Bolzano–Weierstrassの定理

同義語:Bolzano-Weierstrassの定理ボルツァーノ・ワイエルシュトラスの定理Bolzano–Weierstrass theorem

概要

Bolzano–Weierstrassの定理(Bolzano–Weierstrass theorem)とは、有界な実数列は収束する部分列をもつという定理であり、Euclid 空間 $\mathbb{R}^m$ の有界な点列についても成り立つ。集合の言葉では、$\mathbb{R}^m$ の有界な無限部分集合は集積点をもつと言い表せる。実数の完備性に基づく存在定理で、Cauchy 列の収束、有界閉集合の点列コンパクト性、閉区間上の連続関数が最大値をとることの証明に使われる。有界でない数列、有理数の中の数列、無限次元の空間では成り立たない。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 点列, 数列の極限, 実数, 単調収束定理

数列 $(-1)^n$ は $1,-1,1,-1,\dots$ と揺れ続けるので収束しない。しかし偶数番目の項だけを取り出せば $1,1,1,\dots$ となって $1$ に収束し、奇数番目だけなら $-1$ に収束する。有界な数列はいつもこのように、うまく項を選べば収束する列を取り出せる。これが Bolzano–Weierstrass の定理である。
有界な数列そのものは収束するとは限らないが、この定理は「少なくとも一部分は収束する」ことを保証する。関数の最大値の存在、Cauchy 列の収束、コンパクト性など、解析学で「何かが存在する」ことを示す議論の多くは、まず条件を満たす点の列を作り、この定理で収束する部分列を取り出し、その極限が求めるものになる、という形をとる。定理は収束する部分列が存在することを言うだけで、どの番号を選べばよいかを式で与えるものではない。

定義と主張

以下、数列の番号は $0$ から始める($\mathbb{N}$ は $0$ を含む)。

部分列と有界な数列
  1. 数列 $(x_n)_{n\in\mathbb{N}}$ と、狭義単調増加な番号の列 $n_0< n_1< n_2<\cdots$ に対し、$(x_{n_k})_{k\in\mathbb{N}}=(x_{n_0},x_{n_1},x_{n_2},\dots)$ を $(x_n)$ の部分列という。
  2. 実数列 $(x_n)$ が有界であるとは、ある $M$ についてすべての $n$ で $\lvert x_n\rvert\le M$ となることをいう。$\mathbb{R}^m$ の点列 $(x_n)$ が有界であるとは、Euclid ノルム $\|x\|=\bigl(\sum_{i=1}^mx_i^2\bigr)^{1/2}$ について、ある $M$ ですべての $n$ で $\|x_n\|\le M$ となることをいう。

部分列は、もとの数列から無限個の項を、順序を保ったまま抜き出したものである(点列 の記事の定義「部分列の定義」)。番号は $n_k\ge k$ を満たし、部分列の部分列はもとの数列の部分列であり、収束する数列の部分列は同じ極限に収束する(同じ記事の命題「部分列の基本性質」「収束列の部分列」)。以下ではこれらを断らずに使う。

Bolzano–Weierstrass の定理

有界な実数列は、収束する部分列をもつ。

$(x_n)$ を有界な実数列とする。どの実数列も単調な部分列 $(x_{n_k})$ をもつ(単調収束定理 の記事の補題「単調な部分列の存在」)。部分列の項はもとの数列の項なので $(x_{n_k})$ も有界であり、単調で有界な実数列は収束する(単調収束定理 の記事の定理「単調収束定理」)。よって $(x_{n_k})$ は収束する。$\square$

この証明で実数の性質を使ったのは、単調収束定理のところだけである。単調な部分列を取り出す補題は大小関係しか使わない。したがって Bolzano–Weierstrass の定理は、単調収束定理を通して実数の上限性質(隙間のなさ)に支えられている。順序体の上では、この定理と上限性質・単調収束定理は同値である(単調収束定理 の記事の定理「単調収束定理と同値な性質」)。
定理が言うのは部分列の収束であって、数列全体の収束ではない。また、収束する部分列の極限は 1 つに決まらない。$(-1)^n$ では偶数番目の部分列が $1$ に、奇数番目の部分列が $-1$ に収束する。数列全体が収束するのは、次のように、収束する部分列の極限がすべて同じ場合である。

収束する部分列の極限による判定

有界な実数列 $(x_n)$ と実数 $x$ について、次は同値である。

  1. $(x_n)$ は $x$ に収束する。
  2. $(x_n)$ の収束する部分列は、すべて $x$ に収束する。

1 ⇒ 2 は、収束する数列の部分列が同じ極限に収束することである。
2 ⇒ 1 を対偶で示す。$(x_n)$ が $x$ に収束しないとすると、ある $\varepsilon>0$ について、$\lvert x_n-x\rvert\ge\varepsilon$ となる $n$ が無限個ある。そのような $n$ を小さい順に $m_0< m_1<\cdots$ と並べると、部分列 $(x_{m_j})$ は有界なので、thm-bw-main によりさらに収束する部分列 $(x_{m_{j_i}})$ をもつ。その極限を $y$ とすると、すべての $i$ で $\lvert x_{m_{j_i}}-x\rvert\ge\varepsilon$ だから、極限をとって $\lvert y-x\rvert\ge\varepsilon$ であり(数列の極限 の記事の命題「絶対値と極限」「極限は大小関係を保つ」)、$y\ne x$ である。$(x_{m_{j_i}})$ は $(x_n)$ の部分列なので、2 が成り立たない。$\square$

有界性の仮定は外せない。$x_n$ を $n$ が偶数なら $0$、奇数なら $n$ とすると、収束する部分列の極限はすべて $0$ だが(収束する部分列は有界なので、奇数番目の項を有限個しか含まない)、$(x_n)$ は収束しない。

区間の 2 分法による証明

thm-bw-main には、単調な部分列を経由しない証明もある。項が無限個入っている区間を半分ずつに絞っていき、その区間から項を 1 つずつ拾う方法である。この証明は、$\mathbb{R}^m$ や集合の形への一般化でも同じ考え方で使える。

2 分法による収束する部分列の構成

実数列 $(x_n)$ がすべての $n$ で $a\le x_n\le b$ を満たすとする。閉区間 $I_0:=[a,b]$ から始め、$I_k=[c_k,d_k]$ が定まったとき、左半分 $[c_k,\frac{c_k+d_k}2]$ に $x_n$ が入る番号 $n$ が無限個あれば $I_{k+1}$ を左半分とし、そうでなければ右半分 $[\frac{c_k+d_k}2,d_k]$ とする。番号を $n_0:=0$、$n_k:=$($n>n_{k-1}$ かつ $x_n\in I_k$ を満たす最小の $n$)と定めると、部分列 $(x_{n_k})$ は収束する。その極限はすべての $I_k$ に共通なただ 1 つの点である。

各 $I_k$ について「$x_n\in I_k$ となる番号 $n$ は無限個ある」ことを $k$ に関する帰納法で示す。$k=0$ ではすべての $n$ がそうである。$I_k$ について成り立てば、$I_k$ は左半分と右半分の和なので、少なくとも一方に入る番号は無限個ある。左半分がそうなら $I_{k+1}$ は左半分であり、そうでなければ右半分に入る番号が無限個あって $I_{k+1}$ は右半分である。どちらの場合も $I_{k+1}$ について成り立つ。
したがって $n_k$ はつねに定まり、$n_0< n_1< n_2<\cdots$ である。$I_0\supset I_1\supset\cdots$ で $I_k$ の長さは $\frac{b-a}{2^k}$ なので、区間 の記事の定理「区間縮小法」により、すべての $I_k$ に共通な点がちょうど 1 つある。それを $p$ とする。$j\ge k$ ならば $x_{n_j}\in I_j\subset I_k$ であり、$p\in I_k$ なので
$$ \lvert x_{n_j}-p\rvert\le\frac{b-a}{2^k}\qquad(j\ge k) $$
である。$\varepsilon>0$ に対して $\frac{b-a}{2^k}<\varepsilon$ となる $k$ をとれば($2^k\ge k$ と Archimedes の性質による)、$j\ge k$ で $\lvert x_{n_j}-p\rvert<\varepsilon$ となる。よって $x_{n_k}\to p$ である。$\square$

この構成は「左半分を優先する」「最小の番号をとる」という規則で部分列を 1 通りに決めている。ただし、ある区間に項が無限個入るかどうかは有限個の項を調べても判定できないので、この規則で部分列を実際に計算できるわけではない。存在は証明されるが、具体的な番号は一般には分からない。
数列 x_n=(-1)^n+1/(n+1) に 2 分法を当てた様子。区間 I_0 から I_5 が上から順に半分ずつ縮み、各段で選ばれた項が赤い点で示され、-1 に近づいていく 数列 x_n=(-1)^n+1/(n+1) に 2 分法を当てた様子。区間 I_0 から I_5 が上から順に半分ずつ縮み、各段で選ばれた項が赤い点で示され、-1 に近づいていく
図は $x_n=(-1)^n+\frac1{n+1}$ に prop-bw-bisection を当てた様子である。偶数番目の項は $1$ より大きく $1$ に、奇数番目の項は $-1$ より大きく $-1$ に近づく。$I_0=[-2,2]$ の左半分 $[-2,0]$ には奇数番目の項がすべて入るので $I_1=[-2,0]$ となる。$[-2,-1]$ には項が 1 つも入らないので $I_2=[-1,0]$、以後は $-1$ のすぐ右に奇数番目の項が無限個あるので左半分が選ばれ続け、$I_3=[-1,-\frac12]$、$I_4=[-1,-\frac34]$、$I_5=[-1,-\frac78]$ となる。選ばれる番号は $n_k=0,1,3,5,7,9$ で、部分列 $2,\ -\frac12,\ -\frac34,\ -\frac56,\ -\frac78,\ -\frac9{10},\dots$ は $-1$ に収束する。灰色の縦線はそれぞれの区間に入る最初の 40 項のうちの項である。

$\mathbb{R}^m$ の場合

Euclid 空間 $\mathbb{R}^m$ でも同じ主張が成り立つ。$\mathbb{R}^m$ の点列の収束は、成分ごとの実数列の収束と同値である(Euclid空間 の記事の系「成分ごとの収束と連続性」)。これは $\lvert y_i\rvert\le\|y\|\le\sqrt m\max_j\lvert y_j\rvert$ という不等式による。

$\mathbb{R}^m$ の Bolzano–Weierstrass の定理

$m\ge1$ とする。$\mathbb{R}^m$ の有界な点列は、$\mathbb{R}^m$ の点に収束する部分列をもつ。

$(x_n)$ を $\mathbb{R}^m$ の有界な点列とし、$x_n=(x_{n,1},\dots,x_{n,m})$ と成分で書く。$\lvert x_{n,i}\rvert\le\|x_n\|$ なので、各成分の実数列 $(x_{n,i})_n$ は有界である。
第 1 成分の実数列 $(x_{n,1})_n$ に thm-bw-main を当てて、第 1 成分が収束する部分列 $(x_n)_{n\in N_1}$ をとる($N_1\subset\mathbb{N}$ はその番号の集合)。次に、この部分列の第 2 成分は有界な実数列なので、もう一度 thm-bw-main を当てて、第 2 成分も収束する部分列 $(x_n)_{n\in N_2}$($N_2\subset N_1$)をとる。部分列の部分列はもとの点列の部分列であり、第 1 成分は収束する数列の部分列なので同じ極限に収束し続ける。これを $m$ 回繰り返すと、すべての成分が収束する部分列 $(x_n)_{n\in N_m}$ が得られる。成分ごとの極限を並べた点を $p$ とすると、成分ごとの収束と $\mathbb{R}^m$ での収束の同値により、この部分列は $p$ に収束する。$\square$

prop-bw-bisection と同じく、立方体 $[-M,M]^m$ を $2^m$ 個の小立方体に分けて、項が無限個入るものを選び続けても証明できる。この方法で集合の形を直接証明したのが 集積点 の記事の定理「集合の形のBolzano–Weierstrassの定理」である。

集合の形

Bolzano–Weierstrass の定理は、数列の代わりに集合で述べることもできる。点 $p$ が集合 $A\subset\mathbb{R}^m$ の集積点であるとは、どんな $\varepsilon>0$ についても、開球 $B(p,\varepsilon)=\{y\mid\|y-p\|<\varepsilon\}$ が $p$ 以外の $A$ の点を含むことをいう(集積点 の記事の定義「距離空間と位相空間における集積点」)。これは、どの $B(p,\varepsilon)$ も $A$ の点を無限個含むことと同値である(同じ記事の命題「距離空間での集積点の特徴づけ」)。

数列の形と集合の形

$m\ge1$ とする。

  1. (集合の形)$\mathbb{R}^m$ の有界な無限部分集合は、$\mathbb{R}^m$ の中に集積点をもつ。
  2. 集合の形 1 から、thm-bw-rm(数列の形)が選択公理を使わずに導かれる。逆に thm-bw-rm から 1 を導くことは、無限集合から相異なる点の列を取り出すところで可算選択公理を使えばできる。

1 は 集積点 の記事の定理「集合の形のBolzano–Weierstrassの定理」であり、そこでは小立方体を規則で選ぶ証明が与えられている(選択公理を使わない)。
2 の前半:$(x_n)$ を有界な点列とし、項の集合を $S:=\{x_n\mid n\in\mathbb{N}\}$ とする。$S$ が有限集合なら、ある値 $v$ について $x_n=v$ となる $n$ が無限個あり、その番号を小さい順に並べた部分列は定数列 $v$ で、$v$ に収束する。$S$ が無限集合なら、$S$ は有界なので 1 により集積点 $p$ をもつ。どの $\varepsilon>0$ についても $B(p,\varepsilon)$ は $S$ の点を無限個含むので、$\|x_n-p\|<\varepsilon$ となる番号 $n$ は無限個ある。そこで $n_0:=0$、$n_k:=$($n>n_{k-1}$ かつ $\|x_n-p\|<\frac1k$ を満たす最小の $n$)と定めると、$n_0< n_1<\cdots$ で $\|x_{n_k}-p\|<\frac1k$($k\ge1$)となり、$x_{n_k}\to p$ である。どの段でも番号は規則で 1 通りに決まるので、選択公理は使わない。
2 の後半:$A$ を有界な無限集合とする。可算選択公理を仮定すると、無限集合 $A$ への単射 $\mathbb{N}\to A$ が存在する(無限集合 の記事の定理「無限集合と Dedekind 無限」の 3)。これを相異なる点の列 $(a_n)$ とみると有界なので、thm-bw-rm により部分列 $a_{n_k}\to p$ がある。どの $\varepsilon>0$ についても、十分大きいすべての $k$ で $a_{n_k}\in B(p,\varepsilon)$ であり、これらは相異なる無限個の点なので、$p$ 以外の $A$ の点を含む。よって $p$ は $A$ の集積点である。$\square$

数列の形と集合の形は、どちらも「有界な範囲に無限個のものを置くと、どこかに集まる場所ができる」ことを言っている。数列の形では項の重複が許されるので、有限個の値を繰り返す数列($(-1)^n$ など)は、値の集合が有限でも収束する部分列をもつ。集合の形では、有限集合は集積点をもたない(集積点 の記事の系「有限集合は集積点をもたない」)ので、「無限」の仮定が要る。

系

Bolzano–Weierstrass の定理の典型的な使い方は、「条件を満たす点の列を作る → 収束する部分列を取り出す → 極限が求めるものになる」という 3 段である。ここでは代表的な 3 つを示す。どれも既存の記事に詳しい扱いがあるので、証明は短くする。

実数の Cauchy 列は収束する

実数の Cauchy列 は収束する。

Cauchy 列は有界であり(Cauchy列 の記事の命題「Cauchy列の有界性」)、thm-bw-main により収束する部分列 $x_{n_k}\to p$ をもつ。$\varepsilon>0$ に対し、$m,n\ge N$ で $\lvert x_m-x_n\rvert<\frac\varepsilon2$ となる $N$ をとり、$n_k\ge N$ かつ $\lvert x_{n_k}-p\rvert<\frac\varepsilon2$ となる $k$ をとると、$n\ge N$ で $\lvert x_n-p\rvert\le\lvert x_n-x_{n_k}\rvert+\lvert x_{n_k}-p\rvert<\varepsilon$ である。$\square$

同じ証明は Cauchy列 の記事の定理「実数列の Cauchy判定法」にもある。$\mathbb{R}^m$ でも thm-bw-rm から同じように従い、$\mathbb{R}^m$ は完備距離空間である。

有界閉集合の点列コンパクト性

$K\subset\mathbb{R}^m$ を有界な閉集合とする。$K$ の点からなる点列は、$K$ の点に収束する部分列をもつ。

$K$ の点列 $(x_n)$ は有界なので、thm-bw-rm により $\mathbb{R}^m$ の点 $p$ に収束する部分列をもつ。$p\notin K$ とすると、$K$ の補集合は開集合なので $B(p,r)\cap K=\emptyset$ となる $r>0$ があるが、十分先の $x_{n_k}$ は $B(p,r)$ に入るので $K$ の点であることに反する。よって $p\in K$ である。$\square$

これは $K$ が点列コンパクトであることを言っている(点列コンパクト の記事の例「Euclid空間の有界閉集合」)。証明では、有界性を Bolzano–Weierstrass の定理を当てるところで、閉であることを極限を $K$ に戻すところで使った。

最大値と最小値の存在

$K\subset\mathbb{R}^m$ を空でない有界閉集合とし、$f\colon K\to\mathbb{R}$ を連続関数とする(各 $p\in K$ と $\varepsilon>0$ に対し、$x\in K$、$\|x-p\|<\delta$ ならば $\lvert f(x)-f(p)\rvert<\varepsilon$ となる $\delta>0$ がある)。このとき $f$ は $K$ 上で最大値と最小値をとる。

まず、$K$ の点列 $x_n\to p\in K$ ならば $f(x_n)\to f(p)$ である。実際、$\varepsilon$ に対する $\delta$ をとれば、十分先の $n$ で $\|x_n-p\|<\delta$、したがって $\lvert f(x_n)-f(p)\rvert<\varepsilon$ となる。
$f$ が上に有界であることを示す。有界でないとすると、各 $n$ について $f(x_n)\ge n$ となる $x_n\in K$ がある。cor-bw-closed-bounded により部分列 $x_{n_k}\to p\in K$ があり、$f(x_{n_k})\to f(p)$ となるが、$f(x_{n_k})\ge n_k\ge k$ は有界でなく、収束する数列が有界であること(数列の極限 の記事の命題「収束列の有界性」)に反する。
$s:=\sup f(K)$ とおくと、各 $n$ について $f(x_n)>s-\frac1{n+1}$ となる $x_n\in K$ がある。部分列 $x_{n_k}\to p\in K$ をとると、$s-\frac1{n_k+1}< f(x_{n_k})\le s$ から $f(x_{n_k})\to s$ であり、極限の一意性から $f(p)=s$ である。よって $f$ は $p$ で最大値をとる。最小値は $-f$ に当てはめればよい。$\square$

$m=1$、$K=[a,b]$ とすれば、高校数学で認めて使う「閉区間で連続な関数は最大値と最小値をとる」の証明になる。ここでも有界性と閉であることがともに効いている。開区間 $(0,1)$ 上の $f(x)=x$ は最大値をとらず、$[1,\infty)$ 上の $f(x)=-\frac1x$ も最大値をとらない(上限 $0$ に届かない)。

例

数列 $(-1)^n$ と収束する部分列の極限

$x_n=(-1)^n$ は有界で、収束する部分列の極限は $1$ と $-1$ の 2 つだけである。実際、収束する部分列は、偶数番目の項(値 $1$)か奇数番目の項(値 $-1$)の一方を有限個しか含まない(両方を無限個含むと、隣り合う $1$ と $-1$ の差 $2$ が無限回現れて Cauchy 列でなくなる)ので、十分先では定数である。prop-bw-all-subsequences により、極限が 2 つあることから $(x_n)$ は収束しない。Bolzano–Weierstrass の定理は収束する部分列が「ある」ことを言うが、極限が 1 つであることは言わない。

数列 $\sin n$

$x_n=\sin n$($n$ はラジアン)は $\lvert\sin n\rvert\le1$ で有界なので、定理により収束する部分列をもつ。しかし、どの番号 $n_k$ を選べば収束するのかを式で書くのは易しくない。$\sin0=0$、$\sin1\approx0.841$、$\sin2\approx0.909$、$\sin3\approx0.141$、$\sin4\approx-0.757$ と、値は規則なく見える形で $[-1,1]$ を動き回る。定理はこうした数列にも、極限の値や番号を知らないまま「収束する部分列がある」と言える。これが存在定理としての Bolzano–Weierstrass の定理の強みであり、限界でもある。

確率ベクトルの列

$m$ 個の成分がすべて $0$ 以上で和が $1$ のベクトル $p=(p_1,\dots,p_m)$ を確率ベクトルといい、その全体を
$$ \Delta_m:=\Bigl\{p\in\mathbb{R}^m\Bigm| p_i\ge0\ (1\le i\le m),\ \sum_{i=1}^mp_i=1\Bigr\} $$
と書く。$0\le p_i\le1$ なので $\|p\|\le\sqrt m$ で $\Delta_m$ は有界である。また、確率ベクトルの列 $p^{(n)}\to q$ ならば、成分ごとの収束により $q_i\ge0$、$\sum_iq_i=1$ となる(極限は大小関係と和を保つ)ので $q\in\Delta_m$ であり、$\Delta_m$ は閉集合である(閉集合 の記事の定理「距離空間での閉性の判定」)。cor-bw-closed-bounded により、確率ベクトルの列は必ず確率ベクトルに収束する部分列をもつ。有限状態の確率過程で、分布の平均をとった列から定常分布を取り出す議論はこの形で使われる(確率漸化式と定常分布 の記事の定理「定常分布の存在」)。

反例:仮定を外すと何が崩れるか

外す条件反例成り立たなくなること
有界性$x_n=n$収束する部分列をもつ
実数の完備性(有理数の中で考える)$\sqrt2$ の小数近似 $1,\ 1.4,\ 1.41,\ 1.414,\dots$有理数に収束する部分列をもつ
有限次元数列空間 $\ell^2$ の単位ベクトル $e_0,e_1,e_2,\dots$収束する部分列をもつ
反例の確認
  1. 有界性を外す:$x_n=n$ の部分列 $(n_k)$ は $n_k\ge k$ を満たすので有界でなく、したがって収束しない(収束する数列は有界である)。「実数列である」を満たし「有界である」を満たさず、結論「収束する部分列をもつ」が破れる。
  2. 有理数の中で考える:$q_n$ を $\sqrt2$ の小数第 $n$ 位までの切り捨てとすると、$q_n$ は有理数で $1\le q_n\le2$ なので、有理数の中で有界な数列である。実数の中では $q_n\to\sqrt2$ なので、どの部分列も $\sqrt2$ に収束する。もしある部分列が有理数 $r$ に収束したら、実数の中でも $r$ に収束するので、極限の一意性から $r=\sqrt2$ となるが、$\sqrt2$ は無理数である。よって有理数の中には収束する部分列がない(集積点 の記事の例「反例:有界でない無限集合と、完備でない空間の中の無限集合」、極限とε-δ の記事の例「反例:有理数では単調有界数列が収束しない」)。
  3. 有限次元を外す:2 乗の和が収束する実数列 $y=(y_0,y_1,\dots)$ 全体を $\ell^2$ とし、ノルム $\|y\|:=\bigl(\sum_iy_i^2\bigr)^{1/2}$ から定まる距離を入れる。第 $i$ 成分だけが $1$ の点を $e_i$ とすると、$\|e_i\|=1$ なのでこの点列は有界である。しかし $i\ne j$ なら $\|e_i-e_j\|=\sqrt2$ なので、どの部分列も隣り合う項の距離が $\sqrt2$ のままで Cauchy 列にならず、収束しない(収束する点列は Cauchy 列である。Cauchy列 の記事の命題「収束列は Cauchy列」)。$\ell^2$ は完備であり(Hilbert空間 の記事の例「2 乗総和可能な数列の空間」)、崩れているのは完備性ではなく次元の有限性である。同じ例は 全有界 の記事の例「反例:Hilbert空間の単位球」、Euclid空間 の記事の節「反例:条件を外すと崩れること」にもある。

有限次元の仮定が効いているのは、thm-bw-rm の証明で成分ごとに部分列を $m$ 回取り直したところである。成分が無限個あると、この取り直しは有限回で終わらない。

補足

選択公理との関係

thm-bw-main・prop-bw-bisection・thm-bw-rm の証明は、番号を「条件を満たす最小のもの」として規則で決めているので、選択公理を使わない。一方、cor-bw-extreme-value の証明の「各 $n$ について $f(x_n)\ge n$ となる $x_n$ をとる」のように、条件を満たす点を各 $n$ について 1 つずつ選ぶ議論は可算選択公理を使う(可算選択公理 の記事の注意「解析学・位相空間論での使われ方」)。集合の形から数列の形を導く向き(prop-bw-set-form の 2 の前半)は選択を使わず、逆向きは使う。

名前と文献

Leb26 は Theorem 2.3.8(pdf p. 78)で実数列の Bolzano–Weierstrass の定理を述べ、上極限に収束する部分列の存在から証明したうえで、区間の 2 分法による別証明を与えている(pdf p. 78–79)。prop-bw-all-subsequences は同書 Proposition 2.3.7(pdf p. 77)、集合の形の $m=1$ の場合は Exercise 2.3.9(pdf p. 81)、$\mathbb{R}^m$ の場合は Exercise 7.4.14(pdf p. 286)である。閉区間上の連続関数の有界性と最大値・最小値の存在をこの定理から導く議論は同書 Lemma 3.3.1・Theorem 3.3.2(pdf p. 130)にある。実数の Cauchy 列の収束は同書 Theorem 2.4.5(pdf p. 85)である。

この定理の考え方は、有限次元の範囲を越えて、一般の位相空間では点列コンパクト性(すべての点列が収束する部分列をもつ)やコンパクト空間の概念へと抽象化される。応用として、Brouwerの不動点定理 の記事の証明は、近似的な不動点の列から Bolzano–Weierstrass の定理で収束する部分列を取り出して真の不動点を得ている。どれだけ弱い公理系でこの定理が証明できるかは逆数学で調べられており、基礎の体系 $\mathsf{RCA}_0$ の上で、有界な実数列が収束する部分列をもつという主張は体系 $\mathsf{ACA}_0$ と同値であることが知られている(逆数学 の記事の例「有界実数列の収束部分列」)。

関連項目

参考文献

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