Lefschetz原理(Lefschetz principle)とは、標数 $0$ の代数閉体の上の代数幾何学は複素数体 $\mathbb{C}$ の上の代数幾何学と同じであるという原理である。正確な形の 1 つは、体の言語の一階の文について、$\mathbb{C}$ で真であること、標数 $0$ のある代数閉体で真であること、十分大きいすべての素数 $p$ の標数 $p$ の代数閉体で真であることが同値だという定理で、代数閉体の理論の完全性とコンパクト性定理から従い、有限体での数え上げから Ax–Grothendieck の定理が得られる。もう 1 つの形は、有限個の方程式の係数が生成する体は $\mathbb{C}$ に埋め込めるという事実で、これにより滑らかな射影多様体の Hodge 数と de Rham コホモロジーの次元の等式が標数 $0$ の任意の体へ移る。
代数幾何学の古典的な部分は複素数体 $\mathbb C$ の上で育ち、超越的な道具(位相、正則関数、調和形式)を自由に使って多くの定理が証明された。それらの定理は、標数 $0$ の別の代数閉体、たとえば代数的数の体 $\overline{\mathbb Q}$ や $\overline{\mathbb Q(t)}$ の上でも成り立つのだろうか。「標数 $0$ の代数閉体の上の代数幾何学は、$\mathbb C$ の上の代数幾何学と同じである」という標語が Lefschetz の原理 である。この記事では、この標語を正確にした 2 つの形を証明する。1 つは、体の言語の一階の文の真偽が標数 $0$ のすべての代数閉体で同じであり、さらに十分大きい素数 $p$ の標数 $p$ の代数閉体とも同じであるという定理である。もう 1 つは、有限個の方程式で書ける対象は $\mathbb Q$ 上有限生成な部分体の上で定義され、その部分体は $\mathbb C$ に埋め込めるという事実で、これを使うと滑らかな射影多様体のコホモロジーの次元についての等式が $\mathbb C$ から標数 $0$ の任意の体へ移る。応用として、単射な多項式写像 $\mathbb C^n\to\mathbb C^n$ は全射であるという Ax–Grothendieck の定理を、有限体の数え上げから導く。
環の言語 $L_{\mathrm{ring}}=\{+,-,\cdot,0,1\}$ の論理式を考える(量化記号消去 の節「代数閉体」)。自由変数をもたない論理式を 文 という。体の公理に、各 $m\ge1$ について「最高次の係数が $1$ の $m$ 次多項式は根をもつ」という文を加えた理論を $\mathrm{ACF}$ と書き、そのモデルはちょうど代数閉体である。整数 $n\ge1$ について、$1$ を $n$ 個足した項を $n\cdot1$ と書く。$\mathrm{ACF}$ に文 $\lnot(n\cdot1=0)$($n\ge1$)をすべて加えた理論を $\mathrm{ACF}_0$、素数 $p$ について文 $p\cdot1=0$ を加えた理論を $\mathrm{ACF}_p$ と書く。$\mathrm{ACF}_0$ のモデルは標数 $0$ の代数閉体、$\mathrm{ACF}_p$ のモデルは標数 $p$ の代数閉体である。
量化記号消去 の系「代数閉体の理論の帰結」の 1 により、$\mathrm{ACF}_0$ と $\mathrm{ACF}_p$ は 完全 である。すなわち、標数が同じ 2 つの代数閉体は、まったく同じ文を満たす。この記事で使うのはこの事実と、一階論理のコンパクト性定理から従う次の事実である。
文の集合 $T$ のすべてのモデルで文 $\varphi$ が真ならば、$T$ の有限部分集合 $T_0$ で、$T_0$ のすべてのモデルで $\varphi$ が真となるものがある(コンパクト性定理(一階論理) の系「帰結の有限性」)。
$\varphi$ を $L_{\mathrm{ring}}$ の文とする。次の 5 条件は同値である。
2 ⇒ 1 ⇒ 3 と 4 ⇒ 5 は明らかである($\mathbb C$ は標数 $0$ の代数閉体であり、標数 $p$ の代数閉体はどの $p$ についても存在する)。
3 ⇒ 2. $\mathrm{ACF}_0$ は完全なので、標数 $0$ のある代数閉体で真な文は、標数 $0$ のすべての代数閉体で真である。
2 ⇒ 4. 2 は「$\mathrm{ACF}_0$ のすべてのモデルで $\varphi$ が真」ということである。帰結の有限性により、$\mathrm{ACF}_0$ の有限部分集合 $T_0$ で、そのすべてのモデルで $\varphi$ が真となるものがある。$T_0$ に現れる文 $\lnot(n\cdot1=0)$ の $n$ の最大値を $N$ とする(現れなければ $N=1$)。$p>N$ を素数、$K$ を標数 $p$ の代数閉体とする。$K$ は $\mathrm{ACF}$ のモデルであり、$1\le n\le N< p$ なら $K$ で $n\cdot1\ne0$ なので、$K$ は $T_0$ のモデルである。よって $\varphi$ は $K$ で真である。
5 ⇒ 2. 2 が成り立たないとすると、標数 $0$ のある代数閉体で $\lnot\varphi$ が真なので、3 ⇒ 2 により $\lnot\varphi$ は標数 $0$ のすべての代数閉体で真である。いま示した 2 ⇒ 4 を $\lnot\varphi$ に適用すると、ある $N'$ があって、$N'$ より大きいすべての素数 $p$ について $\lnot\varphi$ は標数 $p$ のすべての代数閉体で真である。すると $\varphi$ が真になる標数 $p$ の代数閉体があるような素数 $p$ は $N'$ 以下に限られ、5 に反する。$\square$
この定理の 1 ⇔ 2 ⇔ 3 は、BPR16 Theorem 1.38(p. 36)の「代数閉体 $C\subset C'$ について、$C$ の元を係数に含む文は $C$ で真であることと $C'$ で真であることが同値である」という形の Lefschetz の原理の、係数が整数の場合にあたる。標数 $p$ の側で $\mathrm{ACF}_p$ が完全であることを使うと、4 と 5 の「標数 $p$ のすべての代数閉体」と「標数 $p$ のある代数閉体」は同じ意味になる。
定理の要点は、$\mathbb C$ で成り立つ一階の文は、標数 $0$ のすべての代数閉体で成り立つということである(Gödelの完全性定理 により、そのような文は $\mathrm{ACF}_0$ の公理から証明できる。この記事では証明しない)。$\mathbb C$ についての証明に位相や解析を使っても、結論が一階の文で書けている限り、その結論は $\overline{\mathbb Q}$ でも、十分大きい $p$ の $\overline{\mathbb F}_p$ でも成り立つ。逆に、$\overline{\mathbb F}_p$ で(無限個の $p$ について)成り立つ一階の文は $\mathbb C$ でも成り立つ。次の節の Ax–Grothendieck の定理は、この逆向きの使い方の典型である。
$K$ を代数閉体、$n\ge1$ とし、$F=(F_1,\ldots,F_n)\colon K^n\to K^n$ を $K$ 係数の多項式 $F_i\in K[x_1,\ldots,x_n]$ で与えられる写像とする。$F$ が単射ならば、$F$ は全射である。
$n$ と次数の上限 $d$ を固定する。$n$ 変数で次数 $d$ 以下の単項式は有限個なので、$n$ 個の多項式 $F_1,\ldots,F_n$ はそれらの係数を並べた有限個の変数の組 $\bar a$ で表せる。この多項式写像を $F_{\bar a}$ と書くと、$F_{\bar a}(\bar x)=F_{\bar a}(\bar y)$ は整数係数の多項式の等式 $n$ 個の連言である。よって
$$
\varphi_{n,d}:\quad \forall\bar a\,\Bigl[\,\forall\bar x\,\forall\bar y\,\bigl(F_{\bar a}(\bar x)=F_{\bar a}(\bar y)\to\bar x=\bar y\bigr)\ \to\ \forall\bar z\,\exists\bar x\ F_{\bar a}(\bar x)=\bar z\,\Bigr]
$$
は $L_{\mathrm{ring}}$ の文であり、「次数 $d$ 以下の多項式による単射な写像 $K^n\to K^n$ は全射である」ことを表す。すべての $d$ について $\varphi_{n,d}$ が $K$ で真であることを示せばよい。
$\overline{\mathbb F}_p$ の場合. $p$ を素数、$\overline{\mathbb F}_p$ を有限体 $\mathbb F_p$ の代数閉包とする。係数 $\bar a$ をもつ $F=F_{\bar a}$ が $\overline{\mathbb F}_p^{\,n}$ 上で単射とし、$\bar z\in\overline{\mathbb F}_p^{\,n}$ をとる。$\bar a$ と $\bar z$ の成分は有限個で、どれも $\mathbb F_p$ 上代数的なので、それらが $\mathbb F_p$ 上生成する体 $k$ は $\mathbb F_p$ の有限次拡大、すなわち有限体である。$F$ の係数は $k$ に属するので、$F$ は $k^n$ を $k^n$ に写し、$k^n$ 上でも単射である。$k^n$ は有限集合なので、単射な写像 $k^n\to k^n$ は全射であり、$\bar z\in k^n$ はある $\bar x\in k^n$ の像になる。よって $\varphi_{n,d}$ は $\overline{\mathbb F}_p$ で真である。
一般の場合. $\mathrm{ACF}_p$ は完全なので、$\varphi_{n,d}$ は標数 $p$ のすべての代数閉体で真である。これがすべての素数 $p$ について成り立つので、thm-lef-main の 5 ⇒ 2 により、$\varphi_{n,d}$ は標数 $0$ のすべての代数閉体でも真である。$\square$
$\mathbb C$ についてのこの定理は、多変数の正則写像の理論から直接示すのは易しくない。上の証明では、「有限集合の単射は全射」という数え上げの事実が、Lefschetz の原理を通して $\mathbb C$ へ運ばれている。代数閉という仮定は外せない(反例の表の 4 行目)。
一階の文を経由しないもう 1 つの形は、「有限個の式に現れる数は $\mathbb C$ の中の数と思ってよい」という事実である。
$K$ を標数 $0$ の体とし、$\mathbb Q$ 上の超越次数が連続体の濃度 $2^{\aleph_0}$ 以下であるとする。このとき体の準同型 $K\to\mathbb C$ が存在する(体の準同型は単射なので、$K$ は $\mathbb C$ の部分体と同型である)。とくに、$\mathbb Q$ 上有限生成な体と可算な体は $\mathbb C$ に埋め込める。
$K$ の $\mathbb Q$ 上の超越基底 $B$ をとる(超越次数 の命題「超越基底の存在と延長」)。$\mathbb C$ の $\mathbb Q$ 上の超越基底 $B'$ の濃度は $2^{\aleph_0}$ なので(超越次数 の例「複素数体と実数体の有理数体上の超越次数」)、単射 $\iota\colon B\to B'$ がある。$B$ と $\iota(B)$ はどちらも代数的に独立なので、$\iota$ は多項式環の同型 $\mathbb Q[B]\to\mathbb Q[\iota(B)]$ を引き起こし、商体の同型 $\sigma_0\colon\mathbb Q(B)\to\mathbb Q(\iota(B))\subset\mathbb C$ に延びる。$\mathbb C$ の元のうち $\mathbb Q(\iota(B))$ 上代数的なものの全体 $\Omega$ は代数閉体で(代数閉体 の命題「代数閉体の中の代数閉包」)、$\mathbb Q(\iota(B))$ の代数閉包である。$K$ は $\mathbb Q(B)$ 上代数的なので、$\sigma_0$ で $\mathbb Q(B)$ と $\mathbb Q(\iota(B))$ を同一視すると、Mil22 Theorem 6.6(p. 90)により $\sigma_0$ を延長する準同型 $K\to\Omega\subset\mathbb C$ がある。$\mathbb Q$ 上有限生成な体の超越次数は有限であり、可算な体の超越基底は可算なので、最後の主張が従う。$\square$
体 $k$ の上の有限個の多項式を考えるとき、その係数が $\mathbb Q$ 上生成する体 $K_0\subset k$ は有限生成なので、命題により $K_0$ を $\mathbb C$ の部分体とみなせる。$k$ の上で定義された有限個の方程式の問題は、$K_0$ の上の問題を経由して $\mathbb C$ の上の問題に移る。これが代数幾何学で実際に使われる Lefschetz の原理の形である。
Hodge分解・Dolbeaultコホモロジー・de Rhamコホモロジー の記事では、複素数体上の Hodge 理論から得られる次元の等式を、標数 $0$ の任意の体へ移すのに Lefschetz の原理を使っている。その議論を正確に述べる。体 $k$ 上の滑らかな射影多様体 $X$ について、$h^{p,q}(X):=\dim_kH^q(X,\Omega^p_{X/k})$ とおく。
$k$ を標数 $0$ の体、$X$ を $k$ 上の滑らかな射影スキームとする。このとき各 $n\ge0$ と $p,q\ge0$ について
$$
\dim_kH^n_{dR}(X/k)=\sum_{p+q=n}h^{p,q}(X),\qquad h^{p,q}(X)=h^{q,p}(X)
$$
が成り立つ。
$k=\mathbb C$ の場合は、Hodge 分解 $H^n(X^{an},\mathbb C)=\bigoplus_{p+q=n}H^{p,q}$、$\overline{H^{p,q}}=H^{q,p}$ と、GAGA による $H^q(X^{an},\Omega^p_{X^{an}})\cong H^q(X,\Omega^p_{X/\mathbb C})$、代数的 de Rham コホモロジーの比較定理 $H^n_{dR}(X/\mathbb C)\cong H^n(X^{an},\mathbb C)$ から従う(Hodge分解 の節「代数多様体の場合」と de Rhamコホモロジー の定理「Grothendieck の比較定理」。この記事では証明しない)。この $\mathbb C$ の場合を認めて、一般の $k$ の場合を導く。
段 1(有限生成の部分体の上で定義する). $X$ は射影空間 $\mathbb P^N_k$ の閉部分スキームで、斉次イデアル $I\subset k[x_0,\ldots,x_N]$ で定まる。Hilbert の基底定理により $I$ は有限個の斉次多項式 $f_1,\ldots,f_r$ で生成される。それらの係数が $\mathbb Q$ 上生成する体を $K_0\subset k$ とし、$f_1,\ldots,f_r$ が $\mathbb P^N_{K_0}$ に定める閉部分スキームを $X_0$ とする。各標準アフィン開集合 $D_+(x_j)$ の上で、$X_0$ と $X$ の座標環は $K_0[x_i/x_j]/(f_l/x_j^{\deg f_l})$ と $k[x_i/x_j]/(f_l/x_j^{\deg f_l})$ であり、後者は前者の $\otimes_{K_0}k$ である。よって $X\cong X_0\times_{K_0}k$ である。
段 2(滑らかさ). $\operatorname{Spec}k\to\operatorname{Spec}K_0$ は忠実平坦で準コンパクトなので fpqc 被覆であり、射が滑らかであるという性質は fpqc 位相で底について局所的である(Stacks Tag 02VL)。$X$ が $k$ 上滑らかなので、$X_0$ は $K_0$ 上滑らかである。$X_0$ は $\mathbb P^N_{K_0}$ の閉部分スキームなので射影的である。
段 3(体の拡大による底変換). 体の拡大 $L/K_0$ について $X_L:=X_0\times_{K_0}L$ とおく。Kähler 微分は底変換と可換であり(Har77 命題 II.8.10、p. 175)、外冪も引き戻しと可換なので、$\Omega^p_{X_L/L}$ は $\Omega^p_{X_0/K_0}$ の引き戻しである。$\operatorname{Spec}L\to\operatorname{Spec}K_0$ は Noether スキームの平坦な射なので、平坦な底変換によりコホモロジーは底変換と可換で(Har77 命題 III.9.3 とその証明、p. 255)、
$$
H^q(X_L,\Omega^p_{X_L/L})\cong H^q(X_0,\Omega^p_{X_0/K_0})\otimes_{K_0}L
$$
である。また de Rhamコホモロジー の系「体の拡大による底変換」により $H^n_{dR}(X_L/L)\cong H^n_{dR}(X_0/K_0)\otimes_{K_0}L$ である。$\otimes_{K_0}L$ は次元を変えないので、$X_L$ の $h^{p,q}$ と $\dim H^n_{dR}$ は $X_0$ のものに等しい。
段 4($\mathbb C$ へ移す). $K_0$ は $\mathbb Q$ 上有限生成なので、prop-lef-embed により体の準同型 $\sigma\colon K_0\to\mathbb C$ がある。$\sigma$ で $\mathbb C$ を $K_0$ の拡大とみなし、段 3 を $L=\mathbb C$ と $L=k$ に適用する。$X_{\mathbb C}$ は滑らかな射影スキーム $X_0$ の底変換なので、$\mathbb C$ 上の滑らかな射影スキームであり、上で認めた $\mathbb C$ の場合の等式を満たす。段 3 により $X_{\mathbb C}$、$X_0$、$X_k=X$ の $h^{p,q}$ と $\dim H^n_{dR}$ はすべて等しいので、等式は $X$ についても成り立つ。$\square$
この証明では一階の文は現れない。使っているのは、$X$ が有限個の方程式で書けることと、次元が体の拡大で変わらないことだけである。de Rhamコホモロジー の記事の注意「有限次元性と Hodge–de Rhamスペクトル系列の退化」の 1 にある、標数 $0$ の体上の滑らかな有限型スキームの de Rham コホモロジーの有限次元性も、同じ形の議論(有限生成の部分体の上で定義し、$\mathbb C$ の場合へ移す)で導かれる。射影的でない場合に段 1 にあたる「有限生成の部分体の上で定義すること」は、Stacks Tag 01ZM(Limits, Lemma 32.10.1)による(この記事では証明しない)。
標数 $p>0$ では、事情が異なる。de Rhamコホモロジー の例「反例:標数 $p$ の affine 直線」のとおり、アフィン直線の de Rham コホモロジーは無限次元になる。標数 $0$ の体の間では次元を移せるが、標数 $p$ へは移せない。thm-lef-main の 4 も、一階の文についての主張であり、コホモロジーの次元の等式を標数 $p$ へ移すものではない。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 代数閉(thm-lef-main の 3) | 実数体 $\mathbb R$ と文 $\forall x\,\lnot(x\cdot x+1=0)$ | 標数 $0$ の体で真な文は $\mathbb C$ で真 |
| 一階の文 | 「すべての元が素体上代数的である」という性質 | $\overline{\mathbb Q}$ で成り立てば $\mathbb C$ で成り立つ |
| 素数 $p$ が十分大きい(thm-lef-main の 4) | 文 $\lnot(1+1=0)$ | $\mathbb C$ で真な文は標数 $2$ の代数閉体で真 |
| 代数閉(thm-lef-ax) | 有理数体 $\mathbb Q$ と $F(x)=x^3$ | 単射な多項式写像は全射 |
| 超越次数が $2^{\aleph_0}$ 以下(prop-lef-embed) | 有理関数体 $\mathbb Q(t_i\mid i\in I)$($I$ の濃度が $2^{\aleph_0}$ より大きい) | $\mathbb C$ への埋め込みの存在 |
1 行目:$\mathbb R$ は標数 $0$ の体で、$x^2+1$ は実数の根をもたないので文は $\mathbb R$ で真である。$\mathbb C$ では $x=\sqrt{-1}$ が根なので偽である。$\mathbb R$ は代数閉体でないので、定理の 3 の仮定だけが破れている。
2 行目:$\overline{\mathbb Q}$ のすべての元は $\mathbb Q$ 上代数的だが、$\mathbb C$ は非可算で $\overline{\mathbb Q}$ は可算なので(代数閉体 の例「代数的数全体のなす体」)、$\mathbb C$ には $\mathbb Q$ 上超越的な元がある。$\overline{\mathbb Q}$ と $\mathbb C$ はどちらも標数 $0$ の代数閉体で、thm-lef-main によりまったく同じ一階の文を満たすので、この性質はどの一階の文でも表せない。「各元はある 0 でない整数係数多項式の根である」は、多項式の次数について無限個の可能性の「または」を必要とする。
3 行目:$\mathbb C$ では $1+1=2\ne0$ だが、標数 $2$ の代数閉体 $\overline{\mathbb F}_2$ では $1+1=0$ である。この文は $p>2$ のすべての標数 $p$ の代数閉体で真なので、定理の 4 と矛盾しない。「十分大きい $p$」を「すべての $p$」に強めることはできない。
4 行目:$x^3=y^3$ なら $(x-y)(x^2+xy+y^2)=0$ で、$x\ne y$ のとき $x^2+xy+y^2=(x+y/2)^2+3y^2/4>0$ なので、$F$ は $\mathbb Q$ 上($\mathbb R$ 上でも)単射である。$2$ の実数の 3 乗根は無理数なので、$2$ は $F(\mathbb Q)$ に属さず、$F$ は全射でない。
5 行目:$t_i$($i\in I$)は代数的に独立なので、この体は濃度 $\lvert I\rvert$ 以上の元をもつ。体の準同型は単射なので、$\lvert I\rvert>2^{\aleph_0}=\lvert\mathbb C\rvert$ なら $\mathbb C$ への埋め込みはない。
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