Fenchel–Moreauの定理(Fenchel–Moreau theorem)とは、実ノルム空間上の $+\infty$ を許す真の関数 $\varphi$ について、Fenchel 共役を 2 回とった $\varphi^{**}$ が $\varphi$ に一致することと、$\varphi$ が凸かつ下半連続であることが同値であるという定理である。凸で下半連続な関数は、その下にある連続アフィン関数全体の上限として復元され、証明はエピグラフが閉凸集合になることと Hahn–Banach の分離定理による。系として、二重共役は元の関数以下の最大の凸で下半連続な関数であり、閉凸集合は閉半空間の共通部分で弱位相でも閉であることが従う。
前提知識: Fenchel共役, 凸関数, 半連続, ノルム空間, Hahn–Banachの定理
実数直線上で、開区間 $(0,1)$ の上で $0$、外で $+\infty$ となる関数 $\varphi$ と、閉区間 $[0,1]$ の上で $0$、外で $+\infty$ となる関数 $\psi$ を考える。どちらも凸関数である。Fenchel共役 を計算すると、傾き $p$ について $\sup_{0< x< 1}px$ と $\sup_{0\le x\le1}px$ はどちらも $\max\{p,0\}$ なので、$\varphi^*=\psi^*$ である。共役は、2 つの関数の違い(端点 $0$、$1$ での値)を見分けられない。共役をもう一度とると、どちらからも $\psi$ が得られる。共役を 2 回とって元に戻るのは、グラフが「閉じている」$\psi$ の方だけである。
Fenchel–Moreau の定理 は、この現象を一般に述べたものである。実ノルム空間上の $+\infty$ を許す真の関数 $\varphi$ について、共役 $\varphi^*$ が真で二重共役 $\varphi^{**}$ が $\varphi$ に一致することと、$\varphi$ が凸かつ下半連続であることは同値である。幾何学的には、凸で下半連続な関数は、そのグラフの下にある連続アフィン関数すべての上限として復元できる、という主張である。証明の核心は、関数のエピグラフ(グラフの上側)が閉凸集合になることと、閉凸集合の外の点は閉超平面で分離できるという Hahn–Banachの定理 の分離定理である。
この記事では、凸で下半連続な真の関数が連続アフィン関数で下から押さえられることを示したあと、Fenchel–Moreau の定理を完全に証明する。系として、二重共役が「元の関数以下の凸で下半連続な関数のうち最大のもの」であること、閉凸集合が閉半空間の共通部分であること、凸で下半連続な関数が弱位相でも下半連続であることを導く。ノルムの双対表示と部分空間の零化空間の関係を例として述べ、凸性・下半連続性を外した反例を挙げる。
以下、$E$ を実数体上のノルム空間、$E^*$ をその連続双対とし、$f\in E^*$ の $x\in E$ での値を $\langle f,x\rangle$ と書く。関数は値 $+\infty$ を許し $-\infty$ を許さない $\varphi\colon E\to(-\infty,+\infty]$ とする。有効定義域 $D(\varphi)$、真の関数、共役 $\varphi^*$、二重共役 $\varphi^{**}$ は Fenchel共役 の定義「有効定義域と真の関数」「Fenchel 共役」のとおりとする。とくに $\varphi$ が真で $\varphi^*$ も真のとき
$$
\varphi^{**}(x)=\sup_{f\in E^*}\bigl(\langle f,x\rangle-\varphi^*(f)\bigr)\qquad(x\in E)
$$
である。$\varphi$ が 下半連続 であるとは、ノルム位相について 半連続 の定義「下半連続性と上半連続性」の意味で下半連続であること、すなわちすべての実数 $c$ について $\{x\mid\varphi(x)\le c\}$ が閉集合であることをいう(半連続 の命題「開集合・閉集合による特徴づけ」)。
$\varphi\colon E\to(-\infty,+\infty]$ の エピグラフ を
$$
\operatorname{epi}\varphi:=\{(x,\lambda)\in E\times\mathbb{R}\mid\varphi(x)\le\lambda\}
$$
と定める。$\lambda$ は実数だけを動くので、$\varphi(x)=+\infty$ となる $x$ の上にはエピグラフの点がない。$E\times\mathbb{R}$ にはノルム $\|(x,\lambda)\|:=\|x\|+|\lambda|$ を入れる(その位相は積位相である)。
エピグラフの一般の性質(演算との関係、閉包と下半連続包、凸包と閉凸包、共役のエピグラフ)は エピグラフ で扱う。ここでは次の言いかえだけを使う。
$\varphi\colon E\to(-\infty,+\infty]$ について次が成り立つ。
1:$\varphi$ が凸とし、$(x,\lambda),(y,\mu)\in\operatorname{epi}\varphi$、$0< t< 1$ とする。$\varphi(x)\le\lambda$、$\varphi(y)\le\mu$ はどちらも有限なので、$\varphi((1-t)x+ty)\le(1-t)\varphi(x)+t\varphi(y)\le(1-t)\lambda+t\mu$ であり、$(1-t)(x,\lambda)+t(y,\mu)\in\operatorname{epi}\varphi$ である($t=0,1$ は自明)。逆にエピグラフが凸とし、$x,y\in E$、$0< t< 1$ をとる。$\varphi(x)$、$\varphi(y)$ の一方が $+\infty$ なら凸不等式の右辺は $+\infty$ で、不等式は自明である。両方が有限なら、$(x,\varphi(x))$、$(y,\varphi(y))$ の凸結合がエピグラフに入ることが凸不等式そのものである。
2:$\varphi$ が $-\infty$ をとらない拡大実数値関数の場合を含めて、半連続 の命題「エピグラフとハイポグラフの閉性」である。
3:$f(x):=\Phi(x,0)$、$k:=\Phi(0,1)$ とおく。$f$ は線形で、$|f(x)|\le\|\Phi\|\,\|(x,0)\|=\|\Phi\|\,\|x\|$ なので連続である。線形性から $\Phi(x,\lambda)=\Phi(x,0)+\lambda\Phi(0,1)=\langle f,x\rangle+k\lambda$ である。$\square$
証明では、閉凸集合とその外の点を分離する次の形を使う。これは Hahn–Banachの定理 の系「閉凸集合と外の点の分離」を、不等号の向きを変えて書き直したものであり、この記事では証明しない(証明はその記事にある)。
$X$ を実ノルム空間、$A\subset X$ を空でない閉凸集合、$b\in X\setminus A$ とする。このとき連続線形汎関数 $\Phi\colon X\to\mathbb{R}$ と実数 $\alpha$ で、
$$
\Phi(a)>\alpha>\Phi(b)\qquad(a\in A)
$$
となるものが存在する。
Hahn–Banachの定理 の系「閉凸集合と外の点の分離」は、実ノルム空間 $X$、空でない閉凸集合 $A$、$b\notin A$ について、$\sup_{a\in A}g(a)< g(b)$ となる $g\in X^*$ の存在を述べている(同じ記事の定理「Hahn–Banachの定理(第二幾何形)」で、コンパクト凸集合を 1 点 $\{b\}$ とした場合。Bre11 Theorem 1.7、p. 7)。$\Phi:=-g$ とし、$\alpha$ を $-g(b)$ と $-\sup_Ag$ の中点にとれば、$\Phi(a)\ge-\sup_Ag>\alpha>-g(b)=\Phi(b)$ となって上の形になる。仮定(実ノルム空間)は引用元と同じである。
二重共役が定まるには $\varphi^*$ が真でなければならない。$\varphi^*(f)<+\infty$ は「傾き $f$ の連続アフィン関数 $\langle f,\cdot\rangle-c$ で $\varphi$ の下にあるものが存在する」ことと同じである(Fenchel共役 の節「直感」)。凸で下半連続なら、そのようなアフィン関数がつねに存在する。
$\varphi\colon E\to(-\infty,+\infty]$ を凸で下半連続な真の関数とする。このとき $f\in E^*$ と $\beta\in\mathbb{R}$ で、すべての $x\in E$ について $\varphi(x)\ge\langle f,x\rangle+\beta$ となるものが存在する。とくに $\varphi^*(f)\le-\beta$ であり、$\varphi^*$ は真である。
$x_0\in D(\varphi)$ と実数 $\lambda_0< \varphi(x_0)$ をとる。prop-fm-epigraph の 1・2 により $A:=\operatorname{epi}\varphi$ は $E\times\mathbb{R}$ の閉凸集合で、$(x_0,\varphi(x_0))\in A$ なので空でない。$(x_0,\lambda_0)\notin A$ である。thm-fm-separation を $X=E\times\mathbb{R}$ に当て、prop-fm-epigraph の 3 で汎関数を書き直すと、$g\in E^*$、$k\in\mathbb{R}$、$\alpha\in\mathbb{R}$ で
$$
\langle g,x\rangle+k\lambda>\alpha\quad((x,\lambda)\in\operatorname{epi}\varphi),\qquad\langle g,x_0\rangle+k\lambda_0< \alpha
$$
となるものがある。1 つ目に $(x_0,\varphi(x_0))$ を代入して 2 つ目と比べると $k(\varphi(x_0)-\lambda_0)>0$ であり、$\varphi(x_0)-\lambda_0>0$ なので $k>0$ である。$x\in D(\varphi)$ について $(x,\varphi(x))\in\operatorname{epi}\varphi$ だから $\langle g,x\rangle+k\varphi(x)>\alpha$、すなわち
$$
\varphi(x)>\Bigl\langle-\frac gk,x\Bigr\rangle+\frac\alpha k
$$
である。$x\notin D(\varphi)$ では左辺が $+\infty$ なので、この不等式はすべての $x$ で成り立つ。$f:=-g/k$、$\beta:=\alpha/k$ とおけばよい。このとき $\langle f,x\rangle-\varphi(x)\le-\beta$ がすべての $x$ で成り立つので $\varphi^*(f)\le-\beta< +\infty$ である。$\square$
この補題は Bre11 Proposition 1.10(p. 12)である。証明の図形的な意味は、エピグラフの真下の点 $(x_0,\lambda_0)$ をエピグラフから切り離す閉超平面が「垂直でない」($k\neq0$)ことであり、それは $x_0$ の真上にエピグラフの点 $(x_0,\varphi(x_0))$ があることから従う。
$E$ を実ノルム空間、$\varphi\colon E\to(-\infty,+\infty]$ を真の関数とする。次の 2 条件は同値である。
1 ⇒ 2:$\varphi^*$ が真なら、$\varphi^{**}$ は凸で下半連続である(Fenchel共役 の定理「共役の基本性質」の 4)。それが $\varphi$ に等しいので、$\varphi$ も凸で下半連続である。
2 ⇒ 1:lem-fm-affine-minorant により $\varphi^*$ は真であり、Fenchel共役 の定理「共役の基本性質」の 4 により $\varphi^{**}\le\varphi$ である。逆向きの不等式を 2 段階で示す。
段 1($\varphi\ge0$ の場合)。$\varphi\ge0$ と仮定する。$y\in D(\varphi)$ をとると $\varphi^*(0)=\sup_x(-\varphi(x))=-\inf_x\varphi(x)$ は $-\varphi(y)$ 以上 $0$ 以下の実数である。ある $x_0$ で $\varphi^{**}(x_0)< \varphi(x_0)$ となったとして矛盾を導く。$\varphi^{**}(x_0)\ge\langle0,x_0\rangle-\varphi^*(0)=\inf\varphi\ge0$ なので、$s:=\varphi^{**}(x_0)$ は実数である($\varphi(x_0)=+\infty$ でもよい)。$(x_0,s)\notin\operatorname{epi}\varphi$ なので、lem-fm-affine-minorant の証明と同じく thm-fm-separation と prop-fm-epigraph により、$f\in E^*$、$k\in\mathbb{R}$、$\alpha\in\mathbb{R}$ で
$$
\langle f,x\rangle+k\lambda>\alpha\quad((x,\lambda)\in\operatorname{epi}\varphi),\qquad\langle f,x_0\rangle+ks< \alpha
$$
となるものがある。$x\in D(\varphi)$ を 1 つ固定して $\lambda\to+\infty$ とすると、1 つ目の不等式が保たれることから $k\ge0$ である。ただし今度は $k=0$(垂直な超平面)の可能性を除けない。
そこで $\varepsilon>0$ をとる。$x\in D(\varphi)$ について、$\varphi(x)\ge0$ なので
$$
\langle f,x\rangle+(k+\varepsilon)\varphi(x)\ge\langle f,x\rangle+k\varphi(x)>\alpha
$$
である。両辺を $k+\varepsilon>0$ で割って整理すると、$h_\varepsilon:=-f/(k+\varepsilon)$ について
$$
\langle h_\varepsilon,x\rangle-\varphi(x)< -\frac{\alpha}{k+\varepsilon}\qquad(x\in D(\varphi))
$$
であり、$\varphi^*(h_\varepsilon)\le-\alpha/(k+\varepsilon)$ である。二重共役の定義から
$$
s=\varphi^{**}(x_0)\ge\langle h_\varepsilon,x_0\rangle-\varphi^*(h_\varepsilon)\ge\frac{-\langle f,x_0\rangle+\alpha}{k+\varepsilon}
$$
であり、$k+\varepsilon$ を掛けて $\langle f,x_0\rangle+(k+\varepsilon)s\ge\alpha$ を得る。$s$ は実数なので、$\varepsilon\downarrow0$ として $\langle f,x_0\rangle+ks\ge\alpha$ となり、分離の 2 つ目の不等式に反する。よって $\varphi^{**}=\varphi$ である。
段 2(一般の場合)。$\varphi^*$ は真なので、$f_0\in D(\varphi^*)$ をとり、$c:=\varphi^*(f_0)\in\mathbb{R}$ とおく。
$$
\psi(x):=\varphi(x)-\langle f_0,x\rangle+c
$$
と定める。Fenchel–Young の不等式(Fenchel共役 の定理「共役の基本性質」の 2)$\langle f_0,x\rangle\le\varphi(x)+\varphi^*(f_0)$ により $\psi\ge0$ である。$\psi$ は凸関数 $\varphi$ にアフィン関数を足したものなので凸であり、下半連続関数 $\varphi$ と連続関数 $x\mapsto-\langle f_0,x\rangle+c$ の和なので下半連続である(半連続 の命題「上限・下限と安全な加法」の 3)。$D(\psi)=D(\varphi)$ なので真である。段 1 により $\psi^{**}=\psi$ である。
$\psi$ の共役を計算する。Fenchel共役 の命題「共役の計算規則」の 1・4 により $\psi^*(f)=\varphi^*(f+f_0)-c$ である。よって $D(\psi^*)=D(\varphi^*)-f_0$ で、$g=f+f_0$ と置きかえると
$$
\psi^{**}(x)=\sup_{f\in E^*}\bigl(\langle f,x\rangle-\varphi^*(f+f_0)+c\bigr)=\sup_{g\in E^*}\bigl(\langle g,x\rangle-\varphi^*(g)\bigr)-\langle f_0,x\rangle+c=\varphi^{**}(x)-\langle f_0,x\rangle+c
$$
である($g$ が $E^*$ 全体を動くとき $f=g-f_0$ も $E^*$ 全体を動く)。有限の数 $-\langle f_0,x\rangle+c$ を足し引きしただけなので、$+\infty$ どうしの差は現れない。$\psi^{**}=\psi$ に代入すると $\varphi^{**}(x)-\langle f_0,x\rangle+c=\varphi(x)-\langle f_0,x\rangle+c$ となり、$\varphi^{**}=\varphi$ を得る。$\square$
この定理と証明は Bre11 Theorem 1.11(pp. 13–14)による。段 1 の $\varepsilon$ は、分離する閉超平面が垂直($k=0$)になる場合に対処するためのものである。$\varphi\ge0$ を仮定したので、$k$ を $k+\varepsilon$ に増やしても不等式が保たれる。段 2 は、$\varphi$ からその下にあるアフィン関数を引いて $\varphi\ge0$ の場合に帰着させている。$\mathbb{R}^n$ では同じ主張が BV04 §3.3.2(p. 94)に述べられている。
$\varphi^{**}$ の定義では $E^*$ の元しか使わないことに注意する。$\varphi^{**}$ は「$\varphi$ の下にある連続アフィン関数全体の上限」であり(Fenchel共役 の節「直感」)、定理は次のように言いかえられる。
凸で下半連続な真の関数は、その下にある連続アフィン関数全体の点ごとの上限に等しい。
$\varphi\colon E\to(-\infty,+\infty]$ を真の関数とし、$\varphi^*$ も真である($\varphi$ の下に連続アフィン関数がある)とする。このとき $\varphi^{**}$ は、$\varphi$ 以下の凸で下半連続な関数のうち最大のものである。すなわち、$\gamma\colon E\to(-\infty,+\infty]$ が凸で下半連続で $\gamma\le\varphi$ なら $\gamma\le\varphi^{**}$ である。
$\varphi^{**}$ が凸で下半連続で $\varphi$ 以下であることは Fenchel共役 の定理「共役の基本性質」の 4 である。$\gamma$ を凸で下半連続で $\gamma\le\varphi$ とする。$\gamma$ は $D(\gamma)\supset D(\varphi)\neq\emptyset$ なので真であり、thm-fm-main により $\gamma^*$ は真で $\gamma=\gamma^{**}$ である。$\gamma\le\varphi$ から $\varphi^*\le\gamma^*$(Fenchel共役 の定理「共役の基本性質」の 3)なので、各 $f$ で $\langle f,x\rangle-\gamma^*(f)\le\langle f,x\rangle-\varphi^*(f)$ であり、$f$ について上限をとると $\gamma^{**}\le\varphi^{**}$ である。よって $\gamma=\gamma^{**}\le\varphi^{**}$ である。$\square$
$K\subset E$ を空でない閉凸集合とし、$h_K(f):=\sup_{x\in K}\langle f,x\rangle$ をその支持関数とする。このとき
$$
K=\bigcap_{f\in E^*}\{x\in E\mid\langle f,x\rangle\le h_K(f)\}
$$
である($h_K(f)=+\infty$ となる $f$ の集合は $E$ 全体とみなす)。
右辺が $K$ を含むことは $h_K$ の定義から明らかである。$K$ の指示関数 $I_K$($K$ 上で $0$、外で $+\infty$)は真である。$K$ が凸なので $I_K$ は凸であり(凸不等式は両端が $K$ にあれば $0\le0$、一方が外にあれば右辺が $+\infty$)、$\{I_K\le c\}$ は $c< 0$ なら空集合、$c\ge0$ なら $K$ で、どちらも閉なので $I_K$ は下半連続である。$I_K^*=h_K$ である(Fenchel共役 の例「指示関数と支持関数」)。thm-fm-main により
$$
I_K(x)=\sup_{f\in E^*}\bigl(\langle f,x\rangle-h_K(f)\bigr)
$$
である。$x\notin K$ なら左辺は $+\infty$ なので、右辺の項のどれかが正になる。その $f$ では $h_K(f)$ は有限で $\langle f,x\rangle>h_K(f)$ であり、$x$ は右辺の共通部分に属さない。$\square$
この表示から、空でない集合 $K$ と空でない閉凸集合 $L$ について、$K\subset L$ であることと支持関数の大小 $h_K\le h_L$ が同値であることが従う(支持関数 の定理「包含と支持関数の大小」)。
$\varphi\colon E\to(-\infty,+\infty]$ が凸で下半連続な真の関数なら、$\varphi$ は弱位相 $\sigma(E,E^*)$(すべての $f\in E^*$ を連続にする最弱の位相)についても下半連続である。とくに、$E$ の閉凸集合は弱位相でも閉集合である。
thm-fm-main により $\varphi=\sup_{f\in D(\varphi^*)}\bigl(\langle f,\cdot\rangle-\varphi^*(f)\bigr)$ であり、各項は弱位相の定義により弱位相で連続である。下半連続関数の族の上限は下半連続なので(半連続 の命題「上限・下限と安全な加法」の 1)、$\varphi$ は弱位相で下半連続である。閉凸集合 $K$ については、空集合なら自明であり、空でなければ指示関数 $I_K$(prf-cor-fm-halfspaces で見たとおり凸で下半連続な真の関数)に当てると、$K=\{I_K\le0\}$ が弱位相で閉である。$\square$
弱位相はノルム位相より粗いので、一般の閉集合は弱位相で閉とは限らない。この系は、凸性があればノルム位相での閉性から弱位相での閉性が従うことを示している。閉凸集合についての 2 つの系(閉半空間の共通部分であること、弱位相で閉であること)は、Hahn–Banachの定理 の系「閉凸集合と外の点の分離」から直接にも得られる。ここでは、関数についての主張である Fenchel–Moreau の定理を指示関数に当てると集合についての主張が出ることを示すため、定理から導いた。
$\varphi(x)=\|x\|$ は凸で連続(とくに下半連続)な真の関数である。その共役は双対空間の閉単位球 $B_*=\{f\mid\|f\|_*\le1\}$ の指示関数である(Fenchel共役 の例「ノルムの共役」)。thm-fm-main により
$$
\|x\|=\varphi^{**}(x)=\sup_{\|f\|_*\le1}\langle f,x\rangle\qquad(x\in E)
$$
である。ノルムが連続線形汎関数による値の上限として表され、とくに $x\neq0$ なら $\langle f,x\rangle\neq0$ となる $f\in E^*$ がある(Bre11 Example 1、p. 14 は、これが同書 Corollary 1.4 の一部の別証明になると注意している)。
$M\subset E$ を線形部分空間とし、$M^\perp:=\{f\in E^*\mid\langle f,x\rangle=0\ (x\in M)\}$、$(M^\perp)_\perp:=\{x\in E\mid\langle f,x\rangle=0\ (f\in M^\perp)\}$ とおく。$I_M^*$ は $M^\perp$ の指示関数である(Fenchel共役 の例「指示関数と支持関数」)。よって $I_M^{**}(x)=\sup_{f\in M^\perp}\langle f,x\rangle$ であり、$x\in(M^\perp)_\perp$ なら $0$、そうでなければ $\langle f,x\rangle\neq0$ となる $f\in M^\perp$ の実数倍をとって $+\infty$ である。すなわち $I_M^{**}$ は $(M^\perp)_\perp$ の指示関数である。
$M$ が閉なら $I_M$ は凸で下半連続な真の関数なので、thm-fm-main により $I_M=I_M^{**}$、すなわち $(M^\perp)_\perp=M$ である。$M$ が閉でないときは、cor-fm-envelope により $I_M^{**}$ は $I_M$ 以下の凸で下半連続な関数のうち最大のもので、それは閉包 $\overline M$ の指示関数になるので、$(M^\perp)_\perp=\overline M$ である($I_{\overline M}$ は $I_M$ 以下の凸で下半連続な関数で、$\gamma\le I_M$ が凸で下半連続なら $\{\gamma\le0\}$ は $M$ を含む閉集合なので $\overline M$ を含み、$\gamma\le I_{\overline M}$ となる)。Bre11 p. 14 は、この意味で Fenchel–Moreau の定理を部分空間についての同書 Proposition 1.9 の対応物とみている。線形部分空間 $M$ の極集合は $M^\perp$ であり、同じ理由で部分空間 $M^\perp$ の前極集合は $(M^\perp)_\perp$ である(部分空間の上で値が $1$ 以下の線形汎関数は $0$ になる)。したがってこの等式は集合についての 双極定理 の定理「双極定理」の特別な場合でもある。
$\varphi(x)=\min\{(x-1)^2,(x+1)^2\}=(|x|-1)^2$($x\in\mathbb{R}$)は凸でない($\varphi(0)=1>0=\frac{\varphi(-1)+\varphi(1)}2$)。共役を計算する。$\min$ の共役は共役の $\max$ になる:
$$
\varphi^*(p)=\sup_x\max\bigl\{px-(x-1)^2,\ px-(x+1)^2\bigr\}=\max\Bigl\{\frac{p^2}4+p,\ \frac{p^2}4-p\Bigr\}=\frac{p^2}4+|p|.
$$
ここで $\sup_x\bigl(px-(x\mp1)^2\bigr)$ は $y=x\mp1$ と置くと $\pm p+\sup_y(py-y^2)=\pm p+\frac{p^2}4$ である。二重共役は
$$
\varphi^{**}(x)=\sup_p\Bigl(px-\frac{p^2}4-|p|\Bigr)
$$
である。$|x|\le1$ なら $px-|p|\le(|x|-1)|p|\le0$ なので上限は $p=0$ での $0$ である。$x>1$ なら $p\le0$ の項は $0$ 以下で、$p>0$ では $p(x-1)-\frac{p^2}4$ が $p=2(x-1)$ で最大値 $(x-1)^2$ をとる。$x< -1$ も対称である。よって
$$
\varphi^{**}(x)=\begin{cases}0&(|x|\le1)\\(|x|-1)^2&(|x|>1)\end{cases}
$$
であり、これは 2 つの谷の間を水平な線分で埋めた関数、すなわち $\varphi$ 以下の凸で下半連続な関数のうち最大のものである(cor-fm-envelope)。$\mathbb{R}$ 上で有限値の凸関数は連続なので(凸関数 の節「連続性と片側微分」)、これは $\varphi$ 以下の最大の凸関数でもある。$|x|< 1$ で $\varphi^{**}(x)< \varphi(x)$ である。
thm-fm-main の 2 ⇒ 1 と lem-fm-affine-minorant の仮定を 1 つずつ外すと、次のように結論が崩れる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 凸性 | $\varphi(x)=(\lvert x\rvert-1)^2$($x\in\mathbb{R}$) | $\varphi^*$ は真だが、$\lvert x\rvert< 1$ で $\varphi^{**}(x)=0< \varphi(x)$ |
| 下半連続性 | $(0,1)$ の指示関数 $I_{(0,1)}$($x\in\mathbb{R}$) | $\varphi^{**}=I_{[0,1]}$ で、$x=0,1$ で $\varphi^{**}(x)=0< +\infty=\varphi(x)$ |
| 下半連続性(無限次元、有限値の場合) | 不連続な線形汎関数 $\ell\colon E\to\mathbb{R}$ | 下に連続アフィン関数がなく、$\ell^*\equiv+\infty$ で二重共役が定まらない |
表の 3 つの関数について、共役と二重共役を定義に戻って計算する。
1 行目は ex-fm-double-well である。
2 行目:$I_{(0,1)}$ は凸で真だが、$\{I_{(0,1)}\le0\}=(0,1)$ が閉でないので下半連続でない。共役は $\sup_{0< x< 1}px=\max\{p,0\}$ である。二重共役 $\sup_p(px-\max\{p,0\})$ は、$0\le x\le1$ なら $p\ge0$ で $p(x-1)\le0$、$p< 0$ で $px\le0$ なので $0$($p=0$ でとられる)、$x>1$ なら $p\to+\infty$ で、$x< 0$ なら $p\to-\infty$ で $+\infty$ である。よって $\varphi^{**}=I_{[0,1]}$ で、これは $(0,1)$ の閉包の指示関数であり、cor-fm-envelope と合っている。
3 行目:$E$ を有限個を除いて $0$ である実数列全体に上限ノルムを入れた空間とし、$\ell(x)=\sum_nnx_n$ とすると、$\ell$ は線形だが連続でない(連続線形汎関数 の例「連続でない線形汎関数」)。$\ell$ は凸で有限値なので真である。もし $f\in E^*$、$\beta\in\mathbb{R}$ で $\ell\ge f+\beta$ なら、線形汎関数 $\ell-f$ は下に有界である。$t\in\mathbb{R}$ について $t(\ell-f)(x)=(\ell-f)(tx)\ge\beta$ がすべての $t$ で成り立つので $(\ell-f)(x)=0$ となり、$\ell=f$ が連続になって矛盾する。よって $\ell$ の下に連続アフィン関数はなく、$\ell^*(f)=+\infty$ がすべての $f$ で成り立つ。lem-fm-affine-minorant の結論が崩れる。$\mathbb{R}$ 上の有限値の凸関数は連続なので(凸関数 の節「連続性と片側微分」)、1 変数ではこの種の反例は起きない。
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