Postnikov塔

同義語:Postnikov towerポストニコフ塔PostnikovタワーPostnikov系Postnikov system

概要

Postnikov塔(Postnikov tower)とは、弧状連結な空間 $X$ に対し、次数 $n$ 以下のホモトピー群を $X$ と共有し、次数 $n$ より上のホモトピー群が消える空間 $X_n$ を、写像 $X_n\to X_{n-1}$ でつないだ列である。CW 複体では胞体を貼ってホモトピー群を消すことで構成でき、各段はホモトピー同値を除いて一意であり、段の間の写像をファイブレーションに取り替えるとファイバーは Eilenberg–MacLane 空間 $K(\pi_nX,n)$ になり、塔の極限は $X$ と弱ホモトピー同値になる。段のねじれは $k$ 不変量で測られ、$S^2$ の $3$ 次の段は Eilenberg–MacLane 空間の直積にならない。∞ 圏では $n$ 切り詰めへの左随伴を並べた塔として一般化される。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: ホモトピー群, CW複体, Eilenberg–MacLane空間, CW近似, Whiteheadの定理

空間のホモトピー群を、下の次数から 1 つずつ積み上げて空間を組み立てることができる。Postnikov 塔は、空間 $X$ を、次数 $n$ 以下のホモトピー群だけを $X$ と共有し、それより上のホモトピー群が消えている空間 $X_n$ の列で近似するものである。隣り合う段 $X_n\to X_{n-1}$ のファイバーは Eilenberg–MacLane空間 $K(\pi_nX,n)$ になり、$X$ は Eilenberg–MacLane 空間を「ねじって」積み重ねたものと見なせる。そのねじれを測るのが $k$ 不変量である。CW複体の胞体分解が空間をホモロジーの側から組み立てるのに対し、Postnikov 塔はホモトピー群の側から組み立てる。
この記事では、弧状連結な CW 複体の Postnikov 塔を胞体を貼る構成で作り、各段がホモトピー同値を除いて一意であることを証明する。次に、段の間の写像をファイブレーションに取り替えるとファイバーが $K(\pi_nX,n)$ になること、塔の極限が $X$ と弱ホモトピー同値になることを示す。さらに $k$ 不変量を導入し、$2$ 次元球面の $3$ 次の段がホモトピー群の等しい Eilenberg–MacLane 空間の直積と弱ホモトピー同値でないこと、したがって $k$ 不変量 $k_2$ が $0$ でないことを証明する。最後に ∞ 圏での切り詰めと Postnikov 塔を述べる。

定義

Postnikov 塔

$X$ を弧状連結な空間、$x_0\in X$ とする。空間 $X_n$($n\ge1$)と連続写像 $f_n\colon X\to X_n$、$q_n\colon X_n\to X_{n-1}$($n\ge2$)の組で、$q_n\circ f_n=f_{n-1}$ であり、次の 2 条件をみたすものを $X$ の Postnikov 塔という。

  1. $f_n$ は $i\le n$ について同型 $\pi_i(X,x_0)\to\pi_i(X_n,f_n(x_0))$ を誘導する。
  2. $i>n$ について $\pi_i(X_n)=0$。
    $X_n$ を $X$ の $n$ 次の Postnikov 切断という。

$$ \xymatrix{ & \vdots \ar[d] \\ & X_3 \ar[d]^{q_3} \\ & X_2 \ar[d]^{q_2} \\ X \ar[ruu]^{f_3} \ar[ru]^{f_2} \ar[r]_{f_1} & X_1 } $$
条件 1・2 から $X_1$ は $K(\pi_1X,1)$ であり、$q_n$ は $i\le n-1$ について $\pi_i$ の同型を誘導する($q_n\circ f_n=f_{n-1}$ で $f_n$、$f_{n-1}$ がともに同型なので)。これは Hat02 §4.3(p. 410)の定義である。

存在と一意性

以下では CW近似 の 2 つの補題「円板への延長と零ホモトピー」「高い次元の胞体はホモトピー群を低い次数で変えない」と、Eilenberg–MacLane空間 の補題「胞体ごとの延長」(Hat02 Lemma 4.7, p. 348)を使う。後者は、CW 対 $(Z,A)$ と弧状連結な $Y$ について、$Z\setminus A$ が $k$ 胞体をもつようなすべての $k\ge2$ で $\pi_{k-1}(Y)=0$ なら、任意の写像 $A\to Y$ が $Z$ に延長できることを述べる。

Postnikov 塔の存在

$X$ を弧状連結な CW 複体、$x_0$ をその $0$ 胞体とする。各 $n\ge1$ について、$X$ を部分複体として含む CW 複体 $X_n$ で、$X_n\setminus X$ の胞体の次元がすべて $n+2$ 以上であり、包含 $f_n\colon X\hookrightarrow X_n$ が $i\le n$ で $\pi_i$ の同型を誘導し、$i>n$ で $\pi_i(X_n)=0$ となるものがある。さらに、$q_n|_X=\mathrm{id}_X$ をみたす写像 $q_n\colon X_n\to X_{n-1}$ があり、$(X_n,f_n,q_n)$ は $X$ の Postnikov 塔である。

胞体を貼ってホモトピー群を消す

段の構成。 $Y_{n+1}:=X$ とおく。$k\ge n+1$ について CW 複体 $Y_k\supset X$ が作られたとして、$\pi_k(Y_k,x_0)$ の各元 $\gamma$ について代表の基点付き写像 $\psi_\gamma\colon S^k\to Y_k$ を選ぶ。胞体近似定理(Hat02 Theorem 4.8, p. 349)により $\psi_\gamma$ は $Y_k$ の $k$ 骨格に入るように取れるので、これを接着写像として $(k+1)$ 胞体 $e^{k+1}_\gamma$ を貼った CW 複体を $Y_{k+1}$ とする。
CW近似 の補題「高い次元の胞体はホモトピー群を低い次数で変えない」により、包含 $Y_k\hookrightarrow Y_{k+1}$ は $i< k$ で $\pi_i$ の同型、$i=k$ で全射を誘導する。各 $\gamma$ について $\psi_\gamma$ は $e^{k+1}_\gamma$ の特性写像に延長されるので、同じ記事の補題「円板への延長と零ホモトピー」により $\gamma$ の像は $0$ であり、$\pi_k(Y_{k+1})=0$ である。
$X_n:=\bigcup_kY_k$ に各 $Y_k$ を部分複体とする CW 複体の位相を入れる。$X_n\setminus X$ の胞体の次元は $n+2$ 以上である。$i\ge1$ をとり $k\ge\max\{i+1,n+1\}$ とすると、$X_n\setminus Y_k$ の胞体の次元は $k+1$ 以上で $k$ より大きく、$i< k$ なので、同じ補題により $\pi_i(Y_k)\to\pi_i(X_n)$ は同型である。$i\le n$ なら、$Y_{n+1}=X$ から $Y_k$ までの各段は $\pi_i$ の同型を誘導する(各段で $i\le n< j$ の $(j+1)$ 胞体を貼る)ので、$f_n$ は $\pi_i$ の同型を誘導する。$i>n$ なら $k=i+1$ ととれて $\pi_i(X_n)\cong\pi_i(Y_{i+1})=0$ である。
段の間の写像。 $n\ge2$ とする。$X_n\setminus X$ の $k$ 胞体は $k\ge n+2$ をみたし、$k-1\ge n+1> n-1$ なので $\pi_{k-1}(X_{n-1})=0$ である。$X_{n-1}$ は弧状連結なので、補題「胞体ごとの延長」により包含 $X\hookrightarrow X_{n-1}$ は $q_n\colon X_n\to X_{n-1}$ に延長できる。$q_n|_X=\mathrm{id}_X$ なので $q_n\circ f_n=f_{n-1}$ であり、Postnikov 塔の 2 条件は上で示した。$\square$

この構成は Hat02 Example 4.16(p. 354)であり、Eilenberg–MacLane空間 の存在の証明の第 2 段と同じ手法である。

Postnikov 切断の一意性

$X$、$X_n$ を thm-postnikov-existence のとおりとする。$Y$ を弧状連結な CW 複体、$g\colon X\to Y$ を連続写像とし、$g$ が $i\le n$ で $\pi_i$ の同型を誘導し、$i>n$ で $\pi_i(Y)=0$ とする。このとき $g$ は、ホモトピー同値 $h\colon X_n\to Y$ に延長できる。

延長と Whitehead の定理

$X_n\setminus X$ の $k$ 胞体は $k\ge n+2$ をみたすので $\pi_{k-1}(Y)=0$ であり、補題「胞体ごとの延長」により $g$ は $h\colon X_n\to Y$ に延長できる。$i\le n$ では $h_*\circ(f_n)_*=g_*$ で $(f_n)_*$ と $g_*$ が同型なので $h_*$ は同型であり、$i>n$ では $\pi_i(X_n)$ と $\pi_i(Y)$ がともに $0$ なので同型である。Whiteheadの定理 の系「連結な CW 複体の場合」により $h$ はホモトピー同値である。$\square$

とくに、CW 複体からなる 2 つの Postnikov 塔の $n$ 次の段はホモトピー同値である(Hat02 Corollary 4.19, p. 355 はより一般の形を与える)。CW 複体でない段 $Y$ についても、CW近似 $\gamma\colon Z\to Y$ をとり、Whiteheadの定理 の定理「弱ホモトピー同値とホモトピー類」で $X\to Y$ を $X\to Z$ に持ち上げると、$Z$ が上の定理の仮定をみたすので、$Y$ は $X_n$ と弱ホモトピー同値である。

ファイブレーションと Eilenberg–MacLane ファイバー

thm-postnikov-existence の $q_n$ は包含 $X\hookrightarrow X_{n-1}$ の延長にすぎず、点の逆像はよくわからない。そこで $q_n$ をファイブレーションに取り替える。連続写像 $f\colon A\to B$ について
$$ E_f:=\{(a,\gamma)\in A\times B^{[0,1]}\mid\gamma(0)=f(a)\},\qquad p(a,\gamma):=\gamma(1) $$
とおくと、$p\colon E_f\to B$ はすべての空間についてホモトピー持ち上げ性質をもつ写像(以下ファイブレーション)であり、$a\mapsto(a,\text{定値道})$ は $A$ を $E_f$ の変位レトラクトとして埋め込み、$p$ をこの埋め込みと合成すると $f$ に戻る(Hat02 Proposition 4.64, p. 407)。これを $q_2$ から順に、前の段で取り替えた写像と合成したものに施すと、各 $X_n$ をホモトピー同値な空間に取り替えた Postnikov 塔で、すべての $q_n$ がファイブレーションであるものが得られる(Hat02 p. 410)。

隣り合う段のファイバー

$X$ を弧状連結な空間、$(X_n,f_n,q_n)$ をその Postnikov 塔、$n\ge2$ とし、$q_n\colon X_n\to X_{n-1}$ が Serre ファイブレーションであるとする。$y_0:=f_n(x_0)$、$F:=q_n^{-1}(f_{n-1}(x_0))$ とおくと、$F$ は弧状連結であり、包含 $F\hookrightarrow X_n$ は同型 $\pi_n(F,y_0)\cong\pi_n(X_n,y_0)\cong\pi_n(X,x_0)$ を誘導し、$i\ne n$ では $\pi_i(F,y_0)=0$ である。すなわち $F$ は Eilenberg–MacLane空間 $K(\pi_nX,n)$ である。

ホモトピー完全列

$q_n\circ f_n=f_{n-1}$ なので $y_0\in F$ である。Hat02 Theorem 4.41(p. 376)のホモトピー完全列
$$ \pi_{i+1}(X_n)\xrightarrow{(q_n)_*}\pi_{i+1}(X_{n-1})\xrightarrow{\partial}\pi_i(F)\to\pi_i(X_n)\xrightarrow{(q_n)_*}\pi_i(X_{n-1}) $$
を使う。定義の直後に注意したとおり、$(q_n)_*$ は $i\le n-1$ で同型であり、$\pi_n(X_{n-1})=0$ なので $i=n$ では全射である。また $\pi_i(X_{n-1})=0$($i\ge n$)、$\pi_i(X_n)=0$($i>n$)である。

  • $i>n$:$\pi_{i+1}(X_{n-1})=0$ かつ $\pi_i(X_n)=0$ なので $\pi_i(F)=0$。
  • $i=n$:$\pi_{n+1}(X_{n-1})=\pi_n(X_{n-1})=0$ なので $\pi_n(F)\to\pi_n(X_n)$ は同型であり、$(f_n)_*$ により $\pi_n(X_n)\cong\pi_n(X)$。
  • $1\le i\le n-1$:右端の $(q_n)_*$ は単射なので $\pi_i(F)\to\pi_i(X_n)$ の像は $0$ であり、$\pi_i(F)=\operatorname{Im}\partial\cong\operatorname{Coker}\bigl((q_n)_*\colon\pi_{i+1}(X_n)\to\pi_{i+1}(X_{n-1})\bigr)$ である。左端の $(q_n)_*$ は全射なので $\pi_i(F)=0$。
  • $i=0$:完全列は $\pi_1(X_n)\to\pi_1(X_{n-1})\xrightarrow{\partial}\pi_0(F)\to\pi_0(X_n)$ と続き、基点付き集合として完全である。$X_n$ は弧状連結なので $\pi_0(F)$ 全体が $\partial$ の像であり、$\pi_1$ での完全性から $\partial$ は $(q_n)_*$ の像($n\ge2$ なので全体)を $F$ の基点の成分に写す。よって $\pi_0(F)$ は 1 点である。$\square$

$n=1$ では $X_1$ そのものが $K(\pi_1X,1)$ である。こうして $X$ は、$K(\pi_1X,1)$ から始めて $K(\pi_nX,n)$ をファイバーとするファイブレーションを積み重ねたものとして表される。

塔の極限

ファイブレーションの塔の極限

ファイブレーションの列 $\cdots\to Y_2\to Y_1$ の極限 $\varprojlim Y_n=\{(y_n)\in\prod_nY_n\mid y_n\mapsto y_{n-1}\}$ について、自然な写像 $\pi_i(\varprojlim Y_n)\to\varprojlim\pi_i(Y_n)$ は全射であり、十分大きい $n$ で $\pi_{i+1}(Y_n)\to\pi_{i+1}(Y_{n-1})$ が全射なら単射でもある。

命題の所在

この命題はこの記事では証明しない(Hat02 Proposition 4.67, p. 410。$S^i$ と $D^{i+1}$ についてのホモトピー持ち上げを $n$ について帰納的に行う)。核は $\varprojlim^1\pi_{i+1}(Y_n)$ であり(同 p. 411)、Mittag-Leffler条件 の記事の Milnor 完全列にあたる。

Postnikov 塔の収束

$X$ を弧状連結な空間、$(X_n,f_n,q_n)$ をその Postnikov 塔とし、すべての $q_n$ がファイブレーションであるとする。$f_n$ たちが定める写像 $f\colon X\to\varprojlim X_n$ は弱ホモトピー同値である。

安定する射影系

$i\ge0$ を固定する。$n\ge i+1$ では $(q_n)_*\colon\pi_i(X_n)\to\pi_i(X_{n-1})$ と $(f_n)_*\colon\pi_i(X)\to\pi_i(X_n)$ はともに全単射なので、射影系 $(\pi_i(X_n))_n$ は $n\ge i$ で全単射の列であり、合成 $\pi_i(X)\xrightarrow{f_*}\pi_i(\varprojlim X_n)\xrightarrow{\ \phi\ }\varprojlim\pi_i(X_n)$ は全単射である($i=0$ ではすべて 1 点)。$n\ge i+2$ では $\pi_{i+1}(X_n)\to\pi_{i+1}(X_{n-1})$ も全単射なので、prop-postnikov-limit により $\phi$ は全単射である。よって $f_*=\phi^{-1}\circ(\phi\circ f_*)$ も全単射である。$X$ と $\varprojlim X_n$ は弧状連結なので($i=0$ の場合)、弱ホモトピー同値の記事の補題「一つの基点で足りる」により、基点 $x_0$ で確かめれば足りる。$\square$

これは Hat02 Corollary 4.68(p. 411)である。ファイブレーションの仮定は外せない(節「条件を外した反例」の表の 3 行目)。

$k$ 不変量

隣り合う段が「どのようにねじれているか」を測るのが $k$ 不変量である。$K(\pi,m)$ への写像のホモトピー類は $H^m(-;\pi)$ の元と 1 対 1 に対応する(Hat02 Theorem 4.57, p. 393。Eilenberg–MacLane空間 が表現対象になる)。

$k$ 不変量

$X$ を弧状連結な CW 複体とし、$\pi_1(X)$ がすべての $\pi_m(X)$($m\ge2$)に自明に作用するとする(たとえば $X$ が単連結)。このとき $X$ の Postnikov 塔で、各 $X_n$ が CW 複体であり、各 $n\ge1$ について $X_{n+1}$ が写像 $k_n\colon X_n\to K(\pi_{n+1}X,n+2)$ のホモトピーファイバーと弱ホモトピー同値になり、$q_{n+1}$ がその射影にあたるものがある(Hat02 Theorem 4.69, p. 412)。$k_n$ に対応する類
$$ k_n\in H^{n+2}(X_n;\pi_{n+1}X) $$
を $X$ の第 $n$ $k$ 不変量という。

$k_n$ のホモトピーファイバーは道のファイブレーション $PK\to K$($K=K(\pi_{n+1}X,n+2)$)の $k_n$ による引き戻しであり、引き戻しのファイバーホモトピー型は写像のホモトピー類だけで決まるので(Hat02 Proposition 4.62, p. 406 と p. 412)、$k_n=0$ なら $k_n$ を定値写像に取り替えてよく、$X_{n+1}$ は直積 $X_n\times\Omega K(\pi_{n+1}X,n+2)\simeq X_n\times K(\pi_{n+1}X,n+1)$ と弱ホモトピー同値になる(ループ空間が $K(\pi,n+1)$ であることは同 Proposition 4.66, p. 408 による。この記事ではこれらを証明しない)。すべての $k_n$ が $0$ なら、$X$ は Eilenberg–MacLane 空間の直積と弱ホモトピー同値である(同 p. 412)。逆に、ホモトピー群だけでは段のホモトピー型は決まらない。

$2$ 次元球面の $3$ 次の段

$S^2$ の $3$ 次の Postnikov 切断 $X_3$ は、$\mathbb{C}P^\infty\times K(\mathbb{Z},3)$ と弱ホモトピー同値でない。一方、両者のホモトピー群はともに $\pi_2\cong\pi_3\cong\mathbb{Z}$、それ以外の $\pi_i$($i\ge1$)は $0$ である。

次数 $4$ のコホモロジー

ホモトピー群:$\pi_2(S^2)\cong\mathbb{Z}$ であり、$\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$ は Hopf 写像で生成される(ホモトピー群 の例「低次元球面の非自明な高次ホモトピー: $\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$(Hopf写像)」)。$\pi_1(S^2)=0$ なので条件 1・2 から $X_3$ の主張が出る。$\mathbb{C}P^\infty$ は $K(\mathbb{Z},2)$ であり(Eilenberg–MacLane空間)、直積のホモトピー群は成分ごとの直積なので、右辺も同じ群をもつ。
コホモロジー:thm-postnikov-existence の $X_3$ は、$0$ 胞体と $2$ 胞体 $1$ 個ずつの $S^2$ に次元 $5$ 以上の胞体を貼ったものなので、$4$ 胞体をもたない。胞体コホモロジー(Hat02 Theorem 3.5, p. 203)で胞体余鎖群 $C^4$ が $0$ なので $H^4(X_3;\mathbb{Z})=0$ である。$S^2$ の $3$ 次の段はすべて $X_3$ と弱ホモトピー同値であり(thm-postnikov-uniqueness とその後の注意)、弱ホモトピー同値はコホモロジーの同型を誘導する(Hat02 Proposition 4.21, p. 356)ので、どの段でも $H^4=0$ である。
一方 $P:=\mathbb{C}P^\infty\times K(\mathbb{Z},3)$ では、射影 $\mathrm{pr}\colon P\to\mathbb{C}P^\infty$ と、$K(\mathbb{Z},3)$ の基点 $\ast$ を使った $s(z):=(z,\ast)$ について $\mathrm{pr}\circ s=\mathrm{id}$ なので、$s^*\circ\mathrm{pr}^*$ は $H^4(\mathbb{C}P^\infty;\mathbb{Z})\cong\mathbb{Z}$ の恒等写像であり、$\mathrm{pr}^*$ は単射である。よって $H^4(P;\mathbb{Z})\ne0$ であり、$P$ は $X_3$ と弱ホモトピー同値でない。$\square$

$S^2$ の $k$ 不変量

$S^2$ の第 $2$ $k$ 不変量 $k_2\in H^4(X_2;\pi_3S^2)\cong H^4(\mathbb{C}P^\infty;\mathbb{Z})$ は $0$ でない。

$X_2$ は $K(\mathbb{Z},2)$ なので $\mathbb{C}P^\infty$ と弱ホモトピー同値である。$k_2=0$ なら上の注意により $X_3$ は $X_2\times K(\mathbb{Z},3)$、したがって $P$ と弱ホモトピー同値になり、thm-postnikov-s2 に反する。$\square$

∞ 圏での切り詰め

Postnikov 塔は ∞ 圏の言葉で述べ直せる。∞ 圏 $\mathcal{C}$ の対象 $C$ が $k$ 切り詰め($k$-truncated)であるとは、すべての対象 $D$ について写像空間 $\mathrm{Map}_{\mathcal{C}}(D,C)$ の $i>k$ のホモトピー群がすべての基点で消えることをいう(HTT Definition 5.5.6.1, p. 493)。空間(Kan複体)の ∞ 圏では、$k$ 切り詰めな対象は $i>k$ でホモトピー群が消える空間である(同 pp. 492–493)。$\mathcal{C}$ が表示可能なら、$k$ 切り詰めな対象のなす部分 ∞ 圏 $\tau_{\le k}\mathcal{C}$ への包含は左随伴 $\tau_{\le k}$ をもつ(同 Proposition 5.5.6.18, p. 497)。
thm-postnikov-uniqueness の証明の前半は、この左随伴性の古典的な形である。すなわち、$\pi_i(Y)=0$($i>n$)である弧状連結な $Y$ への写像 $X\to Y$ は、胞体ごとの延長で $X_n$ を通る。
対象 $X$ から $\tau_{\le n}X$ への写像を並べた列 $X\to\cdots\to\tau_{\le1}X\to\tau_{\le0}X$ を $X$ の Postnikov 塔という(HTT Definition 5.5.6.23, p. 498)。空間は Postnikov 塔の極限として復元されるが、一般の表示可能 ∞ 圏ではそうとは限らない(同 p. 498)。ある整数 $n$ について局所的にホモトピー次元が $n$ 以下である ∞ トポスでは Postnikov 塔は収束する(同 Proposition 7.2.1.10, p. 720)。この記事ではこれらを証明しない。

条件を外した反例

外す条件反例成り立たなくなること
thm-postnikov-uniqueness の「$i>n$ で $\pi_i(Y)=0$」$X=Y=S^2$、$n=2$、$g=\mathrm{id}$$\pi_3(X_2)=0$ だが $\pi_3(S^2)\cong\mathbb{Z}$ なので、$X_2\to S^2$ はホモトピー同値でない
thm-postnikov-uniqueness の「同型を誘導する写像 $g$」(ホモトピー群が抽象的に同型なだけ)$S^2$ の $X_3$ と $\mathbb{C}P^\infty\times K(\mathbb{Z},3)$ホモトピー群は同型だがホモトピー同値でない(thm-postnikov-s2)
thm-postnikov-convergence の「$q_n$ がファイブレーション」$X=\{\ast\}$、$X_n=(\{0,1\}\times[0,\infty))\cup([0,1]\times[n,\infty))\subset\mathbb{R}^2$、$q_n$ は包含$\varprojlim X_n=\{0,1\}\times[0,\infty)$ は弧状連結でなく、$X\to\varprojlim X_n$ は弱ホモトピー同値でない
確かめ

3 行目:$X_n$ は $2$ 本の半直線を帯 $[0,1]\times[n,\infty)$ でつないだ図形で、帯へ縦に押し上げ、さらに $1$ 点に縮めることで可縮である。よってすべての $\pi_i(X_n)$ が $0$ で、$f_n(\ast):=(0,0)$ とすると Postnikov 塔の条件 1・2 をみたす。包含の列の極限は共通部分 $\bigcap_nX_n=\{0,1\}\times[0,\infty)$ で、$2$ つの弧状連結成分をもつ。包含 $X_n\hookrightarrow X_{n-1}$ はファイブレーションでない。実際、$X_{n-1}$ の帯の中を高さ $n-\tfrac12$ で $(0,n-\tfrac12)$ から $(1,n-\tfrac12)$ へ進む道は、始点が $X_n$ にあるが、途中の点 $(\tfrac12,n-\tfrac12)$ が $X_n$ にないので、$X_n$ の中の道に持ち上がらない。

関連項目

参考文献

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