変形した長い半直線

同義語:altered long ray

概要

変形した長い半直線(altered long ray)とは、長い半直線 $R=\omega_1\times[0,1)$ に一点 $p$ を加え、$p$ の基本近傍を、ある座標から先の区画から順序数座標の点 $(\alpha,0)$ をすべて除いた集合 $U_\beta$ とした空間である。Hausdorff だが、$p$ において正則でも局所コンパクトでもない。点列コンパクトで連結だが、Lindelöf でもコンパクトでも弧状連結でもない。拡張長い半直線と同じ集合の上の真に細かい位相であり、Steen–Seebach の反例集では An altered long line と呼ばれる。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 長い直線, 拡張長い半直線, 正則空間, 局所コンパクト空間

変形した長い半直線(altered long ray)$A$ は、長い半直線 $R=\omega_1\times[0,1)$ に一点 $p$ を加え、$p$ の近傍を「ある座標から先の区画から、順序数座標の点 $(\alpha,0)$ をすべて取り除いたもの」と定めた空間である。$p$ を最大元 $\infty$ と同一視すれば拡張長い半直線 $\overline R$ と集合としては同じだが、位相は真に細かい。その結果、$A$ は Hausdorff のままで、$p$ において正則性と局所コンパクト性を失い、コンパクトでもなくなる。
$\overline R$ では $\infty$ の近傍 $(a,\infty]$ が順序数座標の点も含むので、より小さい近傍の閉包をその中に収められる。$A$ では近傍がそれらの点を避けるので、近傍の閉包が、避けたはずの順序数座標の点を後ろのほうで拾ってしまう。「Hausdorff 空間に一点を加えて Hausdorff のままでも、加えた点のまわりは良いとは限らない」ことを、この一点だけの違いが示す。

定義

長い直線の記事の定義「長い半直線」のとおり、$R=\omega_1\times[0,1)$ に辞書式順序の順序位相を入れた空間を長い半直線とし、最小元を $0_R=(0,0)$ と書く。点 $(\alpha,0)$ を順序数座標の点と呼ぶ。

変形した長い半直線

$R$ に新しい点 $p$ を加えた集合 $A:=R\cup\{p\}$ を考える。$1\le\beta<\omega_1$ に対し
$$ U_\beta:=\{p\}\cup\bigcup_{\beta\le\alpha<\omega_1}\{\alpha\}\times(0,1) $$
とおき、$R$ の開集合全体と $U_\beta$ 全体を開基とする位相を $A$ に入れる。この空間 $A$ を変形した長い半直線と呼ぶ。

これが開基であることは、$U_\beta\cap U_\gamma=U_{\max(\beta,\gamma)}$ と、$R$ の開集合 $O$ について $U_\beta\cap O=O\cap\bigcup_{\alpha\ge\beta}\{\alpha\}\times(0,1)$ が $R$ の開集合であること(各 $\{\alpha\}\times(0,1)$ は開区間 $((\alpha,0),(\alpha+1,0))$)から分かる。とくに $R$ は $A$ の開部分空間で、もとの位相をもつ。

名前の流儀

この空間は位相空間の反例を集めた事典 SS78 の Example 47「An altered long line」(pp. 72–73)である。同書の long line はこの記事の長い半直線 $R$ を指す(拡張長い半直線の注意「名前の流儀」)ので、ここでは変形した長い半直線と呼ぶ。同書は $p$ を最大元とみなすと述べているが、$A$ の位相はその全順序の順序位相(それは $\overline R$ である)ではなく、より細かい位相である(alr-prop-finer)。

分離公理と局所コンパクト性

コンパクト近傍をもつ点での縮小

$X$ を Hausdorff 空間とし、点 $x$ がコンパクトな近傍 $K$ をもつとする。このとき $x$ の任意の開近傍 $O$ に対し、$x\in V\subset\overline V\subset O$ となる開集合 $V$ がある。

要点:コンパクト Hausdorff 空間 $K$ の正則性を $K$ の中で使い、得た集合を $K$ の内部で切り詰める。

詳しい証明を開く

$K$ は Hausdorff 空間のコンパクト集合なので閉である(コンパクト空間の記事の命題「保存と閉性」)。$N:=\operatorname{Int}K$ とおくと $x\in N$ である。コンパクト Hausdorff 空間 $K$ は正規かつ $T_1$、したがって正則なので(同記事の命題「コンパクトHausdorff空間の正規性」)、$K$ の相対開集合 $O\cap N$ に対し、$K$ の相対開集合 $W$ で $x\in W$、$\operatorname{cl}_KW\subset O\cap N$ となるものがある。$W=K\cap W'$($W'$ は $X$ の開集合)と書き、$V:=W'\cap N$ とおく。$N\subset K$ より $V=W\cap N$ であり、$V$ は $X$ の開集合で $x$ を含む。$K$ は閉なので $\overline V\subset\overline W=\operatorname{cl}_KW\subset O$ である。$\square$

分離公理の破れ
  1. $A$ は Hausdorff 空間である。
  2. $p$ のどの開近傍 $V$ についても、閉包 $\overline V$ は、十分大きいすべての $\gamma$ について順序数座標の点 $(\gamma,0)$ を含む。とくに $\overline V\not\subset U_1$ であり、$A$ は正則空間でも正規空間でもない。
  3. $p$ はコンパクトな近傍をもたない。したがって $A$ は局所コンパクト空間でない。$R$ の各点はコンパクトな近傍をもつ。

1:$R$ の二点は $R$ の開集合で分離でき、それらは $A$ でも開である。$x=(\gamma,t)\in R$ と $p$ については、$z:=(\gamma+1,0)$ とおく。$\{y\in R\mid y< z\}$ は $x$ を含む開集合である。$\{y\in R\mid y>z\}\cup\{p\}$ は、$R$ の点のまわりでは $R$ の開集合であり、$p$ のまわりでは $U_{\gamma+2}$ を含むので、$A$ の開集合である。両者は交わらない。
2:$p$ の開近傍 $V$ は開基の元を含むが、$p$ を含む開基の元は $U_\alpha$ の形なので、ある $U_\alpha\subset V$ がある。$\gamma\ge\alpha$ とすると、点 $(\gamma,0)$ の $A$ における任意の開近傍は $R$ の開近傍を含み、それはある $s>0$ について $\{\gamma\}\times(0,s)$ を含む。これは $U_\alpha$ の部分集合なので、$(\gamma,0)\in\overline{U_\alpha}\subset\overline V$ である。$(\gamma,0)\notin U_1$ なので $\overline V\not\subset U_1$ である。正則空間なら $p$ の開近傍 $U_1$ に対し $p\in V\subset\overline V\subset U_1$ となる開集合 $V$ がとれるはずなので、$A$ は正則でない。1 により一点集合は閉集合で、一点と閉集合を分離できない $A$ は正規でもない。
3:$p$ がコンパクトな近傍をもてば、1 と alr-lem-shrink により $p\in V\subset\overline V\subset U_1$ となる開集合 $V$ があり、2 に反する。$R$ の点 $x$ については、$x< y$ となる $y$ をとれば $[0_R,y]$ が実数の閉区間と同相(長い直線の記事の命題「有界な区間と局所モデル」)なコンパクト近傍である。$\square$

近傍の閉包と分離できない閉集合

$1\le\beta<\omega_1$ について
$$ \overline{U_\beta}=\{p\}\cup\{x\in R\mid x\ge(\beta,0)\} $$
である。$\supset$ は alr-prf-separation の 2 の議論と、$U_\beta$ 自身が閉包に含まれることによる。$\subset$ を示すには、右辺に属さない点 $x=(\gamma,t)$($\gamma<\beta$)が $U_\beta$ と交わらない近傍をもつことを見ればよい。$t>0$ なら開区間 $\{\gamma\}\times(0,1)$ がそれである。$t=0$ なら、$\gamma=0$ のとき $[0_R,(0,1/2))$、$\gamma=\delta+1$ のとき $((\delta,1/2),(\gamma,1/2))$、$\gamma$ が極限順序数のとき $((\delta,0),(\gamma,1/2))$($\delta<\gamma$)をとれば、第 1 座標が $\beta$ 未満の点しか含まないので $U_\beta$ と交わらない。
順序数座標の点全体 $C:=\{(\alpha,0)\mid\alpha<\omega_1\}$ は $A$ の閉集合である(補集合は $R\setminus C$ と $U_1$ の和で開)。$p\notin C$ だが、$p$ の開近傍 $V\supset U_\alpha$ と $C$ を含む開集合 $W$ は必ず交わる。$W$ は点 $(\alpha,0)$ の $R$ における近傍を含み、それは $\{\alpha\}\times(0,s)\subset U_\alpha\subset V$ を含むからである。こうして一点 $p$ と閉集合 $C$ が分離できないことが、$A$ が正則でないことの具体的な証人になる。

正則性も局所コンパクト性も、破れるのは $p$ の一点だけである。$A$ はほかにも、$R$ を部分空間に含むので σ局所有限な開基をもたない(長い直線の記事の命題「σ局所有限な開基をもたないこと」)。

可算性とコンパクト性

可算性とコンパクト性
  1. $A$ は点列コンパクトであり、したがって可算コンパクト空間である。
  2. $A$ は Lindelöf空間でなく、コンパクトでもない。
  3. $A$ は可分でなく、$p$ は高々可算な基本近傍系をもたない。$R$ は $A$ で稠密だが、$R$ の点列は $p$ に収束しない。

1:点列に $p$ が無限回現れれば定値の部分列をとる。そうでなければ、ある番号から先は $R$ の点列であり、$R$ の高々可算な部分集合は有界なので(長い直線の記事の補題「有界集合の可算合併は有界」)、ある $[0_R,b]$ に収まる。$[0_R,b]$ は実数の閉区間と同相なので収束する部分列があり、$R$ は開部分空間なので、それは $A$ でも収束する。点列コンパクト空間は可算コンパクトである(可算コンパクト空間の記事の命題「点列コンパクト空間は可算コンパクト」)。
2:$\mathcal U:=\{U_1\}\cup\{[0_R,(\alpha,0))\mid 1\le\alpha<\omega_1\}$ は $A$ の開被覆である。実際、$p$ と、第 1 座標が $1$ 以上で順序数座標でない点は $U_1$ に、$(\gamma,t)$ は $[0_R,(\gamma+1,0))$ に属する。可算部分族の $[0_R,(\alpha_n,0))$ たちについて、$\alpha^*:=\sup_n\alpha_n$ は可算順序数であり(長い直線の記事の冒頭で引用している $\omega_1$ の性質)、点 $(\alpha^*,0)$ はどの $[0_R,(\alpha_n,0))$ にも $U_1$ にも属さない。よって $\mathcal U$ は可算部分被覆をもたず、有限部分被覆ももたない。
3:$D\subset A$ を高々可算とすると、$D\setminus\{p\}$ はある $b\in R$ 以下に収まり、空でない開集合 $\{y\in R\mid b< y\}$ は $D$ と交わらない。$p$ の近傍の可算族 $(N_n)$ をとり、$U_{\beta_n}\subset N_n$ となる $\beta_n$ を選ぶ。$\beta^*:=\sup_n\beta_n+1<\omega_1$ とおくと、$U_{\beta^*}$ はどの $N_n$ も含まない。$(\beta_n,1/2)\in U_{\beta_n}\subset N_n$ だが、$\beta_n<\beta^*$ なので $(\beta_n,1/2)\notin U_{\beta^*}$ だからである。$R$ が稠密であることは alr-thm-connected の証明で見る。$R$ の点列はある $(\delta,0)$ 以下に収まるので、近傍 $U_{\delta+1}$ に一度も入らない。$\square$

可算コンパクトな Lindelöf 空間はコンパクトである(可算コンパクト空間の記事の命題「Lindelöf かつ可算コンパクトならコンパクト」)。$A$ は、この命題から Lindelöf 性を外せないことを示す。

連結だが弧状連結でない

$A$ は連結空間だが、$R$ のどの点と $p$ も道で結べない。とくに $A$ は弧状連結でない。

連結性:$R$ は弧状連結なので連結であり、$p$ の近傍 $U_\beta$ はどれも $R$ の点を含むので $R$ は $A$ で稠密である。連結集合の閉包として $A$ は連結である。
道が存在しないこと:$x\in R$ から $p$ への道 $\gamma\colon[0,1]\to A$ があるとし、$t_0:=\min\gamma^{-1}(p)>0$ とおく($\gamma^{-1}(p)$ は空でない閉集合)。$S:=\gamma([0,t_0))\subset R$ は $x$ を含む連結集合である。まず $S$ は非有界である。実際、$S\subset[0_R,b]$ なら、$[0_R,b]$ は $A$ の閉集合(補集合 $\{y\in R\mid y>b\}\cup\{p\}$ は、$b=(\delta,s)$ のとき $U_{\delta+1}$ を含むので開)なので、$p=\gamma(t_0)\in\overline S\subset[0_R,b]$ となり矛盾する。$R$ の連結集合は順序凸なので(拡張長い半直線の定理「連結だが弧状連結でない」の証明と同じ理由)、$S$ は $\{y\in R\mid y\ge x\}$ を含む。$S$ は $[0,t_0)$ の連続像なので可分だが、$S$ の高々可算な部分集合はある $b$ 以下に収まり、$S$ の空でない開集合 $S\cap\{y\mid y>b\}$ と交わらない。これは矛盾である。$\square$

拡張長い半直線との比較

拡張長い半直線との比較

$\iota\colon A\to\overline R$ を、$R$ の上で恒等、$\iota(p):=\infty$ と定める。$\iota$ は連続な全単射だが、同相写像ではない。すなわち $A$ の位相は、$\overline R$ の位相($R\cup\{p\}$ に $p$ を最大元とする全順序の順序位相)より真に細かい。とくに $A$ はコンパクトでない。

連続性:$\overline R$ の開基は $R$ の開集合と $(a,\infty]$($a\in R$)からなる。前者の逆像は $R$ の開集合なので $A$ で開である。$a=(\delta,s)$ のとき $\iota^{-1}((a,\infty])=\{y\in R\mid y>a\}\cup\{p\}$ は、$R$ の点のまわりでは $R$ の開集合で、$p$ のまわりでは $U_{\delta+1}$ を含むので、$A$ で開である。
同相でないこと:$\iota(U_1)$ は $\infty$ を含むが、$\infty$ のどの近傍 $(a,\infty]$ も、$a$ の第 1 座標より大きい $\gamma$ について順序数座標の点 $(\gamma,0)\notin\iota(U_1)$ を含む。よって $\iota(U_1)$ は $\overline R$ で開でない。
最後の主張:$A$ がコンパクトなら、コンパクト空間から Hausdorff 空間 $\overline R$ への連続な全単射 $\iota$ は同相写像になる(コンパクト空間の記事の命題「保存と閉性」)。$\square$

コンパクト Hausdorff 空間の位相を真に細かくすると、Hausdorff 性は保たれるがコンパクト性は必ず失われる。$A$ はその一例で、細かくした分だけ $p$ のまわりの正則性も失われている。

例と反例

外す条件反例成り立たなくなること
局所コンパクト性(局所コンパクト Hausdorff 空間は正則)$A$(点 $p$ で破れる)正則性
Lindelöf 性(可算コンパクトかつ Lindelöf ならコンパクト)$A$コンパクト性
定義域のコンパクト性(コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射は同相)$\iota\colon A\to\overline R$同相写像であること
反例の確かめ

1 行目:$A$ は Hausdorff で、局所コンパクト性は $p$ でだけ破れ、正則でない(alr-prop-separation。局所コンパクト Hausdorff 空間の正則性は正則空間の記事の命題「局所コンパクト Hausdorff 空間は正則」)。2 行目:$A$ は可算コンパクトだが Lindelöf でなく、コンパクトでない(alr-prop-compactness)。3 行目:$\overline R$ は Hausdorff で、$\iota$ は連続な全単射だが同相でない(alr-prop-finer)。

補足:三つの空間の比較

性質長い半直線 $R$拡張長い半直線 $\overline R$変形した長い半直線 $A$
Hausdorffはいはいはい
正則・正規はいはいいいえ($p$ で破れる)
局所コンパクトはいはいいいえ($p$ で破れる)
コンパクトいいえはいいいえ
可算コンパクトはいはいはい
Lindelöfいいえはいいいえ
第1可算はいいいえいいえ
可分いいえいいえいいえ
連結はいはいはい
弧状連結はいいいえいいえ

Hausdorff だが正則でない空間の標準的な例に、実数直線の位相を集合 $K=\{1/n\mid n\ge1\}$ のまわりで細かくした $\mathbb R_K$ がある(正則空間の記事の例「反例:Hausdorff だが正則でない空間」)。$\mathbb R_K$ では点 $0$ と閉集合 $K$ が、$A$ では点 $p$ と順序数座標の点の集合 $C$ が分離できない。どちらも、既知の Hausdorff 位相を一部の点の近傍だけ細かくする作り方である。$\mathbb R_K$ は可算コンパクトでないが、$A$ は可算コンパクトで連結なので、正則性の破れがコンパクト性に近い性質と両立することも分かる。
$R$ の正規性は長い直線の記事の命題「交わらない閉集合の分離」、Lindelöf でないことは同記事の系「可算部分被覆が取れないこと」、$\overline R$ の性質は拡張長い半直線による。

関連項目

参考文献

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