曲率(曲線)

同義語:curvature of a curve曲線の曲率

概要

曲率(曲線)(curvature of a curve)とは、Euclid 空間の正則曲線を弧長 $s$ で表したときの単位接ベクトル $T$ の変化の速さ $\kappa=|dT/ds|$ のことで、直線では $0$、半径 $r$ の円では $1/r$ になる。一般の径数では $\kappa=|\gamma'\times\gamma''|/|\gamma'|^3$ などの式で計算でき、平面曲線では左右の曲がり方を区別する符号つき曲率が、曲線を回転と平行移動を除いてただ 1 つに決める。空間曲線では曲率に捩率を加えた Frenet–Serret の公式が成り立ち、曲率が正なら曲率と捩率の組が曲線を合同を除いて決める。曲面の主曲率や測地曲率、Riemann 多様体の曲率へ続く出発点である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 曲率(高校数学), 内積, 正規直交基底, 線形常微分方程式

曲線が点ごとにどれだけ曲がっているかを 1 つの数で表したものが 曲率 である。直線では $0$、半径 $r$ の円では $1/r$ になり、一般の曲線では「長さ $1$ だけ進むあいだに、進む向きがどれだけ変わるか」を測る。平面曲線 $y=f(x)$ や媒介変数表示の平面曲線の曲率を、高校数学の微分で扱い、曲率円との関係を調べる記事は 曲率(高校数学) である。この記事では、$n$ 次元の Euclid空間 $\mathbb R^n$ の曲線について弧長を使って曲率を定め、次の問いに答える。

  1. 曲率は、曲線の表し方(媒介変数のとり方)によらずに決まるか。→ prop-cc-arclength、prop-cc-formula
  2. 曲率が $0$ の曲線は何か。→ prop-cc-line
  3. 平面曲線は、符号つき曲率で合同を除いて決まるか。→ thm-cc-plane
  4. 空間曲線を決めるには、曲率のほかに何が要るか。→ thm-cc-frenet、thm-cc-space
    曲線のある空間曲がり方を測る量曲線を合同を除いて決めるもの
    平面 $\mathbb R^2$符号つき曲率 $\kappa_s$(左へ曲がると正)$\kappa_s$(thm-cc-plane)
    空間 $\mathbb R^3$曲率 $\kappa\ge0$ と捩率 $\tau$$\kappa>0$ のとき $\kappa$ と $\tau$ の組(thm-cc-space)
    一般の $\mathbb R^n$曲率 $\kappa\ge0$$\kappa$ だけでは決まらない(ex-cc-helix)
    以下、$\langle\ ,\ \rangle$ は $\mathbb R^n$ の標準内積、$|\cdot|$ はそのノルムである。区間は内点をもつものとし、微分は区間の端では片側微分とする。

正則曲線と弧長

定義

正則曲線と弧長

$I\subset\mathbb R$ を区間、$k\ge1$ を整数とする。$C^k$ 級の写像 $\gamma\colon I\to\mathbb R^n$ で、すべての $t\in I$ で $\gamma'(t)\neq0$ となるものを $C^k$ 級の 正則曲線 という。$|\gamma'(t)|$ を $t$ での 速さ という。$t_0\in I$ を決めて
$$ s(t)=\int_{t_0}^{t}|\gamma'(u)|\,du $$
を $\gamma(t_0)$ から測った 弧長 という。すべての $t$ で $|\gamma'(t)|=1$ となる曲線を、弧長で径数付けられた 曲線(単位速さの曲線)という。

$t>t_0$ のとき、$s(t)$ は $\gamma(t_0)$ から $\gamma(t)$ までの曲線の長さである(媒介変数表示と曲線の長さ の定理「曲線の長さの公式」)。

弧長による径数付け

$\gamma\colon I\to\mathbb R^n$ を $C^k$ 級の正則曲線、$s$ をその弧長とし、$J=s(I)$ とおく。

  1. $s\colon I\to J$ は $C^k$ 級の全単射で、逆写像 $s^{-1}\colon J\to I$ も $C^k$ 級である。
  2. $\sigma=\gamma\circ s^{-1}\colon J\to\mathbb R^n$ は弧長で径数付けられた $C^k$ 級の曲線で、$\gamma(t)=\sigma\bigl(s(t)\bigr)$ を満たす。
  3. 区間 $J'$ から $I$ への $C^1$ 級の全単射 $\varphi$ で $\varphi'$ が $0$ にならないものについて、$\gamma\circ\varphi$ も弧長で径数付けられているなら、定数 $c$ と $\varepsilon\in\{1,-1\}$ があって、すべての $\tilde s\in J'$ で $s\bigl(\varphi(\tilde s)\bigr)=\varepsilon\tilde s+c$ となる。

要点:$s'=|\gamma'|>0$ なので $s$ は狭義単調増加で、逆関数の微分から $s^{-1}$ も $C^k$ 級になる。3 は、径数の取りかえ $\psi=s\circ\varphi$ が $|\psi'|=1$ を満たすことから従う。

詳しい証明を開く

1. $s'(t)=|\gamma'(t)|=\sqrt{\langle\gamma'(t),\gamma'(t)\rangle}$ である。$\gamma'$ は $C^{k-1}$ 級で $0$ にならないので、$s'$ は正の値をとる $C^{k-1}$ 級の関数であり、$s$ は $C^k$ 級で狭義単調増加である。よって $s$ は $I$ から区間 $J$ への全単射である。1 変数の逆関数の微分により $s^{-1}$ は微分可能で $(s^{-1})'(u)=1/s'\bigl(s^{-1}(u)\bigr)$ であり、右辺が $C^{j}$ 級なら $s^{-1}$ は $C^{j+1}$ 級なので、$j=0,1,\dots,k-1$ と順に上げて $s^{-1}$ は $C^k$ 級である。

2. 連鎖律により、$u\in J$、$t=s^{-1}(u)$ について $\sigma'(u)=\gamma'(t)\,(s^{-1})'(u)=\gamma'(t)/|\gamma'(t)|$ で、長さは $1$ である。

3. $\psi=s\circ\varphi\colon J'\to J$ とおくと $\gamma\circ\varphi=\sigma\circ\psi$ である。両辺を微分すると $(\gamma\circ\varphi)'(\tilde s)=\sigma'\bigl(\psi(\tilde s)\bigr)\psi'(\tilde s)$ で、両辺の長さを比べて $|\psi'(\tilde s)|=1$ を得る。$\psi'=s'(\varphi)\varphi'$ は連続で $0$ にならないので、区間 $J'$ の上で符号が一定である。よって $\psi'$ は $1$ か $-1$ の定数 $\varepsilon$ で、$\psi(\tilde s)=\varepsilon\tilde s+c$ である。$\square$

弧長で径数付けられた曲線どうしは、向きを逆にすることと出発点を変えることを除いて同じものである(prop-cc-arclength の 3)。曲率はこの径数を使って定める。

曲率

曲率

$\sigma\colon J\to\mathbb R^n$ を弧長で径数付けられた $C^2$ 級の曲線とする。$T(s)=\sigma'(s)$ を 単位接ベクトル といい、
$$ \kappa(s)=|T'(s)|=|\sigma''(s)| $$
を点 $\sigma(s)$ での 曲率 という。$C^2$ 級の正則曲線 $\gamma\colon I\to\mathbb R^n$ の $t$ での曲率は、prop-cc-arclength の $\sigma$ を使って $\kappa\bigl(s(t)\bigr)$ と定める。$\kappa\neq0$ のとき $1/\kappa$ を 曲率半径 という。

別の弧長の径数 $\sigma(\varepsilon\tilde s+c)$ を使っても、2 回微分すると $\varepsilon^2\sigma''=\sigma''$ なので、曲率は変わらない。また、$\mathbb R^n$ の合同変換 $x\mapsto Ax+b$($A$ は直交行列)で曲線を動かすと $\sigma''$ は $A\sigma''$ になり、長さは変わらないので、曲率も変わらない。
$|T|=1$ を微分すると $2\langle T',T\rangle=0$ なので、$T'(s)$ はいつも $T(s)$ に垂直である。曲率は、進む向き $T$ が単位の弧長あたりに変わる速さである。

一般の径数での曲率

$\gamma\colon I\to\mathbb R^n$ を $C^2$ 級の正則曲線とする。曲率は
$$ \kappa=\frac{\sqrt{|\gamma'|^2|\gamma''|^2-\langle\gamma',\gamma''\rangle^2}}{|\gamma'|^3} $$
で与えられる。とくに $n=3$ では $\kappa=\dfrac{|\gamma'\times\gamma''|}{|\gamma'|^3}$($\times$ はベクトルの外積)、$n=2$ で $\gamma=(x,y)$ なら $\kappa=\dfrac{|x'y''-x''y'|}{(x'^2+y'^2)^{3/2}}$ である。

要点:弧長の径数 $\sigma$ を使うと $\gamma'=vT$、$\gamma''=v'T+v^2T'$($v=|\gamma'|$)で、$T\perp T'$ から分子の根号の中が $v^6\kappa^2$ になる。

詳しい証明を開く

$v=|\gamma'|=s'$ とおき、$\sigma$ を prop-cc-arclength の弧長の径数とする。$\gamma(t)=\sigma\bigl(s(t)\bigr)$ を微分すると、連鎖律により$$\gamma'=v\,T,\qquad \gamma''=v'\,T+v^2\,T'$$である($T$、$T'$ は $s(t)$ での値)。$|T|=1$、$\langle T,T'\rangle=0$、$|T'|=\kappa$ なので$$|\gamma''|^2=v'^2+v^4\kappa^2,\qquad \langle\gamma',\gamma''\rangle=vv'$$であり、$|\gamma'|^2|\gamma''|^2-\langle\gamma',\gamma''\rangle^2=v^2\bigl(v'^2+v^4\kappa^2\bigr)-v^2v'^2=v^6\kappa^2$ となる。両辺の平方根をとって $v^3$ で割ればよい。$n=3$ では Lagrange の恒等式 $|a\times b|^2=|a|^2|b|^2-\langle a,b\rangle^2$ を、$n=2$ では $(x'^2+y'^2)(x''^2+y''^2)-(x'x''+y'y'')^2=(x'y''-x''y')^2$ を使う。$\square$

$n=2$ の式から絶対値を外したものが、曲率(高校数学) の定義「符号つきの曲率」の式である(下の def-cc-signed で、符号の意味を弧長の言葉で述べる)。

円と常螺旋
  1. 半径 $r>0$ の円 $\gamma(t)=(r\cos t,\ r\sin t)$ では $|\gamma'|=r$、$x'y''-x''y'=r^2$ なので $\kappa=r^2/r^3=1/r$ である。
  2. $a>0$、$b\in\mathbb R$ とし、常螺旋 $\gamma(t)=(a\cos t,\ a\sin t,\ bt)$ を考える。
    $$ \gamma'=(-a\sin t,\ a\cos t,\ b),\qquad \gamma''=(-a\cos t,\ -a\sin t,\ 0),\qquad \gamma'\times\gamma''=(ab\sin t,\ -ab\cos t,\ a^2) $$
    なので $|\gamma'|=\sqrt{a^2+b^2}$、$|\gamma'\times\gamma''|=a\sqrt{a^2+b^2}$ で、
    $$ \kappa=\frac{a\sqrt{a^2+b^2}}{(a^2+b^2)^{3/2}}=\frac{a}{a^2+b^2} $$
    である。曲率はどの点でも同じ値である。$b=0$ では半径 $a$ の円になり $\kappa=1/a$、$|b|$ を大きくすると螺旋は引き伸ばされて $\kappa\to0$ となる。$a=2$、$b=0$ の円(半径 $2$)と、$a=1$、$b=1$ の常螺旋は、どちらも曲率がいつも $\dfrac12$($\dfrac{2}{4}=\dfrac{1}{1+1}$)だが、一方は平面に含まれ、他方は含まれない(prop-cc-planar)。空間の曲線は曲率だけでは決まらない。
曲率が 0 の曲線

$\gamma\colon I\to\mathbb R^n$ を $C^2$ 級の正則曲線とする。$I$ のすべての点で $\kappa=0$ であることと、点 $p$、単位ベクトル $e$、$\varphi'$ が $0$ にならない $C^2$ 級関数 $\varphi\colon I\to\mathbb R$ によって $\gamma(t)=p+\varphi(t)e$ と書けることは同値である。とくにこのとき、$\gamma$ の像は 1 本の直線に含まれる。

要点:弧長の径数で $\kappa\equiv0$ は $\sigma''\equiv0$ のことなので、$\sigma$ は 1 次式である。

詳しい証明を開く

弧長の径数 $\sigma\colon J\to\mathbb R^n$ をとる。$\kappa\equiv0$ なら区間 $J$ 上で $\sigma''=0$ なので、$\sigma'$ は定数の単位ベクトル $e$ である。$\tilde s_0\in J$ を 1 つ決めて $p=\sigma(\tilde s_0)-\tilde s_0e$ とおくと、$\sigma(\tilde s)=p+\tilde se$ である。よって $\gamma(t)=\sigma\bigl(s(t)\bigr)=p+s(t)e$ で、$\varphi=s$ とすればよい。逆に $\gamma=p+\varphi e$ なら $\gamma'=\varphi'e$、$\gamma''=\varphi''e$ は平行なので、prop-cc-formula の分子は $|\varphi'|^2|\varphi''|^2-(\varphi'\varphi'')^2=0$ で、$\kappa=0$ である。$\square$

平面曲線:符号つき曲率と基本定理

平面では、曲線が左へ曲がるか右へ曲がるかを符号で区別できる。以下、$J_0(a,b)=(-b,a)$ を、平面のベクトルを反時計回りに直角だけ回す写像とする。$\langle w,J_0w\rangle=0$、$|J_0w|=|w|$ である。

符号つき曲率

$\sigma\colon J\to\mathbb R^2$ を弧長で径数付けられた $C^2$ 級の平面曲線とし、$N(s)=J_0T(s)$ を 単位法ベクトル とする(進む向きに対して左を向く)。$T'(s)$ は $T(s)$ に垂直なので、実数 $\kappa_s(s)$ によって
$$ T'(s)=\kappa_s(s)\,N(s) $$
と書ける。$\kappa_s(s)$ を 符号つき曲率 という。$|\kappa_s|=\kappa$ である。一般の正則な平面曲線では、$t$ と同じ向きに増える弧長の径数を使って定める。

$\gamma=(x,y)$ を $C^2$ 級の正則な平面曲線とすると、prop-cc-formula の証明の式 $\gamma'=vT$、$\gamma''=v'T+v^2\kappa_sN$ から、$\gamma'$ と $\gamma''$ を並べた行列式は $\det(vT,\ v'T+v^2\kappa_sN)=v^3\kappa_s\det(T,N)=v^3\kappa_s$ である。よって
$$ \kappa_s=\frac{x'y''-x''y'}{(x'^2+y'^2)^{3/2}} $$
で、これは 曲率(高校数学) の定義「符号つきの曲率」と一致する。向きを逆にたどると $T$ と $N$ がともに符号を変えるので $\kappa_s$ も符号を変え、回転 $R\in SO(2)$ で動かすと、$R$ と $J_0$ は交換するので $\kappa_s$ は変わらない。

接線の角

$\sigma\colon J\to\mathbb R^2$ を弧長で径数付けられた $C^2$ 級の曲線、$s_0\in J$ とし、$T(s_0)=(\cos\theta_0,\ \sin\theta_0)$ とする。
$$ \theta(s)=\theta_0+\int_{s_0}^{s}\kappa_s(u)\,du $$
とおくと、すべての $s\in J$ で $T(s)=\bigl(\cos\theta(s),\ \sin\theta(s)\bigr)$ である。

$e(s)=\bigl(\cos\theta(s),\ \sin\theta(s)\bigr)$ とおく。$\kappa_s$ は連続なので $\theta$ は $C^1$ 級で、$e'=\theta'\,(-\sin\theta,\ \cos\theta)=\kappa_s\,J_0e$ である。一方 $T'=\kappa_sJ_0T$ なので、$D=T-e$ は $D'=\kappa_sJ_0D$ を満たす。$f=|D|^2$ を微分すると $f'=2\langle D,\kappa_sJ_0D\rangle=0$ で、$f(s_0)=0$ だから $f\equiv0$、つまり $T=e$ である。$\square$

曲率(高校数学) の定理「曲率は接線の角の弧長による微分」は、接線の角を各点の近くでとって $\kappa_s=d\theta/ds$ を示していた。lem-cc-angle は、区間全体で 1 つの連続な接線の角がとれることも示している。

平面曲線の基本定理

$J$ を区間、$k\colon J\to\mathbb R$ を連続関数とする。

  1. (存在と一意性)$s_0\in J$、$p_0\in\mathbb R^2$、$\theta_0\in\mathbb R$ に対し、弧長で径数付けられた $C^2$ 級の曲線 $\sigma\colon J\to\mathbb R^2$ で、符号つき曲率が $k$ に等しく、$\sigma(s_0)=p_0$、$\sigma'(s_0)=(\cos\theta_0,\ \sin\theta_0)$ を満たすものがただ 1 つある。それは
    $$ \theta(s)=\theta_0+\int_{s_0}^{s}k(u)\,du,\qquad \sigma(s)=p_0+\int_{s_0}^{s}\bigl(\cos\theta(u),\ \sin\theta(u)\bigr)\,du $$
    で与えられる。
  2. (合同)弧長で径数付けられた $C^2$ 級の曲線 $\sigma,\tilde\sigma\colon J\to\mathbb R^2$ の符号つき曲率がすべての $s$ で等しいなら、回転 $R\in SO(2)$ と $b\in\mathbb R^2$ の組がただ 1 つあって、$\tilde\sigma=R\sigma+b$ となる。逆に $\tilde\sigma=R\sigma+b$($R\in SO(2)$)なら、2 つの符号つき曲率は等しい。

1 の存在:式で定めた $\sigma$ について、$\theta$ は $C^1$ 級なので $\sigma'=(\cos\theta,\ \sin\theta)$ は $C^1$ 級で長さ $1$ であり、$\sigma$ は弧長で径数付けられた $C^2$ 級の曲線である。$T'=\theta'(-\sin\theta,\ \cos\theta)=k\,J_0T$ なので符号つき曲率は $k$ で、$\sigma(s_0)=p_0$、$\sigma'(s_0)=(\cos\theta_0,\ \sin\theta_0)$ である。
1 の一意性:$\tilde\sigma$ も条件を満たすとする。lem-cc-angle を $\tilde\sigma$ に当てると($s_0$ での角は $\theta_0$ にとれる)、$\tilde\sigma'(s)=\bigl(\cos\tilde\theta(s),\ \sin\tilde\theta(s)\bigr)$、$\tilde\theta(s)=\theta_0+\int_{s_0}^sk(u)\,du=\theta(s)$ である。よって $\tilde\sigma'=\sigma'$ で、$\tilde\sigma(s_0)=\sigma(s_0)$ だから $\tilde\sigma=\sigma$ である。
2:$s_0\in J$ を 1 つとり、$\sigma'(s_0)=(\cos\alpha,\ \sin\alpha)$、$\tilde\sigma'(s_0)=(\cos\beta,\ \sin\beta)$ とする。$R$ を角 $\beta-\alpha$ の回転、$b=\tilde\sigma(s_0)-R\sigma(s_0)$ とおき、$\rho=R\sigma+b$ とする。$\rho'=RT$、$\rho''=RT'=\kappa_s\,RJ_0T=\kappa_s\,J_0(RT)$ なので、$\rho$ は弧長で径数付けられ、符号つき曲率は $\kappa_s$、つまり $\tilde\sigma$ の符号つき曲率に等しい。さらに $\rho(s_0)=\tilde\sigma(s_0)$、$\rho'(s_0)=(\cos\beta,\ \sin\beta)=\tilde\sigma'(s_0)$ なので、1 の一意性から $\rho=\tilde\sigma$ である。組の一意性:$\tilde\sigma=R_1\sigma+b_1=R_2\sigma+b_2$ なら、微分して $R_1T(s_0)=R_2T(s_0)$ で、単位ベクトル 1 つの行き先が同じ回転は等しいので $R_1=R_2$、したがって $b_1=b_2$ である。逆の主張は、上の $\rho$ の計算そのものである。$\square$

2 の合同の主張は、滑らかな曲線について Lee18 Theorem 1.5(p. 3)に述べられている。曲率の関数が、曲線を形まで記録する「設計図」になっているということである。曲率(高校数学) の節「大学数学で見る:曲率で曲線が決まる」は、この定理の存在の部分の計算を紹介していた。

曲率から曲線を組み立てる
  1. $k$ が定数 $c\neq0$ のとき、$s_0=0$、$p_0=(0,0)$、$\theta_0=0$ とすると $\theta=cs$、$\sigma(s)=\dfrac1c\bigl(\sin cs,\ 1-\cos cs\bigr)$ で、中心 $(0,\ 1/c)$、半径 $1/|c|$ の円である。$k\equiv0$ なら直線 $\sigma(s)=(s,0)$ である。
  2. $k(s)=\dfrac1{1+s^2}$($s\in\mathbb R$)とし、$s_0=0$、$p_0=(0,0)$、$\theta_0=0$ とする。$\theta(s)=\arctan s$ なので $\cos\theta=\dfrac1{\sqrt{1+s^2}}$、$\sin\theta=\dfrac{s}{\sqrt{1+s^2}}$ で、
    $$ \sigma(s)=\left(\int_0^s\frac{du}{\sqrt{1+u^2}},\ \int_0^s\frac{u\,du}{\sqrt{1+u^2}}\right)=\left(\operatorname{arsinh}s,\ \sqrt{1+s^2}-1\right) $$
    である。$x=\operatorname{arsinh}s$ とおくと $y=\sqrt{1+\sinh^2x}-1=\cosh x-1$ なので、これは懸垂線 $y=\cosh x-1$ である(双曲線関数)。懸垂線の頂点から測った弧長は $\sinh x$ であり、曲率は頂点で $1$、遠くへ行くほど $0$ に近づく。
  3. $k(s)=s$ とすると $\theta=s^2/2$ で、$\sigma(s)=\left(\displaystyle\int_0^s\cos\frac{u^2}2\,du,\ \int_0^s\sin\frac{u^2}2\,du\right)$ となる。曲率が弧長に比例して増え、曲線は進むほどきつく巻く。この曲線は Euler の螺旋(クロソイド)とよばれる。
(2) の積分の計算を開く

$(\operatorname{arsinh}u)'=\dfrac1{\sqrt{1+u^2}}$、$\bigl(\sqrt{1+u^2}\bigr)'=\dfrac{u}{\sqrt{1+u^2}}$ である。符号つき曲率を逆に確かめると、$\sigma'=\dfrac{(1,\ s)}{\sqrt{1+s^2}}$、$\sigma''=\dfrac{(-s,\ 1)}{(1+s^2)^{3/2}}=\dfrac1{1+s^2}\cdot\dfrac{(-s,\ 1)}{\sqrt{1+s^2}}=\dfrac1{1+s^2}\,J_0\sigma'$ で、$k(s)=\dfrac1{1+s^2}$ になっている。

左:常螺旋 (cos t, sin t, t/4) と 3 つの点での Frenet 標構。赤が T、緑が N、青が B。右:符号つき曲率 k(s) から組み立てた曲線。k = 1 は円、k = 1/(1+s²) は懸垂線、k = s は Euler の螺旋で、実線が s ≥ 0、破線が s ≤ 0 の部分 左:常螺旋 (cos t, sin t, t/4) と 3 つの点での Frenet 標構。赤が T、緑が N、青が B。右:符号つき曲率 k(s) から組み立てた曲線。k = 1 は円、k = 1/(1+s²) は懸垂線、k = s は Euler の螺旋で、実線が s ≥ 0、破線が s ≤ 0 の部分

閉曲線の全曲率と回転数

$\sigma\colon[0,L]\to\mathbb R^2$ が閉曲線で $\sigma'(0)=\sigma'(L)$ なら、lem-cc-angle の $\theta$ について $\bigl(\cos\theta(L),\sin\theta(L)\bigr)=\bigl(\cos\theta(0),\sin\theta(0)\bigr)$ なので
$$ \int_0^L\kappa_s(s)\,ds=\theta(L)-\theta(0)\in2\pi\mathbb Z $$
である。この整数を $2\pi$ で割ったものを 回転指数 という(単位接ベクトル $T$ が原点のまわりを回る回数で、回転数 の考え方を $T$ に当てたものである)。自分自身と交わらない閉曲線を、内側を左に見る向きにたどると、回転指数は $1$ である(Hopf の回転指数定理。Lee18 Theorem 1.6(p. 3)、Theorem 9.1(p. 266)。この記事では証明しない)。

空間曲線:Frenet–Serret の公式

空間の曲線は、曲がるだけでなく、曲がる平面そのものが回ってねじれる。ex-cc-helix の円と常螺旋は曲率が同じでも、常螺旋は平面から浮き上がる。このねじれを測る量が捩率である。

Frenet 標構と捩率

$\sigma\colon J\to\mathbb R^3$ を弧長で径数付けられた $C^3$ 級の曲線とし、すべての $s$ で $\kappa(s)>0$ とする。
$$ N(s)=\frac{T'(s)}{\kappa(s)},\qquad B(s)=T(s)\times N(s) $$
をそれぞれ 主法線ベクトル、従法線ベクトル という。$(T,N,B)$ は各点で正の向きの正規直交基底であり、Frenet 標構 という。下の thm-cc-frenet で示すように $B'(s)$ は $N(s)$ に平行なので、実数 $\tau(s)$ によって $B'(s)=-\tau(s)N(s)$ と書ける。$\tau(s)$ を 捩率 という。

$\kappa=|T'|$ は $\kappa>0$ の点で $C^1$ 級なので、$N$、$B$ は $C^1$ 級である。$T$ と $N$ が張る平面(接触平面)の中で曲線は曲がり、$B$ はその平面の法線の向きである。

Frenet–Serret の公式

def-cc-frenet の曲線について
$$ \frac{d}{ds}\begin{pmatrix}T\\ N\\ B\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&\kappa&0\\ -\kappa&0&\tau\\ 0&-\tau&0\end{pmatrix}\begin{pmatrix}T\\ N\\ B\end{pmatrix} $$
が成り立つ。すなわち $T'=\kappa N$、$N'=-\kappa T+\tau B$、$B'=-\tau N$ である。

$T'=\kappa N$ は $N$ の定義である。
$B'$:積の微分により $B'=T'\times N+T\times N'=\kappa N\times N+T\times N'=T\times N'$ なので、$B'$ は $T$ に垂直である。$|B|=1$ を微分して $\langle B',B\rangle=0$ でもある。$(T,N,B)$ は正規直交基底なので、$B'$ は $N$ に平行で、$\tau=-\langle B',N\rangle$ とおけば $B'=-\tau N$ である。これで捩率の定義も正当化される。
$N'$:$N'$ を基底 $(T,N,B)$ で展開する。$\langle N,T\rangle=0$ を微分して $\langle N',T\rangle=-\langle N,T'\rangle=-\kappa$、$|N|=1$ から $\langle N',N\rangle=0$、$\langle N,B\rangle=0$ を微分して $\langle N',B\rangle=-\langle N,B'\rangle=\tau$ である。よって $N'=-\kappa T+\tau B$ である。$\square$

係数の行列が交代行列(転置すると $-1$ 倍)になるのは、正規直交基底を保ったまま動く標構の微分だからである。

一般の径数での捩率

$\gamma\colon I\to\mathbb R^3$ を $C^3$ 級の正則曲線とし、すべての $t$ で $\gamma'(t)\times\gamma''(t)\neq0$ とする。このとき曲率は正で、捩率は
$$ \tau=\frac{\det\bigl(\gamma',\ \gamma'',\ \gamma'''\bigr)}{|\gamma'\times\gamma''|^2} $$
で与えられる($\det$ は 3 つの列ベクトルを並べた行列式)。

要点:$\gamma'=vT$、$\gamma''=v'T+v^2\kappa N$ で、$\gamma'''$ の $B$ 成分は $v^3\kappa\tau$ なので、行列式は $v^6\kappa^2\tau$ になる。

詳しい証明を開く

$v=|\gamma'|$ とする。prop-cc-formula により $|\gamma'\times\gamma''|=v^3\kappa$ なので $\kappa>0$ である。prop-cc-formula の証明と同じく $\gamma'=vT$、$\gamma''=v'T+v^2\kappa N$ である($T,N,B$ は $s(t)$ での値で、$t$ での微分は $s$ での微分の $v$ 倍になる)。もう 1 回微分して Frenet–Serret の公式 $N'=-\kappa T+\tau B$ を使うと、$\gamma'''$ は $T$ と $N$ の 1 次結合に $v^2\kappa\cdot v\,\tau B$ を足したものである。行列式は、列に他の列の定数倍を足しても変わらないので $\det(\gamma',\gamma'',\gamma''')=\det(vT,\ v^2\kappa N,\ v^3\kappa\tau B)=v^6\kappa^2\tau$ となり、$|\gamma'\times\gamma''|^2=v^6\kappa^2$ で割ればよい。$\square$

ex-cc-helix の常螺旋では $\gamma'''=(a\sin t,\ -a\cos t,\ 0)$ で、$\det(\gamma',\gamma'',\gamma''')=\langle\gamma'\times\gamma'',\gamma'''\rangle=a^2b$ なので
$$ \tau=\frac{a^2b}{a^2(a^2+b^2)}=\frac{b}{a^2+b^2} $$
である。$b>0$ の右巻きの螺旋では $\tau>0$、$b<0$ の左巻きの螺旋では $\tau<0$ である。

捩率が 0 の曲線

def-cc-frenet の曲線($J$ の全体で $\kappa>0$)について、$J$ の全体で $\tau=0$ であることと、$\sigma(J)$ が 1 つの平面に含まれることは同値である。

要点:$\tau\equiv0$ なら $B$ が一定で、曲線は $B$ に垂直な平面に乗る。逆に平面に乗れば $B$ はその平面の単位法ベクトル $\pm e$ に等しく、連続性から一定になる。

詳しい証明を開く

$\tau\equiv0$ とすると $B'=0$ なので $B$ は定ベクトル $B_0$ である。$s_0\in J$ をとると $\dfrac{d}{ds}\langle\sigma(s)-\sigma(s_0),B_0\rangle=\langle T,B_0\rangle=0$ なので、$\sigma(J)$ は $\sigma(s_0)$ を通り $B_0$ に垂直な平面に含まれる。

逆に、$\sigma(J)$ が平面 $\{x\mid\langle x-p,e\rangle=0\}$($e$ は単位ベクトル)に含まれるとする。$\langle\sigma-p,e\rangle=0$ を 2 回微分して $\langle T,e\rangle=\langle T',e\rangle=0$ なので $\langle N,e\rangle=0$ でもある。$T,N$ が $e$ に垂直なので $B=\pm e$ である。$B$ は連続で、値は 2 点 $e,-e$ のどちらかなので、区間 $J$ の上で一定である。よって $B'=0$、$\tau=0$ である。$\square$

空間曲線の基本定理

空間曲線の基本定理

$J$ を開区間とし、$k\colon J\to(0,\infty)$ を $C^1$ 級関数、$q\colon J\to\mathbb R$ を連続関数とする。

  1. (存在と一意性)$s_0\in J$、$p_0\in\mathbb R^3$ と、正の向きの正規直交基底 $(e_1,e_2,e_3)$ に対し、弧長で径数付けられた $C^3$ 級の曲線 $\sigma\colon J\to\mathbb R^3$ で、曲率が $k$、捩率が $q$、$\sigma(s_0)=p_0$、$s_0$ での Frenet 標構が $(e_1,e_2,e_3)$ となるものがただ 1 つある。
  2. (合同)弧長で径数付けられた $C^3$ 級の曲線 $\sigma,\tilde\sigma\colon J\to\mathbb R^3$ の曲率が正で、曲率と捩率がそれぞれすべての $s$ で等しいなら、$R\in SO(3)$ と $b\in\mathbb R^3$ の組がただ 1 つあって $\tilde\sigma=R\sigma+b$ となる。

段 1(一意性)。$\sigma,\tilde\sigma$ がともに 1 の条件を満たすとし、Frenet 標構を $(T,N,B)$、$(\tilde T,\tilde N,\tilde B)$ とする。
$$ f=\langle T,\tilde T\rangle+\langle N,\tilde N\rangle+\langle B,\tilde B\rangle $$
を thm-cc-frenet を使って微分すると
$$ f'=\langle kN,\tilde T\rangle+\langle T,k\tilde N\rangle+\langle -kT+qB,\tilde N\rangle+\langle N,-k\tilde T+q\tilde B\rangle+\langle -qN,\tilde B\rangle+\langle B,-q\tilde N\rangle=0 $$
である。$f(s_0)=3$ なので $f\equiv3$ である。単位ベクトルどうしの内積は $1$ 以下で、$1$ になるのは 2 つが等しいときだけなので、$T=\tilde T$、$N=\tilde N$、$B=\tilde B$ である。$\sigma'=\tilde\sigma'$、$\sigma(s_0)=\tilde\sigma(s_0)$ から $\sigma=\tilde\sigma$ である。
段 2(標構の方程式を解く)。$3\times3$ 行列値の未知関数 $F(s)$ について、線形微分方程式
$$ F'(s)=A(s)F(s),\qquad A=\begin{pmatrix}0&k&0\\ -k&0&q\\ 0&-q&0\end{pmatrix},\qquad F(s_0)=E $$
を考える。$E$ は第 $i$ 行が $e_i$ の行列である。これは 9 個の未知関数についての連続な係数の線形微分方程式なので、線形常微分方程式 の定理「解の存在と解空間」により、$J$ 全体で定義された解がただ 1 つある。$F$ の第 1、2、3 行を $T,N,B$ とよぶ。
段 3(正規直交性が保たれる)。$G=FF^{\mathsf T}$ とおくと、$A^{\mathsf T}=-A$ より
$$ G'=AFF^{\mathsf T}+FF^{\mathsf T}A^{\mathsf T}=AG-GA $$
である。単位行列 $I$ も $I'=0=AI-IA$ を満たし、$G(s_0)=EE^{\mathsf T}=I$ である。$G\mapsto AG-GA$ は $G$ の成分について線形なので、同じ定理の一意性により $G\equiv I$、つまり $(T,N,B)$ は各点で正規直交基底である。$\det F$ は連続で値は $\pm1$、$\det F(s_0)=1$ なので $\det F\equiv1$ で、$(T,N,B)$ は正の向きであり、$B=T\times N$ である。
段 4(曲線を作る)。$\sigma(s)=p_0+\displaystyle\int_{s_0}^sT(u)\,du$ とおく。$\sigma'=T$ は長さ $1$ である。$T'=kN$ で $k$ は $C^1$ 級、$N'=-kT+qB$ は連続なので $T$ は $C^2$ 級、$\sigma$ は $C^3$ 級である。$|T'|=k>0$ なので曲率は $k$、主法線ベクトルは $T'/k=N$、従法線ベクトルは $T\times N=B$ であり、$B'=-qN$ から捩率は $q$ である。$s_0$ での標構は $F(s_0)=E$ の行 $(e_1,e_2,e_3)$ である。
段 5(合同)。$\sigma,\tilde\sigma$ の $s_0$ での Frenet 標構はどちらも正の向きの正規直交基底なので、$R\in SO(3)$ で $RT(s_0)=\tilde T(s_0)$、$RN(s_0)=\tilde N(s_0)$、$RB(s_0)=\tilde B(s_0)$ となるものがただ 1 つある。$b=\tilde\sigma(s_0)-R\sigma(s_0)$、$\rho=R\sigma+b$ とおく。$R$ は長さ・内積・外積を保つので、$\rho$ の曲率・捩率は $\sigma$ と同じで、Frenet 標構は $(RT,RN,RB)$ である。$\rho$ と $\tilde\sigma$ は 1 の条件($s_0$ での点と標構、曲率と捩率)を共有するので、段 1 により $\rho=\tilde\sigma$ である。組 $(R,b)$ の一意性は、$\tilde\sigma=R\sigma+b$ なら Frenet 標構が $R$ で移ることから $R$ が決まり、$b$ も決まることによる。$\square$

連続な係数の線形微分方程式の解の存在と一意性だけを使い、具体的な解の公式は使っていない。

曲率と捩率が定数の曲線を開く

$k$ と $q$ が定数なら、解は常螺旋($q=0$ なら円)である。実際、ex-cc-helix の常螺旋の曲率 $\dfrac a{a^2+b^2}$ と捩率 $\dfrac b{a^2+b^2}$ は、$a=\dfrac{k}{k^2+q^2}$、$b=\dfrac{q}{k^2+q^2}$ とおけば任意の $k>0$、$q$ になるので、合同の部分から、曲率と捩率が定数の曲線は常螺旋か円に合同である。

例と反例

prop-cc-formula の仮定「正則」、prop-cc-planar の仮定「$\kappa>0$」、thm-cc-space の仮定「捩率も等しい」、thm-cc-plane の 2 の「回転だけ」を外すと、それぞれ結論が崩れる。

外す条件反例成り立たなくなること
正則($\gamma'\neq0$)$(t^2,\ t^3)$ の $t=0$曲率が有限の値として定まる
$J$ の全体で $\kappa>0$ex-cc-flat-point の曲線$\tau=0$ なら平面に含まれる
捩率も等しい半径 $2$ の円と常螺旋 $(\cos t,\ \sin t,\ t)$曲率が等しければ合同
回転と平行移動だけで動かす放物線 $(t,\ t^2)$ と鏡映 $(t,\ -t^2)$合同な曲線の符号つき曲率は等しい
反例の確かめ

表の 1・3・4 行目を確かめる(2 行目は次の ex-cc-flat-point)。

3 つの反例の確かめを開く

1 行目は 曲率(高校数学) の例「反例:速さが 0 になる点」で計算されている。$t\neq0$ では $\kappa=\dfrac{6}{|t|(4+9t^2)^{3/2}}$ で、$t\to0$ のとき $\kappa\to\infty$ である。

3 行目:半径 $2$ の円(ex-cc-helix で $a=2$、$b=0$)と常螺旋 $(\cos t,\ \sin t,\ t)$($a=b=1$)は、どちらも曲率がいつも $\dfrac12$ だが、捩率は $0$ と $\dfrac12$ で異なる。円は平面に含まれ、常螺旋は含まれない(prop-cc-planar)。平面に含まれるかどうかは合同変換 $x\mapsto Ax+b$($A$ は直交行列、鏡映も含む)で変わらないので、2 本はどの合同変換でも重ならない。なお、右巻きと左巻きの常螺旋(捩率の符号だけが違う)は鏡映で重なるので、この反例にはならない。

4 行目:鏡映 $(x,y)\mapsto(x,-y)$ は合同変換だが、$(t,t^2)$ の $t=0$ での符号つき曲率 $2$ は、像 $(t,-t^2)$ では $-2$ になる。鏡映は $J_0$ と交換せず $J_0$ の符号を変えるからである。曲率 $\kappa=|\kappa_s|$ は鏡映でも変わらない。

反例:曲率が 0 になる点をもつ曲線

$h(t)=e^{-1/t^2}$($t>0$)、$h(t)=0$($t\le0$)とおく。$h$ は、Taylorの定理 の命題「何回でも微分できて導関数がすべて0になる関数」の関数 $e^{-1/t^2}$ を $t\le0$ で $0$ に置き換えたものなので、$C^\infty$ 級で、$t=0$ ですべての階の導関数が $0$ である。$0< a<\sqrt{2/3}$ とし、
$$ \gamma(t)=\bigl(t,\ h(t),\ h(-t)\bigr)\qquad(-a< t< a) $$
とおく。$t>0$ では $\gamma(t)=(t,h(t),0)$ は平面 $z=0$ に、$t<0$ では $\gamma(t)=(t,0,h(-t))$ は平面 $y=0$ に含まれる。$0< t< a$ では $h''(t)=e^{-1/t^2}\left(\dfrac4{t^6}-\dfrac6{t^4}\right)>0$ なので($t^2<\dfrac23$ による)、平面曲線としての曲率は正である。$-a< t<0$ でも同様である。よって $t\neq0$ の各点の近くで $\kappa>0$、$\tau=0$ である(prop-cc-planar を $t>0$ と $t<0$ の部分に当てる)。一方 $\gamma''(0)=0$ なので $\kappa(0)=0$ で、$t=0$ では Frenet 標構も捩率も定まらない。
$\gamma$ の像は 1 つの平面に含まれない。

平面に含まれないことの確かめを開く

実際、$0< t< a$ の部分は一直線上にない 3 点を含むので、それを含む平面は $z=0$ だけだが、$\gamma(-a/2)=\bigl(-a/2,\ 0,\ h(a/2)\bigr)$ は $z$ 座標が正で $z=0$ に乗らない。

補足

曲面の上の曲線。 曲線 $\sigma$ が $\mathbb R^3$ の曲面の上にあるとき、加速度 $\sigma''=\kappa N$ を、曲面の単位法ベクトル $\nu$ の方向と、曲面に接する方向に分けることができる。$\nu$ 方向の成分 $\kappa_n=\langle\sigma'',\nu\rangle$ を 法曲率、接する方向の成分の符号つきの大きさ $\kappa_g$ を 測地曲率 といい、$\kappa^2=\kappa_n^2+\kappa_g^2$ である。法曲率は曲線の接ベクトルの向きだけで決まり、その最大値と最小値が曲面の主曲率で、その積が曲面の Gauss 曲率である(Gauss曲率 の記事で示す)。測地曲率は曲面の内側から見た曲がり方で、Gauss–Bonnetの定理 の境界の項に現れる。単位速さの曲線で測地曲率がいつも $0$ のものが、曲面の 測地線 である(Lee18 Corollary 8.3(p. 229)の Gauss の公式による)。
曲率円。 $\mathbb R^n$ の弧長で径数付けられた曲線で $\sigma''(s_0)\neq0$ のとき、$\sigma(s_0)$ で位置・速度・加速度が $\sigma$ と一致する単位速さの円がただ 1 つあり、その半径は $1/\kappa(s_0)$ である(Lee18 Proposition 8.21(p. 245))。平面曲線の場合は 曲率(高校数学) の定理「曲率円」で証明されている。
Riemann 多様体の曲線。 Riemann多様体 の上の曲線では、$\sigma''$ の代わりに速度ベクトルの共変微分 $D_t\sigma'$ を使い、その長さで曲率を定める。

関連項目

参考文献

[1]
John M. Lee, Introduction to Riemannian Manifolds, Graduate Texts in Mathematics 176, Springer, 2018, Chapter 1:Theorem 1.5(Plane Curve Classification Theorem)・Theorem 1.6(Total Curvature Theorem)(p. 3);Corollary 8.3(The Gauss Formula Along a Curve、p. 229);Proposition 8.21(曲率円、p. 245);Theorem 9.1(Rotation Index Theorem、p. 266)

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