well-definedness(well-defined)とは、対象の表し方(分数、剰余類の代表元、基底、場合分けなど)を1つ選んで値を決める規則について、同じ対象のどの表し方を選んでも値が同じになること、すなわちその規則が well-defined であることをいう。全射 $\pi\colon S\to X$ と $g\colon S\to Y$ で言えば、$\pi(s)=\pi(s')$ なら $g(s)=g(s')$ となることで、このとき $f\circ\pi=g$ となる写像 $f\colon X\to Y$ がただ1つ定まる。確かめるには、代表元を1つずつ取り替えれば足り、場合分けは重なりで値が一致すればよく、表し方どうしがちょうど群の作用で移り合うなら群で不変なことを示せばよい。線形変換のトレース、分母が素数 $p$ で割り切れない有理数の法 $p$ への還元が例である。
数学では、対象そのものではなく、その 表し方 を使って値を決めることが多い。有理数は分数 $a/b$ で表して計算し、法 $n$ の剰余類は代表の整数で計算し、線形写像は基底を 1 つ選んで行列で計算する。関数を「$x\ge0$ なら〜、$x\le0$ なら〜」と場合に分けて定めることもある。こうした定め方では、同じ対象に表し方が何通りもあり、選んだ表し方によって答えが変わってしまうおそれがある。どの表し方を選んでも答えが同じであるとき、その定め方は well-defined(うまく定義されている)であるという。well-defined であることを確かめてはじめて、その規則は対象から値への 写像 を定める。
商集合の上の写像が well-defined であるための条件そのものは、商集合 の記事の命題「商写像を通る分解」と 同値類 の記事の命題「類上の写像の定義可能条件」で証明されている。この記事では、その条件を「表し方」の一般的な枠組みで述べ直したうえで、実際に確かめるときに使う道具を証明する。代表元が複数あるときは 1 つずつ取り替えれば足りること(thm-wd-one-at-a-time)、場合分けによる定義が well-defined である条件(thm-wd-gluing。和集合 の記事の命題「写像の貼り合わせ」をこの枠組みで読んだもの)、選び方を動かす群があるときは群で不変なことを確かめれば足りること(thm-wd-invariance)であり、応用として、分母が $p$ で割り切れない有理数を法 $p$ で還元する写像(thm-wd-reduction)を扱う。
集合 $S$、$X$、$Y$ と、全射 $\pi\colon S\to X$、写像 $g\colon S\to Y$ が与えられているとする。$s\in S$ を「$\pi(s)$ の表し方」と考え、$x\in X$ に対して「$\pi(s)=x$ となる $s$ を 1 つ選び、$g(s)$ を値とする」という規則を考える。この規則が well-defined であるとは、
$$
\pi(s)=\pi(s')\ \Longrightarrow\ g(s)=g(s')\qquad(s,s'\in S)
$$
が成り立つこと、すなわち同じ元の表し方どうしで $g$ の値が等しいことをいう。このとき
$$
f\colon X\to Y,\qquad f(\pi(s)):=g(s)
$$
は写像として定まり、$f\circ\pi=g$ を満たす写像は $f$ だけである。$f$ を $g$ から 誘導される 写像という。
最後の主張は、$S$ 上の同値関係「$s\sim s'\iff\pi(s)=\pi(s')$」をとれば、商集合 の記事の命題「商写像を通る分解」と命題「同じ同一視から得る商の一意性」からすぐに従う。$\pi$ が全射なので、どの $x\in X$ にも表し方 $s$ があり(値が 存在 する)、条件により値は表し方によらない(値が ただ 1 つ に決まる)。$f\circ\pi=g$ となる写像がほかにないのも、$\pi$ が全射だからである。
規則が写像を定めない原因は 2 つある。1 つは、ある入力に値を与えられないこと(存在 の失敗)で、上の枠組みでは $\pi$ が全射でない場合にあたる。たとえば「有理数 $a/b$ に $a$ を $b$ で割った法 $p$ の剰余を対応させる」規則は、$b$ が $p$ の倍数のとき値がない(thm-wd-reduction)。もう 1 つは、同じ入力に異なる値を与えること(一意性 の失敗)で、これが def-wd-main の条件が破れる場合である。単に「well-defined か確かめる」といえば、多くは後者を指すが、両方を確かめて初めて写像になる。「$P(x)$ を満たす $x$ をとって〜とおく」という定義も同じで、$P(x)$ を満たす $x$ がただ 1 つあること(一意存在記号)、またはどれをとっても結果が同じことを示す必要がある。
表し方 $s$ から値 $g(s)$ を計算する手順は、それ自体はいつでも実行できる。問題は、計算した値が「表されている対象 $\pi(s)$」の性質なのか、「表し方 $s$」の性質にすぎないのかである。分数 $\frac24$ の分子 $2$ は表し方の性質で、有理数 $\frac12$ の性質ではない。$\frac24$ と $\frac12$ を比べればすぐ分かる。一方、分数 $\frac ab$ に $2$ を掛けた $\frac{2a}b$ が表す有理数は、$\frac24$ から計算しても $\frac12$ から計算しても $1$ で、有理数そのものの性質である。well-defined であることを確かめるとは、計算の途中で使った選択(どの分数で表すか、どの代表をとるか、どの基底を使うか、どの場合に入れるか)が、最後の答えに影響しないことを確かめることである。
$n\ge1$ とし、法 $n$ の剰余類 $[a]\in\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$ に $\gcd(a,n)$ を対応させる。ここでは $S=\mathbb{Z}$、$X=\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$、$\pi(a)=[a]$、$g(a)=\gcd(a,n)$ である。$[a]=[a']$ なら $a'=a+kn$($k\in\mathbb{Z}$)と書け、$d$ が $a$ と $n$ を割り切ることと $a'$ と $n$ を割り切ることは同値なので、公約数の全体が一致し、$\gcd(a',n)=\gcd(a,n)$ である。よってこの規則は well-defined で、写像 $\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}$ を定める。たとえば $n=12$ では $[8]=[20]=[-4]$ のどの代表からも $\gcd=4$ が得られる。
実数 $x$ に対し、$x\ge0$ なら $x$、$x\le0$ なら $-x$ を対応させる規則で $\lvert x\rvert$ を定める。2 つの場合は $x=0$ で重なるが、そこでは $0=-0$ で値が一致するので、この規則は写像 $\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ を定める(thm-wd-gluing)。重なりのない分け方($x\ge0$ と $x< 0$)にすれば確かめることはないが、重なりを許す書き方のほうが、たとえば連続性を調べるときに便利なことが多い。
商集合の上の演算の例は多くの記事にある。法 $n$ の剰余類の加法と乗法は 商集合 の記事の節「演算を商へ降ろす条件」、有理数の四則演算は 有理数 の記事の命題「四則演算の代表元独立性」、剰余群の積は 剰余群 の記事の命題「剰余群の構成」で確かめられている。剰余類の積が代表元によらないことは、部分群が正規であることと同値である(正規部分群 の記事の定理「正規性の同値条件」、DF04 §3.1 Proposition 5、p. 81)。
2 変数以上の規則では、すべての変数の代表元を同時に取り替えても値が変わらないことを示す必要がある。実際には、1 つずつ取り替えて調べれば十分である。
$k\ge1$ とし、$i=1,\dots,k$ について集合 $X_i$ 上の同値関係 $\sim_i$ が与えられているとする。写像 $g\colon X_1\times\cdots\times X_k\to Y$ について、次の 2 条件は同値である。
1 ⇒ 2:$j\ne i$ では $x_j\sim_jx_j$(反射律)なので、2 は 1 の特別な場合である。
2 ⇒ 1:すべての $i$ で $x_i\sim_ix_i'$ とする。$t=0,1,\dots,k$ について、最初の $t$ 個の成分だけを取り替えた点
$$
z_t:=(x_1',\dots,x_t',x_{t+1},\dots,x_k)
$$
を考えると、$z_0=(x_1,\dots,x_k)$、$z_k=(x_1',\dots,x_k')$ であり、$z_{t-1}$ と $z_t$ は $t$ 番目の成分だけが異なり、その成分は $x_t\sim_tx_t'$ である。2 により $g(z_{t-1})=g(z_t)$ が $t=1,\dots,k$ で成り立つので、つなげて $g(z_0)=g(z_k)$ を得る。
最後の主張:$S:=X_1\times\cdots\times X_k$、$X:=X_1/{\sim_1}\times\cdots\times X_k/{\sim_k}$、$\pi(x_1,\dots,x_k):=([x_1],\dots,[x_k])$ とおく。各標準射影が全射なので $\pi$ は全射であり、$\pi(x)=\pi(x')$ はすべての $i$ で $[x_i]=[x_i']$、すなわち $x_i\sim_ix_i'$ ということである。よって 1 は def-wd-main の条件そのものであり、$\bar g$ が定まる。$\square$
たとえば法 $n$ の剰余類の乗法 $[a][b]:=[ab]$ では、$a\equiv a'\pmod n$ なら $ab-a'b=(a-a')b$ が $n$ の倍数なので $[ab]=[a'b]$ である。積は $a,b$ について対称なので、2 番目の変数を取り替える場合も同じ計算で済み、thm-wd-one-at-a-time により乗法は well-defined である。両方を同時に取り替える式 $ab-a'b'=(a-a')b+a'(b-b')$ を書く必要はない。
集合 $X$ が部分集合の族 $(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ の和集合 $X=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda$ であり、各 $\lambda$ について写像 $f_\lambda\colon A_\lambda\to Y$ が与えられているとする。次の 2 条件は同値である。
2 ⇒ 1 と一意性は、和集合 の記事の命題「写像の貼り合わせ」そのものである。
1 ⇒ 2:$x\in A_\lambda\cap A_\mu$ なら、$f_\lambda(x)=f(x)=f_\mu(x)$ である。$\square$
thm-wd-gluing は def-wd-main の特別な場合として読める。$S:=\{(\lambda,x)\mid\lambda\in\Lambda,\ x\in A_\lambda\}$、$\pi(\lambda,x):=x$、$g(\lambda,x):=f_\lambda(x)$ とおくと、$(\lambda,x)$ は「$x$ を $A_\lambda$ の元として見る」という表し方であり、$X=\bigcup A_\lambda$ だから $\pi$ は全射である。$\pi(\lambda,x)=\pi(\mu,x')$ は $x=x'\in A_\lambda\cap A_\mu$ ということなので、def-wd-main の条件は 2 の条件そのものになる。誘導される写像 $f$ は $f(x)=g(\lambda,x)=f_\lambda(x)$($x\in A_\lambda$)を満たし、これが貼り合わせた写像である。
$A_\lambda$ どうしが交わらなければ 2 は何も要求しないので、互いに交わらない場合分けによる定義はつねに写像を定める。$X=A_1\cup A_2$ を $\{0,1\}$ へ「$A_1$ の元は $0$、$A_2$ の元は $1$ に送る」と定める規則が写像になるのは $A_1\cap A_2=\emptyset$ のときに限る、という例が DF04 §0.1(pp. 1–2)にある。位相空間の上で、各 $f_\lambda$ が連続なら貼り合わせた $f$ も連続か、という問いは別の問題で、$A_\lambda$ が有限個の閉集合であるか、すべて開集合であれば連続になる(連続写像 の記事の命題「有限閉被覆の貼り合わせ補題」「開被覆の貼り合わせ補題」)。
表し方を取り替える操作が群をなしていることが多い。分数 $a/b$ の分子と分母に同じ $0$ でない整数を掛ける操作、基底を正則行列で取り替える操作などである。そのときは、群の元による取り替えで値が変わらないことだけを確かめればよい。
def-wd-main の $S$ に群 $G$ が作用し($\sigma\in G$、$s\in S$ に対して $\sigma s\in S$)、どの $s,s'\in S$ についても
$$
\pi(s)=\pi(s')\iff s'=\sigma s\ \text{となる}\ \sigma\in G\ \text{がある}
$$
が成り立つとする(同じ元の表し方どうしが、ちょうど群の作用で移り合う)。このとき、$g$ による規則が well-defined であることと、すべての $\sigma\in G$、$s\in S$ について $g(\sigma s)=g(s)$ であることは同値である。
well-defined なら、$\pi(\sigma s)=\pi(s)$(仮定の右から左、$s'=\sigma s$)なので $g(\sigma s)=g(s)$ である。逆に $g$ が $G$ で不変とし、$\pi(s)=\pi(s')$ とする。仮定により $s'=\sigma s$ となる $\sigma\in G$ があるので、$g(s')=g(\sigma s)=g(s)$ である。$\square$
仮定の「ちょうど」の部分は省けない。群の作用で移り合う範囲が同じ元の表し方の全体より狭いと、群で不変でも well-defined とは限らない(rem-wd-counterexamples の 5 行目)。
$V$ を体 $K$ 上の $n$ 次元ベクトル空間、$T$ を $V$ の線形変換とする。$V$ の基底 $\mathcal{B}$ に関する $T$ の表現行列を $[T]_{\mathcal{B}}$ とし、$g(\mathcal{B}):=\operatorname{tr}[T]_{\mathcal{B}}$(対角成分の和)とおく。基底全体を $S$ とし、$X$ を 1 点集合 $\{T\}$ とみると、$g$ が well-defined であることは、トレースが基底によらず $T$ だけで決まることである。$V$ の基底どうしは正則行列 $P\in GL_n(K)$ による取り替えでちょうど移り合い、取り替えると表現行列は $P^{-1}[T]_{\mathcal{B}}P$ になる(線形代数学 の記事の定理「表現行列と基底の取り替え」)。thm-wd-invariance により、$\operatorname{tr}(P^{-1}AP)=\operatorname{tr}A$ を示せばよい。
これは 正方行列 の記事の定理「跡の循環性と交換子」の 1 にある。$\operatorname{tr}(AB)=\operatorname{tr}(BA)$ を $P^{-1}A$ と $P$ に当てると $\operatorname{tr}(P^{-1}AP)=\operatorname{tr}(PP^{-1}A)=\operatorname{tr}A$ となる。よって線形変換のトレース $\operatorname{tr}T$ は well-defined である。一方、表現行列の $(1,1)$ 成分は、線形変換の量としては一般に well-defined でない。$V=K^2$ で $T(x,y)=(x,2y)$ とすると、標準基底 $(e_1,e_2)$ では $(1,1)$ 成分が $1$、順番を入れ替えた基底 $(e_2,e_1)$ では $2$ になる。
$p$ を素数とし、$\mathbb{F}_p:=\mathbb{Z}/p\mathbb{Z}$(有限体)とする。整数 $a$ を法 $p$ の剰余類 $[a]$ に送る写像は環準同型である。これを有理数へ広げて、$\frac ab\mapsto[a][b]^{-1}$ と定めたい。$[b]^{-1}$ が存在するには $p\nmid b$ が必要なので、存在の失敗を避けるため、分母が $p$ で割り切れない分数で表せる有理数だけを考える。
$$
\mathbb{Z}_{(p)}:=\Bigl\{\frac ab\in\mathbb{Q}\Bigm|a,b\in\mathbb{Z},\ p\nmid b\Bigr\}
$$
とおく(局所化 の記事の例「素数における整数環の局所化」)。同じ有理数でも $\frac11=\frac pp$ のように分母が $p$ の倍数の表し方もあるので、表し方の集合は $S:=\{(a,b)\in\mathbb{Z}^2\mid p\nmid b\}$ とし、$\pi(a,b):=a/b$ とする。$\pi\colon S\to\mathbb{Z}_{(p)}$ は定義から全射である。
1:$(a,b),(a',b')\in S$ が同じ有理数を表すとする。$a/b=a'/b'$ なので整数として $ab'=a'b$ であり、法 $p$ で $[a][b']=[a'][b]$ である。$p\nmid b$、$p\nmid b'$ で $p$ は素数なので、$[b],[b']$ は体 $\mathbb{F}_p$ の $0$ でない元で、逆元をもつ。両辺に $[b]^{-1}[b']^{-1}$ を掛けると $[a][b]^{-1}=[a'][b']^{-1}$ である。よって def-wd-main の条件が成り立つ。
2:$\frac ab,\frac cd\in\mathbb{Z}_{(p)}$($p\nmid b$、$p\nmid d$)とすると、$p$ は素数なので $p\nmid bd$ であり、
$$
\frac ab+\frac cd=\frac{ad+bc}{bd},\qquad \frac ab\cdot\frac cd=\frac{ac}{bd},\qquad -\frac ab=\frac{-a}{b}
$$
はどれも $\mathbb{Z}_{(p)}$ に属する。$1=\frac11$ も属するので、$\mathbb{Z}_{(p)}$ は部分環である。1 により $r$ はどの表し方で計算してもよいので、上の表し方を使うと
$$
r\Bigl(\frac ab+\frac cd\Bigr)=[ad+bc][bd]^{-1}=[a][b]^{-1}+[c][d]^{-1},\qquad r\Bigl(\frac ab\cdot\frac cd\Bigr)=[ac][bd]^{-1}=[a][b]^{-1}[c][d]^{-1}
$$
であり、$r(1)=[1]$ である。$r(a/1)=[a]$ なので全射である。
3:環準同型 $\varphi\colon\mathbb{Q}\to\mathbb{F}_p$ があったとすると、$\varphi(1)=[1]$ から $\varphi(p)=p\cdot[1]=[p]=[0]$ である。一方 $p\cdot\frac1p=1$ から $[1]=\varphi(1)=\varphi(p)\varphi(1/p)=[0]$ となり、$\mathbb{F}_p$ で $[1]\ne[0]$ であることに反する。$\square$
たとえば $p=5$ で $r\bigl(\frac23\bigr)=[2][3]^{-1}=[2][2]=[4]$ である($[3][2]=[6]=[1]$)。同じ有理数を $\frac{-4}{-6}$ と表しても $p\nmid-6$ なので使ってよく、$[-4][-6]^{-1}=[1][4]^{-1}=[1][4]=[4]$ と同じ値になる。$\frac13+\frac23=1$ を還元すると $[2]+[4]=[6]=[1]$ で、たしかに $r(1)$ に一致する。1 の証明で $p$ が素数であることは、$[b]$ が逆元をもつことに使った。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 同じ元の表し方で値が等しい | 分数 $a/b$ に分子 $a$ を対応させる | $\mathbb{Q}\to\mathbb{Z}$ の写像が定まる |
| 同じ元の表し方で値が等しい | $[a]_3\mapsto[a]_6$ | $\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ の写像が定まる |
| thm-wd-gluing の重なりでの一致 | $(-\infty,0]$ で $x$、$[0,\infty)$ で $x+1$ | $\mathbb{R}\to\mathbb{R}$ の写像が定まる |
| 部分群が正規 | $S_3$ の $H=\{e,(1\,2)\}$ | 剰余類の積が定まる |
| thm-wd-invariance の「ちょうど移り合う」 | $\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ と $8\mathbb{Z}$ の平行移動、$g(a)=[a]_8$ | 群で不変なら well-defined |
| thm-wd-reduction の $p\nmid b$ | $\frac1p\in\mathbb{Q}$ | 値が存在する |
1 行目:$\frac12=\frac24$ だが分子は $1\ne2$ である(写像 の記事の例「反例:表し方に依存する対応」)。2 行目:$[0]_3=[3]_3$ だが $[0]_6\ne[3]_6$ である。法 $n$ から法 $m$ への対応が写像になるのは $m\mid n$ のときに限る(写像 の記事の例「剰余類の間の対応」)。3 行目:$x=0$ で $0\ne1$ となり、重なりで一致しない。4 行目は 剰余群 の記事の例「反例:正規でない部分群では積が定まらない」で確かめられている。5 行目:$S=\mathbb{Z}$、$X=\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$、$\pi(a)=[a]_4$ に、群 $8\mathbb{Z}$ を平行移動 $a\mapsto a+8k$ で作用させる。$g(a)=[a]_8$ は平行移動で変わらないが、$\pi(0)=\pi(4)$ なのに $g(0)=[0]_8\ne[4]_8=g(4)$ なので well-defined でない。$0$ と $4$ は同じ元の表し方だが、群の作用では移り合わない。6 行目:$\frac1p$ を分母が $p$ で割り切れない分数で表すことはできない($\frac1p=\frac ab$ なら $b=pa$)。$[p]=[0]$ は逆元をもたないので、規則 $[a][b]^{-1}$ は値を与えない。これは一意性ではなく存在の失敗である(rem-wd-two-failures)。
def-wd-main の結論は、「$\pi(s)=\pi(s')$ なら $g(s)=g(s')$ を満たす写像 $g$ は、$\pi$ を通ってただ 1 通りに分解する」と言い換えられる。これは全射 $\pi$ についての普遍性で、商集合 の記事が標準射影の普遍性として述べているものである。群・環・加群・位相空間の商でも、まず集合の写像として well-defined であることを確かめ、そのうえで誘導された写像が準同型や連続写像になることを確かめる、という 2 段で議論が進む。thm-wd-reduction の 2、剰余群 の記事の定理「剰余群の普遍性」はその例である。圏論ではこの性質を一般化したものを 余等化子 という。
「well-defined」に定まった日本語訳はなく、「うまく定義されている」「矛盾なく定義される」「代表元の取り方によらない」などと言い換えられる。英語でも名詞形 well-definedness より、「$f$ is well defined」「this is well defined」のように形容詞で使うことが多い(DF04 §0.1、§0.3 Theorem 3、p. 9 など)。$f$ がすでに写像として与えられているなら well-defined かどうかを問う意味はなく、問題になるのはいつも、表し方を経由して値を指定した「規則」のほうである。
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