ne0 $$
という形は特別である。条件 $ad-bc\ne0$ は分子と分母が比例しないことを保証する。$c\ne0$ なら $x=-d/c$ が唯一の有限の極であり、$R$ は無限遠点で値 $a/c$ を持つ。$c=0$ なら $d\ne0$ で、$R$ は一次多項式として無限遠点を無限遠点へ送る。分子が定数で零にならない場合も含めて、零点と極を複素射影直線全体で数えれば、それぞれ位数 $1$ の点が一つずつある。
$y=R(x)$ を $x$ について解くと $x=(dy-b)/(a-cy)$ となる。分母が零になる点は射影直線の無限遠点として補えるので、この式は複素射影直線上の逆写像を与える。この種のMöbius変換は、射影直線を自分自身へ双正則に写す典型的な有理関数である。微分公式を使うと $R'(x)=(ad-bc)/(cx+d)^2$ で、有限の定義点では導関数が零にならない。一方、$x^2$ のような次数 $2$ の有理関数は、複素数上で $y\ne0$ に通常二つの逆像を持ち、一対一ではない。この違いは有理関数を単なる式だけでなく、幾何学的な写像として見る利点を示す。

多変数と代数幾何での位置

$x_1,\ldots,x_n$ を不定元とすれば、$K[x_1,\ldots,x_n]$ の分数体 $K(x_1,\ldots,x_n)$ が多変数有理関数体である。例えば $1/(x_1-x_2)$ は $x_1=x_2$ では値を取らない。分数をどの点で評価できるかは、点に対応する局所環にその分数が入るかどうかで定式化する。アフィン空間では多項式環が一意分解整域なので、互いに素な分子・分母を取って調べられる。一般の代数多様体では座標環や局所環の性質も関わるため、単に一つの分数表示だけで判断しない。
代数幾何では、既約な代数多様体の「一般の点で定義された関数」を有理関数として扱う。非空の開集合上で一致する二つの表示を同じものと見て得られる体を関数体という。アフィン直線の関数体は $K(x)$、アフィン $n$ 次元空間の関数体は $K(x_1,\ldots,x_n)$ になる。有理写像は座標ごとに有理関数を与えて作るが、分母が零になる点では必ずしも写像として定義されない。分数体という代数的な定義が、幾何学で「どこで定義されるか」を調べる出発点になる。

平面上で値を持つ点

$K=\mathbb C$、$R(x,y)=x/y\in K(x,y)$ とする。$y\ne0$ の点では通常の商として値を取る。$y=0$、$x\ne0$ の点では、分子が零でなく分母が零なので値を持たない。原点 $(0,0)$ でも値を持たない。もし原点の近くで正則な値を与えられるなら、直線 $x=ty$ に沿って $(0,0)$ に近づくと $R=t$ となり、近づき方に依存して値が変わることと矛盾する。代数的には $x/y$ は原点の局所環 $K[x,y]_{(x,y)}$ に属さない。等式 $xk=yh$ で $k(0,0)\ne0$ を満たす多項式 $h,k$ が存在すると仮定すれば、$y$ が $xk$ を割ることになり、$y$ が $x$ と互いに素だから $y$ が $k$ を割る。すると $k(0,0)=0$ となって矛盾する。

一変数の $p/q$ と違い、多変数の分母が零になる集合は点の有限集合とは限らず、上の例では直線 $y=0$ 全体である。幾何学ではこのような分母の零点集合を除いた開集合でまず有理関数を考え、別の開集合上で同じ関数を表す分数と貼り合わせる。StacksRational の Rational maps 節(Tag 01RR)は、整なスキームの関数体をこの観点から定義し、点での正則性を局所環への包含として扱う。

反例:条件を外すと何が崩れるか

この記事の命題・定理の仮定を一つずつ外すと、次のように結論が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
表示が互いに素であること$(x^2-1)/(x-1)$ と点 $1$分母が零になる点では値を持たないこと
係数体が $\mathbb C$(代数閉体)であること$1/(x^2+1)\in\mathbb R(x)$有限の極がなければ多項式であること
同じく代数閉体であること$1/(x^2+1)$ の実数点での位数零点と極の位数の総和が $0$
無限遠点を数えること$x^3\in\mathbb C(x)$有限の零点と有限の極の位数が釣り合うこと
係数体が無限であること$\mathbb F_q$ 上の $x^q$ と $x$点ごとの値で有理関数が決まること
$ad-bc\ne0$$(2x+2)/(x+1)$分数一次式が射影直線の全単射であること
反例:互いに素でない表示と、代数閉でない係数体

$(x^2-1)/(x-1)$ の分母は $x=1$ で零になるが、$K(x)$ の元として $x+1$ に等しく、点 $1$ で値 $2$ を持つ(例「約分できる点とできない点」)。命題「一変数で値を持つ条件」は互いに素な表示 $p/q$ について「$q(a)\ne0$」を判定条件にしており、分子と分母が共通因子 $x-1$ を持つこの表示では、分母の零点が値を持たない点を表さない。
$1/(x^2+1)\in\mathbb R(x)$ はすべての実数点 $a$ で分母 $a^2+1>0$ なので実数の有限の点に極を持たないが、分母が定数でないので命題「多項式になる条件」により多項式でない。命題「複素数上で有限の極がない条件」の証明で「定数でない多項式には根がある」と使った段が、$\mathbb R$ では $x^2+1$ が根を持たないため働かない。
同じ有理関数で位数を実数の点だけで数えると、すべての $a\in\mathbb R$ で $\operatorname{ord}_a=0$、無限遠で $\operatorname{ord}_\infty=\deg q-\deg p=2$ となり、総和は $2\ne0$ である。定理「射影直線上の零点と極の釣り合い」は $\mathbb C$ 上で代数学の基本定理を使っており、複素数の点 $\pm i$ の位数 $-1$ ずつを加えて初めて $0$ になる。

反例:無限遠を数えない場合と、有限体での値

$x^3\in\mathbb C(x)$ は有限の点 $0$ に位数 $3$ の零点を持ち、有限の極を持たない。有限の点だけでは位数の和は $3$ で、$\operatorname{ord}_\infty(x^3)=0-3=-3$ を加えて初めて $0$ になる。
$K=\mathbb F_q$ では $x^q$ と $x$ は $K(x)$ の異なる元($q\ge2$ なので多項式として次数が異なる)だが、$K^\times$ が位数 $q-1$ の群なので $a\ne0$ で $a^{q-1}=1$、よって全ての $a\in K$ で $a^q=a$ となり、点ごとの値はすべて一致する。無限体なら差 $x^q-x$ が無限個の根を持って零になるが、有限体ではこの議論が働かない。

反例:$ad-bc=0$ の分数一次式

$a=2$、$b=2$、$c=1$、$d=1$ では $ad-bc=2-2=0$ で、$(2x+2)/(x+1)=2$ は定数である。全ての点を $2$ に送るので単射でなく、逆写像の式 $x=(dy-b)/(a-cy)=(y-2)/(2-y)$ は $y\ne2$ で $-1$ という定数になり、逆写像を与えない。条件 $ad-bc\ne0$ は、分子と分母が比例して有理関数が定数に退化することを除くために必要である。

関連項目

参考文献

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