多角形のJordan曲線定理

同義語:多角形の内部と外部Jordan curve theorem for polygons

概要

多角形のJordan曲線定理(Jordan curve theorem for polygons)とは、自分と交わらない閉じた折れ線(単純多角形)$P$ が平面をちょうど 2 つの部分に分けるという定理である。$P$ の上にない点のうち、同じ部分の 2 点は $P$ と交わらない折れ線で結べ、違う部分の 2 点を結ぶ折れ線は必ず $P$ と交わる。一方の部分(内部)は有界で、他方(外部)は有界でない。点から出る半直線が $P$ と交わる回数を、頂点を通るときは前後の頂点が半直線の反対側にあるときだけ 1 回と数えると、その偶奇は半直線の向きによらず、奇数の点が内部、偶数の点が外部である。

$$\newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{div}[0]{\mathbin{÷}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

前提知識: 多角形の内角の和と外角の和, 一般角と弧度法

高校での出発点:迷路の奥の点は内側か外側か

三角形や四角形なら、周の内側と外側の区別は見ただけで分かる。ところが、何百もの頂点をもつ迷路のような多角形では、奥の方にある点が内側か外側かは、見ただけでは分からない(図 1)。
渦巻きの形の 20 角形。青い点 X から右へ出る半直線は周と 5 回交わる 渦巻きの形の 20 角形。青い点 X から右へ出る半直線は周と 5 回交わる
そこで、点から 1 本の半直線を引き、周と何回交わるかを数える。周を 1 回横切るたびに、内側から外側へ、または外側から内側へ移る。半直線を遠くまでたどれば最後は多角形の外に出るので、交わる回数が奇数なら出発点は内側、偶数なら外側だと考えられる。図 1 では 5 回交わるので、点 $X$ は内側にある。

C の字の多角形で数える

8 個の頂点 $(0,0)$、$(6,0)$、$(6,5)$、$(0,5)$、$(0,4)$、$(5,4)$、$(5,1)$、$(0,1)$ をこの順に結ぶと、C の字(左に口の開いた形)の 8 角形ができる(図 2)。口の中の点 $X\left(3,\dfrac52\right)$ と、下の腕の中の点 $Y\left(3,\dfrac12\right)$ で、半直線と周の交わりを数える。
(1) $X$ から右へ出る半直線(直線 $y=\dfrac52$ の $x>3$ の部分)は、辺 $(5,4)$–$(5,1)$ と点 $\left(5,\dfrac52\right)$ で、辺 $(6,0)$–$(6,5)$ と点 $\left(6,\dfrac52\right)$ で交わり、ほかの辺とは交わらない。交わりは 2 回である。
(2) $X$ から左へ出る半直線($y=\dfrac52$、$x<3$)は、どの辺とも交わらない。$x=0$ の上の辺は $(0,5)$–$(0,4)$ と $(0,1)$–$(0,0)$ で、$y=\dfrac52$ の高さを含まないからである。交わりは 0 回である。
(3) $Y$ から上へ出る半直線($x=3$、$y>\dfrac12$)は、辺 $(5,1)$–$(0,1)$ と $(3,1)$ で、辺 $(0,4)$–$(5,4)$ と $(3,4)$ で、辺 $(6,5)$–$(0,5)$ と $(3,5)$ で交わる。交わりは 3 回である。
(4) $Y$ から右へ出る半直線($y=\dfrac12$、$x>3$)は、辺 $(6,0)$–$(6,5)$ と $\left(6,\dfrac12\right)$ で交わるだけである。交わりは 1 回である。
$X$ ではどちらの向きでも偶数、$Y$ ではどちらの向きでも奇数になった。$X$ は口の中なので外側、$Y$ は腕の中なので内側で、見た目と合っている。

C の字の 8 角形。赤い点 Y から上への半直線は周と 3 回、青い点 X から右への半直線は 2 回交わる C の字の 8 角形。赤い点 Y から上への半直線は周と 3 回、青い点 X から右への半直線は 2 回交わる
この方法には 2 つの疑問が残る。この記事ではそれに答える。

  1. 半直線が頂点を通るときは、何回と数えればよいか。向きを変えると偶奇が変わってしまうことはないか。→ def-jct-count、lem-jct-direction
  2. そもそも「内側」「外側」とは何か。多角形は本当に平面を 2 つに分けるのか。→ thm-jct-main
    「周は平面を内部と外側に分ける」ことは、多角形の内角の和と外角の和 や Pickの定理 で証明せずに使ってきた。当たり前に見えるが、証明は易しくない。BTB11 の §2.1.3 も、迷路のような多角形を例に同じ注意をしたうえで、この事実を仮定として置いている。この記事では、その証明を与える。
    高校での見方この記事の言葉大学の言葉
    周で囲まれた部分内部(奇点の全体)有界な連結成分
    周の外外部(偶点の全体)有界でない連結成分
    周を横切らずに行ける$P$ と交わらない折れ線で結べる弧状連結
    半直線と周の交わる回数の偶奇点の偶奇回転数を $2$ で割った余り

言葉の準備:単純多角形と交わりの数え方

単純多角形

$n\ge3$ とし、平面上の $n$ 個の点 $P_1,P_2,\dots,P_n$ を順に線分で結び、最後に $P_n$ と $P_1$ を結ぶ。線分 $P_1P_2,\ P_2P_3,\ \dots,\ P_nP_1$ を 辺、$P_i$ を 頂点 という。どの 2 本の辺も、隣り合う 2 本が端の点を共有するほかには共有点をもたないとき、この閉じた折れ線を 単純多角形 という。番号は $n$ の次を $1$ に戻して読む($P_0=P_n$、$P_{n+1}=P_1$)。

単純多角形は、多角形の内角の和と外角の和 の「$n$ 角形」と同じものである。この記事では、周(折れ線そのもの)を $P$ と書き、「点 $X$ が $P$ の上にない」とは、$X$ がどの辺の上にもないことをいう。

単純多角形の例と、そうでない閉じた折れ線
  1. ex-jct-start の C の字の 8 角形は単純多角形である。隣り合わない辺は、たとえば $(0,4)$–$(5,4)$ と $(5,1)$–$(0,1)$ のように平行で離れているか、$(6,0)$–$(6,5)$ と $(5,4)$–$(5,1)$ のように $x$ 座標が違う。隣り合わない辺の組 20 組のすべてで共有点がないことは、座標から確かめられる。
  2. 正五角形の頂点を 1 つおきに結んだ星形の閉じた折れ線(星形五角形)は、単純多角形ではない。辺どうしが、頂点でない点で交わるからである(図 5)。

次に、半直線と $P$ の交わりの数え方を決める。半直線が辺の途中を横切るだけなら 1 回と数えればよい。困るのは、半直線が頂点を通るときである。

半直線と多角形の交わりの数

点 $X$ は $P$ の上にないとし、$X$ から出る半直線を $h$ とする。$h$ と $P$ の共有点は、次の 2 種類の「まとまり」に分かれる。
(1) 横切る点:辺の、端でない点で、その辺が $h$ を含む直線の上にないもの。
(2) 頂点の並び:$h$ の上にある頂点で、番号が続いている $P_j,P_{j+1},\dots,P_k$(1 個だけでもよい)のうち、前の頂点 $P_{j-1}$ と後の頂点 $P_{k+1}$ が $h$ の上にないもの。並びの間の辺 $P_jP_{j+1},\dots,P_{k-1}P_k$ は $h$ の上にある。
横切る点は 1 回と数える。頂点の並びは、前後の頂点 $P_{j-1}$ と $P_{k+1}$ が $h$ を含む直線の 反対側 にあれば 1 回、同じ側 にあれば 0 回と数える。こうして数えた合計を $N(X,h)$ と書き、$h$ と $P$ の 交わりの数 という。

頂点の並びの前後の頂点 $P_{j-1}$、$P_{k+1}$ は、$h$ を含む直線の上にない。もし $P_{j-1}$ がその直線の上にあれば、$h$ の上にない以上は $X$ の反対側にあり、辺 $P_{j-1}P_j$ が $X$ を通ってしまう。これは $X$ が $P$ の上にないことに反する。$P_{k+1}$ も同じである。したがって「反対側か同じ側か」はいつも決まる。

半直線と $P$ の共有点数える回数例(ex-jct-start、ex-jct-count-vertex)
辺の途中を横切る点$1$$X\left(3,\frac52\right)$ から右への半直線と辺 $(6,0)$–$(6,5)$
頂点の並びで、前後の頂点が反対側$1$$X\left(3,\frac52\right)$ から頂点 $(5,4)$ を通る半直線
頂点の並びで、前後の頂点が同じ側$0$$(7,1)$ から頂点 $(6,0)$ をかすめる半直線
辺に沿う頂点の並びで、前後の頂点が同じ側$0$$(8,5)$ から上の辺に沿う半直線

前後の頂点が反対側なら、周は半直線の一方の側から他方の側へ移っていて、半直線を「横切って」いる。同じ側なら、周は半直線に触れて引き返しているだけで、横切っていない。この約束は、そのことを数えに入れたものである。

頂点を通る半直線

ex-jct-start の C の字の 8 角形で、頂点を通る半直線を 3 本数える(図 3)。
(1) $X\left(3,\dfrac52\right)$ から頂点 $(5,4)$ を通る半直線。向きは $(2,\tfrac32)$ で、半直線を含む直線は $y=\dfrac52+\dfrac34(x-3)$ である。頂点の並びは $(5,4)$ だけで、前の頂点は $(0,4)$、後の頂点は $(5,1)$ である。直線の $x=0$ での高さは $\dfrac52-\dfrac94=\dfrac14$ で、$(0,4)$ はその上にある。直線の $x=5$ での高さは $4$ で、$(5,1)$ はその下にある。反対側なので 1 回と数える。半直線はさらに辺 $(6,0)$–$(6,5)$ を点 $\left(6,\dfrac{19}4\right)$ で横切る($\dfrac52+\dfrac34\cdot3=\dfrac{19}4$)。合計は $N=1+1=2$ で、ex-jct-start (1) の右向きの半直線と同じく偶数である。
(2) 点 $(8,5)$ から左へ出る半直線 $y=5$。上の辺 $(6,5)$–$(0,5)$ に沿って進む。頂点の並びは $(6,5)$、$(0,5)$ で、前の頂点 $(6,0)$ と後の頂点 $(0,4)$ はどちらも直線 $y=5$ の下にある。同じ側なので 0 回と数える。ほかに共有点はないので $N=0$ である。
(3) 点 $(7,1)$ から向き $(-1,-1)$ に出る半直線。直線 $y=x-6$ の上を進み、頂点 $(6,0)$ を通る。前の頂点 $(0,0)$ は直線の $x=0$ での高さ $-6$ より上、後の頂点 $(6,5)$ は直線の $x=6$ での高さ $0$ より上にある。同じ側なので 0 回と数える。半直線はそのまま $x<6$、$y<0$ の範囲へ進み、ほかの辺とは交わらない。$N=0$ である。$(7,1)$ から右へ出る半直線も $P$ と交わらず $N=0$ なので、向きによらず偶数になっている。

C の字の 8 角形で頂点を通る 3 本の半直線。左は頂点 (5,4) を通り前後の頂点(緑)が反対側、中は上の辺に沿って前後の頂点が同じ側、右は頂点 (6,0) をかすめて前後の頂点が同じ側 C の字の 8 角形で頂点を通る 3 本の半直線。左は頂点 (5,4) を通り前後の頂点(緑)が反対側、中は上の辺に沿って前後の頂点が同じ側、右は頂点 (6,0) をかすめて前後の頂点が同じ側
(3) で、共有点を約束なしに「1 点あったから 1 回」と数えると $N=1$ になり、右向きの $N=0$ と偶奇がずれてしまう(ex-jct-cx-rule)。

偶奇は半直線の向きによらない

ex-jct-start と ex-jct-count-vertex では、同じ点から出る半直線の交わりの数は、向きを変えても偶奇が変わらなかった。これはいつでも正しい。

交わりの数の偶奇は向きによらない

$P$ の上にない点 $X$ から出る 2 本の半直線 $h$、$h'$ について、$N(X,h)$ と $N(X,h')$ の偶奇は等しい。

半直線を回して数の変わり方を見る

要点:半直線 $h$ を $X$ のまわりに回していく。半直線が頂点を指していない間は、交わる辺の組は変わらず、交わりの数も変わらない。半直線が頂点の並びをまたぐときに変わるのは、並びの前後の 2 本の辺だけで、その 2 本の数え方は「またぐ前・ちょうど・またいだ後」で $(2,0,0)$、$(1,1,1)$、$(0,0,2)$ のどれかになる。どれも偶奇を変えないので、1 周のどこでも偶奇は同じである。

詳しい証明を開く

方針:$X$ から見た向きを一般角で測る(一般角と弧度法)。向き $\theta$ の半直線を $h_\theta$、その交わりの数を $N(\theta)$ と書く。頂点を指す向きは有限個しかないことを使う。

段 1(辺を見る向き)。辺 $e=AB$ は $X$ を通らない。$X$、$A$、$B$ が一直線上にないとき、点 $Q$ が $A$ から $B$ まで辺の上を動くと、角 $\angle AXQ$ は $0^\circ$ から $\angle AXB$ まで増え続ける($Q$ が $A$ から遠ざかるほど、半直線 $XQ$ は半直線 $XA$ から離れる)。$\angle AXB<180^\circ$ なので、$e$ の点を $X$ から見た向きは、$A$ の向きと $B$ の向きを結ぶ $180^\circ$ 未満の角の範囲 $I_e$ をちょうど 1 回ずつ通る。$X$、$A$、$B$ が一直線上にあるときは、$A$ と $B$ は $X$ の同じ側にあるので、$e$ の点はすべて同じ向きに見え、$I_e$ はその 1 つの向きだけである。

段 2(頂点を指さない向き)。$\theta$ がどの頂点の向きとも違うとする。$I_e$ の端は $e$ の端の点の向き、つまり頂点の向きなので、$\theta$ は $I_e$ の端ではない。したがって $h_\theta$ が $e$ と交わるのは $\theta$ が $I_e$ の内側にあるときで、そのとき交点はただ 1 つで、辺の端でない点、つまり横切る点である($X$ と一直線上の辺は $I_e$ が 1 つの向きだけで、その向きは頂点の向きなので、ここには現れない)。$h_\theta$ は頂点を通らないので頂点の並びはなく、$N(\theta)$ は「$\theta$ を内側に含む $I_e$ の個数」に等しい。

段 3(頂点を指す向きの間)。頂点の向きを小さい順に並べ、隣り合う 2 つの間の範囲に $\theta$ と $\theta'$ があるとする。どの $I_e$ の端もこの範囲の中にないので、$\theta$ を内側に含む $I_e$ と $\theta'$ を内側に含む $I_e$ は同じである。段 2 より $N(\theta)=N(\theta')$ である。

段 4(頂点を指す向き $\varphi$ をまたぐ)。$\varphi$ を頂点の向きとし、$\varphi$ より少し小さい向き $\theta_-$ と少し大きい向き $\theta_+$ を、$\theta_-$ と $\varphi$ の間、$\varphi$ と $\theta_+$ の間に頂点の向きがないようにとる。各辺が $N(\theta_-)$、$N(\varphi)$、$N(\theta_+)$ にいくつ数えられるかを比べる。
(a) $\varphi$ が $I_e$ の内側にある辺:$h_\varphi$ と辺の端でない点で交わり、3 つとも 1 回ずつ数えられる。
(b) $\varphi$ が $I_e$ に入らない辺:3 つとも 0 回である。
(c) $\varphi$ が $I_e$ の端である辺:端の点の一方 $V$ が $h_\varphi$ の上にある。もう一方の端 $U$ も $h_\varphi$ の上にあれば、辺は $h_\varphi$ に沿っていて頂点の並びの中の辺であり、$I_e$ は $\varphi$ だけなので $\theta_\pm$ では数えられない。$U$ が $h_\varphi$ を含む直線の上にないとき、この辺は頂点の並びの前後の辺であり、$I_e$ は $\varphi$ から $U$ の側へ広がる。$U$ が左側(反時計回りの側)にあれば $\theta_+$ で 1 回、$\theta_-$ で 0 回、右側にあれば $\theta_-$ で 1 回、$\theta_+$ で 0 回数えられる。

段 5(並びごとの勘定)。1 つの頂点の並びの前後の 2 本の辺について、段 4 (c) と def-jct-count の数え方を合わせると、$(N(\theta_-),N(\varphi),N(\theta_+))$ への寄与は、前後の頂点が 2 つとも右側なら $(2,0,0)$、2 つとも左側なら $(0,0,2)$、反対側なら $(1,1,1)$ である。(a)(b) の辺の寄与は 3 つで等しい。どの寄与も偶奇をそろえるので、$N(\theta_-)$、$N(\varphi)$、$N(\theta_+)$ の偶奇は等しい。

段 6(まとめ)。$h$ の向きから $h'$ の向きまで回すと、頂点の向きを有限回またぐ。段 3 と段 4〜5 により、そのどこでも偶奇は変わらない。$\square$

頂点をまたぐときの数の変わり方を例で確かめる

ex-jct-count-vertex の (1) で、要点の $(1,1,1)$ の場合を確かめる。$X\left(3,\dfrac52\right)$ から頂点 $(5,4)$ の向きの少し手前(時計回りの側)では、半直線は辺 $(5,4)$–$(5,1)$ を横切り、辺 $(0,4)$–$(5,4)$ とは交わらない。少し先では逆に辺 $(0,4)$–$(5,4)$ を横切り、辺 $(5,4)$–$(5,1)$ とは交わらない。どちらも 1 本で、ちょうどのときの 1 回と合わせて $(1,1,1)$ になっている。

偶点と奇点

$P$ の上にない点 $X$ について、$X$ から出るある半直線 $h$ の交わりの数 $N(X,h)$ が偶数のとき $X$ を 偶点、奇数のとき 奇点 という。lem-jct-direction により、どの半直線を使っても同じ判定になる。

$P$ と交わらない線分の両端

$P$ の上にない 2 点 $X$、$Y$ を結ぶ線分が $P$ と共有点をもたなければ、$X$ と $Y$ は両方とも偶点か、両方とも奇点である。

$X\ne Y$ としてよい。$X$ から $Y$ の向きに出る半直線を $h$、$Y$ から同じ向きに出る半直線を $h'$ とする。$h$ は線分 $XY$ と $h'$ を合わせたもので、線分 $XY$ には $P$ の点がないので、$h$ と $P$ の共有点は $h'$ と $P$ の共有点と同じである。横切る点も、頂点の並びとその前後の頂点も同じなので、$N(X,h)=N(Y,h')$ である。def-jct-parity により $X$ と $Y$ の偶奇は等しい。$\square$

折れ線は線分をつないだものなので、lem-jct-segment を線分ごとに使うと、$P$ と交わらない折れ線の両端も偶奇が等しい。ex-jct-start の $Y\left(3,\dfrac12\right)$ は奇点、$X\left(3,\dfrac52\right)$ は偶点なので、$Y$ と $X$ を結ぶ折れ線は、どう引いても $P$ と交わる。

主定理:平面はちょうど 2 つに分かれる

多角形のすぐそばの帯

偶奇の違う点が $P$ を横切らずに行き来できないことは分かった。残るのは逆向き、つまり偶奇の同じ 2 点がいつも $P$ と交わらない折れ線で結べることである。そのために、$P$ のすぐそばに沿って進む「帯」を用意する。

帯の補題

単純多角形 $P$ に対し、正の数 $\varepsilon$ と、$P$ と共有点をもたない 2 つの点の集まり $\mathcal L$(左の帯)、$\mathcal R$(右の帯)で、次を満たすものがある。
(R1) $P$ の上になく、$P$ からの距離が $\varepsilon$ より小さい点は、$\mathcal L$ か $\mathcal R$ に属する。
(R1) $\mathcal L$ の 2 点は、$\mathcal L$ の中を通る折れ線で結べる。$\mathcal R$ の 2 点も、$\mathcal R$ の中を通る折れ線で結べる。
(R1) 各辺 $P_iP_{i+1}$ の中点 $M$ からの距離が $\varepsilon$ より小さく、直線 $P_iP_{i+1}$ の上にない点は、$P_i$ から $P_{i+1}$ へ進むときの左側にあれば $\mathcal L$ に、右側にあれば $\mathcal R$ に属する。

辺の帯と頂点のまわりの扇形をつなぐ

要点:各辺の両端から少し離れた真ん中の部分に沿って、左右に細い長方形をとる。各頂点のまわりには小さな円をとると、円は 2 本の辺で 2 つの扇形に分かれる。左側の長方形と左側の扇形は、隣どうしが重なりながら周に沿って 1 周つながるので、それらを合わせたものが $\mathcal L$ になる。右側も同じである(図 4)。

詳しい証明を開く

方針:まず 2 つの小さな正の数 $\rho$、$\varepsilon$ を決め、辺の帯と頂点の扇形を作る。帯と扇形が $P$ と交わらないこと、条件 (i)〜(iii) を順に確かめる。

段 1($\rho$ と $\varepsilon$ の選び方)。$\rho$ を、どの辺の長さの半分よりも小さく、どの頂点からその頂点を含まない辺までの距離よりも小さくとる。辺 $e_i=P_iP_{i+1}$ のうち、両端からの距離が $\dfrac\rho2$ 以上の部分(線分)を $e_i$ の 真ん中の部分 $m_i$ とする。$m_i$ はほかの辺と共有点をもたない(隣り合わない辺とは初めから交わらず、隣り合う辺と共有するのは頂点だけで、頂点は $m_i$ に入らない)。線分どうしが共有点をもたなければ距離は正なので、$\varepsilon$ を、$m_i$ とほかの辺の距離のすべてより小さく、しかも $\dfrac\rho2$ より小さくとる。

段 2(辺の帯)。点 $Z$ から直線 $P_iP_{i+1}$ に下ろした垂線の足が $m_i$ にあり、$Z$ と直線の距離が $0$ より大きく $\varepsilon$ より小さい点を集める。このうち $P_i$ から $P_{i+1}$ へ進むときの左側にあるものを $H_i^{\mathrm L}$、右側にあるものを $H_i^{\mathrm R}$ とする。どちらも細い長方形(の、直線上の辺を除いたもの)で、中の 2 点を結ぶ線分はその中にある。$H_i^{\mathrm L}$ の点は $m_i$ からの距離が $\varepsilon$ 未満なので、段 1 によりほかの辺の上になく、直線 $P_iP_{i+1}$ の上にもないので、$P$ と共有点をもたない。$H_i^{\mathrm R}$ も同じである。

段 3(頂点のまわり)。頂点 $V$ を中心とする半径 $\rho$ の円の内部を $D_V$ とする。段 1 により、$V$ を含まない辺は $D_V$ に入らず、$V$ を端とする 2 本の辺は長さが $2\rho$ より大きいので、$D_V$ と $P$ の共有点は、$V$ から出る長さ $\rho$ の 2 本の線分である。この 2 本は $D_V$ を 2 つの扇形に分ける。$V$ から出る辺の向きから反時計回りに回って、$V$ に入る辺を逆にたどる向きに達するまでの扇形を $S_V^{\mathrm L}$、もう一方を $S_V^{\mathrm R}$ とする(2 本の線分は除く)。$V$ から出る辺のすぐ左の点は $S_V^{\mathrm L}$ の始まりのすぐ内側に、$V$ に入る辺のすぐ左の点は $S_V^{\mathrm L}$ の終わりのすぐ内側にあるので、$S_V^{\mathrm L}$ は 2 本の辺の左側にある扇形である。扇形の中の 2 点は、扇形の角の二等分線の上で $V$ から $\dfrac\rho2$ の点 $B$ を経由する折れ線で、扇形の中を通って結べる。扇形の中の点 $Z$ を $V$ から見た向きは、二等分線の向きとの差が扇形の角の半分($180^\circ$ 未満)より小さいので、線分 $ZB$ の点を $V$ から見た向きは $Z$ の向きと $B$ の向きの間にあり、扇形の中にとどまるからである(線分の点を見た向きが両端の向きの間を動くことは、lem-jct-direction の証明の段 1 と同じ理由による)。

段 4(つながり)。辺 $e_i$ の上で $P_{i+1}$ から $\dfrac\rho2$ の点($m_i$ の端)を、左へごく短い距離($\varepsilon$ より短く、$P_{i+1}$ から見た向きが辺の向きからほとんど変わらない程度)だけずらした点は、$H_i^{\mathrm L}$ に属し、$P_{i+1}$ からの距離が $\dfrac\rho2+\varepsilon<\rho$ より小さく、$P_{i+1}$ に入る辺のすぐ左にあるので $S_{P_{i+1}}^{\mathrm L}$ にも属する。同じく $H_{i+1}^{\mathrm L}$ と $S_{P_{i+1}}^{\mathrm L}$ も点を共有する。したがって、$H_1^{\mathrm L},S_{P_2}^{\mathrm L},H_2^{\mathrm L},S_{P_3}^{\mathrm L},\dots,H_n^{\mathrm L},S_{P_1}^{\mathrm L}$ は隣どうしが点を共有しながら 1 周つながる。これらを合わせたものを $\mathcal L$、右側のものを合わせたものを $\mathcal R$ とする。どちらも $P$ と共有点をもたない。

段 5(条件 (ii))。$\mathcal L$ の 2 点 $Z$、$Z'$ をとる。それぞれが属する長方形か扇形から、つながりの順に、隣の部品と共有する点を経由して進めば、各部品の中では段 2・段 3 の線分や折れ線で進めるので、$Z$ から $Z'$ まで $\mathcal L$ の中を通る折れ線ができる。$\mathcal R$ も同じである。

段 6(条件 (i))。$Z$ が $P$ の上になく、$P$ からの距離が $\varepsilon$ より小さいとする。$P$ の点のうち $Z$ に最も近い点を $W$ とする。$W$ がある頂点 $V$ から $\dfrac\rho2$ 未満の距離にあれば、$ZV\le ZW+WV<\varepsilon+\dfrac\rho2<\rho$ なので $Z$ は $D_V$ にあり、$P$ の上にないので $S_V^{\mathrm L}$ か $S_V^{\mathrm R}$ に属する。そうでなければ $W$ はある辺 $e_i$ の真ん中の部分 $m_i$ にあり、辺の端でない最も近い点なので、線分 $ZW$ は辺に垂直である。よって $Z$ から直線 $P_iP_{i+1}$ に下ろした垂線の足は $W\in m_i$ で、距離は $\varepsilon$ 未満だから、$Z$ は $H_i^{\mathrm L}$ か $H_i^{\mathrm R}$ に属する。

段 7(条件 (iii))。辺 $e_i$ の長さは $2\rho$ より大きいので、中点 $M$ から $m_i$ の両端までの距離は $\dfrac\rho2$ より大きく、$\varepsilon$ より大きい。$M$ からの距離が $\varepsilon$ 未満の点の垂線の足は、$M$ からの距離が $\varepsilon$ 未満なので $m_i$ にある。直線の上になければ、その点は左側なら $H_i^{\mathrm L}\subset\mathcal L$、右側なら $H_i^{\mathrm R}\subset\mathcal R$ に属する。$\square$

多角形のすぐそばの帯。各辺の真ん中の部分に沿う細い長方形と、各頂点のまわりの扇形を、辺を進む向きの左側(青)と右側(橙)に分けて塗った 多角形のすぐそばの帯。各辺の真ん中の部分に沿う細い長方形と、各頂点のまわりの扇形を、辺を進む向きの左側(青)と右側(橙)に分けて塗った
図 4 の 5 角形は、周を反時計回りに回る番号の付け方なので、左の帯(青)が囲まれた側に、右の帯(橙)が外の側にある。へこんだ頂点(上の真ん中)では、左側の扇形が大きい方になる。

主定理と証明

多角形のJordan曲線定理

$P$ を単純多角形とする。$P$ の上にない点の全体は、奇点の全体 $I$ と偶点の全体 $E$ の 2 つに分かれ、どちらも空でなく、次が成り立つ。
(R1) $I$ の 2 点は、$P$ と交わらない折れ線で結べる。$E$ の 2 点も同じである。
(R1) $I$ の点と $E$ の点を結ぶ折れ線は、必ず $P$ と交わる。
(R1) $I$ は有界であり(ある円の内部に入り)、$E$ は有界でない。
$I$ を $P$ の 内部、$E$ を $P$ の 外部 という。

条件 (i)(ii) は、$P$ を横切らずに行き来できる点どうしをまとめると、ちょうど 2 つのまとまりになることをいう。条件 (iii) は、そのうちの一方だけが「囲まれている」ことをいう。

偶奇で分け、帯で結ぶ

方針:条件 (ii) は lem-jct-segment から出る。条件 (i) は、どの点も $P$ と交わらずに帯まで行けることと、左右の帯の偶奇が違うことから出る。条件 (iii) は、遠くの点が偶点であることから出る。
段 1(条件 (ii))。$P$ と交わらない折れ線の各線分に lem-jct-segment を使うと、折れ線の両端の偶奇は等しい。奇点と偶点を結ぶ折れ線が $P$ と交わらないとすると、両端の偶奇が等しいことになり、矛盾する。よって条件 (ii) が成り立つ。
段 2(どの点も帯まで行ける)。lem-jct-strip の $\varepsilon$、$\mathcal L$、$\mathcal R$ をとる。$P$ の上にない点 $X$ と、$P$ の上の点 $Z$ を 1 つとり、線分 $XZ$ を考える。この線分と $P$ の共有点は、有限個の点と線分からなるので、その中で $X$ に最も近い点 $Z'$ がある。線分 $XZ'$ の上で $Z'$ からの距離が $\varepsilon$ より小さい点 $Y$($Y\ne Z'$)をとると、$Y$ は $P$ の上になく、$P$ からの距離は $\varepsilon$ より小さいので、lem-jct-strip の条件 (i) により $\mathcal L$ か $\mathcal R$ に属する。線分 $XY$ は $Z'$ より手前で終わるので $P$ と交わらない。
段 3(帯の中の偶奇)。lem-jct-strip の条件 (ii) と段 1 の理由により、$\mathcal L$ の点の偶奇はすべて等しく、$\mathcal R$ の点の偶奇もすべて等しい。
段 4(左右の帯の偶奇は違う)。辺 $P_1P_2$ の中点 $M$ を通る直線で、直線 $P_1P_2$ と違い、どの頂点も通らないものをとる($M$ と頂点を結ぶ直線は有限本なので、それ以外を選べばよい)。この直線の上で、$M$ からの距離が $\varepsilon$ より小さく、$M$ の両側にある 2 点 $Y_{\mathrm L}$(辺の左側)、$Y_{\mathrm R}$(右側)をとる。lem-jct-strip の条件 (iii) により $Y_{\mathrm L}\in\mathcal L$、$Y_{\mathrm R}\in\mathcal R$ である。線分 $Y_{\mathrm L}Y_{\mathrm R}$ の $M$ 以外の点も同じ条件で $\mathcal L$ か $\mathcal R$ に属するので、この線分と $P$ の共有点は $M$ だけである。$Y_{\mathrm L}$ から $Y_{\mathrm R}$ の向きに出る半直線 $h$ と、$Y_{\mathrm R}$ から同じ向きに出る半直線 $h'$ を比べると、$h$ は $h'$ の共有点のほかに、辺 $P_1P_2$ を横切る点 $M$ を 1 つ多くもつ。$h$ は頂点を通らないので、
$$ N(Y_{\mathrm L},h)=N(Y_{\mathrm R},h')+1 $$
であり、$Y_{\mathrm L}$ と $Y_{\mathrm R}$ の偶奇は違う。段 3 と合わせると、$\mathcal L$ と $\mathcal R$ の一方はすべて奇点、他方はすべて偶点である。特に奇点も偶点もあるので、$I$ と $E$ はどちらも空でない。
段 5(条件 (i))。$I$ の 2 点 $X$、$X'$ をとる。段 2 により、$X$ は $P$ と交わらない線分で帯の点 $Y$ に、$X'$ は帯の点 $Y'$ に行ける。段 1 の理由により $Y$ と $Y'$ はどちらも奇点なので、段 4 により同じ帯(奇点の帯)に属する。lem-jct-strip の条件 (ii) により $Y$ と $Y'$ は帯の中を通る折れ線で結べる。線分 $XY$、帯の中の折れ線、線分 $Y'X'$ をつなげば、$X$ と $X'$ を結ぶ、$P$ と交わらない折れ線になる。$E$ の 2 点も同じである。
段 6(条件 (iii))。原点 $O$ を中心とし、すべての頂点を内部に含む円をとり、半径を $r$ とする。円の内部と周を合わせた円板は、中の 2 点を結ぶ線分を含むので、$P$ はこの円板に含まれる。$OX>r$ の点 $X$ から、$O$ から $X$ の向きに出る半直線 $h$ の上の点は、$O$ からの距離が $OX$ 以上なので円板の外にあり、$h$ は $P$ と交わらない。$N(X,h)=0$ なので $X$ は偶点である。したがって奇点はすべて円板の中にあり、$I$ は有界である。$E$ は円板の外の点をすべて含むので、有界でない。$\square$

C の字の多角形の内部と外部

ex-jct-start の 8 角形で、thm-jct-main の 3 つの条件を確かめる。
(1) 条件 (i)。奇点 $Y\left(3,\dfrac12\right)$ と、右の縦の腕の中の点 $Z\left(\dfrac{11}2,\dfrac52\right)$ をとる。$Z$ から右へ出る半直線は辺 $(6,0)$–$(6,5)$ を 1 回横切るだけなので、$Z$ も奇点である。折れ線 $Y\to\left(\dfrac{11}2,\dfrac12\right)\to Z$ は、横の線分が $y=\dfrac12$ の上で $x=3$ から $\dfrac{11}2$ まで、縦の線分が $x=\dfrac{11}2$ の上で $y=\dfrac12$ から $\dfrac52$ までで、どの辺とも交わらない($x=5$ の辺は $y\ge1$ の範囲、$x=6$ の辺は $x=\dfrac{11}2$ より右にある)。

偶点どうしを結ぶ例を開く

偶点 $X\left(3,\dfrac52\right)$ と偶点 $(8,2)$ は、折れ線 $X\to\left(-1,\dfrac52\right)\to(-1,-1)\to(8,-1)\to(8,2)$ で結べる。最初の線分は $x=0$ を高さ $\dfrac52$ で通るが、$x=0$ の上の辺は $4\le y\le5$ と $0\le y\le1$ の範囲にしかない。残りの線分は多角形の左・下・右の外側を通る。


(2) 条件 (ii)。$Y$ と $X$ を結ぶ折れ線は、lem-jct-segment により必ず $P$ と交わる。たとえば $Y$ から左へ進んで口に回り込もうとすると、辺 $(0,1)$–$(0,0)$ を横切る。
(3) 条件 (iii)。頂点のうち原点から最も遠いのは $(6,5)$ で、距離は $\sqrt{61}<8$ である。原点を中心とする半径 $8$ の円の外の点はすべて偶点で、奇点はこの円の中にある。

辺の両側と内部の向き

$P$ を単純多角形とする。
(1) 各辺のすぐ左の点とすぐ右の点は、一方が内部、他方が外部にある。$P$ のどの点のどんな近くにも、内部の点と外部の点がある。
(2) $P$ を $P_1\to P_2\to\cdots\to P_n\to P_1$ の向きに回るとき、内部はすべての辺の左側にあるか、すべての辺の右側にある。

thm-jct-main の証明の段 4 により、左の帯 $\mathcal L$ と右の帯 $\mathcal R$ の一方は内部に、他方は外部に含まれる。
段 1(辺の途中の点)。辺 $e_i=P_iP_{i+1}$ の端でない点 $W_0$ と、$e_i$ の中点 $M$ をとる。$W_0$ と $M$ を結ぶ線分は頂点を含まないので、ほかの辺との距離は正である。その距離の半分と lem-jct-strip の $\varepsilon$ のどちらよりも小さい正の数 $\delta$ をとり、線分 $W_0M$ を辺の左側へ $\delta$ だけ平行に動かした線分を考える。この線分の点は、直線 $P_iP_{i+1}$ からの距離が $\delta>0$ なので $e_i$ の上になく、線分 $W_0M$ からの距離が $\delta$ なのでほかの辺の上にもない。この線分の $M$ の側の端は、$M$ からの距離が $\delta<\varepsilon$ で辺の左側にあるので、lem-jct-strip の条件 (iii) により $\mathcal L$ に属する。thm-jct-main の条件 (ii) により、$W_0$ の側の端も $\mathcal L$ と同じ部分にある。$\delta$ はいくらでも小さくとれるので、$W_0$ のどんな近くにも、辺の左側で $\mathcal L$ と同じ部分の点がある。右側も同じく $\mathcal R$ と同じ部分の点がある。
段 2(まとめ)。$P$ の点 $W$ が頂点でも、$W$ のどんな近くにも辺の端でない点 $W_0$ があるので、段 1 から (1) が成り立つ。段 1 により、どの辺でもすぐ左の点は $\mathcal L$ と同じ部分にあるので、(2) が成り立つ。$\square$

内部が左側にある回り方を 正の向き(反時計回り)という。ex-jct-start の 8 角形は $(0,0)\to(6,0)\to(6,5)\to\cdots$ と回ると内部が左手にあり、正の向きに番号が付いている。靴ひも公式 の符号つきの面積が正になるのも、この向きに回るときである。

他の記事で証明せずに使った事実

多角形の内角の和と外角の和 は、周が平面を内部と外側に分け、周と交わらずに動く点はどちらか一方にとどまること(そこでの (J1))と、周を一方の向きに回ると内部はいつも左手にあること((J3))を、証明せずに使っていた。前者は thm-jct-main の条件 (i)〜(iii)、後者は cor-jct-sides である。Pickの定理 が使った「内部と外部のちょうど 2 つに分かれ、周はどちらの部分の境界にもなる」ことも、thm-jct-main と cor-jct-sides (1) の内容である。対角線が多角形を 2 つの多角形に分けること((J2))は、この記事では証明しない。

例と反例

thm-jct-main の仮定と、def-jct-count の約束を外すと何が崩れるかを並べる。

外す条件反例成り立たなくなること
折れ線が閉じているC の字の 8 角形から辺 $(0,1)$–$(0,0)$ を除いた折れ線平面が 2 つの部分に分かれる
辺どうしが交わらない星形五角形偶点どうしは $P$ と交わらない折れ線で結べる(条件 (i))
頂点の並びの数え方の約束点 $(7,1)$ から頂点 $(6,0)$ をかすめる半直線交わりの数の偶奇が向きによらない
星形五角形。中心 O から出る半直線は辺と 2 回交わり O は偶点だが、O は内側の五角形に閉じ込められている 星形五角形。中心 O から出る半直線は辺と 2 回交わり O は偶点だが、O は内側の五角形に閉じ込められている
C の字の 8 角形から左下の短い辺(点線)を除いた折れ線。Y と X は折れ線と交わらない緑の破線で結べる C の字の 8 角形から左下の短い辺(点線)を除いた折れ線。Y と X は折れ線と交わらない緑の破線で結べる
反例:閉じていない折れ線

ex-jct-start の 8 角形から辺 $(0,1)$–$(0,0)$ を除き、$(0,0)$ から $(0,1)$ まで 7 本の辺をたどる折れ線を $Q$ とする。$Y\left(3,\dfrac12\right)$ と $X\left(3,\dfrac52\right)$ は、折れ線
$$ Y\to\left(-\frac12,\frac12\right)\to\left(-\frac12,\frac52\right)\to X $$
で結べる。最初の線分は $x=0$ を高さ $\dfrac12$ で通るが、そこにあった辺は除いてある。2 本目は $x=-\dfrac12$ の上にあり、3 本目は $x=0$ を高さ $\dfrac52$ で通る。どれも $Q$ と交わらない。$X$ は左の口から出て遠くの点とも結べるので、$Q$ は平面を「囲まれた部分」と「外」に分けない。閉じた 8 角形では、この折れ線の最初の線分が辺 $(0,1)$–$(0,0)$ を横切る。

反例:自分と交わる閉じた折れ線

原点 $O$ を中心とする半径 $4$ の円に内接する正五角形の頂点を 1 つおきに結んだ星形五角形を考える(図 5)。頂点は $(0,4)$ と、それを $144^\circ$ ずつ回した点である。
$O$ から右へ(わずかに上向きに)出る半直線は、辺と 2 回交わる。向きを変えて 4 通り数えても 2 回だった。したがって $O$ は、交わりの数でいえば遠くの点と同じ「偶」である。
ところが $O$ は、5 本の辺の中ほどの部分で囲まれた内側の正五角形の中にある。内側の正五角形は凸なので、その中の点から外の点へ向かう線分は、途中でその周、つまり星形の辺を通る。折れ線でも、最初に内側の五角形の外へ出る線分が周を通る。よって $O$ と遠くの点は、星形と交わらない折れ線では結べない。偶点どうしなのに結べないので、thm-jct-main の条件 (i) が成り立たない。実際、星形五角形は平面を、内側の五角形、5 つの先の三角形、外側の 1 つの、合わせて 7 つの部分に分ける(数値計算で確かめた)。

反例:数え方の約束を外す

ex-jct-count-vertex (3) の半直線(点 $(7,1)$ から向き $(-1,-1)$)と $P$ の共有点は頂点 $(6,0)$ の 1 点だけである。約束を外して「共有点が 1 つあれば 1 回」と数えると $1$ になる。同じ点から右へ出る半直線は $P$ と交わらず $0$ である。同じ点なのに向きによって奇数と偶数になるので、lem-jct-direction が成り立たない。約束どおりに数えれば、前後の頂点 $(0,0)$、$(6,5)$ が同じ側にあるので $0$ で、偶奇はそろう。

大学数学で見る:一般の閉曲線と回転数

多角形の辺は線分だったが、平面の中で自分と交わらない閉じた曲線(連続な曲線)でも、同じことが成り立つ。平面からそのような曲線 $J$ を除くと、ちょうど 2 つの連結な部分(内部と外部)に分かれ、$J$ はどちらの部分の境界にもなる。これが Jordan 曲線定理 である(Wei26、Jordan曲線定理)。

一般の曲線が難しい理由と、回転数による見方を開く

一般の連続な曲線では、半直線と無限回交わることがあり、この記事のように交わりの数を数えることができない。そのため、証明には位相幾何の道具を使い、多角形の場合よりずっと難しくなる。この記事では一般の場合を証明しない。

交わりの数の偶奇の代わりに、回転数(巻き数)を使う見方もある。$P$ の上にない点 $X$ から、閉じた折れ線の上を 1 周する点を見続けると、見る向きは連続に変わり、1 周後にはもとの向きにもどる。その間に向きが回った角の合計(反時計回りを正とする)を $360^\circ$ で割った整数が、$X$ のまわりの回転数である(回転数)。数値計算では、ex-jct-start の 8 角形で、内部の点 $Y\left(3,\frac12\right)$ の回転数は $1$、外部の点 $X\left(3,\frac52\right)$ の回転数は $0$ だった。星形五角形では、中心 $O$ の回転数は $2$、先の三角形の中の点 $(0,2.5)$ の回転数は $1$ だった。

閉じた折れ線では、回転数を $2$ で割った余りが、この記事の交わりの数の偶奇に一致することが知られている(この記事では証明しない)。星形五角形の中心の「偶」は、回転数が $0$ だからではなく $2$ だからである。交わりの数の偶奇では区別できなかった内側の五角形と外は、回転数では区別できる。単純多角形では、回転数は内部で $1$ か $-1$、外部で $0$ になる(この記事では証明しない)。

演習

C の字の多角形の上の腕の点

ex-jct-start の 8 角形と点 $T\left(\dfrac12,\dfrac92\right)$ について、次の 3 本の半直線の交わりの数を def-jct-count の約束で数え、$T$ が内部の点か外部の点かを答えよ。(1) 左向き、(2) 下向き、(3) 頂点 $(0,5)$ を通る向き $(-1,1)$。

解答を開く

(1) 直線 $y=\dfrac92$ の $x<\dfrac12$ の部分は、辺 $(0,5)$–$(0,4)$ を点 $\left(0,\dfrac92\right)$ で横切るだけである。$N=1$。

(2) 直線 $x=\dfrac12$ の $y<\dfrac92$ の部分は、辺 $(0,4)$–$(5,4)$ を $\left(\dfrac12,4\right)$ で、辺 $(5,1)$–$(0,1)$ を $\left(\dfrac12,1\right)$ で、辺 $(0,0)$–$(6,0)$ を $\left(\dfrac12,0\right)$ で横切る。$N=3$。

(3) 半直線を含む直線は $y=-x+5$ で、頂点の並びは $(0,5)$ だけである。前の頂点 $(6,5)$ は直線の $x=6$ での高さ $-1$ より上、後の頂点 $(0,4)$ は直線の $x=0$ での高さ $5$ より下にあり、反対側なので 1 回と数える。ほかの共有点はなく $N=1$。

3 本とも奇数なので $T$ は奇点で、内部の点である。

さらに先へ

  • 次に読む 美術館定理 では、単純多角形を対角線で三角形に分け、頂点を 3 色で塗り分けて、$n$ 角形の美術館を見張るのに必要な警備員の数を求める。多角形の内部と外部の区別がそこでの出発点になる。
  • Eulerの多面体定理(高校数学) の平面の図形の場合や、一筆書きとグラフ の平面に描いたグラフでも、「自分と交わらない閉じた線が平面を 2 つに分ける」ことが議論の土台になっている。
  • 自分と交わらない閉じた曲線の一般の場合(Jordan曲線定理)や、回転数(回転数)は、大学の位相幾何や複素関数論で学ぶ。

関連項目

参考文献

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