直積環(direct product of rings)とは、環の族 $(A_\lambda)$ の直積集合 $\prod_\lambda A_\lambda$ に成分ごとの和と積を入れた環のことである。射影 $\prod_\lambda A_\lambda\to A_\mu$ は環準同型で、直積環は環の圏における積の普遍性をもつ。単元・冪等元は成分ごとに判定され、零環でない 2 つの環の直積は $(1,0)(0,1)=0$ により整域でない。有限個の直積ではイデアルは成分のイデアルの直積であり、素スペクトルは各成分の素スペクトルの非交和になる。可換環の有限個の直積分解は冪等元の完全直交系と対応し、中国剰余定理や Artin環の構造定理は環を直積環として表す。無限個の直積では、有限台の元のイデアルを含む極大イデアルのように、成分から来ない極大イデアルが現れる。
前提知識: 環, 直積, 環準同型, イデアル
直積環は、環の族の直積集合に、成分ごとの和と積を入れてできる環である。$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ のように、環が直積環に分解できれば、計算を成分ごとに独立に行える。直積環は環準同型について直積の普遍性をもち、環の圏における積(積(圏論))である。可換環では、有限個の環への直積分解は冪等元と対応し、互いに素なイデアルによる中国剰余定理や Artin環の構造定理は、環を直積環として表す定理である。幾何学的には、直積環 $A\times B$ の素スペクトルは $\operatorname{Spec}A$ と $\operatorname{Spec}B$ の非交和になる。本記事では、環は乗法の単位元 $1$ をもつが可換とは限らないものとし(環 の記事の流儀)、環準同型は $1$ を $1$ に写すものとする。
$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を環の族とする。直積集合 $\prod_{\lambda\in\Lambda}A_\lambda$ の元 $a=(a_\lambda)_\lambda$、$b=(b_\lambda)_\lambda$ に対し、和と積を成分ごとに
$$
a+b:=(a_\lambda+b_\lambda)_\lambda,\qquad ab:=(a_\lambda b_\lambda)_\lambda
$$
で定める。この演算により $\prod_\lambda A_\lambda$ は零元 $0=(0)_\lambda$、単位元 $1=(1)_\lambda$ をもつ環になる。これを族 $(A_\lambda)$ の 直積環(direct product of rings)または 環の直積 という。$\mu\in\Lambda$ について、第 $\mu$ 成分をとる写像
$$
p_\mu\colon\prod_\lambda A_\lambda\to A_\mu,\qquad (a_\lambda)_\lambda\mapsto a_\mu
$$
を 射影 という。$\Lambda=\{1,\dots,n\}$ のときは $A_1\times\cdots\times A_n$ と書く。
環の公理は成分ごとに各 $A_\lambda$ の公理から従う(2 つの環の場合は 環 の記事の例「環の直積」)。射影 $p_\mu$ は和・積・単位元を保つ全射であり、環準同型である。$\Lambda=\emptyset$ のときは直積集合がただ 1 つの元からなるので、直積環は零環である。零環の因子は省いてよく、$A\times\{0\}\cong A$ である。
$\prod_\lambda A_\lambda$ が可換であることと、すべての $A_\lambda$ が可換であることは同値である。成分ごとの積なので各 $A_\lambda$ が可換なら直積も可換であり、逆は全射な環準同型 $p_\mu$ の像が可換になることから従う。
$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を環の族とする。任意の環 $B$ と環準同型の族 $f_\lambda\colon B\to A_\lambda$ に対し、すべての $\lambda$ で $p_\lambda\circ f=f_\lambda$ を満たす環準同型 $f\colon B\to\prod_\lambda A_\lambda$ がただ 1 つ存在する。それは $f(b)=(f_\lambda(b))_\lambda$ で与えられる。
一意性:$p_\lambda\circ f=f_\lambda$ は、$f(b)$ の第 $\lambda$ 成分が $f_\lambda(b)$ であることを意味するので、$f(b)=(f_\lambda(b))_\lambda$ でなければならない。
存在:この式で $f$ を定めると、各成分で $f_\lambda(b+b')=f_\lambda(b)+f_\lambda(b')$、$f_\lambda(bb')=f_\lambda(b)f_\lambda(b')$、$f_\lambda(1)=1$ なので、演算が成分ごとであることから $f(b+b')=f(b)+f(b')$、$f(bb')=f(b)f(b')$、$f(1)=1$ である。よって $f$ は環準同型であり、$p_\lambda\circ f=f_\lambda$ を満たす。
この命題は、直積環と射影の組 $(\prod_\lambda A_\lambda,(p_\lambda)_\lambda)$ が環の圏における積であることを述べている(積(圏論) の記事の定義「対象の族の積」)。$A_\lambda$ がすべて可換なら、可換環の圏における積でもある。とくに直積環は射影と整合する同型を除いて一意に定まる(同記事の命題「射影を保つ一意な同型」)。
一方、成分への埋め込み $i_\mu\colon A_\mu\to\prod_\lambda A_\lambda$(第 $\mu$ 成分が $a$、他の成分が $0$ の元に $a$ を写す写像)は和と積を保つが、$1$ を
$$
e_\mu:=i_\mu(1)\quad(\text{第 }\mu\text{ 成分だけが }1\text{ で他が }0\text{ の元})
$$
に写し、$A_\lambda\neq\{0\}$ となる $\lambda\neq\mu$ があれば $e_\mu\neq1$ なので、環準同型ではない。$i_\mu$ の像 $A_\mu\times\prod_{\lambda\neq\mu}\{0\}$ は和と積で閉じ、$e_\mu$ を単位元とする環であるが、単位元が $\prod_\lambda A_\lambda$ の $1$ と異なるので部分環ではなく、両側イデアルである。
直積環 $A\times B$ の元は、$A$ の元と $B$ の元を並べたものであり、足し算も掛け算も 2 つの成分で別々に行う。$A$、$B$ を 2 つの空間の上の関数の環と思えば、$A\times B$ は 2 つの空間を離して並べた空間(非交和)の上の関数の環である。この見方では、$e_1=(1,0)$ は第 1 の空間で $1$、第 2 の空間で $0$ の関数であり、$e_1^2=e_1$、$e_1(1-e_1)=0$ を満たす冪等元になる。
逆に、環の中に $0,1$ 以外の中心的な冪等元 $e$ があれば、環は $e$ が $1$ になる部分と $0$ になる部分に分かれて直積環になる(冪等元 の記事の定理「冪等元と直積分解の対応」と、その後の注意「中心的でない冪等元と Peirce 分解」)。$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ の $[3]$ はそのような冪等元であり、$\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}$ は「$2$ を法とする部分」と「$3$ を法とする部分」に分かれる。これが中国剰余定理の分解である。
$a\mapsto(a\bmod2,\ a\bmod3)$ は環の同型 $\mathbb{Z}/6\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ を与える(互いに素 の記事の定理「剰余環の直積への分解」)。実際に 6 個の元を書き出すと
$$
\bar0\mapsto(0,0),\ \bar1\mapsto(1,1),\ \bar2\mapsto(0,2),\ \bar3\mapsto(1,0),\ \bar4\mapsto(0,1),\ \bar5\mapsto(1,2)
$$
であり、全単射である。同様に $\mathbb{Z}/12\mathbb{Z}\cong\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}$ である。一方 $\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ は $\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$ と同型でない。後者では $(1,1)+(1,1)=(0,0)$ なので $1+1=0$ が成り立つが、$\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ では $\bar1+\bar1=\bar2\neq\bar0$ であり、環の同型は $1+1$ を $1+1$ に写すからである。$2$ と $2$ は互いに素でないので、中国剰余定理は適用できない。
体 $k$ の $n$ 個の直積 $k^n=k\times\cdots\times k$ は、成分ごとの積をもつ可換環である。より一般に、集合 $X$ から環 $A$ への写像全体の集合 $A^X$ に各点ごとの和と積を入れた環は、$A$ の族 $(A)_{x\in X}$ の直積環 $\prod_{x\in X}A$ にほかならない。
集合 $S$ の冪集合 $\mathcal{P}(S)$ に対称差を和、共通部分を積として入れたBoole環(環 の記事の例「冪集合のなすBoole環」)は、2 元体 $\mathbb{F}_2$ の直積環 $\mathbb{F}_2^S$ と同型である。同型は部分集合 $X$ にその特性関数 $\chi_X$ を対応させる写像で与えられる。実際 $\chi_{X\cap Y}=\chi_X\chi_Y$ であり、$\chi_{X\triangle Y}=\chi_X+\chi_Y$($\mathbb{F}_2$ での和)は、各点 $s$ で「$s$ がちょうど一方に属する」ことと「$\chi_X(s)+\chi_Y(s)=1$」が同値であることによる。$\chi_\emptyset=0$、$\chi_S=1$ であり、部分集合と特性関数は一対一に対応する。
環 $A$、$B$ がともに零環でなければ、$A\times B$ では $(1,0)(0,1)=(0,0)$ であり、$(1,0)$ も $(0,1)$ も $0$ でない。したがって $A\times B$ は $0$ 以外の零因子をもち(零因子 の記事の命題「直積環の零因子」)、整域でも体でもない。たとえば $\mathbb{Z}\times\mathbb{Z}$ や $\mathbb{Q}\times\mathbb{Q}$ がそうである。この例は含意「整域の直積は整域である」「体の直積は体である」を破る。満たす性質は「各成分が整域(体)」、満たさない性質は「$0$ でない零因子をもたない」である。零環でない可換環 $A,B$ の直積は、$0,1$ 以外の冪等元 $(1,0)$ をもつので局所環でもない(局所環 の記事の命題「局所環の冪等元」)。
可換環 $A$ が零環でない 2 つの環の直積と同型であることは、$A$ が $0,1$ 以外の冪等元をもつことと同値である(冪等元 の記事の定理「冪等元と直積分解の対応」)。整域、局所環、$\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ は冪等元を $0$ と $1$ しかもたない(同記事の命題「冪等元の基本性質」の 5、局所環 の記事の命題「局所環の冪等元」、冪等元 の記事の例「反例:零因子をもつが分解しない可換環」)ので、零環でない 2 つの環の直積と同型でない。$\mathbb{Z}/4\mathbb{Z}$ は $0$ でない零因子 $\bar2$ をもつので、この例は含意「$0$ でない零因子をもつ可換環は零環でない 2 つの環の直積に分解する」を破る。直積環は零因子をもつが(ex-direct-product-ring-not-domain)、零因子をもつ環が直積環であるとは限らない。
有限個の可換環の直積では、元が冪零元であることと各成分が冪零であることは同値である(成分の冪零指数の最大値をとればよい。冪零根基 の記事の例「直積環の冪零根基」)。無限個の直積ではこれが成り立たない。$A=\prod_{n\ge1}\mathbb{Z}/2^n\mathbb{Z}$ とし、すべての成分が $\bar2$ の元 $x=(\bar2,\bar2,\bar2,\dots)$ を考える。第 $n$ 成分は $\bar2^{\,n}=\bar0$ を満たすので、各成分は冪零である。しかし任意の $m\ge1$ について、$x^m$ の第 $m+1$ 成分は $2^m\bmod2^{m+1}$ であり $\bar0$ でないので、$x^m\neq0$ である。よって $x$ は冪零でない。この例は含意「各成分が冪零な元は冪零である」を、成分が無限個ある場合に破る。原因は、成分の冪零指数 $n$ に上限がないことである。
$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を環の族とし、$a=(a_\lambda)_\lambda\in\prod_\lambda A_\lambda$ とする。
3 の逆が無限個の直積で成り立たないことは ex-direct-product-ring-infinite-nil で見た。1 から、たとえば $(\mathbb{Z}\times\mathbb{Z})^\times=\{(\pm1,\pm1)\}$ は位数 $4$ の群であり、$(\mathbb{Z}/6\mathbb{Z})^\times\cong(\mathbb{Z}/2\mathbb{Z})^\times\times(\mathbb{Z}/3\mathbb{Z})^\times$ は位数 $2$ である。
2 により、$e_\mu$(prop-direct-product-ring-universal の後で定めた元)は冪等元であり、$\lambda\neq\mu$ なら $e_\lambda e_\mu=0$ である。また $e_\mu$ はすべての元と交換する(中心的である)。$\Lambda=\{1,\dots,n\}$ が有限なら $e_1+\cdots+e_n=1$ であり、$a=ae_1+\cdots+ae_n$ は元を成分に分ける式である。逆に、可換環 $A$ が互いに直交する冪等元 $e_1,\dots,e_n$ で $e_1+\cdots+e_n=1$ を満たすもの(冪等元の完全直交系)をもてば、$a\mapsto(ae_1,\dots,ae_n)$ は環の同型 $A\cong Ae_1\times\cdots\times Ae_n$ を与える(冪等元 の記事の定理「冪等元と直積分解の対応」と、その後の完全直交系の段落)。したがって、有限個の零環でない環への直積分解は、$0$ でない冪等元からなる完全直交系と同じものである。可換でない環では、中心的な冪等元が同じ役割を果たす(冪等元 の記事の注意「中心的でない冪等元と Peirce 分解」)。
零環でない可換環の無限族では、$e_\lambda$ たちの和は定義されない(和は有限和である)。$e_\lambda$ たちが生成するイデアルは、$e_\lambda$ たちの有限 $A$ 係数一次結合の全体であり、これは有限個を除く成分が $0$ である元の全体(有限台の元の全体)に一致する。零環でない成分が無限にあるので、この全体は $1$ を含まない(prop-direct-product-ring-infinite の 1)。直積環は「成分ごとの冪等元の和」としては復元できず、この点で有限個の直積と振る舞いが変わる。
$A_1,\dots,A_n$ を環とし、$A:=A_1\times\cdots\times A_n$ とする。
1 により、$A_1\times\cdots\times A_n$ がNoether環(または Artin環)であることと、すべての $A_i$ がそうであることは同値である。イデアルの増大列・減少列が成分ごとの列に分かれるからである(Artin環 の記事の例「直積と整数の剰余環」)。
$A_1,\dots,A_n$ を可換環とし、$A:=A_1\times\cdots\times A_n$ とする。$A$ の素イデアルは、ちょうど
$$
p_i^{-1}(\mathfrak{p})=A_1\times\cdots\times A_{i-1}\times\mathfrak{p}\times A_{i+1}\times\cdots\times A_n
$$
($1\le i\le n$、$\mathfrak{p}$ は $A_i$ の素イデアル)の形のイデアルであり、$A$ の素イデアルからこの $i$ と $\mathfrak{p}$ はただ 1 通りに定まる。極大イデアルについても、$\mathfrak{p}$ を $A_i$ の極大イデアルに替えて同じことが成り立つ。
$\mathfrak{p}$ を $A_i$ の素イデアルとし、$P:=p_i^{-1}(\mathfrak{p})$ とおく。prop-direct-product-ring-ideals の 2 により、$A/P$ は $A_i/\mathfrak{p}$ と、$j\neq i$ の成分の零環 $A_j/A_j$ との直積に同型であり、したがって $A_i/\mathfrak{p}$ と同型である。$A_i/\mathfrak{p}$ は整域なので、$P$ は素イデアルである(素イデアル の記事の命題「剰余環が整域であることとの同値」)。
逆に $P$ を $A$ の素イデアルとする。$e_1+\cdots+e_n=1\notin P$ なので、$e_i\notin P$ となる $i$ がある。$j\neq i$ なら $e_ie_j=0\in P$ であり、$e_i\notin P$ なので $e_j\in P$ である。したがって $e_i\notin P$ となる $i$ はただ 1 つである。prop-direct-product-ring-ideals の 1 により $P=I_1\times\cdots\times I_n$ と書けて、$j\neq i$ では $e_j\in P$ から $1\in I_j$、すなわち $I_j=A_j$ である。よって $P=p_i^{-1}(I_i)$ であり、$A/P\cong A_i/I_i$ が整域なので $I_i$ は素イデアルである。$i$ は $e_i\notin P$ で決まり、$I_i=p_i(P)$ も $P$ で決まる。
極大イデアルについては、「整域」を「体」に替えて同じ議論をすればよい(極大イデアル の記事の命題「剰余環が体であることとの同値」)。
この命題により、$\operatorname{Spec}(A_1\times\cdots\times A_n)$ は集合として $\operatorname{Spec}A_1,\dots,\operatorname{Spec}A_n$ の非交和と一対一に対応する。Zariski位相の閉集合 $V(I_1\times\cdots\times I_n)$ はこの対応で各 $V(I_i)$ の非交和に写るので、対応は非交和の位相についての同相写像でもある(例は Zariski位相 の記事の例「体・直積・二重数のスペクトル」)。とくに、局所環 $A_1,\dots,A_n$ の直積はちょうど $n$ 個の極大イデアルをもつ半局所環である。
無限個の環の直積では、prop-direct-product-ring-ideals の 1 と prop-direct-product-ring-primes はそのままでは成り立たない。
$(A_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$ を零環でない可換環の族とし、$\Lambda$ は無限集合とする。$A:=\prod_\lambda A_\lambda$ とし、有限個を除くすべての成分が $0$ である元の全体を
$$
\textstyle\bigoplus_\lambda A_\lambda:=\{(a_\lambda)_\lambda\in A\mid a_\lambda\neq0\text{ となる }\lambda\text{ は有限個}\}
$$
と書く。
2 の極大イデアル $\mathfrak{m}$ は、どれか 1 つの成分の素イデアルから来るものではない。したがって、無限個の直積の素スペクトルは、各 $\operatorname{Spec}A_\lambda$ の非交和よりも真に大きい。$\mathfrak{m}$ の存在には Zornの補題(選択公理)を使った。たとえば体の族の直積 $\prod_{n\in\mathbb{N}}k$ は、第 $n$ 成分が $0$ の元の全体である極大イデアル $p_n^{-1}(0)$($n\in\mathbb{N}$)を無限個もつうえに、それ以外の極大イデアルももつ。
直積環は、環を「より簡単な環の組」として表すために使われる。
加群やアーベル群では、有限個の直積と直和は一致し、無限個では $\bigoplus$ が $\prod$ の部分群になる。環では、prop-direct-product-ring-infinite の $\bigoplus_\lambda A_\lambda$ は和と積で閉じるが単位元 $1$ を含まないので、単位元をもつ環としての部分環ではない。有限個の場合も、成分への埋め込み $i_\mu$ は単位元を保たないので環準同型ではない(prop-direct-product-ring-universal の後の段落)。このため、単位元をもつ環の圏で直積環は積であるが、埋め込み $i_\mu$ を余積の射とする余積(余積(圏論))にはならない。
環の直積と中国剰余定理は DF04 §7.6 に、可換環の直積の素イデアル・冪等元・素スペクトルの関係は AM69 Chapter 1 の演習問題にある。
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