Sawayama–Thébaultの定理(Sawayama–Thébault theorem)とは、三角形 $ABC$ の辺 $BC$ の上の点 $D$($B$、$C$ 以外)について、線分 $DA$、$DB$ と外接円に内側から接する円の中心 $P$、線分 $DA$、$DC$ と外接円に内側から接する円の中心 $Q$、内心 $I$ の 3 点が一直線上にある、という定理である。$\theta=\angle ADB$ とすると $I=\cos^2\frac{\theta}{2}\,P+\sin^2\frac{\theta}{2}\,Q$ で、$I$ は線分 $PQ$ を $PI:IQ=\tan^2\frac{\theta}{2}:1$ に分ける。証明には、各円の接点を結ぶ弦が内心を通るという Sawayama の補題を 2 回使う。
前提知識: Sawayamaの補題, 三角形の内心と傍心, 位置ベクトルと内分点, ベクトルの内積
三角形 $ABC$ の辺 $BC$ の上に点 $D$ をとり、線分 $AD$ を引くと、三角形は 2 つに分かれる。Sawayamaの補題 では、線分 $DA$、$DB$ と外接円に接する円を考え、接点を結ぶ直線が内心を通ることを示した。線分 $AD$ の反対側にも、線分 $DA$、$DC$ と外接円に接する円がある。2 つの円の中心と内心は、どんな位置にあるだろうか。
Sawayamaの補題 の最初の例と同じく、$B(0,0)$、$C(5,0)$、$A\left(\dfrac95,\dfrac{12}5\right)$($AB=3$、$AC=4$、$BC=5$、$\angle A=90^\circ$)とし、$D$ を垂線の足 $\left(\dfrac95,0\right)$ にとる。外接円は中心 $O\left(\dfrac52,0\right)$、半径 $R=\dfrac52$、内心は $I(2,1)$ である。
(1) $\angle ADB$ の側の円。Sawayamaの補題 の最初の例で求めたとおり、中心は $P\left(1,\dfrac45\right)$、半径は $\dfrac45$ である。
(2) $\angle ADC$ の側の円。線分 $DA$(直線 $x=\dfrac95$)と線分 $DC$($x$ 軸)に接し、$\angle ADC$ の内側にある円は、中心 $\left(\dfrac95+t,\ t\right)$、半径 $t$ の円である。外接円に内側から接する条件は
$$
\sqrt{\left(\frac95+t-\frac52\right)^2+t^2}=\frac52-t
$$
で、左辺の中は $\left(t-\dfrac7{10}\right)^2+t^2$ なので、両辺を 2 乗して
$$
t^2-\frac75t+\frac{49}{100}+t^2=\frac{25}4-5t+t^2
$$
となり、整理すると $t^2+\dfrac{18}5t-\dfrac{144}{25}=0$、つまり $25t^2+90t-144=0$ である。解の公式から $t=\dfrac{-90\pm\sqrt{8100+14400}}{50}=\dfrac{-90\pm150}{50}$ で、$t>0$ なので $t=\dfrac65$ である。中心は $Q\left(3,\dfrac65\right)$、半径は $\dfrac65$ である。
(3) 3 点の位置。線分 $PQ$ の中点は
$$
\left(\frac{1+3}2,\ \frac{\frac45+\frac65}2\right)=(2,1)
$$
で、内心 $I$ と一致する。$P$、$I$、$Q$ は一直線上にあり、$I$ は $PQ$ をちょうど $1:1$ に分けている。
ex-sth-start では $\angle ADB=90^\circ$ だった。$\angle ADB$ が直角でないと $I$ は中点からずれるが、一直線上にあることは変わらない。この記事で答える問いは次の 2 つである。
| 高校の計算 | この記事での使い方 | ボックス |
|---|---|---|
| Sawayama の補題 | 内心は 2 本の弦 $E_1F_1$、$E_2F_2$ の上 | prf-sth-main |
| 二等辺三角形の頂角の二等分線は底辺に垂直 | 弦は角の二等分線に垂直 | lem-sth-chord |
| 補角の二等分線は直交する | 2 本の二等分線 $DP$、$DQ$ は垂直 | prf-sth-main |
| 直交する単位ベクトルで成分に分ける | $I=\cos^2\dfrac\theta2\,P+\sin^2\dfrac\theta2\,Q$ | thm-sth-main |
直角三角形と垂線の足 D。線分 DA の両側で外接円に接する 2 つの円の中心 P、Q と内心 I は一直線上にあり、I は PQ の中点になる
以下、三角形 $ABC$ の外接円を $\Gamma$、内心を $I$ とする。
三角形 $ABC$ の辺 $BC$ の上に、$B$、$C$ と異なる点 $D$ をとり、$\theta=\angle ADB$ とする($0^\circ<\theta<180^\circ$、$\angle ADC=180^\circ-\theta$)。
線分 $DA$、$DB$ に接し $\Gamma$ に内側から接する円を $\omega_1$、その中心を $P$、線分 $DA$、$DB$ との接点を $E_1$、$F_1$ とする。
線分 $DA$、$DC$ に接し $\Gamma$ に内側から接する円を $\omega_2$、その中心を $Q$、線分 $DA$、$DC$ との接点を $E_2$、$F_2$ とする。
$\omega_1$ は Sawayamaの補題 の円そのもので、ただ 1 つある(同記事の命題「円はただ 1 つある」)。$\omega_2$ は、同じ補題を三角形の頂点 $B$ と $C$ の名前を入れかえて使ったときの円で、これもただ 1 つある。
$A(5,12)$、$B(0,0)$、$C(14,0)$、内心 $I(6,4)$、$D$ は垂線の足 $(5,0)$ とする($\theta=90^\circ$)。Sawayamaの補題 の例「3 辺 13, 14, 15 の三角形と垂線の足」で求めたとおり、$\omega_1$ は中心 $P(2,3)$、半径 $3$ である。
$\omega_2$ は、同じ補題の公式で $B$ と $C$ を入れかえ、$DF_2=\dfrac{a\cdot AD+c\cdot DC-b\cdot DB}{a+b+c}=\dfrac{14\cdot12+13\cdot9-15\cdot5}{42}=\dfrac{210}{42}=5$ から、中心 $Q(10,5)$、半径 $5$ である(外接円の中心 $O\left(7,\dfrac{33}8\right)$ との距離は $\sqrt{9+\dfrac{49}{64}}=\dfrac{25}8=\dfrac{65}8-5$ で、内側から接している)。
$PQ$ の中点は $(6,4)$ で、内心と一致する。
角 $\angle XDY$(大きさ $\varphi$、$0^\circ<\varphi<180^\circ$)の 2 辺に、中心 $P$ の円が $E$、$F$ で接しているとする。$\vec p$ を $D$ から $P$ に向かう長さ $1$ のベクトルとすると、直線 $EF$ は
$$
\overrightarrow{DZ}\cdot\vec p=DP\cos^2\frac\varphi2
$$
を満たす点 $Z$ の集まりである。つまり直線 $EF$ は二等分線 $DP$ に垂直で、$DP$ と $D$ から $DP\cos^2\dfrac\varphi2$ の距離の点で交わる。
段 1(二等辺三角形)。円の外の点 $D$ から引いた 2 本の接線の長さは等しいので $DE=DF$ で、中心 $P$ は $\angle XDY$ の二等分線の上にある(混線内接円 の補題「中心は角の二等分線の上」と同じ理由)。三角形 $DEF$ は $DE=DF$ の二等辺三角形なので、頂角の二等分線 $DP$ は底辺 $EF$ に垂直で、$EF$ の中点 $N$ を通る。
段 2(長さ)。直角三角形 $DEP$($\angle DEP=90^\circ$、$\angle EDP=\dfrac\varphi2$)で $DE=DP\cos\dfrac\varphi2$ である。直角三角形 $DNE$($\angle DNE=90^\circ$、$\angle EDN=\dfrac\varphi2$)で $DN=DE\cos\dfrac\varphi2=DP\cos^2\dfrac\varphi2$ である。$N$ は半直線 $DP$ の上にあるので $\overrightarrow{DN}=DP\cos^2\dfrac\varphi2\,\vec p$ である。
段 3(直線の式)。直線 $EF$ は $N$ を通り $\vec p$ に垂直な直線なので、その上の点 $Z$ は $\overrightarrow{NZ}\cdot\vec p=0$、つまり $\overrightarrow{DZ}\cdot\vec p=\overrightarrow{DN}\cdot\vec p=DP\cos^2\dfrac\varphi2$ を満たす。逆にこの式を満たす点は $\overrightarrow{NZ}\perp\vec p$ で、直線 $EF$ の上にある。$\square$
def-sth-circles の記号で、
$$
I=\cos^2\frac\theta2\;P+\sin^2\frac\theta2\;Q
$$
である。ここで点を位置ベクトルと同一視した(どこを始点にしても同じ式が成り立つ)。
式の係数は $\theta=\angle ADB$ だけで決まり、点 $D$ を辺 $BC$ の上のどこにとるかには、$\theta$ を通してしか依らない。$D$ が動くと $P$ と $Q$ はともに動くが、内心 $I$ はいつも線分 $PQ$ を $\sin^2\dfrac\theta2:\cos^2\dfrac\theta2$ に内分する点である。とくに $AD\perp BC$($\theta=90^\circ$)のときは $I$ が $PQ$ の中点になる。係数が $\theta$ だけで決まることの理由は、2 本の二等分線 $DP$、$DQ$ が垂直であることと、内心が 2 本の弦の上にあることの 2 つである。証明はこの直後の方針で与える。
ex-sth-start で確かめると、$\theta=90^\circ$ なので $\cos^2 45^\circ=\sin^2 45^\circ=\dfrac12$ で、$I=\dfrac{P+Q}2$ である。$\dfrac{P+Q}2=(2,1)$ は内心と一致した。
方針:Sawayama の補題から、内心は弦 $E_1F_1$ と弦 $E_2F_2$ の両方の上にある。2 本の弦はそれぞれ二等分線 $DP$、$DQ$ に垂直で、$DP\perp DQ$ なので、$D$ を原点として $DP$、$DQ$ の向きの成分を読めば $I$ の位置が決まる。
段 1(内心は 2 本の弦の上)。Sawayamaの補題 の定理「Sawayama の補題」の (2) により、直線 $E_1F_1$ は $I$ を通る。同じ定理を、頂点 $B$ と $C$ の名前を入れかえて使う(辺 $CB$ の上の点 $D\ne C$ と、線分 $DA$、$DC$ に接する円 $\omega_2$)と、直線 $E_2F_2$ も $I$ を通る。内心は $B$、$C$ の名前の付け方によらない。
段 2(2 本の二等分線は垂直)。$\vec p$、$\vec q$ を、$D$ から $P$、$Q$ に向かう長さ $1$ のベクトルとする。$P$ は $\angle ADB$ の二等分線の上、$Q$ は $\angle ADC$ の二等分線の上にある(lem-sth-chord の証明の段 1)。$\angle ADB$ と $\angle ADC$ は半直線 $DA$ をはさんで隣り合い、和は $180^\circ$ なので、2 本の二等分線のなす角は
$$
\frac\theta2+\frac{180^\circ-\theta}2=90^\circ
$$
である。よって $\vec p\cdot\vec q=0$ である。
段 3(2 つの成分)。lem-sth-chord を $\angle ADB$($\varphi=\theta$)と $\angle ADC$($\varphi=180^\circ-\theta$)に使う。$\cos\dfrac{180^\circ-\theta}2=\cos\left(90^\circ-\dfrac\theta2\right)=\sin\dfrac\theta2$ なので、段 1 から $I$ は
$$
\overrightarrow{DI}\cdot\vec p=DP\cos^2\frac\theta2,\qquad \overrightarrow{DI}\cdot\vec q=DQ\sin^2\frac\theta2
$$
を満たす。
段 4(成分から位置へ)。$\vec p$、$\vec q$ は長さ $1$ で互いに垂直なので、平面のどのベクトル $\vec z$ も $\vec z=(\vec z\cdot\vec p)\,\vec p+(\vec z\cdot\vec q)\,\vec q$ と書ける($\vec p$、$\vec q$ の向きに座標軸をとった成分)。$\vec z=\overrightarrow{DI}$ に段 3 を使い、$DP\,\vec p=\overrightarrow{DP}$、$DQ\,\vec q=\overrightarrow{DQ}$ に注意すると
$$
\overrightarrow{DI}=\cos^2\frac\theta2\;\overrightarrow{DP}+\sin^2\frac\theta2\;\overrightarrow{DQ}
$$
である。係数の和は $\cos^2\dfrac\theta2+\sin^2\dfrac\theta2=1$ なので、始点を $D$ から任意の点に替えても同じ式が成り立ち(位置ベクトルと内分点)、定理の式を得る。$\square$
$\gamma=\cos^2\dfrac\theta2$、$\sigma=\sin^2\dfrac\theta2$ とおくと、$0<\theta<180^\circ$ から $\gamma>0$、$\sigma>0$、$\gamma+\sigma=1$ である。thm-sth-main から
$$
\overrightarrow{PI}=I-P=\gamma P+\sigma Q-(\gamma+\sigma)P=\sigma\,\overrightarrow{PQ},\qquad \overrightarrow{IQ}=Q-I=\gamma\,\overrightarrow{PQ}
$$
である。$0<\sigma<1$ なので $I$ は線分 $PQ$ の $P$、$Q$ 以外の点で、(1) が成り立つ。長さを比べると $PI=\sigma\,PQ$、$IQ=\gamma\,PQ$ なので $\dfrac{PI}{IQ}=\dfrac\sigma\gamma=\tan^2\dfrac\theta2$ で、(2) が成り立つ。$\square$
A(1,3)、B(0,0)、C(5,0)、D(2,0) の場合。弦 E1F1 は二等分線 DP に、弦 E2F2 は二等分線 DQ に垂直で、4 点 D、N1、I、N2 は長方形の頂点になる。内心 I は PQ を tan の 2 乗の比に分ける
図 2 は、証明の段 2〜段 4 を 1 つの図にしたものである。弦 $E_1F_1$ と二等分線 $DP$ の交点を $N_1$、弦 $E_2F_2$ と $DQ$ の交点を $N_2$ とすると、四角形 $DN_1IN_2$ の 4 つの角はすべて直角で、長方形になる。$DN_1=DP\cos^2\dfrac\theta2$、$DN_2=DQ\sin^2\dfrac\theta2$ が、$I$ の 2 つの成分である。
$A(1,3)$、$B(0,0)$、$C(5,0)$、$D(2,0)$ とする。$a=5$、$b=CA=\sqrt{16+9}=5$、$c=AB=\sqrt{10}$、$AD=\sqrt{1+9}=\sqrt{10}$、$DB=2$、$DC=3$ である。内心は
$$
I=\frac{5A+5B+\sqrt{10}\,C}{10+\sqrt{10}}=\left(\frac{5+5\sqrt{10}}{10+\sqrt{10}},\ \frac{15}{10+\sqrt{10}}\right)=\left(\frac{\sqrt{10}}2,\ \frac53-\frac{\sqrt{10}}6\right)
$$
である(分母と分子に $10-\sqrt{10}$ を掛けて整理した)。
(1) 角。$\overrightarrow{DA}=(-1,3)$、$\overrightarrow{DB}=(-2,0)$ から $\cos\theta=\dfrac{2}{\sqrt{10}\cdot2}=\dfrac1{\sqrt{10}}$ で、半角の公式から
$$
\cos^2\frac\theta2=\frac{1+\frac1{\sqrt{10}}}2=\frac{\sqrt{10}+1}{2\sqrt{10}},\qquad \sin^2\frac\theta2=\frac{\sqrt{10}-1}{2\sqrt{10}},\qquad \tan^2\frac\theta2=\frac{\sqrt{10}-1}{\sqrt{10}+1}=\frac{11-2\sqrt{10}}9
$$
である(最後は分母と分子に $\sqrt{10}-1$ を掛けた)。$\tan\dfrac\theta2=\dfrac{\sqrt{10}-1}3$ である。
(2) 2 つの円。Sawayamaの補題 の公式から
$$
DF_1=\frac{5\sqrt{10}+5\cdot2-\sqrt{10}\cdot3}{10+\sqrt{10}}=\frac{8+\sqrt{10}}9,\qquad DF_2=\frac{5\sqrt{10}+\sqrt{10}\cdot3-5\cdot2}{10+\sqrt{10}}=\sqrt{10}-2
$$
である($DF_1$ の計算は Sawayamaの補題 の例「3 つの配置で数値を確かめる」にある。$DF_2$ は分母と分子に $10-\sqrt{10}$ を掛けると $\dfrac{90\sqrt{10}-180}{90}$ になる)。中心は接点の真上にあり、高さは半径 $DF\tan\dfrac\varphi2$ なので
$$
P=\left(2-\frac{8+\sqrt{10}}9,\ \frac{8+\sqrt{10}}9\cdot\frac{\sqrt{10}-1}3\right)=\left(\frac{10-\sqrt{10}}9,\ \frac{2+7\sqrt{10}}{27}\right),
$$
$$
Q=\left(2+(\sqrt{10}-2),\ (\sqrt{10}-2)\cdot\frac{3}{\sqrt{10}-1}\right)=\left(\sqrt{10},\ \frac{8-\sqrt{10}}3\right)
$$
である($Q$ の側の角は $180^\circ-\theta$ で、$\tan\dfrac{180^\circ-\theta}2=\dfrac1{\tan\frac\theta2}=\dfrac3{\sqrt{10}-1}$)。
(3) 定理の式。$x$ 座標で確かめると
$$
\cos^2\frac\theta2\cdot\frac{10-\sqrt{10}}9+\sin^2\frac\theta2\cdot\sqrt{10}=\frac{(\sqrt{10}+1)(10-\sqrt{10})}{18\sqrt{10}}+\frac{\sqrt{10}-1}2=\frac{9\sqrt{10}}{18\sqrt{10}}+\frac{\sqrt{10}-1}2=\frac{\sqrt{10}}2
$$
で、$I$ の $x$ 座標と一致する($(\sqrt{10}+1)(10-\sqrt{10})=10\sqrt{10}-10+10-\sqrt{10}=9\sqrt{10}$)。$y$ 座標も同じように一致する。
$\cos^2\dfrac\theta2\cdot\dfrac{2+7\sqrt{10}}{27}=\dfrac{(\sqrt{10}+1)(2+7\sqrt{10})}{54\sqrt{10}}=\dfrac{72+9\sqrt{10}}{54\sqrt{10}}$、$\sin^2\dfrac\theta2\cdot\dfrac{8-\sqrt{10}}3=\dfrac{(\sqrt{10}-1)(8-\sqrt{10})}{6\sqrt{10}}=\dfrac{9\sqrt{10}-18}{6\sqrt{10}}=\dfrac{81\sqrt{10}-162}{54\sqrt{10}}$ で、和は $\dfrac{90\sqrt{10}-90}{54\sqrt{10}}=\dfrac{5}{3}-\dfrac{5}{3\sqrt{10}}=\dfrac53-\dfrac{\sqrt{10}}6$ である。
$\theta$ が小さいほど $\tan^2\dfrac\theta2$ は小さく、内心は $P$ に近づく。$\theta$ と比の関係を、いくつかの配置で表にまとめる(どれも $B(0,0)$、$C(5,0)$ で、比は 2 つの中心と内心の座標から数値で計算し、$\tan^2\dfrac\theta2$ と 6 桁まで一致した)。
| $A$ | $D$ | $\theta=\angle ADB$ | $\dfrac{PI}{IQ}$ | $\tan^2\dfrac\theta2$ |
|---|---|---|---|---|
| $\left(\frac95,\frac{12}5\right)$ | $\left(\frac95,0\right)$ | $90^\circ$ | $1$ | $1$ |
| $(1,3)$ | $(2,0)$ | $71.57^\circ$ | $0.519494$ | $0.519494$ |
| $(3.5,2)$ | $(1.5,0)$ | $135^\circ$ | $5.828427$ | $5.828427$ |
| $(-1,1.5)$ | $(3,0)$ | $20.56^\circ$ | $0.032882$ | $0.032882$ |
3 行目は $\tan^2 67.5^\circ=(1+\sqrt2)^2=3+2\sqrt2$、4 行目は $\angle B\approx123.7^\circ$ の鈍角三角形である(図 3)。
角 B が鈍角の三角形 A(-1,1.5)、B(0,0)、C(5,0) と D(3,0)。角 ADB が小さいので内心 I は中心 P のすぐ近くにあるが、P、I、Q はやはり一直線上にある
thm-sth-main の条件を外すと、次のように崩れる。ex-sth-start の直角三角形で確かめる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 2 つの円が外接円に 内側から 接する(このとき接点が線分の上にあることも外れる) | 外側から接する 2 つの円(接点は線分の延長の上。ex-sth-cx-outer) | 中心と内心が一直線上にある |
| 2 つの円を同じ点 $D$ から作る | $\omega_1$ を $D$ から、$\omega_2$ を別の点 $D'$ から作る(ex-sth-cx-two) | 中心と内心が一直線上にある |
Sawayamaの補題 の例「反例:外接円に外側から接する円」で求めたとおり、$\angle ADB$ の側で直線 $DA$、$DB$ に接し外接円に外側から接する円の中心は $P'\left(-3,\dfrac{24}5\right)$ である。$\angle ADC$ の側では、中心 $\left(\dfrac95+t,\ t\right)$ の円が外側から接する条件
$$
\sqrt{\left(t-\frac7{10}\right)^2+t^2}=\frac52+t
$$
を 2 乗して整理すると $t^2-\dfrac{32}5t-\dfrac{144}{25}=0$、つまり $25t^2-160t-144=0$ で、$t=\dfrac{160\pm\sqrt{25600+14400}}{50}=\dfrac{160\pm200}{50}$ から $t=\dfrac{36}5$ である。中心は $Q'\left(9,\dfrac{36}5\right)$ である。2 つの円の接点 $\left(\dfrac95,\dfrac{24}5\right)$、$(-3,0)$、$\left(\dfrac95,\dfrac{36}5\right)$、$(9,0)$ は、どれも線分 $DA$、$DB$、$DC$ の延長の上にある。
直線 $P'Q'$ の傾きは $\dfrac{\frac{36}5-\frac{24}5}{9+3}=\dfrac15$ で、直線は $y=\dfrac15(x+3)+\dfrac{24}5$ である。$x=2$ を入れると $y=1+\dfrac{24}5=\dfrac{29}5$ で、内心 $I(2,1)$ の $y$ 座標 $1$ と違う。3 点は一直線上にない。
外接円に外側から接する 2 つの円の中心 P'、Q' と内心 I は一直線上にない
$\omega_1$ は $D\left(\dfrac95,0\right)$ から作った円(中心 $P\left(1,\dfrac45\right)$)のままとし、$\omega_2$ の代わりに、$D'(3,0)$ から線分 $D'A$、$D'C$ に接し外接円に内側から接する円をとる。$\overrightarrow{D'A}=\left(-\dfrac65,\dfrac{12}5\right)$ は $(-1,2)$ の向きなので、直線 $D'A$ は $2x+y-6=0$ である。中心を $(x,\rho)$ とすると、直線 $D'C$($x$ 軸)までの距離が $\rho$、直線 $D'A$ までの距離が $\dfrac{\lvert 2x+\rho-6\rvert}{\sqrt5}=\rho$ である。$\rho=1$ とすると、$\angle AD'C$ の内側($2x+y-6>0$)で $2x-5=\sqrt5$、$x=\dfrac{5+\sqrt5}2$ となる。このとき外接円の中心 $O\left(\dfrac52,0\right)$ との距離は
$$
\sqrt{\left(\frac{\sqrt5}2\right)^2+1^2}=\sqrt{\frac94}=\frac32=\frac52-1
$$
で、内側から接している。接点は直線 $D'C$ の上の $\left(\dfrac{5+\sqrt5}2,0\right)$ と、直線 $D'A$ の上の $\left(\dfrac{25+\sqrt5}{10},\dfrac{5-\sqrt5}5\right)$ で、どちらも線分 $D'C$、$D'A$ の上にある($y$ 座標 $\dfrac{5-\sqrt5}5\approx0.553$ は $0$ と $A$ の $y$ 座標 $\dfrac{12}5$ の間)。このような円はただ 1 つなので(Sawayamaの補題 の命題「円はただ 1 つある」)、求める円の中心は $Q''\left(\dfrac{5+\sqrt5}2,1\right)\approx(3.618,1)$ である。
直線 $PI$ は $P\left(1,\dfrac45\right)$ と $I(2,1)$ を通り、傾き $\dfrac15$ で $y=\dfrac15x+\dfrac35$ である。$x=\dfrac{5+\sqrt5}2$ を入れると $y=\dfrac{5+\sqrt5}{10}+\dfrac35=\dfrac{11+\sqrt5}{10}\approx1.324$ で、$Q''$ の $y$ 座標 $1$ と違う。$P$、$I$、$Q''$ は一直線上にない。
2 つの反例は、証明のどこが効いていたかを示している。ex-sth-cx-outer では Sawayama の補題が使えず(接点を結ぶ直線が内心を通らない)、ex-sth-cx-two では 2 本の二等分線が同じ点 $D$ から出ないので、prf-sth-main の段 2 の「直交する 2 つの向き」が作れない。
MathWorld の頁「Thébault's Theorem」Wei26 は、cor-sth-collinear の (1)($P$、$Q$、$I$ が一直線上にあること)を Thébault の定理として述べている。同じ頁によれば、この問題は Thébault が 1938 年に出したもので、1970 年代まで解かれなかったとみられていたが、Sawayama が 1905 年にすでに解いていたことを Ayme(2003 年)が見いだした。この記事の題に 2 人の名を並べたのは、この経緯による。
Thébault の名は、平行四辺形の各辺に立てた正方形についての別の定理にも使われている(Thébaultの定理)。この記事の定理とは別のものである。
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