平行線(parallel lines)とは、同じ平面の上にあって共有点をもたない相異なる 2 本の直線である。錯角が等しい 2 直線や、同じ直線に垂直な 2 直線が平行であることは平行線公準を使わずに示せるが、同じ直線に平行な 2 直線が平行であること、平行線の一方と交わる直線が他方とも交わること、平行線の間の距離が一定であることには、Playfair の公理(直線外の 1 点を通る平行線はただ 1 本)を使う。空間では、相異なる 2 直線が平行であることは方向ベクトルが平行であることと同値で、3 本が同じ平面の上になくても推移律が成り立つ。
前提知識: 平行線公準(高校数学), 三角形の合同条件, 直線の方程式と点と直線の距離
ノートの罫線や線路のレールのように、どこまで延ばしても交わらない 2 本の直線を 平行線 という。座標平面では、傾きが同じ 2 本の直線が平行になる。まず、交わらないことを計算で確かめてみる。
1 辺 $1$ の立方体の頂点を $A(0,0,0)$、$B(1,0,0)$、$C(1,1,0)$、$D(0,1,0)$、$E(0,0,1)$、$F(1,0,1)$、$G(1,1,1)$、$H(0,1,1)$ とする。
空間では「交わらない」だけでは平行と呼べないことが、3 つ目の組から分かる。この記事で答える問いは次の 4 つである。
| 中学・高校で習うこと | この記事の言葉 | 平行線公準が要るか |
|---|---|---|
| 錯角が等しければ平行 | rem-pll-premises の (F2) | 要らない |
| 同じ直線に垂直な 2 直線は平行 | thm-pll-perp | 要らない |
| 平行なら錯角が等しい | rem-pll-premises の (F4) | 要る |
| 同じ直線に平行な 2 直線は平行 | thm-pll-transitive | 要る |
| 平行線の間の距離は一定 | thm-pll-equidistant | 要る |
同じ平面の上にある 2 本の直線 $\ell$、$m$ が、相異なり、共有点をもたないとき、$\ell$ と $m$ は 平行 であるといい、$\ell\parallel m$ と書く。平行な 2 直線をまとめて 平行線 という。
この定義では、直線は自分自身と平行ではない(「平行または一致する」をまとめて扱うときはそう書く)。「同じ平面の上にある」は空間で欠かせない条件で、後の節「空間の平行線」で扱う。
2 直線 $\ell$、$m$ に、3 本目の直線 $t$ が $\ell$ と点 $P$ で、$m$ と点 $Q$($P\ne Q$)で交わっているとする。$t$ を 横断線 という。$\ell$ の上に $P$ と違う点 $X$ を、$m$ の上に $Q$ と違う点 $Y$ をとる。
平行な 2 直線 ℓ、m と横断線 t。赤の 2 つの角が錯角、青の 2 つの角が同位角、緑の 2 つの角が同側内角
一直線をなす 2 つの角の和は $180^\circ$ である。そのため、同側内角 $\angle PQY$ と、$Y$ の反対側の点 $Y''$ でつくる錯角 $\angle PQY''$ の和は $180^\circ$ であり、同位角 $\angle YQQ'$ と錯角 $\angle PQY''$ は対頂角で等しい。したがって、次の 3 つは同じことを言っている(図 1)。
$\ell$ を直線 $y=2$、$m$ を $x$ 軸、横断線 $t$ を原点 $Q(0,0)$ と $P(1,2)$ を通る直線 $y=2x$ とする。$\ell$ の上に $X(-1,2)$、$m$ の上に $Y(1,0)$ をとると、$X$ は $t$ の左上、$Y$ は右下にあり、$\angle XPQ$ と $\angle PQY$ は錯角で、どちらも約 $63.43^\circ$ である。
$\overrightarrow{PX}=(-2,0)$、$\overrightarrow{PQ}=(-1,-2)$ から $\cos\angle XPQ=\dfrac{2}{2\sqrt5}=\dfrac1{\sqrt5}$、$\overrightarrow{QP}=(1,2)$、$\overrightarrow{QY}=(1,0)$ から $\cos\angle PQY=\dfrac1{\sqrt5}$ である。$Y$ の代わりに $Y''(-1,0)$ をとると、$X$ と $Y''$ は $t$ の同じ側にあり、同側内角 $\angle PQY''$ は $180^\circ-63.43^\circ=116.57^\circ$ で、$\angle XPQ$ との和は $180^\circ$ である。
平行線については、何を認めるかで証明できることが変わる(平行線公準(高校数学))。この記事では次のことを認めて使う。
(F1) 中立幾何の事実:平行線公準(高校数学) の注意「中立幾何で使う事実」の (N1)〜(N6)。特に、相異なる 2 点を通る直線はただ 1 本で、したがって相異なる 2 直線の共有点は高々 1 つである。直線の上の 1 点を通ってその直線に垂直な直線はただ 1 本である(角の写し取りの一意性による。三角形の合同条件 の注意「この記事で認めて使う事実」)。直線の上にない点からその直線に下ろせる垂線もただ 1 本である(平行線公準(高校数学) の例「中立幾何の定理の使い方」の (3))。
(F2) 錯角が等しい 2 直線は平行である(平行線公準(高校数学) の定理「錯角が等しい 2 直線は交わらない」。平行線公準を使わずに証明されている)。
(F3) Playfair の公理:直線 $\ell$ と、$\ell$ の上にない点 $P$ について、$P$ を通り $\ell$ に平行な直線はただ 1 本である(平行線公準(高校数学) で、Euclid の第 5 公準と同値であることが示されている)。
(F4) 平行な 2 直線と横断線について、錯角は等しい((F3) から導かれる。平行線公準(高校数学) の系「平行線の錯角は等しい」)。
(F5) 三角形の合同条件と、平行四辺形の性質(向かい合う辺の長さは等しい)(三角形の合同条件、平行四辺形の条件 の定理「平行四辺形の性質」)。
(F1)・(F2) だけで証明できることを先に述べ、(F3) を使う箇所では明示する。例の計算に使う座標平面は (F1)〜(F5) をすべて満たす。
同じ平面の上の相異なる 2 直線 $\ell$、$m$ が、どちらも直線 $t$ に垂直ならば、$\ell\parallel m$ である。
方針:$t$ を横断線とみて、錯角がどちらも $90^\circ$ であることを (F2) に使う。
段 1(交点は別の点)。$\ell$ と $t$ の交点を $P$、$m$ と $t$ の交点を $Q$ とする。もし $P=Q$ なら、$\ell$ と $m$ はどちらも、$t$ の上の点 $P$ を通って $t$ に垂直な直線である。(F1) によりそのような直線はただ 1 本なので $\ell=m$ となり、仮定に反する。よって $P\ne Q$ である。
段 2(錯角)。$\ell$ の上に $P$ と違う点 $X$ を、$m$ の上に $Q$ と違う点 $Y$ を、直線 $t$ の反対側にとる。$\ell\perp t$、$m\perp t$ なので $\angle XPQ=90^\circ$、$\angle PQY=90^\circ$ で、錯角が等しい。(F2) により $\ell\parallel m$ である。$\square$
thm-pll-perp から、直線 $\ell$ と $\ell$ の上にない点 $P$ があれば、$P$ を通る $\ell$ の平行線が少なくとも 1 本作れる。$P$ から $\ell$ に垂線 $PH$ を下ろし、$P$ を通って直線 $PH$ に垂直な直線を引けばよい。これも平行線公準を使わない。
ここからは Playfair の公理 (F3) を使う。
同じ平面の上の 3 直線 $\ell$、$m$、$n$ について、$\ell\parallel m$、$m\parallel n$ で、$\ell\ne n$ ならば、$\ell\parallel n$ である。
方針:$\ell$ と $n$ が交わると仮定し、その交点を通る $m$ の平行線が 2 本できることを示して、(F3) に矛盾させる。
段 1(仮定)。$\ell$ と $n$ が点 $P$ で交わったとする。
段 2($P$ は $m$ の上にない)。$\ell\parallel m$ なので $\ell$ と $m$ は共有点をもたない。$P$ は $\ell$ の上にあるので、$m$ の上にはない。
段 3(矛盾)。$\ell$ も $n$ も $P$ を通り、どちらも $m$ に平行で、しかも $\ell\ne n$ である。これは、$m$ の上にない点 $P$ を通る $m$ の平行線が 2 本あることになり、(F3) に反する。
段 4(結論)。よって $\ell$ と $n$ は共有点をもたない。同じ平面の上の相異なる 2 直線なので、$\ell\parallel n$ である。$\square$
Euclid『原論』第 I 巻 命題 30 は同じ定理を、横断線を 1 本引いて (F4) を 2 回使う方法で証明している(Hea56 p. 314)。上の証明は (F3) を直接使う。
「平行または一致する」という関係は、どの直線とそれ自身の間でも成り立ち、2 本を入れかえても成り立ち、thm-pll-transitive により推移律も満たす。この 3 つの性質をもつ関係を 同値関係 といい、平面の直線は「向き」ごとの組に分かれる。座標平面では、1 つの組は傾きが同じ直線の全体(または $y$ 軸に平行な直線の全体)である(直線の方程式と点と直線の距離 の定理「2 直線の平行条件と垂直条件」)。
$m\colon y=2x-3$ とする。$\ell\colon y=2x+1$ と $n\colon y=2x+7$ は、どちらも $m$ と傾きが同じで切片が違うので $m$ に平行である(ex-pll-start-coord の (1) と同じ計算)。thm-pll-transitive により $\ell\parallel n$ で、実際 $2x+1=2x+7$ は解をもたない。$y$ 切片は $-3<1<7$ で、この例の $m$ は $\ell$ と $n$ の外側にある。$m$ が $\ell$ と $n$ の間にある場合も、推移律は同じように成り立つ。
推移律と同じ考え方で、次のことも分かる。
同じ平面の上で、$\ell\parallel m$ とし、直線 $n$ は $\ell$ と違い、$\ell$ と交わるとする。このとき $n$ は $m$ とも交わる。
逆に、中立幾何の事実 (F1)・(F2) を認めたうえで、この性質がどの $\ell$、$m$、$n$ についても成り立てば、Playfair の公理 (F3) が成り立つ。
方針:前半は prf-pll-transitive と同じく (F3) に矛盾させる。後半は、平行線が少なくとも 1 本あることを (F2) で確かめ、2 本目がないことをこの性質から出す。
段 1(前半)。$n$ と $\ell$ の交点を $P$ とする。prf-pll-transitive の段 2 と同じ理由で、$P$ は $m$ の上にない。もし $n$ が $m$ と交わらなければ、$n$ は $P$ を通るので $m$ とは違う直線であり、$n\parallel m$ である。すると $\ell$ と $n$ は $P$ を通る相異なる $m$ の平行線になり、(F3) に反する。よって $n$ は $m$ と交わる。
段 2(平行線が少なくとも 1 本ある)。直線 $m$ と、$m$ の上にない点 $P$ をとる。thm-pll-perp の後に述べた作り方で、$P$ を通る $m$ の平行線 $\ell$ が作れる。
段 3(2 本目はない)。$P$ を通り $\ell$ と違う直線 $n$ をとる。$n$ は $P$ で $\ell$ と交わるので、仮定した性質により $m$ と交わる。したがって $n$ は $m$ に平行ではない。$P$ を通る $m$ の平行線は $\ell$ だけであり、(F3) が成り立つ。$\square$
thm-pll-proclus の前半は、5 世紀の Proclus が第 5 公準を導こうとしたときに最初に示した主張である。Proclus はこれを「1 点から出る 2 直線の間隔は、延ばすといくらでも大きくなる」という別の仮定から導き、そこから第 5 公準を出した(Hea56 pp. 207–208)。後半から分かるように、この性質は Playfair の公理の言いかえであり、平行線公準を避けたことにはならない。
同じ平面の上で $\ell\parallel m$ とし、直線 $t$ が $\ell$ に垂直であるとする。このとき $t$ は $m$ とも交わり、$m$ に垂直である。
段 1(交わる)。$t$ は $\ell$ と交わり、$\ell$ とは違う直線なので、thm-pll-proclus により $m$ とも交わる。交点を $P=t\cap\ell$、$Q=t\cap m$ とすると、$P$ は $m$ の上にないので $P\ne Q$ である。
段 2(錯角)。$\ell$ の上に $P$ と違う点 $X$ を、$m$ の上に $Q$ と違う点 $Y$ を、直線 $t$ の反対側にとる。(F4) により $\angle PQY=\angle XPQ=90^\circ$ なので、$t\perp m$ である。$\square$
thm-pll-perp と cor-pll-perp2 は互いに逆向きの主張で、前者は平行線公準を使わないが、後者は使う。
点 $P$ から直線 $m$ に下ろした垂線の足を $H$ とするとき、長さ $PH$ を、点 $P$ と直線 $m$ の 距離 という。$PH$ は $P$ と $m$ の上の点を結ぶ線分のうちで最も短い(三角形の辺と角の大小 の系「垂線は最も短い」)。
$\ell\parallel m$ ならば、$\ell$ の上のどの点から $m$ までの距離も等しい。
方針:$\ell$ の上の 2 点から $m$ に垂線を下ろし、4 つの点が平行四辺形をつくることを示す。向かい合う辺の長さが等しいことから、2 本の垂線の長さが等しい。
段 1(記号)。$\ell$ の上の相異なる 2 点 $P$、$P'$ をとり、$m$ に下ろした垂線の足を $H$、$H'$ とする((F1))。$P$ も $P'$ も $m$ の上にないので、$H\ne P$、$H'\ne P'$ である。
段 2(2 本の垂線は相異なる平行な直線)。直線 $PH$ と直線 $P'H'$ はどちらも $m$ に垂直である。もし 2 本が同じ直線なら、その直線は $P$ と $P'$ を通るので $\ell$ に一致する。しかし $\ell$ は $m$ と交わらないので $m$ に垂直ではありえない。よって 2 本は相異なり、thm-pll-perp により $PH\parallel P'H'$ である。特に $H\ne H'$ である($H=H'$ なら 2 本は $H$ で交わってしまう)。
段 3(四角形であること)。4 点 $P$、$H$、$H'$、$P'$ のどの 3 点も一直線上にない($H$、$H'$ は $m$ の上、$P$、$P'$ は $\ell$ の上にあり、$\ell$ と $m$ は共有点をもたず、直線 $PH$ と $P'H'$ も共有点をもたないから)。向かい合う辺 $PH$ と $H'P'$ は平行な 2 直線の上にあるので交わらず、$HH'$ と $P'P$ も平行な 2 直線 $m$、$\ell$ の上にあるので交わらない。したがって $PHH'P'$ は四角形で、$PH\parallel P'H'$、$HH'\parallel PP'$ だから平行四辺形である(平行四辺形の条件 の定義「四角形と平行四辺形」)。
段 4(結論)。平行四辺形の向かい合う辺の長さは等しいので((F5))、$PH=P'H'$ である。$P$、$P'$ は $\ell$ の上の任意の 2 点だったので、$\ell$ の上のどの点から $m$ までの距離も等しい。$\square$
平行な 2 直線 ℓ、m。ℓ の上の点 P、P' から下ろした垂線 PH、P'H' は平行で、PHH'P' は長方形になり、PH = P'H'
$\ell\colon 2x-y+1=0$($y=2x+1$)と $m\colon 2x-y-3=0$ は平行である。
同じ底辺 $BC$ をもち、頂点 $A$、$A'$ が $BC$ に平行な同じ直線の上にある 2 つの三角形は、thm-pll-equidistant により高さが等しいので、面積が等しい。図形の面積を変えずに形を変える 等積変形 はこの事実に基づく(等積変形 の定理「同じ底辺と同じ平行線の定理」)。
逆向きの「至るところ等しい距離を保つ 2 直線がある」という主張は、中立幾何の事実のもとで平行線公準と同値であることが知られている(平行線公準(高校数学) の注意「平行線公準と同値なほかの命題」。この記事では証明しない)。
空間では、2 本の直線の位置関係は「交わる」「平行」「同じ平面の上にない」の 3 通りに分かれる。同じ平面の上にない 2 直線は ねじれの位置 にあるという(空間の直線の方程式)。def-pll-parallel の「同じ平面の上にある」は、平行とねじれの位置を分けるための条件である。
座標空間の直線は、通る点 $P$ と、向きを表す $\vec 0$ でないベクトル $\vec u$(方向ベクトル)を使って、$\{P+t\vec u\mid t\text{ は実数}\}$ と表せる。平面は、通る点 $A$ と、平行でない 2 つのベクトル $\vec e$、$\vec f$ を使って $\{A+a\vec e+b\vec f\mid a,b\text{ は実数}\}$ と表せる。この平面の上の 2 点を結ぶベクトルは、どれも $a\vec e+b\vec f$ の形に書け、この形のベクトルのうち平行でない 2 つを選べば、ほかのものはその 2 つで表せる(空間ベクトルと1次独立)。
座標空間の相異なる 2 直線 $\ell=\{P+t\vec u\}$、$m=\{Q+s\vec v\}$ について、次の 2 つは同値である。
方針:2 ⇒ 1 では、2 直線を含む平面を実際に作る。1 ⇒ 2 では、方向ベクトルが平行でなければ、平面の中で交点が作れてしまうことを示す。
段 1(2 ⇒ 1:共有点がない)。$\vec v=k\vec u$ とする($\vec v\ne\vec 0$ なので $k\ne0$)。もし共有点があれば $P+t\vec u=Q+sk\vec u$ となる $t$、$s$ があり、$m$ の点は $Q+s'\vec v=P+(t-sk+s'k)\vec u$ と書けるので、$m$ は $\ell$ に含まれる。直線は 2 点で決まるので $\ell=m$ となり、仮定に反する。よって共有点はない。特に $Q$ は $\ell$ の上にない。
段 2(2 ⇒ 1:同じ平面)。$\vec w=\overrightarrow{PQ}$ とおく。$Q$ は $\ell$ の上にないので、$\vec w$ は $\vec u$ と平行でない。平面 $\pi=\{P+a\vec u+b\vec w\}$ を考えると、$\ell$ の点 $P+t\vec u$($a=t$、$b=0$)も、$m$ の点 $Q+s\vec v=P+sk\vec u+\vec w$($a=sk$、$b=1$)も $\pi$ の上にある。よって $\ell\parallel m$ である。
段 3(1 ⇒ 2)。$\ell$ と $m$ が平面 $\pi$ の上にあって共有点をもたないとする。$\vec u$、$\vec v$、$\overrightarrow{PQ}$ は、どれも $\pi$ の上の 2 点を結ぶベクトルである。もし $\vec v$ が $\vec u$ と平行でなければ、$\pi$ の上の 2 点を結ぶベクトルはすべて $\vec u$ と $\vec v$ で表せるので、$\overrightarrow{PQ}=\alpha\vec u+\beta\vec v$ となる実数 $\alpha$、$\beta$ がある。すると $P+\alpha\vec u=Q-\beta\vec v$ で、左辺は $\ell$ の点、右辺は $m$ の点だから、2 直線に共有点がある。これは仮定に反するので、$\vec v$ は $\vec u$ と平行であり、$\vec v=k\vec u$ となる $k$ がある。$\square$
座標空間の 3 直線 $\ell$、$m$、$n$ について、$\ell\parallel m$、$m\parallel n$ で、$\ell\ne n$ ならば、$\ell\parallel n$ である(3 本が同じ平面の上になくてもよい)。
$\ell$、$m$、$n$ の方向ベクトルを $\vec u$、$\vec v$、$\vec w$ とする。prop-pll-space の 1 ⇒ 2 から $\vec v=k\vec u$、$\vec w=k'\vec v$ となる実数 $k$、$k'$ があり、$\vec w=kk'\vec u$ である。$\ell\ne n$ なので、prop-pll-space の 2 ⇒ 1 を $\ell$ と $n$ に使えば $\ell\parallel n$ である。$\square$
Euclid『原論』第 XI 巻 命題 9 は、この系を 3 本が同じ平面の上にない場合について、平面の場合(thm-pll-transitive)とは別の命題として述べている(Hea56c p. 290)。
ex-pll-start-cube の立方体で確かめる。
$AB\parallel DC$、$DC\parallel HG$ からも、cor-pll-space-transitive により $AB\parallel HG$ が出る。$AB$ と $DC$ は平面 $z=0$、$DC$ と $HG$ は平面 $y=1$ の上にあるが、3 本 $AB$、$DC$、$HG$ を全部含む平面はない(含む平面があれば、$A$、$D$、$H$ を通るので平面 $x=0$ だが、$B$ はその上にない)。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 同じ平面の上にある(空間で「交わらない」だけにする) | ex-pll-cx-skew | 同じ直線と交わらない 2 直線は交わらない(推移律) |
| Playfair の公理 (F3) | ex-pll-cx-poincare | 推移律 thm-pll-transitive |
| 直線である(線分にする) | ex-pll-cx-segment | 交わらなければ錯角が等しい((F4)) |
座標空間で、$\ell=\{(t,0,0)\}$($x$ 軸)、$n=\{(t,t,0)\}$、$m=\{(0,s,1)\}$ とする。$m$ の点の $z$ 座標は $1$、$\ell$ と $n$ の点の $z$ 座標は $0$ なので、$\ell$ も $n$ も $m$ と交わらない。しかし $\ell$ と $n$ は原点で交わる。
$\ell$ と $m$ の方向ベクトルは $(1,0,0)$ と $(0,1,0)$ で平行でないので、prop-pll-space により $\ell$ と $m$ は平行ではなく、ねじれの位置にある。$n$ と $m$ も同じである。「同じ平面の上にある」を外して「交わらない」だけを平行の定義にすると、推移律が崩れる。
平行線公準(高校数学) の例「Poincaré 円板の中の平行線」の平面(単位円の内部で、直径と、単位円に直交する円の弧を直線とする)を使う。$\ell$ を $x$ 軸の上の直径、$P=\left(0,\dfrac12\right)$ とすると、円 $(x-h)^2+\left(y-\dfrac54\right)^2=h^2+\dfrac9{16}$ の内部の部分は $P$ を通る直線で、$\lvert h\rvert<1$ なら $\ell$ と交わらない(同じ例で示されている)。
$h=0$ の直線を $a$、$h=\dfrac12$ の直線を $b$ とすると、$a\parallel\ell$、$\ell\parallel b$ で、$a$ と $b$ は中心の違う円なので相異なる。しかし $a$ と $b$ はどちらも $P$ を通るので交わり、平行ではない。この平面は中立幾何の事実 (F1)・(F2) を満たすが(この記事では確かめない)、(F3) を満たさず、推移律 thm-pll-transitive が成り立たない。
座標平面で、線分 $AB$($A(0,0)$、$B(1,0)$)と線分 $CD$($C(3,-1)$、$D(3,1)$)は共有点をもたない。しかし、それぞれを延ばした直線 $y=0$ と $x=3$ は点 $(3,0)$ で垂直に交わる。
2 本の延長に横断線 $y=x$ を引くと、交点は $P(0,0)$ と $Q(3,3)$ である。$X(1,0)$ と $Y(3,4)$ は直線 $y=x$ の反対側にあり、錯角は $\angle XPQ=45^\circ$、$\angle PQY=135^\circ$ で等しくない($\overrightarrow{QP}=(-3,-3)$、$\overrightarrow{QY}=(0,1)$ から $\cos\angle PQY=-\dfrac1{\sqrt2}$)。どんな横断線でも錯角は等しくならない(等しければ (F2) により延長が平行になってしまう)。平行は「線分が交わらない」ではなく「直線が交わらない」ことで定める。
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