de Guaの定理(de Gua's theorem)とは、頂点 $\mathrm O$ から出る 3 本の辺 $\mathrm{OA},\mathrm{OB},\mathrm{OC}$ が互いに垂直な四面体で、面 $\mathrm{ABC}$ の面積の 2 乗が、残りの 3 つの面の面積の 2 乗の和に等しいという定理で、空間の三平方の定理とも呼ばれる。より一般に、空間のどんな三角形でも、面積の 2 乗は 3 つの座標平面への影(正射影)の面積の 2 乗の和に等しい。これは Lagrange の恒等式から出て、行列式の Cauchy–Binet の公式の特別な場合にあたり、$n$ 次元の直角単体にも広がる。
前提知識: 三平方の定理, 三角形の面積の公式, ベクトルの内積(高校数学), 空間の平面と法線ベクトル, 四面体の体積と行列式
直方体の角を 1 つの平面で切り落とすと、1 つの頂点に互いに垂直な 3 本の辺が集まる四面体ができる。その 4 つの面の面積を比べてみる。
$\mathrm O(0,0,0)$、$\mathrm A(1,0,0)$、$\mathrm B(0,2,0)$、$\mathrm C(0,0,3)$ とする。$\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ は座標軸の上にあり、互いに垂直である。
直角三角形で「斜辺の 2 乗は、直角をはさむ 2 辺の 2 乗の和」が成り立つ(三平方の定理)のと同じ形の式が、1 次元上がって、面積について成り立っている。これが de Gua の定理である。この定理には、すでに 2 つの証明が高校数学の記事にある。
| 高校の計算 | この記事の言葉 | 大学の言葉 |
|---|---|---|
| 三平方の定理 $c^2=a^2+b^2$ | 面積の 2 乗は影の面積の 2 乗の和(thm-dgt-shadow) | $k$ 次元の面の Pythagoras の定理 |
| $\lvert\vec u\rvert^2\lvert\vec v\rvert^2-(\vec u\cdot\vec v)^2$ | 2 次の小行列式の 2 乗の和(lem-dgt-lagrange) | Cauchy–Binet の公式 |
| 平面の三角形の面積 $\dfrac12\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert$ | 座標平面への影の面積 | 外積の成分、面積ベクトル |
| 体積 $=\dfrac13\times$ 底面積 $\times$ 高さ | 体積を 2 通りに表す(prf-dgt-main-volume) | $n$ 次元の直角単体 |
OA、OB、OC が互いに垂直な四面体 OABC を、頂点 O の側から見た図。手前に並ぶ直角をもつ 3 つの面の面積を S₁、S₂、S₃、奥の面 ABC(外枠の三角形)の面積を S とする
四面体 $\mathrm{OABC}$ で、頂点 $\mathrm O$ から出る 3 本の辺 $\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ が互いに垂直であるとき、この四面体を $\mathrm O$ に 直角をもつ四面体(三直角四面体)という。$\mathrm O$ を通らない面 $\mathrm{ABC}$ をその 斜面 という。
四面体 $\mathrm{OABC}$ が $\mathrm O$ に直角をもつとする。面 $\mathrm{OBC}$、$\mathrm{OCA}$、$\mathrm{OAB}$、$\mathrm{ABC}$ の面積をそれぞれ $S_1$、$S_2$、$S_3$、$S$ とすると
$$
S^2=S_1^2+S_2^2+S_3^2
$$
が成り立つ(図 1)。
三平方の定理で直角三角形の直角をはさむ 2 辺の平方和が斜辺の平方に等しいように、この定理は直角をもつ 3 つの面の面積の平方和が斜面の面積の平方に等しいと述べる。たとえば $\mathrm{OA}=\mathrm{OB}=\mathrm{OC}=1$ の場合は $S_1=S_2=S_3=\dfrac12$、$S=\dfrac{\sqrt3}2$ となり、確かに $S^2=\dfrac34=3\cdot\dfrac14$ である。頂点 $\mathrm O$ で 3 辺が互いに垂直であるという仮定は外せない。外すと等式が崩れる例が ex-dgt-regular にある。
thm-dgt-main を de Gua の定理(空間の三平方の定理)という。18 世紀のフランスの数学者 J. P. de Gua de Malves が 1783 年にパリの科学アカデミーで発表したことからこの名がある(それより前から知られていたともいわれる。Wei26)。
証明は次の 2 つの節で与える(prf-dgt-main-shadow、prf-dgt-main-volume)。その前に、例をもう 1 つ見る。
$\mathrm{OA}=p$、$\mathrm{OB}=q$、$\mathrm{OC}=r$ とすると、$S_1=\dfrac{qr}2$、$S_2=\dfrac{rp}2$、$S_3=\dfrac{pq}2$ なので、thm-dgt-main から
$$
S=\frac12\sqrt{q^2r^2+r^2p^2+p^2q^2}
$$
である。$r=p+q$ のとき、根号の中は
$$
q^2(p+q)^2+(p+q)^2p^2+p^2q^2=(p^2+q^2)(p^2+2pq+q^2)+p^2q^2=p^4+2p^3q+3p^2q^2+2pq^3+q^4
$$
で、これは $(p^2+pq+q^2)^2=p^4+2p^3q+3p^2q^2+2pq^3+q^4$ に等しい。よって $S=\dfrac{p^2+pq+q^2}2$ である。
平面の三角形の面積は、頂点の座標から $\dfrac12\lvert x_1y_2-x_2y_1\rvert$ で求まった(三角形の面積の公式)。空間の三角形の面積を、この形の式の組み合わせで表す。鍵になるのは次の恒等式である。
$n$ 個の数の組 $\vec a=(a_1,\dots,a_n)$、$\vec b=(b_1,\dots,b_n)$ について
$$
\Bigl(\sum_{i=1}^na_i^2\Bigr)\Bigl(\sum_{i=1}^nb_i^2\Bigr)-\Bigl(\sum_{i=1}^na_ib_i\Bigr)^2=\sum_{1\le i< j\le n}(a_ib_j-a_jb_i)^2
$$
が成り立つ。右辺は、番号の組 $(i,j)$($i< j$)の $\dfrac{n(n-1)}2$ 通りすべてについての和である。
方針:左辺の 2 つの積を、番号が同じ項($i=j$)と異なる項($i\ne j$)に分けて展開する。同じ番号の項は打ち消し合い、異なる番号の項が 2 つずつ組になって右辺の 2 乗になる。
段 1(1 つ目の積)。$\Bigl(\sum_ia_i^2\Bigr)\Bigl(\sum_jb_j^2\Bigr)=\sum_{i,j}a_i^2b_j^2$ である($i$、$j$ はそれぞれ $1$ から $n$ まで動く)。$i=j$ の項と $i\ne j$ の項に分けると
$$
\sum_{i}a_i^2b_i^2+\sum_{i\ne j}a_i^2b_j^2
$$
である。
段 2(2 つ目の積)。$\Bigl(\sum_ia_ib_i\Bigr)^2=\Bigl(\sum_ia_ib_i\Bigr)\Bigl(\sum_ja_jb_j\Bigr)=\sum_{i,j}a_ib_ia_jb_j$ で、同じように分けると
$$
\sum_{i}a_i^2b_i^2+\sum_{i\ne j}a_ib_ia_jb_j
$$
である。
段 3(引く)。左辺は段 1 から段 2 を引いたもので、$\sum_ia_i^2b_i^2$ が打ち消し合うので
$$
\sum_{i\ne j}\bigl(a_i^2b_j^2-a_ib_ia_jb_j\bigr)
$$
である。
段 4(組にする)。$i\ne j$ の組は、$i< j$ の $(i,j)$ と、番号を入れ替えた $(j,i)$ の 2 つずつに分けられる。$(i,j)$ の項と $(j,i)$ の項を足すと
$$
\bigl(a_i^2b_j^2-a_ib_ia_jb_j\bigr)+\bigl(a_j^2b_i^2-a_jb_ja_ib_i\bigr)=a_i^2b_j^2-2a_ib_ja_jb_i+a_j^2b_i^2=(a_ib_j-a_jb_i)^2
$$
である。$i< j$ のすべての組について足せば、右辺になる。$\square$
右辺は $0$ 以上なので、左辺も $0$ 以上である。これは $\bigl(\sum a_ib_i\bigr)^2\le\bigl(\sum a_i^2\bigr)\bigl(\sum b_i^2\bigr)$ という Cauchy–Schwarz の不等式(Cauchy–Schwarzの不等式(高校数学))であり、Lagrange の恒等式はその「差」を 2 乗の和として書き表している。$n=3$ のとき、右辺の 3 つの $a_ib_j-a_jb_i$ は外積 $\vec a\times\vec b$ の成分(符号を除く)で、この恒等式は 空間の平面と法線ベクトル の定理「外積の性質」の 3 と同じである。
$\vec a=(1,2,2)$、$\vec b=(2,-1,2)$ とする。左辺は $\lvert\vec a\rvert^2=9$、$\lvert\vec b\rvert^2=9$、$\vec a\cdot\vec b=2-2+4=4$ から $81-16=65$ である。右辺の 3 つの項は
$$
a_1b_2-a_2b_1=-1-4=-5,\quad a_1b_3-a_3b_1=2-4=-2,\quad a_2b_3-a_3b_2=4+2=6
$$
で、$25+4+36=65$ である。両辺は一致する。
空間の三角形 PQR(赤)と、yz 平面・zx 平面・xy 平面への影(緑・橙・青)。三角形の面積の 2 乗は、3 つの影の面積の 2 乗の和になる
空間の三角形の面積を $S$ とし、この三角形を $yz$ 平面、$zx$ 平面、$xy$ 平面へ正射影した図形(影)の面積を $S_{yz}$、$S_{zx}$、$S_{xy}$ とする(影が線分や点につぶれるときは面積 $0$ とする)。このとき
$$
S^2=S_{yz}^2+S_{zx}^2+S_{xy}^2
$$
が成り立つ(図 2)。
$xy$ 平面への正射影とは、点 $(x,y,z)$ を $(x,y,0)$ に写すことである(正射影と面積)。三角形 $\mathrm{PQR}$ の $xy$ 平面への影は、3 つの頂点を写した 3 点を結ぶ三角形(またはつぶれた線分・点)である。
方針:$S$ を 三角形の面積の公式 の内積の式で書き、lem-dgt-lagrange で 3 つの 2 乗の和に分ける。分かれた 3 つの項が、3 つの影の面積の 2 乗の 4 倍であることを確かめる。
段 1(面積を内積で書く)。三角形を $\mathrm{PQR}$ とし、$\vec a=\overrightarrow{\mathrm{PQ}}=(a_1,a_2,a_3)$、$\vec b=\overrightarrow{\mathrm{PR}}=(b_1,b_2,b_3)$ とおく。三角形の面積の公式 により
$$
4S^2=\lvert\vec a\rvert^2\lvert\vec b\rvert^2-(\vec a\cdot\vec b)^2
$$
である。
段 2(3 つに分ける)。lem-dgt-lagrange を $n=3$ で使うと
$$
4S^2=(a_2b_3-a_3b_2)^2+(a_3b_1-a_1b_3)^2+(a_1b_2-a_2b_1)^2
$$
である($(i,j)=(1,3)$ の項 $(a_1b_3-a_3b_1)^2$ を $(a_3b_1-a_1b_3)^2$ と書いた。2 乗なので同じである)。
段 3($xy$ 平面への影)。$xy$ 平面への正射影で、$\mathrm P$、$\mathrm Q$、$\mathrm R$ は $\mathrm P'$、$\mathrm Q'$、$\mathrm R'$ に移り、$\overrightarrow{\mathrm{P'Q'}}=(a_1,a_2,0)$、$\overrightarrow{\mathrm{P'R'}}=(b_1,b_2,0)$ である。$xy$ 平面の中の三角形 $\mathrm{P'Q'R'}$ の面積は、$\mathrm{P'}$ を原点に平行移動して 三角形の面積の公式 の座標の公式を使うと $S_{xy}=\dfrac12\lvert a_1b_2-a_2b_1\rvert$ である。$\mathrm P'$、$\mathrm Q'$、$\mathrm R'$ が一直線上にあってつぶれるときは、$(a_1,a_2)$ と $(b_1,b_2)$ が平行なので $a_1b_2-a_2b_1=0$ で、この式は $S_{xy}=0$ としても正しい。よって $(a_1b_2-a_2b_1)^2=4S_{xy}^2$ である。
段 4(ほかの 2 つの影)。$yz$ 平面への影は $x$ 座標を $0$ にしたもので、辺のベクトルは $(0,a_2,a_3)$、$(0,b_2,b_3)$ なので、段 3 と同じく $(a_2b_3-a_3b_2)^2=4S_{yz}^2$ である。$zx$ 平面への影は $y$ 座標を $0$ にしたもので、$(z,x)$ の順に座標をとると辺のベクトルは $(a_3,a_1)$、$(b_3,b_1)$ なので、$(a_3b_1-a_1b_3)^2=4S_{zx}^2$ である。
段 5(まとめ)。段 2〜段 4 から $4S^2=4S_{yz}^2+4S_{zx}^2+4S_{xy}^2$ で、4 で割れば主張を得る。$\square$
thm-dgt-shadow を直角をもつ四面体の斜面に使うと、de Gua の定理が出る。
方針:$\mathrm O$ を原点、3 本の辺を座標軸にとり、斜面 $\mathrm{ABC}$ の 3 つの影が、直角をもつ 3 つの面そのものであることを確かめて thm-dgt-shadow を使う。
段 1(座標をとる)。$\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ は互いに垂直なので、$\mathrm O$ を原点とし、半直線 $\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ を $x$ 軸、$y$ 軸、$z$ 軸の正の部分にとれる。$\mathrm{OA}=p$、$\mathrm{OB}=q$、$\mathrm{OC}=r$ とすると、$\mathrm A(p,0,0)$、$\mathrm B(0,q,0)$、$\mathrm C(0,0,r)$ である。
段 2(影を求める)。$yz$ 平面への正射影は $x$ 座標を $0$ にするので、$\mathrm A$ は $\mathrm O$ に移り、$\mathrm B$、$\mathrm C$ は動かない。斜面 $\mathrm{ABC}$ の $yz$ 平面への影は三角形 $\mathrm{OBC}$ で、$S_{yz}=S_1$ である。同じく $zx$ 平面への影は三角形 $\mathrm{OCA}$($\mathrm B$ が $\mathrm O$ に移る)、$xy$ 平面への影は三角形 $\mathrm{OAB}$($\mathrm C$ が $\mathrm O$ に移る)で、$S_{zx}=S_2$、$S_{xy}=S_3$ である。
段 3(まとめ)。thm-dgt-shadow により $S^2=S_{yz}^2+S_{zx}^2+S_{xy}^2=S_1^2+S_2^2+S_3^2$ である。$\square$
正射影と面積 の証明も「斜面の影は直角の面」という同じ観察から出発した。そちらは影の面積を $S\cos\theta$ と書き、法線ベクトルの方向余弦の 2 乗の和が $1$ であることを使った。この記事の証明は、角を使わずに、影の面積を成分の 2 次の行列式で書いた。thm-dgt-shadow は、直角をもつ四面体でなくても、空間のどんな三角形にも使える点が違う。
$\vec a=\overrightarrow{\mathrm{PQ}}$、$\vec b=\overrightarrow{\mathrm{PR}}$ の外積は $\vec a\times\vec b=(a_2b_3-a_3b_2,\ a_3b_1-a_1b_3,\ a_1b_2-a_2b_1)$ だった(空間の平面と法線ベクトル)。prf-dgt-shadow の段 3・段 4 は、「外積の成分の絶対値は、3 つの影の面積の 2 倍である」と言っている。三角形の面積は $\dfrac12\lvert\vec a\times\vec b\rvert$ なので、thm-dgt-shadow は「ベクトル $\dfrac12\vec a\times\vec b$ の長さの 2 乗は成分の 2 乗の和」という、空間の距離の三平方の定理そのものである。このベクトルを 面積ベクトル という(正射影と面積 の注意「面積ベクトルと Cauchy–Binet の公式」)。
空間図形の計量 では、斜面の面積 $S$ を先に求め、それから原点と斜面の距離 $d$ を体積から求めた。逆に、$d$ を点と平面の距離の公式で先に求めれば、体積から $S$ が出る。
方針:四面体の体積 $V$ を、底面を直角の面 $\mathrm{OAB}$ にとったときと、斜面 $\mathrm{ABC}$ にとったときの 2 通りに書く。斜面を底面にとったときの高さ $d$ は、点と平面の距離の公式で求める。
段 1(座標)。prf-dgt-main-shadow の段 1 と同じく $\mathrm A(p,0,0)$、$\mathrm B(0,q,0)$、$\mathrm C(0,0,r)$($p,q,r>0$)とする。
段 2(体積)。底面を三角形 $\mathrm{OAB}$(面積 $\dfrac12pq$)、高さを $\mathrm{OC}=r$ とみると、$V=\dfrac13\cdot\dfrac12pq\cdot r=\dfrac16pqr$ である(四面体の体積と行列式 の定理で $\det=pqr$ としても同じ)。
段 3(斜面の方程式)。平面 $\dfrac xp+\dfrac yq+\dfrac zr=1$ は、$\mathrm A$、$\mathrm B$、$\mathrm C$ の座標を代入するとどれも $1=1$ となるので、3 点を通る。3 点は一直線上にないので、これが平面 $\mathrm{ABC}$ である。
段 4(原点との距離)。点と平面の距離の公式(空間の平面と法線ベクトル の定理「点と平面の距離」)により、原点とこの平面の距離は
$$
d=\frac{\lvert0+0+0-1\rvert}{\sqrt{\dfrac1{p^2}+\dfrac1{q^2}+\dfrac1{r^2}}}=\frac1{\sqrt{\dfrac1{p^2}+\dfrac1{q^2}+\dfrac1{r^2}}}
$$
である。
段 5(斜面を底面にとる)。斜面を底面にとると高さは $d$ なので $V=\dfrac13Sd$、つまり $S=\dfrac{3V}d$ である。段 2・段 4 を代入して 2 乗すると
$$
S^2=\left(\frac{pqr}2\right)^2\left(\frac1{p^2}+\frac1{q^2}+\frac1{r^2}\right)=\left(\frac{qr}2\right)^2+\left(\frac{rp}2\right)^2+\left(\frac{pq}2\right)^2
$$
である。右辺は $S_1^2+S_2^2+S_3^2$ である。$\square$
ex-dgt-123 の $p=1$、$q=2$、$r=3$ で、prf-dgt-main-volume の手順をたどる。$V=\dfrac16\cdot6=1$ である。斜面は $x+\dfrac y2+\dfrac z3=1$、つまり $6x+3y+2z=6$ で、原点との距離は $d=\dfrac6{\sqrt{36+9+4}}=\dfrac67$ である。よって $S=\dfrac{3V}d=3\cdot\dfrac76=\dfrac72$ で、ex-dgt-123 と一致する。
この証明は、段 4 の「$\dfrac1{p^2}+\dfrac1{q^2}+\dfrac1{r^2}$」の各項に $\left(\dfrac{pqr}2\right)^2$ を掛けると、ちょうど 3 つの直角の面の面積の 2 乗になる、という仕組みである。同じ計算は次元を上げてもそのまま通る(rem-dgt-n-dim)。
| 外した仮定 | 崩れる主張 | ボックス |
|---|---|---|
| 3 本の辺 $\mathrm{OA}$、$\mathrm{OB}$、$\mathrm{OC}$ が互いに垂直 | $S^2=S_1^2+S_2^2+S_3^2$(thm-dgt-main) | ex-dgt-regular |
| 影をとる 3 つの平面が互いに垂直 | 面積の 2 乗が 3 つの影の面積の 2 乗の和(thm-dgt-shadow) | ex-dgt-planes |
| 図形が 1 つの平面の中の三角形(多角形)である | 面積の 2 乗が 3 つの影の面積の 2 乗の和(thm-dgt-shadow) | ex-dgt-folded |
1 辺 $1$ の立方体の頂点 $\mathrm O(0,0,0)$、$\mathrm A(1,1,0)$、$\mathrm B(1,0,1)$、$\mathrm C(0,1,1)$ を結ぶと、6 本の辺はどれも長さ $\sqrt2$ で、正四面体ができる(空間図形の計量 の例「立方体から正四面体を切り出す」)。4 つの面はどれも 1 辺 $\sqrt2$ の正三角形で、面積は $\dfrac{\sqrt3}4\cdot2=\dfrac{\sqrt3}2$ である。$S^2=\dfrac34$ だが、$S_1^2+S_2^2+S_3^2=3\cdot\dfrac34=\dfrac94$ で、等しくない。$\overrightarrow{\mathrm{OA}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{OB}}=1\ne0$ なので、$\mathrm{OA}$ と $\mathrm{OB}$ は垂直でない(なす角は $60^\circ$)。prf-dgt-main-shadow の段 2 で「斜面の影は直角の面」としたところが崩れている。
$xy$ 平面の中の三角形 $\mathrm P(0,0,0)$、$\mathrm Q(1,0,0)$、$\mathrm R(0,1,0)$(面積 $S=\dfrac12$)を、$yz$ 平面、$zx$ 平面と、平面 $x=y$ の 3 つに正射影する。3 つの平面はどれも $xy$ 平面に垂直なので、影はどれも線分につぶれて面積 $0$ である。影の面積の 2 乗の和は $0$ で、$S^2=\dfrac14$ にならない。平面 $x=y$ は $yz$ 平面とも $zx$ 平面とも垂直でない(法線ベクトル $(1,-1,0)$ と $(1,0,0)$ の内積は $1\ne0$)。3 つ目の平面を、ほかの 2 つに垂直な $xy$ 平面に替えれば、影は三角形そのもので、$0+0+\dfrac14=S^2$ となって成り立つ。
1 辺 $1$ の正方形 2 枚を $x$ 軸に沿って直角に折り合わせた図形($xy$ 平面の $0\le x\le1$、$0\le y\le1$ と、$zx$ 平面の $0\le x\le1$、$0\le z\le1$)を考える。面積は $2$ で、2 乗は $4$ である。影は、$xy$ 平面へは正方形(面積 $1$)、$zx$ 平面へも正方形(面積 $1$)、$yz$ 平面へは $y$ 軸と $z$ 軸の上の 2 本の線分(面積 $0$)なので、2 乗の和は $1+1+0=2$ で、$4$ にならない。図形が 1 つの平面の中にないと、prf-dgt-shadow のように 1 組のベクトル $\vec a$、$\vec b$ で図形全体を表せない。一方、1 つの平面の中の多角形なら同じ式が成り立つ。その平面と 3 つの座標平面のなす角を $\theta_1$、$\theta_2$、$\theta_3$ とすると、正射影と面積 の定理「正射影による面積の変化」により、同じ平面の中の多角形(三角形を含む)の影の面積はどれも、もとの面積の $\cos\theta_1$、$\cos\theta_2$、$\cos\theta_3$ 倍になる(なす角が $90^\circ$ のときは影がつぶれて面積 $0$ で、これも $\cos90^\circ=0$ 倍と見られる)。同じ平面の中の三角形に thm-dgt-shadow を使うと $\cos^2\theta_1+\cos^2\theta_2+\cos^2\theta_3=1$ が分かるので、多角形でも面積の 2 乗は 3 つの影の面積の 2 乗の和になる。正射影と面積 の注意「面積ベクトルと Cauchy–Binet の公式」には、半球面での同じ種類の反例がある。
lem-dgt-lagrange は、行列式についての Cauchy–Binet の公式 の最も簡単な場合である。$n$ 行 $k$ 列の行列 $A$($k\le n$)について、$A$ の転置行列を $A^{\mathsf T}$ とすると
$$
\det(A^{\mathsf T}A)=\sum_{I}\bigl(\det A_I\bigr)^2
$$
が成り立つ。ここで $I$ は $\{1,\dots,n\}$ の $k$ 個の元からなる部分集合を動き、$A_I$ は $A$ から番号が $I$ に入る $k$ 個の行を取り出した $k$ 行 $k$ 列の行列である(Put26 の Theorem 0.1 で、そこでの $A$ を本文の $A^{\mathsf T}$、$B$ を本文の $A$ とした場合。そこでの $n$、$m$ が本文の $k$、$n$ にあたる。この記事では一般の場合を証明しない)。$\vec a$、$\vec b$ を 2 つの列とする $n$ 行 2 列の行列では、$A^{\mathsf T}A$ は 2 行 2 列の行列 $\begin{pmatrix}\vec a\cdot\vec a&\vec a\cdot\vec b\\ \vec b\cdot\vec a&\vec b\cdot\vec b\end{pmatrix}$ で、左辺は $\lvert\vec a\rvert^2\lvert\vec b\rvert^2-(\vec a\cdot\vec b)^2$、右辺は $\sum_{i< j}(a_ib_j-a_jb_i)^2$ となって、lem-dgt-lagrange に一致する。$k=n$ のときは、積の行列式 $\det(A^{\mathsf T}A)=(\det A)^2$ である。
thm-dgt-shadow の証明は、空間の次元が $3$ であることを使っていない。$n$ 次元の空間の三角形でも、lem-dgt-lagrange により、面積の 2 乗は $\dfrac{n(n-1)}2$ 個の座標平面($x_ix_j$ 平面)への影の面積の 2 乗の和になる。たとえば 4 次元の空間で、$\vec a=(1,1,1,1)$、$\vec b=(1,-1,1,-1)$ の張る三角形では、$\lvert\vec a\rvert^2=\lvert\vec b\rvert^2=4$、$\vec a\cdot\vec b=0$ なので $4S^2=16$、$S=2$ である。6 つの座標平面への影について $a_ib_j-a_jb_i$ は $-2,0,-2,2,0,-2$($(i,j)=(1,2),(1,3),(1,4),(2,3),(2,4),(3,4)$ の順)で、2 乗の和は $16$ となり、一致する。
さらに、$n$ 次元の空間の中の $k$ 本のベクトルが張る平行体の $k$ 次元の体積の 2 乗は $\det(A^{\mathsf T}A)$(Gram 行列式)に等しい(この記事では証明しない。$k=2$ の場合が 三角形の面積の公式 の内積の式である)。rem-dgt-cauchy-binet と合わせると、「$k$ 次元の図形の体積の 2 乗は、$k$ 個の座標軸が張る部分空間への影の体積の 2 乗の和」となる。$k=1$ なら線分の長さの 2 乗が座標の差の 2 乗の和という三平方の定理、$k=2$ が thm-dgt-shadow である。
$n$ 次元の空間で、原点 $\mathrm O$ と $\mathrm A_i=p_i\vec e_i$($p_i>0$、$i=1,\dots,n$)を頂点とする単体(四面体の体積と行列式 の注意「単体の体積は行列式の n! 分の 1」)を考える。$\mathrm O$ を含む $n$ 個の面($(n-1)$ 次元の直角単体)の体積を $F_1,\dots,F_n$、$\mathrm O$ を含まない面の体積を $F$ とすると
$$
F^2=F_1^2+\dots+F_n^2
$$
が成り立つ。$n$ 次元の錐体の体積が $\dfrac1n\times$ 底面の体積 $\times$ 高さであることと、超平面 $\dfrac{x_1}{p_1}+\dots+\dfrac{x_n}{p_n}=1$ と原点の距離が $\Bigl(\sum\dfrac1{p_i^2}\Bigr)^{-1/2}$ であることを認めれば(この記事ではどちらも証明しない)、prf-dgt-main-volume と同じ計算で示せる。全体の体積は $\dfrac{p_1\cdots p_n}{n!}$、$F_i=\dfrac{p_1\cdots p_n}{p_i\,(n-1)!}$ で、$F=\dfrac{n\cdot(\text{体積})}{d}=\dfrac{p_1\cdots p_n}{(n-1)!}\sqrt{\sum\dfrac1{p_i^2}}$ となるからである。たとえば $n=4$、$p_1=\dots=p_4=1$ では $F_i=\dfrac16$ で、$F^2=4\cdot\dfrac1{36}=\dfrac19$、$F=\dfrac13$ である。$\mathrm O$ を含まない面は 4 点 $\vec e_1,\dots,\vec e_4$ を頂点とする 1 辺 $\sqrt2$ の正四面体で、その体積 $\dfrac{(\sqrt2)^3}{6\sqrt2}=\dfrac13$(空間図形の計量 の定理「正四面体の高さ・体積・二面角」で $a=\sqrt2$)と一致する。
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