外部

同義語:exterior

概要

外部(Exterior)とは、位相空間論において、ある部分集合の補集合の内部として定義される集合であり、元の集合からもその境界からも離れている「外側」の点の全体を指す概念である。記号では $A^e$ や $\operatorname{ext}(A)$ などと表記され、位相空間全体は、ある部分集合の「内部」「境界」「外部」の3つによって互いに交わらない領域に分割される。これは集合の位相的性質(開集合や閉集合など)を理解する上で、内部や境界と対をなす基本的な構成要素である。

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定義

位相空間 $(X, \mathcal{O})$ およびその部分集合 $A \subseteq X$ が与えられたとき、$A$外部(Exterior)は、通常 $A$補集合 $A^c = X \setminus A$内部として定義される。

外部の定義

$A$ の外部 $\operatorname{ext}(A)$ とは、以下の式で定義される集合である。
$$\operatorname{ext}(A) := (X \setminus A)^\circ$$
すなわち、$A$ の外部は「$A$ に含まれない最大の開集合」である。

この定義は直観的には、点 $x$$A$ の外部にあるとは、「$x$$A$ に属さないだけでなく、$x$ の周りに少し範囲を広げても(近傍をとっても)まだ $A$ に触れない状態」を意味する。

直感的理解と空間の分割

位相空間論において、外部という概念は単独で語られるよりも、内部(Interior)および境界(Boundary)との対比においてその本質が理解される。
位相空間 $X$ の任意の部分集合 $A$ に対して、空間全体は以下の3つの互いに素な集合に分割(直和分解)される。

空間の分割

$$X = A^\circ \sqcup \partial A \sqcup \operatorname{ext}(A)$$
ここで、

  • $A^\circ$内部): $A$ の内側にある点。
  • $\partial A$境界): $A$ の内側でも外側でもない点($A$ に近づく点列と $A$ の外に近づく点列の両方が収束しうる点)。
  • $\operatorname{ext}(A)$外部): $A$ から「距離的」あるいは「位相的」に離れている点。

したがって、外部を知ることは、間接的にその集合の境界や閉包の構造を知ることと同義である。

性質

外部は開集合として定義されるため、開集合特有の性質を持つほか、包含関係に対しては反転する性質を持つ。

基本的性質
  1. 開集合性:
    $\operatorname{ext}(A)$ は常に $X$ の開集合である。
  2. 包含関係の反転:
    $A \subseteq B$ ならば、$\operatorname{ext}(B) \subseteq \operatorname{ext}(A)$ が成り立つ。
    (集合が大きくなれば、その「外側」は狭くなる)
  3. 閉包との関係:
    $\operatorname{ext}(A) = X \setminus \overline{A}$ である。
    すなわち、外部は閉包の補集合に等しい。
  4. 開集合の特徴付け:
    $A$ が閉集合であることの必要十分条件は、$A = \operatorname{ext}(\operatorname{ext}(A))^c$ となることである(ただし一般には $\operatorname{ext}(A) = \operatorname{ext}(\overline{A})$ )。

これらの性質は、外部が「補集合の内部」であることを考えれば、内部(Interior)に関する性質を補集合に対して適用することで導出できる。

具体例と反例

外部の概念が直感と一致する場合と、位相の定義によっては直感に反して「外部が存在しない」場合があることを理解することが重要である。

具体例: Euclid空間

Euclid空間 $\mathbb{R}$ において、区間 $A = [0, 1)$ を考える。

  • 補集合: $A^c = (-\infty, 0) \cup [1, \infty)$
  • 外部: $\operatorname{ext}(A) = (-\infty, 0) \cup (1, \infty)$
    この場合、点 $1$$A$ に属さないが、$1$ のどんな近傍も $A$ と交わるため、外部には含まれず境界となる。

一方で、稠密な集合などは、補集合がスカスカであるため、外部が空集合になることがある。

反例: 外部が消滅する場合

$\mathbb{R}$ における有理数全体の集合 $\mathbb{Q}$ を考える。

  • $\mathbb{Q}$ の補集合は無理数全体の集合 $\mathbb{R} \setminus \mathbb{Q}$ である。
  • 無理数の集合は稠密であるが、その中に(空でない)開区間を含まない。
  • したがって、$(\mathbb{R} \setminus \mathbb{Q})^\circ = \emptyset$ となる。
    結論として、$\operatorname{ext}(\mathbb{Q}) = \emptyset$ である。
    これは「有理数から(位相的に)十分に離れられる場所は数直線上に存在しない」ことを意味する。同様に $\operatorname{ext}(\mathbb{R} \setminus \mathbb{Q}) = \emptyset$ でもある。

関連項目