Eisenstein整数(Eisenstein integer)とは、1 の原始 3 乗根 $\omega$ を用いて $a+b\omega$($a,b$ は整数)と書ける複素数のことで、その全体 $\mathbb{Z}[\omega]$ は $\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$ の整数環であり、正三角形の格子をなす。ノルム $a^2-ab+b^2$ による割り算ができるので Euclid 整域で、単元は 1 の 6 乗根の 6 個である。素数 $p$ は、$p=3$ なら $1-\omega$ の平方の単元倍、$p\equiv2\pmod3$ なら素元のまま、$p\equiv1\pmod3$ なら同伴でない共役な 2 つの素元の積になる。素元を法とする 3 次剰余指標が定まり、この環の算術は指数 $3$ の Fermat の最終定理の証明にも使われる。
$1$ の原始 3 乗根 $\omega=e^{2\pi i/3}$ を使って $a+b\omega$($a,b$ は整数)と書ける複素数を Eisenstein 整数 という。複素平面では、Eisenstein 整数の全体は正三角形を敷き詰めた格子の頂点をなす。Gauss整数 $\mathbb{Z}[i]$ が平方数の和 $a^2+b^2$ と $4$ で割った余りを調べる道具であったのと同じように、Eisenstein 整数の全体 $\mathbb{Z}[\omega]$ は $a^2-ab+b^2$ や $x^2+3y^2$ の形の数と $3$ で割った余りを調べる道具になる。
$\mathbb{Z}[\omega]$ ではノルムを使った余りのある割り算ができ、素因数分解が一意に定まる。素数 $p$ は、$p=3$ なら $1-\omega$ の平方の単元倍、$p\equiv2\pmod3$ なら素元のまま、$p\equiv1\pmod3$ なら同伴でない 2 つの素元の積になる(thm-eis-primes)。さらに、素元を法とする剰余体で「3 乗数かどうか」を判定する 3 次剰余指標が定まる。また、$\mathbb{Z}[\omega]$ での分解と法 $\lambda^4$ の合同式は、$x^3+y^3=z^3$ が自明でない整数解をもたないことの証明に使われる。
$\omega:=e^{2\pi i/3}=\dfrac{-1+\sqrt{-3}}2$ とする。整数 $a,b$ によって $a+b\omega$ と書ける複素数を Eisenstein 整数(Eisenstein integer)といい、その全体を
$$
\mathbb{Z}[\omega]=\{a+b\omega\mid a,b\in\mathbb{Z}\}
$$
と書く。
$\omega$ は $x^2+x+1=0$ の根なので $\omega^2=-1-\omega$ であり、
$$
(a+b\omega)(c+d\omega)=(ac-bd)+(ad+bc-bd)\,\omega
$$
となる。よって $\mathbb{Z}[\omega]$ は和・差・積で閉じ、$\mathbb{C}$ の部分環で、とくに整域である。$a+b\omega=0$ なら虚部 $b\sqrt3/2$ が $0$ なので $b=0$、さらに $a=0$ であり、表し方 $a+b\omega$ は一通りである。複素共役は $\bar\omega=\omega^2=-1-\omega$ なので、$\overline{a+b\omega}=(a-b)-b\omega$ もまた Eisenstein 整数である。$\omega^3=1$ であり、$1,\omega,\omega^2$ は $x^3-1$ の 3 つの根である。
$\alpha=a+b\omega\in\mathbb{Z}[\omega]$ の ノルム を
$$
N(\alpha):=\alpha\bar\alpha=|\alpha|^2=a^2-ab+b^2
$$
で定める。
$|a+b\omega|^2=(a-\tfrac b2)^2+\tfrac34b^2$ なので、$N(\alpha)$ は $0$ 以上の整数で、$N(\alpha)=0$ となるのは $\alpha=0$ のときに限る。$N(\alpha\beta)=|\alpha\beta|^2=N(\alpha)N(\beta)$ である。また
$$
4N(a+b\omega)=(2a-b)^2+3b^2
$$
であり、この式がこの記事で何度も使われる。
$\mathbb{Z}[\omega]$ は 2 次体 $\mathbb{Q}(\sqrt{-3})$ の整数環に等しい(2次体 の記事の命題「整数環の整数底」で $d=-3$ とした場合。$d_K=-3$、$\omega_K=\frac{-3+\sqrt{-3}}2=\omega-1$ なので $\mathbb{Z}[\omega_K]=\mathbb{Z}[\omega]$)。部分環 $\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]=\mathbb{Z}[2\omega]$ はこれより真に小さく、素元分解の一意性をもたない(ex-eis-counterexamples の 1 行目)。
Eisenstein 整数の全体は、$1$ と $\omega$ を基本平行四辺形の 2 辺とする格子で、原点の周りの 6 点 $\pm1,\pm\omega,\pm\omega^2$ が距離 $1$ の正六角形をなす。この 6 点がちょうど単元である(prop-eis-units)。ノルムは原点からの距離の平方なので、Gauss整数 と同じく「ノルムの小さい元で割り算の余りを小さくする」ことができる。正三角形の格子では、平面の任意の点から最も近い格子点までの距離の平方は $\frac13$ 以下で、正方形の格子($\frac12$ 以下)よりさらに近い。
Gauss整数 との対応をまとめる。
| $\mathbb{Z}[i]$ | $\mathbb{Z}[\omega]$ | |
|---|---|---|
| ノルム | $a^2+b^2$ | $a^2-ab+b^2$ |
| 単元 | $\pm1,\pm i$(1 の 4 乗根) | $\pm1,\pm\omega,\pm\omega^2$(1 の 6 乗根) |
| 分岐する素数 | $2=-i(1+i)^2$ | $3=-\omega^2(1-\omega)^2$ |
| 分解する素数 | $p\equiv1\pmod4$ | $p\equiv1\pmod3$ |
| 素元のままの素数 | $p\equiv3\pmod4$ | $p\equiv2\pmod3$ |
| 剰余指標 | 4 次剰余 | 3 次剰余 |
$\alpha\in\mathbb{Z}[\omega]$ が単元であることと $N(\alpha)=1$ は同値である。単元はちょうど $\pm1,\pm\omega,\pm\omega^2$ の 6 個で、$-\omega$ の冪 $(-\omega)^k$($k=0,1,\dots,5$)に一致する。
要点:単元のノルムは $1$ で、$(2a-b)^2+3b^2=4$ の整数解は 6 組しかない。
$\alpha\beta=1$ なら $N(\alpha)N(\beta)=1$ で、両方とも正の整数なので $N(\alpha)=1$ である。逆に $N(\alpha)=1$ なら $\alpha\bar\alpha=1$ かつ $\bar\alpha\in\mathbb{Z}[\omega]$ なので $\alpha$ は単元である。
$N(a+b\omega)=1$ は $(2a-b)^2+3b^2=4$ と同値である。$3b^2\le4$ から $b\in\{0,\pm1\}$ である。$b=0$ なら $4a^2=4$ で $a=\pm1$。$b=1$ なら $(2a-1)^2=1$ で $a\in\{0,1\}$。$b=-1$ なら $(2a+1)^2=1$ で $a\in\{0,-1\}$。よって単元は $\pm1$、$\omega$、$1+\omega=-\omega^2$、$-\omega$、$-1-\omega=\omega^2$ の 6 個である。$(-\omega)^2=\omega^2$、$(-\omega)^3=-1$ なので、これらは $(-\omega)^k$($0\le k\le5$)と一致する。$\square$
単元倍だけ異なる 2 元を 同伴 という。$0$ でも単元でもなく、2 つの元の積に書くと必ず一方が単元になる元を 既約元、$\pi\mid\alpha\beta$ なら $\pi\mid\alpha$ または $\pi\mid\beta$ となる $0$ でも単元でもない元を 素元 という(既約元・素元)。
$\alpha,\beta\in\mathbb{Z}[\omega]$、$\beta\neq0$ とする。$\alpha=\kappa\beta+\rho$、$N(\rho)\le\frac34N(\beta)$ となる $\kappa,\rho\in\mathbb{Z}[\omega]$ が存在する。とくに $\mathbb{Z}[\omega]$ はノルムについて Euclid整域 である。
$\alpha\bar\beta\in\mathbb{Z}[\omega]$ なので、$\alpha/\beta=\alpha\bar\beta/N(\beta)=R+S\omega$($R,S\in\mathbb{Q}$)と書ける。$|R-x|\le\frac12$、$|S-y|\le\frac12$ となる整数 $x,y$ をとり、$\kappa=x+y\omega$、$r=R-x$、$s=S-y$ とおく。ノルムの式は有理数係数の $r+s\omega$ でも $|r+s\omega|^2=r^2-rs+s^2$ を与えるので
$$
\Bigl|\frac\alpha\beta-\kappa\Bigr|^2=r^2-rs+s^2\le r^2+|r||s|+s^2\le\frac14+\frac14+\frac14=\frac34
$$
である。$\rho:=\alpha-\kappa\beta\in\mathbb{Z}[\omega]$ とおくと $N(\rho)=|\beta|^2\,|\alpha/\beta-\kappa|^2\le\frac34N(\beta)< N(\beta)$ である。$\square$
Euclid整域 の記事の命題「Euclid整域は単項イデアル整域である」と 単項イデアル整域 の記事の定理「単項イデアル整域は一意分解整域」により、$\mathbb{Z}[\omega]$ は単項イデアル整域かつ一意分解整域であり、同記事の補題「既約元は素元」により既約元と素元は一致する。$0$ でも単元でもない元は、順序と単元倍を除いて一通りに素元の積に書ける。
$\alpha=11$、$\beta=3+\omega$($N(\beta)=9-3+1=7$)とする。$\bar\beta=2-\omega$ なので $\alpha/\beta=11(2-\omega)/7=\frac{22}7-\frac{11}7\omega$ で、$x=3$、$y=-2$ をとる。$\kappa=3-2\omega$ について $\kappa\beta=9-3\omega-2\omega^2=11-\omega$ なので
$$
11=(3-2\omega)(3+\omega)+\omega,\qquad N(\omega)=1<7
$$
である。余りが単元なので、$11$ と $3+\omega$ の最大公約元は $1$ である。
$N(\pi)$ が素数なら $\pi$ は $\mathbb{Z}[\omega]$ の素元である。
$\pi=\beta\gamma$ なら $N(\beta)N(\gamma)=N(\pi)$ は素数なので、どちらかのノルムは $1$ で、prop-eis-units によりそれは単元である。$\pi$ は単元でない(ノルムが $1$ でない)ので既約元であり、上で述べたとおり素元である。$\square$
逆は成り立たない。thm-eis-primes の 2 により $2$ は素元だが、$N(2)=4$ である。
以下、$\lambda:=1-\omega$ とおく。
要点:$\lambda^2=-3\omega$ を展開で確かめ、$\omega\mapsto1$ が $\mathbb{F}_3$ への準同型を定めることを使う。
1:$N(1-\omega)=1+1+1=3$ は素数なので prop-eis-norm-prime により $\lambda$ は素元である。$\lambda^2=1-2\omega+\omega^2=1-2\omega-1-\omega=-3\omega$ であり、両辺に $-\omega^2$ を掛けて $-\omega^2\lambda^2=3\omega^3=3$ を得る。$1-\omega^2=(1-\omega)(1+\omega)$ と $1+\omega=-\omega^2$ から $\bar\lambda=-\omega^2\lambda$ である。
2:$\mathbb{Z}[\omega]$ の元は $\mathbb{Z}$ 係数の多項式に $\omega$ を代入したもので、その値は $x^2+x+1$ で割った余りで決まる。$\mathbb{F}_3$ で $1^2+1+1=0$ なので、$\omega\mapsto1$ は環準同型 $a+b\omega\mapsto a+b$ を定め、明らかに全射である。$\lambda\mapsto0$ なので核は $(\lambda)$ を含む。逆に $3\mid a+b$ なら、$a+b\omega=(a+b)-b\lambda$ で、$a+b=3c=-\omega^2\lambda^2c$ なので $a+b\omega\in(\lambda)$ である。$\square$
$p\neq3$ を素数とする。$c^2+c+1\equiv0\pmod p$ となる整数 $c$ が存在することと、$p\equiv1\pmod3$ は同値である。
要点:$\mathbb{F}_p^\times$ が巡回群なので、位数 $3$ の元があることと $3\mid p-1$ は同値であり、位数 $3$ の元は $x^2+x+1$ の根である。
$p\equiv1\pmod3$ とする。有限体 の記事の定理「有限体の乗法群の構造」により $\mathbb{F}_p^\times$ は位数 $p-1$ の巡回群なので、位数 $3$ の元 $g$ がある。$0=g^3-1=(g-1)(g^2+g+1)$ と $g\neq1$ から $g^2+g+1=0$ であり、$g$ を表す整数を $c$ とすればよい。
逆に $c^2+c+1\equiv0\pmod p$ なら $c^3-1=(c-1)(c^2+c+1)\equiv0$ である。$c\equiv1$ なら $3\equiv0\pmod p$ となり $p\neq3$ に反するので、$c$ の $\mathbb{F}_p^\times$ での位数は $3$ であり、Lagrangeの定理 により $3\mid p-1$ である。$\square$
$p=2$ でも、$c^2+c+1$ はつねに奇数なので主張は成り立つ。
$\mathbb{Z}[\omega]$ の素元 $\pi$ は、ただ 1 つの素数 $p$ を割り切り、$N(\pi)$ は $p$ か $p^2$ である。素元は次のどれかと同伴である。
$\pi\bar\pi=N(\pi)$ は $2$ 以上の整数で、素数の積に分解する。$\pi$ は素元なので、そのどれか $p$ を割り切る。$\pi$ が相異なる素数 $p,q$ を割り切るなら、$1=up+vq$($u,v\in\mathbb{Z}$)から $\pi\mid1$ となって矛盾する。$\pi\mid p$ から $N(\pi)\mid N(p)=p^2$ で、$N(\pi)\neq1$ なので $N(\pi)\in\{p,p^2\}$ である。以下、$p$ ごとに $p$ を割り切る素元を決める。$\mathbb{Z}[\omega]$ は一意分解整域なので、$p$ の素元分解に現れる素元を求めればよい。
$p=3$:lem-eis-lambda の 1 により $3=-\omega^2\lambda^2$ で、$3$ を割り切る素元は $\lambda$ と同伴である。
$p\equiv2\pmod3$:$p$ が素元でないとすると、$p=\beta\gamma$(どちらも単元でない)と書けて $N(\beta)N(\gamma)=p^2$、$N(\beta)\neq1\neq N(\gamma)$ から $N(\beta)=p$ である。$\beta=a+b\omega$ とすると $4p=(2a-b)^2+3b^2\equiv(2a-b)^2\pmod 3$ で、平方数は $3$ で割って $0$ か $1$ 余るが、$4p\equiv p\equiv2\pmod3$ なので矛盾する。よって $p$ は既約元、すなわち素元である。
$p\equiv1\pmod3$:lem-eis-cube-root-mod-p により $p\mid c^2+c+1=(c-\omega)(c-\bar\omega)$ となる整数 $c$ がある。$p$ が素元なら $p\mid c-\omega$ または $p\mid c-\bar\omega=(c+1)+\omega$ だが、どちらも $\omega$ の係数が $\pm1$ で $p$ の倍数でないので、$p$ では割り切れない。よって $p$ は素元でも既約元でもなく、$p=\beta\gamma$(どちらも単元でない)と書ける。上と同様に $N(\beta)=p$ で、$\pi_0:=\beta$ は prop-eis-norm-prime により素元、$p=N(\pi_0)=\pi_0\bar\pi_0$ であり、$\bar\pi_0$ もノルム $p$ の素元である。
$\pi_0=a+b\omega$ と $\bar\pi_0$ が同伴だとして矛盾を導く。$\bar\pi_0=u\pi_0$($u$ は単元)なら $\pi_0$ は $\pi_0+\bar\pi_0=2a-b$ と $\pi_0-\bar\pi_0=b(\omega-\bar\omega)=b\sqrt{-3}$ を割り切る。ノルムをとると $p\mid(2a-b)^2$、$p\mid3b^2$ で、$p\neq3$ なので $p\mid b$、$p\mid 2a$ である。$p$ は奇数なので $p\mid a$ となり、$p\mid\pi_0$、したがって $p^2\mid N(\pi_0)=p$ となって矛盾する。
最後に、$p$ の素元分解は $p=\pi_0\bar\pi_0$ なので、$p$ を割り切る素元は $\pi_0$ か $\bar\pi_0$ と同伴である。$\square$
$\bar\omega=-1-\omega$ を使うと $\overline{a+b\omega}=(a-b)-b\omega$ である。
| $p$ | $p\bmod3$ | $\mathbb{Z}[\omega]$ での分解 | $p=x^2+3y^2$ |
|---|---|---|---|
| $2$ | $2$ | 素元 | 表せない |
| $3$ | $0$ | $-\omega^2(1-\omega)^2$ | $0^2+3\cdot1^2$ |
| $5$ | $2$ | 素元 | 表せない |
| $7$ | $1$ | $(3+\omega)(2-\omega)$ | $2^2+3\cdot1^2$ |
| $13$ | $1$ | $(4+\omega)(3-\omega)$ | $1^2+3\cdot2^2$ |
| $19$ | $1$ | $(5+2\omega)(3-2\omega)$ | $4^2+3\cdot1^2$ |
たとえば $(3+\omega)(2-\omega)=6-\omega-\omega^2=7$ である。$7$ の 2 つの因子は thm-eis-primes の 3 により同伴でなく、これが $7$ の素元分解である。
素数 $p$ について、次の 3 条件は同値である。
要点:同伴な 3 つの元の $\omega$ の係数のどれかは偶数なので、$4N=(2a-b)^2+3b^2$ から $x^2+3y^2$ の形が得られる。
1 ⇒ 2:$p=3$ なら $3=N(1-\omega)$、$p\equiv1\pmod3$ なら thm-eis-primes の 3 により $p=N(\pi_0)$ である。
2 ⇒ 3:$p=N(\pi)$、$\pi=a+b\omega$ とする。$\omega\pi=-b+(a-b)\omega$、$\omega^2\pi=(b-a)-a\omega$ なので、同伴な元 $\pi,\omega\pi,\omega^2\pi$ の $\omega$ の係数は $b$、$a-b$、$-a$ である。$a,b$ がともに奇数なら $a-b$ は偶数なので、3 つのうち少なくとも 1 つは偶数である。同伴な元のノルムは等しいので、はじめから $b=2y$ としてよい。$x:=a-y$ とおくと $4p=(2a-b)^2+3b^2=4x^2+12y^2$、すなわち $p=x^2+3y^2$ である。
3 ⇒ 1:$x+y\sqrt{-3}=(x+y)+2y\omega$ なので $p=x^2+3y^2=N((x+y)+2y\omega)$ である。ノルム $p$ の元があれば $p$ は素元でないから、thm-eis-primes の 2 により $p\not\equiv2\pmod3$ である。$\square$
正の整数 $n$ が $n=a^2-ab+b^2$($a,b\in\mathbb{Z}$)と書けるための必要十分条件は、$n$ の素因数分解で $3$ で割って $2$ 余る素数がすべて偶数乗で現れることである。
要点:ノルムの乗法性と素元の分類による。
十分性:$3=N(\lambda)$、$p\equiv1\pmod3$ なら $p=N(\pi_0)$、$p\equiv2\pmod3$ なら $p^2=N(p)$ で、ノルムは乗法的なので、条件を満たす $n$ はノルムである。
必要性:$n=N(\alpha)$ とし、$\alpha=u\prod_j\pi_j^{e_j}$ を素元分解($u$ は単元、$\pi_j$ は互いに同伴でない素元)とする。$n=\prod_jN(\pi_j)^{e_j}$ であり、thm-eis-primes により $q\equiv2\pmod3$ である素数 $q$ を割り切る素元は $q$ と同伴なものだけで、そのノルムは $q^2$ である。ほかの素元のノルムは $q$ と素なので、$n$ における $q$ の指数は $2e$($e$ は $\alpha$ の素元分解での $q$ の指数)で偶数である。$\square$
たとえば $21=3\cdot7=N(\lambda(3+\omega))$ は表せるが、$50=2\cdot5^2$ は $2$ が 1 乗なので表せない。
$\pi$ を素元とすると、$\mathbb{Z}[\omega]/(\pi)$ は $N(\pi)$ 個の元からなる有限体である。具体的には、$\pi\sim\lambda$ なら $\mathbb{F}_3$、$\pi\sim p$($p\equiv2\pmod3$)なら $\mathbb{F}_{p^2}$、$N(\pi)=p\equiv1\pmod3$ なら $\mathbb{F}_p$ である($\sim$ は同伴)。
要点:$p\equiv2$ では $x^2+x+1$ が $\mathbb{F}_p$ 上既約であり、$p\equiv1$ では $\omega$ が法 $\pi$ で整数と合同になる。
$\pi\sim\lambda$ の場合は lem-eis-lambda の 2 である。$p\equiv2\pmod3$ のとき、$\mathbb{Z}[\omega]\cong\mathbb{Z}[x]/(x^2+x+1)$ から $\mathbb{Z}[\omega]/(p)\cong\mathbb{F}_p[x]/(x^2+x+1)$ である。lem-eis-cube-root-mod-p により $x^2+x+1$ は $\mathbb{F}_p$ に根をもたず、2 次式なので既約であり、剰余環は $p^2$ 元の体である。$N(\pi)=p\equiv1\pmod3$ のとき、lem-eis-cube-root-mod-p の整数 $c$ をとると $\pi\mid p\mid c^2+c+1=(c-\omega)(c-\bar\omega)$ なので、$\pi$ は $c-\omega$ か $c-\bar\omega=(c+1)+\omega$ を割り切る。したがって、$\omega$ は法 $\pi$ で整数 $c$ か $-c-1$ と合同である。よって $\mathbb{Z}\to\mathbb{Z}[\omega]/(\pi)$ は全射で、核は $p\in(\pi)$ と $1\notin(\pi)$ から $p\mathbb{Z}$ であり、剰余環は $\mathbb{F}_p$ である。どの場合も元の個数は $N(\pi)$ に等しい。$\square$
$N(\pi)\neq3$ なら、$N(\pi)=p\equiv1$ または $N(\pi)=p^2\equiv1\pmod 3$ なので $3\mid N(\pi)-1$ である。
$\pi$ を $N(\pi)\neq3$ である素元とし、$q:=N(\pi)$ とおく。$\pi\nmid\alpha$ である $\alpha\in\mathbb{Z}[\omega]$ について、
$$
\alpha^{(q-1)/3}\equiv\omega^k\pmod\pi
$$
となる $k\in\{0,1,2\}$ がただ 1 つある。$\omega^k$ を $\left(\frac\alpha\pi\right)_3$ と書き、3 次剰余指標 という。次が成り立つ。
$F:=\mathbb{Z}[\omega]/(\pi)$ は prop-eis-residue-fields により $q$ 元体で、$F^\times$ は位数 $q-1=3m$ の巡回群である(有限体 の記事の定理「有限体の乗法群の構造」)。その生成元を $g$ とする。$\alpha$ の像は $F^\times$ に属し、$t:=\alpha^m$ は $t^3=\alpha^{q-1}=1$ を満たす。$F[x]$ で $x^3-1=(x-1)(x-\omega)(x-\omega^2)$ なので $t$ は $1,\omega,\omega^2$ の像のどれかに等しい。これら 3 つの差 $1-\omega=\lambda$、$1-\omega^2=-\omega^2\lambda$、$\omega-\omega^2=\omega\lambda$ はどれも $\lambda$ と同伴で、$N(\pi)\neq3$ より $\pi$ は $\lambda$ と同伴でないので $\pi\nmid\lambda$ である。よって 3 つの像は相異なり、$k$ はただ 1 つに決まる。
1:$\alpha\equiv g^j$ とすると、$\alpha^m=g^{jm}$ が $1$ であることは $3m\mid jm$、すなわち $3\mid j$ と同値である。$F^\times$ の 3 乗元はちょうど $g^{3i}$ の形の元なので、これは $\alpha$ の像が 3 乗元であることと同値である。2 は定義から明らかである。$\square$
$\pi=3+\omega$ は $N(\pi)=7$ の素元で、$\omega\equiv-3\equiv4\pmod\pi$ である($4^2+4+1=21\equiv0\pmod 7$)。よって $\mathbb{Z}[\omega]/(\pi)\cong\mathbb{F}_7$ で $\omega\mapsto4$ である。$(q-1)/3=2$ で $2^2=4$ なので $\left(\frac2\pi\right)_3=\omega$ であり、$2$ は法 $\pi$ で 3 乗元でない。実際、$\mathbb{F}_7^\times$ の 3 乗元は $1^3=1$、$3^3=27\equiv6$ などで $\{1,6\}$ に限る。一方 $6^2=36\equiv1$ なので $\left(\frac6\pi\right)_3=1$ である。
$\lambda\nmid\alpha$ なら $\alpha^3\equiv\pm1\pmod{\lambda^4}$ である。$\lambda^4=9\omega^2$ なので、これは $\alpha^3\mp1$ が $9$ で割り切れることと同じである。
lem-eis-lambda の 2 により $\alpha\equiv\pm1\pmod\lambda$ なので、必要なら $\alpha$ を $-\alpha$ に替えて $\alpha=1+\beta\lambda$($\beta\in\mathbb{Z}[\omega]$)としてよい。$1-\omega=\lambda$、$1-\omega^2=-\omega^2\lambda$ から
$$
\alpha^3-1=(\alpha-1)(\alpha-\omega)(\alpha-\omega^2)=\beta\lambda\cdot(\beta+1)\lambda\cdot(\beta-\omega^2)\lambda=\lambda^3\,\beta(\beta+1)(\beta-\omega^2)
$$
である。$\omega\equiv1\pmod\lambda$ なので $\beta-\omega^2\equiv\beta-1\pmod\lambda$ であり、$\beta$ は法 $\lambda$ で $0,1,-1$ のどれかと合同なので、$\beta,\beta+1,\beta-1$ のどれかは $\lambda$ で割り切れる。よって $\lambda^4\mid\alpha^3-1$ である。最後の言い換えは $\lambda^4=(-3\omega)^2=9\omega^2$ による。$\square$
この命題は、$x^3+y^3=z^3$ が $xyz\neq0$ である整数解をもたないこと(指数 $3$ の Fermat の最終定理)の証明の最初の段階である。$x^3+y^3=(x+y)(x+\omega y)(x+\omega^2y)$ と $\mathbb{Z}[\omega]$ で分解し、$\lambda$ の指数についての無限降下法で矛盾を導く。証明は HW60 §13.4 の Theorem 227(pp. 193–195)にあり、この記事では証明しない。そこでは prop-eis-cube-mod-lambda4 が Theorem 228 として使われ、より強く $\xi^3+\eta^3+\zeta^3=0$ が $\mathbb{Z}[\omega]$ で $\xi\eta\zeta\neq0$ の解をもたないことが示されている。
$\mathbb{Z}[\omega]$ は $\mathbb{C}$ の中の格子で、$\omega\,\mathbb{Z}[\omega]=\mathbb{Z}[\omega]$ を満たす。この回転対称性から、Weierstrass の楕円関数の不変量について $g_2=0$ となり、対応する楕円曲線 $y^2=4x^3-g_3$ は位数 $6$ の自己同型をもつ(Weierstrassの楕円関数 の例「Eisenstein整数の格子では $g_2=0$」)。この楕円曲線は $\mathbb{Z}[\omega]$ による虚数乗法をもち、j不変量 は $0$ である(虚数乗法 の例「Eisenstein 整数の格子」)。格子の図は 複素トーラス にある。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| 整数環 $\mathbb{Z}[\omega]$ で考える | 部分環 $\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]$ と $4=2\cdot2=(1+\sqrt{-3})(1-\sqrt{-3})$ | 素元分解の一意性 |
| $p\equiv1\pmod3$(cor-eis-norm-forms) | $p=5$ | $p=a^2-ab+b^2$ と書けること |
| $p\neq3$(thm-eis-primes の 3 の非同伴性) | $p=3=\lambda\bar\lambda$ | 2 つの共役な因子が同伴でないこと |
| $N(\pi)\neq3$(thm-eis-cubic-character) | $\pi=\lambda$ | 指数 $(q-1)/3$ が整数であること。$\mathbb{F}_3$ では 3 乗写像が恒等写像で、どの元も 3 乗元 |
| $\lambda\nmid\alpha$(prop-eis-cube-mod-lambda4) | $\alpha=\lambda$ | $\alpha^3\equiv\pm1\pmod{\lambda^4}$。$\lambda^3$ は $\lambda$ で割り切れ、$\pm1$ は割り切れない |
1 行目:$\mathbb{Z}[\sqrt{-3}]$ の元 $x+y\sqrt{-3}$ のノルムは $x^2+3y^2$ で、単元は $\pm1$ だけである。$2$、$1\pm\sqrt{-3}$ はノルム $4$ をもち、ノルム $2$ の元はない($x^2+3y^2=2$ に整数解がない)ので、どれも既約元である。$2$ と $1+\sqrt{-3}$ は $\pm1$ 倍の違いでないので、$4$ の既約元への分解が 2 通りある。$\mathbb{Z}[\omega]$ では $1+\sqrt{-3}=2+2\omega=-2\omega^2$ と $2$ は同伴なので、この現象は起きない。
2 行目:thm-eis-primes の 2 により $5$ は素元で、ノルム $5$ の元はない。3 行目:lem-eis-lambda の 1 により $\bar\lambda=-\omega^2\lambda$ である。4 行目:$q=3$ で $(q-1)/3=2/3$。$\mathbb{F}_3$ では $0^3=0$、$1^3=1$、$2^3=8\equiv2$ である。
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