n次元球面($n$-sphere)とは、Euclid 空間 $\mathbb{R}^{n+1}$ の単位球面 $S^n=\{x\mid\|x\|=1\}$ に相対位相を入れた位相空間、およびそれと同相な空間のことで、円周($n=1$)と球面($n=2$)を任意の次元に一般化したものである。コンパクトで $n\ge1$ では弧状連結な $n$ 次元閉多様体であり、$\mathbb{R}^n$ の一点コンパクト化や閉球体の境界をつぶした商とも同相である。基本群は $n=1$ で $\mathbb{Z}$、$n\ge2$ で自明、ホモロジー群は次数 $0,n$ でのみ $\mathbb{Z}$ で、異なる次元の球面は同相でない。高次ホモトピー群、$S^7$ のエキゾチックな微分構造、接束が自明になるのが $n=1,3,7$ に限ることなど、次元に応じた豊かな現象を示す。
前提知識: Euclid空間, 位相空間, 相対位相, コンパクト空間, 連結空間, 多様体
$n$ を自然数($0$ を含む)とする。Euclid空間 $\mathbb{R}^{n+1}$ の部分集合
$$S^n:=\{x\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\|x\|=1\},\qquad\|x\|=\sqrt{x_1^2+\cdots+x_{n+1}^2}$$
に $\mathbb{R}^{n+1}$ からの相対位相(相対位相)を入れた位相空間を $n$ 次元球面($n$-sphere、$n$ 次元単位球面)といい、$S^n$ と同相(同相写像)な位相空間も同じ名で呼ぶ。$S^1$ を円周(circle)、$S^2$ を単に球面(sphere)ともいい、一般次元の $S^n$ も単に球面と呼ぶ。$\mathbb{R}^{n+1}$ の閉集合(閉集合)
$$D^{n+1}:=\{x\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\|x\|\le1\}$$
を $(n+1)$ 次元閉球体(closed ball、closed disk)といい、$S^n$ はその境界(境界)$\partial D^{n+1}$ である。点 $a\in\mathbb{R}^{n+1}$ を中心とする半径 $r>0$ の球面 $\{x\mid\|x-a\|=r\}$ は、写像 $x\mapsto a+rx$ により $S^n$ と同相である。
$S^n$ の $n$ は球面自身の次元(多様体としての次元)であり、それが入っている Euclid 空間の次元 $n+1$ ではない。$S^1$ は平面 $\mathbb{R}^2$ の中の曲線、$S^2$ は空間 $\mathbb{R}^3$ の中の曲面である。$S^0=\{-1,1\}\subset\mathbb{R}$ は 2 点からなる。
$n$ 次元球面は、平面上の円周($n=1$)と空間内の球面($n=2$)を任意の次元に一般化したものであり、「原点から一定の距離にある点の全体」という素朴な図形の抽象化である。$n\ge3$ になると直接見ることはできないが、コンパクト性・連結性・多様体としての構造といった低次元の性質はそのまま高次元に引き継がれる。他方で、$\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$ のように球面から低い次元の球面への写像が非自明にねじれること、$S^7$ に標準と異なる微分構造が入ること、接束(接束)が自明になるのが $n=1,3,7$ に限ることなど、次元が上がってはじめて現れる現象も多く、それらが代数的位相幾何学・微分トポロジーの発展を促してきた。
球面は、Euclid 空間 $\mathbb{R}^n$ に無限遠点を一つ付け加えた空間(一点コンパクト化)としても、閉球体 $D^n$ の境界を一点につぶした空間としても、直交群(直交群)$\mathrm{O}(n+1)$ が推移的に作用する等質空間(等質空間)としても現れ、それぞれの見方が位相幾何・複素解析・Lie 群(Lie群)論への入口になる。
$n\ge1$ のとき、$S^n$ は $\mathbb{R}^n$ に一点 $\infty$ を付け加えた一点コンパクト化(局所コンパクト空間の記事の定理(一点を付け加えるコンパクト化))と同相である(n-sphere-prop-one-point-compactification)。北極を無限遠点、立体射影(立体射影)を同相写像とする。とくに $S^1$ は $\mathbb{R}\cup\{\infty\}$、$S^2$ は $\mathbb{C}\cup\{\infty\}$ である。
$n\ge1$ のとき、閉球体 $D^n$ の境界 $S^{n-1}$ を一点につぶした商空間(商空間)$D^n/S^{n-1}$ は $S^n$ と同相である(n-sphere-prop-disk-quotient)。この見方により、$S^n$ は一つの $0$ 胞体と一つの $n$ 胞体からなる CW 複体(CW複体)の構造をもち、ホモロジー群(ホモロジー群)やホモトピー群(ホモトピー群)の計算の出発点になる。
立方体の表面 $\partial[-1,1]^{n+1}=\{x\in\mathbb{R}^{n+1}\mid\max_i|x_i|=1\}$ は、写像 $x\mapsto x/\|x\|$ により $S^n$ と同相である(連続な全単射で、逆写像 $y\mapsto y/\max_i|y_i|$ も連続)。より一般に、原点を内部に含む $\mathbb{R}^{n+1}$ の有界な凸集合の境界は $S^n$ と同相である。楕円面 $\{x\mid\sum_ix_i^2/a_i^2=1\}$ もその例である。
2 次元のコンパクトで連結な多様体であっても $S^2$ と同相とは限らない。トーラス(トーラス)$T^2=S^1\times S^1$ は $S^2$ と同じくコンパクトで連結な 2 次元閉多様体だが、$S^2$ と同相でない。$T^2$ が満たす性質は「コンパクト・連結・$2$ 次元位相多様体である」ことであり、満たさない性質は「$S^2$ と同相である」ことである。破れる含意は「コンパクト連結 $n$ 次元多様体は $S^n$ と同相」であり、球面を特徴づけるには単連結性(単連結空間)やホモロジー群のような付加的な不変量が必要になる。実際、$T^2$ の基本群(基本群)は $\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}$ であり(単連結空間の記事の注意(反例:単連結でない空間))、$S^2$ の基本群は自明である(n-sphere-thm-fundamental-group)。基本群は同相で不変なので両者は同相でない。
$n\ge1$ のとき $\mathbb{R}^{n+1}\setminus\{0\}$ は $S^n$ を変位レトラクト(変位レトラクト)として含み($x\mapsto x/\|x\|$ と直線ホモトピー(ホモトピー)$(x,t)\mapsto(1-t)x+tx/\|x\|$)、$S^n$ とホモトピー同値(ホモトピー同値)である。しかし $\mathbb{R}^{n+1}\setminus\{0\}$ はコンパクトでないので $S^n$ と同相でない。満たす性質は「$S^n$ とホモトピー同値である」こと、満たさない性質は「$S^n$ と同相である」ことであり、破れる含意は「ホモトピー同値ならば同相」である。ホモロジー群・ホモトピー群はホモトピー同値で不変なので、これらの不変量だけでは $S^n$ を同相で特徴づけられない。
$n\ge1$ とし、$\mathbb{R}^n$ の一点コンパクト化を $\mathbb{R}^n\cup\{\infty\}$ と書く。北極 $N=(0,\dots,0,1)$ からの立体射影 $\varphi_N\colon S^n\setminus\{N\}\to\mathbb{R}^n$ を $\varphi_N(N):=\infty$ により拡張した写像 $\overline{\varphi}_N\colon S^n\to\mathbb{R}^n\cup\{\infty\}$ は同相写像である。
$\varphi_N$ が同相写像であることは多様体の記事の命題(球面の座標近傍)による。$\overline{\varphi}_N$ は全単射である。一点コンパクト化の開集合は、$\mathbb{R}^n$ の開集合 $U$ か、$\mathbb{R}^n$ のコンパクト集合 $K$ に対する $(\mathbb{R}^n\setminus K)\cup\{\infty\}$ の形である(局所コンパクト空間の記事の定理(一点を付け加えるコンパクト化))。前者の逆像 $\varphi_N^{-1}(U)$ は $S^n\setminus\{N\}$ の開集合、したがって $S^n$ の開集合である。後者の逆像は $S^n\setminus\varphi_N^{-1}(K)$ であり、$\varphi_N^{-1}(K)$ はコンパクト集合の連続像($\varphi_N^{-1}$ は連続)なのでコンパクト、Hausdorff 空間 $S^n$ の中で閉集合である(コンパクト空間の記事の命題(保存と閉性))から、この逆像は開集合である。よって $\overline{\varphi}_N$ は連続である。$S^n$ はコンパクト(n-sphere-prop-basic)、$\mathbb{R}^n\cup\{\infty\}$ は Hausdorff なので、コンパクト空間から Hausdorff 空間への連続な全単射として $\overline{\varphi}_N$ は同相写像である(閉集合の像はコンパクト集合の連続像としてコンパクト、したがって閉なので、逆写像が連続になる)。$\square$
$n\ge1$ とする。写像 $f\colon D^n\to S^n$ を
$$f(x):=\Bigl(\sin(\pi\|x\|)\frac{x}{\|x\|},\ \cos(\pi\|x\|)\Bigr)\quad(x\neq0),\qquad f(0):=(0,\dots,0,1)$$
で定めると、$f$ は連続な全射で、$S^{n-1}=\partial D^n$ 全体を南極 $S=(0,\dots,0,-1)$ に写し、$D^n\setminus S^{n-1}$ の上では単射である。したがって $f$ は商空間 $D^n/S^{n-1}$ から $S^n$ への同相写像を誘導する。
$\|f(x)\|^2=\sin^2(\pi\|x\|)+\cos^2(\pi\|x\|)=1$ なので $f$ は $S^n$ に値をとる。$x\neq0$ では $f$ は連続関数の合成であり、$x\to0$ のとき $\|\sin(\pi\|x\|)x/\|x\|\|=|\sin(\pi\|x\|)|\to0$、$\cos(\pi\|x\|)\to1$ なので $f$ は $0$ でも連続である。$\|x\|=1$ なら $f(x)=(0,\dots,0,-1)=S$ である。
$y=(y',y_{n+1})\in S^n$($y'\in\mathbb{R}^n$)に対し $y_{n+1}=\cos(\pi r)$ となる $r\in[0,1]$ がただ一つあり、$\|y'\|=\sqrt{1-y_{n+1}^2}=\sin(\pi r)$ である。$y\neq S$ なら $r<1$ であり、$r=0$ なら $y'=0$、$y=N=f(0)$ である。$0< r<1$ なら $\sin(\pi r)>0$ より $y'\neq0$ で、$x:=ry'/\|y'\|$ は $\|x\|=r<1$ を満たし $f(x)=(\sin(\pi r)y'/\|y'\|,\cos(\pi r))=y$ である。逆に $\|x\|<1$、$f(x)=y$ なら $\|x\|=r$ かつ($r>0$ のとき)$x/\|x\|=y'/\|y'\|$ なので $x$ は $y$ から一意に定まる。よって $f$ は $D^n\setminus S^{n-1}$ から $S^n\setminus\{S\}$ への全単射で、$S^{n-1}$ を $S$ に写すので、$D^n$ から $S^n$ への全射である。
商写像(商写像)$q\colon D^n\to D^n/S^{n-1}$ に対し、$f$ は $q$ のファイバー上で定数なので、商位相の普遍性により連続写像 $\bar f\colon D^n/S^{n-1}\to S^n$ で $f=\bar f\circ q$ となるものが定まり、上により $\bar f$ は全単射である。$D^n$ はコンパクト(Heine–Borel の定理)なのでその連続像 $D^n/S^{n-1}$ もコンパクトであり、$S^n$ は Hausdorff なので、$\bar f$ はコンパクト空間から Hausdorff 空間への連続全単射として同相写像である。$\square$
$\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$ であり、$n\ge2$ のとき $S^n$ は単連結、すなわち $\pi_1(S^n)$ は自明群である。$n\ge1$ では $S^n$ は弧状連結なので基本群の同型類は基点によらない。$S^0$ はどちらの点を基点としても基本群は自明である。
$n\ge2$ の場合の完全な証明(ループを一点を避けるループに取り替え、$S^n\setminus\{\text{点}\}\cong\mathbb{R}^n$ で縮める)は単連結空間の記事の命題(球面の単連結性)が所有する。$\pi_1(S^1)\cong\mathbb{Z}$ は、被覆写像 $\mathbb{R}\to S^1$、$t\mapsto(\cos2\pi t,\sin2\pi t)$ と道の持ち上げにより示され、被覆空間の記事の注意(基本群との関係の証明について)と Hat02 §1.1 Theorem 1.7、Mun00 §54 Theorem 54.5 に証明がある。同型はループの回転数で与えられる。$S^0$ の各点は $\mathbb{R}$ の中で孤立点なので、基点を固定したループは定値写像しかない。
$n\ge1$ とする。整数係数の特異ホモロジー群は
$$H_i(S^n;\mathbb{Z})\cong\begin{cases}\mathbb{Z}&(i=0,n)\\0&(\text{それ以外})\end{cases}$$
であり、整数係数のコホモロジー群(コホモロジー群)も $H^i(S^n;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$($i=0,n$)、それ以外は $0$ である。$S^0$ については $H_0(S^0;\mathbb{Z})\cong H^0(S^0;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}$ で、$i\neq0$ では $0$ である。
$H_i(S^n)$ の計算は、$S^n$ を二つの可縮(可縮空間)な開集合(北極・南極を除いた集合)で覆って Mayer–Vietoris 完全列を使うか、対 $(D^n,S^{n-1})$ の長完全列と切除定理で次元についての帰納法を行う。Hat02 §2.1 Corollary 2.14 に証明がある。コホモロジー群は普遍係数定理(Hat02 §3.1 Theorem 3.2)により $H^i(S^n;\mathbb{Z})\cong\operatorname{Hom}(H_i(S^n;\mathbb{Z}),\mathbb{Z})\oplus\operatorname{Ext}(H_{i-1}(S^n;\mathbb{Z}),\mathbb{Z})$ で、ホモロジー群がすべて自由なので $\operatorname{Ext}$ の項は消える。$S^n$ はコンパクトで向き付け可能(向き付け可能)な $n$ 次元多様体なので、Poincaré 双対性(Poincaré双対性)$H^i(S^n)\cong H_{n-i}(S^n)$ からも同じ結果が得られる。$H_0(S^0)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}$ は $S^0$ が 2 個の弧状連結成分をもつことによる。
$m\neq n$ ならば $S^m$ と $S^n$ は同相でなく、ホモトピー同値でもない。
$m< n$ としてよい。$m=0$ なら $S^0$ は連結でなく、$n\ge1$ で $S^n$ は連結(n-sphere-prop-basic)であり、連結性はホモトピー同値で保たれる(弧状連結成分の個数がホモトピー不変であること、弧状連結空間の記事の命題(弧状連結成分のホモトピー不変性))ので、両者はホモトピー同値でない。$1\le m< n$ なら n-sphere-thm-homology により $H_m(S^m)\cong\mathbb{Z}$、$H_m(S^n)=0$ である。ホモロジー群はホモトピー同値で不変な(ホモトピー同値は同型を誘導する、Hat02 §2.1 Corollary 2.11)ので、$S^m$ と $S^n$ はホモトピー同値でなく、したがって同相でもない。$\square$
$n\ge1$ とする。ホモトピー群について次が成り立つ。
以下 $n\ge1$ とする。$S^n$ は立体射影の 2 枚のチャートにより実解析的多様体になる(可微分多様体の記事の例(球面))。この微分構造を $S^n$ の標準的な微分構造という。ここで述べる事実はいずれも証明を原論文に譲る。
$S^n$ と同相だが標準的な $S^n$ と微分同相でない滑らかな多様体をエキゾチック球面(exotic sphere)という。最初の例は Milnor が $S^4$ 上の $S^3$ 束として構成した 7 次元の例である(Mil56)。Kervaire と Milnor は、$n\ge5$ に対し $S^n$ とホモトピー同値な向き付けられた滑らかな閉多様体の $h$-コボルディズム類($n\ge5$ では向きを保つ微分同相類に一致する)が連結和(連結和)について有限アーベル群 $\Theta_n$ をなすことを示し、$\Theta_7\cong\mathbb{Z}/28\mathbb{Z}$、$\Theta_5=\Theta_6=\Theta_{12}=0$ などを求めた(KM63)。$n\le3$ では微分構造は一意である($n=3$ は Moi52)。$n=61$ では標準的な構造しかなく、奇数次元で微分構造が一意なのは $n=1,3,5,61$ に限る(WX17)。偶数次元では $n=2,6,12,56$ で一意であることが知られ($n=56$ は BHHM20)、$S^4$ がエキゾチックな微分構造をもつかどうか(滑らかな 4 次元 Poincaré 予想)は現在(2026年9月時点)も未解決である。
標準的な微分構造をもつ $S^n$ の接束 $TS^n=\{(x,v)\in S^n\times\mathbb{R}^{n+1}\mid\langle x,v\rangle=0\}$ が自明なベクトル束(ベクトル束)になる、すなわち $S^n$ が平行化可能(parallelizable)であるのは $n=1,3,7$ のときに限る(BM58、Ker58)。$n=1,3,7$ は複素数・四元数・八元数(八元数)の乗法から平行化が得られる。一方、任意の $n$ について $TS^n$ に自明な直線束 $\varepsilon^1$ を Whitney 和した $TS^n\oplus\varepsilon^1$ は自明である。これは $S^n\subset\mathbb{R}^{n+1}$ の法束が外向き単位法ベクトル $x$ により自明化されることによるもので、証明はベクトル束の記事の命題(球面の接束は安定的に自明)が所有する。とくに $TS^2$ は非自明で、$S^2$ 上には至るところ消えない接ベクトル場が存在しない(毛玉の定理。$S^n$ が至るところ消えない接ベクトル場をもつのは $n$ が奇数のときに限る、Mil97 §6)。
Lie 群の接束は左移動により自明化されるので、標準的な $S^n$ に Lie 群の構造が入るなら $n\in\{0,1,3,7\}$ である。実際 $S^0\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$、$S^1\cong\mathrm{U}(1)\cong\mathbb{R}/\mathbb{Z}$、$S^3\cong\mathrm{SU}(2)\cong\mathrm{Sp}(1)$(SO(3)とSU(2))は Lie 群である。$S^7$ は八元数の乗法をもつが結合的でないため群にならず、Lie 群の構造は入らない(コンパクト連結 Lie 群の分類(BtD85)から、単連結で 7 次元の Lie 群は存在しない)。これは、$\mathbb{R}^m$ 上に零因子のない結合的な双線形な積が入るのが $m=1,2,4$(実数・複素数・四元数)に限ることに対応する。
任意の $n$ について、直交群 $\mathrm{O}(n+1)$ と特殊直交群 $\mathrm{SO}(n+1)$ は $S^n$ に行列の積で作用し(群作用)、この作用は滑らかで推移的である。点 $e_{n+1}$ の固定部分群はそれぞれ $\mathrm{O}(n)$、$\mathrm{SO}(n)$ なので、$S^n$ は等質空間
$$S^n\cong\mathrm{O}(n+1)/\mathrm{O}(n)\cong\mathrm{SO}(n+1)/\mathrm{SO}(n)$$
である。$\mathbb{R}^{2n}=\mathbb{C}^n$ とみなすと $n\ge 1$ で $S^{2n-1}\cong\mathrm{U}(n)/\mathrm{U}(n-1)$、$n\ge 2$ で $S^{2n-1}\cong\mathrm{SU}(n)/\mathrm{SU}(n-1)$ であり、$\mathbb{R}^{4n}=\mathbb{H}^n$ とみなすと $n\ge 1$ で $S^{4n-1}\cong\mathrm{Sp}(n)/\mathrm{Sp}(n-1)$ である(BtD85 Chapter I)。
球面は、代数的位相幾何学のほとんどの不変量が最初に計算される空間である。$S^n$ の胞体構造(n-sphere-ex-disk-quotient)は CW 複体の理論の最小の非自明な例であり、ホモロジー群の計算は Mayer–Vietoris 完全列と切除定理の最初の応用であり、ホモトピー群 $\pi_k(S^n)$ の計算は安定ホモトピー論の中心的問題である。球面の間の写像の写像度、Brouwer の不動点定理、Borsuk–Ulam の定理、毛玉の定理はいずれも $S^n$ の不変量から導かれる。一方で、球面の商として実射影空間(射影空間)やレンズ空間が、球面の束として Hopf 束や特性類の例が構成され、球面は他の多様体の基本的な材料でもある。
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