Erdős–Szekeresの定理(凸多角形)

同義語:ハッピーエンド問題Erdős–Szekeres theorem for convex polygons

概要

Erdős–Szekeresの定理(凸多角形)(Erdős–Szekeres theorem for convex polygons)とは、平面でどの 3 点も一直線上にない(一般の位置にある)点が十分多くあれば、その中に凸 $n$ 角形の頂点になる $n$ 点が必ずあるという定理である($n\ge3$)。$\binom{2n-4}{n-2}+1$ 個の点で十分であり、$x$ 座標の順に並べて下に凸な列(カップ)と上に凸な列(キャップ)の長さについての帰納法で示される。$n=4$ の場合は、一般の位置にある 5 点の中に凸四角形の頂点になる 4 点が必ずあるという形で、場合分けで直接示せる。一般の位置でない点や 4 点だけでは成り立たない。ハッピーエンド問題ともいう。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 鳩の巣原理, 数学的帰納法と整列性, 場合の数の数え方の体系, 点の存在範囲と凸結合

高校での出発点:5 点の中に凸四角形はあるか

平面に点をいくつか打つ。どの 3 点も一直線上にないようにする。3 点を選べば三角形ができる。では、4 点を選んで凸四角形(へこみのない四角形)の頂点にすることは、いつでもできるだろうか。
4 点しかないとできないことがある。三角形の 3 頂点と、その内部の 1 点では、どう結んでもへこんだ四角形になる。ところが 5 点あると、どう打っても必ず凸四角形の頂点になる 4 点が選べる。まず例で確かめる。

5 点から凸四角形を探す

5 点 $(0,0)$、$(8,0)$、$(3,7)$、$(5,2)$、$(2,3)$ を考える(図 1)。どの 3 点も一直線上にない(10 通りの 3 点の組をすべて確かめられる)。4 点の選び方は $\binom54=5$ 通りある。
(1) $\{(0,0),(8,0),(3,7),(5,2)\}$:$(5,2)$ は三角形 $(0,0),(8,0),(3,7)$ の内部にある。
(2) $\{(0,0),(8,0),(3,7),(2,3)\}$:$(2,3)$ が同じ三角形の内部にある。
(3) $\{(0,0),(3,7),(5,2),(2,3)\}$:$(2,3)$ は三角形 $(0,0),(3,7),(5,2)$ の内部にある。
(4) $\{(8,0),(3,7),(5,2),(2,3)\}$:$(5,2)$ は三角形 $(8,0),(3,7),(2,3)$ の内部にある。
(5) $\{(0,0),(8,0),(5,2),(2,3)\}$:どの点も、ほかの 3 点の三角形の内部にない。この順に結ぶと凸四角形になる。
たとえば (1) で $(5,2)$ が内部にあることは、三角形の 3 辺を含む直線 $y=0$、$y=\dfrac73x$、$7x+5y=56$ に関して、$(5,2)$ が 3 つとも頂点の側にある($2>0$、$2<\dfrac{35}3$、$35+10<56$)ことから分かる。凸四角形になる 4 点は、この 5 点では 1 組だけである。

5 点のうち、青で結んだ 4 点だけが凸四角形の頂点になる 5 点のうち、青で結んだ 4 点だけが凸四角形の頂点になる
では、凸五角形の頂点になる 5 点を必ず選ぶには、何点あればよいか。凸 $n$ 角形ならどうか。この記事では次の問いに答える。

  1. 5 点あれば、いつも凸四角形の頂点になる 4 点があるか。→ thm-esz-five
  2. どの $n$ についても、点が十分多ければ凸 $n$ 角形の頂点になる $n$ 点があるか。何点あれば十分か。→ thm-esz-main
  3. 点の数を減らしたり、3 点が一直線上に並ぶことを許したりするとどうなるか。→ ex-esz-cx-four、ex-esz-cx-line、ex-esz-cx-eight
    高校での見方この記事の言葉大学の言葉
    どの 3 点も一直線上にない一般の位置一般の位置
    へこみのない多角形の頂点になる凸の位置凸包の頂点
    $x$ 座標の順に、傾きが増える・減るカップ・キャップ単調な列
    二項係数の漸化式 $\binom{m}{r}=\binom{m-1}{r-1}+\binom{m-1}{r}$必要な点の数の上からの評価Ramsey 型の定理
    この問題は、平面の点の集まりには、十分大きければ必ず規則正しい部分(凸多角形)が含まれる、という種類の定理の代表例である。数列の中に増加または減少する部分列が必ず含まれるという定理(鳩の巣原理 の Erdős–Szekeres の定理、Dilworthの定理)も同じ論文 ES35 に現れる。この記事は、そのうちの凸多角形の方を扱う。

言葉の準備:一般の位置と凸の位置

一般の位置と凸の位置

平面の有限個の点の集まりで、どの 3 点も一直線上にないとき、この点の集まりは 一般の位置 にあるという。
一般の位置にある $n$ 個($n\ge3$)の点を、ある順に $Q_1,Q_2,\dots,Q_n$ と並べると、各 $i$ について、直線 $Q_iQ_{i+1}$($Q_{n+1}=Q_1$ と読む)に関して残りの $n-2$ 点がすべて同じ側にあるとき、この $n$ 点は 凸の位置 にある、または 凸 $n$ 角形の頂点になる という。

凸の位置にある点を順に結んだ多角形では、どの辺を含む直線についても、ほかの頂点がすべて一方の側にある。これが「へこみがない」ことの言いかえである。3 点は、一般の位置にあれば、どう並べても凸の位置にある(直線 $Q_iQ_{i+1}$ に関して残りの 1 点は、直線の上になければどちらかの側にある)。

凸の位置にある 4 点と、ない 4 点
  1. ex-esz-start (5) の 4 点を $Q_1(0,0)$、$Q_2(8,0)$、$Q_3(5,2)$、$Q_4(2,3)$ と並べる。直線 $Q_1Q_2$($y=0$)に関して $Q_3$、$Q_4$ はどちらも上側にある。直線 $Q_2Q_3$($2x+3y=16$)に関して、$Q_4$ は $4+9=13<16$、$Q_1$ は $0<16$ で同じ側にある。直線 $Q_3Q_4$($x+3y=11$)に関して、$Q_1$ は $0<11$、$Q_2$ は $8<11$ で同じ側にある。直線 $Q_4Q_1$($3x-2y=0$)に関して、$Q_2$ は $24>0$、$Q_3$ は $15-4=11>0$ で同じ側にある。よってこの 4 点は凸の位置にある。
  2. 三角形 $(0,0)$、$(4,0)$、$(0,4)$ とその内部の点 $(1,1)$ は凸の位置にない。どう並べても、$(1,1)$ と隣り合う頂点 $V$ を結ぶ直線は三角形の内部を通って $V$ の向かいの辺を横切るので、残りの 2 頂点がこの直線の反対側に分かれてしまう。

4 点のときは、凸の位置にあるかどうかを「ほかの 3 点の三角形の内部に入る点があるか」で判定できる。三角形の内部は、3 辺を含む直線のそれぞれについて向かいの頂点の側にある点の集まり、つまり 3 つの半平面の共通部分であることを使う(点の存在範囲と凸結合)。

4 点の判定

一般の位置にある 4 点について、次の 2 つは同じことである。
(1) 4 点は凸の位置にある。
(2) どの 1 点も、ほかの 3 点を頂点とする三角形の内部にない。

内部にないなら対角線が交わる

要点:(1) から (2) は ex-esz-position (2) と同じ議論である。(2) から (1) は、1 点 $D$ が三角形 $ABC$ の外にあることから、ある辺、たとえば $BC$ を含む直線について $D$ と $A$ が反対側にあることを使う。線分 $AD$ が直線 $BC$ と交わる点が線分 $BC$ の上にあれば、2 本の線分 $AD$ と $BC$ が交わり、$A,B,D,C$ の順に並べると凸の位置になる。交わる点が線分 $BC$ の外にあると、$B$ か $C$ がほかの 3 点の三角形の内部に入ってしまい、(2) に反する。

詳しい証明を開く

段 1((1) ならば (2))。$D$ が三角形 $ABC$ の内部にあるとする。4 点をどう並べても、$D$ は 2 つの頂点と隣り合う。その 1 つを $V$ とすると、直線 $VD$ は三角形の内部の点 $D$ を通るので、$V$ の向かいの辺を、端でない点で横切る。したがって残りの 2 頂点は直線 $VD$ の反対側にあり、凸の位置の条件に反する。

段 2((2) ならば (1):分ける直線)。(2) を仮定する。$D$ は三角形 $ABC$ の内部になく、一般の位置なので 3 辺を含む直線の上にもない。三角形の内部は 3 つの半平面の共通部分なので、$D$ はどれかの辺を含む直線について、向かいの頂点の反対側にある。記号をつけかえて、それを直線 $BC$、向かいの頂点を $A$ とする。すると線分 $AD$ は直線 $BC$ と 1 点 $X$ で交わり、$X$ は $B$、$C$ のどちらとも異なる(一般の位置)。

段 3($X$ が線分 $BC$ の上)。2 本の線分 $AD$、$BC$ が $X$ で交わる。4 点を $A,B,D,C$ の順に並べる。辺 $AB$ について:$D$ は半直線 $AX$ の上で $X$ より先にあり、$C$ は半直線 $BX$ の上で $X$ より先にある。直線 $AB$ は直線 $AD$ と $A$ だけで、直線 $BC$ と $B$ だけで交わるので、$D$ も $C$ も直線 $AB$ に関して $X$ と同じ側にある。辺 $BD$、$DC$、$CA$ についても、同じ理由で残りの 2 点は $X$ と同じ側にある。よって凸の位置にある。

段 4($X$ が線分 $BC$ の外)。たとえば $C$ が $B$ と $X$ の間にあるとする。$X$ は三角形 $ABD$ の辺 $AD$ の端でない点で、$C$ は線分 $BX$ の端でない点なので、$C$ は三角形 $ABD$ の内部にある。これは (2) に反する。$B$ が $C$ と $X$ の間にあるときも、同じく $B$ が三角形 $ACD$ の内部に入り、(2) に反する。よって段 3 の場合しか起こらない。$\square$

主定理 1:5 点あれば凸四角形がある

証明の前に、座標のとり方を 1 つ決めておく。有限個の点の 2 点を結ぶ直線の向きは有限個しかないので、$y$ 軸をそのどれとも平行でない向きにとれば、どの 2 点も $x$ 座標が異なるようにできる。以下、点の $x$ 座標はすべて異なるとする。

5 点の中の凸四角形

平面で一般の位置にある 5 点の中には、凸の位置にある 4 点がある。

左端の点から見た傾きで並べる

方針:左端の点 $A$ から見て、残りの 4 点を傾きの順に $B_1,B_2,B_3,B_4$ と並べ、三角形 $T=AB_1B_4$ を考える。$B_2$ か $B_3$ が $T$ の外にあるかどうかで場合を分け、どちらの場合も lem-esz-four の (2) を満たす 4 点を見つける(図 2・図 3)。
段 1(並べる)。$x$ 座標が最小の点を $A$ とし、残りの 4 点はすべて $A$ より右にある。$A$ と各点を結ぶ直線の傾きは、一般の位置なのですべて異なる。傾きの小さい順に $B_1,B_2,B_3,B_4$ と名づける。三角形 $AB_jB_l$ の点は $A+s\overrightarrow{AB_j}+t\overrightarrow{AB_l}$($s,t\ge0$、$s+t\le1$)と書けるので(点の存在範囲と凸結合)、$A$ 以外の点の $A$ から見た傾きは、$AB_j$ と $AB_l$ の傾きの間にある。
段 2($B_2$ か $B_3$ が $T$ の外にある場合)。$B_i$($i=2$ または $3$)が三角形 $T=AB_1B_4$ の内部にないとする。4 点 $A,B_1,B_i,B_4$ が lem-esz-four の (2) を満たすことを確かめる。$A$ は、ほかの 3 点の三角形の点の $x$ 座標がどれも $A$ より大きいので、その内部にない。$B_1$ は、三角形 $AB_iB_4$ の点の傾きが $AB_i$ と $AB_4$ の傾きの間にあり、$AB_1$ の傾きはそれより小さいので、その内部にない。$B_4$ も同じ理由で三角形 $AB_1B_i$ の内部にない。$B_i$ は仮定により $T$ の内部にない。よって lem-esz-four により、この 4 点は凸の位置にある。
段 3($B_2$、$B_3$ がどちらも $T$ の内部にある場合)。直線 $B_2B_3$ は、一般の位置なので $A$、$B_1$、$B_4$ のどれも通らない。3 点を直線の 2 つの側に分けると、鳩の巣原理 により、同じ側に 2 点がある。それを $U$、$V$ とする。4 点 $U,V,B_2,B_3$ が lem-esz-four の (2) を満たすことを確かめる。

  • $U$ は三角形 $VB_2B_3$ の内部にない。この三角形の 3 頂点は $T$ に含まれるので、三角形全体が $T$ に含まれる。三角形の内部の点のまわりの十分小さい円は三角形に含まれ、したがって $T$ に含まれるが、$T$ の頂点 $U$ のまわりの円はどんなに小さくても $T$ からはみ出す。$V$ も同じである。
  • $B_2$ は三角形 $UVB_3$ の内部にない。この三角形は直線 $B_2B_3$ の $U$、$V$ の側(直線を含む)にあり、直線とは $B_3$ でだけ出会う。$B_2$ は直線の上の $B_3$ でない点なので、三角形の内部にない。$B_3$ も同じである。
    よって lem-esz-four により、$U,V,B_2,B_3$ は凸の位置にある。$\square$
B2 が三角形 A B1 B4 の外にある場合。A、B1、B2、B4 が凸四角形になる B2 が三角形 A B1 B4 の外にある場合。A、B1、B2、B4 が凸四角形になる
B2 と B3 が三角形 A B1 B4 の中にある場合。直線 B2B3(橙)の同じ側にある A と B1 が、B2、B3 と凸四角形になる B2 と B3 が三角形 A B1 B4 の中にある場合。直線 B2B3(橙)の同じ側にある A と B1 が、B2、B3 と凸四角形になる
証明の手順で凸四角形を見つける
  1. ex-esz-start の 5 点で、左端の点は $A(0,0)$ である。$A$ から見た傾きは、$(8,0)$ が $0$、$(5,2)$ が $\dfrac25$、$(2,3)$ が $\dfrac32$、$(3,7)$ が $\dfrac73$ なので、$B_1=(8,0)$、$B_2=(5,2)$、$B_3=(2,3)$、$B_4=(3,7)$ である。ex-esz-start (1)(2) により $B_2$、$B_3$ はどちらも $T=AB_1B_4$ の内部にあり、段 3 の場合になる。直線 $B_2B_3$ は $x+3y=11$ で、$A$ は $0<11$、$B_1$ は $8<11$、$B_4$ は $3+21=24>11$ である。$A$ と $B_1$ が同じ側にあるので、$A,B_1,B_2,B_3$ が凸の位置にある。これは ex-esz-start (5) の 4 点である(図 3)。
  2. 5 点 $(0,0)$、$(8,1)$、$(7,4)$、$(3,3)$、$(2,6)$ では、$A=(0,0)$ から見た傾きが $\dfrac18$、$\dfrac47$、$1$、$3$ なので、$B_1=(8,1)$、$B_2=(7,4)$、$B_3=(3,3)$、$B_4=(2,6)$ である。辺 $B_1B_4$ を含む直線は $5x+6y=46$ で、$A$ は $0<46$ の側にあるが、$B_2$ は $35+24=59>46$ で反対側にある。$B_2$ は $T$ の外にあり、段 2 の場合になって、$A,B_1,B_2,B_4$ が凸の位置にある(図 2)。

ES35 の序文は、この定理とその証明を E. Klein のものとして紹介している。そこでは 5 点を囲む最小の凸多角形を考え、それが四角形か五角形なら頂点から 4 点を選べばよく、三角形なら段 3 と同じ議論をする。上の証明の三角形 $T$ は、段 3 の場合にちょうど「5 点を囲む最小の凸多角形」の役を果たしている。

主定理 2:十分多くの点があれば凸 $n$ 角形がある

凸五角形や凸六角形でも、thm-esz-five のように場合を分けていくのは大変である。そこで、点を $x$ 座標の順に並べ、「下に凸に並ぶ列」と「上に凸に並ぶ列」を数える。

カップとキャップ

カップとキャップ

一般の位置にあり、$x$ 座標がすべて異なる点の集まりを考える。その中から $m$ 個($m\ge2$)の点を選び、$x$ 座標の小さい順に $p_1,p_2,\dots,p_m$ とする。隣り合う 2 点を結ぶ線分の傾きを $s_k$($p_k$ と $p_{k+1}$ を結ぶ線分の傾き、$k=1,\dots,m-1$)とする。

  • $s_1< s_2<\dots< s_{m-1}$ のとき、$p_1,\dots,p_m$ を長さ $m$ の カップ(下に凸な列)という。
  • $s_1>s_2>\dots>s_{m-1}$ のとき、長さ $m$ の キャップ(上に凸な列)という。
    2 点だけの列は、長さ $2$ のカップでもあり、キャップでもある。
カップとキャップを探す

6 点 $(1,0)$、$(3,1)$、$(6,9)$、$(7,2)$、$(8,5)$、$(11,6)$ を考える。
(1) $(1,0),(3,1),(6,9)$ は、傾きが $\dfrac12$、$\dfrac83$ と増えるので、長さ $3$ のカップである。
(2) $(1,0),(6,9),(11,6)$ は、傾きが $\dfrac95$、$-\dfrac35$ と減るので、長さ $3$ のキャップである。
(3) この 6 点には長さ $4$ のカップも長さ $4$ のキャップもない。$x$ 座標の順に選ぶ 4 点の組 $\binom64=15$ 通りを、傾きを計算してすべて調べた。たとえば $(1,0),(3,1),(7,2),(11,6)$ の傾きは $\dfrac12$、$\dfrac14$、$1$ で、増えても減ってもいない。

カップの傾きが増え続けるので、カップの点を結んだ折れ線は下に凸なグラフのように曲がる。キャップは上に凸に曲がる。次の補題で、カップ・キャップの点が凸の位置にあることを示す。そのために傾きの平均の性質を使う。

傾きは途中の傾きの平均

$x$ 座標の小さい順に並んだ点 $p_1,\dots,p_m$($p_k=(x_k,y_k)$)と、隣り合う点の傾き $s_k$ について、$i< j$ なら
$$ p_i\text{ と }p_j\text{ を結ぶ線分の傾き}=\frac{y_j-y_i}{x_j-x_i}=\sum_{k=i}^{j-1}\frac{x_{k+1}-x_k}{x_j-x_i}\,s_k $$
である。右辺の係数は正で和が $1$ なので、この傾きは $s_i,\dots,s_{j-1}$ の最小値以上、最大値以下である。$s_i,\dots,s_{j-1}$ がすべて等しくなければ、最小値より大きく最大値より小さい。

$y_{k+1}-y_k=s_k(x_{k+1}-x_k)$ なので、$k=i$ から $j-1$ まで足すと
$$ y_j-y_i=\sum_{k=i}^{j-1}s_k(x_{k+1}-x_k) $$
である。両辺を $x_j-x_i>0$ で割ると等式を得る。係数 $\dfrac{x_{k+1}-x_k}{x_j-x_i}$ は正で、和は $\dfrac{x_j-x_i}{x_j-x_i}=1$ である。正の係数で和が $1$ の足し合わせは、各 $s_k$ を最小値に置きかえると小さくなるか等しく、最大値に置きかえると大きくなるか等しいので、最小値以上、最大値以下である。等号は、置きかえで値が変わらないとき、つまりすべての $s_k$ が等しいときだけである。$\square$

カップとキャップは凸の位置にある

長さ $m\ge3$ のカップ、またはキャップの $m$ 点は、$p_1,p_2,\dots,p_m$ の順に並べると凸の位置にある。

各辺の直線に対して上か下かを傾きで比べる

方針:カップの場合に、各辺を含む直線に関して残りの点がすべて同じ側にあることを、lem-esz-slope で示す。キャップは上下を裏返すとカップになる。
段 1(辺 $p_ip_{i+1}$、$1\le i\le m-1$)。$p_i$、$p_{i+1}$ を通る直線を $\ell$ とし、その傾きは $s_i$ である。$j\ge i+2$ の点 $p_j$ について、lem-esz-slope により $p_{i+1}$ と $p_j$ を結ぶ傾きは $s_{i+1},\dots,s_{j-1}$ の最小値 $s_{i+1}$ 以上で、$s_i$ より大きい。したがって $y_j-y_{i+1}>s_i(x_j-x_{i+1})$、つまり $p_j$ は $\ell$ より上にある。$j\le i-1$ の点 $p_j$ について、$p_j$ と $p_i$ を結ぶ傾きは $s_j,\dots,s_{i-1}$ の最大値 $s_{i-1}$ 以下で、$s_i$ より小さい。したがって $y_i-y_j< s_i(x_i-x_j)$ で、$y_j>y_i-s_i(x_i-x_j)$、つまり $p_j$ はやはり $\ell$ より上にある。残りの点はすべて $\ell$ より上にある。
段 2(辺 $p_mp_1$)。$1< j< m$ の点 $p_j$ について、$p_1$ と $p_j$ を結ぶ傾き $t_j$ と、$p_1$ と $p_m$ を結ぶ傾き $t$ を比べる。lem-esz-slope の式で、$t$ は $s_1,\dots,s_{m-1}$ の平均で、$t_j$ は前半の $s_1,\dots,s_{j-1}$ の平均である。$t$ は「前半の平均 $t_j$」と「後半 $s_j,\dots,s_{m-1}$ の平均」を正の係数(和が $1$)で足し合わせたもので、後半の平均は $s_j$ 以上、$t_j$ は $s_{j-1}$ 以下なので、後半の平均は $t_j$ より大きい。よって $t>t_j$ で、$p_j$ は直線 $p_1p_m$ より下にある。残りの点はすべて同じ側にある。
段 3(キャップ)。すべての点の $y$ 座標の符号を変えると、傾きの符号がすべて変わり、キャップはカップになる。直線に関して同じ側にあるかどうかは、符号を変えても変わらない。よって段 1・段 2 からキャップも凸の位置にある。$\square$

主定理 2 と証明

Erdős–Szekeresの定理(凸多角形)

$n\ge3$ とする。平面で一般の位置にある $\dbinom{2n-4}{n-2}+1$ 個以上の点の中には、凸の位置にある $n$ 点、つまり凸 $n$ 角形の頂点になる $n$ 点がある。

$n=3$ では $\dbinom21+1=3$ 点、$n=4$ では $\dbinom42+1=7$ 点、$n=5$ では $\dbinom63+1=21$ 点で十分ということになる。証明の中心は、カップとキャップについての次の補題である。

カップかキャップがある

$a,b\ge2$ とする。一般の位置にあり、$x$ 座標がすべて異なる $\dbinom{a+b-4}{a-2}+1$ 個以上の点の中には、長さ $a$ のカップか、長さ $b$ のキャップがある。

$a+b$ についての帰納法

方針:$a+b$ についての数学的帰納法で示す(数学的帰納法と整列性)。長さ $a-1$ のカップの「最後の点」になれる点を集め、その集まりの中のキャップと、そこで終わるカップをつなぐ(図 4)。
段 1($a=2$ または $b=2$)。$a=2$ なら $\dbinom{b-2}0+1=2$、$b=2$ なら $\dbinom{a-2}{a-2}+1=2$ である。2 点あれば、その 2 点が長さ $2$ のカップであり、キャップでもある。
段 2(点の数)。$a,b\ge3$ とし、$a+b$ がより小さい場合は正しいと仮定する。二項係数の漸化式(場合の数の数え方の体系)
$$ \binom{a+b-4}{a-2}=\binom{a+b-5}{a-3}+\binom{a+b-5}{a-2} $$
を使う。点の集まり $S$ が $\dbinom{a+b-4}{a-2}+1$ 個以上の点をもち、長さ $a$ のカップも長さ $b$ のキャップもないと仮定して、矛盾を導く。
段 3(最後の点の集まり $E$)。$S$ の点のうち、$S$ の中の長さ $a-1$ のカップの最後の点($x$ 座標が最大の点)になっているものの集まりを $E$ とする。$S$ から $E$ を除いた集まりには、長さ $a-1$ のカップがない(あれば、その最後の点は $E$ に入るはずである)。長さ $b$ のキャップもない。帰納法の仮定($a-1$ と $b$ の場合)により、$E$ を除いた集まりの点は $\dbinom{a+b-5}{a-3}$ 個以下である。したがって
$$ E\text{ の点の数}\ \ge\ \binom{a+b-4}{a-2}+1-\binom{a+b-5}{a-3}=\binom{a+b-5}{a-2}+1 $$
である。
段 4($E$ の中のキャップ)。$E$ には長さ $a$ のカップがない($S$ にないから)。帰納法の仮定($a$ と $b-1$ の場合)により、$E$ には長さ $b-1$ のキャップ $d_1,d_2,\dots,d_{b-1}$ がある。$d_1\in E$ なので、$S$ の中に $d_1$ で終わる長さ $a-1$ のカップ $c_1,\dots,c_{a-2},d_1$ がある。
段 5(つなぐ)。$c_{a-2}$ と $d_1$ を結ぶ傾きを $t$、$d_1$ と $d_2$ を結ぶ傾きを $u$ とする。3 点 $c_{a-2},d_1,d_2$ は一直線上にないので $t\ne u$ である。$t< u$ なら、カップ $c_1,\dots,c_{a-2},d_1$ の後に $d_2$ をつなげた列は、傾きが増え続けるので長さ $a$ のカップになる。$t>u$ なら、$c_{a-2}$ の後にキャップ $d_1,\dots,d_{b-1}$ をつなげた列は、傾きが減り続けるので長さ $b$ のキャップになる。どちらも仮定に反する。$\square$

d1 にあたる点 p で終わるカップ(青)と p から始まるキャップ(赤)。p の前後の傾きを比べると、カップかキャップのどちらかが 1 点長くなる。この図では前の傾きの方が小さいので、カップが右へ 1 点延びる d1 にあたる点 p で終わるカップ(青)と p から始まるキャップ(赤)。p の前後の傾きを比べると、カップかキャップのどちらかが 1 点長くなる。この図では前の傾きの方が小さいので、カップが右へ 1 点延びる

カップかキャップを選ぶ

座標軸を選び直して、どの 2 点も $x$ 座標が異なるようにする。lem-esz-cupcap で $a=b=n$ とすると、$\dbinom{2n-4}{n-2}+1$ 個以上の点の中には長さ $n$ のカップか長さ $n$ のキャップがある。lem-esz-cup-convex により、その $n$ 点は凸の位置にある。$\square$

補題の数を表にする

$g(a,b)=\dbinom{a+b-4}{a-2}$ とおくと、lem-esz-cupcap は「$g(a,b)+1$ 点あれば長さ $a$ のカップか長さ $b$ のキャップがある」といっている。段 2 の漸化式は $g(a,b)=g(a-1,b)+g(a,b-1)$ で、表にすると Pascal の三角形を斜めに見たものになる。

$b=2$$b=3$$b=4$$b=5$$b=6$
$a=2$$1$$1$$1$$1$$1$
$a=3$$1$$2$$3$$4$$5$
$a=4$$1$$3$$6$$10$$15$
$a=5$$1$$4$$10$$20$$35$

たとえば $g(4,4)=g(3,4)+g(4,3)=3+3=6$ で、7 点あれば長さ $4$ のカップか長さ $4$ のキャップがある。ex-esz-cupcap の 6 点には長さ $4$ のカップもキャップもないので、$7$ を $6$ に減らすことはできない。ただし、凸四角形だけが目当てなら、thm-esz-five により 5 点で足りる。カップ・キャップの補題の数は、凸多角形に必要な点の数よりも大きくなることがある。

凸 $n$ 角形を必ず含むのに必要な点の数について、分かっていることを並べる。

$n$$3$$4$$5$$6$$7$
thm-esz-main で十分な点の数 $\binom{2n-4}{n-2}+1$$3$$7$$21$$71$$253$
必ず凸 $n$ 角形を含む最小の点の数$3$$5$$9$$17$分かっていない
$2^{n-2}+1$$3$$5$$9$$17$$33$

$n=3$ は 3 点が三角形になること、$n=4$ は thm-esz-five と ex-esz-cx-four による。$n=5$ の $9$ は ES35 が E. Makai の結果として述べているもので、$n=6$ の $17$ は 2006 年に示された(Wei26)。どちらもこの記事では証明しない。$n=5$ で $8$ 点では足りないことは ex-esz-cx-eight で確かめる。

例と反例

thm-esz-five と thm-esz-main の条件を外す。

外す条件反例成り立たなくなること
点の数が $5$三角形の 3 頂点と内部の 1 点凸の位置にある 4 点がある
どの 3 点も一直線上にない$(0,0),(1,0),(2,0),(1,1),(1,2)$5 点の中に凸の位置にある 4 点がある
凸五角形を探すときの点の数($9$ 点)凸五角形を含まない 8 点凸の位置にある 5 点がある
三角形の 3 頂点と内部の 1 点。4 点は凸の位置にない 三角形の 3 頂点と内部の 1 点。4 点は凸の位置にない
横に 3 点、縦に 3 点が一直線上に並ぶ 5 点。どの 4 点も凸の位置にない 横に 3 点、縦に 3 点が一直線上に並ぶ 5 点。どの 4 点も凸の位置にない
反例:4 点では足りない

$(0,0)$、$(4,0)$、$(0,4)$、$(1,1)$ は一般の位置にある。$(1,1)$ は、直線 $x=0$ の右、直線 $y=0$ の上、直線 $x+y=4$ の下($1+1<4$)にあるので、三角形 $(0,0),(4,0),(0,4)$ の内部にある。lem-esz-four により、この 4 点は凸の位置にない。4 点しかないので、凸の位置にある 4 点は選べない。thm-esz-five の「5 点」を「4 点」にすると成り立たない。

反例:3 点が一直線上にあってもよいとすると

5 点 $(0,0)$、$(1,0)$、$(2,0)$、$(1,1)$、$(1,2)$ では、$(0,0),(1,0),(2,0)$ が直線 $y=0$ の上に、$(1,0),(1,1),(1,2)$ が直線 $x=1$ の上に並ぶ。4 点の選び方 5 通りのうち、$(1,0)$ を除く 1 通り $\{(0,0),(2,0),(1,1),(1,2)\}$ は一般の位置にあり、$(1,1)$ が三角形 $(0,0),(2,0),(1,2)$ の内部にある(直線 $y=0$ の上、直線 $y=2x$ の下、直線 $y=-2x+4$ の下)ので凸の位置にない。
残りの 4 通りは、どれも一直線上の 3 点 $P,M,R$($M$ が真ん中)を含む。4 点をどう並べても $M$ は 2 点と隣り合い、その少なくとも一方は $P$ か $R$ である。たとえば $M$ と $P$ が隣り合うと、直線 $MP$ の上に $R$ があり、「残りの点がすべて直線の同じ側にある」ことが成り立たない。よって、この 5 点の中に凸の位置にある 4 点はなく、thm-esz-five は「一般の位置」を外すと成り立たない。

反例:凸五角形を含まない 8 点

8 点
$$ (4,2),\ (5,10),\ (9,20),\ (10,6),\ (11,4),\ (16,5),\ (18,2),\ (20,0) $$
は一般の位置にあり($\binom83=56$ 通りの 3 点の組を確かめた)、この中の 5 点を $\binom85=56$ 通りすべて調べると、どの 5 点も凸の位置にない(計算機による有限の計算)。一方、凸の位置にある 4 点の組は 34 組ある。凸五角形を必ず含むには 8 点では足りない(図 7)。

凸の位置にある 5 点を含まない 8 点。4 点なら凸の位置にある組が 34 組ある 凸の位置にある 5 点を含まない 8 点。4 点なら凸の位置にある組が 34 組ある

大学数学で見る:Ramsey の定理と未解決の値

thm-esz-main は、「十分大きな構造の中には、必ず規則正しい部分構造がある」という Ramsey 理論の代表的な定理である(Ramseyの定理)。ES35 は 2 つの証明を与えていて、1 つ目は Ramsey の定理を使い、2 つ目がこの記事のカップとキャップの証明である。

Ramsey の定理による証明の考え方と、必要な点の数を開く

ES35 の 1 つ目の証明は、次の 2 つを組み合わせる。(a) $n$ 点が凸の位置にあることは、その中のどの 4 点も凸の位置にあることと同じである(ES35 は帰納法で示せると述べている。この記事では証明しない)。(b) 点に番号をつけ、4 点の組を「凸の位置にある組」と「ない組」に分ける。thm-esz-five により、どの 5 点の中にも「凸の位置にある組」がある。点が十分多ければ、Ramsey の定理により、ある $n$ 点のどの 4 点の組も同じ種類になる。すべて「ない組」ではありえない(その中の 5 点に「ある組」があるから)ので、すべて「ある組」で、(a) により $n$ 点は凸の位置にある。この証明は必要な点の数の見積もりがずっと大きくなる。

必ず凸 $n$ 角形を含む最小の点の数について、ES35 は $3=2^1+1$、$5=2^2+1$、$9=2^3+1$ となっていることから、一般に $2^{n-2}+1$ であろうと予想した。$2^{n-2}$ 点で凸 $n$ 角形を含まない配置があることは Erdős と Szekeres が 1961 年に示し、$n=6$ の値 $17$ は 2006 年に示された。$n\ge7$ の値は分かっていない(Wei26)。

この記事の問題は、Wei26 では Happy End Problem(ハッピーエンド問題)の名で扱われている。

演習

証明の手順で凸四角形を探す

5 点 $(0,0)$、$(9,1)$、$(5,8)$、$(4,3)$、$(6,2)$ について、thm-esz-five の証明の手順で、凸の位置にある 4 点を見つけよ。

解答を開く

左端の点は $A=(0,0)$ である。$A$ から見た傾きは $(9,1)$ が $\frac19$、$(6,2)$ が $\frac13$、$(4,3)$ が $\frac34$、$(5,8)$ が $\frac85$ なので、$B_1=(9,1)$、$B_2=(6,2)$、$B_3=(4,3)$、$B_4=(5,8)$ である。

三角形 $T=AB_1B_4$ の 3 辺を含む直線は $y=\frac x9$、$y=\frac85x$、$7x+4y=67$ である。$B_2$ は $2>\frac69$、$2<\frac{48}5$、$42+8=50<67$ で、$B_3$ は $3>\frac49$、$3<\frac{32}5$、$28+12=40<67$ なので、どちらも $T$ の内部にある。段 3 の場合である。

直線 $B_2B_3$ は $x+2y=10$ で、$A$ は $0<10$、$B_1$ は $9+2=11>10$、$B_4$ は $5+16=21>10$ である。$B_1$ と $B_4$ が同じ側にあるので、$B_1,B_4,B_2,B_3$ が凸の位置にある。たとえば $(9,1)\to(5,8)\to(4,3)\to(6,2)$ の順に結ぶと凸四角形になる。

さらに先へ

  • 数列の版(相異なる $n^2+1$ 個の実数の列には、長さ $n+1$ の増加部分列か減少部分列がある)は、鳩の巣原理 と Dilworthの定理 で証明されている。カップ・キャップの補題は、「傾きの列」について同じ種類のことをいっている。
  • 点と直線の組合せの問題としては、全部が 1 本の直線の上に並んではいない有限個の点には、そのうちちょうど 2 点だけを通る直線があるという Sylvester–Gallaiの定理 もある。
  • 平面の点の集まりについての組合せ幾何の話題には、点どうしの距離の最大(直径)と、全体を覆う円の半径を比べる Jungの定理 もある。

関連項目

参考文献

[1]
Paul Erdős and George Szekeres, A combinatorial problem in geometry, Compositio Mathematica, 1935, pp. 463–470(p. 463:5 点の中の凸四角形と E. Klein の証明、E. Makai による 9 点、p. 464:2^{n-2}+1 の予想と Ramsey の定理による第 1 の証明、pp. 467–468:第 2 の証明の始まりと数列の単調部分列の定理、pp. 469–470:カップ・キャップにあたる配置(論文では concave・convex)の漸化式と上からの評価)。http://www.numdam.org/item/CM_1935__2__463_0/

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