表現可能関手(∞圏)(representable functor of infinity-categories)とは、ある対象の写像空間関手と自然に同値になる空間値関手である。普遍元、表現の一意性、通常版と豊穣表示の違いを説明する。
前提知識: ∞圏, 写像空間(∞圏), 前層(∞圏), 表現可能関手
$\mathcal C$ を準圏で表示した小さい $(\infty,1)$-圏、$\mathcal S$ を空間の∞圏とする。空間はKan複体で表示できる。$\operatorname{Map}_{\mathcal C}(x,y)$ は、射とその高次ホモトピーを保持する写像空間(写像空間(∞圏))である。
前層(前層(∞圏))は関手(∞圏) $P:\mathcal C^{\mathrm{op}}\to\mathcal S$ である。射 $x\to y$ に沿う輸送は $P(y)\to P(x)$ となり、合成に関するすべての高次整合性を含む。
前層 $P$ が表現可能であるとは、対象 $a\in\mathcal C$ と自然な同値
$$\phi:\operatorname{Map}_{\mathcal C}(-,a)\simeq P$$
が存在することをいう。自然な同値は、関手∞圏(関手圏(∞圏))$\operatorname{Fun}(\mathcal C^{\mathrm{op}},\mathcal S)$ の同値射であり、単に各対象で同値を別々に選ぶことではない。
共変関手 $Q:\mathcal C\to\mathcal S$ の場合は、$\operatorname{Map}_{\mathcal C}(a,-)\simeq Q$ で表現可能性を定義する。
$y(a)=\operatorname{Map}_{\mathcal C}(-,a)$ が $\operatorname{Fun}(\mathcal C^{\mathrm{op}},\mathcal S)$ の対象として定まることは 米田の補題(∞圏) の記事の定義(米田埋め込み)による。定義と米田埋め込みは HTT09 §5.1.3 に基づく。$\pi_0P(x)$ だけをHom集合で表せることは、空間値関手全体の表現可能性より弱い。
表現可能性は、ある対象 $a$ の「他の対象からの観測」が前層 $P$ と一致することである。∞圏では、観測結果には射の集合だけでなく、射の変形や高次の自己対称性も含まれる。
従って、普通の表現可能関手の式でHomを写像空間に替える際は、自然な全単射を自然な同値へ替えるだけでなく、その高次の整合性を定義に含める必要がある。
固定した $a$ に対する $y(a)=\operatorname{Map}_{\mathcal C}(-,a)$ は $a$ で表現される。$\mathcal C$ が通常の圏の脈体なら、その値は通常のHom集合に対応する離散空間である。
空間 $A$ に対する $X\mapsto\operatorname{Map}_{\mathcal S}(X,A)$ は、宇宙を適切に選んだ空間の∞圏上で $A$ により表現される。連結成分を取るとホモトピー類 $[X,A]$ を得るが、元の前層はその集合以上の情報を持つ。位相的な分類問題を空間値へ高める際の基本形である。
自然な同値
$$
\operatorname{Map}_{\operatorname{Fun}(\mathcal C^{\mathrm{op}},\mathcal S)}
(\operatorname{Map}_{\mathcal C}(-,a),P)\simeq P(a)
$$
がある。従って $u\in P(a)$ は自然変換(∞圏) $\theta:y(a)\to P$ を、整合的な選択の可縮な曖昧さを除いて指定する。$\theta$ が自然同値となることが、この $u$ が表現を与える条件である。
ここで自然同値の成分は $\theta_x:\operatorname{Map}_{\mathcal C}(x,a)\to P(x)$ であり、$x\to a$ に沿って $u$ を輸送することに対応する。点集合の全単射ではなく空間の同値を確認する。
表現可能な $P$ に対し、表現対象だけでなく $y(a)\simeq P$ という同値も含めた表現全体の∞亜群は可縮である。
米田埋め込み $y:\mathcal C\to\operatorname{Fun}(\mathcal C^{\mathrm{op}},\mathcal S)$ は写像空間上で充満忠実である(米田の補題(∞圏) の記事の系)。従って、二つの表現 $y(a)\simeq P\simeq y(b)$ を比較する同値と、その整合性の空間は、$a$ と $b$ を比較する空間に同値になる。$P$ への同値も固定した表現の空間は、充満忠実な写像の像の点上のホモトピーファイバーであり、空でなければ可縮である。表現対象の自己同値を無条件に自明だと述べているのではない。
任意の $x$ に対して写像空間から一点への写像は一意に与えられ、これらは自然変換 $y(t)\to *$ をなす。各写像空間が可縮なら、この自然変換は各点で同値である。関手∞圏の同値は各点で判定できるため自然同値となる。逆にこの表現があれば各写像空間は一点と同値であり、$t$ は終対象である。各点判定は KerNat による。
通常の圏の脈体と離散空間値の前層に特殊化すると、定義は通常の自然な全単射による表現可能性に一致する。単に∞圏のホモトピー圏を取った前層が表現可能であることから、元の前層の表現可能性が従うとは限らない。
単体的豊穣圏では、Hom前層と厳密に同型な前層を扱う豊穣表現可能性と、適切な局所化の後で同値になる導来表現可能性を区別する。局所Kanな表示、モデル圏のバイファイブラント表示、単体的局所化表示を通して正しい写像空間を使う。HTT09 §§2.2, 5.1。
安定∞圏では、写像空間の背後に写像スペクトルが現れる。古典的なコホモロジーの表現可能性やBrown表現可能性への接続では、ホモトピー類の集合、写像空間、写像スペクトルを区別し、存在定理の仮定を別途確認する。
Mathpediaは寄付と、参考文献の書籍リンク(Amazonアソシエイト)の紹介料で運営されています。 支援について / 寄付する