九点円

同義語:nine-point circle

概要

九点円(nine-point circle)とは、三角形の 3 辺の中点、3 頂点から向かい合う辺に下ろした垂線の足、垂心と 3 頂点を結ぶ線分の中点の 9 点をすべて通る円である。中心は外心 $O$ と垂心 $H$ を結ぶ線分の中点 $N$ で、半径は外接円の半径 $R$ の半分である。外心を原点にとると $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ から中心は $\frac{\vec a+\vec b+\vec c}2$ となり、垂線の足は「直径に対する円周角は直角」によって円に乗る。九点円は外接円を、重心を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で移しても、垂心を中心とする比 $\frac12$ の相似拡大で移しても得られる。中心 $N$ は Euler 線の上にあり、$OG:GN:NH=2:1:3$ である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: Euler線, 三角形の垂心, 円周角の定理(高校数学), 位置ベクトルと内分点

高校での出発点:9 つの点が 1 つの円に乗る

三角形 $ABC$ の垂心を $H$ とする。次の 3 種類、合わせて 9 個の点を考える。

  • 3 辺の中点 $M_a,M_b,M_c$
  • 3 頂点から向かい合う辺(を含む直線)に下ろした垂線の足 $D_a,D_b,D_c$
  • 垂心と 3 頂点を結ぶ線分 $AH$、$BH$、$CH$ の中点 $E_a,E_b,E_c$
    この 9 点は、いつも 1 つの円の上にある。この円を 九点円 という。まず座標で確かめる。この記事では、点 $A,B,C,\dots$ の位置ベクトルを $\vec a,\vec b,\vec c,\dots$ と書き、座標平面では位置ベクトルも同じ成分で書く。
3 辺 13, 14, 15 の三角形の 9 点

$A(5,12)$、$B(0,0)$、$C(14,0)$ とする。外心は $O\bigl(7,\frac{33}8\bigr)$、外接円の半径は $R=\frac{65}8$、垂心は $H\bigl(5,\frac{15}4\bigr)$ である(三角形の五心)。$N$ を $OH$ の中点とすると $N=\bigl(6,\frac{63}{16}\bigr)$ である。

  1. 辺の中点:$M_a(7,0)$、$M_b\bigl(\frac{19}2,6\bigr)$、$M_c\bigl(\frac52,6\bigr)$。
  2. 垂線の足:$A$ からの足は $D_a(5,0)$。$B$ から直線 $CA$ への足は $D_b\bigl(\frac{224}{25},\frac{168}{25}\bigr)$、$C$ から直線 $AB$ への足は $D_c\bigl(\frac{350}{169},\frac{840}{169}\bigr)$ である(求め方は ex-npc-feet)。
  3. $AH$ などの中点:$E_a=\frac{A+H}2=\bigl(5,\frac{63}8\bigr)$、$E_b=\frac{B+H}2=\bigl(\frac52,\frac{15}8\bigr)$、$E_c=\frac{C+H}2=\bigl(\frac{19}2,\frac{15}8\bigr)$。
    $N$ からの距離の 2 乗を 3 つ計算する(分母を $256$ にそろえる)。
    $$ NM_a^2=1^2+\Bigl(\frac{63}{16}\Bigr)^2=\frac{256+3969}{256}=\frac{4225}{256},\qquad ND_a^2=1^2+\Bigl(\frac{63}{16}\Bigr)^2=\frac{4225}{256}, $$
    $$ NE_a^2=1^2+\Bigl(\frac{63}8-\frac{63}{16}\Bigr)^2=1+\Bigl(\frac{63}{16}\Bigr)^2=\frac{4225}{256}. $$
    どれも $\bigl(\frac{65}{16}\bigr)^2$ で、$\frac{65}{16}=\frac12\cdot\frac{65}8=\frac R2$ である。残りの 6 点も同じ値になる(ex-npc-check)。
垂線の足を求める

ex-npc-first の三角形で、$B$ から直線 $CA$ への足 $D_b$ を求める。直線 $CA$ の点は $\vec c+t(\vec a-\vec c)=(14-9t,\ 12t)$ と書ける。$\overrightarrow{BD_b}\perp\overrightarrow{CA}$ から
$$ (14-9t)\cdot(-9)+12t\cdot12=0,\qquad -126+81t+144t=0,\qquad t=\frac{126}{225}=\frac{14}{25} $$
で、$D_b=\bigl(14-\frac{126}{25},\ \frac{168}{25}\bigr)=\bigl(\frac{224}{25},\frac{168}{25}\bigr)$ である。同じく直線 $AB$ の点 $(5s,12s)$ で $\overrightarrow{CD_c}\perp\overrightarrow{AB}$ とすると、$(5s-14)\cdot5+12s\cdot12=0$ から $s=\frac{70}{169}$、$D_c=\bigl(\frac{350}{169},\frac{840}{169}\bigr)$ である。

3 辺 13, 14, 15 の三角形の九点円(紫)。緑の四角は辺の中点 !FORMULA[54][-1320758576][0]、青の三角は垂線の足 !FORMULA[55][-988194997][0]、赤の丸は垂心 !FORMULA[56][36864][0] と頂点を結ぶ線分の中点 !FORMULA[57][883727848][0]。九点円の中心 !FORMULA[58][37050][0] は外心 !FORMULA[59][37081][0] と垂心 !FORMULA[60][36864][0] の中点で、Euler 線(破線)の上にあることを見る図。灰色の円は外接円。 3 辺 13, 14, 15 の三角形の九点円(紫)。緑の四角は辺の中点 $M_a,M_b,M_c$、青の三角は垂線の足 $D_a,D_b,D_c$、赤の丸は垂心 $H$ と頂点を結ぶ線分の中点 $E_a,E_b,E_c$。九点円の中心 $N$ は外心 $O$ と垂心 $H$ の中点で、Euler 線(破線)の上にあることを見る図。灰色の円は外接円。
図1 の九点円は、外接円のちょうど半分の大きさに見える。次の問いが出てくる。

  1. なぜ 9 点が 1 つの円に乗るのか。中心と半径は何か。→ thm-npc-main
  2. 外接円と九点円は、どんな変換で移り合うのか。→ prop-npc-two-homotheties
  3. 垂線の足が円に乗るのはなぜか。→ lem-npc-diameter
  4. 三角形 $HBC$ などの九点円はどうなるか。→ prop-npc-orthocentric
    高校の計算この記事での見方ボックス
    中点連結定理で中点三角形を作る重心を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大で外接円が九点円に移るthm-npc-main
    $AH$ の中点をとる垂心を中心とする比 $\frac12$ の相似拡大で外接円が九点円に移るthm-npc-main
    直径に対する円周角は直角$(\vec x-\vec p)\cdot(\vec x-\vec q)=0$ は直径 $PQ$ の円lem-npc-diameter
    外心を原点にとると $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$中心 $\vec n=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}2$、半径 $\frac R2$thm-npc-main

9 つの点と、直径の上の円

九点円の 9 点

三角形 $ABC$ の垂心を $H$ とする。

  1. 辺 $BC$、$CA$、$AB$ の中点を $M_a$、$M_b$、$M_c$ とする。
  2. $A$ から直線 $BC$ に下ろした垂線の足を $D_a$ とし、$D_b$、$D_c$ も同じように定める。
  3. 線分 $AH$、$BH$、$CH$ の中点を $E_a$、$E_b$、$E_c$ とする($H=A$ のときは $E_a=A$)。
    $E_a,E_b,E_c$ を Euler 点 と呼ぶことがある。

垂線の足が円に乗ることを示すために、「直径に対する円周角は直角」をベクトルで書いた形を用意する。

直径の両端から直角に見える点

異なる 2 点 $P,Q$ に対し、線分 $PQ$ の中点を $K$ とする。平面のどの点 $X$ についても
$$ (\vec x-\vec p)\cdot(\vec x-\vec q)=|\vec x-\vec k|^2-\frac{|\vec p-\vec q|^2}4 $$
が成り立つ。とくに、$(\vec x-\vec p)\cdot(\vec x-\vec q)=0$ であることと、$X$ が $PQ$ を直径とする円(中心 $K$、半径 $\frac12PQ$)の上にあることは同値である。

中点からのずれで書く

方針:$\vec x-\vec p$ と $\vec x-\vec q$ を、中点からのずれ $\vec u=\vec x-\vec k$ と半分の差 $\vec w=\frac{\vec q-\vec p}2$ で書き、和と差の積の公式を使う。
段 1。$\vec k=\frac{\vec p+\vec q}2$ なので、$\vec p=\vec k-\vec w$、$\vec q=\vec k+\vec w$ である。よって $\vec x-\vec p=\vec u+\vec w$、$\vec x-\vec q=\vec u-\vec w$ である。
段 2。内積の分配法則で展開すると、$\vec u\cdot\vec w$ と $-\vec w\cdot\vec u$ が打ち消し合い
$$ (\vec u+\vec w)\cdot(\vec u-\vec w)=|\vec u|^2-|\vec w|^2 $$
となる。$|\vec u|^2=|\vec x-\vec k|^2$、$|\vec w|^2=\frac{|\vec q-\vec p|^2}4$ なので、等式が成り立つ。
段 3。左辺が $0$ であることは $|\vec x-\vec k|^2=\frac{|\vec p-\vec q|^2}4$、つまり $XK=\frac12PQ$ と同値である。$\square$

$X\ne P$、$X\ne Q$ のとき、$(\vec x-\vec p)\cdot(\vec x-\vec q)=0$ は $\angle PXQ=90^\circ$ を意味する。したがってこの補題は、「$PQ$ を直径とする円の上の点から $P,Q$ を見ると直角」とその逆(円周角の定理(高校数学))をまとめた形である。$X=P$ や $X=Q$ でも式は成り立ち、$P,Q$ 自身も円の上にある。

補題を数で確かめる

$P(0,0)$、$Q(4,0)$ とすると、中心 $K(2,0)$、半径 $2$ の円である。

  1. $X(2,2)$:$(\vec x-\vec p)\cdot(\vec x-\vec q)=(2,2)\cdot(-2,2)=-4+4=0$ で、$XK=2$。円の上にある。
  2. $X(1,1)$:$(1,1)\cdot(-3,1)=-3+1=-2$、右辺は $|(-1,1)|^2-4=2-4=-2$ で一致する。$-2<0$ で、$X$ は円の内側にある。

主定理:九点円

九点円の定理

三角形 $ABC$ の外心を $O$、外接円の半径を $R$、垂心を $H$ とし、線分 $OH$ の中点を $N$ とする。このとき def-npc-points の 9 点 $M_a,M_b,M_c,D_a,D_b,D_c,E_a,E_b,E_c$ は、すべて中心 $N$・半径 $\frac R2$ の円の上にある。さらに、線分 $E_aM_a$、$E_bM_b$、$E_cM_c$ はこの円の直径である。

この円を三角形 $ABC$ の 九点円 といい、$N$ を 九点円の中心 という。

外心を原点にとって距離を計算する

方針:外心 $O$ を原点にとると $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ なので、中点と Euler 点は $N$ からの距離がすぐ計算できる。垂線の足は、$E_aM_a$ が直径であることと lem-npc-diameter で円に乗せる。
段 1(準備)。$O$ を原点にとる。$|\vec a|=|\vec b|=|\vec c|=R$ で、三角形の垂心(Euler線 でも示した)により $\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$ である。$N$ は $OH$ の中点なので $\vec n=\frac{\vec h}2=\frac{\vec a+\vec b+\vec c}2$ である。
段 2(辺の中点)。$\vec m_a=\frac{\vec b+\vec c}2$ なので
$$ \vec m_a-\vec n=\frac{\vec b+\vec c}2-\frac{\vec a+\vec b+\vec c}2=-\frac{\vec a}2 $$
で、$NM_a=\frac{|\vec a|}2=\frac R2$ である。文字を入れかえて $NM_b=NM_c=\frac R2$ である。
段 3(Euler 点)。$\vec e_a=\frac{\vec a+\vec h}2$ なので
$$ \vec e_a-\vec n=\frac{\vec a+\vec h}2-\frac{\vec h}2=\frac{\vec a}2 $$
で、$NE_a=\frac R2$ である。同じく $NE_b=NE_c=\frac R2$ である。
段 4(直径)。段 2・段 3 から $\vec e_a-\vec n=-(\vec m_a-\vec n)$ なので、$N$ は線分 $E_aM_a$ の中点である。$E_a$ と $M_a$ はどちらも中心 $N$・半径 $\frac R2$ の円(これを $\Gamma_N$ と書く)の上にあるので、$E_aM_a$ は $\Gamma_N$ の直径である。$E_aM_a=|\vec a|=R>0$ なので $E_a\ne M_a$ である。$E_bM_b$、$E_cM_c$ も同じである。
段 5(垂線の足)。$A$ からの垂線を $\ell_A$ とする。$H$ は $\ell_A$ の上にあり $A$ も $\ell_A$ の上にあるので、その中点 $E_a$ も $\ell_A$ の上にある。$D_a$ は $\ell_A$ と直線 $BC$ の交点である。したがって $\vec d_a-\vec e_a$ は $\ell_A$ の向きのベクトル(または $\vec0$)であり、$M_a$ も $D_a$ も直線 $BC$ の上にあるので $\vec d_a-\vec m_a$ は $BC$ の向きのベクトル(または $\vec0$)である。$\ell_A\perp BC$ なので
$$ (\vec d_a-\vec e_a)\cdot(\vec d_a-\vec m_a)=0 $$
である。lem-npc-diameter により、$D_a$ は $E_aM_a$ を直径とする円、つまり段 4 の $\Gamma_N$ の上にある。$D_b$、$D_c$ も同じである。$\square$

残りの 6 点を確かめる

ex-npc-first の三角形で、$N=\bigl(6,\frac{63}{16}\bigr)$、$\bigl(\frac R2\bigr)^2=\frac{4225}{256}$ である。

点座標$N$ からのずれ距離の 2 乗
$M_b$$\bigl(\frac{19}2,6\bigr)$$\bigl(\frac72,\frac{33}{16}\bigr)$$\frac{3136+1089}{256}=\frac{4225}{256}$
$M_c$$\bigl(\frac52,6\bigr)$$\bigl(-\frac72,\frac{33}{16}\bigr)$$\frac{4225}{256}$
$E_b$$\bigl(\frac52,\frac{15}8\bigr)$$\bigl(-\frac72,-\frac{33}{16}\bigr)$$\frac{4225}{256}$
$E_c$$\bigl(\frac{19}2,\frac{15}8\bigr)$$\bigl(\frac72,-\frac{33}{16}\bigr)$$\frac{4225}{256}$
$D_b$$\bigl(\frac{224}{25},\frac{168}{25}\bigr)$$\bigl(\frac{74}{25},\frac{1113}{400}\bigr)$$\frac{1184^2+1113^2}{400^2}=\frac{2640625}{160000}=\frac{4225}{256}$
$D_c$$\bigl(\frac{350}{169},\frac{840}{169}\bigr)$$\bigl(-\frac{664}{169},\frac{2793}{2704}\bigr)$$\frac{4225}{256}$

$E_b$ と $M_b$ の $N$ からのずれは符号が反対で、$E_bM_b$ が直径であることが見える($E_c$ と $M_c$ も同じ)。

外接円と九点円の関係は、Euler線 で使った相似拡大で見ると見通しがよい。

外接円を九点円に移す 2 つの相似拡大

三角形 $ABC$ の外接円を $\Gamma$、九点円を $\Gamma_N$、重心を $G$ とする。

  1. 重心を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大 $\varphi_{G,-1/2}$ は、$\Gamma$ を $\Gamma_N$ に移し、$A,B,C$ を $M_a,M_b,M_c$ に移す。
  2. 垂心を中心とする比 $\frac12$ の相似拡大 $\varphi_{H,1/2}$ は、$\Gamma$ を $\Gamma_N$ に移し、$A,B,C$ を $E_a,E_b,E_c$ に移す。
  3. $\varphi_{H,2}$ は $\Gamma_N$ を $\Gamma$ に移す。とくに、$H$ を直線 $BC$ について折り返した点 $2\vec d_a-\vec h$ と、$H$ を $M_a$ について点対称に移した点 $2\vec m_a-\vec h$ は、どちらも外接円 $\Gamma$ の上にある。後者は $A$ と外接円の中心について対称な点 $A^*$($\vec a^{\,*}=2\vec o-\vec a$)である。
中心と半径の像を調べる

方針:相似拡大は中心 $C$・半径 $r$ の円を、中心 $C$ の像・半径 $|k|r$ の円に移す(Euler線 の「相似拡大の性質」)。中心 $O$ の像が $N$ になることを確かめればよい。外心 $O$ を原点にとり、$\vec h=\vec a+\vec b+\vec c$、$\vec g=\frac{\vec h}3$、$\vec n=\frac{\vec h}2$ を使う。
段 1(1)。$\varphi_{G,-1/2}$ による $O$ の像は $\vec g-\frac12(\vec0-\vec g)=\frac32\vec g=\frac{\vec h}2=\vec n$ で、半径は $\frac12R$ である。よって $\Gamma$ の像は $\Gamma_N$ である。$A$ が $M_a$ に移ることは Euler線 で示した。
段 2(2)。$\varphi_{H,1/2}$ による $O$ の像は $\vec h+\frac12(\vec0-\vec h)=\frac{\vec h}2=\vec n$ で、半径は $\frac12R$ である。$A$ の像は $\vec h+\frac12(\vec a-\vec h)=\frac{\vec a+\vec h}2=\vec e_a$ である。
段 3(3 の前半)。$\varphi_{H,2}$ は $\varphi_{H,1/2}$ の逆の変換なので、段 2 から $\Gamma_N$ を $\Gamma$ に移す。$D_a$ と $M_a$ は $\Gamma_N$ の上にある(thm-npc-main)ので、その像 $\vec h+2(\vec d_a-\vec h)=2\vec d_a-\vec h$ と $2\vec m_a-\vec h$ は $\Gamma$ の上にある。
段 4(折り返し)。$H$ は $A$ からの垂線の上にあり、この垂線は直線 $BC$ と $D_a$ で垂直に交わる。したがって $H$ を直線 $BC$ について折り返した点は、$D_a$ について $H$ と点対称な点、つまり $2\vec d_a-\vec h$ である。
段 5($A^*$)。$2\vec m_a-\vec h=(\vec b+\vec c)-(\vec a+\vec b+\vec c)=-\vec a$ で、原点 $O$ について $A$ と対称な点 $A^*$ である。$\square$

prop-npc-two-homotheties の 3 は、「$M_a$ は $H$ と $A^*$ を結ぶ線分の中点である」と言いかえられる。$AA^*$ は外接円の直径である。
外接円(灰色)が 2 通りの相似拡大で九点円(紫)に移る様子。緑の破線の矢印は重心 !FORMULA[330][36833][0] を中心とする比 !FORMULA[331][-1693432542][0] の相似拡大(頂点 → 辺の中点)、赤の矢印は垂心 !FORMULA[332][36864][0] を中心とする比 !FORMULA[333][173307325][0] の相似拡大(頂点 → !FORMULA[334][1137209][0] などの中点)を表す図。 外接円(灰色)が 2 通りの相似拡大で九点円(紫)に移る様子。緑の破線の矢印は重心 $G$ を中心とする比 $-\frac12$ の相似拡大(頂点 → 辺の中点)、赤の矢印は垂心 $H$ を中心とする比 $\frac12$ の相似拡大(頂点 → $AH$ などの中点)を表す図。

外接円の上の 2 つの点を確かめる

ex-npc-first の三角形で、$O\bigl(7,\frac{33}8\bigr)$、$R^2=\frac{4225}{64}$、$H\bigl(5,\frac{15}4\bigr)$、$D_a(5,0)$、$M_a(7,0)$ である。

  1. $H$ を直線 $BC$($x$ 軸)について折り返すと $\bigl(5,-\frac{15}4\bigr)=2D_a-H$ である。$O$ からのずれは $\bigl(-2,-\frac{63}8\bigr)$ で、距離の 2 乗は $4+\frac{3969}{64}=\frac{4225}{64}=R^2$ である。
  2. $A^*=2O-A=\bigl(9,-\frac{15}4\bigr)$ で、$H$ と $A^*$ の中点は $\bigl(\frac{5+9}2,\ \frac12\bigl(\frac{15}4-\frac{15}4\bigr)\bigr)=(7,0)=M_a$ である。
九点円の中心は Euler 線の上にある

三角形が正三角形でないとき、九点円の中心 $N$ は Euler 線の上にあり、4 点は $O,G,N,H$ の順に並んで
$$ OG:GN:NH=2:1:3 $$
である。正三角形では $O=G=N=H$ である。

外心を原点にして並べる

方針:外心 $O$ を原点にとると、4 点の位置ベクトルはすべて $\vec h$ の実数倍になる。
段 1。$\vec o=\vec0$、$\vec g=\frac13\vec h$、$\vec n=\frac12\vec h$、$\vec h=1\cdot\vec h$ である(Euler線)。
段 2。正三角形でなければ $\vec h\ne\vec0$ である(三角形の五心)。4 点は原点を通り向き $\vec h$ の直線の上にあり、係数 $0<\frac13<\frac12<1$ の順に並ぶ。間隔は $\frac13$、$\frac12-\frac13=\frac16$、$1-\frac12=\frac12$ で、比は $\frac13:\frac16:\frac12=2:1:3$ である。
段 3。正三角形では $\vec h=\vec0$ なので 4 点はすべて原点 $O$ に一致する。$\square$

4 点の並びを確かめる

ex-npc-first の三角形で、$O\bigl(7,\frac{33}8\bigr)$、$G\bigl(\frac{19}3,4\bigr)$、$N\bigl(6,\frac{63}{16}\bigr)$、$H\bigl(5,\frac{15}4\bigr)$ である。$x$ 座標は $7,\ \frac{19}3,\ 6,\ 5$ と減っていき、差は $\frac23,\ \frac13,\ 1$ で、比は $2:1:3$ である。$y$ 座標の差も $\frac18,\ \frac1{16},\ \frac3{16}$ で、同じく $2:1:3$ である。

九点円は、中点三角形 $M_aM_bM_c$ の外接円であり(Euler線 の「中点三角形の心」)、三角形 $E_aE_bE_c$ の外接円でもある。3 つの垂線の足が一直線上にない(直角三角形でない)ときは、三角形 $D_aD_bD_c$(垂足三角形)の外接円でもある。括弧の言いかえの理由は次のとおりである。3 つの足は九点円の上にあり、円と直線の共通の点は 2 個以下なので、3 つが互いに異なれば一直線上にない。$D_b$ は直線 $CA$、$D_c$ は直線 $AB$ の上にあるので、$D_b=D_c$ となるのは 2 つとも $A$ のとき、つまり $\angle A=90^\circ$ のときに限る(ex-npc-right)。$D_c=D_a$、$D_a=D_b$ も同じで、それぞれ $\angle B=90^\circ$、$\angle C=90^\circ$ のときに限る。よって、直角三角形でなければ 3 つの足は一直線上になく、直角三角形では 2 つの足が直角の頂点で重なって三角形ができない。

例と反例

変えたこと・外した仮定崩れる主張ボックス
垂心 $H$ を別の点に替える$PA$ などの中点が辺の中点と同じ円に乗るex-npc-other-point
直角三角形9 点がすべて異なるex-npc-right
正三角形9 点がすべて異なるex-npc-equilateral
鈍角三角形($H$ が外部)崩れない(9 点は同じ円の上)ex-npc-obtuse
反例:垂心の代わりに重心をとる

点 $P$ と頂点を結ぶ線分の中点は、prop-npc-two-homotheties の 2 と同じ理由で、$\Gamma$ を $\varphi_{P,1/2}$ で移した円(中心 $\frac{O+P}2$、半径 $\frac R2$)の上にある。この円が $\Gamma_N$ と一致するのは、中心が一致する $\frac{O+P}2=\frac{O+H}2$、つまり $P=H$ のときに限る。
ex-npc-first の三角形で $P=G\bigl(\frac{19}3,4\bigr)$ とすると、$GA$ の中点は $\bigl(\frac{17}3,8\bigr)$ で、$N$ からのずれ $\bigl(-\frac13,\frac{65}{16}\bigr)$ の長さの 2 乗は $\frac19+\frac{4225}{256}$ となり、$\frac{4225}{256}$ より大きい。この点は九点円の上にない。変えたこと:垂心を重心に替えた。崩れる主張:3 つの中点が辺の中点と同じ円に乗ること。

直角三角形では 9 点が 5 点に重なる

$A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(0,3)$ とする。$\angle A=90^\circ$ で、$H=A$、$O=M_a=\bigl(2,\frac32\bigr)$、$R=\frac52$、$N=\bigl(1,\frac34\bigr)$ である。

  1. 辺の中点:$M_a\bigl(2,\frac32\bigr)$、$M_b\bigl(0,\frac32\bigr)$、$M_c(2,0)$。
  2. 垂線の足:$B$ から直線 $CA$($y$ 軸)への足と、$C$ から直線 $AB$($x$ 軸)への足は、どちらも $A$ である。$A$ から直線 $BC$($3x+4y=12$)への足は $D_a\bigl(\frac{36}{25},\frac{48}{25}\bigr)$ である。
  3. Euler 点:$H=A$ なので $E_a=A$、$E_b=\frac{B+A}2=M_c$、$E_c=\frac{C+A}2=M_b$ である。
    異なる点は $A,\ M_a,\ M_b,\ M_c,\ D_a$ の 5 つである。$N$ からの距離を確かめる:$NA^2=1+\frac9{16}=\frac{25}{16}$、$ND_a^2=\bigl(\frac{11}{25}\bigr)^2+\bigl(\frac{117}{100}\bigr)^2=\frac{1936+13689}{10000}=\frac{15625}{10000}=\frac{25}{16}$ で、半径は $\frac54=\frac R2$ である。thm-npc-main は成り立つが、「9 つの異なる点」ではない。垂足三角形も $A,A,D_a$ で三角形にならない。
正三角形では 9 点が 6 点に重なる

$A(0,\sqrt3)$、$B(-1,0)$、$C(1,0)$ では、$O=H=N=\bigl(0,\frac{\sqrt3}3\bigr)$、$R=\frac2{\sqrt3}$ である。垂線は中線でもあるので、垂線の足は辺の中点と一致する($D_a=M_a$ など)。Euler 点は $E_a=\bigl(0,\frac{2\sqrt3}3\bigr)$、$E_b=\bigl(-\frac12,\frac{\sqrt3}6\bigr)$、$E_c=\bigl(\frac12,\frac{\sqrt3}6\bigr)$ で、異なる点は 6 つである。九点円は中心 $N$・半径 $\frac1{\sqrt3}$ の円で、内接円(中心 $N$、半径 $r=\frac{\sqrt3}3=\frac1{\sqrt3}$)と一致する。

鈍角三角形でも成り立つ

$A(1,2)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$($\angle A$ が鈍角)では、$O\bigl(3,-\frac14\bigr)$、$H\bigl(1,\frac52\bigr)$、$R^2=\frac{145}{16}$ で、$N=\bigl(2,\frac98\bigr)$、$\bigl(\frac R2\bigr)^2=\frac{145}{64}$ である。

  1. $M_a(3,0)$:ずれ $\bigl(1,-\frac98\bigr)$、$1+\frac{81}{64}=\frac{145}{64}$。
  2. $D_a(1,0)$:ずれ $\bigl(-1,-\frac98\bigr)$、$\frac{145}{64}$。
  3. $E_a=\frac{A+H}2=\bigl(1,\frac94\bigr)$:ずれ $\bigl(-1,\frac98\bigr)$、$\frac{145}{64}$。
    垂心は三角形の外にあり、$E_a$ も外にあるが、9 点は同じ円の上にある(図3 の左)。$B$ からの足 $D_b=\bigl(\frac{24}{29},\frac{60}{29}\bigr)$ と $C$ からの足 $D_c=\bigl(\frac65,\frac{12}5\bigr)$ は、辺 $CA$、$AB$ を $A$ の先に延ばした部分にある。

左は鈍角三角形 !FORMULA[485][1361605767][0]、!FORMULA[486][-2046783291][0]、!FORMULA[487][-1153738484][0] の九点円で、垂心 !FORMULA[488][36864][0] が外にあっても 9 点が 1 つの円に乗ることを見る。右は直角三角形 !FORMULA[489][1360680324][0]、!FORMULA[490][-2043089207][0]、!FORMULA[491][-1159276727][0] の九点円で、9 点が 5 点に重なることを見る図(記号は図1 と同じ)。 左は鈍角三角形 $A(1,2)$、$B(0,0)$、$C(6,0)$ の九点円で、垂心 $H$ が外にあっても 9 点が 1 つの円に乗ることを見る。右は直角三角形 $A(0,0)$、$B(4,0)$、$C(0,3)$ の九点円で、9 点が 5 点に重なることを見る図(記号は図1 と同じ)。

大学数学で見る:垂心系の 4 つの三角形と円の族

4 つの三角形が同じ九点円をもつ

三角形の垂心 で見たように、垂心 $H$ が頂点と異なるとき、4 点 $A,B,C,H$ のどれも残りの 3 点でできる三角形の垂心になっている(垂心系)。九点円は、この 4 つの三角形に共通である。

垂心系の九点円

三角形 $ABC$ の垂心 $H$ が $A,B,C$ のどれとも異なるとする。このとき 4 つの三角形 $ABC$、$HBC$、$HCA$、$HAB$ の九点円はすべて同じ円である。したがって、4 つの三角形の外接円の半径はすべて等しい。

共通の 3 点で円を決める

方針:三角形 $HBC$ の九点円が $M_a,M_b,M_c$ を通ることを示す。一直線上にない 3 点を通る円はただ 1 つなので、それは三角形 $ABC$ の九点円と一致する。
段 1($HBC$ の垂心)。三角形の垂心 の垂心系の命題により、三角形 $HBC$ の垂心は $A$ である。
段 2($HBC$ の九点円が通る点)。三角形 $HBC$ の九点円は、その辺の中点と、その垂心 $A$ と頂点を結ぶ線分の中点を通る(thm-npc-main を三角形 $HBC$ に使う)。

  • 辺 $BC$、$CH$、$HB$ の中点は $M_a$、$E_c$、$E_b$ である。
  • 垂心 $A$ と頂点 $H$、$B$、$C$ を結ぶ線分の中点は $E_a$、$M_c$、$M_b$ である。
    とくに、三角形 $HBC$ の九点円は $M_a$、$M_b$、$M_c$ を通る。
    段 3(一致)。$M_a,M_b,M_c$ は中点三角形の頂点で、一直線上にない(中点三角形の辺は $ABC$ の辺に平行で長さが半分なので、$\overrightarrow{M_aM_b}$ と $\overrightarrow{M_aM_c}$ は平行でない)。一直線上にない 3 点を通る円はただ 1 つ(その 3 点の三角形の外接円)である(三角形の外心)。三角形 $ABC$ の九点円も $M_a,M_b,M_c$ を通るので、2 つの九点円は一致する。$HCA$、$HAB$ も同じである。
    段 4(外接円の半径)。thm-npc-main により、どの三角形でも九点円の半径は外接円の半径の半分である。4 つの三角形の九点円は同じ円なので、外接円の半径はすべて同じ $R$ である。$\square$
三角形 $HBC$ の外接円

ex-npc-first の三角形で、$H\bigl(5,\frac{15}4\bigr)$、$B(0,0)$、$C(14,0)$ の三角形の外心を求める。$BC$ の垂直二等分線 $x=7$ の上に $(7,q)$ をとり、$49+q^2=4+\bigl(q-\frac{15}4\bigr)^2=q^2-\frac{15}2q+\frac{289}{16}$ から $\frac{15}2q=\frac{289}{16}-49=-\frac{495}{16}$、$q=-\frac{33}8$ である。外心は $\bigl(7,-\frac{33}8\bigr)$ で、半径の 2 乗は $49+\frac{1089}{64}=\frac{4225}{64}=R^2$ である。三角形 $HBC$ の外接円は、三角形 $ABC$ の外接円を直線 $BC$ について折り返した円になっている。

内接円・傍接円との関係

九点円には、内接円と 3 つの傍接円のすべてに接するという性質がある(Feuerbach の定理。Feuerbachの定理、CG67 §5.6)。本記事では証明しないが、数で確かめられる。

Feuerbach の定理を数で確かめる

ex-npc-first の三角形では、九点円は中心 $N\bigl(6,\frac{63}{16}\bigr)$・半径 $\rho=\frac{65}{16}$ である。内心は $I(6,4)$、内接円の半径は $r=4$、傍心は $I_A(8,-12)$、$r_a=12$ である(三角形の内心と傍心)。

  1. $NI=\bigl|4-\frac{63}{16}\bigr|=\frac1{16}$ で、$\rho-r=\frac{65}{16}-\frac{64}{16}=\frac1{16}$ と等しい。2 つの円の中心間の距離が半径の差に等しいので、内接円は九点円に内側から接する。
  2. $NI_A^2=2^2+\bigl(\frac{255}{16}\bigr)^2=\frac{1024+65025}{256}=\frac{66049}{256}$ で、$NI_A=\frac{257}{16}$ である。$\rho+r_a=\frac{65}{16}+\frac{192}{16}=\frac{257}{16}$ と等しいので、傍接円は九点円に外側から接する。
    Feuerbach の定理の見通しのよい証明は、円に関する反転(円に関する反転)を使う。

円の族として見る

prop-npc-two-homotheties により、九点円は外接円を $\varphi_{G,-1/2}$ で移しても、$\varphi_{H,1/2}$ で移しても得られる。2 つの相似拡大を続けた $\varphi_{H,2}\circ\varphi_{G,-1/2}$ は比 $\bigl(-\frac12\bigr)\cdot2=-1$ の相似拡大、つまり点対称であり、外心 $O$ を原点にとると $\vec x\mapsto-\vec x$ である(prop-npc-two-homotheties の段 5 と同じ計算)。外接円は $O$ に関して点対称な図形なので、この合成で自分自身に移る。
このように、「ある図形を相似拡大の群で動かした像の集まり」を考えると、別々に見えた点(辺の中点、$AH$ の中点、外接円の上の $A^*$ や $H$ の折り返し)が、1 つの円とその像の関係としてまとまる。相似拡大と平行移動の合成が群をなすことは Euler線 の「大学数学で見る」で示した。平面の円の全体を、相似変換や反転で移り合うものとして調べるのが、Möbius 幾何などの大学の幾何学である(円に関する反転、相似変換と相似の中心)。

さらに先へ

  • Feuerbach の定理:内接円は九点円に内側から接し、3 つの傍接円は九点円に外側から接する(Feuerbachの定理)。一般の三角形での証明は、円に関する反転を使うと見通しがよい。
  • 九点円の中心 $N$ は、Kimberling の三角形の中心の百科事典で $X(5)$ と番号付けされている(三角形の五心、Wei26)。
  • prop-npc-orthocentric により、三角形 $HBC$、$HCA$、$HAB$ の外接円は同じ半径 $R$ をもち、どれも $H$ を通り、2 つずつの $H$ 以外の交点は $C$、$A$、$B$ である。「同じ半径の 3 つの円が 1 点を通るとき、2 つずつの残りの交点 3 つを通る円も同じ半径をもつ」という Johnson の定理 は、この状況を一般にしたものである(Johnsonの定理。本記事では扱わない)。

関連項目

参考文献

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