線型同値(linear equivalence)とは、スキームの上の 2 つの因子 $D,D'$ の差が有理関数 $f$ の零点と極の因子(主因子)$\operatorname{div}(f)$ になることであり、Weil 因子にも Cartier 因子にも定義される。Cartier 因子が線型同値であることは付随する可逆層が同型であることと同値で、整スキームでは線型同値類の群は Picard 群と一致する。$D$ と線型同値な有効因子の全体(完備線型系 $|D|$)は可逆層 $\mathcal{O}_X(D)$ の大域切断の空間の 1 次元部分空間全体と対応し、非特異射影曲線は異なる 2 点が線型同値になるときに限り射影直線と同型である。線型同値は代数的同値・数値的同値より細かい同値関係で、交叉数や Riemann–Roch の定理の土台になる。
射影直線 $\mathbb{P}^1$ の上の 2 点 $P=(a:1)$、$Q=(b:1)$($a\ne b$)は、有理関数 $f=(x-a)/(x-b)$ のただ 1 つの零点とただ 1 つの極であり、$f$ の零点と極の因子は $\operatorname{div}(f)=P-Q$ である。このように、2 つの因子の差がある有理関数の零点と極の因子(主因子)になるとき、2 つの因子は線型同値であるという。線型同値な因子は同じ可逆層を定め、有効な因子どうしなら、1 つの可逆層の 2 つの切断の零点として、$\mathbb{P}^1$ でパラメータづけられた族の 2 つのメンバーとして結ばれる。
線型同値類の群は、Weil 因子については因子類群、整スキームの Cartier 因子については Picard群 と一致する。線型同値は有理同値の余次元 $1$ の場合であり、線型同値な因子は同じ交叉数をもつ。この記事では、線型同値を Weil 因子と Cartier 因子の両方について定義し、ある因子と線型同値な有効因子の全体(完備線型系)が可逆層の大域切断の空間で記述されること、有効因子どうしの線型同値が 1 つの可逆層の 2 つの切断で特徴づけられること、非特異射影曲線が射影直線と同型であることが 2 点の線型同値で判定できることを証明する。
$X$ を Noether で分離的な整スキームで、余次元 $1$ の点の局所環がすべて離散付値環であるもの(たとえば Noether な正規スキーム)とし、$K$ をその関数体とする。余次元 $1$ の既約閉集合(素因子)$Y$ の付値を $\operatorname{ord}_Y\colon K^\times\to\mathbb{Z}$ と書き、$f\in K^\times$ の主因子を $\operatorname{div}(f):=\sum_Y\operatorname{ord}_Y(f)\,Y$ と定める。2 つの Weil因子 $D,D'$ は、
$$
D-D'=\operatorname{div}(f)
$$
となる $f\in K^\times$ が存在するとき線型同値(linearly equivalent)であるといい、$D\sim D'$ と書く。
$X$ をスキームとし、$\mathcal{K}_X$ を全商環の層(有理関数の層)、$\mathcal{K}_X^\times$ をその可逆元の層とする。$f\in\Gamma(X,\mathcal{K}_X^\times)$ に対し、開被覆 $\{X\}$ と局所方程式 $f$ で表される Cartier因子 を $f$ の主因子 $\operatorname{div}(f)$ という。2 つの Cartier 因子 $D,E$ は、$D-E=\operatorname{div}(f)$ となる $f\in\Gamma(X,\mathcal{K}_X^\times)$ が存在するとき線型同値であるといい、$D\sim E$ と書く。
$\operatorname{div}(fg)=\operatorname{div}(f)+\operatorname{div}(g)$、$\operatorname{div}(f^{-1})=-\operatorname{div}(f)$ だから主因子の全体は部分群であり、$\sim$ は同値関係で、和と両立する($D\sim D'$、$E\sim E'$ なら $D+E\sim D'+E'$)。同値類を線型同値類といい、類の群は Weil 因子なら因子類群 $\operatorname{Cl}(X)$、Cartier 因子なら Cartier 因子類群 $\operatorname{CaCl}(X)$ である。2 つの定義の関係は Cartier因子 の定理「CartierからWeilへ」にあり、正規なスキームでは Cartier 因子を Weil 因子とみなす写像が線型同値を保ちかつ反映し、正則スキーム(たとえば非特異多様体)では 2 つの線型同値は同じものになる。
$X$ を整スキーム、$D$ を Cartier 因子とする。$D$ と線型同値な有効 Cartier 因子の全体
$$
|D|:=\{E\mid E\ge0,\ E\sim D\}
$$
を $D$ の完備線型系(complete linear system)という。def-le-weil の条件をみたすスキームの Weil 因子についても、同じ式で完備線型系を定める。
線型同値の典型は「$\mathbb{P}^1$ 上を動く因子の族」である。可逆層 $\mathcal{L}$ の 2 つの切断 $s_0,s_1$ をとると、$t\in k$ ごとに切断 $s_0-ts_1$ の零点 $D_t$ が定まり($t=\infty$ では $s_1$ の零点)、どの 2 つのメンバーの差も有理関数 $(s_0-ts_1)/(s_0-t's_1)$ の主因子になる。$\mathbb{P}^2$ の直線 $ax+by+cz=0$ が $(a:b:c)$ を動かしてすべて線型同値になるのは、直線の方程式どうしの比が有理関数だからである。逆に、線型同値な有効因子はこのような族のメンバーとして結ばれる(thm-le-pencil)。
もう 1 つの見方は可逆層である。因子 $D$ は可逆層 $\mathcal{O}_X(D)$ と、その有理切断 $1$ の組とみなせる。有理切断を $f$ 倍に取り替えると因子は $\operatorname{div}(f)$ だけずれるので、可逆層だけを覚えていれば因子は線型同値を除いて定まる。こうして線型同値類は可逆層の同型類と同じものになる(Cartier因子 の定理「Cartier因子類群とPicard群」)。
$k$ を体とし、$\mathbb{P}^n=\operatorname{Proj}k[x_0,\dots,x_n]$ の超曲面 $V_+(F)$、$V_+(G)$ を同じ次数 $d$ の斉次多項式 $F,G$ の零点(重複度込みの因子)とする。比 $F/G$ は斉次 $0$ 次の有理関数で $\operatorname{div}(F/G)=V_+(F)-V_+(G)$ だから、同じ次数の超曲面はすべて線型同値である。逆に次数は線型同値類の不変量であり、次数は同型 $\operatorname{Cl}(\mathbb{P}^n)\cong\mathbb{Z}$ を与える(Weil因子 の定理「射影空間の因子類群」)。とくに $k$ が代数閉体なら、$\mathbb{P}^1$ の任意の 2 点は線型同値である。
$k$ を代数閉体とし、$Q=\mathbb{P}^1\times\mathbb{P}^1$($\mathbb{P}^3$ の非特異 2 次曲面 $xy=zw$ と同型)を考える。2 つの射影 $p_1,p_2$ による点の引き戻しを $\ell_1=\{a\}\times\mathbb{P}^1$、$\ell_2=\mathbb{P}^1\times\{b\}$ とすると、$\operatorname{Cl}(Q)\cong\mathbb{Z}\oplus\mathbb{Z}$ であり、$\ell_1,\ell_2$ の類が基底である(Har77 II, Example 6.6.1, p. 135)。同じ族の直線は線型同値($p_1^*$ が線型同値を保つ。prop-le-pullback)、異なる族の直線は線型同値でない。対角線 $\Delta$ は双次数 $(1,1)$ の多項式 $x_0y_1-x_1y_0$ の零点だから $\Delta\sim\ell_1+\ell_2$ である。
代数閉体上の楕円曲線 $E$ では、異なる 2 点 $P\ne Q$ は線型同値でない。これは thm-le-rational-curve の特別な場合であり、$\operatorname{Cl}(E)\cong\mathbb{Z}\oplus E(k)$ という記述(Weil因子 の例「楕円曲線の因子類群」)の一部である。次数 $0$ の因子 $P-Q$ は、次数という不変量では $0$ と区別できないが、線型同値では $0$ と区別される。
$A$ を Dedekind整域、$X=\operatorname{Spec}A$ とすると、素因子は $0$ でない素イデアルであり、Weil 因子 $\sum n_\mathfrak{p}\mathfrak{p}$ は分数イデアル $\prod\mathfrak{p}^{n_\mathfrak{p}}$ と対応する。主因子は単項分数イデアルに対応するので、線型同値類の群はイデアル類群である(Picard群 の例「Dedekind整域とイデアル類群」)。たとえば $A=\mathbb{Z}[\sqrt{-5}]$ で $\mathfrak{p}=(2,1+\sqrt{-5})$ は $0$ と線型同値でない。
$X=\operatorname{Spec}k[x,y]/(xy)$(交わる 2 直線)とし、$D=0$ とする。$x$ は $\Gamma(X,\mathcal{O}_X(0))=\Gamma(X,\mathcal{O}_X)$ の $0$ でない元であるが、$y$ 軸の上で恒等的に $0$ になる零因子であり、$\mathcal{K}_X^\times$ の切断ではない。したがって「$D+\operatorname{div}(x)$」という Cartier 因子は定まらず、thm-le-linear-system の 1 は成り立たない。整スキームでは $0$ でない切断の芽はすべて非零因子なので、この現象は起きない。
$X=\mathbb{A}^1\setminus\{0\}=\operatorname{Spec}k[t,t^{-1}]$、$D=0$ とする。$X$ は整だから thm-le-linear-system の全単射 $(\Gamma(X,\mathcal{O}_X)\setminus\{0\})/\Gamma(X,\mathcal{O}_X^\times)\to|0|$ は成り立つが、$\Gamma(X,\mathcal{O}_X^\times)=\{ct^m\mid c\in k^\times,\ m\in\mathbb{Z}\}$ は $k^\times$ より大きい。たとえば $1$ と $t$ は $\Gamma(X,\mathcal{O}_X)$ の $k$ 上 1 次独立な元であるが、どちらも主因子 $0$ を与える。したがって $g\mapsto\operatorname{div}(g)$ が誘導する写像 $\mathbb{P}(\Gamma(X,\mathcal{O}_X))\to|0|$ は全射だが単射でない。この写像が全単射になるには $\Gamma(X,\mathcal{O}_X^\times)=k^\times$(たとえば $\Gamma(X,\mathcal{O}_X)=k$)が要る。
$k=\mathbb{R}$、$C=V_+(x^2+y^2+z^2)\subset\mathbb{P}^2_\mathbb{R}$ とする。$C$ は非特異な射影曲線で、$\mathbb{R}$ 有理点をもたないから $\mathbb{P}^1_\mathbb{R}$ と同型でない。$C$ と直線 $x=0$、$y=0$ の交わりはそれぞれ $y^2+z^2=0$、$x^2+z^2=0$ で定まる剰余体 $\mathbb{C}$ の閉点 $P$、$Q$($P\ne Q$)であり、$x|_C$、$y|_C$ は可逆層 $\mathcal{O}_C(1)$ の切断で零点がそれぞれ $P$、$Q$ だから、$P-Q=\operatorname{div}(x/y)$、すなわち $P\sim Q$ である。したがって thm-le-rational-curve は $k$ が代数閉体でないと成り立たない。
上の 3 つの反例を、外す条件ごとにまとめる。
| 外す条件 | 反例 | 成り立たなくなること |
|---|---|---|
| $X$ が整(thm-le-linear-system) | $\operatorname{Spec}k[x,y]/(xy)$ と切断 $x$ | $0$ でない切断から有効因子が作れない |
| $\Gamma(X,\mathcal{O}_X)=k$(thm-le-linear-system の後半) | $\mathbb{A}^1\setminus\{0\}$ と $D=0$ | $g\mapsto D+\operatorname{div}(g)$ が誘導する写像 $\mathbb{P}(\Gamma(X,\mathcal{O}_X(D)))\to$ 完備線型系が単射でない($1$ と $t$ が同じ因子 $0$ を与える) |
| $k$ が代数閉体(thm-le-rational-curve) | $\mathbb{R}$ 上の円錐曲線 $x^2+y^2+z^2=0$ | 異なる閉点が線型同値なのに $\mathbb{P}^1$ と同型でない |
線型同値の最も基本的な性質は、線型同値類が可逆層の同型類と一致することである。これは Cartier因子 の定理「Cartier因子類群とPicard群」で証明されている:任意のスキーム $X$ の Cartier 因子 $D,E$ について $D\sim E$ と $\mathcal{O}_X(D)\cong\mathcal{O}_X(E)$ は同値であり、$X$ が整なら $\operatorname{CaCl}(X)\cong\operatorname{Pic}(X)$ である。さらに $X$ が def-le-weil の仮定をみたし局所分解的(たとえば非特異多様体)なら Weil 因子と Cartier 因子は一致し、$\operatorname{Cl}(X)\cong\operatorname{CaCl}(X)\cong\operatorname{Pic}(X)$ となる(同記事の定理「CartierからWeilへ」)。また、$X$ が既約かつ被約な代数多様体なら、Weil 因子の線型同値は余次元 $1$ のサイクルの有理同値と同じものである(有理同値 の命題「余次元1の有理同値は線型同値」)。
以下では、整スキーム $X$(関数体 $K$)の Cartier 因子 $D=\{(U_i,f_i)\}$ について、$\mathcal{O}_X(D)$ を $\mathcal{K}_X$ の部分層として扱う。整スキームでは $\mathcal{K}_X$ は $K$ を値とする定数層であり、
$$
\Gamma(X,\mathcal{O}_X(D))=\{g\in K\mid \text{各 }i\text{ について }f_ig\in\Gamma(U_i,\mathcal{O}_X)\}
$$
である(Cartier因子 の定義「Cartier因子に付随する可逆層」)。また $\Gamma(X,\mathcal{K}_X^\times)=K^\times$ である。
$X$ を整スキーム、$K$ をその関数体、$D=\{(U_i,f_i)\}$ を Cartier 因子とする。
1:$X$ は整なので、各点の局所環は整域であり、$\Gamma(U_i,\mathcal{O}_X)$ の $0$ でない元の芽はすべて $0$ でない、すなわち非零因子である。$g\ne0$ で $f_i\in K^\times$ だから $f_ig$ は $\Gamma(U_i,\mathcal{O}_X)$ の $0$ でない元である。$\operatorname{div}(g)$ はどの開集合の上でも局所方程式 $g$ で表されるから、$D+\operatorname{div}(g)$ は $U_i$ 上の局所方程式 $f_ig$ で表される。これらは正則な非零因子なので $D+\operatorname{div}(g)\ge0$ であり、差 $\operatorname{div}(g)$ は主因子だから $D+\operatorname{div}(g)\sim D$ である。
2:$E\ge0$、$E\sim D$ とする。$\Gamma(X,\mathcal{K}_X^\times)=K^\times$ だから $E=D+\operatorname{div}(g)$ となる $g\in K^\times$ がある。$E$ は $U_i$ 上で局所方程式 $f_ig$ で表される。一方 $E$ は有効なので、ある開被覆 $\{V_j\}$ と正則な局所方程式 $h_j\in\Gamma(V_j,\mathcal{O}_X)$ で表される。同じ Cartier 因子を表す局所方程式は $\mathcal{O}_X^\times$ の切断倍しか違わないから、$U_i\cap V_j$ 上で $f_ig=h_ju_{ij}$($u_{ij}$ は単元)となり、$f_ig$ は $U_i\cap V_j$ 上で正則である。$\mathcal{O}_X$ は定数層 $K$ の部分層だから、$U_i$ の開被覆 $\{U_i\cap V_j\}_j$ の各片の上で正則な $f_ig\in K$ は $U_i$ 上で正則である。よって $g\in\Gamma(X,\mathcal{O}_X(D))$ であり、$E$ は 1 の形をしている。
3:$D+\operatorname{div}(g)=D+\operatorname{div}(g')$ は $\operatorname{div}(g'/g)=0$ と同値である。$h:=g'/g\in K^\times$ について、$\operatorname{div}(h)=0$ とは $h$ の $\mathcal{K}_X^\times/\mathcal{O}_X^\times$ における像が $0$、すなわち各点の近くで $h$ が $\mathcal{O}_X^\times$ の切断であることを意味する。層の性質によりこれは $h\in\Gamma(X,\mathcal{O}_X^\times)$ と同値である。
最後の主張:1–3 により、写像 $g\mapsto D+\operatorname{div}(g)$ は $\Gamma(X,\mathcal{O}_X(D))\setminus\{0\}$ から $|D|$ への全射であり、2 つの元が同じ像をもつのはそれらが $\Gamma(X,\mathcal{O}_X^\times)$ の元倍だけ違うときに限る。$\Gamma(X,\mathcal{O}_X)=k$ なら $\Gamma(X,\mathcal{O}_X^\times)=k^\times$ であり、$k^\times$ 倍で割った集合は 1 次元部分空間全体である。$\square$
$\Gamma(X,\mathcal{O}_X)=k$ は、$k$ が代数閉体で $X$ が整かつ射影的なときに成り立つ(Har77 I, Theorem 3.4 (a), p. 18(射影多様体)、III, Exercise 5.3 (a), p. 230(整な射影スキーム))。このとき $\Gamma(X,\mathcal{O}_X(D))$ は有限次元であり(Har77 III, Theorem 5.2, p. 228)、その次元を $h^0(D)$ と書けば、$|D|$ は $h^0(D)-1$ 次元の射影空間の点の集合と同一視される。この同一視のもとで、$g$ に対応する $D+\operatorname{div}(g)$ は、$g$ を可逆層 $\mathcal{O}_X(D)$ の大域切断とみたときの零点スキームである(Cartier因子 の命題「有効Cartier因子と可逆層の正則切断」)。$|D|$ の中で射影部分空間に対応する部分集合を線型系(linear system)、$1$ 次元の線型系を束(pencil)という。Har77 II, Proposition 7.7(p. 157)は、非特異射影多様体の場合にこの定理を述べている。
$X$ を整スキーム、$D,D'$ を有効 Cartier 因子とする。次は同値である。
1 ⇒ 2:thm-le-linear-system の 2 により $D'=D+\operatorname{div}(g)$、$0\ne g\in\Gamma(X,\mathcal{O}_X(D))$ と書ける。$\mathcal{L}:=\mathcal{O}_X(D)$、$s:=1$、$s':=g$ とおく。$D=\{(U_i,f_i)\}$ とすると、$U_i$ 上の局所自明化 $\mathcal{O}_{U_i}\to\mathcal{O}_X(D)|_{U_i}$、$a\mapsto f_i^{-1}a$ のもとで、$s=1$ は正則関数 $f_i$ に、$s'=g$ は正則関数 $f_ig$ に対応する。よって $s$ の零点スキームは局所方程式 $f_i$ の因子 $D$、$s'$ の零点スキームは局所方程式 $f_ig$ の因子 $D+\operatorname{div}(g)=D'$ である。
2 ⇒ 1:$X$ は整なので、可逆層の $0$ でない大域切断は、局所自明化のもとでどの点でも $0$ でない芽、すなわち非零因子に対応する(ある点の芽が $0$ ならその近傍で $0$ になり、整スキームでは空でない開集合上で $0$ の切断は $0$ である)。Cartier因子 の命題「有効Cartier因子と可逆層の正則切断」の 3 により $\mathcal{O}_X(D)\cong\mathcal{L}\cong\mathcal{O}_X(D')$ であり、同記事の定理「Cartier因子類群とPicard群」の 1 により $D\sim D'$ である。
後半:$\lambda s+\mu s'=0$ となる $(\lambda,\mu)\ne(0,0)$ があれば、$\lambda,\mu$ はどちらも $0$ でなく($s,s'\ne0$)、$s'=cs$($c\in k^\times$)となって $D'=D$ である。よって $D\ne D'$ なら $\lambda s+\mu s'$ は $\mathcal{L}$ の $0$ でない切断であり、2 ⇒ 1 と同じ議論で、その零点スキームは $\mathcal{O}_X(D_{(\lambda:\mu)})\cong\mathcal{L}\cong\mathcal{O}_X(D)$ をみたす有効因子、したがって $D$ と線型同値である。$\square$
この定理により、線型同値な 2 つの有効因子は、$\mathbb{P}^1$ でパラメータづけられた族 $\{D_{(\lambda:\mu)}\}$ の 2 つのメンバーとして結ばれる。$\mathbb{P}^1$ の斉次座標を $(\lambda:\mu)$ とすると、族の全体は $X\times\mathbb{P}^1$ の上の可逆層 $\mathrm{pr}_1^*\mathcal{L}\otimes\mathrm{pr}_2^*\mathcal{O}(1)$ の 1 つの切断 $\lambda s+\mu s'$ の零点としてまとまり、そのファイバーが各メンバーである。有理同値を射影直線の族のファイバーの差で特徴づける命題(有理同値 の命題「射影直線の族による有理同値の特徴づけ」)は、これを任意の次元のサイクルに広げたものにあたる。
$\varphi\colon X'\to X$ を整スキームの間の支配的な射($X'$ の生成点を $X$ の生成点に移す射)とする。このとき任意の Cartier 因子 $D$ の引き戻し $\varphi^*D$ が定まり、$\varphi^*$ は群準同型 $\operatorname{CaDiv}(X)\to\operatorname{CaDiv}(X')$ で $\varphi^*\operatorname{div}(f)=\operatorname{div}(\varphi^\#f)$($f\in K(X)^\times$)をみたす。とくに $D\sim E$ なら $\varphi^*D\sim\varphi^*E$ である。
要点:支配的な射は関数体の埋め込みを与え、局所環の準同型は単射なので、局所方程式(非零因子)は非零因子に移る。局所方程式の積と主因子の局所方程式 $f$ はそのまま移る。
$\varphi$ は支配的なので、関数体の準同型 $\varphi^\#\colon K(X)\to K(X')$ が定まる。体の準同型は単射だから、$0$ でない元は $0$ でない元に移る。$x'\in X'$、$x=\varphi(x')$ について局所環の準同型 $\mathcal{O}_{X,x}\to\mathcal{O}_{X',x'}$ は $K(X)\to K(X')$ の制限なので単射であり、局所環はどちらも整域だから、非零因子は非零因子に移る。よって $D=\{(U_i,f_i)\}$($f_i\in K(X)^\times$)に対し $\{(\varphi^{-1}(U_i),\varphi^\#f_i)\}$ は $X'$ の Cartier 因子を定め、これが $\varphi^*D$ である(Cartier因子 の定義「Cartier因子の引き戻し」)。局所方程式の積は積に移るので $\varphi^*$ は準同型であり、$\operatorname{div}(f)$ の局所方程式 $f$ は $\varphi^\#f$ に移るので $\varphi^*\operatorname{div}(f)=\operatorname{div}(\varphi^\#f)$ である。$D-E=\operatorname{div}(f)$ なら $\varphi^*D-\varphi^*E=\operatorname{div}(\varphi^\#f)$ である。$\square$
たとえば曲面 $S$ から曲線 $C$ への全射 $f\colon S\to C$ について、$C$ 上で線型同値な点 $p\sim p'$ のファイバーは $S$ 上の線型同値な因子 $f^*(p)\sim f^*(p')$ を与える。$\varphi$ が支配的でないときは Cartier 因子の引き戻しが定まらないことがあるが、可逆層の引き戻し $\varphi^*\colon\operatorname{Pic}(X)\to\operatorname{Pic}(X')$ はつねに定まり、線型同値類の引き戻しはこちらで扱える。押し出しについては、固有射が有理同値を保つこと(代数的サイクル の定理「固有押し出しは有理同値を保つ」)が余次元 $1$ の場合の答えを与える。
$k$ を代数閉体、$C$ を $k$ 上の非特異射影曲線とする。$C$ の Weil 因子 $\sum n_PP$ の次数 $\sum n_P$ は線型同値類だけで決まる(主因子の次数は $0$。Har77 II, Corollary 6.10, p. 138、代数的サイクル の補題「完備曲線上の主因子の次数」)。$C=\mathbb{P}^1$ では次数が線型同値類を完全に決めるが、一般の曲線ではそうではない。その境目が次の定理である。
$k$ を代数閉体、$C$ を $k$ 上の非特異射影曲線とする。次は同値である。
要点:$P-Q=\operatorname{div}(f)$ なら $f$ の定める射 $C\to\mathbb{P}^1$ は $\infty$ の逆像が $Q$ ただ 1 点で重複度 $1$ だから次数 $1$ であり、関数体が $k(f)$ に一致する。
1 ⇒ 2:$\mathbb{P}^1$ の閉点は $P=(a_0:a_1)$、$Q=(b_0:b_1)$ の形であり、$f:=(a_1x_0-a_0x_1)/(b_1x_0-b_0x_1)$ は 1 次式の比として $0$ 次の有理関数で、$\operatorname{div}(f)=P-Q$ である。同型は線型同値を保つ(prop-le-pullback)。
2 ⇒ 3:$C$ は無限個の閉点をもつので明らか。
3 ⇒ 1:$P\ne Q$、$P-Q=\operatorname{div}(f)$($f\in K(C)^\times$)とする。$\operatorname{div}(f)\ne0$ だから $f$ は定数でなく、$k(t)\to K(C)$、$t\mapsto f$ は体の埋め込みであり、$f$ の定める射 $\varphi\colon C\to\mathbb{P}^1$ がある(Har77 I, Proposition 6.8, p. 43。$C$ は非特異曲線、$\mathbb{P}^1$ は射影的なので、有理写像は射に延びる)。$\varphi$ は定値でないので全射かつ有限であり(Har77 II, Proposition 6.8, p. 137)、その次数 $\deg\varphi=[K(C):k(f)]$ について、$\mathbb{P}^1$ の任意の因子 $B$ に対し $\deg\varphi^*B=\deg\varphi\cdot\deg B$ が成り立つ(Har77 II, Proposition 6.9, p. 138)。点 $\infty\in\mathbb{P}^1$ の局所パラメータは $1/t$ であり、その引き戻し $1/f$ の $C$ 上の因子は $\operatorname{div}(1/f)=Q-P$ だから、$\varphi^{-1}(\infty)=\{Q\}$ の近傍では $\varphi^*\infty=\operatorname{ord}_Q(1/f)\,Q=Q$ である。したがって $1=\deg\varphi^*\infty=\deg\varphi$ であり、$K(C)=k(f)\cong k(t)$ となる。非特異射影曲線は関数体で同型類が決まる(Har77 I, Corollary 6.12, p. 45)ので、$C\cong\mathbb{P}^1$ である。$\square$
この定理(Har77 II, Example 6.10.1, p. 138)により、種数 $g\ge1$ の非特異射影曲線、たとえば楕円曲線では、異なる 2 点はけっして線型同値にならない。したがって次数 $0$ の因子の線型同値類の群 $\operatorname{Pic}^0(C)$ は、$g\ge1$ なら $0$ でない群である($P-Q$ の類が $0$ でない)。この群を代数多様体として実現したものが Jacobi多様体 である。
因子に対する同値関係は、細かい順に
$$
\text{線型同値}\ \Longrightarrow\ \text{代数的同値}\ \Longrightarrow\ \text{数値的同値}
$$
と並ぶ。線型同値ならば代数的同値であることは、thm-le-pencil の族が $\mathbb{P}^1$ をパラメータ空間とする代数的な族であることによる(代数的同値 の命題「有理同値ならば代数的同値」)。代数的同値ならば数値的同値であることは、交叉数が族の中で一定であることによる(数値的同値)。どちらの逆も一般には成り立たない。楕円曲線 $E$ 上の $P-O$($P\ne O$)は代数的同値で $0$($E$ 自身をパラメータ空間とする族)だが線型同値で $0$ でない(代数的同値 の例「反例:代数的同値だが有理同値でない0サイクル」)。Enriques 曲面の標準因子は数値的同値で $0$ だが代数的同値で $0$ でない(代数的同値 の例「反例:数値的同値だが代数的同値でない因子」)。
線型同値な Cartier 因子は同じ可逆層を定めるので、可逆層の Euler 標数で定義される量はすべて線型同値で不変である。とくに射影スキームの上の交叉数は線型同値類だけで決まり、曲面の交点数(曲面の交点形式とRiemann–Rochの定理)はその 2 次元の場合である。
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