相加平均と相乗平均(arithmetic mean and geometric mean)とは、正の数 $a,b$ に対する $\frac{a+b}2$ と $\sqrt{ab}$ のことであり、3 数 $a,b,c$ では $\frac{a+b+c}3$ と $\sqrt[3]{abc}$ である。正の数について相乗平均は相加平均以下であり(相加相乗平均の不等式)、等号はすべての数が等しいときに限る。2 数の場合は差が $\frac12(\sqrt a-\sqrt b)^2$ になることから、3 数の場合は $p^3+q^3+r^3-3pqr$ の因数分解から示せる。積が一定の正の数の和の最小値や、和が一定の正の数の積の最大値を求めるのに使うが、等号が成り立つ値が考える範囲に入るかを確かめる必要がある。
2 つの数の「平均」というと、ふつうは足して 2 で割ったものを考える。しかし、掛けて平方根をとる平均もある。この記事では、この 2 つの平均の大小関係(相加相乗平均の不等式)を証明し、それを使って最小値・最大値を求める方法を学ぶ。
この記事で答える問いは次の 3 つである。
$a,b$ を正の数とする。
$$
\frac{a+b}2
$$
を $a$ と $b$ の相加平均といい、
$$
\sqrt{ab}
$$
を $a$ と $b$ の相乗平均という。
3 つの正の数 $a,b,c$ についても、$\frac{a+b+c}3$ を相加平均、$\sqrt[3]{abc}$ を相乗平均という。ここで $\sqrt[3]{c}$ は、3 乗すると $c$ になる正の数($c$ の正の 3 乗根)である。
相乗平均の「乗」は掛け算の意味である。相加平均が「足してから個数で割る」のに対し、相乗平均は「掛けてから個数乗根をとる」。
2 数の場合:
| $a$ | $b$ | 相加平均 $\frac{a+b}2$ | 相乗平均 $\sqrt{ab}$ |
|---|---|---|---|
| $2$ | $8$ | $\frac{10}2=5$ | $\sqrt{16}=4$ |
| $1$ | $9$ | $\frac{10}2=5$ | $\sqrt9=3$ |
| $1$ | $4$ | $\frac52=2.5$ | $\sqrt4=2$ |
| $4$ | $4$ | $\frac82=4$ | $\sqrt{16}=4$ |
3 数の場合:$1,3,9$ では相加平均 $\frac{1+3+9}3=\frac{13}3=4.33\ldots$、相乗平均 $\sqrt[3]{27}=3$ である。$2,4,8$ では相加平均 $\frac{14}3=4.66\ldots$、相乗平均 $\sqrt[3]{64}=4$ である。
どの例でも相乗平均は相加平均以下であり、2 つが等しいのは $4,4$ のようにすべての数が等しいときだけである。また、$2,8$ と $1,9$ は和が同じ $10$ なので相加平均は同じ $5$ だが、差が大きい $1,9$ のほうが相乗平均は小さい。
2 つの平均には、長方形と正方形を使った見方がある。
縦 $a$、横 $b$ の長方形を考える。
一般の証明の前に、具体的な数で「相加平均 − 相乗平均」を計算し、それがある数の 2 乗の半分になっていることを見ておく。
$a=2$、$b=8$ のとき、相加平均 − 相乗平均 $=5-4=1$ である。一方、$\sqrt2$ と $\sqrt8=2\sqrt2$ の差の 2 乗の半分は
$$
\frac12\bigl(\sqrt8-\sqrt2\bigr)^2=\frac12\bigl(2\sqrt2-\sqrt2\bigr)^2=\frac12\bigl(\sqrt2\bigr)^2=\frac12\cdot2=1
$$
であり、確かに一致する。
$a=1$、$b=9$ のとき、相加平均 − 相乗平均 $=5-3=2$ であり、
$$
\frac12\bigl(\sqrt9-\sqrt1\bigr)^2=\frac12(3-1)^2=\frac12\cdot4=2
$$
である。これも一致する。
$a,b$ を正の数とする。このとき
$$
\frac{a+b}2\ge\sqrt{ab}
$$
が成り立つ。等号が成り立つのは $a=b$ のときに限る。
方針:左辺から右辺を引き、それが「ある数の 2 乗の半分」になることを示す。2 乗は $0$ 以上なので、差は $0$ 以上になる。
段 1(平方根で書き直す)。$a>0$ なので $a=\bigl(\sqrt a\bigr)^2$ であり、同様に $b=\bigl(\sqrt b\bigr)^2$ である。また、$\sqrt a\sqrt b$ は $0$ 以上で、2 乗すると $ab$ になるので、$\sqrt{ab}=\sqrt a\sqrt b$ である。
段 2(差を計算する)。段 1 を使って差を書き直すと
$$
\begin{aligned}
\frac{a+b}2-\sqrt{ab}
&=\frac{\bigl(\sqrt a\bigr)^2+\bigl(\sqrt b\bigr)^2}2-\sqrt a\sqrt b\\
&=\frac{\bigl(\sqrt a\bigr)^2-2\sqrt a\sqrt b+\bigl(\sqrt b\bigr)^2}2\\
&=\frac{\bigl(\sqrt a-\sqrt b\bigr)^2}2
\end{aligned}
$$
となる。2 行目は $\sqrt a\sqrt b=\frac{2\sqrt a\sqrt b}2$ として分数をまとめ、3 行目は展開公式 $(s-t)^2=s^2-2st+t^2$ を $s=\sqrt a$、$t=\sqrt b$ に使った。
段 3(不等式)。実数の 2 乗は $0$ 以上なので $\bigl(\sqrt a-\sqrt b\bigr)^2\ge0$ であり、段 2 より $\frac{a+b}2-\sqrt{ab}\ge0$、すなわち $\frac{a+b}2\ge\sqrt{ab}$ である。
段 4(等号の条件)。等号が成り立つのは段 2 の差が $0$ のとき、すなわち $\bigl(\sqrt a-\sqrt b\bigr)^2=0$ のときである。実数の 2 乗が $0$ になるのはその実数が $0$ のときだけなので、これは $\sqrt a=\sqrt b$ と同じである。$\sqrt a=\sqrt b$ なら両辺を 2 乗して $a=b$ であり、逆に $a=b$ なら $\sqrt a=\sqrt b$ である。よって等号は $a=b$ のときに限る。$\square$
$a$ や $b$ が $0$ の場合も、同じ計算で $\frac{a+b}2\ge\sqrt{ab}$ が成り立つ($0$ の平方根は $0$ である)。一方、負の数を許すと成り立たない(ex-agm-negative)。
相加平均と相乗平均は、1 つの半円の中に長さとして描ける。
直径 a+b の半円で、相加平均は半径、相乗平均は分点から立てた垂線の長さになる
長さ $a+b$ の線分 $\mathrm{AB}$ を直径とする半円をかく。$\mathrm{AB}$ 上に $\mathrm{AP}=a$、$\mathrm{PB}=b$ となる点 $\mathrm P$ をとり、$\mathrm P$ で $\mathrm{AB}$ に垂直な直線が半円と交わる点を $\mathrm Q$ とする。このとき
$$
\mathrm{PQ}=\sqrt{ab}
$$
である。半円の半径は $\frac{a+b}2$ である。
方針:中心 $\mathrm O$ と $\mathrm Q$ を結び、直角三角形 $\mathrm{OPQ}$ に三平方の定理を使う。
段 1(長さを求める)。$\mathrm O$ は $\mathrm{AB}$ の中点なので、半径は $r:=\frac{a+b}2$、$\mathrm{AO}=r$ である。$\mathrm{AP}=a$ なので、$\mathrm P$ と $\mathrm O$ の距離は
$$
\mathrm{OP}=|r-a|=\Bigl|\frac{a+b}2-a\Bigr|=\frac{|b-a|}2
$$
である。$\mathrm Q$ は半円上の点なので $\mathrm{OQ}=r$ である。
段 2(三平方の定理)。角 $\mathrm{OPQ}$ は直角なので、$\mathrm{PQ}^2=\mathrm{OQ}^2-\mathrm{OP}^2$ である($\mathrm P=\mathrm O$ のときは $\mathrm{OP}=0$ で、この式はそのまま成り立つ)。よって
$$
\mathrm{PQ}^2=\frac{(a+b)^2}4-\frac{(b-a)^2}4=\frac{(a^2+2ab+b^2)-(a^2-2ab+b^2)}4=\frac{4ab}4=ab
$$
である。$\mathrm{PQ}>0$ なので $\mathrm{PQ}=\sqrt{ab}$ である。$\square$
直角三角形 $\mathrm{OPQ}$ では、斜辺 $\mathrm{OQ}$ は他の辺 $\mathrm{PQ}$ より短くない。よって $\sqrt{ab}=\mathrm{PQ}\le\mathrm{OQ}=\frac{a+b}2$ であり、図の上でも thm-agm-two が読み取れる。等しくなるのは $\mathrm{OP}=0$、つまり $\mathrm P$ が中心に来て $a=b$ となるときである。
図 1 は $a=1$、$b=4$ でかいてある。半径は $r=\frac{1+4}2=2.5$、$\mathrm{OP}=\frac{|4-1|}2=1.5$ なので
$$
\mathrm{PQ}=\sqrt{2.5^2-1.5^2}=\sqrt{6.25-2.25}=\sqrt4=2
$$
であり、確かに $\sqrt{ab}=\sqrt{1\cdot4}=2$ と一致する。赤い垂線(長さ $2$)は青い半径(長さ $2.5$)より短い。
thm-agm-two は、次の 2 つの形でよく使われる。どちらも thm-agm-two を書き直しただけである。
$a,b$ を正の数とする。
$x>0$ のとき、$x+\frac4x$ の最小値を求める。
$x$ と $\frac4x$ はどちらも正で、積は $x\cdot\frac4x=4$ で一定である。rem-agm-two-patterns の 1 により
$$
x+\frac4x\ge2\sqrt{x\cdot\frac4x}=2\sqrt4=4
$$
である。等号は $x=\frac4x$ のとき、つまり $x^2=4$ で $x>0$ より $x=2$ のときに成り立つ。$x=2$ は範囲 $x>0$ に入っているので、最小値は $4$($x=2$ のとき)である。
いくつかの値で確かめる:$x=1$ で $1+4=5$、$x=2$ で $2+2=4$、$x=4$ で $4+1=5$、$x=\frac12$ で $\frac12+8=8.5$。どれも $4$ 以上であり、$x=2$ で $4$ になる。
y=x+4/x のグラフは直線 y=4 より下に来ず、x=2 でちょうど 4 になる
図 2 では、グラフが相加相乗平均による下界 $y=4$ に 1 点 $(2,4)$ だけで触れている。$x$ が小さいと $\frac4x$ が大きく、$x$ が大きいと $x$ 自身が大きいので、ちょうど 2 つの項が等しくなる所で和がいちばん小さくなる。
周の長さが $20$ の長方形の縦を $a$、横を $b$ とすると、$2(a+b)=20$ より $a+b=10$ である。rem-agm-two-patterns の 2 により
$$
ab\le\frac{10^2}4=25
$$
であり、等号は $a=b=5$ のときに成り立つ。よって面積の最大値は $25$ で、そのとき長方形は 1 辺 $5$ の正方形である。
確かめ:縦 $3$・横 $7$ で面積 $21$、縦 $4$・横 $6$ で面積 $24$、縦 $5$・横 $5$ で面積 $25$。
$x>1$ のとき、$x+\frac1{x-1}$ の最小値を求める。このままでは $x$ と $\frac1{x-1}$ の積 $\frac x{x-1}$ が一定でないので、rem-agm-two-patterns の 1 は使えない。
そこで $t:=x-1$ とおく。$x>1$ より $t>0$ であり、$x=t+1$ なので
$$
x+\frac1{x-1}=t+\frac1t+1
$$
である。$t$ と $\frac1t$ の積は $1$ で一定なので、$t+\frac1t\ge2\sqrt1=2$ であり、
$$
x+\frac1{x-1}=t+\frac1t+1\ge2+1=3
$$
となる。等号は $t=\frac1t$、つまり $t=1$($x=2$)のときに成り立つ。よって最小値は $3$($x=2$ のとき)である。
確かめ:$x=2$ で $2+1=3$、$x=3$ で $3+\frac12=3.5$、$x=\frac32$ で $\frac32+2=3.5$。
3 つの正の数についても、相乗平均は相加平均以下である。証明には、次の因数分解の公式を使う。
すべての実数 $p,q,r$ について
$$
p^3+q^3+r^3-3pqr=(p+q+r)\bigl(p^2+q^2+r^2-pq-qr-rp\bigr)
$$
であり、さらに
$$
p^2+q^2+r^2-pq-qr-rp=\frac12\Bigl((p-q)^2+(q-r)^2+(r-p)^2\Bigr)
$$
である。
段 1(1 つ目の式)。右辺の $(p+q+r)$ を 1 文字ずつ掛ける。
$$
\begin{aligned}
p\,(p^2+q^2+r^2-pq-qr-rp)&=p^3+pq^2+pr^2-p^2q-pqr-p^2r\\
q\,(p^2+q^2+r^2-pq-qr-rp)&=p^2q+q^3+qr^2-pq^2-q^2r-pqr\\
r\,(p^2+q^2+r^2-pq-qr-rp)&=p^2r+q^2r+r^3-pqr-qr^2-pr^2
\end{aligned}
$$
3 行を足す。$pq^2$ と $-pq^2$、$pr^2$ と $-pr^2$、$-p^2q$ と $p^2q$、$-p^2r$ と $p^2r$、$qr^2$ と $-qr^2$、$-q^2r$ と $q^2r$ がそれぞれ打ち消し合い、残るのは $p^3+q^3+r^3$ と、$-pqr$ が 3 つである。よって和は $p^3+q^3+r^3-3pqr$ であり、1 つ目の式が成り立つ。
段 2(2 つ目の式)。右辺の 3 つの 2 乗を展開すると
$$
(p-q)^2+(q-r)^2+(r-p)^2=(p^2-2pq+q^2)+(q^2-2qr+r^2)+(r^2-2rp+p^2)=2\bigl(p^2+q^2+r^2-pq-qr-rp\bigr)
$$
である。両辺を 2 で割れば 2 つ目の式になる。$\square$
$p=1$、$q=2$、$r=3$ とする。左辺は $1+8+27-3\cdot6=36-18=18$ である。右辺は
$$
\frac12(1+2+3)\bigl((1-2)^2+(2-3)^2+(3-1)^2\bigr)=\frac12\cdot6\cdot(1+1+4)=18
$$
であり、一致する。$p=q=r=2$ なら左辺は $8+8+8-24=0$、右辺も 2 乗がすべて $0$ なので $0$ である。
$a,b,c$ を正の数とする。このとき
$$
\frac{a+b+c}3\ge\sqrt[3]{abc}
$$
が成り立つ。等号が成り立つのは $a=b=c$ のときに限る。
方針:$a,b,c$ を 3 乗の形に書き、$a+b+c-3\sqrt[3]{abc}$ を lem-agm-cubes で「正の数 × 2 乗の和」に変形する。
段 1(3 乗根をおく)。$p:=\sqrt[3]a$、$q:=\sqrt[3]b$、$r:=\sqrt[3]c$ とおく。これらは正の数で、$p^3=a$、$q^3=b$、$r^3=c$ である。また、$pqr$ は正で $(pqr)^3=p^3q^3r^3=abc$ なので、$pqr=\sqrt[3]{abc}$ である。
段 2(差を書き直す)。段 1 より
$$
a+b+c-3\sqrt[3]{abc}=p^3+q^3+r^3-3pqr
$$
であり、lem-agm-cubes の 2 つの式を続けて使うと
$$
a+b+c-3\sqrt[3]{abc}=\frac12(p+q+r)\Bigl((p-q)^2+(q-r)^2+(r-p)^2\Bigr)
$$
となる。
段 3(不等式)。$p+q+r>0$ であり、2 乗の和は $0$ 以上なので、右辺は $0$ 以上である。よって $a+b+c\ge3\sqrt[3]{abc}$ であり、両辺を 3 で割って結論を得る。
段 4(等号の条件)。$p+q+r>0$ なので、段 2 の右辺が $0$ になるのは $(p-q)^2+(q-r)^2+(r-p)^2=0$ のときだけである。$0$ 以上の 3 数の和が $0$ なら 3 数とも $0$ なので、$p=q$、$q=r$ である。3 乗すると $a=b=c$ である。逆に $a=b=c$ なら $p=q=r$ で右辺は $0$ である。$\square$
$p^3+q^3+r^3-3pqr$ のような対称式を基本対称式で書き直す一般的な方法は 対称式の基本定理(高校数学) で扱う。
2 数のときと同じく、3 数でも「積が一定なら和は最小値をもち、和が一定なら積は最大値をもつ」。
縦・横・高さの和が $12$ の直方体の体積の最大値を求める。縦・横・高さを $a,b,c$ とすると $a+b+c=12$ であり、thm-agm-three より $\sqrt[3]{abc}\le\frac{12}3=4$、両辺を 3 乗して $abc\le64$ である。等号は $a=b=c=4$ のときに成り立つので、最大値は $64$(1 辺 $4$ の立方体)である。
確かめ:$3\times4\times5=60$、$2\times4\times6=48$ はどちらも $64$ より小さい。
$x>0$ のとき、$x^2+\frac2x$ の最小値を求める。
2 数 $x^2$ と $\frac2x$ に thm-agm-two を使うと $x^2+\frac2x\ge2\sqrt{x^2\cdot\frac2x}=2\sqrt{2x}$ となるが、右辺が $x$ によって変わるので、最小値はわからない。積 $x^2\cdot\frac2x=2x$ が一定でないからである。
そこで $\frac2x=\frac1x+\frac1x$ と 2 つに分け、3 数 $x^2,\frac1x,\frac1x$ を考える。この 3 数の積は $x^2\cdot\frac1x\cdot\frac1x=1$ で一定である。thm-agm-three の両辺を 3 倍して
$$
x^2+\frac2x=x^2+\frac1x+\frac1x\ge3\sqrt[3]{x^2\cdot\frac1x\cdot\frac1x}=3\sqrt[3]1=3
$$
である。等号は $x^2=\frac1x$、つまり $x^3=1$ で $x=1$ のときに成り立つ。よって最小値は $3$($x=1$ のとき)である。
確かめ:$x=1$ で $1+2=3$、$x=2$ で $4+1=5$、$x=\frac12$ で $\frac14+4=4.25$。
4 つの数についても、2 数の不等式を 2 回使うと同じ形の不等式が得られる。
正の数 $p,q,r,s$ について、まず $p,q$ の組と $r,s$ の組に thm-agm-two を使い、次に 2 数 $\sqrt{pq}$、$\sqrt{rs}$ に thm-agm-two を使うと
$$
\frac{p+q+r+s}4=\frac12\Bigl(\frac{p+q}2+\frac{r+s}2\Bigr)\ge\frac{\sqrt{pq}+\sqrt{rs}}2\ge\sqrt{\sqrt{pq}\sqrt{rs}}=\sqrt[4]{pqrs}
$$
となる。最後の等号は $\sqrt{\sqrt{pq}\sqrt{rs}}$ を 4 乗すると $pqrs$ になることからわかる。
数値例:$1,2,4,8$ では、相加平均は $\frac{15}4=3.75$、相乗平均は $\sqrt[4]{64}=2\sqrt2=2.828\ldots$ である。
5 個以上の場合と、数ごとに重みを付けた場合は 平均の大小関係 で扱う。
相加相乗平均の不等式を使うときに外せない条件をまとめる。
| 外した条件 | 崩れること | ボックス |
|---|---|---|
| 数が正であること | 不等式そのもの | ex-agm-negative |
| 等号の点が考える範囲に入ること | 「下界 = 最小値」 | ex-agm-range |
| 積が一定であること | 下界が定数にならず、最小値がわからない | ex-agm-not-constant |
$a=-1$、$b=-4$ とする。$ab=4>0$ なので $\sqrt{ab}=2$ は計算できるが、相加平均は $\frac{-1-4}2=-\frac52$ であり、$-\frac52\ge2$ は成り立たない。prf-thm-agm-two の段 1 で使った $a=\bigl(\sqrt a\bigr)^2$ は、$a<0$ では $\sqrt a$ が実数にならないので使えない。「$a,b$ が正(または $0$)」という仮定を外すと、不等式は成り立たなくなる。
$x\ge2$ の範囲で $x+\frac1x$ の最小値を求める。
thm-agm-two から $x+\frac1x\ge2\sqrt{x\cdot\frac1x}=2$ は成り立つ。しかし等号の条件 $x=\frac1x$ は $x=1$ であり、範囲 $x\ge2$ に入らない。したがって、$x\ge2$ で $x+\frac1x=2$ となる $x$ はなく、$2$ は最小値ではない。
正しい最小値を求める。$2\le x< y$ とすると
$$
\Bigl(y+\frac1y\Bigr)-\Bigl(x+\frac1x\Bigr)=(y-x)-\frac{y-x}{xy}=(y-x)\Bigl(1-\frac1{xy}\Bigr)
$$
である。$y-x>0$ であり、$xy>2\cdot2=4>1$ なので $1-\frac1{xy}>0$ である。よって右辺は正であり、$x+\frac1x$ は $x\ge2$ で増加する。したがって最小値は $x=2$ のときの $2+\frac12=\frac52$ である($x=3$ では $\frac{10}3$ で、確かに大きい)。
x≧2 では y=x+1/x は下界 y=2 に届かず、最小値は x=2 での 5/2 になる
図 3 のとおり、下界 $2$ に触れる点 $(1,2)$ は考える範囲の外にある。不等式 $F(x)\ge c$ が正しくても、範囲の中に等号の点がなければ、$c$ は最小値ではない。
$x>0$ のとき、$x+\frac1{x^2}$ の最小値を求める。
2 数 $x$、$\frac1{x^2}$ に thm-agm-two を使うと $x+\frac1{x^2}\ge2\sqrt{\frac1x}$ となる。右辺は $x$ によって変わるので、これでは最小値はわからない。たとえば $x=1$ では右辺は $2$ で、左辺も $2$ となり等号が成り立つが、$x=\frac32$ では左辺は $\frac32+\frac49=1.944\ldots$ で、$2$ より小さい。「等号が成り立つ点の値 $2$」は最小値ではない。
直し方:$x=\frac x2+\frac x2$ と分けると、3 数 $\frac x2,\frac x2,\frac1{x^2}$ の積は $\frac14$ で一定になる。thm-agm-three により
$$
x+\frac1{x^2}=\frac x2+\frac x2+\frac1{x^2}\ge3\sqrt[3]{\frac x2\cdot\frac x2\cdot\frac1{x^2}}=3\sqrt[3]{\frac14}=\frac3{\sqrt[3]4}=1.8898\ldots
$$
であり、等号は $\frac x2=\frac1{x^2}$、つまり $x^3=2$ で $x=\sqrt[3]2$ のときに成り立つ。よって最小値は $\frac3{\sqrt[3]4}$ である。
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