算術関数の平均位数

同義語:平均位数数論的関数の平均位数average orderaverage order of arithmetic functions正規位数normal order

概要

算術関数の平均位数(average order of arithmetic functions)とは、数論的関数 $f$ に対し、和 $\sum_{n\le x}f(n)$ と漸近的に等しい和 $\sum_{n\le x}g(n)$ を与える簡単な関数 $g$ のことで、不規則な関数も平均すると規則正しく振る舞うことを表す。$\varphi(n)$ の平均位数は $6n/\pi^2$、素因数の個数 $\omega(n)$ の平均位数は $\log\log n$ であり、約数にわたる和 $\sum_{d\mid n}h(d)$ は $\sum_d\lvert h(d)\rvert/d$ が収束すれば平均値 $\sum_dh(d)/d$ をもつ。$\omega(n)$ はほとんどすべての $n$ で $\log\log n$ に近く、平均とは別に典型的な値を表す正規位数の考え方につながる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 数論的関数, 約数関数, Eulerのφ関数, Möbius関数

約数の個数 $d(n)$、Eulerのφ関数 $\varphi(n)$、相異なる素因数の個数 $\omega(n)$ のような整数論の関数は、$n$ を 1 つずつ動かすと激しく上下する。たとえば素数 $p$ では $\varphi(p)=p-1$ だが、$n=2\cdot3\cdot5\cdots p_r$ のように小さい素数を多く含む $n$ では $\varphi(n)/n$ はいくらでも $0$ に近づく。ところが $n\le x$ にわたる和 $\sum_{n\le x}f(n)$ をとると、振る舞いはずっと規則正しくなり、なめらかな関数の和で近似できることが多い。この近似の言葉が 平均位数 である。
この記事では、平均位数と平均値を定義し、約数にわたる和の形をした関数の平均値を一般に求める定理(thm-avo-convolution)を証明する。続いて $\varphi(n)$ の和の誤差つきの評価(thm-avo-phi)と、素因数の個数 $\omega(n)$、$\Omega(n)$ の平均(thm-avo-omega)を示す。最後に、平均とは別の「典型的な値」を表す正規位数を導入し、$\omega(n)$ のほとんどすべての値が $\log\log n$ に近いこと(thm-avo-turan、cor-avo-normal-order)を証明する。約数の個数 $d(n)$ と約数の総和 $\sigma(n)$ の平均は 約数関数 の記事で扱っているので、ここでは結果を引くだけにする。

定義

以下、$x$ は実数、$\sum_{n\le x}$ は $1\le n\le x$ を満たす整数 $n$ にわたる和を表す。$p,q$ はつねに素数を表し、$\sum_{p\le x}$ は $x$ 以下の素数にわたる和である。$\log$ は自然対数、$\lfloor x\rfloor$ は 床関数 である。$O$、$o$、$\sim$ は Landau記号 の意味で使い、$F(x)\sim G(x)$ は $F(x)/G(x)\to1$($x\to\infty$)を表す。

平均位数と平均値

$f,g$ を正の整数の上で定義された複素数値の関数(数論的関数)とする。

  1. 十分大きい $x$ で $\sum_{n\le x}g(n)\ne0$ であり、
    $$ \sum_{n\le x}f(n)\sim\sum_{n\le x}g(n)\qquad(x\to\infty) $$
    が成り立つとき、$f$ は 平均位数(average order)$g$ をもつ、または $f$ の平均位数は $g$ であるという。
  2. 極限
    $$ M(f):=\lim_{x\to\infty}\frac1x\sum_{n\le x}f(n) $$
    が存在するとき、これを $f$ の 平均値(mean value)という。

平均位数の $g$ には、$\log n$、$cn$、$\log\log n$ のような単調でなめらかな関数をとる。$M(f)=c\ne0$ なら、$\sum_{n\le x}c=c\lfloor x\rfloor\sim cx$ なので、$f$ は定数 $c$ を平均位数にもつ。平均位数の $g$ はただ 1 つには決まらない(ex-avo-not-unique)。
素因数の個数を数える 2 つの関数を次で定める。$n=p_1^{e_1}\cdots p_r^{e_r}$($p_i$ は相異なる素数、$e_i\ge1$)と素因数分解するとき
$$ \omega(n):=r,\qquad\Omega(n):=e_1+\cdots+e_r $$
とし、$\omega(1)=\Omega(1)=0$ とする。$\omega(n)$ は相異なる素因数の個数、$\Omega(n)$ は重複も数えた素因数の個数である。たとえば $\omega(12)=2$、$\Omega(12)=3$ である。$\mu$ は Möbius関数 で、$\mu^2(n)$ は $n$ が平方因数をもたないとき $1$、もつとき $0$ である。

直感

$n$ を $1$ から $x$ までの整数から無作為に選ぶと、$d$ で割り切れる $n$ の割合はほぼ $1/d$ である。そこで、約数にわたる和 $f(n)=\sum_{d\mid n}g(d)$ の平均は、各 $d$ の寄与 $g(d)$ に「$d\mid n$ となる確率」$1/d$ を掛けて足した $\sum_dg(d)/d$ になると予想できる。たとえば $\varphi(n)/n=\sum_{d\mid n}\mu(d)/d$ なので、平均は $\sum_d\mu(d)/d^2=6/\pi^2$ になるはずである。この予想を、$\sum_d\lvert g(d)\rvert/d$ が収束するという条件のもとで正当化するのが thm-avo-convolution である。条件が要るのは、$d$ が $x$ に近いと「割合 $1/d$」の近似の誤差が $1/d$ そのものと同じ大きさになるからで、和の大きい $d$ の部分が小さいことを保証しなければならない。

例

代表的な関数の平均位数

次の表の左の関数は、右の平均位数をもつ。

関数 $f(n)$平均位数根拠
約数の個数 $d(n)$$\log n$約数関数 の記事の定理「Dirichlet の約数の個数の平均の公式」
約数の総和 $\sigma(n)$$\frac{\pi^2}6n$約数関数 の記事の定理「約数の総和の平均」
$\varphi(n)$$\frac6{\pi^2}n$cor-avo-phi-order
$\varphi(n)/n$、$\mu^2(n)$定数 $\frac6{\pi^2}$cor-avo-means
$\sigma(n)/n$定数 $\frac{\pi^2}6$cor-avo-means
$\omega(n)$、$\Omega(n)$$\log\log n$thm-avo-omega

$\sigma(n)$ については、$\sum_{n\le x}\frac{\pi^2}6n=\frac{\pi^2}{12}x^2+O(x)$ なので、約数関数 の記事の $\sum_{n\le x}\sigma(n)=\frac{\pi^2}{12}x^2+O(x\log x)$ から平均位数 $\frac{\pi^2}6n$ が従う。

$\varphi(n)$ の和の数値

$\Phi(x):=\sum_{n\le x}\varphi(n)$ と $3x^2/\pi^2$ を比べると次のとおりである。

$x$$\Phi(x)$$3x^2/\pi^2$差
$10$$32$$30.40$$1.60$
$100$$3044$$3039.64$$4.36$
$1000$$304192$$303963.55$$228.45$
$10000$$30397486$$30396355.09$$1130.91$

差は $x^2$ に比べてずっと小さく、thm-avo-phi の評価 $x(2+\log x)$($x=1000$ で約 $8908$)の範囲に収まっている。$\Phi(x)$ は $1$ 以上 $x$ 以下の整数の組 $(a,b)$($a\le b$)のうち $\gcd(a,b)=1$ となるものの個数なので、この表は「互いに素な組の割合が $6/\pi^2$ に近づく」ことの数値例でもある(Möbiusの反転公式 の記事の系「互いに素な組の割合」)。

約数にわたる和の平均値

一般の定理

収束する級数の重み付きの部分和

$g$ を数論的関数とし、$\sum_{d=1}^\infty\lvert g(d)\rvert/d$ が収束するとする。このとき
$$ \frac1x\sum_{d\le x}\lvert g(d)\rvert\to0\qquad(x\to\infty) $$
である。

要点:和を $d\le y$ と $y < d\le x$ に分け、後者では $\lvert g(d)\rvert\le x\lvert g(d)\rvert/d$ を使って収束する級数の残りで押さえる。

詳しい証明を開く

$\varepsilon>0$ をとる。級数が収束するので、$\sum_{d>y}\lvert g(d)\rvert/d < \varepsilon$ となる $y\ge1$ がある。$x>y$ のとき、$d\le y$ の部分と $y < d\le x$ の部分に分けると、後者では $d\le x$ だから $\lvert g(d)\rvert\le x\lvert g(d)\rvert/d$ であり、$$\frac1x\sum_{d\le x}\lvert g(d)\rvert\le\frac1x\sum_{d\le y}\lvert g(d)\rvert+\sum_{y < d\le x}\frac{\lvert g(d)\rvert}d < \frac1x\sum_{d\le y}\lvert g(d)\rvert+\varepsilon$$である。右辺の第 1 項は $y$ を固定したまま $x\to\infty$ とすると $0$ に近づくので、十分大きい $x$ で左辺は $2\varepsilon$ 未満になる。$\varepsilon$ は任意だから結論を得る。$\square$

約数にわたる和の平均値

$g$ を数論的関数とし、$\sum_{d=1}^\infty\lvert g(d)\rvert/d$ が収束するとする。$f(n):=\sum_{d\mid n}g(d)$ とおくと、$f$ の平均値が存在して
$$ M(f)=\lim_{x\to\infty}\frac1x\sum_{n\le x}f(n)=\sum_{d=1}^\infty\frac{g(d)}d $$
である。

段 1(和の順序の入れ替え). $x\ge1$ とする。$\sum_{n\le x}f(n)=\sum_{n\le x}\sum_{d\mid n}g(d)$ は、$d\mid n\le x$ を満たす組 $(d,n)$ にわたる $g(d)$ の和である。$d$ を固定すると、$n$ は $d$ の倍数 $d,2d,\dots$ のうち $x$ 以下のもので、その個数は $\lfloor x/d\rfloor$ である。よって
$$ \sum_{n\le x}f(n)=\sum_{d\le x}g(d)\Bigl\lfloor\frac xd\Bigr\rfloor $$
である(Möbius関数 の記事の系「床関数を使った和」と同じ数え方)。
段 2(床関数を外す). $\lfloor x/d\rfloor=x/d-\theta_d$($0\le\theta_d < 1$)と書くと
$$ \frac1x\sum_{n\le x}f(n)-\sum_{d=1}^\infty\frac{g(d)}d=-\sum_{d>x}\frac{g(d)}d-\frac1x\sum_{d\le x}\theta_dg(d) $$
である。右辺の第 1 項の絶対値は、収束する級数 $\sum\lvert g(d)\rvert/d$ の $x$ より先の部分以下なので、$x\to\infty$ で $0$ に近づく。第 2 項の絶対値は $\frac1x\sum_{d\le x}\lvert g(d)\rvert$ 以下で、lem-avo-kronecker により $0$ に近づく。$\square$

段 2 の第 2 項が、直感の節で述べた「割合 $1/d$ の近似の誤差」の合計である。各 $d$ について誤差は $1$ 未満だが、$d$ が $x$ と同じ程度の大きさのとき、この誤差は寄与 $x/d$ と同じ大きさになる。仮定はその合計が $x$ に比べて小さいことを保証している。

例への当てはめ

いくつかの関数の平均値

次の平均値が存在する。
$$ M\Bigl(\frac{\varphi(n)}n\Bigr)=\frac6{\pi^2},\qquad M\Bigl(\frac{\sigma(n)}n\Bigr)=\frac{\pi^2}6,\qquad M(\mu^2)=\frac6{\pi^2},\qquad M\Bigl(\frac n{\varphi(n)}\Bigr)=\prod_p\Bigl(1+\frac1{p(p-1)}\Bigr). $$
最後の積はすべての素数にわたり、収束して $e$ 以下の値をもつ。

要点:(1) $\varphi(n)/n=\sum_{d\mid n}\mu(d)/d$、(2) $\sigma(n)/n=\sum_{d\mid n}1/d$、(3) $\mu^2(n)=\sum_{d^2\mid n}\mu(d)$、(4) $n/\varphi(n)=\sum_{d\mid n}\mu^2(d)/\varphi(d)$ と書いて thm-avo-convolution を当てはめる。$\sum_d\mu(d)/d^2=6/\pi^2$ を使う。

各関数の計算を開く

どれも thm-avo-convolution に当てはめる。$\sum_{m\ge1}1/m^2=\pi^2/6$ である(Basel問題 の記事の定理「平方数の逆数の和」)。$\sum_d\mu(d)/d^2$ と $\sum_m1/m^2$ はどちらも絶対収束するので、その積は $n=dm$ ごとにまとめた級数 $\sum_n\bigl(\sum_{d\mid n}\mu(d)\bigr)/n^2$ に等しい(絶対収束 の記事の定理「絶対収束する級数の積」)。内側の和は $n=1$ で $1$、$n\ge2$ で $0$ なので(Möbius関数 の記事の定理「約数にわたる和」)、$\sum_d\mu(d)/d^2=6/\pi^2$ である。

(1) Eulerのφ関数 の記事の命題「Möbius関数による表示」により $\varphi(n)=\sum_{d\mid n}\mu(d)\,n/d$ なので、$\varphi(n)/n=\sum_{d\mid n}g(d)$、$g(d)=\mu(d)/d$ である。$\sum\lvert g(d)\rvert/d\le\sum1/d^2$ は収束し、平均値は $\sum_d\mu(d)/d^2=6/\pi^2$ である。

(2) $d\mapsto n/d$ は $n$ の約数の並べ替えなので、$\sigma(n)/n=\sum_{d\mid n}(n/d)/n=\sum_{d\mid n}1/d$ である。$g(d)=1/d$ で、平均値は $\sum1/d^2=\pi^2/6$ である。

(3) 冪乗因数をもたない整数 の記事の定理「$k$ 乗因数をもたない整数の指示関数」($k=2$)により $\mu^2(n)=\sum_{d^2\mid n}\mu(d)$ である。$g(m)$ を、$m=d^2$ なら $\mu(d)$、$m$ が平方数でなければ $0$ と定めると $\mu^2(n)=\sum_{m\mid n}g(m)$ で、$\sum_m\lvert g(m)\rvert/m=\sum_d\mu^2(d)/d^2\le\pi^2/6$ である。平均値は $\sum_m g(m)/m=\sum_d\mu(d)/d^2=6/\pi^2$ である。

(4) $h(d):=\mu^2(d)/\varphi(d)$ とおく。$h$ と定数関数 $\mathbf{1}$ は乗法的なので、Dirichlet 積 $\sum_{d\mid n}h(d)$ も乗法的である(乗法的関数 の記事の定理「乗法的関数は Dirichlet 積について群をなす」)。$n/\varphi(n)$ も乗法的である(Eulerのφ関数 の記事の定理「Eulerの $\varphi$ 関数の乗法性」)。素数冪 $p^k$($k\ge1$)では、約数 $p^j$ のうち $\mu^2\ne0$ は $j=0,1$ だけなので、$\sum_{d\mid p^k}h(d)=1+\frac1{p-1}=\frac p{p-1}=\frac{p^k}{\varphi(p^k)}$ である。両辺とも乗法的で素数冪で一致するので、$n/\varphi(n)=\sum_{d\mid n}h(d)$ である。

次に $\sum_dh(d)/d=\sum_d\mu^2(d)/(d\varphi(d))$ を求める。平方因数をもたない $d=p_1\cdots p_r$ では $d\varphi(d)=\prod_ip_i(p_i-1)$ である。$y\ge2$ を固定し、積 $P(y):=\prod_{p\le y}\bigl(1+\frac1{p(p-1)}\bigr)$ を展開すると、各素数から $1$ か $\frac1{p(p-1)}$ を選ぶ選び方ごとの積の和になり、これは素因数がすべて $y$ 以下の平方因数をもたない $d$ にわたる $\frac1{d\varphi(d)}$ の和に等しい。各項は正なので$$\sum_{d\le y}\frac{\mu^2(d)}{d\varphi(d)}\le P(y)\le\sum_{d=1}^\infty\frac{\mu^2(d)}{d\varphi(d)}$$である(右の和が発散する場合も含めて読む)。また $1+t\le e^t$ と $\sum_p\frac1{p(p-1)}\le\sum_{m\ge2}\frac1{m(m-1)}=1$ から $P(y)\le e$ である。左の不等式で $y\to\infty$ とすると級数は収束して $e$ 以下であり、$P(y)$ は単調に増えて上に有界だから積は収束し、2 つの不等式から級数の和と積の値は等しい。よって thm-avo-convolution により平均値は $\prod_p\bigl(1+\frac1{p(p-1)}\bigr)$ である。$\square$

  1. の $\varphi(n)/n$ の平均値 $6/\pi^2$ と (4) の $n/\varphi(n)$ の平均値(約 $1.9436$)の積は $1$ にならない。逆数の平均は平均の逆数ではないからである。(3) は 冪乗因数をもたない整数 の記事の系「平方因数をもたない整数の密度」と同じ内容で、同記事は誤差 $O(\sqrt x)$ まで示している。

$\varphi(n)$ の和の誤差つきの評価

thm-avo-convolution は極限の存在だけを述べ、誤差の大きさを与えない。$\varphi(n)$ では、約数関数 の記事で $\sigma(n)$ の和に使ったのと同じ方法で、誤差まで押さえられる。

$\varphi(n)$ の和

実数 $x\ge1$ について
$$ \Bigl\lvert\sum_{n\le x}\varphi(n)-\frac3{\pi^2}x^2\Bigr\rvert\le x(2+\log x) $$
である。とくに $\sum_{n\le x}\varphi(n)=\frac3{\pi^2}x^2+O(x\log x)$ である。

段 1(Dirichlet 積で書く). $\varphi(n)=\sum_{dm=n}\mu(d)\,m$($dm=n$ となる正の整数の組 $(d,m)$ にわたる和)である(Eulerのφ関数 の記事の命題「Möbius関数による表示」)。prf-avo-convolution の段 1 と同じく $d$ を固定して $m$ について先に足すと、$m$ は $1$ から $N_d:=\lfloor x/d\rfloor$ まで動くので
$$ \sum_{n\le x}\varphi(n)=\sum_{d\le x}\mu(d)\frac{N_d(N_d+1)}2 $$
である。
段 2(床関数を外す). $y:=x/d\ge1$、$N_d=y-\theta$($0\le\theta < 1$)とおくと
$$ \frac{N_d(N_d+1)}2=\frac{y^2}2+\frac{y(1-2\theta)}2+\frac{\theta^2-\theta}2 $$
で、最後の 2 項の絶対値の和は $y/2+1/8\le y$ 以下である。$\lvert\mu(d)\rvert\le1$ なので
$$ \Bigl\lvert\sum_{n\le x}\varphi(n)-\frac{x^2}2\sum_{d\le x}\frac{\mu(d)}{d^2}\Bigr\rvert\le\sum_{d\le x}\frac xd\le x(1+\log x) $$
である(最後の不等式は 調和級数 の記事の命題「積分による上下の評価」)。
段 3(和を無限和にのばす). prf-avo-means で見たとおり $\sum_{d\ge1}\mu(d)/d^2=6/\pi^2$ である。$N:=\lfloor x\rfloor$ とすると $N\ge x/2$ であり、$d\ge2$ で $1/d^2 < 1/(d(d-1))=1/(d-1)-1/d$ なので $\sum_{d>N}1/d^2 < 1/N\le2/x$ である。よって
$$ \Bigl\lvert\frac3{\pi^2}x^2-\frac{x^2}2\sum_{d\le x}\frac{\mu(d)}{d^2}\Bigr\rvert=\frac{x^2}2\Bigl\lvert\sum_{d>N}\frac{\mu(d)}{d^2}\Bigr\rvert < \frac{x^2}2\cdot\frac2x=x $$
である。段 2 と合わせて結論を得る。$\square$

$\varphi(n)$ の平均位数

$\varphi(n)$ の平均位数は $\frac6{\pi^2}n$ である。

$N=\lfloor x\rfloor$ とすると $\sum_{n\le x}\frac6{\pi^2}n=\frac6{\pi^2}\cdot\frac{N(N+1)}2$ で、$x-1 < N\le x$ から $\frac3{\pi^2}x^2+O(x)$ である。thm-avo-phi と比べると、2 つの和の比は $1+O(\log x/x)$ なので $1$ に近づく。$\square$

この結果は HW60 Theorem 330(§18.5、p. 268)にある。thm-avo-convolution から得た「$\varphi(n)/n$ の平均値が $6/\pi^2$」と比べると、thm-avo-phi は重み $n$ を付けた和であり、誤差の大きさまで分かる点で強い。

素因数の個数の平均

$\omega(n)$ の和は、素数 $p$ と $p$ の倍数 $n$ の組を数えることで、素数の逆数の和に帰着する。素数の逆数の和については次の Mertens の定理 を使う。

Mertens の定理(この記事では証明しない)

定数 $B_1$ があって $\sum_{p\le x}\frac1p=\log\log x+B_1+o(1)$($x\to\infty$)である(HW60 Theorem 427、§22.7、p. 351。$\sum_{p\le x}1/p=\log\log x+O(1)$ の形では Sho08 Theorem 5.10、p. 110)。とくに、定数 $C\ge1$ があって、すべての $x\ge3$ で
$$ \Bigl\lvert\sum_{p\le x}\frac1p-\log\log x\Bigr\rvert\le C $$
である(十分大きい $x$ では $o(1)$ の項が $1$ 以下になり、残りの有界な範囲では両辺とも有界だから)。この記事ではこの定理を証明しない(Mertensの定理)。

素因数の個数の平均

$x\ge3$ について
$$ \sum_{n\le x}\omega(n)=x\log\log x+O(x),\qquad0\le\sum_{n\le x}\bigl(\Omega(n)-\omega(n)\bigr)\le x $$
である。したがって $\sum_{n\le x}\Omega(n)=x\log\log x+O(x)$ でもあり、$\omega(n)$ と $\Omega(n)$ の平均位数はどちらも $\log\log n$ である($n=1,2$ では $\log\log n$ の代わりに $0$ とおく)。

段 1($\omega$ の和). $\omega(n)$ は $n$ を割り切る素数 $p$ の個数なので、$\sum_{n\le x}\omega(n)$ は $p\mid n\le x$ を満たす組 $(p,n)$ の個数である。$p$ を固定すると $n$ は $\lfloor x/p\rfloor$ 個あるので
$$ \sum_{n\le x}\omega(n)=\sum_{p\le x}\Bigl\lfloor\frac xp\Bigr\rfloor $$
である。$x/p-1 < \lfloor x/p\rfloor\le x/p$ と、$x$ 以下の素数の個数 $\pi(x)$ が $x$ 以下であることから
$$ x\sum_{p\le x}\frac1p-x\le\sum_{n\le x}\omega(n)\le x\sum_{p\le x}\frac1p $$
である。rem-avo-mertens の不等式を代入すると $\bigl\lvert\sum_{n\le x}\omega(n)-x\log\log x\bigr\rvert\le(C+1)x$ を得る。
段 2($\Omega-\omega$ の和). $n$ の素因数分解での $p$ の指数を $v_p(n)$ とすると、$\Omega(n)=\sum_pv_p(n)$ は $p^k\mid n$ を満たす組 $(p,k)$($k\ge1$)の個数で、$\omega(n)$ はそのうち $k=1$ の組の個数である。よって $\Omega(n)-\omega(n)$ は $p^k\mid n$、$k\ge2$ となる組 $(p,k)$ の個数であり、$n\le x$ にわたって足すと
$$ 0\le\sum_{n\le x}\bigl(\Omega(n)-\omega(n)\bigr)=\sum_{\substack{p,\,k\ge2\\p^k\le x}}\Bigl\lfloor\frac x{p^k}\Bigr\rfloor\le x\sum_p\sum_{k\ge2}\frac1{p^k}=x\sum_p\frac1{p(p-1)}\le x\sum_{m\ge2}\frac1{m(m-1)}=x $$
である。
段 3(平均位数). $g(n):=\log\log n$($n\ge3$)、$g(1)=g(2)=0$ とする。$x\ge e^2$ のとき、$\sqrt x < n\le x$ では $\log n > \frac12\log x$ なので $\log\log x-\log2 < g(n)\le\log\log x$ であり、そのような $n$ は $x-\sqrt x-1$ 個以上ある。よって
$$ (x-\sqrt x-1)(\log\log x-\log2)\le\sum_{n\le x}g(n)\le x\log\log x $$
で、$\sqrt x\log\log x=O(x)$ だから $\sum_{n\le x}g(n)=x\log\log x+O(x)$ である。段 1・段 2 の和もこれと $O(x)$ しか違わず、$x\log\log x$ に比べて $O(x)$ は小さいので、比は $1$ に近づく。$\square$

これは HW60 Theorem 430(§22.10、pp. 354–356)の形を弱めたもので、同書は誤差を $o(x)$ とし、第 2 項の定数まで求めている。$\Omega(n)-\omega(n)$ の平均が有界であることは、「ほとんどの $n$ では素因数が重複しても数個だけ」ということを表している。

正規位数:平均と典型的な値

平均位数は和だけを見るので、少数の大きな値に引っぱられることがある。たとえば $d(n)$ の平均位数は $\log n$ だが、ほとんどの $n$ で $d(n)$ はそれよりずっと小さい(約数関数 の記事の定理「Dirichlet の約数の個数の平均の公式」の後の段落)。「ほとんどすべての $n$ での値」を表すのが次の概念である。

正規位数

$f$ を数論的関数、$F$ を十分大きい $n$ で正の値をとる関数とする。任意の $\varepsilon>0$ について
$$ \#\bigl\{n\le x : \lvert f(n)-F(n)\rvert>\varepsilon F(n)\bigr\}=o(x)\qquad(x\to\infty) $$
が成り立つとき、$f$ は 正規位数(normal order)$F$ をもつという。

条件は「$(1-\varepsilon)F(n)\le f(n)\le(1+\varepsilon)F(n)$ を満たさない $n$ の割合が $0$ に近づく」ということである(HW60 §22.11、p. 356 の定義と同じ)。平均位数と正規位数は互いに他を導かない(「条件を外した反例」の節の表の 3 行目・4 行目)。

Turán の不等式

定数 $C'$ があって、すべての $x\ge3$ について
$$ \sum_{n\le x}\bigl(\omega(n)-\log\log x\bigr)^2\le C'x\log\log x $$
である。

$L:=\log\log x$、$S:=\sum_{p\le x}1/p$ とおく。$x\ge3$ なので $L>0$ である。
段 1(2 乗の和). $\omega(n)^2=\sum_{p\mid n}\sum_{q\mid n}1$ は、$n$ を割り切る素数の順序付きの組 $(p,q)$ の個数である。$p=q$ の組は $\omega(n)$ 個ある。$p\ne q$ のとき、$p\mid n$ かつ $q\mid n$ は $pq\mid n$ と同値である。よって
$$ \sum_{n\le x}\omega(n)^2=\sum_{p\le x}\Bigl\lfloor\frac xp\Bigr\rfloor+\sum_{\substack{p\ne q\\pq\le x}}\Bigl\lfloor\frac x{pq}\Bigr\rfloor\le xS+x\Bigl(\sum_{p\le x}\frac1p\Bigr)^2=xS+xS^2 $$
である。中央の不等式では、$pq\le x$ なら $p,q\le x$ なので、$p\ne q$、$pq\le x$ の組にわたる $1/(pq)$ の和が $p,q\le x$ のすべての組にわたる和 $S^2$ 以下であることを使った。
段 2(展開する). prf-avo-omega の段 1 により $\sum_{n\le x}\omega(n)\ge xS-x$ である。$L>0$ なので
$$ \sum_{n\le x}(\omega(n)-L)^2=\sum_{n\le x}\omega(n)^2-2L\sum_{n\le x}\omega(n)+L^2\lfloor x\rfloor\le xS^2+xS-2L(xS-x)+L^2x $$
であり、右辺は $x(S-L)^2+xS+2Lx$ に等しい。
段 3(Mertens の定理を使う). rem-avo-mertens により $\lvert S-L\rvert\le C$ なので、右辺は $x(C^2+L+C+2L)$ 以下である。$x\ge3$ では $L\ge\log\log3 > 0.09$ なので、$C^2+C\le(C^2+C)L/0.09$ であり、$C':=(C^2+C)/0.09+3$ とおけば結論を得る。$\square$

左辺は $\omega(n)$ の $\log\log x$ からのずれの 2 乗の和で、確率の言葉では「分散」にあたる。右辺が平均 $\log\log x$ と同じ程度の大きさであることが、ずれが $\sqrt{\log\log x}$ 程度にとどまることを意味する。これを数え上げの形にしたのが次の系である。

$\omega(n)$ と $\Omega(n)$ の正規位数
  1. 任意の $\delta>0$ について、$\lvert\omega(n)-\log\log x\rvert>(\log\log x)^{1/2+\delta}$ を満たす $n\le x$ の個数は $o(x)$ である。
  2. $\omega(n)$ と $\Omega(n)$ の正規位数はどちらも $\log\log n$ である。

1. $L=\log\log x$ とし、条件を満たす $n\le x$ の個数を $E$ とする。そのような $n$ は thm-avo-turan の左辺に $L^{1+2\delta}$ より大きい寄与をするので、$EL^{1+2\delta}\le C'xL$、すなわち $E\le C'xL^{-2\delta}$ である。$L\to\infty$ なので $E=o(x)$ である。
2. $\varepsilon\in(0,1)$ をとり、$\lvert\omega(n)-\log\log n\rvert>\varepsilon\log\log n$ を満たす $n\le x$($n\ge3$)の個数を数える。$n\le\sqrt x$ のものは $\sqrt x=o(x)$ 個以下である。$\sqrt x < n\le x$ では $L-\log2 < \log\log n\le L$ なので、
$$ \lvert\omega(n)-L\rvert\ge\lvert\omega(n)-\log\log n\rvert-\log2>\varepsilon(L-\log2)-\log2 $$
である。$x$ が十分大きければ右辺は $L^{3/4}$ より大きい($\varepsilon L$ は $L^{3/4}$ より速く増える)ので、そのような $n$ は 1 で $\delta=1/4$ とした個数以下で、$o(x)$ である。よって $\omega(n)$ の正規位数は $\log\log n$ である。
$\Omega(n)$ については、thm-avo-omega の $\sum_{n\le x}(\Omega(n)-\omega(n))\le x$ から、$\Omega(n)-\omega(n)>L^{1/2}$ となる $n\le x$ は $x/L^{1/2}=o(x)$ 個以下である。残りの $n$ で $\sqrt x < n\le x$ かつ $\lvert\Omega(n)-\log\log n\rvert>\varepsilon\log\log n$ となるものは、$\lvert\omega(n)-\log\log n\rvert>\varepsilon\log\log n-L^{1/2}$ を満たす。$\log\log n > L-\log2$ なので、$x$ が十分大きければ右辺は $\frac\varepsilon2\log\log n$ より大きく、そのような $n$ の個数は $\omega(n)$ について $\varepsilon/2$ で数えた個数以下で $o(x)$ である。$\square$

1 は Hardy–Ramanujan の定理 と呼ばれ、ここで使った分散による証明は Turán による(HW60 Theorem 431、§22.11、pp. 356–358 も同じ方法で証明している)。$\log\log n$ は非常にゆっくり増え、$n=10^{80}$ でも約 $5.2$ である。したがって、ふつうの大きさの整数がもつ相異なる素因数は数個にすぎない。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
平均をとる(個々の値で比べる)素数 $p$ での $\varphi(p)=p-1$$\varphi(n)\sim\frac6{\pi^2}n$
thm-avo-convolution の「$\sum\lvert g(d)\rvert/d$ が収束」$g=\mu^2$、$f(n)=2^{\omega(n)}$平均値が有限の値として存在する
平均値 $c>0$ のまわりの分散が小さいこと:$\frac1x\sum_{n\le x}(f(n)-c)^2\to0$$n$ が偶数なら $0$、奇数なら $2$(平均値は $1$)正規位数が平均値と同じ $1$
$f$ が有界であること(正規位数 $c>0$ から平均値を導くとき)$n=2^m$ なら $n$、それ以外は $1$(正規位数は $1$)平均値が存在して $1$ に等しい
反例の確認

3 行目と 4 行目の「外す条件」を仮定すれば、右の列の主張は成り立つ。3 行目:$c>0$ を定数とし $\frac1x\sum_{n\le x}(f(n)-c)^2\to0$ なら、$\lvert f(n)-c\rvert>\varepsilon c$ となる $n\le x$ の個数は $\frac1{\varepsilon^2c^2}\sum_{n\le x}\lvert f(n)-c\rvert^2=o(x)$ 以下なので、$f$ は正規位数 $c$ をもつ(thm-avo-turan から cor-avo-normal-order を導くのと同じ数え方である)。4 行目:すべての $n$ で $\lvert f(n)\rvert\le B$ とし、$f$ が正規位数 $c>0$ をもつとする。$\varepsilon>0$ を与え、$\lvert f(n)-c\rvert>\varepsilon c$ となる $n\le x$ の個数を $E(x)=o(x)$ とすると
$$ \Bigl\lvert\frac1x\sum_{n\le x}f(n)-c\Bigr\rvert\le\frac{\lvert\lfloor x\rfloor-x\rvert c}x+\varepsilon c+\frac{(B+c)E(x)}x $$
で、右辺の $\limsup$ は $\varepsilon c$ である。$\varepsilon$ は任意なので平均値は $c$ である。
各行の反例が、その行の「外す条件」を満たさず、表の右の列の主張を破ることを確かめる。

各行の確認を開く

1 行目:$\varphi(p)/(\frac6{\pi^2}p)=\frac{\pi^2}6(1-\frac1p)\to\frac{\pi^2}6\ne1$ なので、素数の列に沿って比は $1$ に近づかない。平均位数は個々の値の近似ではない。

2 行目:$2^{\omega(n)}$ は $n$ の平方因数をもたない約数の個数で(各素因数を含めるか含めないかを選ぶ)、$2^{\omega(n)}=\sum_{d\mid n}\mu^2(d)$ である。正の整数 $n\le x$ はどれも $n=dm^2$($d$ は平方因数をもたない)とただ 1 通りに書ける(冪乗因数をもたない整数 の記事の定理「冪乗部分と冪乗因数をもたない部分への一意分解」)ので、$\sum_{n\le x}\frac1n\le\Bigl(\sum_{d\le x}\frac{\mu^2(d)}d\Bigr)\sum_{m\ge1}\frac1{m^2}$ であり、$\sum_{d\le x}\mu^2(d)/d\ge\frac6{\pi^2}\log x$ となる(調和級数 の記事の命題「積分による上下の評価」)。よって $\sum\lvert g(d)\rvert/d$ は発散する。さらに prf-avo-convolution の段 1 と同じ計算で $\frac1x\sum_{n\le x}2^{\omega(n)}=\frac1x\sum_{d\le x}\mu^2(d)\lfloor x/d\rfloor\ge\sum_{d\le x}\frac{\mu^2(d)}d-1\ge\frac6{\pi^2}\log x-1\to\infty$ なので、平均値は有限の値として存在しない($x=1000$ で平均は約 $4.99$ である)。

3 行目:$n\le x$ の奇数は $\lceil\lfloor x\rfloor/2\rceil$ 個なので和は $x+O(1)$ で、平均値は $1$、平均位数は $1$ である。しかしすべての $n$ で $\lvert f(n)-1\rvert=1$ なので、$\frac1x\sum_{n\le x}(f(n)-1)^2=\lfloor x\rfloor/x\to1$ で分散の条件は成り立たず、$\varepsilon < 1$ ではどの $n$ も $\lvert f(n)-1\rvert\le\varepsilon$ を満たさないので、正規位数は $1$ でない。

4 行目:$f(2^m)=2^m$ なので $f$ は有界でない。$f(n)\ne1$ となる $n\le x$ は $2$ の冪だけで、$\log_2x+1=o(x)$ 個なので、正規位数は $1$ である。一方 $2^k\le x < 2^{k+1}$ のとき $\sum_{n\le x}f(n)=\lfloor x\rfloor-(k+1)+(2^{k+1}-1)$ で、$x=2^k$ では $3\cdot2^k-k-2$、$x=2^{k+1}-1$ では $2^{k+2}-k-3$ である。$\frac1x\sum_{n\le x}f(n)$ は前者で $3$ に、後者で $2$ に近づくので、極限は存在しない。

平均位数はただ 1 つには決まらない

$\gamma$ を Euler の定数とする。$\sum_{n\le x}\log n\sim x\log x$ であり、$\sum_{n\le x}(\log n+2\gamma)=\sum_{n\le x}\log n+2\gamma\lfloor x\rfloor$ も $\sim x\log x$ である。$\sum_{n\le x}d(n)\sim x\log x$ なので(約数関数 の記事の定理「Dirichlet の約数の個数の平均の公式」)、$d(n)$ は $\log n$ と $\log n+2\gamma$ の両方を平均位数にもつ。def-avo-main は $\sim$ で和の主要項だけを比べるので、平均位数は「和の主要項」だけを決め、それより小さい項は決めない。

補足

$\mu(n)$ と $\Lambda(n)$ の平均と素数定理

Möbius 関数の和 $\sum_{n\le x}\mu(n)$ を $x$ で割ったものが $0$ に近づくこと、すなわち $M(\mu)=0$ は知られているが、その証明は易しくない(Möbius関数 の記事の注意「ゼータ関数と和の大きさ」)。von Mangoldt 関数 $\Lambda(n)$($n=p^k$、$k\ge1$ なら $\log p$、それ以外は $0$)については、「$\Lambda$ の平均値が $1$」すなわち $\sum_{n\le x}\Lambda(n)\sim x$ は 素数定理 と同値である。実際、$\sum_{n\le x}\Lambda(n)$ と $\theta(x)=\sum_{p\le x}\log p$ の差は $k\ge2$ の素数冪 $p^k\le x$ にわたる $\log p$ の和で、そのような $p$ は $\sqrt x$ 以下、$k$ は $\log_2x$ 以下なので、差は $\sqrt x(\log_2x)\log x=o(x)$ 以下である。$\theta(x)\sim x$ が素数定理と同値であることは 素数定理 の記事の命題「素数定理の Chebyshev の関数による言い換え」にある。平均位数の理論でも、素数の分布にかかわる部分は難しい。

呼び名と文献

平均位数の定義は HW60 §18.2、(18.2.1)、p. 263 と Mos11 Chapter 3、p. 27 による。平均値 $M(f)$ を「平均」とだけ呼ぶこともある。$d(n)$ の平均の誤差項をどこまで小さくできるかという問題は Dirichletの約数問題 と呼ばれる。$d(n)$ の正規位数については、$\log d(n)$ の正規位数が $\log2\cdot\log\log n$ であることが thm-avo-turan と同じ考え方から導かれる(HW60 §22.13、p. 359。この記事では証明しない)。

関連項目

参考文献

[1]
G. H. Hardy and E. M. Wright, An Introduction to the Theory of Numbers, 4th ed., Oxford, Clarendon Press, 1960, §18.2, (18.2.1), p. 263(平均位数の定義)、§18.5, Theorem 330, p. 268($\varphi(n)$ の和)、§22.7, Theorem 427, p. 351(素数の逆数の和)、§22.10, Theorem 430, pp. 354–356($\omega(n)$・$\Omega(n)$ の平均位数)、§22.11, Theorem 431, pp. 356–358(正規位数)

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