Galois理論(Galois theory)とは、体の拡大 $L/K$ を、$K$ を固定する $L$ の自己同型のなす群によって調べる理論である。中心となる基本定理は、有限次 Galois 拡大 $L/K$ の中間体 $M$ と Galois 群 $G=\mathrm{Gal}(L/K)$ の部分群 $H$ が、$M\mapsto\mathrm{Gal}(L/M)$ と $H\mapsto L^H$ によって包含を逆にして 1 対 1 に対応し、次数が位数と指数に、$M/K$ の正規性が $H$ の正規性に対応することを述べる。$\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)$ の中間体は Klein の四元群の部分群に、$x^3-2$ の分解体の中間体は $S_3$ の部分群に対応する。原始元定理や方程式の根号による可解性の判定はその応用である。
前提知識: 体の拡大, Galois拡大, 群, 部分群, 正規部分群, 剰余群
Galois 理論は、体の拡大 $L/K$ を、$L$ の自己同型のうち $K$ を動かさないもの全体のなす群によって調べる理論である。その中心は、有限次 Galois 拡大の中間体と Galois 群の部分群が包含を逆にして 1 対 1 に対応するという基本定理(thm-galois-theory-fundamental)である。本記事はこの対応を主題とし、Galois 拡大そのものの性質(特徴づけ、Artin の定理)の証明は Galois拡大 の記事に譲る。
$L/K$ を体の拡大とする。$L$ の自己同型 $\sigma$(全単射な環準同型 $L\to L$)で、すべての $a\in K$ について $\sigma(a)=a$ を満たすものを $L$ の $K$ 上の自己同型といい、その全体が写像の合成についてなす群を $\operatorname{Aut}(L/K)$ と書く。$L$ の自己同型全体のなす群 $\operatorname{Aut}(L)$ の部分群 $H$ に対し、
$$
L^H:=\{x\in L\mid \text{すべての }\sigma\in H\text{ について }\sigma(x)=x\}
$$
は $L$ の部分体であり、$H$ の固定体という(Galois拡大 の記事の定義「固定体」)。
代数拡大 $L/K$ が Galois 拡大であるとは、正規拡大かつ分離拡大であること、すなわち各 $\alpha\in L$ の $K$ 上の最小多項式が $L$ で相異なる根をもつ 1 次式の積に分解することをいう。このとき $\operatorname{Gal}(L/K):=\operatorname{Aut}(L/K)$ を $L/K$ の Galois群 という(Galois拡大 の記事の定義「Galois拡大」)。有限次拡大 $L/K$ については、次の 4 条件が同値である(同記事の定理「有限次Galois拡大の特徴づけ」)。
$L/K$ を有限次 Galois 拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とする。$L/K$ の中間体全体の集合を $\mathcal{F}$、$G$ の部分群全体の集合を $\mathcal{S}$ とし、写像
$$
\Phi\colon\mathcal{F}\to\mathcal{S},\quad M\mapsto\operatorname{Gal}(L/M),\qquad\qquad \Psi\colon\mathcal{S}\to\mathcal{F},\quad H\mapsto L^H
$$
を $L/K$ の Galois 対応(Galois correspondence)という。
$\operatorname{Gal}(L/M)$ は $M$ を動かさない $G$ の元全体であり、$G$ の部分群である。$L^H$ は $H\subset G$ の元が $K$ を固定するので $K$ を含み、中間体である。定義から直ちに、$M_1\subset M_2$ なら $\operatorname{Gal}(L/M_2)\subset\operatorname{Gal}(L/M_1)$、$H_1\subset H_2$ なら $L^{H_2}\subset L^{H_1}$ である。固定すべきものが増えると、それを固定するものは減る。
$K$ 上の分離多項式 $f$ の分解体を $L$ とするとき、$\operatorname{Gal}(L/K)$ を $f$ の Galois 群という。$f$ の $L$ における相異なる根を $\alpha_1,\dots,\alpha_n$ とすると、$\sigma\in\operatorname{Gal}(L/K)$ は各 $\alpha_i$ を $f$ の根に送り、単射なので根の集合の置換を引き起こす。$L=K(\alpha_1,\dots,\alpha_n)$ なので $\sigma$ は根での値で決まり、根に番号を付けておけば、$\sigma$ に根の番号の置換を対応させる写像は単射な群準同型 $\operatorname{Gal}(L/K)\to S_n$ であり、$\operatorname{Gal}(L/K)$ は $n$ 次の対称群 $S_n$ の部分群とみなせる。
体の拡大の中間体は、一般には直接数え上げるのが難しい。$\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)$ の部分体を「$a+b\sqrt2+c\sqrt3+d\sqrt6$ の形の元の集合で、演算で閉じたもの」として探すのは見通しが悪い。Galois 理論はこの問題を有限群の問題に置き換える。中間体 $M$ には「$M$ を動かさない対称性」の群 $\operatorname{Gal}(L/M)$ が対応し、部分群 $H$ には「$H$ で動かないもの」の体 $L^H$ が対応する。基本定理は、Galois 拡大ではこの 2 つの操作が互いに逆になることを述べる。
この対応のもとで、体の言葉は群の言葉に翻訳される。大きい中間体は小さい部分群に、拡大次数 $[L:M]$ は部分群の位数に、$[M:K]$ は指数(群論)に、2 つの中間体の共通部分は 2 つの部分群の生成する部分群に対応する。とりわけ「$M/K$ が正規拡大である」ことは「対応する部分群が正規部分群である」ことに対応し、このとき $M/K$ の Galois 群は剰余群として現れる。有限群の部分群は有限個しかないので、有限次 Galois 拡大の中間体も有限個であり、これから原始元定理が従う(thm-galois-theory-primitive-element)。
$L=\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)$ は $(x^2-2)(x^2-3)$ の分解体で、$[L:\mathbb{Q}]=4$ である(体の拡大 の記事の例「2 つの平方根の添加」)。Galois 拡大の特徴づけにより $G=\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q})$ の位数は $4$ であり、各元は $(\sqrt2,\sqrt3)$ の行き先 $(\pm\sqrt2,\pm\sqrt3)$ で決まるので、4 通りすべてが実現する。
$$
\sigma\colon(\sqrt2,\sqrt3)\mapsto(-\sqrt2,\sqrt3),\qquad \tau\colon(\sqrt2,\sqrt3)\mapsto(\sqrt2,-\sqrt3)
$$
とおくと $G=\{1,\sigma,\tau,\sigma\tau\}$ で、単位元以外はすべて位数 $2$ なので、$G$ は Kleinの四元群である。部分群は $\{1\}$、$\langle\sigma\rangle$、$\langle\tau\rangle$、$\langle\sigma\tau\rangle$、$G$ の 5 つである(位数 $2$ の部分群は位数 $2$ の元 1 つで生成され、位数は Lagrangeの定理 により $1,2,4$ のいずれか)。
固定体を求める。$\sigma$ は $\sqrt3$ を、$\tau$ は $\sqrt2$ を、$\sigma\tau$ は $\sqrt6=\sqrt2\sqrt3$ を固定する($\sigma\tau(\sqrt6)=(-\sqrt2)(-\sqrt3)$)。たとえば $L^{\langle\sigma\rangle}$ は $\mathbb{Q}(\sqrt3)$ を含み、基本定理の 2 により $[L:L^{\langle\sigma\rangle}]=|\langle\sigma\rangle|=2=[L:\mathbb{Q}(\sqrt3)]$ なので $L^{\langle\sigma\rangle}=\mathbb{Q}(\sqrt3)$ である。同様にして、対応は次のとおりである(左は部分群、右は中間体の図)。
$$
\begin{array}{ccccc}
& & \{1\} & & \\
& \swarrow & \downarrow & \searrow & \\
\langle\sigma\rangle & & \langle\tau\rangle & & \langle\sigma\tau\rangle \\
& \searrow & \downarrow & \swarrow & \\
& & G & &
\end{array}
\qquad\longleftrightarrow\qquad
\begin{array}{ccccc}
& & L & & \\
& \swarrow & \downarrow & \searrow & \\
\mathbb{Q}(\sqrt3) & & \mathbb{Q}(\sqrt2) & & \mathbb{Q}(\sqrt6) \\
& \searrow & \downarrow & \swarrow & \\
& & \mathbb{Q} & &
\end{array}
$$
矢印は、群の図では包含 $\subset$、体の図では包含 $\supset$ を表し、2 つの図の同じ位置にあるものどうしが Galois 対応で移り合う。基本定理の 1 により、$L/\mathbb{Q}$ の中間体はこの 5 つで尽きる。特に $\mathbb{Q}(\sqrt2)$、$\mathbb{Q}(\sqrt3)$、$\mathbb{Q}(\sqrt6)$ は相異なり、これら以外に $\mathbb{Q}$ の 2 次拡大は $L$ の中にない。$G$ はアーベル群なのですべての部分群が正規であり、すべての中間体が $\mathbb{Q}$ 上 Galois 拡大である。
$\alpha=\sqrt[3]2\in\mathbb{R}$、$\omega=e^{2\pi i/3}$ とし、$L=\mathbb{Q}(\alpha,\omega)$ を $x^3-2$ の分解体とする。$[L:\mathbb{Q}]=6$ であり(分解体 の記事の例「$x^3-2$ の分解体」)、標数 $0$ なので $x^3-2$ は分離多項式、$L/\mathbb{Q}$ は Galois 拡大である。$G=\operatorname{Gal}(L/\mathbb{Q})$ は位数 $6$ で、根 $\alpha_1=\alpha$、$\alpha_2=\omega\alpha$、$\alpha_3=\omega^2\alpha$ の置換として $S_3$ に単射に埋め込まれる。位数が等しいので $G\cong S_3$ である。
$S_3$ の部分群は、$\{1\}$、根 $\alpha_i$ を固定し残る 2 根を入れ替える互換 $\tau_i$ が生成する位数 $2$ の 3 つの部分群 $\langle\tau_i\rangle$、位数 $3$ の交代群 $A_3=\langle\rho\rangle$($\rho$ は $\alpha_1\mapsto\alpha_2\mapsto\alpha_3\mapsto\alpha_1$)、$S_3$ の 6 つであり、このうち正規部分群は $\{1\}$、$A_3$、$S_3$ である(3次の対称群 の記事の命題「部分群と正規部分群」)。
$p$ を素数、$n\ge1$ とし、$L=\mathbb{F}_{p^n}$ を位数 $p^n$ の有限体とする。$L/\mathbb{F}_p$ は Galois 拡大で、$G=\operatorname{Gal}(L/\mathbb{F}_p)$ は Frobenius写像 $\phi(x)=x^p$ で生成される位数 $n$ の巡回群である(Galois拡大 の記事の例「有限体の拡大」)。位数 $n$ の巡回群の部分群は、$n$ の各正の約数 $d$ に対して $\langle\phi^d\rangle$(位数 $n/d$)がただ 1 つずつある(巡回群 の記事の命題「有限巡回群の部分群と約数」)。対応する固定体 $L^{\langle\phi^d\rangle}=\{x\in L\mid x^{p^d}=x\}$ の $\mathbb{F}_p$ 上の次数は基本定理の 2 により $[G:\langle\phi^d\rangle]=d$ なので、これは位数 $p^d$ の部分体である。
したがって $\mathbb{F}_{p^n}$ の部分体は、$n$ の約数 $d$ ごとにただ 1 つある位数 $p^d$ の体で尽き、$d\mid d'$ と $\mathbb{F}_{p^d}\subset\mathbb{F}_{p^{d'}}$ が対応する。これは 有限体 の記事の命題「有限体の部分体」を Galois 対応から読み直したものである。$G$ はアーベル群なので、すべての部分体は $\mathbb{F}_p$ 上 Galois である。
$L=\mathbb{Q}(\sqrt[3]2)$ とする。$[L:\mathbb{Q}]=3$ は素数なので、中間体は $\mathbb{Q}$ と $L$ の 2 つだけである(体の拡大 の記事の系「中間体の次数と元の次数」)。一方、$\operatorname{Aut}(L/\mathbb{Q})$ は自明群である($\sqrt[3]2$ の行き先になる $x^3-2$ の根は $L\subset\mathbb{R}$ の中に $\sqrt[3]2$ しかない)。したがって $M\mapsto\operatorname{Aut}(L/M)$ は 2 つの中間体を同じ部分群 $\{1\}$ に送り、単射でない。固定体の側から見ても $L^{\{1\}}=L$ であり、$\mathbb{Q}$ は固定体として現れない。
この例は「有限次拡大」「分離拡大」を満たすが「正規拡大」を満たさず、含意「有限次拡大 $L/K$ では $M\mapsto\operatorname{Aut}(L/M)$ が中間体と $\operatorname{Aut}(L/K)$ の部分群の全単射を与える」を破る。基本定理が Galois 拡大を仮定するのはこのためである。
$p$ を素数、$K=\mathbb{F}_p(t)$ を有理関数体、$L=K(u)$($u^p=t$)とする。$[L:K]=p$ は素数なので中間体は $K$ と $L$ だけであるが、$\operatorname{Aut}(L/K)$ は自明群である(Galois拡大 の記事の例「反例:分離でない拡大 $\mathbb{F}_p(t)(t^{1/p})/\mathbb{F}_p(t)$」)。前の例と同じく $M\mapsto\operatorname{Aut}(L/M)$ は単射でない。
この例は「有限次の正規拡大」を満たすが「分離拡大」を満たさず、ex-galois-theory-not-normal と同じ含意を破る。正規性だけでも分離性だけでも Galois 対応には足りない。
$L/K$ を有限次 Galois 拡大、$G=\operatorname{Gal}(L/K)$ とし、def-galois-theory-correspondence の記号を用いる。
1:部分群 $H\subset G$ をとる。Artin の定理を有限群 $H$ に適用すると $\operatorname{Gal}(L/L^H)=H$ であり、$\Phi(\Psi(H))=H$ である。中間体 $M$ をとる。中間体上の Galois 性により $L/M$ は有限次 Galois 拡大で、$\operatorname{Gal}(L/M)=\operatorname{Aut}(L/M)$ である。Galois 拡大の特徴づけの 3 を $L/M$ に適用すると $L^{\operatorname{Gal}(L/M)}=M$、すなわち $\Psi(\Phi(M))=M$ である。よって $\Phi$ と $\Psi$ は互いに逆写像で、ともに全単射である。包含を逆にすることは def-galois-theory-correspondence の直後に述べた。
2:$L/M$ は有限次 Galois 拡大なので、特徴づけの 2 により $|H|=|\operatorname{Gal}(L/M)|=[L:M]$ である。体の拡大 の記事の定理「拡大次数の乗法性」、特徴づけの 2($|G|=[L:K]$)、Lagrangeの定理 により
$$
[M:K]=\frac{[L:K]}{[L:M]}=\frac{|G|}{|H|}=[G:H]
$$
である。
3:$\sigma$ は $K$ を固定する体の同型なので、$\sigma(M)$ は $K$ を含む $L$ の部分体である。$\tau\in G$ について
$$
\tau\in\operatorname{Gal}(L/\sigma(M))\iff\text{すべての }m\in M\text{ で }\tau\sigma(m)=\sigma(m)\iff\sigma^{-1}\tau\sigma\in\operatorname{Gal}(L/M)\iff\tau\in\sigma\operatorname{Gal}(L/M)\sigma^{-1}
$$
である。
4:$L/K$ は分離拡大なので、その中間体 $M$ について $M/K$ も分離拡大である(分離拡大 の記事の命題「中間体への遺伝」)。よって (a) と (b) は同値である。
(b) ⇒ (c):$\sigma\in G$、$\beta\in M$ とし、$p=m_{\beta,K}=\sum_ic_ix^i$ とする。$p(\sigma(\beta))=\sigma(p(\beta))=0$ なので $\sigma(\beta)$ は $p$ の $L$ における根である。(b) により $M[x]$ で $p=\prod_k(x-\beta_k)$($\beta_k\in M$)と書け、$L$ は体なので $\prod_k(\sigma(\beta)-\beta_k)=0$ からある $k$ で $\sigma(\beta)=\beta_k\in M$ である。よって $\sigma(M)\subset M$ であり、$\sigma$ は $K$ 上の単射な線形写像で $[M:K]<\infty$ なので $\sigma(M)=M$ である。
(c) ⇒ (d):3 により $\sigma H\sigma^{-1}=\operatorname{Gal}(L/\sigma(M))=\operatorname{Gal}(L/M)=H$ である。
(d) ⇒ (c):3 と (d) により $\Phi(\sigma(M))=\sigma H\sigma^{-1}=H=\Phi(M)$ であり、1 により $\Phi$ は単射なので $\sigma(M)=M$ である。
(c) ⇒ (b):$\beta\in M$、$p=m_{\beta,K}$ とし、$G$ の作用による $\beta$ の軌道 $\{\sigma(\beta)\mid\sigma\in G\}$ の相異なる元を $\beta_1=\beta,\beta_2,\dots,\beta_r$ とする。(c) によりこれらはすべて $M$ に属する。$q=\prod_{k=1}^r(x-\beta_k)\in M[x]$ とおくと、各 $\tau\in G$ は軌道の元を置換するので $q$ の係数は $\tau$ で動かず、特徴づけの 3 により $K=L^G$ に属する。$q(\beta)=0$ なので $p\mid q$ であり(最小多項式 の特徴づけ)、$p$ はモニックな約元として $q$ の 1 次因子のいくつかの積、すなわち $M$ で分解する。よって $M/K$ は正規拡大である。
最後の主張:(c) により各 $\sigma\in G$ は $M$ の $K$ 上の自己同型 $\sigma|_M$ を定め、$\sigma\mapsto\sigma|_M$ は群準同型 $G\to\operatorname{Aut}(M/K)=\operatorname{Gal}(M/K)$ である。その核は $M$ を動かさない $\sigma$ の全体、すなわち $H$ である。像の位数は $|G|/|H|=[M:K]$(2 による)であり、$M/K$ は有限次 Galois 拡大なので $|\operatorname{Gal}(M/K)|=[M:K]$ である。よって準同型は全射であり、群準同型 の記事の定理「群の第1同型定理」により $G/H\cong\operatorname{Gal}(M/K)$ である。$\square$
基本定理の 1・2 は Galois拡大 の記事の定理「Galois対応」でも述べられ、同記事の注意「Galois対応の証明の所在」がその筋を示している。3・4 と上の証明全体は本記事が持つ。基本定理は DF04 §14.2、Lan02 Chapter VI §1 にもある。
中間体 $M_1,M_2$ の合成体 $M_1M_2$ を $M_1\cup M_2$ を含む $L$ の最小の部分体とし、部分群 $H_1,H_2$ の生成する部分群を $\langle H_1,H_2\rangle$ と書く。
$L/K$ を有限次 Galois 拡大、$M_1,M_2$ を中間体、$H_i=\operatorname{Gal}(L/M_i)$ とする。このとき
$$
\operatorname{Gal}(L/M_1M_2)=H_1\cap H_2,\qquad \operatorname{Gal}(L/(M_1\cap M_2))=\langle H_1,H_2\rangle
$$
である。
$\sigma\in G$ が $M_1M_2$ の元をすべて固定することは、$M_1$ と $M_2$ の元をすべて固定することと同値である(固定される元全体 $L^{\langle\sigma\rangle}$ は部分体なので、$M_1\cup M_2$ を含めば $M_1M_2$ を含む)。よって前半が成り立つ。後半:$x\in L$ が $\langle H_1,H_2\rangle$ のすべての元で固定されることは、$H_1$ と $H_2$ のすべての元で固定されることと同値である(固定する元全体は部分群である)。したがって $L^{\langle H_1,H_2\rangle}=L^{H_1}\cap L^{H_2}=M_1\cap M_2$ であり(基本定理の 1 により $L^{H_i}=M_i$)、両辺に $\Phi$ を施して基本定理の 1 から $\langle H_1,H_2\rangle=\operatorname{Gal}(L/(M_1\cap M_2))$ を得る。$\square$
ex-galois-theory-biquadratic では $\mathbb{Q}(\sqrt2)\mathbb{Q}(\sqrt3)=L$ が $\langle\tau\rangle\cap\langle\sigma\rangle=\{1\}$ に、$\mathbb{Q}(\sqrt2)\cap\mathbb{Q}(\sqrt3)=\mathbb{Q}$ が $\langle\tau,\sigma\rangle=G$ に対応する。
$L=K(\theta)$ となる $\theta\in L$ が存在する拡大を単純拡大という(体の拡大 の記事の定義「元の添加と単純拡大」)。Galois 対応の帰結として、原始元定理(分離拡大 の記事では出典つきで述べられている)が証明できる。
$L/K$ を有限次分離拡大とする。
1:$L=K(\beta_1,\dots,\beta_s)$ と書き($K$ 上の基底をとればよい)、$m_{\beta_1,K},\dots,m_{\beta_s,K}$ のうち相異なるものの積を $g$ とする。分離性により各因子は重根をもたず、相異なるモニック既約多項式は共通の根をもたない(共通の根 $a$ があれば両者は $m_{a,K}$ に等しい)ので、$g$ は分離多項式である。$g$ の $L$ 上の分解体 $N$ をとる(分解体 の記事の定理「分解体の存在」)。$N$ は $g$ の根で $L$ 上生成され、$L$ は $g$ の根 $\beta_j$ で $K$ 上生成されるので、$N$ は $g$ の $K$ 上の分解体であり、Galois 拡大の特徴づけの 4 により $N/K$ は有限次 Galois 拡大である。$L/K$ の中間体は $N/K$ の中間体であり、基本定理の 1 により $N/K$ の中間体は有限群 $\operatorname{Gal}(N/K)$ の部分群と 1 対 1 に対応するので、有限個しかない。
2:$K$ が有限体なら $L$ も有限体であり、乗法群 $L^\times$ は巡回群である(有限体 の記事の定理「有限体の乗法群の構造」)。その生成元 $\theta$ について $L=K(\theta)$ である。
$K$ が無限体の場合を示す。まず、中間体が有限個の拡大 $K(\alpha,\beta)/K$ は単純拡大であることを示す。$c\in K$ ごとに中間体 $M_c:=K(\alpha+c\beta)$ を考えると、$K$ は無限集合で中間体は有限個なので、$c\neq c'$ で $M_c=M_{c'}$ となるものがある。この体を $M$ とすると $(c-c')\beta=(\alpha+c\beta)-(\alpha+c'\beta)\in M$ であり、$c-c'\neq0$ なので $\beta\in M$、さらに $\alpha=(\alpha+c\beta)-c\beta\in M$ である。よって $K(\alpha,\beta)\subset M\subset K(\alpha,\beta)$、すなわち $K(\alpha,\beta)=K(\alpha+c\beta)$ である。
一般の場合は生成元の個数 $s$ に関する帰納法による。$s=1$ なら明らかである。$s\ge2$ とし、$L_0:=K(\beta_1,\dots,\beta_{s-1})$ とおく。$L_0/K$ の中間体は $L/K$ の中間体なので有限個であり、帰納法の仮定により $L_0=K(\theta_0)$ と書ける(帰納法の仮定は「中間体が有限個で $s-1$ 個の元で生成される拡大は単純」として用いる)。すると $L=K(\theta_0,\beta_s)$ は中間体が有限個の 2 元生成の拡大なので、上により単純拡大である。$\square$
分離性の仮定は 1 で使った。分離的でない有限次拡大には、中間体が無限個あり単純拡大でないものがある(分離拡大 の記事の例「反例:原始元をもたない有限次拡大」)。ex-galois-theory-biquadratic の $L=\mathbb{Q}(\sqrt2,\sqrt3)$ では、$0$ でない $c\in\mathbb{Q}$ について $\theta=\sqrt2+c\sqrt3$ の $G$ の 4 つの元による像 $\pm\sqrt2\pm c\sqrt3$ は相異なる($\sqrt2$ と $c\sqrt3$ はともに $0$ でなく、比 $\sqrt2/(c\sqrt3)$ は $\pm1$ でない)。よって $\theta$ を固定する $G$ の元は恒等写像だけであり、基本定理の 1 により $\mathbb{Q}(\theta)=L^{\{1\}}=L$ である。$c=0$ のときだけ $\mathbb{Q}(\theta)=\mathbb{Q}(\sqrt2)\neq L$ となる。
標数 $0$ の体 $K$ 上の多項式 $f$ が根号で解けるとは、$K$ から始めて「ある元の $n$ 乗根を添加する」操作を有限回繰り返して得られる拡大体の中で $f$ が分解することをいう。Galois の定理は、$f$ が根号で解けることと、$f$ の Galois 群が可解群であることが同値であると述べる(証明は DF04 §14.7、Lan02 Chapter VI §7 に譲る)。証明の要点は、1 の冪根を含む体の上で $n$ 乗根を添加する拡大の Galois 群が巡回群であること(Kummer理論)と、基本定理の 4 により拡大の塔が正規部分群の列に翻訳されることである。$n\ge5$ のとき $S_n$ は可解でないので(可解群 の記事の注意「反例:可解でない群」)、Galois 群が $S_5$ である 5 次方程式は根号で解けない。これが 5 次以上の一般の方程式に解の公式がないことの Galois 理論による説明である。
Galois 拡大の定義は無限次の代数拡大にもそのまま適用されるが、基本定理はそのままの形では成り立たない。たとえば $\overline{\mathbb{F}}_p$ を $\mathbb{F}_p$ の代数閉包とし、$\phi(x)=x^p$ とすると、$\phi$ の生成する部分群 $\langle\phi\rangle$ の固定体は $\mathbb{F}_p$ で $G=\operatorname{Gal}(\overline{\mathbb{F}}_p/\mathbb{F}_p)$ の固定体と同じであるが、$\langle\phi\rangle\neq G$ である(MilFT Chapter 7)。したがって $H\mapsto L^H$ は単射でない。$G$ に、有限次 Galois 部分拡大の Galois 群への制限による射影極限の位相(Krull 位相)を入れると $G$ は射有限群になり、中間体は $G$ の閉部分群と 1 対 1 に対応し、有限次の中間体は開部分群に対応する(Lan02 Chapter VI §14、MilFT Chapter 7)。上の $\langle\phi\rangle$ は閉部分群でなく、その閉包が $G$ である。
体 $L$ の自己同型からなる有限群 $G$ を与えると、$L/L^G$ は $G$ を Galois 群にもつ Galois 拡大である(Artin の定理)。本記事の証明のように、固定体と Artin の定理を軸にして基本定理を導く構成は Artin による定式化に従っている(MilFT Chapter 3、Lan02 Chapter VI §1)。
Galois 対応は、同じ形の対応が別の分野にも現れる原型である。位相空間の被覆空間と基本群の部分群の対応(被覆空間)、体 $K$ 上の有限次分離代数と $K$ の絶対Galois群が連続に作用する有限集合との対応(圏の反変同値、Galois圏)はその例であり、Galoisコホモロジーは Galois 群の作用を通じて体の算術を調べる。
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