有界変動関数

同義語:function of bounded variationbounded variation functionBV関数

概要

有界変動関数(function of bounded variation)とは、閉区間 $[a,b]$ 上の関数 $f$ で、分点での値の差の絶対値の和の上限、すなわち全変動 $V_a^b(f)$ が有限なもののことである。ちょうど 2 つの単調増加関数の差として書ける関数であり、各点で左右の極限をもち、ほとんど至る所で微分可能で、導関数の積分は全変動以下になる(絶対連続なら等号)。有界開区間上の可積分関数が有界変動関数とほとんど至る所等しいことは、ある定数 $C$ があってすべての試験関数 $\varphi$ について $|\int u\varphi'|\le C\sup|\varphi|$ となることと同値で、Sobolev 空間 $W^{1,1}$ を含む関数のクラスを与える。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 単調関数, 絶対連続関数, Lebesgue積分

区間 $[a,b]$ の上の関数のグラフを左から右へたどり、上下に動いた量を全部足し合わせる。この「上下の動きの総量」が有限な関数を 有界変動関数(function of bounded variation)という。単調関数は動きの総量が両端の差に等しいので有界変動であり、逆に有界変動関数はちょうど 2 つの単調増加関数の差として書ける関数である(単調関数 の定理「Jordan 分解」)。この意味で、有界変動関数は単調関数を足し引きして作れる関数の全体である。
有界変動関数は、連続でなくてもよい(階段関数)一方、連続でも有界変動とは限らない($x\sin\frac1x$)。絶対連続関数 は有界変動関数の一部であり、微分積分学の基本定理が成り立つ関数をちょうど言い当てる。有界変動関数一般では、導関数はほとんど至る所に存在して可積分だが、その積分は全変動より小さくなりうる(Cantor 関数)。
この記事では、全変動の基本性質を述べたあと、次の 3 つを証明する。

  • 全変動の関数 $x\mapsto V_a^x(f)$ が連続になるのは、$f$ が連続な点でちょうどである。
  • 有界変動関数の導関数は可積分で、その積分は全変動以下である。絶対連続なら等号が成り立つ。
  • 有界開区間上の可積分関数が有界変動関数とほとんど至る所等しいことは、$\bigl|\int u\varphi'\bigr|\le C\sup|\varphi|$ という不等式で特徴づけられる。これは 1 次元の Sobolev空間の基本事項 の $W^{1,1}$ を広げた関数のクラスを与える。

定義

以下、$a< b$ は実数とし、関数は実数値とする。

全変動と有界変動関数

$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ と $[a,b]$ の分割 $P\colon a=x_0< x_1<\dots< x_n=b$ について
$$ V(f,P):=\sum_{k=1}^n|f(x_k)-f(x_{k-1})|,\qquad V_a^b(f):=\sup_PV(f,P)\in[0,\infty] $$
とおき、$V_a^b(f)$ を $f$ の $[a,b]$ 上の 全変動(total variation)という。$V_a^b(f)<\infty$ のとき、$f$ は $[a,b]$ 上で 有界変動 であるという。$V_a^a(f):=0$ とする。

これは 単調関数 の定義「全変動と有界変動関数」と同じものである。分割 $P$ に点を 1 つ加えると、加えた点をまたぐ 1 項が三角不等式により 2 項の和以下になるので、$V(f,P)$ は減らない。したがって上限は、細かい分割だけを考えても変わらない。
$x\in[a,b]$ について $V(x):=V_a^x(f)$ とおいた関数を $f$ の 変動関数 と呼ぶことにする。

基本性質

基本性質

$f,g\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ とする。

  1. (加法性)$a\le s\le t\le u\le b$ について $V_s^u(f)=V_s^t(f)+V_t^u(f)$ である。
  2. $f$ が有界変動なら、すべての $x\in[a,b]$ について $|f(x)|\le|f(a)|+V_a^b(f)$ であり、とくに $f$ は有界である。
  3. $V_a^b(f+g)\le V_a^b(f)+V_a^b(g)$、$V_a^b(cf)=|c|V_a^b(f)$($c\in\mathbb{R}$)である。$f,g$ が有界変動なら、$M_f:=\sup|f|$、$M_g:=\sup|g|$ として $V_a^b(fg)\le M_fV_a^b(g)+M_gV_a^b(f)$ である。とくに有界変動関数の全体は積について閉じた線形空間をなす。
  4. $f$ が単調なら $V_a^b(f)=|f(b)-f(a)|$ である。$f$ が定数 $L$ で Lipschitz 連続(Lipschitz連続)なら $V_a^b(f)\le L(b-a)$ である。
  5. (Jordan 分解)$f$ が有界変動であることと、単調増加関数 $g,h$ で $f=g-h$ となるものがあることは同値である。有界変動なら $g:=V$、$h:=V-f$ がそのような組である。

1 と 5 は 単調関数 の定理「Jordan 分解」とその証明にある。4 の前半も同じ記事の定義の直後にある。
2:分割 $a< x< b$ について $|f(x)-f(a)|\le V(f,P)\le V_a^b(f)$ である($x=a,b$ でも明らか)。
3:各項で三角不等式を使うと $V(f+g,P)\le V(f,P)+V(g,P)$ であり、上限をとればよい。スカラー倍は定義から明らかである。積については
$$ |f(x_k)g(x_k)-f(x_{k-1})g(x_{k-1})|\le|f(x_k)|\,|g(x_k)-g(x_{k-1})|+|g(x_{k-1})|\,|f(x_k)-f(x_{k-1})| $$
を $k$ について足せばよい。4 の後半:$V(f,P)\le\sum_kL(x_k-x_{k-1})=L(b-a)$ である。$\square$

5 により、単調関数について知られている性質が有界変動関数に移る。有界変動関数は各点で左右の極限をもち、不連続点は高々可算個の跳びであり、Borel 可測で、ほとんどすべての点で微分可能である(単調関数 の定理「単調関数の片側極限」「単調関数の不連続点」「Lebesgue の単調関数の微分定理」を $g,h$ に当てはめる。最後の微分定理はこの記事では証明しない)。

変動関数の連続性

$f$ が連続でも、Jordan 分解の $g,h$ を勝手にとると不連続になりうる($f=0$ と $g=h=1_{[1/2,1]}$)。変動関数を使う分解では、そうならない。

変動関数の連続性

$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ を有界変動とし、$V(x):=V_a^x(f)$ とする。

  1. $x_0\in[a,b)$ について、$f$ が $x_0$ で右連続であることと、$V$ が $x_0$ で右連続であることは同値である。
  2. $x_0\in(a,b]$ について、$f$ が $x_0$ で左連続であることと、$V$ が $x_0$ で左連続であることは同値である。
    とくに $f$ が連続なら、$V$ と $V-f$ は連続な単調増加関数であり、$f$ は連続な単調増加関数の差に書ける。
短い最初の区間で変動を測る

1 を示す。$x_0< y$ について、加法性(prop-bv-basic の 1)から $V(y)-V(x_0)=V_{x_0}^y(f)\ge|f(y)-f(x_0)|$ なので、$V$ が右連続なら $f$ も右連続である。
逆に $f$ が $x_0$ で右連続とする。$\varepsilon>0$ をとり、$x_0\le y< x_0+\delta$ なら $|f(y)-f(x_0)|<\varepsilon$ となる $\delta>0$ をとる。$[x_0,b]$ の分割 $P\colon x_0=t_0< t_1<\dots< t_m=b$ で $V(f,P)>V_{x_0}^b(f)-\varepsilon$ となるものをとる。$x_0< t< \min(t_1,x_0+\delta)$ となる点 $t$ を $P$ に加えても $V(f,P)$ は減らないので
$$ V_{x_0}^b(f)-\varepsilon< |f(t)-f(x_0)|+\Bigl(|f(t_1)-f(t)|+\sum_{k\ge2}|f(t_k)-f(t_{k-1})|\Bigr)\le\varepsilon+V_t^b(f) $$
である。加法性から $V_{x_0}^t(f)=V_{x_0}^b(f)-V_t^b(f)< 2\varepsilon$ であり、$x_0< y\le t$ なら $0\le V(y)-V(x_0)\le V_{x_0}^t(f)< 2\varepsilon$ である。よって $V$ は $x_0$ で右連続である。
2 は、$[a,x_0]$ の分割の最後の小区間を短くして同じ議論をすればよい。最後の主張は 1・2 と prop-bv-basic の 5 から従う。$\square$

導関数の可積分性

平行移動の差の積分は、全変動で抑えられる。

平行移動の差の積分

$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ が有界変動で $0< h< b-a$ なら
$$ \int_a^{b-h}|f(x+h)-f(x)|\,dx\le h\,V_a^b(f) $$
である。

等間隔の点の列に分ける

$f$ は 2 つの単調関数の差なので Borel 可測であり、被積分関数は可測である。$x\in[a,b-h]$ を $x=a+s+kh$($0\le s< h$、$k\ge0$ は整数)と書くと、条件 $x\le b-h$ は $a+s+(k+1)h\le b$ と同値である。$k$ は $(b-a)/h$ 以下なので項は有限個であり、積分と和を入れ替えて
$$ \int_a^{b-h}|f(x+h)-f(x)|\,dx=\int_0^h\sum_{k\ge0,\ a+s+(k+1)h\le b}\bigl|f(a+s+(k+1)h)-f(a+s+kh)\bigr|\,ds $$
である。各 $s$ について右辺の和は、$[a,b]$ の中の増加する点列 $a+s< a+s+h<\cdots$ に沿った差の和なので、$a,b$ とこれらの点を分点とする分割の $V(f,P)$ 以下であり、$V_a^b(f)$ 以下である。$s$ について積分すればよい。$\square$

導関数の可積分性

$f\colon[a,b]\to\mathbb{R}$ が有界変動なら、$f$ はほとんどすべての点で微分可能で、$f'\in L^1(a,b)$ であり
$$ \int_a^b|f'(x)|\,dx\le V_a^b(f) $$
である。$f$ が絶対連続なら等号が成り立つ。

差分商に Fatou の補題を使う

ほとんど至る所での微分可能性は prop-bv-basic の 5 の直後に述べたとおりである(この記事では証明しない)。$f$ が微分可能な点 $x\in(a,b)$ では、$m$ が大きいと $x\le b-1/m$ であり、$|f'(x)|=\lim_{m\to\infty}m|f(x+1/m)-f(x)|$ である。Fatouの補題 と lem-bv-translation から
$$ \int_a^b|f'|\,dx\le\liminf_{m\to\infty}\int_a^{b-1/m}m\,|f(x+1/m)-f(x)|\,dx\le V_a^b(f) $$
である($f'$ は可測関数の列の極限として可測である)。
$f$ が絶対連続とする。絶対連続関数 の命題「基本性質」の 5 により $V$ も絶対連続であり、同記事の定理「絶対連続関数と不定積分」から $V(b)-V(a)=\int_a^bV'$ である(絶対連続関数の導関数が不定積分の被積分関数にほとんど至る所等しいことは、この記事では証明しない)。$V$ と $f$ がともに微分可能な点(ほとんどすべての点)$x$ では、$y\to x$ のとき $|f(y)-f(x)|\le|V(y)-V(x)|$ から $|f'(x)|\le V'(x)$ である。よって $V_a^b(f)=V(b)=\int_a^bV'\ge\int_a^b|f'|$ であり、前半と合わせて等号が成り立つ。$\square$

$u\in W^{1,1}(a,b)$ の絶対連続な代表 $\tilde u$(絶対連続関数 の定理「$W^{1,1}$ との一致」)にこれを使うと、$V_a^b(\tilde u)=\int_a^b|u'|=\|u'\|_{L^1}$ である。$W^{1,1}$ のノルムの導関数の部分は、連続な代表の全変動にほかならない。

超関数微分による特徴づけ

関数を $L^1$ の元、すなわちほとんど至る所等しい関数の同値類として扱うと、有界変動性は 1 点ごとの値によらない形で言い直せる。$I:=(a,b)$ とし、$C_c^1(I)$ を台が $I$ のコンパクト集合に入る $C^1$ 級関数の全体、$\|\varphi\|_\infty:=\sup_I|\varphi|$ とする。

超関数微分による特徴づけ

$I=(a,b)$ を有界開区間、$u\in L^1(I)$、$C\ge0$ とする。次の 2 条件は同値である。

  1. $[a,b]$ 上の有界変動関数 $f$ で、$I$ の上でほとんど至る所 $u=f$ かつ $V_a^b(f)\le C$ となるものがある。
  2. すべての $\varphi\in C_c^1(I)$ について
    $$ \left|\int_Iu\,\varphi'\,dx\right|\le C\,\|\varphi\|_\infty. $$
    とくに、$u$ とほとんど至る所等しい有界変動関数があるとき、その全変動の最小値が存在し、2 をみたす $C$ の最小値に等しい。

2 の左辺は $u$ の超関数微分を $-\varphi$ に当てた値なので、2 は「超関数微分が一様ノルムに関して有界な汎関数である」ことを述べている。$\|\varphi\|_\infty$ を $\|\varphi\|_{L^{p'}}$($1< p\le\infty$、$p'$ は共役指数)に替えると、同じ形の条件は $u\in W^{1,p}$ を特徴づける(弱微分 の定理「平行移動の差による特徴づけ」)。$p=1$ に当たる一様ノルムの場合に得られるのは $W^{1,1}$ ではなく、より広い有界変動関数のクラスである。

1 ⇒ 2。 $\varphi\in C_c^1(I)$ の台が $[c,d]\subset I$ に入るとし、$0< h< \min(c-a,b-d)$ とする。$y=x-h$ と置き換えると、$\varphi$ の台の外では被積分関数が $0$ なので
$$ \int_If(x)\,\frac{\varphi(x)-\varphi(x-h)}{h}\,dx=-\int_c^d\frac{f(y+h)-f(y)}{h}\,\varphi(y)\,dy $$
である。$[c,d]\subset[a,b-h]$ なので、lem-bv-translation から右辺の絶対値は $\|\varphi\|_\infty V_a^b(f)\le C\|\varphi\|_\infty$ 以下である。$h\to0$ のとき、$\varphi'$ の一様連続性と平均値の定理から $(\varphi(x)-\varphi(x-h))/h\to\varphi'(x)$ は一様であり、$f$ は有界なので、左辺は $\int_If\varphi'=\int_Iu\varphi'$ に収束する。
2 ⇒ 1。 要点:軟化した関数 $u_\varepsilon$ について、2 から $\int|u_\varepsilon'|\le C$ が出るので、$u_\varepsilon$ の差の和は $C$ 以下になる。極限をとると、測度 $0$ の集合を除いた点の上で $u$ の差の和が $C$ 以下になり、除いた点では右からの極限で値を決め直せばよい。

詳しい証明を開く

段 1:$u$ を $I$ の外で $0$ と延ばした関数を $\bar u\in L^1(\mathbb{R})$ とし、軟化子 $\rho$(1 次元)について $u_\varepsilon:=\rho_\varepsilon*\bar u\in C^\infty(\mathbb{R})$ とおく。$0< \varepsilon< (b-a)/2$ とし、$I_\varepsilon:=(a+\varepsilon,b-\varepsilon)$ とする。$\psi\in C_c(I_\varepsilon)$ について $\varphi(y):=\int\rho_\varepsilon(x-y)\psi(x)\,dx$ とおくと、$\varphi$ は $C^\infty$ 級で台は $\operatorname{supp}\psi+[-\varepsilon,\varepsilon]\subset I$ に入り、$\rho_\varepsilon\ge0$、$\int\rho_\varepsilon=1$ から $\|\varphi\|_\infty\le\|\psi\|_\infty$ である。$\varphi'(y)=-\int\rho_\varepsilon'(x-y)\psi(x)\,dx$ と Fubiniの定理 から$$\int u_\varepsilon'\,\psi\,dx=\iint\rho_\varepsilon'(x-y)\bar u(y)\psi(x)\,dy\,dx=-\int_Iu\,\varphi'\,dy$$であり、2 から $\bigl|\int u_\varepsilon'\psi\bigr|\le C\|\psi\|_\infty$ である。

段 2:$\chi_j\in C_c(I_\varepsilon)$ を $0\le\chi_j\le1$ で $j$ について単調増加し、$I_\varepsilon$ の各点で $1$ に収束するものとし、$\psi_j:=\chi_j\,u_\varepsilon'/(|u_\varepsilon'|+1/j)$ とおく。$\psi_j$ は連続で $|\psi_j|\le1$ であり、$\int u_\varepsilon'\psi_j=\int\chi_j|u_\varepsilon'|^2/(|u_\varepsilon'|+1/j)$ の被積分関数は $j$ について単調増加して $|u_\varepsilon'|1_{I_\varepsilon}$ に収束する。単調収束定理 と段 1 から $\int_{I_\varepsilon}|u_\varepsilon'|\le C$ である。よって $I_\varepsilon$ の点 $x_0< \dots< x_n$ について $\sum_k|u_\varepsilon(x_k)-u_\varepsilon(x_{k-1})|\le\sum_k\int_{x_{k-1}}^{x_k}|u_\varepsilon'|\le C$ である。

段 3:軟化子 の定理「軟化による近似」の 2 により $\|u_\varepsilon-\bar u\|_{L^1(\mathbb{R})}\to0$ なので、$\varepsilon_m\to0$ を $I$ の上でほとんど至る所 $u_{\varepsilon_m}\to u$ となるようにとれる。収束する点の集合を $G\subset I$ とすると $I\setminus G$ は測度 $0$ で、$G$ は $I$ で稠密である。$G$ の点 $x_0< \dots< x_n$ は $m$ が大きければ $I_{\varepsilon_m}$ に入るので、段 2 で極限をとって$$\sum_{k=1}^n|u(x_k)-u(x_{k-1})|\le C\qquad(\ast)$$である。

段 4:$x\in[a,b)$ について、$y\in G$ を右から $x$ に近づけたときの $u(y)$ の極限が存在する。そうでなければ、$\eta>0$ と、$G$ の点の対 $y_k,y_k'$ で $|u(y_k)-u(y_k')|\ge\eta$ となるものを、第 $k+1$ の対が第 $k$ の対の 2 点より左にあり、すべて $x$ より右にあるようにとれる。$N$ 対の $2N$ 点を並べると各対は隣り合うので、$(\ast)$ の左辺は $N\eta$ 以上になり矛盾する。同様に、$y\in G$ を左から $b$ に近づけたときの極限も存在する。そこで $x\in G$ では $f(x):=u(x)$、$x\in[a,b)\setminus G$ では右からの極限、$x=b$ では($b\notin G$ なので)左からの極限を $f(x)$ とおく。$f=u$ は $G$ の上、したがってほとんど至る所で成り立つ。

段 5:$[a,b]$ の分割 $a=t_0< \dots< t_n=b$ と $\varepsilon'>0$ をとる。$\delta>0$ を小区間の長さの最小値の半分より小さくとり、各 $k$ について $s_k\in G$ を、$t_k\in G$ なら $s_k:=t_k$、そうでなく $k< n$ なら $s_k\in(t_k,t_k+\delta)$、$k=n$ なら $s_n\in(b-\delta,b)$ で、$|u(s_k)-f(t_k)|< \varepsilon'/(2n)$ となるようにとる。$s_0< s_1< \dots< s_n$ なので、$(\ast)$ から$$V(f,P)\le\sum_k|u(s_k)-u(s_{k-1})|+2n\cdot\frac{\varepsilon'}{2n}\le C+\varepsilon'$$である。$\varepsilon'$ と $P$ は任意なので $V_a^b(f)\le C$ である。

最後の主張:1 ⇒ 2 から、どの有界変動な代表 $f$ についても $C=V_a^b(f)$ で 2 が成り立つ。2 をみたす $C$ があるとき、その全体は閉区間 $[C_0,\infty)$ をなし(下限 $C_0$ でも 2 は成り立つ)、2 ⇒ 1 を $C=C_0$ に使うと $V_a^b(f)\le C_0$ となる代表 $f$ がある。$\square$

Bre11 Remark 8(pp. 206–207)は、2 を $p=1$ でみたす関数を有界変動関数と呼び、「2 つの有界な単調非減少関数の差」「分点の差の和が一様に有界」「超関数微分が有限な測度」の 3 通りに特徴づけられると述べている。この記事は前の 2 つの言い方と 2 の同値を証明した。3 つ目の、超関数微分が有限な符号付き測度になることはこの記事では証明しない。$f$ が右連続な有界変動関数なら、Jordan 分解の $g,h$ の Lebesgue–Stieltjes 測度の差がその測度にあたる(単調関数 の注意「単調関数と測度」)。

例

有界変動関数の例
  1. 階段関数 $1_{[1/2,1]}$ は $[0,1]$ 上で単調なので有界変動で、全変動は $1$ である。$\varphi\in C_c^1(0,1)$ について $\int_0^11_{[1/2,1]}\varphi'=-\varphi(1/2)$ なので、thm-bv-distributional の 2 が $C=1$ で成り立つ。一方、連続な代表をもたないので $W^{1,1}(0,1)$ に属さない(絶対連続関数 の例「絶対連続関数の例」の 4)。
  2. Cantor 関数 $\overline F$ は $[0,1]$ 上で連続かつ単調増加なので有界変動で、$V_0^1(\overline F)=1$ である。一方、ほとんど至る所 $\overline F'=0$ なので $\int_0^1|\overline F'|=0< 1$ であり、thm-bv-derivative の不等式は等号にならない(Cantor集合 の注意「反例:微積分の基本定理が成り立たない単調連続関数」)。$\overline F$ は連続な有界変動関数だが絶対連続でない。
  3. $\alpha>0$ について $f_\alpha(x):=x^\alpha\sin\frac1x$($0< x\le1$)、$f_\alpha(0):=0$ とすると、$f_\alpha$ は $[0,1]$ 上で連続である。$\alpha>1$ なら有界変動であり、$0< \alpha\le1$ なら有界変動でない。

3 を示す。$\alpha>1$ のとき、$(0,1]$ の上で $f_\alpha'(x)=\alpha x^{\alpha-1}\sin\frac1x-x^{\alpha-2}\cos\frac1x$ であり、$|f_\alpha'(x)|\le\alpha+x^{\alpha-2}$ は $\alpha-2>-1$ なので $(0,1)$ で可積分である。$0< c< x$ について $f_\alpha(x)-f_\alpha(c)=\int_c^xf_\alpha'$ であり、$c\to0$ として $f_\alpha(x)=\int_0^xf_\alpha'$ を得る。絶対連続関数 の定理「絶対連続関数と不定積分」により $f_\alpha$ は絶対連続であり、thm-bv-derivative から $V_0^1(f_\alpha)=\int_0^1|f_\alpha'|<\infty$ である。
$0< \alpha\le1$ のとき、$y_k:=\frac1{(k+\frac12)\pi}$ とおくと $f_\alpha(y_k)=(-1)^ky_k^\alpha$ であり、$y_k< 1$ から $y_k^\alpha\ge y_k$ である。分点 $0< y_N< \dots< y_1< 1$ の分割について $V(f_\alpha,P)\ge\sum_{k=1}^{N-1}(y_k^\alpha+y_{k+1}^\alpha)\ge\sum_{k=1}^{N-1}y_k$ であり、右辺は $N\to\infty$ で発散する(単調関数 の例「反例の確認」の 4 と同じ計算)。$\square$

反例

外す条件反例成り立たなくなること
有界変動(prop-bv-basic の 2)$f(x)=1/x$($0< x\le1$)、$f(0)=0$$f$ の有界性
有界変動(thm-bv-derivative)$f(x)=x^2\sin(1/x^2)$($x\ne0$)、$f(0)=0$ の $[0,1]$ 上至る所で微分可能でも $f'\in L^1$
絶対連続(thm-bv-derivative の等号)Cantor 関数$\int_a^b\lvert f'\rvert=V_a^b(f)$
$x_0$ での $f$ の連続性(prop-bv-variation-continuity)$1_{[1/2,1]}$、$x_0=1/2$$V$ の $x_0$ での連続性
反例の確認
  1. $1/x$ は $(0,1]$ の上で有界でないので、prop-bv-basic の 2 により $[0,1]$ 上で有界変動でない。各 $[c,1]$($0< c$)の上では単調なので有界変動である。
  2. $f(x)=x^2\sin(1/x^2)$ は $[0,1]$ の各点で微分可能だが $f'\notin L^1(0,1)$ である(絶対連続関数 の例「反例の確認」の 2)。thm-bv-derivative により $f$ は $[0,1]$ 上で有界変動でない。
  3. Cantor 関数については ex-bv-examples の 2 で確かめた。
  4. $f=1_{[1/2,1]}$ の変動関数は $V=1_{[1/2,1]}$ であり、$1/2$ で左連続でない。$f$ も $1/2$ で左連続でないので、prop-bv-variation-continuity の 2 と合っている。

補足

区間全体での有界変動

一般の区間 $J$(有界でなくてもよい)の上の関数 $f$ については、$J$ に含まれるすべての有界閉区間 $[c,d]$ について $V_c^d(f)$ を考え、その上限 $V_J(f)$ が有限のとき $J$ 上で有界変動という。たとえば $\mathbb{R}$ 上の分布関数(単調増加で値が $[0,1]$ に入る関数)は $V_{\mathbb{R}}\le1$ である。Hellyの選出定理 は、全変動と 1 点での値が一様に有界な関数列から各点収束する部分列がとれることを述べ、分布関数の列にも当てはまる。

多変数の有界変動関数

thm-bv-distributional の 2 は多変数に移せる。開集合 $\Omega\subset\mathbb{R}^n$ の上の $u\in L^1(\Omega)$ について、$|\varphi|\le1$ をみたすベクトル値の $\varphi\in C_c^1(\Omega;\mathbb{R}^n)$ にわたる $\int_\Omega u\operatorname{div}\varphi\,dx$ の上限が有限のとき、$u$ を $\Omega$ 上の有界変動関数と呼ぶ。1 次元ではこれが $C$ の最小値になり、thm-bv-distributional によって分点の差の和で測る全変動と結びつく。多変数の場合の理論はこの記事では扱わない。

有界変動関数は Stieltjes積分 の積分する側の関数としても現れ、連続関数を有界変動関数で積分した値はつねに存在する。1次元Sobolev空間 の元 $u\in W^{1,1}$ の連続な代表は、全変動 $\|u'\|_{L^1}$ の有界変動関数である。

関連項目

参考文献

[1]
Haim Brezis, Functional Analysis, Sobolev Spaces and Partial Differential Equations, Springer, 2011, Remark 8(pp. 206–207、絶対連続関数と有界変動関数)

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